特許第6381135号(P6381135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381135
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   H01L31/10 A
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-86836(P2015-86836)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-207807(P2016-207807A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年11月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501330503
【氏名又は名称】マイクロシグナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 國寛
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和志
【審査官】 嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−112006(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/046628(WO,A1)
【文献】 特開2006−351787(JP,A)
【文献】 特開平03−203273(JP,A)
【文献】 特開2015−056651(JP,A)
【文献】 特開平05−145055(JP,A)
【文献】 特開2008−117952(JP,A)
【文献】 特開平05−029642(JP,A)
【文献】 特開2004−312039(JP,A)
【文献】 特公昭59−012034(JP,B2)
【文献】 特開平03−136381(JP,A)
【文献】 特開平11−031839(JP,A)
【文献】 国際公開第89/005042(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L31/00−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)半導体基体自体であり、第1の導電型である第1の領域と、
b)一つの受光信号を得るための一つの受光範囲内の前記第1の領域の表面にそれぞれ不純物を拡散することで相互に離間してドット状に形成された、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型である複数の領域であって、それぞれが、前記一つの受光範囲内の前記第1の領域に入射した光により前記第1の領域において発生したキャリアを周囲から収集するための複数の第2の領域と、
c)前記複数の第2の領域の上方に設けられ、それぞれ下方に位置する第2の領域と電気的に接続された複数のコンタクト部と、
d)前記第1の領域に対し前記一つの受光範囲内に存在する複数の第2の領域を並列に接続するように、前記複数のコンタクト部同士を接続する導電体であって、前記受光範囲内において互いに並行に配置された第1の枝及び第2の枝を含む配線部と、
を備え、
前記一つの受光範囲内に配置される前記複数の第2の領域の面積の和は該一つの受光範囲の面積の5%以下であり、
前記配線部は前記複数の第2の領域を前記第1の枝及び前記第2の枝によって接続し、
前記複数の第2の領域に収集された前記キャリアが光電流として外部に取り出されることを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記第2の領域は上面視で4μm□以下のサイズであることを特徴とする光電変換素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電変換素子であって、
前記一つの受光範囲内の全ての前記第2の領域が前記コンタクト部及び/又は前記配線部の直下に配置され、該コンタクト部及び/又は該配線部によって実質的に遮光されていることを特徴とする光電変換素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記第2の領域の周囲の第1の領域に形成される空乏層広がり領域の上に配置される前記配線部は、前記第2の領域の上に配置されるコンタクト部及び配線部よりも線幅が狭いことを特徴とする光電変換素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記第2の領域の周囲の第1の領域に形成される空乏層広がり領域の上に配置される前記配線部は光透過性導電体からなることを特徴とする光電変換素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記第1の領域と前記複数の第2の領域との接合部の接合容量の和が前記受光範囲の全面に第2の領域を形成したと仮定した場合における第1の領域と第2の領域との接合部の接合容量よりも小さいことを特徴とする光電変換素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記複数の第2の領域は1行おき又は1列おきに隣接する第2の領域の間隔の1/2だけその行又は列の延伸方向にずらして配置されてなることを特徴とする光電変換素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記複数の第2の領域は、その各第2の領域の周囲の第1の領域に形成される空乏層広がり領域が隙間無く重なるように配置されることを特徴とする光電変換素子。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記複数の第2の領域は、その各第2の領域の周囲の第1の領域に形成される空乏層広がり領域が重ならないように互いに離して配置され、受光面の中で、各第2の領域の周囲の空乏層広がり領域よりも外側の領域の全体又はその一部に光の入射を遮る遮光部を備えることを特徴とする光電変換素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記コンタクト部及び前記配線部を被覆するように形成された絶縁膜と、
該絶縁膜の上であって前記コンタクト部及び前記配線部の直上に配設された導電体部と、
をさらに備え、
該導電体部に所定の固定電位を与えることにより該導電体部を電気的なシールドとして機能させるようにしたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項11】
請求項10に記載の光電変換素子であって、
前記配線部の直上に絶縁膜を間に挟んで設けられた前記導電体部から該絶縁膜中に延出して前記配線部の側方を囲むように複数の導電性の柱状部を形成し、前記導電体部と共に前記柱状部を電気的なシールドとして機能させるようにしたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
隣接する第2の領域の間隔は40μm以下であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記第1の領域内に分散配置された前記複数の第2の領域の間に、その周囲の第1の領域よりも第1の導電型の不純物濃度が濃い、上面視でドット状又は線状の高濃度領域が形成されてなることを特徴とする光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を受けて電気信号に変換する光電変換素子に関する。ここでいう光電変換素子は、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトダーリントントランジスタ、フォトサイリスタ、フォトトライアックなどを含む。また、この光電変換素子はその形態が素子単体である場合もあるし、他の機能が搭載されたICやLSIの一部である場合もある。
【背景技術】
【0002】
