特許第6381279号(P6381279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381279
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】サッシ枠の固定方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/60 20060101AFI20180820BHJP
   E06B 1/58 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   E06B1/60
   E06B1/58
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-99115(P2014-99115)
(22)【出願日】2014年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-214860(P2015-214860A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年5月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】595091872
【氏名又は名称】饒平名 知成
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】饒平名 知成
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭39−014556(JP,Y1)
【文献】 特開平10−169320(JP,A)
【文献】 実開昭62−027990(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第02317918(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00 − 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に設けられた略矩形の開口部内に、窓または扉のサッシ枠であってその左右両側面にサッシ高さ方向に延びる溝部が設けられたサッシ枠を固定するサッシ枠の固定方法であって、
上記開口部の少なくとも左右の側壁面の上部寄り位置に、該開口部の内方へ突出する耐熱性の係止部材をそれぞれ設け、
上記係止部材の少なくとも一方を、上記開口部内方への突出量を減じるように屈曲変形させて上記サッシ枠との干渉を回避させて、上記サッシ枠を上記開口部内に嵌装して該サッシ枠の上記各溝部を上記開口部の左右の側壁面にそれぞれ対向させた後、上記の屈曲変形させた係止部材を上記開口部内方への突出量を増加させるように屈曲変形させることで上記各係止部材を上記サッシ枠の上記各溝部内にそれぞれ進入させ、
しかる後、上記開口部と上記サッシ枠との間の空間部の略全域に発泡性樹脂を充填して発泡硬化させることで上記サッシ枠を上記開口部内に固定することを特徴とするサッシ枠の固定方法。
【請求項2】
躯体に設けられた略矩形の開口部内に、窓または扉のサッシ枠であってその左右両側面にサッシ高さ方向に延びる溝部が設けられたサッシ枠を固定するサッシ枠の固定方法であって、
上記開口部の少なくとも左右の側壁面の上部寄り位置に、該側壁面側を枢支点として該側壁面から開口部内方側へ展開可能とされた耐熱性の係止部材をそれぞれ設けるとともに、これら各係止部材を上記開口部の側壁面寄りに収納して開口部内方への突出量を減少させた状態で保持し、
しかる後、上記サッシ枠を上記開口部内に嵌装して該サッシ枠の上記各溝部を上記開口部の左右の側壁面にそれぞれ対向させた後、上記各係止部材を開口部内方側へ展開させて該開口部内方への突出量を増加させることで上記各係止部材をそれぞれ上記サッシ枠の各溝部内に進入させ、
次いで、上記開口部と上記サッシ枠との間の空間部の略全域に発泡性樹脂を充填して発泡硬化させることで上記サッシ枠を上記開口部内に固定することを特徴とするサッシ枠の固定方法。
【請求項3】
躯体に設けられた略矩形の開口部内に、窓または扉のサッシ枠であってその左右両側面にサッシ高さ方向に延びる溝部が設けられたサッシ枠を固定するサッシ枠の固定方法であって、
上記開口部の左右の側壁面のうちの何れか一方の側壁面の上部寄り位置には該開口部の内方へ突出する耐熱性の係止部材を、何れか他方の側壁面の上部寄り位置には該側壁面側を枢支点として該側壁面から開口部内方側へ展開可能とされた耐熱性の係止部材を、それぞれ設け、
上記サッシ枠を上記開口部内に嵌装して該サッシ枠の上記各溝部を上記開口部の左右の側壁面にそれぞれ対向させた後、上記一方の側壁面に設けられた上記係止部材は、これを屈曲変形させて開口部内方への突出量を増加させて、或いは屈曲変形させることなく上記サッシ枠の上記溝部内に進入させるとともに、上記他方の側壁面に設けられた上記係止部材は、これを開口部内方側へ展開させて該開口部内方への突出量を増加させることで上記サッシ枠の各溝部内に進入させ、
しかる後、上記開口部と上記サッシ枠との間の空間部の略全域に発泡性樹脂を充填して発泡硬化させることで上記サッシ枠を上記開口部内に固定することを特徴とするサッシ枠の固定方法。
【請求項4】
躯体に設けられた略矩形の開口部内に、窓または扉のサッシ枠であってその左右両側面にサッシ高さ方向に延びる溝部が設けられたサッシ枠を固定するサッシ枠の固定方法であって、
上記開口部の少なくとも左右の側壁面の上部寄り位置に、開口部内方へ突出する耐熱性の係止部材をそれぞれ設け、
上記サッシ枠をその幅方向の中心線を軸として捩り変形させた状態で上記開口部内に嵌装し、該サッシ枠の上記各溝部内に上記各係止部材をそれぞれ進入させた後、該サッシ枠を略原形に復帰させ、
しかる後、上記開口部と上記サッシ枠との間の空間部の略全域に発泡性樹脂を充填して発泡硬化させることで上記サッシ枠を上記開口部内に固定することを特徴とするサッシ枠の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば、建物のコンクリート壁面等の躯体に設けられた略矩形の開口部内に、窓とか扉のサッシ枠を固定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物壁面等に設けられた略矩形の開口部に窓を取り付ける場合、先ず上記開口部に矩形枠状に形成された窓枠を固定し、しかる後、この窓枠に窓本体を組み付けるようになっている。
