(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1はアスファルトスプレイヤ1におけるアスファルト乳剤の噴射部の構成を説明する図である。
図1は、アスファルト乳剤の飛散防止のためのフードが設けられていないアスファルト乳剤の噴射部の構成を示している。
【0015】
また、
図2はアスファルトスプレイヤ1のアスファルト乳剤の噴射部に用いられるノズル10を示す図である。
【0016】
金属管4内には、アスファルトスプレイヤ1本体部から、圧送されたアスファルト乳剤が供給される。金属管4に接続されている中空状の先端部5には、管内螺刻部7が設けられており、この管内螺刻部7に対して、ノズル10の螺刻部15が螺合することにより、ノズル10が先端部5に取り付けられる。
【0017】
ノズル10は、ヘッド部13と、このヘッド部13に連設された螺刻部15と設けられている。また、ヘッド部13には凹部20が設けられている。この凹部20には、ノズル10内の中空部と、外部を貫通する開口部30が設けられている。この開口部30から、圧送されたアスファルト乳剤が噴射されるが、開口部30からの噴射されるアスファルト乳剤は略円錐形状に広がるのではなく、開口部30を頂点する略三角形の平面状に広がるように開口部30の孔形状が設計されている。
【0018】
アスファルト乳剤の散布作業においては、アスファルトスプレイヤ1から供給されるアスファルト乳剤を噴射させるノズル10を備えた金属管4を作業者が持ち、ノズル10から噴射するアスファルト乳剤を略均等に路面に対して散布していく。このような作業においては、噴射されたアスファルト乳剤が風にのって飛散し、舗装工事周辺の家屋の外壁や、駐車中の車両に付着してしまう。本発明に係るフード100は、このようなアスファルト乳剤の飛散を防止するものである。以下、本発明に係るフード100の詳細な構成について順次説明していく。
【0019】
まず、本発明に係るフード100の一部を成し、ノズル10の近傍に取り付けられる中継金属体200について説明する。
図3は中継金属体200を構成する基材205を示す図である。中継金属体200は、基材205に種々の部品を組み付けていくことにより構成されるが、中継金属体200を構成する上で用い得る部品は以下に説明する態様に限定されるわけではない。しかしながら、以下に説明する部品は汎用品であるために、中継金属体200を安価で構成する上では好都合である。
【0020】
基材205は、例えば鉄板などで構成されるものである。基材205は、矩形状の基板210と、この基板210の対向する2辺から延出する2枚の斜板220と、基板210の他の対向する2辺から延在し、互いに平行とされる2枚の円弧板230と、から構成されている。
【0021】
基材205の下方は、開口部250となっている。この開口部250は、ノズル10から噴射されるアスファルト乳剤が通過することが想定されるものである。また、円弧板230は端部が円弧状に切り欠かれている円弧部235を有している。従って、開口部250には円弧状をなす円弧部235が含まれることとなる。開口部250に、このような円弧部235が含まれることにより、後述するように中継金属体200に対して、金属製格子構造体300が取り付け易いようになっている。
【0022】
基板210は、主面として第1面211と、この第1面211と表裏の関係にある第2面212とを有している。そして、基板210には、第1面211と第2面212との間を貫通する貫通孔215が設けられている。
【0023】
次に、上記のような基材205に対して、
図4に示すように、六角ニップル260とワッシャー270とが組み付けられる。六角ニップル260は、内部に貫通管部261が設けられている。この六角ニップル260は、流体用の管の継ぎ手として用いられる汎用の金属製の部品である。六角ニップル260には、スパナやレンチによって回転力が加えられる六角胴部263と、この上下に連設された管外螺刻部265とからなっている。
【0024】
六角ニップル260の一方の管外螺刻部265は、ワッシャー270に挿通され、さらに基板210の貫通孔215に挿通される。
【0025】
続いて、
図5に示すように、六角ソケット280とワッシャー270とが、基材205の開口部250側から組み付けられる。
図6は、六角ソケット280とワッシャー270とが組み付けられた本発明の実施形態に係る中継金属体200を開口部30側から見た図である。
【0026】
六角ソケット280も、流体用の管の継ぎ手として用いられる汎用の金属製の部品である。このように、本実施形態においては、六角ニップル260や六角ソケット280やワッシャー270といった汎用の部品を用いることで、中継金属体200を安価に構成することが可能となる。ただし、本発明では、これらの部品を用いることは必須の構成要件ではない。
【0027】
六角ソケット280の外周には、スパナやレンチによって回転力が加えられる六角胴部283が、また、六角ソケット280の内周面には管内螺刻部285が形成されている。
【0028】
図5において、基板210の貫通孔215から第2面212側に露出している六角ニップル260の管外螺刻部265には、ワッシャー270に挿通され、さらに六角ソケット280の管内螺刻部285を、六角ニップル260の管外螺刻部265に螺合する。これにより、六角ソケット280と六角ニップル260とで、基材205の基板210が挟持されることとなり、全ての部品が一体化する。