フォトダイオードは一般に、N型半導体領域と、該N型半導体領域中にボロン等の不純物を選択拡散することで形成されたP型半導体領域とを有し、そのP型半導体領域とN型半導体領域とによりPN接合が形成される。フォトダイオードに適宜の強度の光が到達すると、P型半導体領域とN型半導体領域との接合部付近の空乏層、P型半導体領域、及び、N型半導体領域のいたるところで、電子−正孔対が発生する。通常、空乏層中では電界の作用により、電子はN型半導体領域へ、正孔はP型半導体領域へと加速される。また、N型半導体領域中で生じた電子正孔対のうちの電子はN型半導体領域から移動して来た電子とともにN型半導体領域中に残る一方、正孔はN型半導体領域中を空乏層まで拡散し、空乏層に達すると電界により加速されてP型半導体領域に集まる。こうして、P型半導体領域には正孔が、N型半導体領域には電子がそれぞれ収集され、それらは外部に接続された負荷に光電流として流れる。
なお、半導体の導電型が上述したものと逆である場合もあるが、基本的な構成や動作は同じである。
【0003】
一般的なフォトダイオードでは、P型半導体領域とN型半導体領域との接合部全体に光が到達するように、光が入射する受光領域のほぼ全面に選択拡散によるP型半導体領域が形成されている。図15(a)は典型的なフォトダイオードの概略断面図、図15(b)はその上面視平面図である。この例では、基体11そのものがN型半導体領域となっており、その基体11表面の受光領域10とほぼ同じ範囲に、P型半導体領域12が選択拡散により形成されている。基体11に接触するように形成された導電体からなるコンタクト部13がカソード端子(C)であり、P型半導体領域12に接触するように形成された導電体からなるコンタクト部14がアノード端子(A)である。
【0004】
こうしたフォトダイオードにおいて高い受光感度を実現するには、受光領域10が広いことが望ましい。上記理由から、受光領域10を広くした場合には、それに伴ってP型半導体領域12も広くする。ところが、P型半導体領域12の面積を広くすると接合容量も大きくなり、接合容量が大きくなると、フォトダイオードの光電流を電圧に変換するために接続したアンプ等でのノイズが大きくなる。その結果、受光信号のSN比が低下するために、アンプの周波数帯域を狭くするか或いはゲインを小さくする必要がある。
即ち、フォトダイオードにおいて高周波ノイズを低減するためには接合容量を下げる必要がある(特許文献1など参照)ものの、そのために選択拡散によるP型半導体領域の面積を小さくすると、受光感度の低下に繋がるおそれがある。
【0005】
PN接合の接合容量を下げるために、特許文献2に記載の従来のフォトダイオードでは、N型基板表面に複数の島状のP型拡散層を形成し、その島状の拡散層の数だけ電極を設け、その複数の電極を相互に接続した構造が採られている。ここで、島状のP型拡散層の相互の間隔は、少数キャリアが拡散する距離(少数キャリア拡散長)以下に定められている。このような構造のフォトダイオードでは、島状のP型拡散層から水平方向及び垂直方向に実質的に有効に動作する受光範囲が拡がり、複数のP型拡散層の間の部分(拡散層欠落部)においても光入射に対応した光電流が得られるので、島状のP型拡散層の間に同じ拡散層が形成されている場合と比べても、受光感度は殆ど低下しないとされている。また、拡散層欠落部の分だけPN接合の面積が小さくなるので、接合容量を小さくすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−312823号公報(段落[0020])
【特許文献2】特公昭59−12034号公報
【特許文献3】特開2010−102387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の素子の構造では、接合容量の減少の程度はそれほど大きくなく、接合容量が低減されたことによる性能の改善もそれほど見込めない。そのため、受光感度の低下を抑えつつ、PN接合容量をより一段と下げることができる新規の構造の光電変換素子が望まれている。例えば光電スイッチでは外乱光の影響を受けにくくするために変調光が利用されるが、変調周波数を高くした場合には、PN接合容量を下げることによってSN比をできるだけ高くすることが重要になる。そのため、光電スイッチの光検出器等に利用される光電変換素子では、PN接合容量を下げることが特に重要である。
【0008】
また、一般的な構造のフォトダイオードでは、拡散層の厚さや不純物濃度などをコントロールすることで波長感度特性を或る程度制御することができるものの、大きな感度調整は難しい。そのため、例えば、紫外光が多い状況の下で光学測定を行うような場合等、短波長の光の影響を小さくしたいような場合には、通常、不要な波長域の光を遮断する光学フィルタが併用される。しかしながら、そうしたフィルタを用いると目的波長域の光も減衰するため、感度の点では不利である。また、フィルタを併用するとコスト的にも不利である。こうしたことから、その構造自体で短波長の光を遮断することが可能なフォトダイオードやそれ以外の光電変換素子が望まれている。
【0009】
本発明はこうした課題に鑑みて成されたものであり、その主たる目的は、受光感度の低下を抑えつつPN接合等における接合容量を従来よりもさらに小さくすることで、接合容量に依存するノイズを低減し受光信号のSN比を改善することができる光電変換素子を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、実現容易である構造上の工夫によって、その光電変換部で得られる分光感度の中で短波長側の波長域の光を有効に遮断し、それよりも波長が長い波長域の光に対しては高い受光感度を確保することができる光電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係る光電変換素子は、
a)半導体基体自体又は該半導体基体内に形成された他の領域であり、第1の導電型である第1の領域と、
b)一つの受光信号を得るための一つの受光範囲内の前記第1の領域の表面にそれぞれ不純物を拡散することで相互に離間してドット状に形成された、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型である複数の領域であって、それぞれが、前記受光範囲に入射した光により前記第1の領域において発生したキャリアを周囲から収集するための複数の第2の領域と、
c)前記複数の第2の領域の上方に設けられ、それぞれ下方に位置する第2の領域と電気的に接続された複数のコンタクト部と、
d)前記第1の領域に対し前記一つの受光範囲内に存在する複数の第2の領域を並列に接続するように、前記複数のコンタクト部同士を接続する導電体である配線部と、
を備えることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る光電変換素子は、例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトダーリントントランジスタ、フォトサイリスタ、フォトトライアックなどを含むものとする。また、本発明に係る光電変換素子は、その形態が素子単体であっても、他の機能が搭載されたICやLSIの一部であってもよい。
【0012】
また本発明に係る光電変換素子では、第1の導電型がN型で第2の導電型がP型であるか、逆に、第1の導電型がP型で第2の導電型がN型であるか、のいずれかである。
【0013】
特許文献2に記載の素子を含め従来の一般的な光電変換素子では、第1の領域のみならず、不純物の拡散によって受光範囲内に形成された第2の領域自体も、光を受けてキャリアを発生する機能を有する。これに対し、本発明に係る光電変換素子では、受光範囲内にドット状に形成された微小である第2の領域は、実質的には光電変換に寄与せず、専らその周囲つまりは第1の領域において光電変換によって生成されたキャリアを収集する作用を果たす。即ち、第1の領域に光が入射してキャリアが生成されると、該キャリアは第2の領域の周りに形成される空乏層ではドリフトによって移動し、またその空乏層よりも外側の第1の領域では拡散によって移動する。ドット状に形成された第2の領域はそれぞれ、その周囲で生成され、上述したように移動して来たキャリアを収集し、それによって、それらキャリアは光電流に反映される。このように、第2の領域は周囲からキャリアを収集できさえすればよいから、その一つ一つの面積はかなり小さくてよく、例えば受光範囲が上面視で30〜40μm□程度以上のサイズである場合に、一つの第2の領域は上面視で4μm□程度以下のサイズ、さらに一層小さい1μm□以下のサイズでもよい。これによって、一つの第2の領域における接合容量はかなり小さくなる。