【0003】
ところで、例えば、建物のリホーム時等においては、既設の窓を新たな窓に交換して改装することも行われるが、係る場合の工法としては、既設の窓枠を取り除くことなくそのまま残存させ、この残存する既設窓枠に対して、新たな窓枠を溶接等によって固定し、この新たな窓枠に対して新たな窓本体を取り付ける工法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところが、このように既存の窓枠に新設の窓枠を固定する手法によれば、その構造上、新設の窓枠は既設の窓枠よりも小さなものとしなければならないことから、建物壁面の開口部と新設の窓枠との間に不可避的に隙間が生じることになる。この隙間を解消する方法として、特許文献1では、新設窓枠の室外側外周面に外部アタッチメントを配置し、これによって上記隙間を塞いで気密性を確保するようにしている。
【0005】
しかしながら、この外部アタチメントは鉄板製の剛体構造であって事後的な形状寸法の微調整が困難であることから、例えば、既設の窓枠とかその周囲の躯体等に歪とか撓み変形が生じているような場合には、この歪とか撓み変形に合わせて新設窓枠を制作しなければならず、作業性、コスト面等において問題がある。
【0006】
このような背景から、特許文献2においては、既設窓枠と新設窓枠をフラットバーとかアングルなどの治具により固定し、この固定状態において、既設窓枠と新設窓枠の隙間部分に発泡ウレタンを充填する工法が提案されている。
【0007】
このように既設窓枠と新設窓枠の隙間部分に発泡ウレタンを充填する工法によれば、既設の窓枠とかその周囲の躯体等の歪とか撓み変形が生じていてもこれに影響されることなく上記隙間を確実に閉塞してその気密性を確保することができ、例えば、特許文献1に示されるような従来工法に比して、作業性とかコスト面において有利である。一方、発泡ウレタンには熱溶融という問題があり、例えば建物の火災時においては、発泡ウレタンが火災熱を受けて溶融することも考えられるが、上述のように既設窓枠と新設窓枠をフラットバーとかアングルなどの治具により固定していることから、例え発泡ウレタンが溶融したとしても、新設窓枠と既設窓枠の連結状態は維持され、該新設窓枠が既設窓枠から離脱して落下するということが確実に回避され、火災時等における安全性が担保される。
【0008】
即ち、既設窓枠に新設窓枠を治具によって固定することと、既設窓枠と新設窓枠との隙間に発泡ウレタンを充填することの相乗効果によって、窓枠部分の気密性等の窓本来の機能の確保と火災時における安全性の確保とが両立されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−13797号公報
【特許文献2】特開2010−156193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、例えば、新築の建物に窓枠を取り付けるような場合には、窓の改装時のように建物側の開口部に既設窓枠が存在していないので、既設窓枠に新設窓枠を固定することはできない。このため、係る場合には、例えば、開口部内にその内周との間に所定に隙間を確保した状態で窓枠を仮置き支持し、しかる後、該開口部と窓枠の間の隙間に発泡ウレタンを充填し、該発泡ウレタンによって窓枠を開口部側に固定するとともに該開口部と窓枠との気密性等を確保する工法が採られる。
【0011】
しかし、このように開口部の内周と窓枠の間の隙間に直接発泡ウレタンを充填する工法によれば、平時には発泡ウレタンによって窓枠部分の気密性が確保されるとともに窓枠の開口部側への固定保持状態が維持されるため問題はないが、例えば、建物に火災が発生したような場合には、高温の火災熱によって発泡ウレタンが溶融して該発泡ウレタンによる窓枠の保持機能が消滅し、該窓枠が開口部から外れて落下することが懸念され、火災時等における安全性の確保という点において問題がある。
【0012】
そこで本願発明は、躯体の開口部に発泡性樹脂を用いてサッシ枠を固定するに際して、該サッシ枠の離脱・落下を簡易且つ安価な構成で確実に防止できるサッシ枠の固定方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0014】
本願の第1の発明では、躯体に設けられた略矩形の開口部内に、窓または扉のサッシ枠であってその左右両側面にサッシ高さ方向に延びる溝部が設けられたサッシ枠を固定するに際し、上記開口部の少なくとも左右の側壁面の上部寄り位置に、該開口部内方へ突出する耐熱性の係止部材をそれぞれ設け、上記係止部材の少なくとも一方を、上記開口部内方への突出量を減じるように屈曲変形させて上記サッシ枠との干渉を回避させて、上記サッシ枠を上記開口部内に嵌装して該サッシ枠の上記各溝部を上記開口部の左右の側壁面にそれぞれ対向させた後、上記の屈曲変形させた係止部材を上記開口部内方への突出量を増加させるように屈曲変形させることで上記各係止部材を上記サッシ枠の上記各溝部内にそれぞれ進入させ、しかる後、上記開口部と上記サッシ枠との間の空間部の略全域に発泡性樹脂を充填して発泡硬化させることで上記サッシ枠を上記開口部内に固定することを特徴としている。
【0015】
ここで、上記サッシ枠は、窓枠のみならず、扉枠等の他の建具の枠体を含む概念である。また、躯体は、一般的なコンクリート製の壁や柱等のみならず、軽量気泡コンクリート(ALC)製、金属製、その他の複合材料からなる壁や柱等を含む概念である。
【0018】
ここで、上記係止部材は、上記開口部の側壁面への取付時点における開口部内方への突出量が、上記開口部に上記サッシ枠を嵌装するとき該サッシ枠に干渉するような大きさに設定されていることを前提としており、必要に応じて、これを屈曲変形させて開口部内方への突出量を増減調整するものである。
【0019】
本願の第の発明では、躯体に設けられた略矩形の開口部内に、窓または扉のサッシ枠であってその左右両側面にサッシ高さ方向に延びる溝部が設けられたサッシ枠を固定するに際し、上記開口部の少なくとも左右の側壁面の上部寄り位置に、該側壁面側を枢支点として該側壁面から開口部内方側へ展開可能とされた耐熱性の係止部材をそれぞれ設けるとともに、これら各係止部材を上記開口部の側壁面寄りに収納して開口部内方への突出量を減少させた状態で保持し、しかる後、上記サッシ枠を上記開口部内に嵌装して該サッシ枠の上記各溝部を上記開口部の左右の側壁面にそれぞれ対向させた後、上記各係止部材を開口部内方側へ展開させてその突出量を増加させることで上記各係止部材をそれぞれ上記サッシ枠の各溝部内に進入させ、次いで、上記開口部と上記サッシ枠との間の空間部の略全域に発泡性樹脂を充填して発泡硬化させることで上記サッシ枠を上記開口部内に固定することを特徴としている。
