【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、第1の本発明によると、モータと、モータが発生するトルクにより伸縮する伸縮機構とを備える電動伸縮装置の制御装置であって、
前記モータへ供給する電力を制御する供給電力制御部と、
前記モータが発生するトルクの値を検出するトルクセンサと、を有し、
供給電力制御部は、ゼロ速度制御と荷重解放制御を実行可能であり、
ゼロ速度制御では、供給電力制御部は、伸縮機構に作用している荷重に抗して伸縮機構の伸縮速度をゼロに維持するように、前記モータへ供給する電力を制御し、
ゼロ速度制御を実行している時に、トルクセンサが検出したトルクの値がトルク上限値を超えた時に、供給電力制御部は、荷重解放制御を行い、
荷重解放制御では、伸縮機構に作用する荷重に抗して発生する前記モータのトルクが前記トルク上限値以下になるように前記モータへ供給する電力を制御し、これにより、前記荷重により伸縮機構が伸長または収縮するようにする、ことを特徴とする電動伸縮装置の制御装置が提供される。
【0010】
第1の本発明の制御装置は、好ましくは、以下のように構成される。
【0011】
供給電力制御部には、前記トルクセンサが組み込まれており、前記トルクセンサは、前記モータに発生させるトルクの制御値を、前記モータが発生するトルクの値として検出する。
【0012】
荷重解放制御では、伸縮機構に作用する荷重に抗して発生する前記モータのトルクが、トルク上限値以下でありゼロより大きい荷重解放用トルク値となるように、供給電力制御部は、前記モータへ供給する電力を制御する。
【0013】
このように、荷重解放制御において、伸縮機構に作用する過大な荷重に抗してモータがトルクを発生するので、該トルクにより該荷重の一部が支持される。したがって、過大な荷重により伸縮機構が伸長または収縮する速さを下げることができる。したがって、伸縮機構が伸長しきった時、または、伸縮機構が収縮しきった時に生じる衝撃を緩和できる。これにより、該衝撃から伸縮機構を保護できる。
【0014】
前記伸縮機構の伸縮位置もしくは伸縮速度、モータの出力シャフトの回転角もしくは回転速度、または、前記出力シャフトにより回転駆動される回転部の回転角もしくは回転速度を検出する検出器を有し、
荷重解放制御において、供給電力制御部は、前記検出器の検出値に基づいて、伸縮機構の伸縮方向が逆転したと判断したら、または、伸縮機構の伸縮が停止したと判断したら、ゼロ速度制御を再開する。
【0015】
このように、荷重解放制御において、伸縮機構の伸縮方向が逆転した場合、または、伸縮機構の伸縮が停止した場合には、荷重解放制御により発生している、トルク上限値以下のモータトルクは、伸縮機構に作用している荷重に勝っているか、この荷重と同等であることを意味する。したがって、この状態では、伸縮機構には、過大な荷重は作用していないと判断できるので、ゼロ速度制御を再開しても、モータのトルクはトルク上限値を超えない。そこで、伸縮機構の伸縮方向が逆転したと判断したら、ゼロ速度制御を再開することにより、伸縮機構を損傷させることなく伸縮機構の伸縮運動を停止できる。
【0016】
代わりに、荷重解放制御では、供給電力制御部は、伸縮機構に作用する荷重に抗して発生するモータのトルクが、一定の荷重解放用トルク値となるように、前記モータへ供給する電力を制御しながら、前記検出器の検出値に基づいて、伸縮機構の伸縮速度の大きさが、設定量だけ下がったかどうかを判断し、供給電力制御部は、この判断の結果が肯定である場合には、ゼロ速度制御を再開してもよい。
【0017】
荷重解放用トルク値を一定にして荷重解放制御を行っている場合には、伸縮機構の伸縮速度の大きさが、設定量だけ下がったことは、モータのトルクが伸縮機構に作用する荷重に勝っていることを意味する。したがって、この状態では、伸縮機構には、過大荷重は作用していないので、ゼロ速度制御を再開しても、モータのトルクはトルク上限値を超えない。そこで、伸縮機構の伸縮速度の大きさが、設定量だけ下がったと判断したら、ゼロ速度制御を再開することにより、伸縮機構を損傷させることなく伸縮機構の伸縮運動を停止させることができる。