【0014】
ただし、一つの第2の領域の面積は小さくても、一つの受光範囲当たりの第2の領域の総面積(個々の第2の領域の合計)は第2の領域の数に依存し、その総面積が大きいほど、実質的に光電変換に寄与する領域が狭くなるし、一つの受光範囲における接合容量も大きくなる。
【0015】
そこで、本発明に係る光電変換素子では、一つの目安として、一つの受光範囲内の前記複数の第2の領域の面積の和を該受光範囲の面積の5%程度以下に抑えるようにするとよい。
即ち、本発明に係る光電変換素子の好ましい態様としては、一つの受光範囲内の第1の領域の表面に、上述した程度のサイズの微小な第2の領域を適度な点在密度でドット状に多数配置し、且つ、その多数の第2の領域の面積の和を該受光範囲の面積の5%程度以下に抑えた構成とするとよい、
【0016】
この構成によれば、一つの受光範囲における第1の領域と第2の領域との接合部の接合容量を小さくすることで接合容量に依存するノイズを低減する一方、受光範囲に到達した光によって第1の領域で生成されたキャリアを効率良く収集し、十分な信号強度を得ることができる。それによって、信号のSN比を向上させることができる。
【0017】
また、上述したようなキャリアの移動の態様を考えたとき、拡散によるキャリアの移動の方向は様々であるのに対しドリフトによるキャリアの移動は第2の領域に向かうため、後者のほうがキャリアの収集効率は高い。そこで、受光光量に対応した信号強度をできるだけ大きくするには、第2の領域の周りに形成される空乏層の間隔を狭くすることが望ましく、そのためには、隣接する第2の領域の間隔を広げすぎないようにする必要がある。そこで、それを考慮して、受光面積に対する第2の領域の面積の和の割合のほかに、複数の第2の領域の点在の密度や単位面積当たりの第2の領域の個数を決めるとよい。
【0018】
また上述した特許文献2では、PN接合の接合容量がN型領域内のP型拡散領域の面積に依存するとして論じられているが、第1の領域中に島状に形成された第2の領域と該第1の領域との接合部(典型的にはPN接合)の静電容量は、その第2の領域の面積のみならず、第2の領域の周辺長や空乏層の深さなどの関数となる。ただし、空乏層の深さは第1、第2の領域における不純物濃度やそれら領域間に印加されるバイアス電圧に依存するから、不純物濃度やバイアス電圧が同一であるとの条件の下では、接合容量は、第2の領域の面積と第2の領域の周辺長とに依存するものとみなし得る(特許文献3など参照)。
【0019】
そこで、本発明に係る光電変換素子の一態様として、前記第1の領域と前記複数の第2の領域との接合部の接合容量の和が前記受光範囲の全面に第2の領域を形成したと仮定した場合における第1の領域と第2の領域との接合部の接合容量よりも小さくなるように、前記第2の領域の数、並びに、各第2の領域の面積及び周辺長が定められてなる構成とするとよい。特に、第2の領域の数を多くすると、接合容量における第2の領域一つ当たりの周辺長の影響が大きくなるので注意を要する。
【0020】
この構成によれば、PN接合の接合容量を従来の一般的な光電変換素子の接合容量よりも確実に小さくすることができる。それにより、接合容量に依存するノイズを低減して受光信号のSN比を改善することができる。
【0021】
また、本発明に係る光電変換素子の一態様として、一つの受光範囲内の全ての前記第2の領域が前記コンタクト部及び/又は前記配線部の直下に配置され、該コンタクト部及び/又は該配線部によって実質的に遮光されている構成としてもよい。
【0022】
周知のように、波長の長い光ほど第1の領域内の深い部位まで侵入してキャリアを生成する。一方、波長の短い光は第1の領域内の表面付近でキャリアを生成する。このように表面付近で生成されたキャリアは自己拡散により移動する際に表面まで達すると表面再結合し易く、光電流の損失が大きい。そのため、相対的に長波長の光により生成されたキャリアは第2の領域に到達し易く、相対的に短波長の光により生成されたキャリアは第2の領域に到達しにくい。こうしたことから、第2の領域をコンタクト部や配線部で遮光し、第2の領域中でのキャリアの発生をほぼ無くした上記構成では、比較的長い波長の光に対する受光感度を低下させることなく、短波長の光、具体的には400〜450nm以下の波長の光、に対する受光感度を低くすることができる。
【0023】
なお、一般的な半導体プロセスでは、第2の領域は不純物の拡散によって形成されるため、不純物の打ち込まれた範囲よりも外側に若干拡がる。一方、コンタクト部は第1の領域との短絡を避けるため、接合境界よりも若干内側に形成される。したがって、設計上、第2の領域の直上を被覆するようにコンタクト部や配線部が形成された場合であっても、そのコンタクト部の外縁部よりも第2の領域の外縁部が僅かに外側に位置することになるが、上記態様はこうした状態も包含するものとする。
【0024】
また本発明に係る光電変換素子において、好ましくは、第2の領域の周囲の第1の領域に形成される空乏層広がり領域の上に配置される配線部は、第2の領域の上に配置されるコンタクト部及び配線部よりも線幅が狭い構成とするとよい。又は、第2の領域の周囲の第1の領域に形成される空乏層広がり領域の上に配置される配線部はポリシリコン等の光透過性導電体又は光半透過性導電体からなるものとしてもよい。もちろん、コンタクト部も同様に、光透過性導電体又は光半透過性導電体からなるものとしてもよい。
【0025】
コンタクト部同士を繋ぐ配線部は少なくともその一部が第1の領域の上を通過することは避けられない。それに対し上記いずれかの構成によれば、アルミニウム等の一般的な導電体材料を配線部として用いた場合に比べて、配線部による遮光の度合いが小さい又は殆どないので、得られる光電流を増加させることができる。
【0026】
また基本的には、第2の領域の上面視形状は任意であるものの、同じ面積であれば周辺長が小さいほうが接合容量を小さくするうえで有利である。そのため、第2の領域の上面視形状は長方形よりは正方形に近い矩形状が好ましく、さらには多角形状が好ましく、理想的には円形状とするのがよい。
【0027】
また、上述したようにドット状に複数の第2の領域を配置する場合、十字の格子の交点位置に各第2の領域を配置するようにしてもよいが、1行おき又は1列おきに隣接する第2の領域の間隔の1/2だけ第2の領域の位置をその行又は列の延伸方向にずらした配置としてもよい。
【0028】
この構成によれば、十字の格子の交点位置に第2の領域を配置する場合と比べて、受光領域内の任意の点から直近の第2の領域までの距離が一定以内になるという条件の下で第2の領域を配置したときに、配置すべき第2の領域の数が少なくて済む。その結果、同程度の受光感度を保ちつつ、接合部の接合容量を一層低減することができる。
【0029】
さらにまた、上述したようにドット状に多数の第2の領域を形成する場合に、複数の第2の領域が直線上に位置するようにし、その直線上の複数の第2の領域を直線的な配線部で結線し、その配線部の延伸方向における第2の領域の間隔を該配線部の延伸方向に直行する方向における第2の領域の間隔よりも小さくするとよい。これにより、受光領域内の任意の点から直近の第2の領域までの距離が一定以内になるという条件の下で、配線部の並びの間隔を大きくすることができるので、配線部による遮光の度合いを小さくすることができる。その結果、より多くの光を受光することができ、信号強度を大きくすることができる。
【0030】
また、本発明に係る光電変換素子では、前記第1の領域内に分散配置された前記複数の第2の領域の間の空乏層領域の外側に、その周囲の第1の領域よりも第1の導電型の不純物濃度が濃い、上面視でドット状又は線状の高濃度領域が形成されてなる構成としてもよい。この高濃度領域の拡散は、表面からの拡散のみならず埋め込み型の拡散でもよい。