【0020】
本願の第の発明では、躯体に設けられた略矩形の開口部内に、窓または扉のサッシ枠であってその左右両側面にサッシ高さ方向に延びる溝部が設けられたサッシ枠を固定するに際し、上記開口部の左右の側壁面のうちの何れか一方の側壁面の上部寄り位置には該開口部の内方へ突出する耐熱性の係止部材を、何れか他方の側壁面の上部寄り位置には該側壁面側を枢支点として該側壁面から開口部内方側へ展開可能とされた耐熱性の係止部材を、それぞれ設け、上記サッシ枠を上記開口部内に嵌装して該サッシ枠の上記各溝部を上記開口部の左右の側壁面にそれぞれ対向させた後、上記一方の側壁面に設けられた上記係止部材は、これを屈曲変形させて開口部内方への突出量を増加させて、或いは屈曲変形させることなく上記サッシ枠の上記溝部内に進入させるとともに、上記他方の側壁面に設けられた上記係止部材は、これを開口部内方側へ展開させて該開口部内方への突出量を増加させることで上記サッシ枠の上記溝部内に進入させ、しかる後、上記開口部と上記サッシ枠との間の空間部の略全域に発泡性樹脂を充填して発泡硬化させることで上記サッシ枠を上記開口部内に固定することを特徴としている。
【0021】
本願の第の発明では、躯体に設けられた略矩形の開口部内に、窓または扉のサッシ枠であってその左右両側面にサッシ高さ方向に延びる溝部が設けられたサッシ枠を固定するに際し、上記開口部の少なくとも左右の側壁面の上部寄り位置に、開口部内方へ突出する耐熱性の係止部材をそれぞれ設け、この状態で、上記サッシ枠をその幅方向の中心線を軸として捩り変形させた状態で上記開口部内に嵌装し、該サッシ枠の上記各溝部内に上記各係止部材をそれぞれ進入させた後、該サッシ枠を略原形に復帰させ、しかる後、上記開口部と上記サッシ枠との間の空間部の略全域に発泡性樹脂を充填して発泡硬化させることで上記サッシ枠を上記開口部内に固定することを特徴としている。
【0022】
ここで、上記係止部材の上記開口部の側壁面への取付時点における開口部内方への突出量は、上記開口部内に上記サッシ枠を嵌装した状態において上記係止部材が上記サッシ枠の上記溝部内に進入し得るような大きさに設定され、且つそのまま保持されるものであって、事後的にこの突出量が変更されることはない。
【発明の効果】
【0023】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0024】
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係るサッシ枠の固定方法によれば、上記サッシ枠の上記開口部内への嵌装状態においては、上記開口部の少なくとも左右の側壁面の上部寄り位置に設けた耐熱性の係止部材が上記サッシ枠の左右両側面に設けた溝部内に進入しており、該サッシ枠がその厚さ方向(窓の内外方向)へ移動する場合には該係止部材が上記溝部の幅方向の両側に位置する側壁部に係合し、該サッシ枠のそれ以上の移動が規制されるようになっている。
【0025】
したがって、上記サッシ枠と上記開口部との空間部に発泡性樹脂を充填し且つこれを発泡硬化させて該発泡性樹脂によって該サッシ枠を該開口部側に固定保持した状態において、例えば、建物の火災によって、上記発泡性樹脂が溶融して上記サッシ枠に対する固定保持機能が消滅した場合、該サッシ枠は発泡性樹脂の溶融進行に伴って自重降下し、上記開口部の下側内面上に当接することでそれ以上の降下が阻止されるとともに、上記サッシ枠の上部寄り位置においては上記係止部材と上記溝部の側壁部との係合による移動規制作用によってサッシ枠の厚さ方向への移動(傾動)が規制され、これらの相乗効果として、上記サッシ枠は上記開口部からの離脱及び落下が確実に防止され、火災時における安全性が確保される。
【0027】
また、この発明のサッシ枠の固定方法では、上記係止部材の少なくとも一方を、上記サッシ枠の上記開口部への嵌装時には開口部内方への突出量を減じるように屈曲変形させて上記サッシ枠との干渉を回避させる一方、上記開口部への上記サッシ枠の嵌装後においては上記開口部の内方への突出量を増加させるように屈曲変形させるようにしているので(即ち、事後的に突出量の増減調整を行えるので)、該サッシ枠の上記開口部側への取り付けに際しては、上記サッシ枠の嵌装時及び嵌装後における係止部材の開口部の内方への突出量をさほど気にすることなく、主として係止部材の取付作業のし易さに主眼をおいて該係止部材の取付方向を任意に設定することができ、それだけサッシ枠の固定作業における作業の簡便化、作業性の向上が図られる。
【0028】
)本願の第の発明
本願の第の発明に係るサッシ枠の固定方法によれば、上記サッシ枠の上記開口部内への嵌装状態においては、上記開口部の少なくとも左右の側壁面の上部寄り位置に設けた耐熱性の係止部材が、開口部内方への突出量を増加させるように展開して上記サッシ枠の各溝部内に進入しており、該サッシ枠がその厚さ方向(窓の内外方向)へ移動する場合には該係止部材が上記溝部の幅方向の両側に位置する側壁部に係合し、該サッシ枠のそれ以上の移動が規制されるようになっている。
【0029】
したがって、上記サッシ枠と上記開口部との空間部に発泡性樹脂を充填し且つこれを発泡硬化させて該発泡性樹脂によって該サッシ枠を該開口部側に固定保持した状態において、例えば、建物の火災によって、上記発泡性樹脂が溶融して上記サッシ枠に対する固定保持機能が消滅した場合、該サッシ枠は発泡性樹脂の溶融進行に伴って自重降下し、上記開口部の下側内面上に当接することでそれ以上の降下が阻止されるとともに、上記サッシ枠の上部寄り位置においては上記係止部材と上記溝部の側壁部との係合による移動規制作用によってサッシ枠の厚さ方向への移動(傾動)が規制され、これらの相乗効果として、上記サッシ枠は上記開口部からの離脱及び落下が確実に防止され、その結果、火災時における安全性が確保されるものである。
【0030】
また、上記係止部材は、上記開口部の側壁面側を枢支点として該側壁面から開口部内方側へ展開可能とされ、開口部内方への突出量の調整は上記側壁面側への収納操作と開口部内方への展開操作によって行われることから、例えば、この開口部内方への突出量の調整を上記係止部材の屈曲変形によって行う場合に比して、突出量の調整操作を小操作力で迅速に行うことができ、それだけサッシ枠の固定作業における作業性が向上する。
【0031】
)本願の第の発明
