(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
異なる周波数を有する複数の副搬送波を多重化した搬送波である第一搬送波及び第二搬送波であって、第一アンテナが受信した前記第一搬送波と第二アンテナが受信した前記第二搬送波のそれぞれについて、前記第一搬送波及び前記第二搬送波が伝送する信号を構成する複数の単位信号のうち、単一の単位信号から抽出した部分信号を複数の前記副搬送波からなる副搬送波群に分解する搬送波分解部と、
前記搬送波分解部が前記第一搬送波を分解して得られた第一副搬送波群から選択した第一副搬送波と前記搬送波分解部が前記第二搬送波を分解して得られた第二副搬送波群から選択した前記第一副搬送波と同一の周波数を有する第二副搬送波の位相差と、前記第一アンテナ及び前記第二アンテナの配置位置との幾何学的関係に基づいて、前記第一アンテナへの前記第一搬送波の到来角度または前記第二アンテナへの前記第二搬送波の到来角度を算出する到来角度算出部と、
前記搬送波の周波数を中間周波数に変換する中間周波数帯変換部と、
前記中間周波数帯変換部が変換した搬送波から所定の長さの部分信号を3つ以上、時間の経過に沿ってサンプリングする標本化部と、
を備え、
前記搬送波分解部は、前記標本化部が前記第一搬送波からサンプリングした3つ以上の部分信号のそれぞれを各部分信号に対応した第一副搬送波群に、前記第二搬送波からサンプリングした3つ以上の部分信号のそれぞれを各部分信号に対応した第二副搬送波群に分解し、
前記到来角度算出部は、サンプリングした時刻を同じくする前記第一副搬送波群と前記第二副搬送波群の全ての組について、各組における前記第一副搬送波群から選択された前記第一副搬送波と前記第二副搬送波群から選択された前記第一副搬送波と同一の周波数を有する前記第二副搬送波を用いて算出された到来角度算出値を比較して、到来角度算出値の差分が所定の範囲内となる複数の到来角度算出値に基づいて前記到来角度を算出する、
電波到来角度検出装置。
前記同一の周波数を有する前記第一副搬送波及び前記第二副搬送波の組を、複数の周波数について選択し、それぞれの周波数ごとに前記到来角度算出部が算出して得られた到来角度を平滑化する平滑化部、
をさらに備える請求項1に記載の電波到来角度検出装置。
アレイアンテナの備える複数のアンテナ素子で受信する前記搬送波に含まれる副搬送波の振幅及び位相に対する信号処理に基づいて前記搬送波の到来角度を算出する信号処理部、
をさらに備える請求項1から請求項2の何れか1項に記載の電波到来角度検出装置。
前記角度算出実行判定部は、同一の周波数を有する前記第一副搬送波と前記第二副搬送波の位相差または信号レベルの差の大きさが所定の閾値を超えると到来角度の算出を行わないと判定する、
請求項5に記載の電波到来角度検出装置。
前記角度算出実行判定部は、前記第一副搬送波群または前記第二副搬送波群のうち少なくとも一方について、当該副搬送波群に含まれる複数の副搬送波の間で信号レベルを比較し、信号レベルの差の大きさが所定の閾値を超えると到来角度の算出を行わないと判定する、
請求項5または請求項6に記載の電波到来角度検出装置。
異なる周波数を有する複数の副搬送波を多重化した搬送波である第一搬送波及び第二搬送波であって、第一アンテナが受信した前記第一搬送波と第二アンテナが受信した前記第二搬送波のそれぞれについて、前記第一搬送波及び前記第二搬送波が伝送する信号を構成する複数の単位信号のうち、単一の単位信号から抽出した部分信号を複数の前記副搬送波からなる副搬送波群に分解するステップと、
前記第一搬送波を分解して得られた第一副搬送波群から選択した第一副搬送波と前記第二搬送波を分解して得られた第二副搬送波群から選択した前記第一副搬送波と同一の周波数を有する第二副搬送波の位相差と、前記第一アンテナ及び前記第二アンテナの配置位置との幾何学的関係に基づいて、前記第一アンテナへの前記第一搬送波の到来角度または前記第二アンテナへの前記第二搬送波の到来角度を算出するステップと、
前記搬送波の周波数を中間周波数に変換し、その変換した搬送波から所定の長さの部分信号を3つ以上、時間の経過に沿ってサンプリングするステップと、
を有し、
前記副搬送波群に分解するステップでは、前記時間の経過に沿ってサンプリングするステップによって前記第一搬送波からサンプリングした3つ以上の部分信号のそれぞれを各部分信号に対応した第一副搬送波群に分解し、また、前記時間の経過に沿ってサンプリングするステップによって前記第二搬送波からサンプリングした3つ以上の部分信号のそれぞれを各部分信号に対応した第二副搬送波群に分解し、
前記到来角度を算出するステップでは、サンプリングした時刻を同じくする前記第一副搬送波群と前記第二副搬送波群の全ての組について、各組における前記第一副搬送波群から選択された前記第一副搬送波と前記第二副搬送波群から選択された前記第一副搬送波と同一の周波数を有する前記第二副搬送波を用いて算出された到来角度算出値を比較して、到来角度算出値の差分が所定の範囲内となる複数の到来角度算出値に基づいて前記到来角度を算出する、
電波到来角度検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態による車両検出システムを
図1〜
図5を参照して説明する。
図1は、本発明に係る第一実施形態における車両検出システムの概要を示す図である。
図1(a)は、車両検出システム1を上から見た図である。
図1(b)は、車両検出システム1を横から見た図である。車両検出システム1は、道路の有料区間の入口などに設けられている。車両検出システム1は、車線L1を走行する車両A1、A2等に搭載された専用の車載器とOFDM方式による無線通信を行い、有料区間に進入する車両を検出する。
【0023】
図1(a)、
図1(b)に示すように、車両検出システム1は、無線通信機40と、車両検知器30A、車両検知器30Bと、を備えている。車両検知器30A、車両検知器30Bは、車線L1の路側に設けられ、車線L1を走行する車両A1、A2の車体の存在の有無を判別し、車両A1、A2一台分の通過を検出する。例えば、車両検知器30Aには投光器が設けられ、車両検知器30Bには受光センサが設けられている。車両検知器30Bの受光センサは、車線L1に進入した車両Aが、車両検知器30Aの投光器から投光される光を遮ることで、車両Aの通過を検出し、検出信号を後述する路側課金システム50へ送信する。路側課金システム50は、電子決済などによる課金処理を行う。
【0024】