この構成によれば、第1の領域内において高濃度領域の位置から第2の領域に向かって不純物濃度勾配が形成され、それによってキャリアの移動を促進するポテンシャル勾配が形成されることになる。その結果、第2の領域へのキャリアの移動効率が向上し、受光感度の向上や動作速度の改善を図ることができる。
【0031】
また本発明に係る光電変換素子では、接合容量の観点からみて、上述したように、一つの第2の領域の面積はコンタクト部との電気的接続が確実に確保できる等の条件を満たしたうえで、できるだけ小さいほうが好ましい。一方、隣接する第2の領域の間隔は、光入射によって第1の領域内で生成されたキャリアがドリフト可能であるドリフト領域の幅以内であって且つ第2の領域に到達する効率が十分に高い(つまりは受光感度の低下が十分に小さい)距離以内であることが望ましい。
【0032】
なお、ドリフト領域の幅は不純物濃度勾配等に依存するものの、本発明者の実験の結果等から推測すると、第1の領域の不純物濃度が約1×1015atoms/cm3で且つ第2の領域の拡散深さが2μm程度である場合に、第2の領域を例えば1辺が1μm以下の上面視矩形状とし、隣接する第2の領域の間隔を40μm程度以下、より好ましくは30μm程度以下とするとよい。
【0033】
ただし、空乏層よりも外側の第1の領域におけるキャリアの拡散による移動速度を空乏層におけるキャリアのドリフトによる移動速度並みに上げることは難しいから、特に高速性を重視する場合には、第2の領域の周囲に形成される空乏層広がり領域の隙間がないように第2の領域を配置することが好ましい。それによって、入射光に応じて生成されたキャリアのほぼ全てがドリフトによって第2の領域に到達するので、応答を高速化することができる。また、キャリアの収集効率も高くなる。もちろん、その場合でも、受光範囲全体の接合容量を低減するには、第2の領域の間隔をできるだけ広くすることが望ましい。そこで、本発明に係る光電変換素子の一態様として、空乏層広がり領域の隙間がないように且つ空乏層広がり領域の重なりができるだけ小さくなるように第2の領域を配置するために、複数の第2の領域が上面視でハニカム形状の交点の位置に配置されるようにするとよい。
【0034】
また、応答の高速化と受光範囲の大面積化とを両立させるには、複数の第2の領域は、その各第2の領域の周囲の第1の領域に形成される空乏層広がり領域が重ならないように互いに離して配置され、受光面の中で、各第2の領域の周囲の空乏層広がり領域よりも外側の領域の全体又はその一部に光の入射を遮る遮光部を備える構成とするとよい。
この構成によれば、受光面の面積を広くした場合でも、入射光に応じたキャリアのほぼ全てが各第2の領域の周囲の空乏量広がり領域で生成されるので、キャリアは迅速に第2の領域に到達し高速応答が実現できる。また、受光面の面積を広くした場合でも第2の領域の総数を抑えることができるので、接合容量も抑えることができる。一方、受光面の面積が大きいことで、広い範囲に到達する入射光を効率良く受けることができるし、また広い範囲内の様々な位置に到達する入射光を確実に受けることができ、入射光の光軸調整の許容度を広げることができる。
【0035】
また、第2の領域をドット状に形成する場合には、第2の領域同士を接続する配線部が受光領域内に配設されることが避けられないが、配線部に電磁ノイズが飛び込むと受光信号のノイズレベルを増加させる大きな要因となる。
【0036】
そこで、本発明に係る光電変換素子において、好ましくは、
前記コンタクト部及び前記配線部を被覆するように形成された絶縁膜と、
該絶縁膜の上であって前記コンタクト部及び前記配線部の直上に配設された導電体部と、をさらに備え、
該導電体部に所定の固定電位を与えることにより該導電体部を電気的なシールドとして機能させるようにした構成とするとよい。
【0037】
この構成によれば、導電体部は、外来ノイズが下層の配線部に飛び込むのを防止する電磁遮蔽効果を有するので、受光信号への外来ノイズの影響を軽減することができる。
【0038】
本発明に係る光電変換素子において、より好ましくは、
前記配線部の直上に絶縁膜を間に挟んで設けられた前記導電体部から該絶縁膜中に延出して前記配線部の側方を囲むように複数の導電性の柱状部を形成し、前記導電体部と共に前記柱状部を電気的なシールドとして機能させるようにした構成とするとよい。
【0039】
この構成によれば、導電体部が電磁遮蔽効果を有するのみならず、配線部の側方に配置された複数の柱状部も電磁遮蔽効果を有するので、斜め方向から配線部に飛び込もうとするノイズも遮蔽することができ、電磁遮蔽性が一層向上する。
また、それぞれ絶縁膜を間に挟んで前記配線部の少なくとも一部の直上と直下とに導電体部を設け、その上側の導電体部と下側の導電体部とを接続するビアを前記柱状部とする構成としてもよい。
【0040】
ところで、用途が決められている光電変換素子では、使用される光の波長帯域が限られるものがある。具体的には、光電スイッチでは、通常、830〜850nmと620〜660nmの波長帯域の光が併用されるし、ファイバ方式の光電スイッチでは、620〜660nmの波長帯域の光が単独で使用される。こうした用途に対応した光電変換素子では、その波長帯域以外の光は考慮する必要がなく、受光感度やSN比などの点や動作速度の点などにおいて、その波長帯域の光を受光するのに最適な構造を提供できることが望ましい。そこで、特定の波長帯域の光に対応する光電変換素子において、応答時間が要求仕様を満たしたうえで、接合容量をできるだけ抑えることで受光信号のSN比を改善することを考える。
【0041】
本発明に係る光電変換素子では、上述したように、接合容量は第2の領域の面積と周辺長とに依存するから、一つの第2の領域の面積が同じであれば、受光領域内に配設される第2の領域の数が少ないほど接合容量は小さくなる。一方、第2の領域の数を減らすには隣接する第2の領域の間隔を広げる必要があるが、これを広げるほどキャリアが第2の領域に到達するまでに要する時間が長くなるため、応答時間が遅くなる。特に空乏層内で発生したキャリアは電界の作用によるドリフトで移動するため移動速度が速いのに対し、空乏層の外側の第1の領域中で発生したキャリアは拡散によって移動するので移動速度が遅い。光は波長が長いほど第1の領域の深い位置まで侵入するため、同じ第1の領域内でもキャリアが多く発生する深さが受光する光の波長帯域によって異なり、深い位置でキャリアが発生するほど第2の領域に到達するまでに時間が掛かることになる。
【0042】
そこで、光の波長帯域が長波長側である場合でも必要な応答速度を達成するためには、光の波長帯域が長波長側であるほど隣接する第2の領域の間隔を狭くすることで、キャリアが第2の領域に到達するまでの最長経路を相対的に短くする必要がある。
【0043】
そこで本発明に係る光電変換素子の一態様として、前記複数の第2の領域の間隔が少なくとも、使用される光の波長、及び、要求される応答時間又は応答速度に応じて定められている構成とするとよい。
【0044】
具体的には、要求される応答時間又は応答速度が同一であれば、使用される光の波長が長波長帯域であるほど、第2の領域の間隔は狭くなる。それによって、使用される光の波長が長波長であっても必要な応答速度を確保することが可能となる。もちろん、第2の領域の間隔を狭めると、受光面積が同じであれば、第2の領域の数は多くなり、その分だけ、接合容量は大きくなる。そのため、受光信号のSN比の点では不利であるものの、受光領域全体に拡散層である第2の領域を形成した従来の一般的な光電変換素子に比べれば、高いSN比を実現することができる。
なお、実際には、第2の領域の間隔はシミュレーション又は実験により求めることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る光電変換素子によれば、光電変換のための接合部の接合容量を低減することができ、それによって、接合容量に依存する高周波ノイズを低減し、受光信号のSN比を改善することができる。また本発明に係る光電変換素子によれば、第2の領域を形成するための選択拡散の面積が従来よりも小さくなるので、例えばPN接合面積が小さくなり、結晶欠陥などによる特性劣化や不良の発生率を低減することができる。
【0046】
