特許第6381298号(P6381298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6381298二次電池内部抵抗測定装置および測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381298
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】二次電池内部抵抗測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20180820BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20180820BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20180820BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   H01M10/48 PZHV
   H02J7/00 Q
   H01M10/44 P
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-113156(P2014-113156)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227803(P2015-227803A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000159043
【氏名又は名称】菊水電子工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新保 隆
(72)【発明者】
【氏名】内田 昌利
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/002120(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/132311(WO,A1)
【文献】 特開2006−067683(JP,A)
【文献】 特開2011−097766(JP,A)
【文献】 特開平10−032936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源装置と、
前記直流電源装置に直列接続された定電流制御回路と、
それぞれ二次電池を接続可能な2以上の切替器であって、前記二次電池を前記直流電源装置および前記定電流制御回路に直列接続し、前記二次電池への接続方向を個別に切り替え可能な2以上の切替器と、
前記各切替器に接続された複数の二次電池の電圧をそれぞれ測定する2以上の電圧計と、
を備え、前記各二次電池の内部抵抗を測定するとき、前記2以上の切替器により少なくとも1つの前記切替器に接続された二次電池の接続方向が、他の前記切替器に接続された二次電池の接続方向に対して逆になるよう切り替えて前記複数の二次電池の充放電を行い、前記定電流制御回路の電流値および前記各電圧計の電圧値から前記各二次電池の内部抵抗を測定することを特徴する二次電池内部抵抗測定装置。
【請求項2】
前記各切替器は、個別に制御可能な2つの一回路二接点スイッチからなることを特徴とする請求項1に記載の二次電池内部抵抗測定装置。
【請求項3】
前記複数の二次電池は、前記切替器を介して直列接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池内部抵抗測定装置。
【請求項4】
接続方向を個別に切り替え可能な2以上の切替器を介して直列接続された複数の二次電池を充放電させたときの電流値と電圧値から前記二次電池の内部抵抗を測定する二次電池内部抵抗測定方法であって、
前記2以上の切替器により、少なくとも1つの前記二次電池の接続方向が他の前記二次電池の接続方向と逆になるよう接続するステップと、
前記複数の二次電池に定電流を供給するステップと、
前記定電流の電流値および前記複数の二次電池の電圧値を記録するステップと、
前記2以上の切替器により、前記複数の二次電池の電流方向を逆方向に切り替えるステップと、
前記定電流を供給するステップ、前記記録するステップおよび前記電流方向を逆方向に切り替えるステップを繰り返し、記録された前記電流値および前記電圧値からから前記各二次電池の内部抵抗を測定するステップと、
