特許第6381172号(P6381172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381172
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20180820BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20180820BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61K8/34
   A61K8/49
   A61Q19/00
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-42557(P2012-42557)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-177349(P2013-177349A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年2月9日
【審判番号】不服2017-4973(P2017-4973/J1)
【審判請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】石田 実咲
(72)【発明者】
【氏名】神谷 政博
(72)【発明者】
【氏名】古賀 尚賢
【合議体】
【審判長】 阪野 誠司
【審判官】 關 政立
【審判官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−105988(JP,A)
【文献】 特表2011−503192(JP,A)
【文献】 化学工業日報,日本,2011年11月22日,[retrived on 2015−11−06],Retrived from the Internet:<URL:http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2011/11/22−4432.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
Japio−GPG/FX
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.炭素数が12〜16であるイソパラフィンを含み、沸点範囲が185〜215℃であり、2, 2, 4, 6, 6−ペンタメチルヘプタン含有量が10質量%未満であり、ヨウ素価が0.1以下であり、鉄分が3ppm以下であるパラフィン混合物を1〜20質量%、b.炭素数4〜8の二価アルコールを2〜15質量%、c.ポリフェノールを0.0001〜0.2質量%、d.キレート剤を0.1〜2質量%含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、パック、ヘアトニック、ファンデーション等の皮膚用の化粧品や医薬品などの皮膚外用剤に関し、さらに詳しくは、安定性に優れるとともに、べたつき感がなく、さらさらすべすべ感に優れながら、肌の老化防止効果として、肌荒れ改善効果、しわ防止・改善効果、肌にはりを与える効果、キメを整え、しみを防止して透明感を与えて肌を明るくする効果にも優れる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、人の皮膚表面は皮脂膜に覆われていて水分の蒸散が適度に抑制されている。そして、皮膚の水分を適切な範囲に保つことは皮膚の健康の面から見て非常に大切なことであり、水分が不足すると肌荒れ等を生じやすくなる。洗顔や入浴を行うと一時的に皮脂膜が取り除かれてしまい肌の水分が失われやすくなることから、化粧水、乳液、クリーム、美容液等の保湿化粧料を使用して水分を補う必要がある。ここで、一般に化粧料には保湿剤として、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール類やアミノ酸、ピロリドンカルボン酸塩等が配合されている。これらの保湿剤は高湿度下における水分保持力には優れているものの、低湿度下における水分保持力に難があり、保湿効果の持続性が保てないばかりでなく、場合により皮膚の水分を吸収することから逆に肌荒れを促進させることが知られている。
【0003】
そこで近年、低湿度下での水分保持力の高い保湿成分として、キチン、キトサン及びそれらの誘導体、蛋白加水分解物、ヒアルロン酸等の酸性ムコ多糖類、植物抽出物等の様々な高保湿成分が提案されている。しかし、これらの保湿成分を化粧料に配合すると、その高い保湿力から不快なべたつきを有したり、のび、なじみが悪くなるという問題を生じることがあった。そこで、高い保湿効果を保持しながら、べたつきを改善したものとして、例えば、ムコ多糖類とトレハロースとを組み合わせた皮膚外用剤(特許文献1)等が開示されているが、いまだ十分にべたつきを抑えることはできず、また、使用後にさらっとした感触を得ることが困難であった。しかも、肌荒れ防止・改善効果、肌のキメを整える効果等に関しても十分な性能が得られなかった。