また、本発明に係る光電変換素子においてコンタクト部や配線部で第2の領域のほぼ全体を被覆した構成によれば、光電変換のための接合部の接合容量を低減するとともに、短波長の光に対する感度を落とした受光感度特性を簡単な構造で実現することができる。それにより、例えば紫外域の波長光がノイズとして多く存在するような状況下で光電変換素子を利用する場合でも、そうしたノイズの影響を低減して目的とする光信号を高いSN比で得ることが可能となる。
【0047】
さらにまた、本発明に係る光電変換素子において第2の領域の間隔を光の波長、及び、要求される応答時間又は応答速度に応じて定めた構成によれば、使用する光の波長帯域に応じて、受光信号の高いSN比と応答時間の短さ(動作の高速性)とのバランスのとれた光電変換素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明に係る光電変換素子の一実施例であるフォトダイオードの概略断面図(a)、上面視平面図(b)、及び等価的な回路図(c)。
図2】本実施例のフォトダイオードにおける一つの型半導体領域付近の拡大断面図。
図3】本実施例のフォトダイオードにおける一つの型半導体領域付近の拡大上面視平面図。
図4】一変形例であるフォトダイオードの上面視平面図。
図5】別の変形例であるフォトダイオードの上面視平面図(a)及び概略断面図(b)。
図6】別の変形例であるフォトダイオードの概略断面図。
図7】別の変形例であるフォトダイオードの上面視平面図。
図8】別の変形例であるフォトダイオードの上面視平面図。
図9】別の変形例であるフォトダイオードの上面視平面図。
図10】シールド用配線部を追加した一変形例の拡大断面図(a)及び概略断面図(b)。
図11】シールド用配線部を追加した別の変形例の概略断面図。
図12】従来の一般的なフォトトランジスタの概略断面図(a)及び本発明に係る光電変換素子の一実施例であるフォトトランジスタの概略断面図(b)。
図13】本発明に係る光電変換素子の一実施例である集積回路上のフォトトランジスタの概略断面図。
図14】本発明に係る光電変換素子の一実施例であるフォトダーリントントランジスタの概略断面図。
図15】従来の一般的なフォトダイオードの概略断面図(a)及び上面視平面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明に係る光電変換素子のいくつかの実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0050】
[第1実施例]
図1(a)は本発明に係る光電変換素子の一実施例であるフォトダイオードの概略断面図、図1(b)は上面視平面図、図1(c)は等価的な回路図である。また、図2は第1実施例のフォトダイオードにおける一つのN型半導体領域付近の拡大断面図、図3は第1実施例のフォトダイオードにおける一つのN型半導体領域付近の拡大上面視平面図である。
【0051】
図1(b)に示すように、本実施例のフォトダイオードでは、シリコン(Si)のP型半導体である基体(本発明における「第1の領域」に相当)11の表面(図1(a)では上面)における一つの受光領域10の範囲内に、上面視で微小な矩形状のN型半導体の拡散層である複数(この例では16個)のN型半導体領域121が互いに離間してドット状に形成されている。このN型半導体領域121は例えばリンなどの不純物の選択拡散により形成されたものである。
【0052】
この実施例では、1個のN型半導体領域121のサイズはd×dであり、隣接するN型半導体領域121の間隔はLである。例えば、N型半導体領域サイズdは1[μm]、N型半導体領域間隔Lは上記サイズdの5〜20倍程度の大きさ、つまりは5〜20[μm]程度である。つまり、受光領域10内の面積でいうと、25〜400[μm2]の面積の受光面毎に、1[μm2]程度の大きさのN型半導体領域121が設けられている。即ち、一つの受光領域10の面積に対して、該受光領域10内にドット状に配置された全てのN型半導体領域121の面積を合計した総面積の割合はかなり小さく、5%以下である。
【0053】
N型半導体領域121は上面視で十字状の格子の交点位置に規則的に配置されており、各N型半導体領域121に接触するように、それぞれ金属又はそれ以外の導電体であるコンタクト部14が形成されている。即ち、図2に示すように、P型半導体である基体11及びN型半導体領域121の表面を覆うようにSiO2等である絶縁膜16が形成され、N型半導体領域121の上の絶縁膜16の一部はエッチング等により除去されてコンタクトホール(又はビアホール)17が形成されている。コンタクトホール17の大きさはN型半導体領域121の大きさよりも一回り小さく(図2図3ではs×sの矩形状)、このコンタクトホール17を通してN型半導体領域121と接触するようにコンタクト部14が形成されている。本実施例では、コンタクト部14はその直下のN型半導体領域121の境界線とほぼ同じ大きさであるか又はそれよりも若干大きい矩形状である。つまり、1個のコンタクト部14のサイズも約d×dである。
【0054】
ただし、不純物拡散によってN型半導体領域121が形成される場合には、製造時に意図した境界線よりも若干外側に拡散領域が広がってしまうことがよくある。図2図3では、このように拡散が若干広がってしまった場合のN型半導体領域を符号121aで示している。このN型半導体領域121aの大きさはD×D(ただしD>d)である。このように、N型半導体領域の境界線の位置には或る程度のばらつきが生じるから、コンタクト部14を同じ大きさに形成した場合であっても、図3(b)に示すように、コンタクト部14がN型半導体領域121全体をカバーする場合もあれば、図3(a)に示すように、コンタクト部14がN型半導体領域121の周縁部の一部をカバーしない場合もある。
【0055】
受光領域10内の全てのN型半導体領域121に対応して設けられたコンタクト部14は、該コンタクト部14と同時に形成される、金属又はそれ以外の導電体である配線部15で互いに接続され、これがフォトダイオードのカソード端子(C)となっている。一方、基体11に接触するように形成された共通のコンタクト部13はフォトダイオードのアノード端子(A)となっている。なお、図3に示すように、本実施例では、配線部15の幅をコンタクト部14の1辺のサイズと同じにしてあるが、これは必須ではない。
こうした構成により、本実施例のフォトダイオードは、回路的には、図1(c)に示すように、N型半導体領域121の個数と同数の微小フォトダイオードを並列に接続した構成であるとみることができる。
【0056】
一つのN型半導体領域121による接合容量は、略扁平矩形状である該N型半導体領域121とそれを囲むP型半導体の基体11との接触面積に依存する。ただし、N型半導体領域121の深さはほぼ一定であるから、周囲温度、バイアス電圧などが一定であるとの条件の下では、接合容量は、そのN型半導体領域121の面積と周辺長との関数として計算することができる。即ち、この場合、接合容量Cは、
C∝A×[N型半導体領域121の面積]+B×[N型半導体領域121の周辺長] …(1)
である。ここで、A、Bは所定の定数である。
この定数A、B値は拡散層の不純物濃度分布や拡散深さなどにより異なるが、例えばP型半導体である基体11の不純物濃度が1×1014atoms/cm3程度の一様な濃度であって拡散深さが2μm程度である場合には、AとBの値の比は0.5〜2程度である。周辺長の値が面積の値よりも大きいようなドット状の拡散である場合には、拡散領域を多く形成するほど周辺長に比例する容量成分の割合が接合容量において多くなる。
【0057】
本実施例のフォトダイオードでは、接合容量は並列接続された多数の微小フォトダイオードの接合容量の総和となる。したがって、一つのN型半導体領域121の1辺のサイズdを小さくし、隣接するN型半導体領域121同士の間隔Lを大きくして受光領域10に包含されるN型半導体領域121の数を少なくすることで、接合容量の総和を従来のフォトダイオードの接合容量よりも小さくすることができる。上述したように、d=1[μm]、L=5〜20[μm]に定めることで、接合容量を従来のフォトダイオードの接合容量よりも小さくする。それによって、本実施例のフォトダイオードの後段に接続したアンプにおける、ゲインの周波数特性上でのピーキングを抑制し、高周波ノイズを低減することができる。