無線通信機40は、有料区間入口付近の道路の上方に設けられ、車線L1上において予め規定された通信可能エリアQ1に進入した車両A1(の車載器)との間で課金処理用の無線通信を行う。無線通信機40は、車両A1との無線通信に用いる地面に対して垂直方向上下となるように配置された少なくとも2つのアンテナ(アンテナ41A、アンテナ41B)を有している。後述するように、アンテナ41A、41Bは、車両A1に搭載される車載器からの電波の到来角度を検出するために用いられる。無線通信機40は、通信可能エリアQ1に進入した車両A1との無線通信により、車両A1の車載器に登録された車両A1に対する課金に必要な各種情報(車載器の識別情報など)を読み取って路側課金システム50へ送信する。無線通信機40は、当該有料区間入口の識別情報(料金所情報)や通信を行った時刻など課金に必要な情報を車両A1に送信し、車両A1の車載器にそれらの情報を登録する。
路側課金システム50は、車両検知器30Bから検出信号を受信すると、例えば、検出信号の受信後所定時間内に、無線通信機40から受信した情報に対応する車両が、課金対象の車両であると判定する。路側課金システム50は、課金対象の車両について課金処理を行う。
【0025】
ここで、
図1において、車線L1に対応して設けられた無線通信機40は、当該車線L1上に規定された通信可能エリアQ1に進入した車両A1との無線通信を行うことが想定されている。しかしながら、車両検出システム1の運用において、周囲の建造物や走行車両、その他の障害物の存在に起因して、想定しない電波の反射が起こり得る。例えば、車両A1の直ぐ後ろを走行する車両A2の車載器が発信した電波が、障害物等における反射を経て、無線通信機40に到来し得る。そうすると、当該無線通信機40は、到来した電波が車両A1から発せられたものと誤認識する。また、路側課金システム50は、無線通信機40が誤認識した電波に含まれる車両A2に搭載された車載器の情報と車両検知器30Bが検出した車両A1とを誤って対応付けるため、後の課金処理に誤りが生じる。
【0026】
そこで、本実施形態における車両検出システム1は、上述のアンテナ41A、アンテナ41Bを通じて車両に搭載された車載器からの電波の到来角度を検出する機能を有するとともに、当該到来角度の検出値に基づいて、課金対象とすべき車両(車両A1)との無線通信が行われているか否かを判断する。具体的には、無線通信機40が、電波到来角度検出装置10と、誤検知防止装置20と、を備え、電波到来角度検出装置10が車載器からの電波の到来角度を算出し、誤検知防止装置20が課金対象とすべき車両と通信しているかどうかを判定する。次に電波到来角度検出装置10について説明を行う。
【0027】
電波到来角度検出装置10は、第一アンテナ(アンテナ41A)が受信した第一搬送波(OFDM方式の搬送波)と第二アンテナ(アンテナ42A)が受信した第二搬送波のそれぞれについて、それらの搬送波が伝送する信号を構成する複数の単位信号(シンボル)のうち、単一の単位信号から抽出した部分信号(マルチキャリアシンボル信号)を周波数ごとに副搬送波群(サブキャリア成分信号群)に分解し、分解して得られた副搬送波群のうち、第一副搬送波群から選択した第一副搬送波(サブキャリアAα)と第二副搬送波群から選択した第一副搬送波(サブキャリアAα)と同一の周波数を有する第二副搬送波(サブキャリアBα)の位相差と、第一アンテナ及び第二アンテナの配置位置との幾何学的関係に基づいて、第一アンテナへの前記第一搬送波の到来角度または第二アンテナへの第二搬送波の到来角度を算出する装置である。特に本実施形態においては、第一搬送波を構成する第一単位信号や第二搬送波を構成する第二単位信号を、その単位信号の先頭に付加された冗長信号(ガードインターバル)を検出することにより抽出する。
【0028】
図2は、本発明に係る第一実施形態における電波到来角度検出装置の機能構成を示す図である。
図2に示すように、電波到来角度検出装置10は、受信部101と、単位信号抽出部102と、搬送波分解部103と、副搬送波選択部104と、位相検出部105と、第一到来角度算出部106と、を備えている。
【0029】
受信部101は、アンテナ41A、アンテナ41Bが受信したOFDM(直交周波数分割多重方式)方式で多重化された搬送波を取得する。OFDMは、異なる周波数を有し互いに直交する複数の副搬送波のそれぞれに送信データを乗せ、それら複数の副搬送波を逆フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)で変調し1つの搬送波を生成する多重化方式である。受信部101は、低雑音増幅器(LNA)や取得した搬送波の受信レベルを補正する自動利得回路(AGC)を備えている。受信部101は、LNAやAGCにより調整された搬送波をデジタル信号(マルチキャリア信号)に変換して、単位信号抽出部102に出力する。具体的には、受信部101は、アンテナ41A、アンテナ41Bによって受信された搬送波のそれぞれをマルチキャリア信号に変換して、単位信号抽出部102に出力する。アンテナ41Aが受信した搬送波のマルチキャリア信号をマルチキャリア信号A、アンテナ41Bが受信した搬送波のマルチキャリア信号をマルチキャリア信号Bとする。
【0030】
単位信号抽出部102は、受信部101から取得したマルチキャリア信号から1シンボル(単位信号)を抽出する機能部である。単位信号抽出部102は、AFC(Automatic frequency control)機能やガードインターバル検出機能を有している。単位信号抽出部102は、まずマルチキャリア信号に自動周波数制御(AFC)を行って、送信側と受信側の周波数の誤差を補正する。次に、単位信号抽出部102は、マルチキャリア信号に含まれる任意の1シンボルを抽出するために、ガードインターバル検出機能によって、シンボルの先頭に付されたガードインターバルを検出する。ガードインターバルとは、マルチパス遅延波によるシンボル間干渉を防ぐためにシンボルの先頭に付加される冗長信号である。OFDMでは、シンボルの後端部分をガードインターバルとして、そのシンボルの先頭にコピーする。単位信号抽出部102は、この性質を利用して、例えば、マルチキャリア信号のある部分と、マルチキャリア信号の1波長分遅れて到着した部分の相関を取ることによってガードインターバルを検出する。単位信号抽出部102は、ガードインターバルを検出すると、ガードインターバルに続く、予め定められた1シンボルの長さに相当する部分の信号を抽出することによってマルチキャリアシンボル信号を抽出する。単位信号抽出部102は、シンボルの抽出を、マルチキャリア信号A、マルチキャリア信号Bのそれぞれについて行い、抽出したマルチキャリアシンボル信号を搬送波分解部103に出力する。マルチキャリア信号Aから抽出したマルチキャリアシンボル信号をマルチキャリアシンボル信号A、マルチキャリア信号Bから抽出したマルチキャリアシンボル信号をマルチキャリアシンボル信号Bとする。また、単位信号抽出部102は、シンボルの始まりのタイミングを位相検出部105に出力する。