【0018】
前記伸縮機構は、バラ物を搬送するバラ物搬送装置に設けられており、
バラ物搬送装置は、第1の水平軸まわりに起伏可能にフレームに連結されているブームとを備え、
前記ブームは、前記フレームとの連結位置から、その先端部まで延びており、
前記ブームには、バラ物を搬送するコンベアが前記ブームに沿って設けられ、前記ブームの先端部において、バラ物を採取し、または、バラ物を落とすようになっており、
伸縮機構の一端部は、第1の水平軸と平行な第2の水平軸まわりに回転自在にフレームに連結され、伸縮機構の他端部は、第1の水平軸と平行な第3の水平軸まわりに回転自在に前記ブームに連結されており、
前記伸縮機構の伸縮により、前記ブームが前記第1の水平軸まわりに起伏する。
【0019】
また、上述の目的を達成するため、第1の本発明によると、モータと、モータが発生するトルクにより伸縮する伸縮機構とを備える電動伸縮装置の制御方法であって、
(A)前記モータへ供給する電力を制御する供給電力制御部を設け、供給電力制御部は、前記モータに発生させるトルクの制御値を検出する機能を有し、供給電力制御部は、ゼロ速度制御と荷重解放制御を実行可能であり、
(B)ゼロ速度制御では、供給電力制御部により、伸縮機構に作用している荷重に抗して伸縮機構の伸縮速度をゼロに維持するように、前記モータへ供給する電力を制御し、
(C)供給電力制御部によりゼロ速度制御を実行している時に、供給電力制御部が検出したトルクの制御値がトルク上限値を超えた時に、供給電力制御部により、伸縮機構に作用する荷重に抗して発生する前記モータのトルクが前記トルク上限値以下になるように前記モータへ供給する電力を制御して、前記荷重により伸縮機構が伸長または収縮するようにする、ことを特徴とする電動伸縮装置の制御方法が提供される。
【0020】
また、上述の目的を達成するため、第2の本発明によると、モータと、モータが発生するトルクにより伸縮する伸縮機構とを備える電動伸縮装置の制御装置であって、
前記モータへ供給する電力を制御する供給電力制御部を有し、
供給電力制御部は、ゼロ速度制御を実行可能であり、
ゼロ速度制御では、供給電力制御部は、伸縮機構に作用している荷重に抗して伸縮機構の伸縮速度をゼロに維持するように、前記モータへ供給する電力を制御し、
ゼロ速度制御中にモータへ供給する最大電流値が予め設定されており、予め設定された最大電流値の電流が前記モータへ供給されることにより前記モータが発生するトルクを最大電流時トルクとして、
供給電力制御部は、ゼロ速度制御を実行している時に、最大電流時トルクでは支えきれない過大荷重が伸縮機構に作用した過大荷重発生時には、供給電力制御部は、最大電流値の電流をモータへ供給し、これにより、前記荷重により伸縮機構が伸長または収縮するようにする、ことを特徴とする電動伸縮装置の制御装置が提供される。
【0021】
さらに、上述の目的を達成するため、第2の本発明によると、モータと、モータが発生するトルクにより伸縮する伸縮機構とを備える電動伸縮装置の制御方法であって、
(A)前記モータへ供給する電力を制御する供給電力制御部を設け、供給電力制御部は、ゼロ速度制御を実行可能であり、
(B)ゼロ速度制御では、供給電力制御部により、伸縮機構に作用している荷重に抗して伸縮機構の伸縮速度をゼロに維持するように、前記モータへ供給する電力を制御し、
(C)供給電力制御部に予め設定された最大電流値の電流が前記モータへ供給されることにより前記モータが発生するトルクを最大電流時トルクとして、供給電力制御部によりゼロ速度制御を実行している時に、最大電流時トルクでは支えきれない過大荷重が伸縮機構に作用した過大荷重発生時には、供給電力制御部は、最大電流値の電流を前記モータへ供給し、これにより、前記荷重により伸縮機構が伸長または収縮するようにする、ことを特徴とする電動伸縮装置の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