本願の第の発明に係るサッシ枠の固定方法によれば、上記サッシ枠の上記開口部内への嵌装状態においては、上記開口部の一方の側壁面に設けた上記係止部材は、上記サッシ枠の一方の側面に設けた溝部内に進入しており、該サッシ枠がその厚さ方向へ移動する場合には該係止部材が上記溝部の幅方向の両側に位置する側壁部に係合して該サッシ枠のそれ以上の移動を規制する状態となっている。また、上記開口部の他方の側壁面に設けた上記係止部材は、開口部内方への突出量を増加させるように展開して上記サッシ枠の上記溝部内に進入しており、該サッシ枠がその厚さ方向へ移動する場合には該係止部材が上記溝部の幅方向の両側に位置する側壁部に係合し、該サッシ枠のそれ以上の移動を規制する状態となっている。
【0032】
したがって、上記サッシ枠と上記開口部との空間部に発泡性樹脂を充填し且つこれを発泡硬化させて該発泡性樹脂によって該サッシ枠を該開口部側に固定保持した状態において、例えば、建物の火災によって、上記発泡性樹脂が溶融して上記サッシ枠に対する固定保持機能が消滅した場合、該サッシ枠は発泡性樹脂の溶融進行に伴って自重降下し、上記開口部の下側内面上に当接することでそれ以上の降下が阻止されるとともに、上記サッシ枠の上部寄り位置においては上記各係止部材と上記溝部の側壁部との係合による移動規制作用によってサッシ枠の厚さ方向への移動(傾動)が規制され、これらの相乗効果として、上記サッシ枠は上記開口部からの離脱及び落下が確実に防止され、その結果、火災時における安全性が確保されるものである。
【0033】
)本願の第の発明
本願の第の発明に係るサッシ枠の固定方法によれば、上記サッシ枠の上記開口部内への嵌装状態においては、上記開口部の少なくとも左右の側壁面の上部寄り位置に設けた耐熱性の係止部材が上記サッシ枠の左右両側面に設けた溝部内に進入しており、該サッシ枠がその厚さ方向(窓の内外方向)へ移動する場合には該係止部材が上記溝部の幅方向の両側に位置する側壁部に係合し、該サッシ枠のそれ以上の移動が規制されるようになっている。
【0034】
したがって、上記サッシ枠と上記開口部との空間部に発泡性樹脂を充填し且つこれを発泡硬化させて該発泡性樹脂によって該サッシ枠を該開口部側に固定保持した状態において、例えば、建物の火災によって、上記発泡性樹脂が溶融して上記サッシ枠に対する固定保持機能が消滅した場合、該サッシ枠は、発泡性樹脂の溶融進行に伴って自重降下し、上記開口部の下側内面上に当接することでそれ以上の降下が阻止されるとともに、上記サッシ枠の上部寄り位置においては上記係止部材と上記溝部の側壁部との係合による移動規制作用によってサッシ枠の厚さ方向への移動(傾動)が規制され、これらの相乗効果として、上記サッシ枠は上記開口部からの離脱及び落下が確実に防止され、その結果、火災時における安全性が確保されるものである。
【0035】
また、この発明では、上記サッシ枠をその幅方向の中心線を軸として捩り変形させた状態で上記開口部内に嵌装し、該サッシ枠の上記各溝部内に上記各係止部材をそれぞれ進入させた後、該サッシ枠を略原形に復帰させる構成であることから、上記係止部材は、その開口部内方への突出量を、上記開口部内に上記サッシ枠を嵌装した状態において上記係止部材が上記サッシ枠の上記溝部内に進入し得るような大きさに当初から設定しておけば良く、事後的にこれを変更する必要はない。したがって、例えば、事後的に上記係止部材の開口部内方への突出量を調整する必要がある場合に比して、サッシ枠の固定作業における作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】サッシ枠の構造を示す全体斜視図である。
図2】本願発明の第1の実施形態におけるサッシ枠と躯体に設けられた開口部との相対関係説明図である。
図3】上記サッシ枠を上記開口部内に仮置き固定した状態を示す斜視図である。
図4】上記サッシ枠を発泡性樹脂からなる樹脂硬化体によって開口部内に固定した状態を示す斜視図である。
図5図4におけるP部分の一部破断拡大図である。
図6図5のA−A断面図である。
図7】本願発明の第2の実施形態における上記サッシ枠を上記開口部に固定した状態における一部破断拡大図であって、図5に対応するものである。
図8図7のB−B断面図である。
図9】本願発明の第3の実施形態におけるサッシ枠と躯体に設けられた開口部との相対関係説明図である。
図10】上記サッシ枠の上記開口部への固定状態における一部破断拡大図であって、図5に対応するものである。
図11図10のC−C断面図である。
図12】本願発明の第4の実施形態におけるサッシ枠を躯体に設けられた開口部に固定した状態における一部破断拡大図である。
図13】本願発明の第5の実施形態におけるサッシ枠と躯体に設けられた開口部との相対関係説明図である。
図14】上記サッシ枠の上記開口部への嵌装初期における一部破断拡大図である。
図15】上記サッシ枠の上記開口部への嵌装完了状態における一部破断拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
A:第1の実施形態
A−a:サッシ枠1
図1には、本願発明に係る固定方法の実施対象となる窓用のサッシ枠1を示している。このサッシ枠1は、所定の断面形状を持つ形材を矩形枠状に組み付けて構成されるものであって、上枠部1aと下枠部1b及び左右の側枠部1cを備え、且つその内側部分は窓本体(図示省略)の装着スペース1dとされる。
【0038】
また、このサッシ枠1は、その両側面、即ち、上記側枠部1cの外面に、該サッシ枠1の高さ方向に延びる溝部2を設けている。この溝部2は、上記側枠部1cの厚さ方向に所定間隔をもって対向する一対の側壁部2bとこれらの間に位置する底面部2aで構成される。
【0039】
なお、この実施形態では、上記溝部2を上記各側枠部1cの外面のみに設けたものを例示しているが、本願発明はこれに限定されるものでない。即ち、本願発明に係るサッシ枠の固定方法は、上記サッシ枠1の左右の側枠部1cの外面に設けられた上記溝部2を利用することで該サッシ枠1の落下防止を実現するものであって、少なくとも上記各側枠部1cの外面に上記溝部2が設けられておれば足り、例えば、上記各側枠部1cに加えて、上記上枠部1a及び下枠部1bにも上記溝部2が設けられたものも適用可能である。
【0040】
そして、上記サッシ枠1は、図2図4に示すように、コンクリート壁3(特許請求の範囲中の「躯体」に該当)に設けられた矩形の開口部4内に、本願発明に係る固定方法によって固定される。以下、この固定方法を作業手順に沿って詳述する。
【0041】