【0004】
一方、肌の水分蒸散の抑制には、皮脂膜やセラミドに代表される細胞間脂質が形成する液晶層が強く関与しており、これらが洗浄等により破壊されると肌荒れ等を生じやすくなる。そこで、通常バリア性を効果的に改善するために、皮膚外用剤に対して油分の配合がなされる。しかし、油分を多く配合すると油分によるべたつきを強く感じたりテカリを生じたりするだけでなく、場合により油分が酸化されて刺激や肌荒れの原因となることもある。そこで近年、油分ではなく、高分子によるバリア性の改善を図ることも試みられている(特許文献2、3、4)。しかし、これらの方法のみで十分な効果を得ることは難しいばかりでなく、高配合すると使用感が重くなったりなじみ性が悪くなるとともに、使用後の肌にさらっとした感触を付与することが困難であった。また、肌のキメを整えて透明感のある肌に導くのも困難であった。
【0005】
さらに近年、加齢や光に伴う「肌老化」への関心が特に高まっており、特に植物が生成する「ポリフェノール」は、抗酸化性優れ、酸化による肌老化を抑制することから様々な検討がなされてきた。例えば、特許文献5〜特許文献7においては、ツキミソウ由来、ビルベリーエキス、カキ(柿)抽出物などのポリフェノールを配合することにより、肌老化を防ぐ化粧料や医薬品が提案されている。しかし、一般的に、ポリフェノールは着色やオリなどを生じ易いことから、安定的に配合することが難しく、しかも、製剤において十分な肌老化防止作用を発揮させることができないのが現状であり、かつ進行した肌老化を改善する効果や肌にはりを与えたり、キメが整い透明感のあるきれいな肌に仕上げる効果(整肌効果)を十分発揮するものはでなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−122621号公報
【特許文献2】特開2000−290153号公報
【特許文献3】特開2000−327556号公報
【特許文献4】特開2009−40759号公報
【特許文献5】特開2003−128511号公報
【特許文献6】特表2005−535566号公報
【特許文献7】特表2006−508905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、安定性に優れるとともに、べたつき感がなく、さらさらすべすべ感に優れながら、肌の老化防止効果として、肌荒れ改善効果、しわ防止・改善効果、肌にはりを与える効果、キメを整え、しみを防止して透明感を与えて肌を明るくする効果にも優れる皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決する為に研究を重ねたところ、特定のパラフィン混合物と特定炭素数の二価アルコールに加え、ポリフェノールとキレート剤を特定の比率で組み合わせることによって、上記目的を達成できることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、a.炭素数が12〜16であるイソパラフィンを含み、沸点範囲が185〜215℃であり、2, 2, 4, 6, 6−ペンタメチルヘプタン含有量が10質量%未満であり、ヨウ素価が0.1以下であり、鉄分が3ppm以下であるパラフィン混合物を1〜20質量%、b.炭素数4〜8の二価アルコールを2〜15質量%、c.ポリフェノールを0.0001〜0.2質量%、d.キレート剤を0.1〜2質量%含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚外用剤は、安定性に優れるとともに、べたつき感がなく、さらさらすべすべ感に優れながら、肌の老化防止効果として、肌荒れ改善効果、しわ防止・改善効果、肌にはりを与える効果、キメを整え、しみを防止して透明感を与えて肌を明るくする効果にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の皮膚外用剤は、下記のa成分、b成分、c成分、およびd成分を含有する。以下、a成分、b成分、c成分、およびd成分を順次説明する。
【0012】
〔a成分〕
本発明に用いられるa成分は、炭素数が12〜16であるイソパラフィン(分岐飽和炭化水素)を含むパラフィン(飽和炭化水素)の混合物であり、さらに、炭素数が12〜16の直鎖飽和炭化水素を含むことがある。なお、本発明のパラフィン混合物には、本発明の目的に反しない程度に、炭素数が12〜16の飽和炭化水素以外の炭化水素、例えば環状飽和炭化水素や不飽和炭化水素などが含まれていてもよい。
【0013】
本発明に用いられるa成分のパラフィン混合物は、沸点範囲が185〜215℃であり、好ましくは186〜210℃である。パラフィン混合物の沸点が185℃未満では、引火点が低くなるので、安全性の面で好ましくない。沸点が215℃を超えると、揮発性が低下し、油分が残留し易くなるので、皮膚や毛髪に塗布した際の使用感に劣る。沸点はJIS K2254に準じた蒸留試験によって測定することができる。