ここでマルチキャリア信号から単一シンボルの信号を抽出するのは、シンボルを跨いで複数の位相を含んだ信号を抽出するのを防ぐためである。複数の位相を含むとそれらの位相のずれによって、後の工程で算出する搬送波の到来角度に影響が出る可能性がある。従って、単位信号抽出部102は、1つのシンボル内から信号を抽出する。なお、抽出する信号の長さは、シンボル長さと等しくなくても1シンボル長さ以下であればよい。
【0031】
搬送波分解部103は、取得したマルチキャリアシンボル信号に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行い、サブキャリアの成分信号に分解する。搬送波分解部103は、マルチキャリアシンボル信号Aを各周波数成分に分解したサブキャリア成分信号群Aを副搬送波選択部104に出力する。また、搬送波分解部103は、マルチキャリアシンボル信号Bを各周波数成分に分解したサブキャリア成分信号群Bを副搬送波選択部104に出力する。
ここで、搬送波分解部103がマルチキャリアシンボル信号を周波数成分に分解するのは、マルチキャリアを多重化した搬送波の状態では、従来の電波到来角度算出方法が使用できないからである。現在のDSRC方式であれば、単一の搬送波による通信のため電波到来角度を算出するのも容易であるが、次世代のOFDM方式による通信では、多重化されていない1つのサブキャリアを抽出する必要があり、さらに、位相のずれを含まないように単一のシンボルに収まる範囲のサブキャリアを抽出する必要がある。
【0032】
副搬送波選択部104は、搬送波分解部103から取得したサブキャリア成分信号群について、ある一つの周波数αを有する成分信号を選択する。副搬送波選択部104は、サブキャリア成分信号群Aから周波数αを有する成分信号(サブキャリアAα)を選択し、位相検出部105に出力する。また、副搬送波選択部104は、サブキャリア成分信号群Bから周波数αを有する成分信号(サブキャリアBα)を選択し位相検出部105に出力する。位相検出部105は、単位信号抽出部102から取得したサブキャリアの始まりのタイミングと、副搬送波選択部104から取得したサブキャリアの周波数αに基づいて、サブキャリアAαの位相、サブキャリアBαの位相をそれぞれ検出する。位相検出部105は、サブキャリアAα、サブキャリアBαとそれらの位相の情報を第一到来角度算出部106に出力する。
第一到来角度算出部106は、取得した情報を用いて搬送波(電波)の到来角度を算出する。到来角度の算出方法について
図3を用いて説明を行う。
【0033】
図3は、本発明に係る第一実施形態における電波到来角度算出方法を説明する図である。
図3に示すように、アンテナ41A、41Bは、車載器から放射された電波である搬送波Eを受信する。この際、搬送波Eは各アンテナ41A、41Bに対し、所定の到来角度θで入射する。ここで、到来角度θは、地面と平行な面を基準とした搬送波Eの入射角度である。アンテナ41Aとアンテナ41Bの間隔を間隔d
0とする。
【0034】
そうすると、アンテナ41Aが受信する搬送波Eとアンテナ41Bが受信する到来波Eとの行路差d
1に応じて、各搬送波Eに位相差φが生じる。到来角度θは、行路差d
1と位相差φ1との関係式(φ=(2π/λ)×d
1=(2π/λ)×(d
0×sinθ))に基づいて、下記の式(1)で算出することができる。
θ=sin
−1×((λ×φ)/(2π×d
0)) ・・・・ (1)
【0035】
なお、“λ”は、無線通信機40及び車載器との無線通信に用いる電波の波長である。なお、本実施形態において、無線通信機40及び車載器の間で行われる無線通信には、例えば、5.9GHz程度の周波数の電波が用いられる。この場合、波長λは、概ね5cm程度となる。
【0036】
このように、アンテナ41A、アンテナ41B間の間隔と、搬送波Eの波長λと、到来角度θに応じて定まる位相差φとの幾何学的に関係に基づいて、到来角度θを算出することができる。
第一到来角度算出部106は、アンテナ41A、アンテナ41Bのそれぞれに対応するサブキャリアAα、サブキャリアBαの位相の情報から位相差φを算出する。また、第一到来角度算出部106は、波長λを、サブキャリアAαの周波数から算出する。また、第一到来角度算出部106は、間隔d
0を、電波到来角度検出装置10が備える図示しない記憶部から読み出す。第一到来角度算出部106は、これらの情報を式(1)に代入して、到来角度θを算出する。第一到来角度算出部106は、算出した到来角度θを誤検知防止装置20へ出力する。
【0037】
次に、
図4を用いて誤検知防止装置20について説明する。
図4は、本発明に係る第一実施形態における誤検知防止装置の機能構成を示す図である。
図4が示す通り、誤検知防止装置20は、到来角度情報取得部201と、誤検出判定部202と、判定結果送信部203とを備えている。
到来角度情報取得部201は、第一到来角度算出部106が算出した到来角度θの情報を、電波到来角度検出装置10から取得する。到来角度情報取得部201は、到来角度θの情報を、誤検出判定部202へ出力する。
誤検出判定部202は、到来角度θの大きさが、所定の範囲内の値かどうかによって、アンテナ41A及びアンテナ41Bの通信相手である車両が課金対象かどうかを判定する。具体的には、アンテナ41A及びアンテナ41Bと通信可能エリアQ1に含まれる各位置とを結ぶ直線と、地面に対して平行な面とが交わって出来る角度の範囲を予め算出し、到来角度θがその範囲内であれば、誤検出判定部202は、通信相手の車両は課金対象であると判定し、到来角度θがその範囲外であれば、誤検出判定部202は、通信相手の車両は誤検出した車両であると判定する。誤検出判定部202は、判定結果を判定結果送信部203へ出力する。
判定結果送信部203は、誤検出判定部202による判定結果を、路側課金システム50へ送信する。
【0038】
路側課金システム50では、誤検知防止装置20から判定結果を含んだ情報を取得し、無線通信を行った車両が課金対象であれば、車両検知器30Bが通行を検知した車両に対して課金処理を行う。また、例えば、判定結果が誤検出した車両であることを示していれば、路側課金システム50は、課金対象の車両と無線通信ができるまで、車両との無線通信を行うよう無線通信機40に指示する。
【0039】
図5は、本発明に係る第一実施形態におけるアンテナ配置の他の例を示す図である。