を有することを特徴とする二次電池内部抵抗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池を組み合わせた多セルのユニット式電池の内部抵抗を測定する二次電池内部抵抗測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)に搭載されるリチウム電池等の二次電池は、IEC62660−1規格が定める試験方法(性能要件)に従って二次電池の内部抵抗を測定する必要がある。図8に、IEC62660−1規格が定める二次電池の内部抵抗測定に関するテストオーダを示す。二次電池内部抵抗測定装置は、測定を行う二次電池に対して、一定の時間間隔で放電と充電を交互に繰り返しながら、充放電量を徐々に大きくしていくよう制御を行う。
【0003】
図9(a)に、従来技術の二次電池内部抵抗測定装置の構成を示し、図9(b)に、その概略図を示す。直流電源21の正極に定電流制御回路22の一方の端子が接続されており、直流電源21の負極と定電流制御回路22の他方の端子とが切替器23に接続され、切替器23を介して二次電池24に接続されている。切替器23は、二次電池24の正極と負極との接続を切り替える2つのスイッチ23a、23bを含む。また、二次電池24の電圧を測定可能なように電圧計25が設置されている。
【0004】
図9(a)、(b)は、二次電池が充電状態にあることを示しており、このとき、切替器23のスイッチ23a、23bの接点cは、それぞれ接点aに接続されている。二次電池24を放電するためには、切替器23のスイッチ23a、23bの接点cをそれぞれ接点bに接続させる。
【0005】
図10(a)に、従来技術の二次電池内部抵抗測定装置の放電状態を示し、図10(b)に、その概略図を示す。矢印は、電流の方向を示している。
【0006】
図9(b)と図10(b)との比較から分かるように、二次電池への充電電流と二次電池からの放電電流の向きが逆になるため、放電状態のときと充電状態のときとでは、定電流制御回路22から見た二次電池の方向(極性)が逆になる。図11に、二次電池から観た放電電流と、充電電流の方向を示す。
【0007】
現在、PHVやEVの大出力化に伴い、大電力確保のために、一般に数十個・数百個の単セル二次電池を直列・並列に組み合わせた多セルのユニット式電池が利用されている。このような利用形態において、充電と放電がダイナミックに変移する条件下でも、当該電池の現在状態を適宜把握する技術の重要性が高まっており、かかるEV分野における多セルのユニット式電池の大電流での試験が求められている。
【0008】
図12に、従来技術での多セルのユニット式電池の内部抵抗測定装置の構成を示す。従来技術の二次電池内部抵抗測定装置は、単セル二次電池の直列接続数に依存し、その数が増えれば増えるほど試験電圧が上昇する。例えば単セルの定格電圧が50ボルトの二次電池を4個直列接続した場合は以下の数式から、200ボルトの試験電圧が必要になる。
Vt=Vc×n
(Vt:試験電圧、Vc:単セルの定格電圧、n:二次電池直列接続数)
【0009】
このような大容量の多セルのユニット式電池の高電圧に対応するため、二次電池内部抵抗測定装置の直流電源および定電流制御回路からなる充放電電源装置も大型化する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−121516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、その結果、従来技術では次のような課題が生じている。
(1)直流電源21および定電流制御回路22が大型化して、消費電力および装置全体の重量が増大する。
(2)直流電源21および定電流制御回路22が高価になる。
(3)直流電源21および定電流制御回路22の重量が増大することによって、その移動が困難になる。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数の二次電池からなる多セルのユニット式電池の内部抵抗を測定する小型・省電力の二次電池内部抵抗測定装置および測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、二次電池内部抵抗測定装置であって、直流電源装置と、前記直流電源装置に直列接続された定電流制御回路と、それぞれ二次電池を接続可能な2以上の切替器であって、前記二次電池を前記直流電源装置および前記定電流制御回路に直列接続し、前記二次電池への接続方向を個別に切り替え可能な2以上の切替器と、前記各切替器に接続された二