【0014】
本発明に用いられるパラフィン混合物は、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン(以下、イソドデカンとも言う。)の含有量が10質量%未満であり、好ましくは5質量%未満である。混合物中のイソドデカン含有量が10質量%以上になると、沸点が低下し引火点が低くなるため安全性の面で好ましくなく、また臭気が強くなり、皮膚および毛髪に対する使用感が低下するので、化粧品等の原料としての使用が制限される。具体的には、本発明に用いられるパラフィン混合物は、引火点がJIS K2265に準じた密閉試験で61〜70℃、好ましくは62〜67℃の範囲であることが安全性や臭気の面で好ましい。例えば、市販品のイソドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン含有量が95質量%以上)は、沸点が177℃、引火点が48℃程度と低く火気の取扱いに注意が必要であり、かつ臭気が強い。一方、引火点が70℃を超えると乾燥性が悪くなり、感触が重くなることがある。
【0015】
a成分の具体的な製品として、日油(株)製「パールリーム3」が挙げられる。「パールリーム3」は、炭素数が12であるイソパラフィンを含むパラフィン混合物であり、沸点範囲が185〜215℃、引火点が64℃、イソドデカン含有量が0.4質量%である。
【0016】
本発明に用いられるパラフィン混合物は、ノルマル体およびイソ体のブテン(共)重合物であり、ナフサのクラッキングにより得られる留分の中のC4留分であるイソブテン、1−ブテンおよび2−ブテン類(cis−2−ブテンおよびtrans−2−ブテン)の混合ガスを公知の方法によって重合することにより得られるものである。この混合ガスにおけるイソブテン、1−ブテンおよび2−ブテン類の組成比は質量比で(イソブテン/1−ブテン/2−ブテン類)=(15〜80/10〜40/10〜60)の範囲であり、好ましくは(15〜70/15〜40/15〜60)、さらに好ましくは(15〜60/15〜40/15〜40)、殊に好ましくは(20〜50/18〜25/18〜40)、特に好ましくは(20〜33/18〜25/18〜25)である。なお、混合ガスは、不活性ガスとしてイソブタンやn−ブタンガスを含んでいても良い。
【0017】
イソブテンを含むC4留分の重合反応は、塩化アルミニウム、酸性イオン交換樹脂、硫酸、弗化ホウ素およびその錯体を触媒として用い、通常、40〜120℃で行う。また、前記触媒に塩基を入れることにより重合反応をコントロールすることも可能である。これらにより得られた重合物の多くは、末端に二重結合が残存しているため、水素化反応させることにより水素化物として安定化させることが望ましい。水素化反応は通常の方法によりなされ、重合物にニッケルやパラジウム等の水素化触媒を用い、固定床及び流動床式の反応装置により水素を高温高圧で接触させ水素添加がなされる。本発明では、ヨウ素価を10以下にすることが好ましく、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.1以下である。
【0018】
さらに、本発明では反応物から未反応ガスおよび炭素数20以上の高沸点成分を除去するとともに、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタンを10質量%未満とするために、一般的な蒸留方法により精製することが望ましい。具体的には、単蒸留法、連続蒸留法、水蒸気蒸留法および薄膜蒸留法等であり、これらを組み合わせることも可能である。なお、蒸留塔の分離能を示す理論段数は、a成分のパラフィン混合物を得るに際しては、10段以上が望ましい。また、パラフィン混合物の沸点範囲や引火点の調整は、蒸留による留去率を適宜設定することによっても行なうことができる。例えば、減圧蒸留を行なう前の仕込み量に対し15質量%以上、好ましくは25質量%以上であり、また40質量%以下が好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
本発明の皮膚外用剤中におけるa成分の含有量は、1〜20質量%であり、好ましくは2〜15質量%、更に好ましくは2〜12質量%である。1質量%未満では、べたつきの改善や使用後のさらっと感の付与が困難であるとともに、肌荒れ改善効果が弱くなり、20質量%を超えると肌荒れ改善効果が弱くなるとともにコスト的に不利である。
【0020】
〔b成分〕
