特許第6381102号(P6381102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381102
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】汚染土壌の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/02 20060101AFI20180820BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20180820BHJP
   G21F 9/10 20060101ALI20180820BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B09B3/00 304K
   G21F9/10 A
   G21F9/10 G
   G21F9/28 521A
   G21F9/28 525A
   G21F9/28 ZZAB
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-258409(P2013-258409)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-112580(P2015-112580A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2015年9月18日
【審判番号】不服2017-16358(P2017-16358/J1)
【審判請求日】2017年11月2日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【合議体】
【審判長】 豊永 茂弘
【審判官】 後藤 政博
【審判官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−103206(JP,A)
【文献】 特開2003−61610(JP,A)
【文献】 特開平11−197495(JP,A)
【文献】 特開2006−326434(JP,A)
【文献】 特開2013−124898(JP,A)
【文献】 特開2006−51440(JP,A)
【文献】 特開2002−326081(JP,A)
【文献】 特開2013−88241(JP,A)
【文献】 特開2013−224918(JP,A)
【文献】 特開2014−134403(JP,A)
【文献】 特開2012−110803(JP,A)
【文献】 特開2012−30198(JP,A)
【文献】 特開2012−24702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00 - 5/00
B09C 1/00 - 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有隔膜電気分解機構の陽極側から電解酸性水を供給し、前記有隔膜電気分解機構の陰極側から電解アルカリ性水を供給すると共に、放射性セシウムの汚染土壌を最初に前記電解酸性水で処理した後、前記電解アルカリ性水で処理するようにし、放射性セシウムの汚染土壌を酸・アルカリ処理することにより、放射性セシウムが固着した土壌の表層の粒子の粘土・シルトが処理水中に壊離することとなり、この粒子の粘土・シルトを土壌から分離するようにしたことを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重金属等や放射性セシウムなどの有害物質の汚染土壌の浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表面改質による放射能汚染土壌の除染・減容化方法及び装置に関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、放射能汚染土壌の除染、減容化方法としては、水洗法、粒度選別法、浮遊選鉱法、化学処理法、生物処理法、或いは、これらの組み合わせが提案されているが、除染効果や顕在性の面から水洗法と粒度選別法の組み合わせが有望視されている。
水洗法は、基本的に比較的粗大な土壌の粒子に付着した放射性セシウムを水中に分離(剥離、洗浄、溶解)して回収し、凝集沈殿法で放射性セシウムを濃縮したケーキにして減容化する方式である。
また、水洗で容易に落ちない土壌物質に付着した放射性セシウムの剥離、洗浄を促進するために、特殊な構造の土壌洗浄装置(内筒と外筒を逆回転させて土壌粒子表面に付着した汚染物質を水中に剥離、洗浄する装置)や各種界面活性剤が提案されている。