次電池の電圧をそれぞれ測定する2以上の電圧計と、を備え、前記各二次電池の内部抵抗を測定するとき、前記2以上の切替器により少なくとも1つの前記切替器に接続された二次電池の接続方向が、他の前記切替器に接続された二次電池の接続方向に対して逆になるよう切り替えて前記複数の二次電池の充放電を行い、前記定電流制御回路の電流値および前記各電圧計の電圧値から前記各二次電池の内部抵抗を測定することを特徴する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の二次電池内部抵抗測定装置において、前記各切替器は、個別に制御可能な2つの一回路二接点スイッチからなることを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の二次電池内部抵抗測定装置において、前記複数の二次電池は、前記切替器を介して直列接続されることを特徴とする。
【0018】
請求項に記載の発明は、接続方向を個別に切り替え可能な2以上の切替器を介して直列接続された複数の二次電池を充放電させたときの電流値と電圧値から前記二次電池の内部抵抗を測定する二次電池内部抵抗測定方法であって、前記2以上の切替器により、少なくとも1つの前記二次電池の接続方向が他の前記二次電池の接続方向と逆になるよう接続するステップと、前記複数の二次電池に定電流を供給するステップと、前記定電流の電流値および前記複数の二次電池の電圧値を記録するステップと、前記2以上の切替器により、前記複数の二次電池の電流方向を逆方向に切り替えるステップと、前記定電流を供給するステップ、前記記録するステップおよび前記電流方向を逆方向に切り替えるステップを繰り返し、記録された前記電流値および前記電圧値からから前記各二次電池の内部抵抗を測定するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、複数の二次電池かなる多セルのユニット式電池の内部抵抗を測定する二次電池内部抵抗測定装置を小型化して装置の移動を容易にし、且つ省電力化する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願発明の一実施形態に係る二次電池内部抵抗測定装置の構成を示す図である。
図2】(a)、(b)は、本願発明の一実施形態に係る二次電池内部抵抗測定装置の動作状況を示す図である。
図3】(a)、(b)は、図2(a)、(b)を概略的に示す図である。
図4】(a)は、二次電池4−1から二次電池4−2への電荷移動を示す図であり、(b)は、二次電池4−2から二次電池4−1への電荷移動を示す図である。
図5】蓄積電荷量が等しい2つの二次電池が並列接続されている場合を示す図である。
図6】別置した直流電源1にて放電側の電池(直流電源)の電圧上昇を補償する様子を示す図である。
図7】(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る二次電池内部抵抗測定装置において従来技術と同一の測定方法で二次電池の内部抵抗を測定する場合の切替器の接続状態を示す図である。
図8】IEC62660−1規格が定める二次電池の内部抵抗測定に関するテストオーダを示す図である。
図9】(a)は、従来技術の二次電池内部抵抗測定装置の構成を示す図であり、(b)は、その概略図である。
図10】(a)は、従来技術の二次電池内部抵抗測定装置の放電状態を示す図であり、(b)は、その概略図である。
図11】二次電池から観た放電電流と、充電電流の方向を示す図である。
図12】従来技術での多セルのユニット式電池の内部抵抗測定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に、本願発明の一実施形態に係る二次電池内部抵抗測定装置の構成を示す。直流電源1の正極に定電流制御回路2の一方の端子が接続されており、定電流制御回路2の他方の端子が切替器3−1のスイッチ3−1aの接点cに接続され、直流電源1の負極が切替器3−2のスイッチ3−2bの接点cに接続されている。切替器3−1のスイッチ3−1bの接点cと切替器3−2のスイッチ3−2aの接点cが接続され、切替器3−1、3−2は直列接続されている。
【0023】
切替器3−1のスイッチ3−1a、3−1bの接点a、bには二次電池4−1が接続でき、接点cはスイッチ3−1a、3−1bを切り替えることにより、二次電池4−1の正極と負極との接続の切り替えが可能とされている。同様に、切替器3−2にも二次電池4−2が接続できる。また、二次電池4−1、4−2の電圧を測定可能なように電圧計5−1、5−2が設置されている。