【0058】
一方、本実施例のフォトダイオードでは従来のフォトダイオードと比較して受光領域10の面積は同じでも、N型半導体領域121の面積が減るために、N型半導体領域121の周囲に形成される空乏層領域の面積は減少する。空乏層領域の外側の基体11であるP型半導体領域中でもキャリアは発生するが、その領域での光電変換効率は空乏層の広がり領域に比べると落ちる。また、P型半導体領域上に配設される配線部15によって、ごく一部ではあるものの入射光は遮光されるため、光電変換に寄与し得る光量も少なくなる。そうしたことのため、従来のフォトダイオードと比較すれば受光信号の低下は避けられない。しかしながら、本実施例のフォトダイオードでは、受光信号の低下の度合いに比べて接合容量を抑えることによる高周波ノイズの低減の度合いのほうが大きいため、受光信号のSN比を従来よりも改善することができる。
【0059】
一般的なフォトダイオードでは、N型半導体領域とP型半導体領域とが接触するPN接合面が基体内部に略水平に形成され、基体内に侵入した光がそのPN接合面に達してキャリアを生成する。それに対し、本実施例のフォトダイオードでは、図2を見れば明らかなように、基体内部のPN接合面の上部は殆どコンタクト部14で覆われているために、光は該PN接合面には殆ど達しない。したがって、本実施例のフォトダイオードでは、光電流に寄与するキャリアの大部分は、N型半導体領域121内部やPN接合面ではなく、P型半導体である基体11内で生成されていると推測できる。このことから、本実施例のフォトダイオードでは、受光領域10内にドット状に分散配置された微小なN型半導体領域121はキャリアの生成ではなく、その周囲(空乏層の広がり領域やさらにその外側の領域)で生成されたキャリアを収集する機能に特化しているということができる。
【0060】
ただし、N型半導体領域121から離れるほど、生成されたキャリアがN型半導体領域121にまで到達する確率は下がる。また、生成されたキャリアがN型半導体領域121に到達するにしても、それに要する時間が長すぎて応答速度が許容できない程度まで下がる場合もある。本発明者による実験の結果等から推定すると、或る程度以上の応答の高速性を確保したうえで受光感度の低下を抑えるには、不純物濃度がおおむね1×1014〜1×1015atoms/cm3である場合に、N型半導体領域121の間隔Lを40μm程度以下、好ましくは30μm程度以下とするとよい。
【0061】
また、本実施例のフォトダイオードでは、コンタクト部14によってN型半導体領域121のほぼ全面の直上を覆っているが、これは次のような作用・効果を有する。即ち、コンタクト部14は金属又は透明でない他の導電体であり、光を遮蔽する作用を有する。そのため、受光領域10の中で、N型半導体領域121には殆ど光が入射せず、基体11に対してのみ光が入射する。そのため、受光領域10に光が入射したとき、N型半導体領域121ではキャリアは殆ど生成されず、光電流に反映されるキャリアはその殆どが基体11内部で生成するものである。
【0062】
よく知られているように、光は波長が長いほど基体11内部の深い位置まで侵入してキャリアを生成するから、例えば紫外光(近紫外光)や紫外域に近い可視光などの短波長の光は基体11表面付近の浅い位置でキャリアを生成する。こうしたキャリアも自由拡散によってN型半導体領域121の方向に移動するものの、その多くは、基体11の表面(絶縁膜16との界面)に出てしまい消散する。そのため、短波長の光に対して生成されたキャリアがN型半導体領域121にまで達して光電流に反映される確率は、長波長の光に対して生成されたキャリアがN型半導体領域121にまで達して光電流に反映される確率に比べて格段に低くなる。その結果、本実施例のフォトダイオードでは、短波長の光に対する受光感度は長波長の光に対する受光感度に比べて格段に低くなり、実質的に短波長の光を光学フィルタで除去したのと同様の効果を得ることができる。不純物濃度や直流バイアス電圧などに依存するものの、おおむね400〜450nm以下の短波長の受光感度を大幅に下げることができる。
【0063】
このようして本実施例のフォトダイオードでは、受光領域10の全面にN型半導体領域が形成されていた従来一般的なフォトダイオードに対して、受光感度をそれほど落とすことなく、接合容量に依存するノイズを低減することができる。また、短波長の光の受光感度を低下させることにより、長波長の光に対する受光感度を相対的に上げることができる。それによって、本実施例のフォトダイオードは、ノイズである紫外光が多い環境下で目的とする可視光や近赤外光による信号を高感度で検出したいような場合に、特に有用である。
[第1実施例の変形例]
【0064】
上記第1実施例のフォトダイオードでは、一つの受光領域10内に上面視正方形状のN型半導体領域121を多数設けていたが、各N型半導体領域121の上面視形状はこれに限らず、例えば細長い矩形状としたり円形状や多角形状などとしたりしてもよい。ただし、(1)式から理解できるように、N型半導体領域の面積を小さくしてもその領域の周辺長が長くなる場合には、必ずしも接合容量は小さくならない。したがって、接合容量が小さくなるように、各N型半導体領域の面積と周辺長とのバランスをとることが必要である。また、受光領域10内に配置するN型半導体領域の数、つまりは点在密度も同様である。
【0065】
図4は、第1実施例と同様にN型半導体領域124を略正方形状とし、且つ、N型半導体領域124を配置する位置を一列おきに略L/2だけずらした変形例である。この図4に示したように、N型半導体領域124の配置をずらすと次のような利点がある。
【0066】
即ち、図1(b)に示したようなN型半導体領域121の配置の場合、縦方向及び横方向に隣接する4個のN型半導体領域121のちょうど中間の位置が、それら4個のN型半導体領域121から最も遠い点となり、その点までの距離は約0.7Lである。これに対し、図4に示したようなN型半導体領域124の配置の場合、隣接する3個のN型半導体領域124で囲まれる領域の中の任意の点とN型半導体領域124との距離を0.7L以下にするという条件の下で、列の間隔(横方向の距離)をLより大きくすることができる。それにより、図1(b)に示したような配置とした場合に比べて、より少ないN型半導体領域の数で受光領域10全体からキャリアを収集できるように該受光領域10をカバーすることができる。その結果、接合容量をさらに一層小さくすることができる。また、配線部15の間隔を広げることができるので、配線部15による遮光率を下げ、受光信号を増加させることができる。
【0067】
また第1実施例のフォトダイオードでは、複数のN型半導体領域121間を接続する配線部15が受光領域10内に配置されるため、この配線部15によって遮られる分だけ受光感度は低下することになるが、該配線部15を光透過性を有する導電材料(例えば導電性を付与されたポリシリコン、導電性ポリマーなど)から形成すれば、受光感度の低下を少なくする又はなくすことができる。その場合でも、コンタクト部14は透明でない導電体から形成すれば、上述した短波長の光に対する受光感度低下の効果を得ることができる。
【0068】
また、第1実施例のフォトダイオードでは、コンタクト部14が拡散により形成された微小なN型半導体領域121の直上のほぼ全体を覆っていたが、短波長の受光感度の低下の効果は薄れるものの、コンタクト部14や配線部15の幅を小さくすることで、N型半導体領域121の一部のみを覆うような構造としても構わない。特に、配線部15の線幅を小さくすることで、配線部15による遮光を少なくし、透明又は半透明の導電材料を用いた場合に近い効果を得ることができる。
【0069】