しかし、これらの方法では、微細な粘度質の土壌に強固に結合(吸着)した放射性セシウムを選択的に除染、減容化できない欠点があった。微細な粘土質の放射性セシウムの除染、減容化には、浮遊選鉱法による汚染微細粘土質の分離が適していると考えられるが、放射性セシウムが結合(吸着)した微細粘土質の分離、回収に最適な浮遊選鉱法は、未だ、開発されていない。
一方、化学処理法は、処理コストが高く、多量の薬剤使用による二次汚染等の問題があり、生物処理法も処理時間が長くかかり、有機体と結合した放射性セシウムのみしか除染できず、除染率が低い等の欠点がある。
この従来提案が解決しようとする課題は、微細な粘度質の土壌に強固に結合(吸着)した放射性セシウムを選択的に除染することにある。
この従来提案に係る放射能汚染土壌の除染・減容化方法は、放射能汚染土壌を洗浄して粗粒土壌に付着している放射性セシウムを洗浄水の中に分離すると共に当該洗浄水及び粗粒土壌を回収し、スラリー状の細粒土壌及び微細な粘土質土壌を高速剪断ミキサーに導入して浮選性を向上させた後、細粒土壌を回収すると共に微細な粘土質土壌に結合している放射性セシウムを浮選機で分離回収し、前記洗浄水を凝集沈殿槽に導入して放射性セシウムを含んだ沈殿物と処理水に分離し、前記沈殿物と浮選機で回収した放射性セシウムが結合している粘土質スラリーとを脱水して一次保管容器に保管する、というものである。
しかし、土壌に結合している放射性セシウム(汚染物質)を清浄土壌から有効に分離できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−221819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、土壌から汚染物質を従来よりも有効に分離できる汚染土壌の浄化方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の汚染土壌の浄化方法は、有隔膜電気分解機構の陽極側から電解酸性水を供給し、前記有隔膜電気分解機構の陰極側から電解アルカリ性水を供給すると共に、有害物質の汚染土壌を前記電解酸性水で処理した後、前記電解アルカリ性水で処理するようにしたことを特徴とする。
前記有害物質として、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、水銀、アルキル水銀、セレン、フッ素、ホウ素、シアンなど土壌汚染対策法にいう重金属等や、原発事故で降下したセシウム134、セシウム137などの放射性セシウムなどを例示することが出来る。
前記土壌は、濾過砂(例えば、シャモット)、ゼオライトなどのアミノケイ酸塩なども包含するものである。また、重金属等の汚染土壌水(泥水、下水)、放射性セシウム等の有害物質が降下した山の土が流入したダム水、原発事故のクーラント水(トリチウムや放射性セシウムなどの放射性物質で汚染されている)が漏れ滲出した汚染土壌(水)やその近辺の海水なども含むものである。
【0006】
前記電解酸性水を供給するための電解質としてNaCl ,HCl,KCl, HNO3,H2O2などを例示することができ、電解アルカリ性水を供給するための電解質としてNaCl ,NaOHなどを例示することができる。有隔膜電気分解機構の陽極側では水素イオンが発生して酸性(水素イオン濃度がpH3以下になることが好ましい)となり、陰極側では水酸化物イオンが発生してアルカリ性(水素イオン濃度がpH12以上になることが好ましい)となる。
【0007】
この発明では、有害物質の汚染土壌を前記電解酸性水で処理するようにしたので、土壌中の酸化物(酸化鉄、酸化カルシウム、シリカなど)が水中に溶出することによって、土壌の表層を壊離していくこととなる。
また、その後電解アルカリ性水で処理するようにしたので、土壌の酸化物(酸化鉄、酸化カルシウム、アルミナ、シリカなど)が水中に溶出することによって、土壌の表層を壊離していくこととなる。
【0008】
そして、重金属や放射性物質などの有害物質は土壌の表層近傍に吸着しているので、この表層を壊離された土壌(内側部分)を清浄化することが出来る。
さらに、有隔膜電気分解機構の陽極側から電解酸性水を供給し、前記有隔膜電気分解機構の陰極側から電解アルカリ性水を供給するようにしたので、酸性の薬剤(塩酸など)や塩基性の薬剤(水酸化ナトリウムなど)を多量に消費することがない。
【0009】
その上、電気分解機構で電解水中に生成する活性酸素や・OHラジカルの作用により、土壌に対して強力な分解作用を及ぼすことが出来る。また、有隔膜電気分解機構の陽極側では塩化物イオンの共存下で塩素(Cl2,HOCl)が発生することとなり、この塩素により土壌中の有機物が分解されて減容化されることとなる。
【0010】