A−b:サッシ枠1の固定作業
A−b−1:開口部4への係止部材10の取り付け
上記コンクリート壁3に設けられた開口部4には、上記サッシ枠1が、その外周面との間に所定の間隔をもって嵌装される(図3参照)。そして、上記開口部4の左右の側壁面4cの上部寄り位置には、上記溝部2の各側壁部2bと共働して上記サッシ枠1の落下防止機能を発揮する係止部材10が取り付けられる(図2図5図6参照)。
【0042】
この実施形態においては、上記係止部材10として、コンクリートへの打ち込みが可能な釘体5を採用している。この釘体5を上記開口部4の側壁面4cの上部寄り位置に所定長さだけ打ち込んで保持させるとともに、その頭部側を該開口部4の内方へ所定量突出させ、この突出部分を屈曲変形させることでその突出量を調整可能している。
【0043】
即ち、図5に実線図示するように、僅かに斜め上方へ向けて打ち込んだ上記釘体5を、同図に鎖線図示するように下方に屈曲変形させて該釘体5の開口部内方への突出量を当初打ち込み時(実線図示状態)よりも減じて初期突出量に設定する。この初期突出量は、図3図5に示すように、上記開口部4内に上記サッシ枠1を該開口部4の側壁面4cとの間に所定の隙間をもって配置した状態において、該サッシ枠1の上記溝部2の側壁部2bと干渉しない突出量である。
【0044】
なお、この実施形態では、上記開口部4の左右の側壁面4cにそれぞれ設けられる上記釘体5の突出量を共に上記初期突出量に設定しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、他の実施形態においては、例えば、一方の釘体5についてはその突出量を当初打ち込み時の突出量のまま保持し、他方の釘体5についてのみその突出量を上記初期突出量に設定することも可能である。ただし、この場合には、当初打ち込み時のままの一方の釘体5の突出先端と初期突出量に設定された他方の釘体5の突出先端との間を通して上記サッシ枠1を上記開口部4内に嵌装することが必要である。
【0045】
A−b−2: サッシ枠1の嵌装作業
先ず、図3に示すように、上記サッシ枠1を上記開口部4内に嵌装する。この場合、上記開口部4の左右の側壁面4cにはそれぞれ開口部内方への突出量が上記初期突出量に設定された上記釘体5が取り付けられているので、作業者はこれら左右の釘体5間のスペースを通して上記サッシ枠1を開口部4内に嵌装して該サッシ枠1の上記各溝部2を上記開口部4の左右の側壁面4cにそれぞれ対向させる。したがって、この状態では、上記各釘体5は、上記サッシ枠1の溝部2にその側方から臨んだ状態となっている。
【0046】
なお、この状態では、上記サッシ枠1は、上記開口部4の内面との間に仮置きした適宜の間隔保持材(図示省略)によって上記開口部4の内面との間に所定の隙間をもって仮支持されている。
【0047】
しかる後、上記各釘体5を、屈曲変形させてその開口部内方への突出量を増加させる。即ち、図5に示すように、鎖線図示状態(即ち、初期突出量)にある釘体5を、同図に実線図示するように上側へ屈曲変形させてこれを上記サッシ枠1の上記溝部2内に進入させる。これで上記サッシ枠1の上記開口部4への嵌装作業が終了する。この状態においては、上記サッシ枠1は上記釘体5が上記溝部2の前後の側壁部2bと係合する範囲内においてのみ、その厚さ方向に移動可能とされ、それ以上の移動は規制されることになる。
【0048】
A−b−3:発泡性樹脂の注入充填作業
先ず、上記サッシ枠1の表裏両面と上記開口部4の内面との間にそれぞれカットテープ等のシーリング材を取り付けて、上記サッシ枠1の外周と上記開口部4の内周の間の空間部9を密封する。
【0049】
次に、上記シーリング材に樹脂注入口を設け、ここから上記空間部9内に注入ガンを用いて硬質の発泡性樹脂、例えば、2液性の硬質発泡ウレタンを注入する。しかし、この時点では、上記サッシ枠1が上記間隔保持材によって仮支持されているので、これを取り外すために、先ず、上記空間部9の適数か所に硬質発泡ウレタンを少量注入し、これを硬化させてこの硬化樹脂によって上記サッシ枠1を上記開口部4内に仮支持させるとともに、上記間隔保持材を取り外し且つ上記シーリング材を修正する。
【0050】
しかる後、上記開口部4と上記サッシ枠1との間の空間部9の全域に硬質発泡ウレタンを注入充填してこれを発泡硬化させて樹脂硬化体8とし、この樹脂硬化体8によって上記空間部9を閉塞してその気密性を確保するとともに、上記サッシ枠1を上記開口部4側に固定保持させる(図4図6参照)。以上で、上記サッシ枠1の上記開口部4に対する固定作業が完了する。後は、上記サッシ枠1内に窓本体を装着する。
【0051】
A−c:特有の作用効果等
この実施形態のサッシ枠の固定方法によれば、上記サッシ枠1の上記開口部4内への取付完了状態においては、該サッシ枠1は、上記開口部4との間の空間部9に充填され且つ発泡硬化した硬質発泡ウレタンである樹脂硬化体8の密着性及び形状保持性によって該開口部4側に強固且つ気密的に固定保持される。
【0052】
また、上記サッシ枠1の上記開口部4内への嵌装状態においては、上記開口部4の左右の側壁面4cの上部寄り位置に設けた上記釘体5が上記サッシ枠1の左右両側面に設けた溝部2内に進入しており、該サッシ枠1がその厚さ方向(窓の内外方向)へ移動する場合に該釘体5が上記溝部2の幅方向の両側に位置する側壁部2bに係合し、該サッシ枠1のそれ以上の移動が規制される状態となっている。
【0053】
したがって、上記サッシ枠1と上記開口部4との空間部に発泡性樹脂を充填し且つこれを発泡硬化させて樹脂硬化体8を形成し、該樹脂硬化体8によって該サッシ枠1を該開口部4側に固定保持した状態においては、例えば、建物の火災によって、上記樹脂硬化体8が溶融して上記サッシ枠1に対する固定保持機能が消滅した場合、該サッシ枠1は、該樹脂硬化体8の溶融進行に伴って自重降下し、上記開口部4の下側内面4b上に当接することでそれ以上の降下が阻止され、また上記サッシ枠1の上部寄り位置においては上記釘体5と上記溝部2の側壁部2bとの係合による移動規制作用によってサッシ枠1の厚さ方向への移動(傾動)が規制されることから、これらの相乗効果として、上記サッシ枠1は上記開口部4からの離脱及び落下が確実に防止され、その結果、火災時における安全性が確保される。
【0054】
B:第2の実施形態
図7及び図8には、本願発明の第2の実施形態に係るサッシ枠の固定方法の要部を示している。この実施形態の固定方法は、その基本構成は上記第1の実施形態の固定方法と同様であって、これと異なる点は、係止部材10の構成である。