図5には、車線L2を走行する車両A5、車線L3を走行する車両A6が示されている。このように複数の車線がある場合、反射波の影響により車線L3を走行する車両A6を、車線L2を走行していると誤認識する恐れがある。それに対し、アンテナ41C、アンテナ41Dのようにアンテナを水平方向に並べて配置し、アンテナ41Cとアンテナ41Dが受信する搬送波の位相差と、アンテナ41Cとアンテナ41Dの配置位置との幾何学的関係に基づいて算出した、例えばアンテナ41Cが受信する電波の到来角度θ
Tに基づいて、車線L2から発信された搬送波であるか、あるいは車線L3から発信された搬送波であるかを判断することができる。なお、到来角度θ
Tは、地面と車線L2の進行方向とに垂直な面と、搬送波がなす角度である。
さらに、車線L3の上部にアンテナ41E、41F、41Gのように、アンテナ41Gを基準として垂直方向にアンテナ41Fを、水平方向にアンテナ41Eを設ければ、アンテナ41G、アンテナ41Fを用いて、例えばアンテナ41Gが受信する搬送波の到達角度に基づいて車線L3を前後に並んで走行する車両同士の誤認識を防ぐことができる。また、アンテナ41G、アンテナ41Eを用いて、例えばアンテナ41Gが受信する搬送波の到達角度に基づいて車線L2を走行する車両を、車線L3を走行する車両と誤認識することを防ぐことができる。
【0040】
本実施形態によれば、OFDM方式の無線通信において、搬送波から単一のシンボルを抽出して処理対象となるマルチキャリア信号を抽出し、さらに抽出したマルチキャリア信号を高速フーリエ変換して得られたサブキャリア成分信号群から1つを選択して、到来角度θの算出を行う。単一のシンボルからマルチキャリアシンボル信号を抽出するので、シンボルを跨いでマルチキャリア信号を抽出する場合のように、複数シンボル間の位相誤差による到来角度の算出誤差が発生しない。また、1つのサブキャリアを選択することにより、上記の式(1)を用いて到来角度θを算出することができる。つまり、複数のサブキャリアを多重化してなる搬送波に対しても、搬送波の到来角度θの算出が可能になる。また、到来角度θによって、通信相手の車両の存在する位置の範囲を特定することが可能なので、所望の車両と無線通信を行っているかどうかを判定することができる。これにより、車両の取り違いによって、誤った車両に対して課金処理を行うことを防止することができる。
【0041】
なお、上記の受信部101、単位信号抽出部102、搬送波分解部103、副搬送波選択部104、位相検出部105は、アンテナ41Aが受信した電波とアンテナ41Bが受信した電波の両方を処理する構成としなくてもよい。例えば、アンテナ41Aが受信した電波を処理する受信部101A、単位信号抽出部102A、搬送波分解部103A、副搬送波選択部104A、位相検出部105Aと、アンテナ41Bが受信した電波を処理する受信部101B、単位信号抽出部102B、搬送波分解部103B、副搬送波選択部104B、位相検出部105Bとを別々のハードウェアに構成してもよい。以下の実施形態についても同様である。
【0042】
また、アンテナ41A、アンテナ41Bは、それぞれのアンテナで受信する直接波の位相差が1周期以内となるように1波長以下(例えば0.6波長)の間隔で配置されているものとする。また、配置するアンテナは2つでなくてもよく、3つ以上であってもよい。あるいは、複数のアンテナ素子を配列したアレイアンテナでもよい。3つ以上のアンテナがある場合、到来角度の算出に用いる2つのアンテナは隣接して配置されたアンテナを選択する。これは、後述する第三実施形態においても同様である。
【0043】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態による車両検出システムを、
図6を参照して説明する。
図6は、本発明に係る第二実施形態における電波到来角度検出装置の機能構成を示す図である。
図6に示すように、電波到来角度検出装置10は、受信部101と、単位信号抽出部102と、搬送波分解部103と、副搬送波選択部104と、位相検出部105と、第一到来角度算出部106と、平滑化部107と、を備えている。これらの構成のうち、第一実施形態と異なる機能部について説明する。
本実施形態において、副搬送波選択部104は、サブキャリア成分信号群A、サブキャリア成分信号群Bのうち、同じ周波数を有するサブキャリアの組を複数(例えばN個)選択して、それらを位相検出部105へ出力する。サブキャリア成分信号群Aについて選択したサブキャリアをサブキャリアA
1〜A
N、サブキャリア成分信号群Bについて選択したサブキャリアをサブキャリアB
1〜B
Nとする。サブキャリアA
nとサブキャリアB
n(n=1〜N)の周波数は同一であるとする。なお、同一とは、二つの周波数が完全に一致していることを要する意味に限定されず、二つの周波数が予め規定された誤差の許容範囲内に含まれる、との意味を含むものとする。
位相検出部105は、N組のサブキャリア(サブキャリアA
1〜A
N、サブキャリアB
1〜B
N)のそれぞれについて位相を検出し、第一到来角度算出部106へ出力する。第一到来角度算出部106は、N個の同じ周波数を有するサブキャリアの組のそれぞれについて位相差、波長を計算し、式(1)により、周波数ごとに到来角度θ(θ
1〜θ
N)を算出する。位相検出部105は、算出したN個の到来角度θを平滑化部107へ出力する。
【0044】
平滑化部107は、N個の到来角度θ
0〜θ
Nを平滑化した値を算出する。例えば、平滑化部107は、N個の到来角度θ
0〜θ
Nの平均値を計算する。また、例えば、平滑化部107は、N個の到来角度θ
0〜θ
Nのうち最大値と最小値を除いたN−2個の到来角度の平均値を計算する。また、例えば、平滑化部107は、まずN個の到来角度θ
0〜θ
Nの平均値を計算し、その平均値から所定の範囲内にある到来角度だけを選択する。そして、平滑化部107は、選択した到来角度の平均値を計算する。平滑化部107は、これらの方法で平滑化した到来角度θ
xを誤検知防止装置20へ出力する。
【0045】
本実施形態によれば、フェージングなどにより誤差を含んだデータを排除することが可能である。これにより、第一実施形態の効果に加え、より精度の高い電波到来角度を算出することができる。
なお、本実施形態において、副搬送波選択部104が選択するサブキャリアの数は任意である。例えば、FFTによって得られた全てのサブキャリアを選択してもよい。
【0046】
<第三実施形態>
以下、本発明の第三実施形態による車両検出システムを、
図7〜
図9を参照して説明する。
図7は、本発明に係る第三実施形態における電波到来角度検出装置の機能構成を示す図である。