本発明で用いられるb成分は、1分子内に2個の水酸基を有する二価アルコールであり、一般にグリコールと称される。そして、本発明におけるb成分はグリコールの中でも炭素数が4〜8の化合物であり、具体的には、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、イソプレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘプチレングリコール、オクチレングリコール等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。中でも防腐性、使用感等の点から好ましいのはブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、オクチレングリコールであり、特に好ましいのは、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンチレングリコール、ジプロピレングリコールである。
【0021】
本発明の皮膚外用剤中におけるb成分の含有量は、2〜15質量%であり、好ましくは2〜12質量%、更に好ましくは2〜10質量%である。2質量%未満では肌荒れ改善効果が弱くなり、15質量%を超えると、べたつきを有するとともに肌にはりを与える効果が弱くなる。
【0022】
〔c成分〕
本発明で用いられるc成分は、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基)を有するポリフェノール(polyphenol)である。ポリフェノールとは、フラボノール、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニンなど、植物が光合成を行うときにできる物質の総称を表わす。糖分の一部が変化したもので、植物の葉や花、樹皮などに成分として含有されており、その数は5,000 種以上に及ぶ。植物の色素や苦味の成分であり、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きを有することが知られており、人の身体の中に入っても、抗酸化物として有効に働くことが明らかになっている。中でも効果および安定性の問題から、ピーナッツ、クルミ、ペカンナッツ等の薄皮から得られるナッツポリフェノールやカテキン、タンニン、アントシアニン、ルテイン、ロズマリン酸、ブドウのつるや皮などから得られるレスベラトロール、ホソバヒカゲスゲの全草から得られるα−ビニフェリンが好ましい。c成分として、ポリフェノールの中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。なお、本発明においては植物抽出物から精製または合成したポリフェノールを使用することも可能であるが、ポリフェノールを含有する植物エキスをc成分として使用しても良い。
【0023】
本発明の皮膚外用剤中におけるc成分の含有量は、0.0001〜0.2質量%であり、好ましくは0.0005〜0.2質量%、更に好ましくは0.0005〜0.1質量%である。0.0001質量%未満では肌荒れ改善効果、しわ防止・改善効果、肌に透明感を与える効果が弱くなるとともに安定性に問題を生じることがあり、0.2質量%を超えると安定性に問題を生じるとともにコスト的に不利である。
【0024】
〔d成分〕
本発明で用いられるd成分は、キレート剤であり、水中の重金属イオンやアルカリ土類金属イオンをキャッチする金属イオン封鎖剤であり、一般に有機系キレート剤や無機系のキレート剤がある。有機系のキレート剤として代表的なものはアミノカルボン酸系キレート剤であり、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(EHDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸(TTHA)、ジカルボキシメチルグルタミン酸(GLDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸(DPTA−OH)およびそれらの塩等が挙げられる。また、その他のキレート剤として例えば、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、クエン酸、アスコルビン酸およびそれらの塩等が挙げられる。d成分として、キレート剤の中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。その中でも安定性、安全性、使用感等の点で好ましいものはEDTA、PDTA、DPTA−OH、HEDP、クエン酸、アスコルビン酸およびそれらの塩であり、特に好ましいのは、EDTA、HEDP、クエン酸、アスコルビン酸およびそれらの塩である。
【0025】
本発明の皮膚外用剤中におけるd成分の含有量は、0.1〜2質量%であり、好ましくは0.1〜1.8質量%、更に好ましくは0.15〜1.5質量%である。0.1質量%未満では安定性に問題を生じるとともに肌にはりを与える効果が弱くなり、2質量%を超えるとべたつきを有することがある。
【0026】
本発明の皮膚外用剤は、a成分、b成分、c成分、およびd成分を用い、調製する化粧品や医薬品の種類に応じて適宜調製することができる。例えば、公知の方法により、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、パック、ヘアトニック、ファンデーション等の皮膚用の化粧品や医薬品などを調製することができる。