【0055】
即ち、上記第1の実施形態の固定方法では上記係止部材10として上記釘体5を採用していたのに対して、この実施形態では上記係止部材10として、図7において斜視図で示すように、所定大きさの板材をその中間位置で折曲させて固定部6aと突出部6bとしたプレート体6で構成している。このプレート体6は、その制作時点においては上記固定部6aに対して上記突出部6bが鎖線図示するように、鈍角の交差角をもつように屈曲形成されている(製作時形体)。
【0056】
そして、上記プレート体6は、この製作時形体のまま、その固定部6aを上記開口部4の側壁面4cに衝合させた状態で固定具11によって固定され、しかもこの固定状態のまま、これら左右両側のプレート体6間のスペースを通して上記サッシ枠1が上記開口部4に嵌装される。即ち、製作時形体における上記プレート体6の突出量(即ち、上記突出部6bの先端の上記固定部6aからの距離)は、上記開口部4内に上記サッシ枠1を嵌装するとき該サッシ枠1の左右両側に設けた上記溝部2の側壁部2bと干渉しないような寸法に設定されている。
【0057】
したがって、上記開口部4の側壁面4cに上記プレート体6を取り付けるだけで、それ以外の事前作業を行う必要はなく、そのまま上記サッシ枠1の嵌装作業を行うことができるものであり、この点は、上記第1の実施形態の上記釘体5においては該釘体5を上記開口部4側に取り付けた後、上記サッシ枠1の嵌装に先立って、該釘体5の開口部内方への突出量を減じるようにこれを屈曲変形させるという事前作業を必要とするものとは相違している。
【0058】
さらに、上記プレート体6が取り付けられた状態で上記開口部4内に上記サッシ枠1を嵌装し、その両側枠部1cにそれぞれ設けられた上記各溝部2を、上記開口部4の左右の側壁面4cにそれぞれ対向させる。したがって、この状態では、上記各プレート体6は、上記サッシ枠1の溝部2にその側方から臨んだ状態となっている。
【0059】
しかる後、上記各プレート体6の突出部6bを、図7に実線図示するように上方側へ屈曲変形させてその先端側を上記溝部2内に進入させる。これで上記サッシ枠1の上記開口部4への嵌装作業が終了する。この状態においては、上記サッシ枠1は上記プレート体6が上記溝部2の前後の側壁部2bと係合する範囲内においてのみ、その厚さ方向に移動可能とされ、それ以上の移動は規制されることになる。この場合、上記プレート体6は上記釘体5よりもその幅寸法(上記サッシ枠1の厚さ方向の寸法)が大きいため、上記第1の実施形態のように上記釘体5を用いた場合に比して、上記サッシ枠1の移動可能範囲が狭くなり、上記サッシ枠1の落下防止という点については有利である。
【0060】
次に、上記各実施形態に場合と同様に、上記サッシ枠1の外周と上記開口部4の内周の間の空間部9内に硬質発泡ウレタンを注入充填してこれを発泡硬化させて樹脂硬化体8とし、この樹脂硬化体8によって上記空間部9を閉塞してその気密性を確保するとともに、上記サッシ枠1を上記開口部4側に固定保持させる(図7図8参照)。以上で、上記サッシ枠1の上記開口部4に対する固定作業が完了する。
【0061】
このように上記開口部4の側壁面4cに取り付けた上記プレート体6の突出部6bを上記サッシ枠1側の上記溝部2内に進入させた状態で、上記空間部9を硬質発泡ウレタン8で充填しこれを発泡硬化させて樹脂硬化体8とすることで、例えば、建物の火災によって、上記樹脂硬化体8が溶融して上記サッシ枠1に対する固定保持機能が消滅した場合、該サッシ枠1は、樹脂硬化体8の溶融進行に伴って自重降下し、上記開口部4の下側内面4b上に当接することでそれ以上の降下が阻止され、また上記サッシ枠1の上部寄り位置においては上記プレート体6の突出部6bと上記溝部2の側壁部2bとの係合による移動規制作用によってサッシ枠1の厚さ方向への移動(傾動)が規制されることから、これらの相乗効果として、上記サッシ枠1は上記開口部4からの離脱及び落下が確実に防止され、その結果、火災時における安全性が確保される。
【0062】
上記以外の作用効果については、上記第1の実施形態の場合と同様であるので、その該当部分を援用し、ここでの説明を省略する。
【0063】
C:第3の実施形態
図9図11には、本願発明の第3の実施形態に係るサッシ枠の固定方法の要部を示している。この実施形態の固定方法は、その基本構成は上記第1、第2の実施形態の固定方法と同様であって、これと異なる点は、係止部材10の構成である。
【0064】
即ち、上記第1の実施形態の固定方法では上記係止部材10として上記釘体5を採用し、上記第2の実施形態の固定方法では上記係止部材10として上記プレート体6を採用していたのに対して、この実施形態では上記係止部材10として、図9に斜視図で示すように、所定大きさの二枚の板材をヒンジ7cで連結し、その一方の板材を固定部7a、他方の板材を展開部7bとしたヒンジ体7で構成している。そして、このヒンジ体7は、上記固定部7aが上記ヒンジ7cから上方へ立ち上がるように立てた姿勢で、該固定部7aを上記開口部4の側壁面4cに衝合させ且つこれを固定具11によって固定することで該開口部4側に取り付けられる。
【0065】
そして、この取り付け状態において、上記展開部7bは、図10に鎖線図示するように、上記ヒンジ7cから上方へ立ち上がって上記固定部7aの前面に当接した状態で保持された「退避位置」と、同図の実線図示するように、上記ヒンジ7cを中心として前方へ展開し、上記サッシ枠1が上記開口部4内に嵌装された状態では該サッシ枠1の上記溝部2内に進入しその底面部2aに当接して傾斜状態で姿勢保持される「展開位置」の間で姿勢変更可能とされる。
【0066】
したがって、上記ヒンジ体7は、上記「退避位置」においては、上記開口部4内への上記サッシ枠1の嵌装を許容する一方、上記「展開位置」においては、上記開口部4内に嵌装された上記サッシ枠1側の上記溝部2の側壁部2bと側サッシ枠1の厚さ方向において係合し該サッシ枠1の厚さ方向への移動を所定範囲内で規制するように機能する。
【0067】
上記サッシ枠1の上記開口部4への嵌装作業は、先ず、上記ヒンジ体7を「退避位置」に設定し、その状態で、上記開口部4内に上記サッシ枠1を嵌装し、上記各溝部2を上記開口部4の左右の側壁面4cにそれぞれ対向させる。したがって、この状態では、上記各ヒンジ体7は、上記サッシ枠1の溝部2にその側方から臨んだ状態となっている。
【0068】
しかる後、上記ヒンジ体7の展開部7bを上記「退避位置」から前方へ展開させて上記溝部2側に進入させ、これを該溝部2の底面部2aに当接させる。これで上記サッシ枠1の上記開口部4への嵌装作業が終了する。