図7に示すように、電波到来角度検出装置10は、受信部101と、搬送波分解部103と、副搬送波選択部104と、位相検出部105と、第二到来角度算出部110と、を備えている。また、第三実施形態の受信部101は、中間周波数帯変換部108と、標本化部109と、を備えている。これらの構成のうち、第一実施形態と異なる機能部について説明する。まず、中間周波数帯変換部108と標本化部109について説明する。
中間周波数帯変換部108は、受信した搬送波を低い周波数(中間周波数)にダウンコンバートする。
標本化部109は、ダウンコンバートした搬送波から所定のデータ長さのマルチキャリア部分信号を少なくとも3つ採取する。
【0047】
図8は、本発明に係る第三実施形態における電波到来角度検出装置の具体的な構成例の一部を示す図である。
中間周波数帯変換部108は、例えば、バンドパスフィルタ111と、局部発信機112と、ミキサ113と、バンドパスフィルタ114と、を含んで構成される。バンドパスフィルタ111は、アンテナ41A及びアンテナ41Bで受信した各々の搬送波に対してノイズ除去を行う。ノイズ除去された搬送波は、局部発信機112とミキサ113とバンドパスフィルタ114からなる周波数変換器によって低い周波数に周波数変換される。ここで低い周波数に変換するのは、A/Dコンバータ115で処理できるようにするためである。なお、バンドパスフィルタ114の代わりにローパスフィルタを用いてもよい。中間周波数帯変換部108は、ダウンコンバートした搬送波を標本化部109に出力する。
標本化部109は、例えば、A/Dコンバータ115を備えている。標本化部109は、A/Dコンバータ115により、ダウンコンバートした搬送波を所定のタイミング(時刻)でサンプリング(標本化)し、サンプリングしたマルチキャリア部分信号を搬送波分解部103に出力する。
【0048】
図9は、本発明に係る第三実施形態におけるサンプリングの方法を説明する図である。
図9は、中間周波数帯変換部108がダウンコンバートした搬送波の時間経過に伴う信号レベル(信号強度)の推移の一例を示したグラフである。
図9に示す搬送波は、シンボルSB1、シンボルSB2、シンボルSB3を含んでいる。ここで、標本化部109が、
図9の搬送波から時間の経過に沿って区間C1、区間C2、区間C3をサンプリングしたとする。区間C1をサンプリングしたマルチキャリア部分信号には、シンボルSB1とシンボルSB2が切り替わる部分の信号が含まれる。すると、区間C1をサンプリングしたマルチキャリア部分信号をFFTして得たサブキャリア成分信号群から選択したサブキャリアを用いて算出した到来角度には、シンボルSB1のサブキャリアとシンボルSB2のサブキャリアの位相のずれに起因する誤差が生じる可能性がある。一方、区間C2、区間C3については単一のシンボルSB2内に含まれるので、区間C2、区間C3からサンプリングしたマルチキャリア部分信号をFFTして得たサブキャリアを用いて算出した到来角度には位相のずれに起因する誤差が生じない。標本化部109は、例えば、3回サンプリングを行う場合、3回のうち2回は単一のシンボルからサンプリングできるように所定のタイミングでサンプリングを行う。具体的には、標本化部109は、サンプリング区間の長さが1シンボルの長さの1/3以下となるようにサンプリングを行う。このようにすれば、3回のうちの2回は必ず単一のシンボル内でサンプリングできることになる。なお、サンプリングする回数は3回に限定されない。3回以上であれば4回でもよい。その場合、サンプリング長は、1シンボルの1/4以下となるようにする。
【0049】
次に、本実施形態における到来角度算出方法について
図9を例に説明する。
アンテナ41Aが受信し、中間周波数帯変換部108がダウンコンバートした搬送波について、標本化部109が所定のタイミング(時刻)で区間C1、区間C2、区間C3をサンプリングし、区間C1に対応するマルチキャリア部分信号AC1、区間C2に対応するマルチキャリア部分信号AC2、区間C3に対応するマルチキャリア部分信号AC3を生成する。標本化部109は、マルチキャリア部分信号AC1、AC2、AC3を搬送波分解部103に出力する。搬送波分解部103は、マルチキャリア部分信号AC1、AC2、AC3に対してそれぞれFFTを行い、サブキャリアに分解(サブキャリア成分信号群AC1、AC2、AC3)する。アンテナ41Bが受信した搬送波についても同様である。標本化部109は、アンテナ41Bが受信し、中間周波数帯変換部108がダウンコンバートした搬送波について、アンテナ41Aに関する搬送波についてサンプリングしたのと同じタイミング(時刻)でサンプリングして得た区間C1、区間C2、区間C3にそれぞれ対応するマルチキャリア部分信号BC1、BC2、BC3を搬送波分解部103に出力する。搬送波分解部103は、マルチキャリア部分信号BC1、BC2、BC3に対してそれぞれFFTを行い、サブキャリア成分信号群(サブキャリア成分信号群BC1、BC2、BC3)に分解する。
【0050】
搬送波分解部103は、サブキャリア成分信号群AC1〜AC3、サブキャリア成分信号群BC1〜BC3を副搬送波選択部104へ出力する。副搬送波選択部104は、区間C1に対応するサブキャリア成分信号群AC1の中から、ある周波数αを有するサブキャリア(サブキャリアAC1α)を選択する。副搬送波選択部104は、区間C1に対応するサブキャリア成分信号群BC1の中から、ある周波数αを有するサブキャリア(サブキャリアBC1α)を選択する。副搬送波選択部104は、それらを1つの組として位相検出部105へ出力する。副搬送波選択部104は、区間C2、C3についてサンプリングし、周波数ごとに分解したサブキャリアについても同様の処理を行う。副搬送波選択部104が選択したアンテナ41Aに対応する区間C2のサブキャリアをサブキャリアAC2α、アンテナ41Bに対応する区間C2のサブキャリアをサブキャリアBC2α、同様に区間C3については、サブキャリアAC3α、サブキャリアBC3αとする。
位相検出部105は、副搬送波選択部104から取得したサブキャリアAC1αなどの位相を検出し、サブキャリアAC1α、AC2α、AC3α、サブキャリアBC1α、BC2α、BC3α、それぞれの位相の情報を、第二到来角度算出部110に出力する。なお、選択するサブキャリアの周波数は、区間C1〜C3で異なっていてもよい。
【0051】
第二到来角度算出部110は、サブキャリアAC1α及びサブキャリアBC1αを用いて、それらの位相差、波長を計算し、式(1)を用いて、区間C1に対する到来角度θ
C1を算出する。同様に、第二到来角度算出部110は、サブキャリアAC2α及びサブキャリアBC2αを用いて、区間C2に対する到来角度θ