上述した第1の本発明によると、次のように、機械式ブレーキを用いることなく過大荷重から伸縮機構を保護できる。伸縮機構の伸縮速度をゼロに維持するゼロ速度制御の実行中に、伸縮機構に過大荷重が作用すると、モータのトルク値がトルク上限値を超える。したがって、モータのトルク値がトルク上限値を超えたことを検出したことは、伸縮機構に過大荷重が作用したことを検出したことに等しい。そこで、ゼロ速度制御においてモータのトルク値がトルク上限値を超えたことを検出した時に、供給電力制御部は荷重解放制御を行うことにより、過大荷重を解放して過大荷重から伸縮機構を保護できる。この方法では、荷重解放制御により過大荷重から伸縮機構を保護するので、機械式ブレーキは不要である。
【0023】
また、上述した第1の本発明によると、ゼロ速度制御により、伸縮機構に作用している荷重に抗して伸縮機構の伸縮速度をゼロに維持するので、伸縮機構の伸縮を停止させるブレーキを用いることなく、伸縮機構の伸縮量を一定に維持できる。
【0024】
さらに、上述した第1の本発明によると、次のように、伸縮機構に作用する荷重が、伸縮機構の許容最大値を超えた時点で、正確に、その荷重を解放できる。ゼロ速度制御している時のモータトルクは、伸縮機構に作用している荷重と1対1で対応する。ゼロ速度制御においては、伸縮機構の荷重が、モータトルクにより支持されるようになるからである。例えば、モータの出力シャフトの回転がボールねじにより伸縮機構の伸縮運動に変換される場合には、ボールねじの効率やリードと伸縮摩擦に基づいてモータトルクを伸縮機構の荷重に変換できる。したがって、伸縮機構に作用する荷重の許容最大値を定め、定めた許容最大値から、許容最大値に1対1で対応するトルク上限値を算出する。モータトルクが、このように算出したトルク上限値を超えた時に、供給電力制御部が、荷重解放制御を行う。これにより、伸縮機構に作用する荷重が、その許容最大値に1対1で対応するトルク上限値を超えた時点で、正確に、その荷重を解放できる。
【0025】
あるいは、上述した第1の本発明によると、次のように、伸縮機構に作用する荷重(以下、単に伸縮機構の荷重ともいう)に1対1で対応する力(モータトルク)が、その許容最大値を超えた時点で、正確に、その荷重を解放できる。ゼロ速度制御している時のモータトルクは、伸縮機構の荷重に1対1で対応するようになる。そこで、ゼロ速度制御時において伸縮機構の荷重に1対1で対応するようになるモータトルクのトルク上限値(トルクの許容最大値)を定める。ゼロ速度制御時において、モータトルクが、定めたトルク上限値を超えた時に、供給電力制御部が、荷重解放制御を行う。これにより、ゼロ速度制御において伸縮機構の荷重に1対1で対応ようになるモータトルクが、定めたトルク上限値(トルクの許容最大値)を超えた時点で、正確に、その荷重を解放できる。
【0026】
上述した第2の本発明によると、次のように、機械式ブレーキを用いることなく過大荷重から伸縮機構を保護できる。ゼロ速度制御中にモータへ供給する最大電流値を予め設定しておく。ゼロ速度制御を実行している時に、最大電流時トルクでは支えきれない過大荷重が伸縮機構に作用した場合には、供給電力制御部は、最大電流値の電流をモータへ供給する。これにより、最大電流時トルクに対応する力を超える分の荷重が解放されて、過大荷重から伸縮機構を保護できる。この方法では、最大電流値の設定により過大荷重から伸縮機構を保護するので、機械式ブレーキやトルクセンサが不要である。
【0027】
また、上述した第2の本発明によると、ゼロ速度制御により、伸縮機構に作用している荷重に抗して伸縮機構の伸縮速度をゼロに維持するので、伸縮機構の伸縮を停止させるブレーキを用いることなく、伸縮機構の伸縮量を一定に維持できる。
【0028】
さらに、上述した第2の本発明によると、伸縮機構に作用している荷重が、最大電流時トルクに対応する力を超えた時点で、正確に、その荷重を解放できる。