【0069】
この状態においては、上記サッシ枠1は上記ヒンジ体7の展開部7bが上記溝部2の前後の側壁部2bと係合する範囲内においてのみ、その厚さ方向に移動可能とされ、それ以上の移動は規制されることになる。この場合、上記ヒンジ体7は上記第1の実施形態における上記釘体5よりもその幅寸法(上記サッシ枠1の厚さ方向の寸法)が大きいため、該釘体5を用いた場合に比して、上記サッシ枠1の移動可能範囲が狭くなり、上記サッシ枠1の落下防止という点については有利である。
【0070】
また、上記ヒンジ体7の展開部7bは、展開方向に搖動可能で且つ上記溝部2の底面部2aへの当接によって展開角度が規定される構成であるから、例えば、上記開口部4内への上記サッシ枠1の嵌装作業において該サッシ枠1を左右方向へずらせて位置決めをする場合には、この窓枠1の左右方向へのずれが上記展開部7bの搖動によって吸収され、該展開部7bと上記溝部2の側壁部2bとの係合状態が良好に維持され、該サッシ枠1の移動規制作用が損なわれることはない。
【0071】
次に、上記各実施形態に場合と同様に、上記サッシ枠1の外周と上記開口部4の内周の間の空間部9内に硬質発泡ウレタンを注入充填してこれを発泡硬化させて樹脂硬化体8とし、この樹脂硬化体8によって上記空間部9を閉塞してその気密性を確保するとともに、上記サッシ枠1を上記開口部4側に固定保持させる(図10図11参照)。以上で、上記サッシ枠1の上記開口部4に対する固定作業が完了する。
【0072】
このように上記開口部4の側壁面4cに取り付けた上記ヒンジ体7の展開部7bを上記サッシ枠1側の上記溝部2内に進入させた状態で、上記空間部9を硬質発泡ウレタン8で充填しこれを発泡硬化させて樹脂硬化体8とすることで、例えば、建物の火災によって、上記樹脂硬化体8が溶融して上記サッシ枠1に対する固定保持機能が消滅した場合、該サッシ枠1は、樹脂硬化体8の溶融進行に伴って自重降下し、上記開口部4の下側内面4b上に当接することでそれ以上の降下が阻止され、また上記サッシ枠1の上部寄り位置においては上記ヒンジ体7の展開部7bと上記溝部2の側壁部2bとの係合による移動規制作用によってサッシ枠1の厚さ方向への移動(傾動)が規制され、これらの相乗効果として、上記サッシ枠1は上記開口部4からの離脱及び落下が確実に防止され、その結果、火災時における安全性が確保される。
【0073】
上記以外の作用効果については、上記第1の実施形態の場合と同様であるので、その該当部分を援用し、ここでの説明を省略する。
【0074】
D:第4の実施形態
図12には、本願発明の第4の実施形態に係るサッシ枠の固定方法の要部を示している。この実施形態の固定方法は、その基本構成は上記第1〜第3の実施形態の固定方法と同様であって、これと異なる点は、上記開口部4の左右の側壁面4cのそれぞれに設けられる係止部材10の構成である。
【0075】
上記各実施形態においては、上記開口部4の左右の側壁面4cのそれぞれに設けられる係止部材10として同種構造の部材を採用していた。即ち、第1の実施形態では左右の側壁面4cのそれぞれに係止部材10として上記釘体5を取り付け、第2の実施形態では左右の側壁面4cのそれぞれに係止部材10として上記プレート体6を取り付け、第3の実施形態では左右の側壁面4cのそれぞれに係止部材10として上記ヒンジ体7を取り付けていた。
【0076】
これに対して、この実施形態では、上記開口部4の一方の側壁面4cに設けられる係止部材10と他方の側壁面4cに設けられる係止部材10を異なる構造の部材で構成している。具体的には、図12に示すように、上記開口部4の一方の側壁面4cには、第2の実施形態において用いた上記プレート体6を取り付け、他方の側壁面4cには第3の実施形態において用いた上記ヒンジ体7を取り付けたものである。
【0077】
そして、上記開口部4への上記サッシ枠1の嵌装時には、同図に鎖線図示するように、上記プレート体6はその突出部6bが上記サッシ枠1の側縁位置よりも側壁面4c寄りに位置するように該突出部6bを屈曲変形させており、また上記ヒンジ体7はその展開部7bが上記サッシ枠1の側縁位置よりも側壁面4c寄りに位置するように該展開部7bを「退避位置」に設定している。この状態で、上記開口部4内に上記サッシ枠1が嵌装される。
【0078】
上記開口部4への上記サッシ枠1の嵌装完了状態においては、上記プレート体6は上記サッシ枠1の一方の側部の溝部2に臨んでおり、上記ヒンジ体7は上記サッシ枠1の他方の側部の溝部2に臨んでいる。この状態で、上記プレート体6は、これを屈曲変形させてその突出部6bを上記溝部2内に進入させる。また、上記ヒンジ体7は、その展開部7bを「退避位置」から前方へ(開口部内方へ)展開させて上記溝部2内に進入させる。
【0079】
しかる後、上記各実施形態に場合と同様に、上記サッシ枠1の外周と上記開口部4の内周の間の空間部9内に硬質発泡ウレタンを注入充填してこれを発泡硬化させて樹脂硬化体8とし、この樹脂硬化体8によって上記空間部9を閉塞してその気密性を確保するとともに、上記サッシ枠1を上記開口部4側に固定保持させる。以上で、上記サッシ枠1の上記開口部4に対する固定作業が完了する。
【0080】
このように、上記開口部4の左右の側壁面4cにそれぞれ取り付けた上記プレート体6の突出部6bと上記ヒンジ体7の展開部7bを上記サッシ枠1側の上記溝部2内にそれぞれ進入させた状態で、上記空間部9を硬質発泡ウレタン8で充填しこれを発泡硬化させて樹脂硬化体8とすることで、例えば、建物の火災によって、上記樹脂硬化体8が溶融して上記サッシ枠1に対する固定保持機能が消滅した場合、該サッシ枠1は、樹脂硬化体8の溶融進行に伴って自重降下し、上記開口部4の下側内面4b上に当接することでそれ以上の降下が阻止される一方、上記サッシ枠1の上部寄り位置においては上記プレート体6の突出部6bと上記溝部2の側壁部2bとの係合、及び上記ヒンジ体7の展開部7bと上記溝部2の側壁部2bとの係合によって上記サッシ枠1の厚さ方向への移動(傾動)が規制されることから、これらの相乗効果として、上記サッシ枠1は上記開口部4からの離脱及び落下が確実に防止され、その結果、火災時における安全性が確保される。
【0081】
上記以外の作用効果については、上記第1の実施形態の場合と同様であるので、その該当部分を援用し、ここでの説明を省略する。
【0082】