【0029】
次に、上記のように構成される中継金属体200によって支えられ、本発明に係るフード100において、アスファルト乳剤を捕捉する主構成となる金属製格子構造体300について説明する。
【0030】
図7は金属製格子構造体300の組み立て工程を示す図であり、
図7(A)は骨格部310を示しており、
図7(B)は当該骨格部310に平織メッシュ金網320が取り付けられた金属製格子構造体300を示している。
【0031】
骨格部310は、例えば、35mm径のステンレス棒を溶接などによって接続することで構成することができる。このような骨格部310の側面4面に対して、例えば、0.47mm径のステンレス製針金が10メッシュ/インチの間隔で織られた平織メッシュ金網320が装着され、金属製格子構造体300とされる。
【0032】
金属製格子構造体300を構成する平織メッシュ金網320は、本発明に係るフード100において、アスファルト乳剤を捕捉するものとなる。散布されるアスファルト乳剤としてはカチオン系のものやアニオン系のものなど電荷を有するものであることがほとんどであり、このようなアスファルト乳剤は、平織メッシュ金網320を通過しようとするとき、当該電荷の作用により平織メッシュ金網320を構成する金属の針金に付着する確率が高まる。これにより、メッシュを構成するために編まれている針金同士の間の空間を通過することがない。
【0033】
なお、撥水加工などのコーティングを平織メッシュ金網320に施しておけば使用後の洗浄において便がよいが、平織メッシュ金網320に撥水加工などのコーティングを施すと、前記のような電荷の作用を享受することができなくなり、アスファルト乳剤の捕捉率が低下することを確認している。
【0034】
また、金属製格子構造体300に平織メッシュ金網320を用いることは、本発明に係るフード100を軽量化する上でも重要なことである。本実施形態においては、金属製格子構造体300に用いる金属製格子として、平織メッシュ金網320を用いるようにしたが、金属製格子の種類はこれに限られるものではなく、金属製格子としてパンチングメタルなども用いることができる。パンチングメタルも平織メッシュ金網320のように、アスファルト乳剤の捕捉しつつも、金属製格子構造体300の軽量化に寄与することができる。
【0035】
なお、骨格部310に用いるステンレス棒の寸法や、平織メッシュ金網320に用いるメッシュの仕様は上記に限られるものではない。骨格部310のステンレス棒の寸法としては、金属製格子構造体300に、現場での使用に耐えられる程度の所定の強度を付与しつつ、過重量とならないものであれば、どのようなものでもあっても構わない。また、平織メッシュ金網320の目を細かくすればするほど、アスファルト乳剤の捕捉率を向上させることが期待できるが、一方で重量増に繋がるので、これらのバランスをみて適宜メッシュの仕様を選択すればよい。
【0036】
図8は金属製格子構造体300における骨格部310を側面から見た図である。骨格部310、すなわち金属製格子構造体300の側面を矩形としてみたとき、上面開口部330側の2つの角度θ
1、θ
2は90°より大きい鈍角に設定し、下面開口部340の2つの角度θ
3、θ
4は90°より小さい鋭角に設定することが好ましい。このような設定によれば、金属製格子構造体300を側面からみたとき、末広がり形状とすることができ、ノズル10からの噴射される、開口部30を頂点する略三角形の平面状に広がるアスファルト乳剤をカバーするフード体として好適なものとなる。本実施形態においては、θ
1=110°、θ
2=110°、θ
3=60°、θ
4=80°としているが、本発明がこれらの角度に限定されるわけではない。
【0037】
次に、本発明に係るフード100においては、金属製格子構造体300は、中継金属体200に対して荷重することで中継金属体200に支えられるような形態で利用されるが、このとき、金属製格子構造体300が揺動してしまうことがある。そこで、本発明に係るフード100では、揺動防止部材400を用いることで、この揺動を防止するようにしている。
【0038】
揺動防止部材400は、ループ部425と、端部に円柱状磁石部材415が内蔵された吸着ヘッド部410とが設けられるワイヤー部材420からなるものである。
【0039】
吸着ヘッド部410は金属製の部品であり、ヘッド基部411と、このヘッド基部411から延出するように設けられているリング部413から構成されている。ヘッド基部411には、円柱状でネオジム磁石などの強力な磁石材料からなる円柱状磁石部材415が埋め込まれている。また、リング部413には、ワイヤー部材420が挿通され、かしめ部427が形成されることで、ワイヤー部材420と吸着ヘッド部410とを分離不能としている。
【0040】
上記のような吸着ヘッド部410は、本実施形態ではループ部425に対して2つ設けられる構成であるが、ループ部425に対して設ける吸着ヘッド部410の数はこれに限定されるものでない。本実施形態では、金属製格子構造体300が中継金属体200に対して荷重する際に、当該荷重を主として受ける斜板220の数が2つである関係上、吸着ヘッド部410の数を2つとしている。
【0041】
以上のような中継金属体200、金属製格子構造体300、揺動防止部材400を準備した上で、本発明に係るフード100を組み立てる。
図10は本発明の実施形態に係るフード100の組み立て工程を示す図である。
【0042】