【0024】
尚、図1には、切替器および電圧計がそれぞれ2つの場合を示しているが、電圧計は測定する二次電池単位毎に1つ設置される。また、切替器を2以上の任意の数備えていても良い。
【0025】
図2(a)、(b)に、本願発明の一実施形態に係る二次電池内部抵抗測定装置の低電圧での内部抵抗測定時における動作状況を示す。
【0026】
図2(a)は、二次電池4−1が放電状態、二次電池4−2が充電状態となっていることを示している。このように、切替器3−1のスイッチ3−1a、3−1bの接点cを接点bに接続し、且つ切替器3−2のスイッチ3−2a、3−2bの接点cを接点aに接続すると、二次電池4−1が放電状態となり、且つ二次電池4−2が充電状態になる。
【0027】
図2(b)は、二次電池4−2が放電状態、二次電池4−1が充電状態となっていることを示している。このように、切替器3−1、3−2を切り替えて、切替器3−1のスイッチ3−1a、3−1bの接点cを接点aに接続し、且つ切替器3−2のスイッチ3−2a、3−2bの接点cを接点bに接続すると、二次電池4−2が放電状態、二次電池4−1が充電状態になる。
【0028】
このように、本発明の一実施形態では、低電圧で二次電池の内部抵抗の測定を行うとき、各切替器は、接続された二次電池の接続方向が2つの切替器で常に逆になるよう制御される。すなわち、本発明では、2以上の切替器を備え、それら2以上の切替器を制御することにより、少なくとも1つの二次電池の接続方向を、他の二次電池の接続方向に対して逆にする。
【0029】
図3(a)、(b)に、図2(a)、(b)を概略的に示す。図3(a)では、二次電池4−1が二次電池4−2を充電するための直流電源として作用し、二次電池4−1からの放電電流i1は、二次電池4−2への充電電流i1として利用される。図3(b)では、図3(a)に対し電池4−1、4−2が逆向きに接続され、二次電池4−2が二次電池4−1を充電するための直流電源として作用し、二次電池4−2からの放電電流i1が二次電池4−1への充電電流i1として利用される。
【0030】
本発明は、EV車に搭載された状態の高電圧な多セルのユニット式二次電池の内部抵抗測定装置の小型化・省電力化を主な目的とするものであるが、EV車から取り外した二次電池の内部抵抗測定も可能とするものである。
【0031】
本発明では、二次電池を2つ1組にして図3(a)の向き、および図3(b)の向きになるように構成すれば、二次電池の内部抵抗を測定しても、理想的には二次電池4−1および4−2の間を電荷が移動するだけで済む、すなわち、二次電池4−1および4−2以外の直流電源装置を必要としないことになる。したがって、このような二次電池の特性を利用すれば、直流電源装置1の電力容量を従来技術よりも小さくして、低電圧でのIEC62660−1が定めるテストオーダの実行が可能になり、EV車に搭載された状態での二次電池内部の抵抗測定も可能な二次電池内部抵抗測定装置の小型化・省電力化が可能になる。以下により詳細に説明する。
【0032】
図4(a)は、二次電池4−1から二次電池4−2への電荷移動を示す図である。本図から分かるように、電流i1は二次電池4−1(直流電源)からの放電電流であり、二次電池4−2への充電電流でもある。
【0033】
電荷Qは、次の数式で表すことができるため、電流i1の量は、二次電池4−1(直流電源)から二次電池4−2への移動電荷量に相当し、また、二次電池4−1(直流電源)から放出される電荷量は、二次電池4−2へ移動する電荷量と等しい。
【0034】
【数1】
【0035】
図4(b)は、二次電池4−2から二次電池4−1への電荷移動を示す図である。
電流i2は二次電池4−2(直流電源)からの放電電流であり、二次電池4−1への充電電流でもある。従って、電流i1と電流i2が等しい場合、二次電池4−2(直流電源)から放出される電荷量と、二次電池4−1へ移動する電荷量は等しくなる。
【0036】
この一連の動作を同時に行うと、放電状態にある側の二次電池が直流電源として作用し、二次電池4−1および4−2相互間のみで電荷が移動するため、原理的には別途の直流電源装置は不要となる。IEC62660−1が定めるテストオーダでは、最初に1/3Itの電流値で10秒間放電させた後、一定時間休止させた後、再び1/3Itの電流値で10秒間充電することを要求している。本発明の構成では、二次電池4−1または二次電池4−2のいずれか一方を放電状態にすると同時に他方を充電状態にするため、かかる1/3Itの電流値での充電/放電動作が同時に実行される。