【0027】
本発明の皮膚外用剤には、化粧料や医薬品に常用されている添加剤を、本発明の皮膚外用剤の性能を損なわない範囲で、配合することも可能である。例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マルチトール、イソマルチトール等の本発明におけるb成分b以外の多価アルコール;乳糖、果糖、ショ糖等の糖類;流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、固形パラフィン等の炭化水素系油;牛脂、豚脂、魚油等の天然油脂;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸;トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル等の合成トリグリセライド;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のエステル油;ミツロウ、カルナバロウ等のロウ類;高重合ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン誘導体;セラミド、コレステロール、蛋白誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、レシチン等の油性基剤;石鹸、アシルメチルタウリン塩、アミドエーテル硫酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤;アミドアミノ酸塩、アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、アルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシド等の半極性界面活性剤;ピロリドンカルボン酸塩、食塩等の有機または無機塩類;pH調製剤としての酸及びアルカリ;殺菌剤;抗酸化剤;血行促進剤;紫外線吸収剤;紫外線散乱剤;動植物由来の天然エキス;ビタミン類;アミノ酸類;感光素;色素;顔料及び香料等を配合できる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、各種物性値については、下記に示す方法によって測定した。
【0029】
<ヨウ素価>
JIS K0070のヨウ素価試験方法に準じる。
<沸点範囲>
JIS K2254の蒸留試験方法に準じる。
<引火点>
JIS K2265の密閉式引火点測定法に準じる。
【0030】
<数平均分子量>
島津製GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定装置を用いて数平均分子量(ポリスチレン換算)を測定した。
【0031】
<鉄分含量分析>
所定量の試料を白金皿中で緩やかに燃焼させた後に、電気炉で完全に燃焼した灰分を濃塩酸で溶解し、測定試料とした。次にICP発光分析装置を使用し、所定操作により分析した。
【0032】
〔a成分の調製〕
合成例1;パラフィン混合物1
工程1)イソブテン30質量%、1−ブテン18質量%、2−ブテン類25質量%を含む炭素数4のブテン混合ガスとブタンガス27質量%を含む混合ガスをオートクレーブに仕込み、塩化アルミニウム触媒の存在下に共重合し、さらに未反応ガスおよび炭素数20以上の高沸点成分を除去して、炭素数16以下のポリブテン混合物を調製した。このポリブテン混合物は、数平均分子量が185であった。
【0033】
工程2)さらに、このポリブテン混合物をオートクレーブ中で水素化触媒(0.5%Pd担持アルミナ触媒)10質量%により水素圧3MPa、220℃で水素添加した。ポリブテンの水素化物、すなわちパラフィン混合物は、ヨウ素価が0.1であり、数平均分子量が180であった。
【0034】
工程3)外径4cm、長さ30cmのガラス筒に、アタパルガスクレイと活性白土を50:50の体積比で充填した吸着カラムに、毎分1mLの流速、25℃で連続的に送液して、触媒・装置由来の微量金属成分の吸着処理を行った。処理後のパラフィン混合物の鉄分は1ppmであった。
【0035】
工程4)その後、15段のオールダーショー棚段精留塔のボトム容器に仕込み、オイルバスにつけ、容器内の液温度が110℃になるまで乾燥窒素ガスによりバブリングを行い、空気との接触を避けて加熱した。容器内の液温度が110℃に達したら、減圧下(10kPa)で還流比を10とし減圧蒸留を8時間行い、仕込み全量の25質量%を留去した。その後、再び乾燥窒素ガスを減圧下バブリングしてボトム容器内の液状物を冷却した。得られたパラフィン混合物1の沸点範囲は187.5〜205℃、引火点は64℃で、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタンの含量は2質量%であった。メチル基の個数の分析方法としては、日本電子製のJMS−AX505HA質量分析計を用いてそれぞれの化合物のメチル基の数を確認した。また、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタンは島津製GC−14Bガスクロマトグラフィー分析により測定した。