そして、前記有害物質の汚染土壌(放射性物質による汚染土壌など)を最初に電解酸性水で処理するようにすると、有害物質(放射能濃度など)の低減の度合いに顕著な差異が認められる。
【0011】
(2)前記処理水をふるいに掛け、ふるいを抜けた土壌水を酸性にして沈降させる工程を有するようにしてもよい。
このように構成すると、ふるいの上の残った表層を壊離された清浄土壌(内側部分)と、ふるいを抜けた後に酸性にして沈降させた土壌の表層の壊離汚染土壌とに分離することが出来る。そして、ふるいの上の残った表層を壊離された清浄土壌(内側部分)は、元の場所に埋め戻すことが出来る。
前記ふるいとして例えば100〜120μmの目のものを使用することが出来るが、土壌自体の性状や有害物質の汚染度などに応じて適宜のサイズのものを選択するとよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
表層を壊離された土壌(内側部分)を清浄化することが出来るので、土壌から汚染物質を従来よりも有効に分離できる汚染土壌の浄化方法を提供することが出来る。
有害物質の汚染土壌(放射性物質による汚染土壌)を最初に電解酸性水で処理するようにしたので、有害物質(放射能濃度)の低減の度合いに顕著な差異が認められる。
放射性セシウム(有害物質)の汚染土壌を酸・アルカリ処理することにより、土壌の表層(放射性セシウムが固着)の小さな粒子の粘土・シルトが処理水中に壊離することとなり、この小さな粒子の粘土・シルト(放射性セシウムが固着)を土壌から分離することが出来る。
これにより、放射性セシウムが分離されて清浄になった土壌と、放射性セシウムが固着する小さな粒子の粘土(濃縮側)とに分画することができ、清浄化された土壌(除染側)は元の場所に埋め戻すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の汚染土壌の浄化方法の実施形態1を説明するシステム・フロー図。
図2】この発明の汚染土壌の浄化方法の実施形態2を説明するシステム・フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
〔実施形態1〕
放射性セシウムで汚染された田畑の土壌(粒径200μm以下)について実施した。
図1に示すように、この実施形態の汚染土壌の浄化方法は、有隔膜電気分解機構の陽極側から電解酸性水1を供給し、前記有隔膜電気分解機構の陰極側から電解アルカリ性水2を供給するようにしている。前記有隔膜電気分解機構は高分子隔膜3を有し、直流電源装置4で駆動を行う。
陽極側では陽極5と電解酸性水槽6との間を循環するようにし、循環経路の途中から処理槽7へと電解酸性水1を供給するようにしている。また、陰極側では陰極8と電解アルカリ性水槽9との間を循環するようにし、循環経路の途中から処理槽7へと電解アルカリ性水2を供給するようにしている。
【0015】
前記電解酸性水1を供給するための電解質としてNaCl(NaCl水槽10から供給)とHClを使用し、電解アルカリ性水2を供給するための電解質としてNaClとNaOHを使用した。有隔膜電気分解機構の陽極5側では水素イオンが発生して酸性(水素イオン濃度がpH1〜2となるように設定)となり、陰極8側では水酸化物イオンが発生してアルカリ性(水素イオン濃度がpH12〜14となるように設定)となった。
そして、有害物質(原発事故で降下したセシウム134、セシウム137:放射性セシウム)の汚染土壌を前記電解酸性水1で処理した後、前記電解アルカリ性水2で処理するようにしている。具体的には、電解酸性水1による処理→電解アルカリ性水2による処理→電解酸性水1による処理→電解アルカリ性水2による処理工程を複数回交互に行った。この処理槽7内では、撹拌翼11をモータMにより回転駆動した。図中、Pはポンプを示す。
【0016】
また、前記処理水を100μmのメッシュ網(縦スクリーン)のふるい12に掛け、ふるい12を抜けた土壌水を酸性にして沈降させる工程を有するようにした。前記ふるい12としてこの実施形態では100μmの目のものを使用したが、土壌自体の性状や有害物質の汚染度などに応じて適宜のサイズのものを選択するとよい。
【0017】
次に、この実施形態の汚染土壌の浄化方法の使用状態を説明する。
この汚染土壌の浄化方法では、有害物質の汚染土壌を電解酸性水1で処理するようにしたので、土壌中の酸化物(酸化鉄、酸化カルシウム、シリカなど)が水中に溶出することによって、土壌の表層を壊離していくこととなる。
また、その後電解アルカリ性水2で処理するようにしたので、土壌の酸化物(酸化鉄、酸化カルシウム、アルミナ、シリカなど)が水中に溶出することによって、土壌の表層を壊離していくこととなる。
【0018】
そして、放射性セシウム(有害物質)は土壌の表層近傍に吸着しているので、この表層を壊離された土壌(内側部分)を清浄化することができ、土壌から汚染物質を従来よりも有効に分離できるという利点を有する。