また第1実施例のフォトダイオードでは、受光領域10の大半を占めるP型半導体領域における不純物濃度は略一定であるが、P型半導体領域におけるポテンシャル勾配は不純物濃度勾配に依存するから、該領域内で生成されたキャリアを効率良くN型半導体領域121まで移動させるには、P型半導体領域中に不純物濃度勾配を形成するとよい。そのためには、例えば図5に示すように、隣接するN型半導体領域121の間の空乏層領域よりも外側で、且つ周囲の複数のN型半導体領域121からほぼ等距離の位置に、ドット状に高濃度の型不純物を拡散することで形成した高濃度型拡散領域20を設けるようにするとよい。これによって、この高濃度型拡散領域20付近からN型半導体領域121に向かって不純物濃度勾配が形成され、それに伴い、緩やかなポテンシャル勾配も形成される。それによって、P型である基体11内で生成されたキャリアの移動を促進し、受光感度や動作速度を向上させることができる。
【0070】
高濃度型拡散領域20はドット状ではなく例えば線状など、他の形状でもよい。図7は、上面視で略六角形線状(ハニカム状)の高濃度型拡散領域20を形成し、それぞれの高濃度型拡散領域20の中心付近にN型半導体領域121を設けた構成の例である。この構成では、N型半導体領域121を取り囲むように、その周囲から該N型半導体領域121に向かって不純物濃度勾配が形成される。それによって、各N型半導体領域121においてその周囲全体から該領域121に向かって緩やかなポテンシャル勾配が形成され、より効率良く且つ迅速にキャリアをN型半導体領域121に収集することができる。
【0071】
また、図5図7の例は、キャリアの移動を促すポテンシャル勾配を水平方向(横方向)に形成するものであるが、ポテンシャル勾配を垂直方向(縦方向)に形成することもできる。図6はその一例を示す概略断面図である。この例では、相対的に不純物濃度の高いP型半導体である基体11の上層に同じ導電型(この例ではP型)で相対的に不純物濃度の低い低濃度P型層11aを形成し、その低濃度P型層11aの表面付近にN型半導体領域121を形成している。この構成によれば、基体11から上方に向かって、つまりN型半導体領域121に向かって不純物濃度勾配が形成されるから、逆バイアス電圧を基体11側から印加すると上向きにキャリアの移動を促す緩やかなポテンシャル勾配が形成される。
もちろん、水平方向の不純物濃度勾配と垂直方向の不純物濃度勾配とを併用しても構わない。
【0072】
また、第1実施例及び上記各変形例では、N型半導体領域121の周囲の空乏層領域のみならず、その外側で生成され、拡散によってN型半導体領域121に移動するキャリアも光電流として利用していたが、特に応答の高速性を必要とする用途に対しては、空乏層領域で生成されたキャリアのみを光電流として利用するようにしてもよい。そのためには、隣接するN型半導体領域121の空乏層領域の端部同士ができるだけ重なるように、隣接するN型半導体領域121の間隔を定める。上述したように、接合容量の総和を小さくするには、N型半導体領域121の間隔を広げ、N型半導体領域121の点在密度を下げるほうがよい。そこで、接合容量の総和をできるだけ小さく抑えながら、隣接する空乏層領域の隙間を空けないようにN型半導体領域121を配置するには、例えば図8に示すように、一つのN型半導体領域121に対しその周囲に上面視で所定の大きさの略六角形状の領域を与え、これをハニカム状に配置するようにするとよい。図8において、符号121bで示すのは、N型半導体領域121の周囲に形成される空乏層領域である。このようにN型半導体領域121を配置することで、空乏層領域121bの無駄な重なりをできるだけ避けながら、隣接する空乏層領域121bの間に隙間が生じないようにすることができる。
【0073】
受光領域10内に配置されるN型半導体領域121の総数が同じで上述したように空乏層領域121bに隙間がないようにN型半導体領域121を配置すると、当然のことながら、受光領域10の面積は小さくなる。これに対し、例えば入射光が広い領域に到達する場合には、受光領域10の面積が大きいほうが入射光を効率良く受けることができる。また、逆に入射光が狭い領域にしか到達せず且つその領域が或る範囲内の異なる様々な位置となり得る場合にも、受光領域10の面積が大きいほうが入射光を確実に受けることができる。そこで、受光領域10の大面積化しつつ応答の高速化を図るために、図9に示すような構成としてもよい。
【0074】
このフォトダイオードでは、空乏層領域の隙間が生じないようにN型半導体領域の間隔を狭めて配置する代わりに、それぞれの空乏層領域が重ならないように或る程度離して配置したN型半導体領域121の周囲の空乏層領域121bの外側のほぼ全体に、入射光が基体(P型半導体領域)11に到達するのを遮る遮光部50を設けている。遮光部50は例えば配線部と同様の金属などにより形成すればよい。受光領域10は広いものの、各N型半導体領域121の周囲の空乏層領域121b以外に到達する光は遮光部50によって遮られるため、空乏層領域121bの外側、つまりは拡散によってキャリアが移動する領域ではキャリアは殆ど発生しない。そのため、入射光によって生成されたキャリアはドリフトによって迅速にN型半導体領域121に到達し光電流に反映されることになり、高速応答が達成される。また、受光領域10の面積自体は大きい(ただし、遮光部50の下側の領域は実質的には受光に寄与しない)ため、広い領域に達した入射光を効率良く受けることができるし、また広い受光領域10内のいずれの部分に当たった入射光も検出することができる。受光領域10の面積が小さいとその受光領域に確実に入射光が当たるような精度の高い光軸合わせが必要になる場合があるが、このように受光領域10の面積が大きいと光軸合わせの精度が低くても(場合によっては光軸合わせを行わなくても)確実に入射光を検出することが可能となるという利点がある。
【0075】
また、第1実施例のフォトダイオードでは、従来のフォトダイオードに比べて、受光領域10内に配設される配線部15が必然的に多くなるが、外部から配線部15に飛び込んだノイズは受光信号に現れる。そこで、外部から配線部15に飛び込むノイズを軽減するために、シールド用配線部を別途設けてもよい。図10及び図11はこうしたシールド用配線部を設ける場合の断面構造を示す図である。
【0076】
図10の例では、複数のN型半導体領域121を接続する配線部15は基体11の表面に形成された絶縁膜(第1絶縁膜)16の上に形成されるが、この絶縁膜16及び配線部15を被覆するようにさらに第2絶縁膜18を設け、この第2絶縁膜18の上で且つ配線部15及びコンタクト部14の直上のみにシールド用配線部19を形成する。このシールド用配線部19は受光領域10の外側において、例えば接地電位など固定された電位の供給ラインなどに接続される。これによって、シールド用配線部19がない場合であれば配線部15へ飛び込んでいた筈のノイズが主としてシールド用配線部19に飛び込み、下層の配線部15へのノイズの飛び込みを軽減することができる。
【0077】
図11の例では、基体11の表面に形成された絶縁膜(第1絶縁膜)16の上で且つ後述する配線部15の直下のみに下層シールド用配線部19aが形成され、その下層シールド用配線部19aを被覆するように第2絶縁膜18aが形成されている。そして、複数のN型半導体領域121を接続する配線部15はこの第2絶縁膜18aの上に形成されている。また、第2絶縁膜18a及び配線部15を被覆するように第3絶縁膜18bを設け、この第3絶縁膜18bの上で且つ配線部15及びコンタクト部14の直上のみに上層シールド用配線部19bが形成されている。さらに、下層シールド用配線部19aと上層シールド用配線部19bとは、第2絶縁膜18aと第3絶縁膜18bとを上下方向に貫通し且つ配線部15の延伸方向に沿ってその両側に複数設けられたビア19cにより接続されている。このビア19cは下層シールド用配線部19aと上層シールド用配線部19bとの導通を確保するものであって、配線部15とは導通しない。下層シールド用配線部19a又は上層シールド用配線部19bは受光領域10の外側において、例えば接地電位など固定された電位の供給ラインなどに接続されており、ビア19cを介して接続された下層シールド用配線部19aと上層シールド用配線部19b、及びビア19c自体も同電位である。この構成では、配線部15は下層シールド用配線部19aと上層シールド用配線部19bとでその上下方向にサンドイッチ状に挟まれており、さらにその両側方はビア19cによって囲まれている。これによって、図10に示した構成に比べて、さらに一層、配線部15への外来ノイズの飛び込みを軽減することができる。