【0036】
合成例2;パラフィン混合物2
合成例1記載の工程3)において、吸着剤の種類を粒子径が異なる2種のアタパルガスクレーに変更した。異なる粒子径のアタパルガスクレーのうち一方は粒子径840μmから1000μmのものであり、他方は粒子径200μmから480μmのものである。まず、粒子径840μmから1000μmのものを吸着カラムの容積割合で20%充填して仕込み、次に残り80%の割合を粒子径200μm〜480μmのもので充填して吸着カラムとした。この吸着カラムに、毎分1mLの流速、25℃で連続的に送液して、触媒・装置由来の微量金属成分の吸着処理を行った。
【0037】
また、工程4)の蒸留工程において、容器内の液温度を130℃、減圧度を20KPa、還流比を4、留出最高温度115℃、留去率30質量%として蒸留を行い、目的の化合物(パラフィン混合物2)を得た。得られたパラフィン混合物2は、鉄分3ppm、ヨウ素価0.1、沸点範囲188〜207℃、引火点64℃で、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタンの含量2.3質量%であった。
【0038】
〔実施例1〜5、比較例1〜5〕
皮膚外用剤として表1、2に示す乳液を調製し、下記の7項目について下記の評価基準により評価を行なった。結果を表1、2に示す。
【0039】
〔評価項目及び評価基準〕
(1)使用後のべたつき
20名の女性(28才〜61才)をパネラーとし、洗顔した後に皮膚外用剤を使用して10分後の肌の感触について下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を使用後のべたつきがない皮膚外用剤であると評価した。
2点:べたつきがないと感じた場合。
1点:肌がややべたつくと感じた場合。
0点:肌が非常にべたつくと感じた場合。
【0040】
(2)使用後のさらさらすべすべ感
20名の女性(28才〜61才)をパネラーとし、洗顔した後に皮膚外用剤を使用して10分後の肌の感触について下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を使用後の肌がさらさらすべすべする皮膚外用剤であると評価した。
2点:さらっとしていてかつすべすべの肌になったと感じた場合。
1点:肌がややさらっとしているがすべすべ感はあまり感じられない場合。
0点:肌にすべすべ感が無いと感じた場合。
【0041】
(3)肌荒れ改善効果
肌荒れを生じている10名の女性(32才〜50才)をパネラーとし、皮膚外用剤を一日2回ずつ連日2週間に至って使用した時の肌の状態について官能検査し、下記のように判定し、10名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を肌荒れ改善効果のある皮膚外用剤であると評価した。
2点:肌荒れが明らかに治ってきたと感じた場合。
1点:肌荒れがやや治ってきたと感じた場合。
0点:肌荒れ改善効果が全く見られないと感じた場合。
【0042】
(4)しわ防止・改善効果
肌荒れを生じている20名の女性(28才〜61才)をパネラーとし、皮膚外用剤を一日2回ずつ連日4週間に至って使用した時の肌の状態について官能検査し、下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上をしわ防止・改善効果のある皮膚外用剤であると評価した。
2点:しわが明らかに少なくなった(目立たなくなった)と感じた場合。
1点:しわがやや少なくなってきた(やや目立たなくなった)と感じた場合。
0点:しわが減少しない、もしくは増えたと感じた場合。
【0043】
(5)肌のはり
20名の女性(28才〜61才)をパネラーとし、皮膚外用剤を一日2回ずつ連日2週間に至って使用した時の肌の状態について官能検査し、下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を肌にはりと透明感を与える効果のある皮膚外用剤であると評価した。
2点:明らかに肌にはりがでたと感じた場合。
1点:やや肌にはりがでたと感じた場合。
0点:肌にはりがないと感じた場合。
【0044】
(6)肌の透明感と明るさ
20名の女性(28才〜61才)をパネラーとし、皮膚外用剤を一日2回ずつ連日4週間に至って使用した時の肌の状態について官能検査し、下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を肌に透明感を与え、明るくする効果のある皮膚外用剤であると評価した。
2点:明らかに肌に透明感が出て、明るくなったと感じた場合。
1点:やや肌に透明感が出て、明るくなったと感じた場合。
0点:肌の透明感、明るさに変化が無いと感じた場合。
【0045】
(7)経時安定性