図10において、揺動防止部材400のループ部425が中継金属体200の管外螺刻部265の下方にある六角胴部263に挿通されることで、揺動防止部材400を中継金属体200に対して取り付けるようにする。
【0043】
続いて、金属管4の先端部5に形成されている管内螺刻部7(
図10には不図示)に、中継金属体200の管外螺刻部265を螺合することで、中継金属体200を先端部5に対して固定する。続いて、中継金属体200の開口部250側から、中継金属体200内の空間にノズル10を挿入して、ノズル10の螺刻部15と、管内螺刻部285とを螺合させることで、ノズル10を中継金属体200の内空間に取り付ける。
【0044】
以上のように金属管4の先端部5に取り付けられた中継金属体200に対して、次に、金属製格子構造体300を取り付ける。
図11は中継金属体200に対する金属製格子構造体300の取り付けを説明する図である。
【0045】
図11(A)は金属製格子構造体300の上面開口部330に対して中継金属体200の一端部を挿入した様子を示しており、さらに
図11(B)はP周辺を支点として、中継金属体200を回動させつつ、中継金属体200の全体を上面開口部330に挿入しようとしている様子を示している。
【0046】
中継金属体200の開口部250には円弧部235が設けられているが、このような円弧部235が含まれることにより、中継金属体200に対して、金属製格子構造体300が取り付け易いようになっている。
【0047】
また、中継金属体200に円弧部235を設けることで、円弧板230の面積を稼げる、というメリットがある。中継金属体200に対して金属製格子構造体300が取り付けられたとき、それぞれの構成の間にはある程度のアソビが設けられるようにしているが、このために、フード100の使用中、金属製格子構造体300は揺動しやすい。
【0048】
この揺動を防ぐために、中継金属体200を構成する円弧板230の面積は大きい方がよいが、一方で、中継金属体200全体が金属製格子構造体300の上面開口部330から完全に挿入される必要がある。このような双方の問題を、本発明に係るフード100では、中継金属体200に円弧部235を設けることで解決している。
【0049】
さて、中継金属体200全体を金属製格子構造体300に挿入した上で、中継金属体200の斜板220を、金属製格子構造体300の正面部350と背面部360に当接させ、さらに、中継金属体200の円弧板230を、金属製格子構造体300の右側面部370と左側面部380に当接させる。
【0050】
さらに、揺動防止部材400の2つの吸着ヘッド部410内蔵の円柱状磁石部材415で、中継金属体200の2つの斜板220を吸着することで、中継金属体200と金属製格子構造体300との固定を強化する。
【0051】
以上のようにして構成される本発明の実施形態に係るフード100を
図12に示す。また、
図13は本発明の実施形態に係るフード100の利用例を示す図である。アスファルトスプレイヤ1から圧送され、ノズル10から噴射されるアスファルト乳剤は、主として金属製格子構造体300で構成されるフード100によりその飛散が防止される。また、金属製格子構造体300は、平織メッシュ金網320などの金属製格子が用いられているため、稠密な金属が用いられるフードに比べて軽量化を図ることができる。これにより、作業者にとっては、アスファルト乳剤の散布作業における負担が軽減する。また、本発明に係るフード100は、中継金属体200、金属製格子構造体300、揺動防止部材400などの主要構成がいずれも金属製であり、耐久性にも優れている。さらに、本発明に係るフード100を構成する上では、汎用部品も用いることでき、安価に製造できる、というメリットも有している。また、本発明に係るフード100は、揺動防止部材400によって、中継金属体200と金属製格子構造体300との固定が強化されており、金属製格子構造体300が揺動せず、アスファルト乳剤の散布作業がしやすい。
【0052】
以上、本発明に係るフード100は、ノズル10から噴射されるアスファルト乳剤が通過する開口部250を有する中継金属体200と、上面開口部330及び下面開口部340以外に平織メッシュ金網(金属製格子)320が配されると共に、中継金属体200に対して荷重することで中継金属体200に支えられる金属製格子構造体300と、からものであるので、このような本発明に係るフード100によれば、金属製格子構造体300によって効率的にアスファルト乳剤を捕捉することで、アスファルト乳剤の飛散を防止できると共に、簡単に破損することがなく、重量の増加も抑制され、作業者の負担が軽減することが可能となる。
【課題】金属製格子構造体によって効率的にアスファルト乳剤を捕捉することで、アスファルト乳剤の飛散を防止できると共に、簡単に破損することがなく、重量の増加も抑制され、作業者の負担が軽減することが可能となるフードを提供する。
【解決手段】本発明のフード100は、アスファルト乳剤を噴射するノズルの周囲を覆うアスファルトスプレイヤ用のフードであって、前記アスファルトスプレイヤの金属管に螺合する管外螺刻部と、前記ノズルに螺合する管内螺刻部と、前記管内螺刻部に螺合した前記ノズルから噴射されるアスファルト乳剤が通過する開口部を有する中継金属体200と、上面開口部及び下面開口部以外に金属製格子320が配されると共に、前記中継金属体200に対して荷重することで前記中継金属体200に支えられる金属製格子構造体300と、からなることを特徴とする。