【0037】
たとえば二次電池4−1が放電状態、二次電池4−2が充電状態の場合、かかる1/3Itの電流値にて二次電池4−1から二次電池4−2へ当該電流値に相当する電荷が移動し、一定時間経過後、今度は二次電池4−2が放電状態、二次電池4−1が充電状態となるように切替器3−1および3−2が制御される。そして再び1/3Itの電流値に相当する電荷が二次電池4−2から二次電池4−1へ移動する。
【0038】
以上説明したように、本案では、原理的には別途直流電源を設ける必要がないのだが、一連の充放電動作によって二次電池4−1および二次電池4−2の内部に蓄えられた電荷量が等しくなると、IEC62660−1が定めるテストオーダを実行中であっても瞬時に充放電動作が停止するおそれがある。
【0039】
図5に、蓄積電荷量が等しい2つの二次電池が並列接続されている場合を示す。電荷Qは、以下の数式で表わされる。そのため、キヤパシタCが等しいとすると、双方の蓄積電荷量が等しくなったときの各々の電圧値は、ほぼ等しくなる。
Q=C×V
【0040】
ただし、二次電池の充電時の電圧上昇カーブと放電時の電圧下降カーブは、ともに非直線的であるため、必ずしも双方の蓄積電荷量が等しくなったときの電圧は同一とは限らない。かかる問題を解決するため、本発明では満充電時の電圧値すなわちその二次電池の定格電圧を上限とする直流電源装置1を別途設けることとしている。
【0041】
図6に、別置した直流電源1にて放電側の電池(直流電源)の電圧上昇を補償する様子を示す。従来技術の直流電源装置の電圧値(試験電圧値)は、単セル二次電池の直列・並列接続数に依存し、その数が増えれば増えるほど試験電圧が上昇する。そのため、例えば単セルの定格電圧が50ボルトの二次電池を4個直列接続した場合は200ボルトの試験電圧が必要になるうえ、試験電流も単セルの定格電流に依存するため、単セル数が増えれば増えるほど大電力が必要になる。
【0042】
一方、本発明の場合、二次電池を2つ1組にして放電側の一方の二次電池が充電用の他方の二次電池に対して直流電源として作用し、組み合わされた2つの二次電池の間で放電と充電を交互に行うようにしてIEC62660−1が定めるテストオーダを実施するため、内部抵抗測定による電荷の移動は二次電池4−1および4−2の間でのみ行われ、従来技術よりも格段に小容量の直流電源装置を別置すれば良い。
【0043】
また、当該直流電源装置の試験電圧値も例えば単セルの定格電圧が50ボルトの場合は、最大でも50ボルトで済む。すなわち本発明の直流電源1は、従来技術の直流電源21とは異なり、放電側の二次電池の補助電源として働いている。
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、EV車に搭載された状態の高電圧な多セルのユニット式二次電池の内部抵抗測定も可能な、消費電力が小さく、軽量小型で可搬性に優れた二次電池内部抵抗測定装置が実現できる。
【0045】
尚、本発明の二次電池内部抵抗測定装置では、二次電池の内部抵抗を測定していないときは、二次電池の接続方向を統一するよう切替器を制御することにより高電圧で充放電が可能であり、従来技術と同一の測定方法で二次電池の内部抵抗を測定することも可能である。
【0046】
図7に、本発明の一実施形態に係る二次電池内部抵抗測定装置において従来技術と同一の測定方法で二次電池の内部抵抗を測定する場合の切替器の接続状態を示す。この場合、切替器3−1、3−2の接点cを共に接点bに接続することにより、二次電池4−1および4−2を共に放電状態にすることができる。また、切替器3−1、3−2の接点cを共に接点aに接続することにより、二次電池4−1および4−2を共に充電状態にすることができる。
【0047】
このように、本案では、切替器3−1および切替器3−2の切替動作を制御することによって、簡単に従来技術での二次電池の内部抵抗測定へ切替ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1、21 直流電源装置
2、22 定電流制御回路
3−1、3−2、23 切替器
3−1a、3−1b、3−2a、3−2b、23a、23b、 スイッチ
4−1、4−2、24、24a、24b 二次電池
5−1、5−2、25、25a、25b 電圧計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12