皮膚外用剤を透明ガラス容器に密封して0℃、25℃、40℃でそれぞれ3ヶ月間保存し、その外観を観察して、下に示す3段階で評価した。
○:安定性良好(いずれの温度においても外観・臭気の変化がない。)
△:安定性やや不良(いずれかの温度において若干おり、沈殿を生じるまたは若干着色を生じる、もしくは臭気が変化している。)
×:安定性不良(いずれかの温度においており、沈殿を生じるまたは分離する。もしくは着色や臭気劣化が著しい。)
【0046】
【表1】
【0047】
注1;「ピーカンナッツエキスBG」(日油(株)製)
注2;「クミスクチンエキスBG」(日油(株)製)
注3;「BIO-CHE」(Bioland社製)
注4;「カーボポール #941」(BF-Goodrich社製)
【0048】
【表2】
【0049】
注1;「ピーカンナッツエキスBG」(日油(株)製)
注2;「クミスクチンエキスBG」(日油(株)製)
注3;「BIO-CHE」(Bioland社製)
注4;「カーボポール #941」(BF-Goodrich社製)
注5;「パールリーム4」(日油(株)製)
〔炭素数16、沸点範囲220〜252.5℃、引火点88℃、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン含量0質量%〕
注6;「マルカゾールR」(丸善石油化学(株)製)
〔炭素数12、沸点177℃、引火点48℃、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン含量95質量%以上〕
注7;「SH−245」(東レダウコーニング(株)製)
〔沸点210℃、引火点77℃〕
【0050】
実施例1〜5より、本発明による成分を用いた乳液はいずれも安定性に優れるとともに、べたつかずさらっとした感触でありながら、肌荒れ改善効果、しわ防止・改善効果に優れ、肌にはりを与えるとともに透明感を与えて肌を明るくする効果に優れていた。
【0051】
一方、比較例1〜5では十分な性能が得られていない。つまり、比較例1ではa成分に換えて、イソパラフィン混合物3が配合されていることから、使用後のべたつきがあるとともにさらさらすべすべ感が得られず、また肌にはりを与える効果が弱かった。そして、比較例2ではa成分に換えて、揮発性炭化水素であるイソドデカンが使用されていることから、使用後のさらさらすべすべ感が得られず、また、肌荒れ改善効果、肌の透明感と明るさを付与する効果が十分でなく、臭気が発生して安定性に問題を生じている。さらに、比較例3ではa成分に換えて揮発性油分として環状シリコーン(デカメチルペンタシクロシロキサン)が使用されていることから、使用後のさらさらすべすべ感が得られず、また、肌荒れ改善効果、肌にはりを与える効果、肌の透明感と明るさを付与する効果が弱かった。一方、比較例4ではc成分が配合されていないことから、肌荒れ改善効果、しわ防止・改善効果、肌の透明感と明るさを付与する効果が弱くなるとともに、安定性に問題を生じている。比較例5ではd成分が配合されていないことから、肌にはりを与える効果が弱くなるとともに安定性に問題を生じている。
【0052】
〔実施例6、7〕
皮膚外用剤として表3に示す水中油型乳化のクリームを調製し、評価項目(1)〜(6)は実施例1〜5の方法により、そして評価項目(7)の経時安定性については下記の方法により評価を行なった。但し、共通添加成分として表4に示す10成分を使用した。結果を表3に示す。
【0053】
(7)経時安定性
皮膚外用剤を透明ガラス容器に密封して−5℃、25℃、45℃でそれぞれ1ヶ月間保存したときの状態を調査し、下に示す3段階で評価した。
○:安定性良好(いずれの温度においても外観・臭気の変化がなくブツ等も生じない。)
△:安定性やや不良(いずれかの温度において僅かに臭気劣化、沈殿、分離、ブツ、ダマを生じる等の現象が見られる。)
×:安定性不良(いずれかの温度において明らかに臭気劣化、沈殿、分離等が見られる。)
【0054】
【表3】
【0055】
注1;「ピーカンナッツエキスBG」(日油(株)製)
注6;「Resveratrox De-Colored 2%溶液」(香栄興業(株)製)
【0056】
【表4】
【0057】
実施例6、7より、本発明に係るクリームはいずれも安定性に優れるとともに、べたつかずさらっとした感触でありながら、肌荒れ改善効果、しわ防止・改善効果に優れ、肌にはりを与えるとともに透明感を与えて肌を明るくする効果に優れていた。
【0058】
〔実施例8、9〕
皮膚外用剤として表3に示す油中水型乳化のクリームを調製し、実施例6、7に示す評価方法により評価を行なった。但し、共通添加成分として表5に示す10成分を使用した。結果を表3に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
実施例8、9より、本発明に係るクリームはいずれも安定性に優れるとともに、べたつかずさらっとした感触でありながら、肌荒れ改善効果、しわ防止・改善効果に優れ、肌にはりを与えるとともに透明感を与えて肌を明るくする効果に優れていた。