C2を算出する。また、第二到来角度算出部110は、サブキャリアAC3α及びサブキャリアBC3αを用いて、区間C3に対する到来角度θ
C3を算出する。次に、第二到来角度算出部110は、到来角度θ
C1、θ
C2、θ
C3を比較する。ここで、サブキャリアAC1α及びサブキャリアBC1αが共に複数のシンボル(例えばシンボルSB1、SB2)を跨いでサンプリングした信号だとすると、サブキャリアAC1α及びサブキャリアBC1αは、シンボルの切り替わりによる位相誤差を含んでいる。従って、サブキャリアAC1α及びサブキャリアBC1αに基づいて計算した到来角度θ
C1は、単一シンボルからサンプリングした信号に基づいて計算した到来角度θ
C2、θ
C3と乖離した値である可能性がある。第二到来角度算出部110は、|θ
C1−θ
C2|、|θ
C2−θ
C3|、|θ
C3−θ
C1|を比較してそれらの値が所定の範囲内になる場合の到来角度の組み合わせを選択する。例えば、|θ
C2−θ
C3|の値が最も小さく所定の範囲内になる場合、第二到来角度算出部110は、θ
C2とθ
C3を選択する。そして、第二到来角度算出部110は、選択したθ
C2とθ
C3に基づいて、最終的な到来角度を算出する。例えば、第二到来角度算出部110は、選択したθ
C2とθ
C3の平均を算出して、その値を搬送波の到来角度として決定する。
【0052】
第一実施形態では、ガードインターバルを目印にして単一シンボル内の部分信号を抽出した。本実施形態では、搬送波から時間の経過に沿ってサンプリングした3つ以上の部分信号(マルチキャリア部分信号)のそれぞれを、それぞれの部分信号に対応した副搬送波群(サブキャリア成分信号群)に分解し、サンプリングした時刻を同じくする第一副搬送波群と第二副搬送波群の全ての組(例えば、サブキャリア成分信号群AC1とBC1の組、サブキャリア成分信号群AC2とBC2の組、サブキャリア成分信号群AC3とBC3の組)について、各組における第一副搬送波群から選択された第一副搬送波(例えばサブキャリアAC1α)と第二副搬送波群から選択された第二副搬送波(例えばサブキャリアBC1α)を用いて式(1)により算出された到来角度算出値を比較して、到来角度算出値の差分(|θ
C2−θ
C3|など)が所定の範囲内となる複数の到来角度算出値(例えばθ
C2、θ
C3)に基づいて到来角度を算出する。
【0053】
本実施形態によれば、第一実施形態における単位信号抽出部102によるシンボルの抽出に代えて、標本化部109が単一のシンボル内で複数のマルチキャリア部分信号をサンプリングする。サンプリング数が3個の場合で説明したように、サンプリングのタイミングによって、シンボルの切り替えを含む信号を1つサンプリングしてしまう場合でも、残りの2つは必ず単一のシンボル内でサンプリングすることができる。また、サンプリングしたそれぞれの信号を用いて式(1)によって算出した到来角度算出値を比較することによって、シンボルの切り替えを含む信号に基づく電波到来角度算出値を除外できると考えられる。結果として、本実施形態によれば、単一のシンボル内でサンプリングした複数の信号のそれぞれを用いて算出した電波到来角度算出値に基づいて、電波到来角度を算出することができる。これにより、第一実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態によれば、第一実施形態のように自動周波数制御や、ガードインターバルの検出機能などを備える必要がなく、より簡単な方法で単一シンボル内からマルチキャリア部分信号をサンプリングすることができる。
なお、本実施形態は、第二実施形態と組み合わせることも可能である。
【0054】
<第四実施形態>
以下、本発明の第四実施形態による車両検出システムを、
図10を参照して説明する。
図10は、本発明に係る第四実施形態における電波到来角度検出装置の機能構成を示す図である。
図10に示すように、電波到来角度検出装置10は、受信部101と、単位信号抽出部102と、搬送波分解部103と、副搬送波選択部104と、位相検出部105と、第一到来角度算出部106と、第三到来角度算出部116と、到来角度特定部117と、を備えている。また、第四実施形態では、搬送波の受信に複数のアンテナ素子を配列してなるアレイアンテナ42を用いる。
【0055】
第三到来角度算出部116は、アレイアンテナ42に設けられた複数のアンテナ素子で受信した搬送波を分解して得られるサブキャリア成分信号群から副搬送波選択部104が選択したサブキャリアの振幅及び位相に対する信号処理に基づいて搬送波の到来角度θを算出する。第三到来角度算出部116は、到来角度θを推定する既知の手法であるビームフォーミング法に基づく信号処理を行う。ビームフォーミング法とは、複数のアンテナ素子が基準線に沿って配列されたアレイアンテナを用いて、アレイアンテナ42のメインローブ(アレイアンテナ42につき最も放射特性の高い範囲角度)を全方向にわたって走査し、当該アレイアンテナ42の出力電力が大きくなる方向を探す方法である。ビームフォーミング法においては、各アンテナ素子で受信した搬送波についてのベクトル演算(振幅値と位相値とを用いた演算)を行う。そのため、第三到来角度算出部116が算出した到来角度θは、第一〜第三実施形態において算出した到来角度θと比較して、高精度となる。なお、第三到来角度算出部116が到来角度の算出に用いる方法は、他にCAPON法、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotation Invariance Techniques)法などより分解能の高い方法であってもよい。
【0056】
到来角度特定部117は、第一到来角度算出部106が算出した到来角度θ
aを第一到来角度算出部106から取得し、第三到来角度算出部116が算出した到来角度θ
bを第三到来角度算出部116から取得する。到来角度特定部117は、到来角度θ
aと到来角度θ
bとに基づいて、搬送波の到来角度θを特定する。例えば、通常時は、精度の高い到来角度θ
bを到来角度θとして特定し、第三到来角度算出部116の到来角度の算出に異常が発生した場合などには、到来角度θ
aを到来角度θとして特定してもよい。
【0057】
なお、本実施形態において、第一到来角度算出部106は、アレイアンテナ42に配列された複数のアンテナ素子のうち、所定の間隔内に設けられた2つのアンテナ素子の組について、それらのアンテナ素子で受信した搬送波を分解して得られるサブキャリアの位相差とそれらのアンテナ素子間の距離とに基づいて式(1)によって到来角度θ