さらに、有隔膜電気分解機構の陽極5側から電解酸性水1を供給し、前記有隔膜電気分解機構の陰極8側から電解アルカリ性水2を供給するようにしたので、酸性の薬剤(塩酸など)や塩基性の薬剤(水酸化ナトリウムなど)を多量に消費することがなく経済的である。
【0019】
その上、電気分解機構で電解水中に生成する活性酸素や・OHラジカルの作用により、土壌に対して強力な分解作用を及ぼすことが出来る。また、有隔膜電気分解機構の陽極5側では塩化物イオンの共存下で塩素(Cl2,HOCl)が発生することとなり、この塩素などにより土壌中の有機物(生態系由来のものを多く含有)が分解されて減容化されることとなる。
【0020】
さらに、前記処理水をふるい12に掛け、ふるい12を抜けた土壌水を酸性にして沈降させる工程を有するようにしたので、ふるい12の上の残った、表層を壊離された清浄土壌(内側部分)と、ふるい12を抜けた後に酸性にして沈降させた、土壌の表層の壊離汚染土壌とに分離することが出来る。壊離汚染土壌は濃縮汚泥沈殿槽13に送り、フィルタープレス14で脱水した。
一方、ふるい12の上の残った表層を壊離された清浄土壌(内側部分)は排出して、元の場所に埋め戻す(埋戻土壌15)。
【0021】
以上のように、放射性セシウム(有害物質)の汚染土壌を酸・アルカリ処理することにより、土壌の表層(放射性セシウムが固着)の小さな粒子の粘土・シルトが処理水中に壊離することとなり、この小さな粒子の粘土・シルト(放射性セシウムが固着)を土壌から分離することが出来る。
これにより、放射性セシウムが分離されて清浄になった土壌と、放射性セシウムが固着する小さな粒子の粘土(濃縮側)とに分画することができ、清浄化された土壌(除染側)は元の場所に埋め戻すことが出来る。
【0022】
そして、前記有害物質の汚染土壌(放射性物質による汚染土壌など)を最初に電解酸性水1で処理するようにすると、有害物質(放射能濃度など)の低減の度合いに顕著な差異が認められる。
【0023】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
上記実施形態では処理槽7中の汚染土壌水を撹拌翼11により撹拌するようにしたが、この実施形態では、図2に示すように所定角が傾いた円筒状のロータリー・スクリーン16(外周が100μmのメッシュ網のふるい12)を回転させることにより土壌水を撹拌するようにしている。
実施形態1の撹拌翼は土壌の投入量などによって過度な荷重が掛かると該翼が破損することがあり得るが、この実施形態のものではそのようなおそれが少ない。
【0024】
福島県の原発事故により放射能に汚染された田畑土壌(粒径1〜5mmサイズ)200gを採取した。この土壌(原土)の放射能濃度を測定すると、43,823Bq/kgであった。放射能濃度の計測には、EMFジャパン社製のEMI211型ガンマ線スペクトロメータを使用した。
実施例
【実施例1】
【0025】
(1回目)電解酸性水による処理
RO水2LにNaClを添加し塩濃度1%を調整し、35%塩酸を添加しpH2に調整し、電流12Aで直接電解して電解酸性水を生成した。電解後にpH6.7になったので、35%塩酸を添加しpH2に調整した。
前記電解酸性水400ccを添加し、土壌200gをジュ−サーで10分攪拌した。その後、残りの電解酸性水1.6Lを添加して土壌を沈殿させ、沈殿した土壌を回収した。
(2回目)電解アルカリ性水による処理
RO水2LにNaClを添加し塩濃度1%を調整し、48%苛性ソーダを添加してpH13に調整し、電流12Aで直接電解して電解アルカリ性水を作成した。
1回目処理で回収した土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解アルカリ性水により流水洗浄処理を行った。
(3,4,5回目)電解アルカリ性水による処理
2回目でふるいの上に残った土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解アルカリ性水により流水洗浄処理を行った。
(6回目)電解酸性水による処理
5回目でふるいの上に残った土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解酸性水により流水洗浄処理を行った。
(7回目)電解アルカリ性水による処理
6回目でふるいの上に残った土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解アルカリ性水により流水洗浄処理を行った。
(8回目)電解酸性水による処理