【0078】
なお、図11に示した例では、配線部15の直下に下層シールド用配線部19aを設けているが、この下層シールド用配線部19aは無くてもシールドの効果はそれほど変わらない。何故なら、多くの場合、基体11は接地電位になっており、下層シールド用配線部19aがなくても、配線部15の直下の電位は実質的に固定電位となっているからである。下層シールド用配線部19aを設けない場合には、ビア19cを上端のみが上層シールド用配線部19bに接続された柱状部とするか、或いは、ビア19cの下端を基体11に接続し(この場合には、基体11の接触部位に高濃度P領域を形成するとよい)、基体11、ビア19c及び上層シールド用配線部19bを接地電位とするとよい。
【0079】
上記第1実施例は本発明に係る光電変換素子をSiフォトダイオードに適用した例であるが、本発明は光電変換を行う様々な素子に適用することができる。
【0080】
[第2実施例]
図12(a)は従来の一般的なフォトトランジスタの概略断面図、図12(b)は本発明の一実施例であるフォトトランジスタの概略断面図である。この例では、P型半導体である基体21がコレクタ領域、基体21表面に拡散により形成されたN型半導体領域22(又は221)がベース領域、そのN型半導体領域22(又は221)中に拡散により形成されたP型半導体領域23がエミッタ領域であり、コレクタ領域とベース領域との接合部が光電変換領域である。基体21に接触するように形成したコンタクト部24をコレクタ端子(CL)、N型半導体領域22(又は221)に接触するように形成したコンタクト部26(又は261)をベース端子(B)、P型半導体領域23に接触するように形成したコンタクト部25をエミッタ端子(E)としている。
【0081】
図12(b)に示すように、本実施例のフォトトランジスタでは、複数の微小なN型半導体領域221を設け、各N型半導体領域221に接触するように形成したコンタクト部261を配線部27によって相互に接続している。これにより、図1(c)と同様に、等価的には、コレクタ領域とベース領域との複数の接合部が並列に接続される。これによっても、第1実施例のフォトダイオードと同様に、各N型半導体領域221のサイズと隣接間隔とを適宜に定めることによって、受光感度を実質的に落とすことなく、PN接合部の接合容量を従来よりも小さくし、ノイズを低減することができる。また、ベース領域であるN型半導体領域221に接続されたコンタクト部を、該N型半導体領域221全体の直上を覆うように設けることで、短波長の光に対する受光感度を大幅に低下させることができる。
【0082】
また、第2実施例のフォトトランジスタは、基体21自体がコレクタ領域であるが、集積回路の中の一つの素子としてフォトトランジスタを用いる場合には、図13に示すように、基体30上に形成されたP型半導体であるウェル31をコレクタ領域とし、そのウェル31の中に、図12(b)と同様に、複数のN型半導体領域221を設ける構成とすることができる。
【0083】
[第3実施例]
図14は本発明の一実施例であるフォトダーリントントランジスタの概略断面図である。このフォトダーリントントランジスタでは、1段目のトランジスタのエミッタ領域であるP型半導体領域23に接触するように形成されたコンタクト部25と2段目のトランジスタのベース領域であるN型半導体領域41に接触するように形成されたコンタクト部43とは、配線部45で接続されている。このN型半導体領域41中に2段目のトランジスタのエミッタ領域であるP型半導体領域42が形成され、P型半導体領域42に接触するように形成されたコンタクト部44がエミッタ端子となっている。それ以外の基本的な構造は、図12(b)に示したフォトトランジスタと違いはない。
【0084】
また、当然のことながら、本発明に係る光電変換素子はフォトカプラに組み込まれるフォトトランジスタなどにも利用可能である。また、フォトカプラには、交流負荷の制御等のためにトライアック出力或いはサイリスタ出力を有するものがあるが、こうした素子に利用されるフォトトライアックやフォトサイリスタにも本発明を適用できることは明らかである。
【0085】
[第4実施例]
次に、本発明に係る光電変換素子のさらに別の実施例(第4実施例)であるフォトダイオードについて説明する。
光電スイッチ用など特定の用途では、決まった波長の光が利用されることがあり、光電スイッチ用では典型的には830〜850nmの波長帯域と620〜660nmの波長帯域との2種類の波長光が併用される。また、ファイバ方式の光電スイッチではファイバを通過する光の透過特性に合わせて、620〜660nmの波長帯域の1種類の波長光が利用される。このように使用される光の波長帯域が特定される場合には、それに応じた構造のフォトダイオードが提供されることが望ましい。光の波長によって異なるのは、主として侵入深さである。いま、フォトダイオードの構成としては図1に示した第1実施例のフォトダイオードを想定する。
【0086】
受光領域10に到達した光は基体11中に侵入するが、よく知られているように、光の波長が長いほどその侵入深さは大きい。したがって、長波長の光では短波長の光よりも、基体11中の深い位置で生成されるキャリアが多くなる。明らかであるように、図1は実際の寸法を反映した図ではなく、実際のN型半導体領域121は基体11の表面に薄く存在している。このため、基体11中の深い位置で生成されたキャリアは表面付近で生成されたキャリアに比べて、N型半導体領域121まで移動するための経路が長くなる。空乏層の広がり領域内であれば、キャリアは電界によってドリフトするため経路長の差は大きな問題とはならない。一方、空乏層の広がり領域の外側では、キャリアは拡散によって移動するので、経路長の差が時間差に大きく影響する。
【0087】
本発明者の実験による検討によれば、同じ長波長の光ではN型半導体領域121の間隔を広げると応答速度が低下することが明らかである。このため、例えば、応答速度の要求仕様が所定周波数以上であるとするとき、650nmの波長光を用いる場合にはN型半導体領域121の間隔が25μmでも問題ないとしても、830nmの波長光を用いる場合にはN型半導体領域121の間隔は25μmでは広すぎ、20μm程度まで狭くする必要があることがあり得る。この間隔Lを小さくするほど、同じ受光領域10中に配設されるN型半導体領域121の数が増えるため、それだけ接合容量は大きくなり、受光信号のSN比では不利である。したがって、応答速度や応答時間等の要求仕様が与えられたとき、その要求仕様を満たしながらできるだけ高いSN比を確保するには、応答速度の仕様を満たす範囲でできるだけ間隔Lを大きくすることが好ましい。
【0088】
応答速度はP型半導体領域の不純物濃度によっても異なるし、空乏層の広がり領域に加えられる電界(つまりは逆バイアス電圧)などによっても異なる。そこで、実際に使用される光の波長と応答速度の要求仕様とに基づいて、実験的に、若しくは計算機シミュレーションにより、又はその両方により、適切なN型半導体領域121の間隔Lを算出し、それに従ってフォトダイオードを設計すればよい。それによって、応答速度の要求仕様を満たしながら、受光信号のSN比も高いフォトダイオードを得ることができる。なお、これは、フォトダイオードに限らず、上述した他の光電変換素子でも同様である。
【0089】
また、上記実施例はいずれも本発明の単なる一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、又は追加を行っても、本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0090】
10…受光領域
11、21、30…基体
121、121a、122、123、124、221、41…N型半導体領域
13、14、24、25、261、43、44…コンタクト部
15、27、45…配線部
16、18、18a、18b…絶縁膜
17…コンタクトホール
19、19a、19b…シールド用配線部
19c…ビア
20…高濃度型拡散領域
23、42…P型半導体領域
31…ウェル
50…遮光部
図1
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