aを算出することができる。また、2つのアンテナ素子の組を複数選択し、それぞれの組について算出した到来角度θ
aの平均値などを算出するようにしてもよい。
なお、第一実施形態と組み合わせた場合を例に説明を行ったが、第二〜第三実施形態と組み合わせることも可能である。
【0058】
本実施形態によれば、より精度の高い電波到来角度の算出が可能である。
【0059】
<第五実施形態>
以下、本発明の第五実施形態による車両検出システムを、
図11〜
図12を参照して説明する。
図11は、本発明に係る第五実施形態における車両検出システムの概要を示す図である。
図11に示すように、本実施形態の車両検出システム1では、アンテナ41A、アンテナ41Bの他に、3本のアンテナ(アンテナ43A〜43C)が設けられている。アンテナ43A〜43Cは、互いに十分な距離を置いて設置されている。
【0060】
図12は、本発明に係る第五実施形態における電波到来角度検出装置の機能構成を示す図である。
図12に示すように、電波到来角度検出装置10は、受信部101と、単位信号抽出部102と、搬送波分解部103と、副搬送波選択部104と、位相検出部105と、第一到来角度算出部106と、平滑化部107と、第四到来角度算出部118と、を備えている。
受信部101は、アンテナ41A、アンテナ41Bに加え、アンテナ43A、アンテナ43B、アンテナ43Cが受信した電波を取得する。
第四到来角度算出部118は、受信部101からアンテナ43A〜43Cが受信した電波を取得する。また、第四到来角度算出部118は、時間を測定する時計を備えている。第四到来角度算出部118は、アンテナ43Aが車両A3から送信された電波を受信すると、その時刻を電波到来角度検出装置10が備える記憶部に記録する。同様に、第四到来角度算出部118は、アンテナ43B、43Cが電波を受信した時刻をそれぞれ記録する。そして、第四到来角度算出部118は、アンテナ43A〜43Cが電波を受信した時刻に基づいて車両A3の位置を算出する。位置の算出には、例えばTOA(Time Of Arrival)方式を用いる。TOA方式とは、電波の発信源から複数のアンテナに届くまでの時間から電波の発信源の位置を算出する方法である。第四到来角度算出部118は、TDOA(Time Difference of Arrival)方式や、RSSI(Received Signal Strength Indicator)方式などにより車両A3の位置を算出してもよい。TDOA方式は、電波が複数のアンテナに届いた時間差から電波の発信源の位置を算出する方式である。また、RSSI方式は、複数のアンテナに届いた電波の強度と、電波の空間減衰の計算値とから発信源の位置を算出する方式である。
【0061】
第四到来角度算出部118は、車両A3の位置情報を算出すると、車両A3とアンテナ41Aを結ぶ直線と地面に対して平行な面とが交わって出来る角度(車両位置角度)を算出する。第四到来角度算出部118は、算出した車両位置角度を平滑化部107へ出力する。
なお、第四到来角度算出部118は、TOA方式、TDOA方式、RSSI方式のうちの2つまたは3つ全ての方式で車両A3の位置情報を算出し、それぞれの方式ごとに車両位置角度を算出してもよい。
【0062】
第一到来角度算出部106は、アンテナ41A、41Bが受信した電波に基づいて、第一実施形態と同様に電波の到来角度を算出し、平滑化部107へ出力する。平滑化部107は、例えば、第一実施形態の方法による到来角度と1つまたは複数の車両位置角度の平均を求め、その値を電波到来角度θとする。平滑化部107は、電波到来角度θを誤検知防止装置20へ出力する。
【0063】
本実施形態によれば、複数の到来角度の算出方式を組み合わせることで、到来角度の算出の精度の向上を図ることができる。
なお、第一実施形態と組み合わせた場合を例に説明を行ったが、第二〜第四実施形態と組み合わせることも可能である。例えば、第四実施形態と組み合わせた場合、ビームフォーミング法による到来角度と、他の方法(第一実施形態、TOA方式、TDOA方式、RSSI方式)によって算出した到来角度が大きく異なり、他の方法によって算出した到来角度が所定の範囲内に収まるような場合は、ビームフォーミング法によって算出した値は何らかの誤りを含んでいると判定して、他の方法に基づいて到来角度を算出してもよい。
【0064】
<第六実施形態>
以下、本発明の第六実施形態による車両検出システムを、
図13〜
図15を参照して説明する。
図13は、本発明に係る第六実施形態における電波到来角度検出装置の機能構成を示す図である。
図13に示すように、電波到来角度検出装置10は、受信部101と、単位信号抽出部102と、搬送波分解部103と、副搬送波選択部104と、位相検出部105と、第一到来角度算出部106と、角度算出実行判定部119と、を備えている。
角度算出実行判定部119は、複数のアンテナで検出された搬送波に含まれるサブキャリアについて、所定のアンテナ間で比較したサブキャリアの位相または振幅の差異の大きさに基づいて、到来角度の算出を行うか否かを判定する。具体的には、角度算出実行判定部119は、同一の周波数を有する第一副搬送波(サブキャリアAα)と第二副搬送波(サブキャリアBα)の位相差または信号レベルの差の大きさが所定の閾値を超えると到来角度の算出を行わないと判定する。また、本実施形態の第一到来角度算出部106は、角度算出実行判定部119が到来角度の算出を行うと判定した場合に、電波の到来方向の算出を行う。
【0065】
図14は、本発明に係る第六実施形態における角度算出実行判定部による角度算出の実行判定を説明する第一の図である。
図14に示すように、アンテナ41Aは、車両A4から発信された搬送波の直接波E1と、反射波F1を受信する。同様にアンテナ41Bは、車両A4から発信された搬送波の直接波E2と、反射波F2を受信する。このように車両A4から発信された搬送波は、様々な経路を通ってアンテナ41A、41Bに到着する。なお、反射波F1、F2は、反射波の一例であって実際には他の様々な経路を辿ってアンテナ41A等に到着する複数の反射波が存在する。反射波F1は、直接波E1と比較して長い経路を辿って到着するため、直接波E1と反射波F1の位相にはずれが生じる。アンテナ41Aは、直接波E1と複数の反射波F1などの合成波を受信する。アンテナ41Bについても同様である。アンテナ41A及びアンテナ41Bが受信する搬送波には、直接波E1と反射波F1が干渉し信号レベルが変動するいわゆるフェージングが生じる。
【0066】