7回目でふるいの上に残った土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解酸性水により流水洗浄処理を行った。
(9回目)電解アルカリ性水による処理
8回目でふるいの上に残った土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解アルカリ性水により流水洗浄処理を行った。
(10回目)電解酸性水による処理
9回目でふるいの上に残った土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解酸性水により流水洗浄処理を行った。
10回目でふるいの上に残った土壌を絶乾して放射能濃度を計測すると、2,331Bq/kgに低減していた。また、全ての洗浄水を合流し、酸性にして土壌を沈殿させ、沈殿した土壌(ふるいを通り抜けた方)の放射能濃度を計測すると、57,611Bq/kgであった。一方、前記洗浄水(うわ水)自体の放射能濃度を計測すると、23Bq/kgであった。
比較例
【実施例2】
【0026】
実施例では、有害物質の汚染土壌(放射能汚染土壌)を最初に電解酸性水で処理したが、この比較例では最初は電解アルカリ性水で処理した。
(1回目)電解アルカリ性水による処理
RO水2LにNaClを添加し塩濃度1%を調整し、48%苛性ソーダを添加してpH13に調整し、電流12Aで直接電解して電解アルカリ性水を作成した。
前記電解アルカリ性水400ccを添加し、土壌200gをジュ−サーで10分攪拌した。その後、残りの電解アルカリ性水1.6Lを添加して土壌を沈殿させ、沈殿した土壌を回収した。
(2,3,4回目)電解アルカリ性水による処理
1回目処理で回収した土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解アルカリ性水により流水洗浄処理を行った。
(5回目)電解酸性水による処理
RO水2LにNaClを添加し塩濃度1%を調整し、35%塩酸を添加しpH2に調整し、電流12Aで直接電解して電解酸性水を生成した。電解後にpH6.7になったので、35%塩酸を添加しpH2に調整した。
4回目でふるいの上に残った土壌を、電解酸性水2Lによる流水洗浄処理を行った。
(6回目)電解アルカリ性水による処理
5回目処理で回収した土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解アルカリ性水により流水洗浄処理を行った。
(7回目)電解酸性水による処理
6回目でふるいの上に残った土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解酸性水により流水洗浄処理を行った。
(8回目)電解アルカリ性水による処理
7回目処理で回収した土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解アルカリ性水により流水洗浄処理を行った。
(9回目)電解酸性水による処理
8回目でふるいの上に残った土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解酸性水により流水洗浄処理を行った。
(10回目)電解アルカリ性水による処理
9回目処理で回収した土壌を、100〜120μmのふるいの上で2Lの電解アルカリ性水により流水洗浄処理を行った。
10回目でふるいの上に残った土壌を絶乾して放射能濃度を計測すると、3,200Bq/kgに低減していた。また、全ての洗浄水を合流し、酸性にして土壌を沈殿させ、沈殿した土壌(ふるいを通り抜けた方)の放射能濃度を計測すると、66,946Bq/kgであった。一方、前記洗浄水(うわ水)自体の放射能濃度を計測すると、21Bq/kgであった。
【0027】
(評価)
これらの結果を対比すると、43,823Bq/kgあった放射能汚染土壌(原土)は、最初に電解酸性水で処理していない比較例ではふるいの上の土壌は3,200Bq/kgまで低減したのに対し、最初に電解酸性水で処理した実施例ではふるいの上の土壌は2,331Bq/kg(比較例の3,200Bq/kgに対してさらに30%弱減)まで低減した。
すなわち、原土の44,000Bq/kg弱をいずれも3,000Bq/kg程度まで低減することができ優れた効果を確認できたが、最初に電解酸性水で処理するか否かで、放射能濃度(有害物質)の低減の度合いに顕著な差異(30%弱程度)が認められた。
〔産業上の利用可能性〕
【産業上の利用可能性】
【0028】
土壌から汚染物質を従来よりも有効に分離できることによって、種々の有害物質の汚染土壌の浄化の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 電解酸性水
2 電解アルカリ性水
5 陽極
8 陰極
12 ふるい
図1
図2