なお、この実施形態では、左右の係止部材10を、上記プレート体6と上記ヒンジ体7の組み合わせとして構成しているが、本願発明はこれに限定されるものではなく、例えば、左右の係止部材10を第1の実施形態において用いた上記釘体5と上記ヒンジ体7の組み合わせとして構成することもできる。
【0083】
E:第5の実施形態
図13には、本願発明の第5の実施形態に係るサッシ枠の固定方法の実施に供されるサッシ枠1とコンクリート壁3に設けられた開口部4との相対関係を示している。このサッシ枠1は、例えば、掃出し窓の窓枠として使用される縦長大型のサッシ枠であって、その基本構成は上記各実施形態におけるサッシ枠1と同じであって、その大きさのみが異なるものであり、上記各実施形態の場合と同様に、上記開口部4内に該サッシ枠1を嵌装した状態においては、該開口部4の側壁面4cに設けた係止部材10を上記サッシ枠1の溝部2内に進入させ、該サッシ枠1に厚さ方向への移動を該係止部材10と上記溝部2の側壁部2bとの係合によって規制するものである。
【0084】
そして、この実施形態の固定方法の特徴点は、上記開口部4の側壁面4cに取り付けた係止部材10に対して事後的に屈曲変形等の操作を加えることなく上記サッシ枠1の嵌装を可能としてその嵌装作業の簡略化、迅速化を図った点である。そして、この固定方法が成立するための前提事項は、大型のサッシ枠1に特有の捩り変形の許容性である。
【0085】
即ち、図13に示す大型のサッシ枠1Aにおいて、その上部の両隅部分にそれぞれ逆方向の外力Fを加えて捩ると、この捩り力を受けて該サッシ枠1の各辺の接合部が少しずつずれて、サッシ枠1Bのように、全体としてサッシ枠1の幅方向の中心線を軸とする捩り変形を起こす。そして、このような捩り変形を起こすと、サッシ枠の幅寸法(サッシ枠厚さ方向に直交する面上における左右の溝部2の側壁部2bの外端縁間の寸法)が変化し、捩り変形前のサッシ枠1Aにおいてはその幅寸法が「L1」であったのに対して、捩り変形後のサッシ枠1Bにおいては上記「L1」よりも小さい幅寸法「L2」となる。このようなサッシ枠1の捩り変形による幅寸法の変化を利用して該サッシ枠1を上記開口部4内に嵌装するものである。以下、このサッシ枠1の上記開口部4への嵌装作業を説明する。
【0086】
先ず、この実施形態においては、上記係止部材10として第1の実施形態において使用した上記釘体5と、第2の実施形態で使用した上記プレート体6の何れも使用できるが、ここでは上記プレート体6を採用している。この場合、上記プレート体6は、図13に拡大図示するように、固定部6aと突出部6bが略直交する形体とされている。そして、このプレート体6を、上記開口部4の左右の側壁面4cの上部位置に固定し、その突出部6bを開口部内方へ突出させる(図14図15参照)。このプレート体6は、この取り付け状態のまま使用され、事後的に屈曲変形等の加工操作が行われることはなく、この事後的な加工操作が省略される分だけ、サッシ枠1の嵌装作業における作業性が向上する。
【0087】
次に、上記サッシ枠1に捩り力を加えて捩り変形を起こさせた状態(図13のサッシ枠1Bの状態)で、該サッシ枠1を上記開口部4内に差し入れる。すると、上述のように上記サッシ枠1は捩り変形によってその幅寸法が小さくなっているため、図14に示すように、該サッシ枠1はその上記溝部2の側壁部2bが上記プレート体6と干渉することなく、該プレート体6の先端部をすり抜けて上記開口部4内に差し入れられ、上記溝部2が上記プレート体6に臨むことになる。
【0088】
上記プレート体6が上記溝部2に臨んだ時点で、該サッシ枠1に加えていた捩り力を解除すると、該サッシ枠1は当初形体に復帰し、その幅寸法が増加し、図15に示すように、上記プレート体6の突出部6bは上記溝部2内に進入し、該溝部2の側壁部2bとサッシ枠厚さ方向において係合可能な状態とされる。以上で、上記サッシ枠1の上記開口部4への嵌装作業が完了する。
【0089】
したがって、後は、上記各実施形態の場合と同様に、上記開口部4の内面と上記サッシ枠1の外周面との間の空間部9に硬質発泡ウレタンを注入充填してこれを発泡硬化させて樹脂硬化体8とし、この樹脂硬化体8によって上記空間部9を閉塞してその気密性を確保するとともに、上記サッシ枠1を上記開口部4側に固定保持させる。以上で、上記サッシ枠1の上記開口部4に対する固定作業が完了する。
【0090】
このように上記開口部4の側壁面4cに取り付けた上記プレート体6を上記サッシ枠1側の上記溝部2内に進入させた状態で、上記空間部9を硬質発泡ウレタン8で充填しこれを発泡硬化させて樹脂硬化体8とすることで、例えば、建物の火災によって、上記樹脂硬化体8が溶融して上記サッシ枠1に対する固定保持機能が消滅した場合、該サッシ枠1は、樹脂硬化体8の溶融進行に伴って自重降下し、上記開口部4の下側内面4b上に当接することでそれ以上の降下が阻止され、また上記サッシ枠1の上部寄り位置においては上記プレート体6と上記溝部2の側壁部2bとの係合による移動規制作用によってサッシ枠1の厚さ方向への移動(傾動)が規制され、これらの相乗効果として、上記サッシ枠1は上記開口部4からの離脱及び落下が確実に防止され、その結果、火災時における安全性が確保される。
【0091】
上記以外の作用効果については、上記第1の実施形態の場合と同様であるので、その該当部分を援用し、ここでの説明を省略する。
【0092】
F:その他
(1)上記各実施形態においては、サッシ枠1として、窓用のサッシ枠を例にとって説明したが、本願発明はこれに限定されるものではなく、例えば、扉用のサッシ枠の固定作業にも適用できるものである。
【0093】
(2)上記各実施形態においては、上記係止部材10として、釘体5、プレート体6及びヒンジ体7を採用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、少なくとも耐熱性を有し、且つ上記サッシ枠1の上記開口部4への嵌装状態において該サッシ枠1の上記溝部2の側壁部2bと係合し得る構造のものであれば適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本願発明に係るサッシ枠の固定方法は、建築分野において、主として新築建物に対するサッシ枠の取り付け工事に利用されるものである。
【符号の説明】
【0095】
1 ・・サッシ枠
2 ・・溝部
3 ・・コンクリート壁(躯体)
4 ・・開口部
5 ・・釘体
6 ・・プレート体
7 ・・ヒンジ体
8 ・・樹脂硬化体
9 ・・空間部
10 ・・係止部材
11 ・・固定具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15