本実施形態では、第一実施形態と同様、アンテナ41A及びアンテナ41Bで受信したそれぞれの搬送波について、単位信号抽出部102がシンボルを抽出し、搬送波分解部103がFFTによりサブキャリア成分信号群に分解する。そして、副搬送波選択部104が、アンテナ41Aに関するサブキャリア成分信号群A及びアンテナ41Bに関するサブキャリア成分信号群Bのそれぞれから同じ周波数のサブキャリアを選択し、位相検出部105がそれぞれのサブキャリアの位相を検出する。そして、角度算出実行判定部119は、副搬送波選択部104が選択したアンテナ41Aに関するサブキャリアAα及びアンテナ41Bに関するサブキャリアBαの信号レベルを比較する。あるいは、角度算出実行判定部119は、位相検出部105が検出したサブキャリアAα及びサブキャリアBαの位相を比較する。比較の結果、信号レベルの差分値が信号レベルについて予め定められた許容範囲に収まらない場合、または、位相の差分値が位相差について予め定められた許容範囲に収まらない場合、または、その両方の条件を満たす場合、角度算出実行判定部119は、これらのサブキャリアAα、サブキャリアBαを用いて到来角度を算出しても、フェージングの影響により正確な到来角度を算出できないと判断し、到来角度の算出を行わないと判定する。また、信号レベルの差分値や位相差が所定の範囲内に収まる場合、角度算出実行判定部119は、到来角度の算出を行うと判定する。
【0067】
図15は、本発明に係る第六実施形態における角度算出実行判定部による角度算出の実行判定を説明する第二の図である。
図15(a)は、角度算出実行判定部119が到来角度の算出を行うと判定する場合のアンテナ41Aに関するサブキャリアAα及びアンテナ41Bに関するサブキャリアBαの信号レベルの一例を示す図である。信号レベル1Sは、アンテナ41Aに関するサブキャリアAαの信号レベルである。信号レベル2Sは、アンテナ41Bに関するサブキャリアBαの信号レベルである。範囲W1は、信号レベルについて予め定められた許容範囲である。
図15(a)の場合、信号レベル1Sと信号レベル2Sの差分値は、許容範囲W1以下なので、角度算出実行判定部119は、到来角度の算出を行うと判定する。
図15(b)は、角度算出実行判定部119が到来角度の算出を行わないと判定する場合のアンテナ41Aに関するサブキャリアAα及びアンテナ41Bに関するサブキャリアBαの信号レベルの一例を示す図である。
図15(b)の場合、信号レベル1Sと信号レベル2Sの差分は、許容範囲W1を超えているので、角度算出実行判定部119は、到来角度の算出を行わないと判定する。
図15は、信号レベルについて判定する場合の図であるが、角度算出実行判定部119は、サブキャリア間の位相差に基づいて到来角度の算出の実行可否を判定しても良いし、信号レベルと位相差の両方に基づいて到来角度の算出の実行可否を判定しても良い。
また、角度算出実行判定部119は、アンテナ41Aとアンテナ41Bそれぞれに関するサブキャリアついて、複数の周波数成分を選択し、それら複数のサブキャリアの信号レベルや位相差の平均値などを算出し、それら平均値などを比較して角度算出の実行可否を判定してもよい。
【0068】
本実施形態によれば、反射波のあるマルチパス環境で、フェージングによる角度検出誤差を低減することができる。なお、本実施形態は、第一〜五実施形態の何れとも組み合わせることが可能である。
【0069】
<第七実施形態>
以下、本発明の第七実施形態による車両検出システムを、
図16を参照して説明する。
第六実施形態では、角度算出実行判定部119は、アンテナ間の信号レベル、位相差に基づいて角度算出の実行可否を判定した。第七実施形態では、角度算出実行判定部119は、同一アンテナのサブキャリア間の信号レベルを比較し、信号レベルの差の大きさが所定の閾値を超えると到来角度の算出を行わないと判定する。
【0070】
図16は、本発明に係る第七実施形態における角度算出実行判定部による角度算出の実行判定を説明する図である。
図16(a)は、角度算出実行判定部119が到来角度の算出を行うと判定する場合のアンテナ41Aに関する複数サブキャリアの信号レベルの一例を示す図である。左から順にサブキャリア1、サブキャリア2、サブキャリア3の信号レベルが示されている。範囲W2は、信号レベルについて予め定められた許容範囲である。
図16(a)の場合、サブキャリア1〜3の信号レベルは、W2の範囲内に収まるので、角度算出実行判定部119は、到来角度の算出を行うと判定する。
図16(b)は、角度算出実行判定部119が到来角度の算出を行わないと判定する場合のアンテナ41Aに関する複数サブキャリアの信号レベルの一例を示す図である。
図16(b)の場合、サブキャリア1とサブキャリア2の信号レベルの差分値、及び、サブキャリア2とサブキャリア3の信号レベルの差分値はW2の範囲を超えているので、角度算出実行判定部119は、到来角度の算出を行わないと判定する。
【0071】
反射波の位相は、周波数によって同じ経路でも大きく変わる。周波数の異なる複数のサブキャリアについて信号レベルを比較し、その差が大きい場合は、フェージングの影響により一つまたは複数の周波数について合成波の振幅が大きく変動している可能性がある。そのような状況では、ある周波数のサブキャリアに注目して到来角度を算出しても、そのサブキャリアに対するフェージングの影響度が分からず、算出した到来角度の精度についても不明である。従って、そのような状況下では、角度算出実行判定部119は、到来角度の算出を行わないと判定する。
本実施形態によれば、反射波のあるマルチパス環境で、フェージングによる角度検出誤差を低減することができる。なお、第七実施形態は、第一〜第六実施形態と組み合わせることができる。
【0072】
なお、上述した電波到来角度検出装置10における各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを電波到来角度検出装置10のコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われるようにしてもよい。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0073】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
また、電波到来角度検出装置10は、1台のコンピュータで構成されていても良いし、通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0074】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。なお、第三到来角度算出部116は、信号処理部の一例であり、第四到来角度算出部118は、位置推定部の一例である。