特許第6381372号(P6381372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

特許6381372無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム
<>
  • 特許6381372-無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム 図000002
  • 特許6381372-無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム 図000003
  • 特許6381372-無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム 図000004
  • 特許6381372-無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム 図000005
  • 特許6381372-無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム 図000006
  • 特許6381372-無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム 図000007
  • 特許6381372-無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム 図000008
  • 特許6381372-無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム 図000009
  • 特許6381372-無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381372
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20180820BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20180820BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20180820BHJP
   H04L 27/02 20060101ALI20180820BHJP
   H04L 27/18 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H04W56/00 110
   H04W88/08
   H04W16/26
   H04L27/02 Z
   H04L27/18 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-176041(P2014-176041)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-51995(P2016-51995A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】縣 亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓仁
【審査官】 吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−336177(JP,A)
【文献】 特表2008−506321(JP,A)
【文献】 実開平04−131057(JP,U)
【文献】 特表2012−520590(JP,A)
【文献】 特表2013−518500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
H04L 27/02
H04L 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線アクセスネットワークに適用され、ベースバンド処理装置と通信を行なう無線装置であって、
GPS(Global Positioning System)アンテナと、
前記GPSアンテナで取得した高速通信を必要としないクロック信号を第1の変調方式で変調する第1の変調部と、
高速通信に用いる高速信号を第2の変調方式で変調する第2の変調部と、
前記第2の変調方式で変調された高速信号に前記第1の変調方式で変調されたクロック信号を重畳させて前記ベースバンド処理装置に送信する送受信部と、を備え
前記クロック信号は、前記ベースバンド処理装置により前記無線装置または前記無線装置とは異なる他の無線装置とのリンクアップに用いられることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記第1の変調方式と前記第2の変調方式は、ともに強度変調方式であって、前記第1の変調方式の変調度は、前記第2の変調方式の変調度よりも低いことを特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項3】
前記第1の変調方式は、強度変調方式であると共に、前記第2の変調方式は、位相変調方式であることを特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項4】
前記第1の変調方式は、位相変調方式であると共に、前記第2の変調方式は、強度変調方式であることを特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項5】
前記高速信号は、CPRI(Common Public Radio Interface)信号であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の無線装置。
【請求項6】
無線アクセスネットワークに適用され、配下の無線装置と通信を行なうベースバンド処理装置であって、
いずれかの無線装置から、第2の変調方式で変調され高速通信に用いる高速信号に、GPS(Global Positioning System)アンテナで取得され第1の変調方式で変調され高速通信を必要としないクロック信号を重畳した信号を受信する受信部と、
前記受信した信号からクロック信号を抽出する抽出部と、
前記抽出したクロック信号を用いて、配下の無線装置に対して、前記第2の変調方式で変調した高速信号を送信する送信部と、を備え
前記クロック信号は、前記配下の無線装置とのリンクアップに用いられることを特徴とするベースバンド処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれかに記載の無線装置と、
請求項記載のベースバンド処理装置と、から構成されることを特徴とする無線基地局システム。
【請求項8】
GPS(Global Positioning System)アンテナを備えない無線装置をさらに有することを特徴とする請求項7記載の無線基地局システム。
【請求項9】
無線アクセスネットワークに適用され、ベースバンド処理装置と通信を行なう無線装置のプログラムであって、
GPS(Global Positioning System)アンテナで取得した高速通信を必要としないクロック信号を第1の変調方式で変調する処理と、
高速通信に用いる高速信号を第2の変調方式で変調する処理と、
前記第2の変調方式で変調された高速信号に前記第1の変調方式で変調されたクロック信号を重畳させて前記ベースバンド処理装置に送信する処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させ
前記クロック信号は、前記ベースバンド処理装置により前記無線装置または前記無線装置とは異なる他の無線装置とのリンクアップに用いられることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスネットワークに適用され、高速通信を必要としない低速信号および高速通信に用いる高速信号を送受信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、RAN(Radio Access Network)と呼称される無線アクセスネットワークが利用されている。従来の一般的なRANでは、図8Aに示すように、アンテナを用いて無線信号を送受信するRRH(Remote Radio Head)80a、81a、および、RRHを制御し信号処理を行なうBBU(Base Band Unit)80b、81bで基地局装置を構成する。基地局装置は、セル80c、81cをそれぞれ構成し、各BBU80b、81bは、Central Office82に接続されている。時刻同期をとるためには、アンテナ局としてのRRHにGPS(Global Positioning System)アンテナを設けることでクロック信号を取得する。各BBUは、取得したクロック信号を用いて同期を取ることが可能となっている。ただし、このような従来のRANでは、各BBUがRRHを個別に制御するため、セルの干渉を回避することが容易ではなかった。
【0003】
一方、近時、C−RAN(Centralized Radio Access Network)と呼称される無線アクセスネットワークが提案されている。図8Bに示すように、このC−RANでは、各基地局装置にBBUを設けるのではなく、Central Office83にBBU84を設けることで、複数のRRHを集中制御する構成を採っている。これにより、複数のRRHの連携を図ることができ、基地局装置間の干渉を防止することができるようになる。
【0004】
ところが、図8Bに示したC−RANでは、BBU84をCentral Office83に設けたため、必ずしもGPSアンテナをBBU84の近傍に設けることができない。このように、GPSアンテナ等のクロック源をBBUに設置することができない場合、BBUにクロック信号を供給できないため、BBUと各RRHとの間でリンクアップできなくなってしまう。
【0005】
遠方に設置されているGPSアンテナで取得したクロック信号を、IPネットワークを経由してBBUに提供する方法として、IEEE1588がある。また、特許文献1に開示されている通信システムは、IEEE1588を用いて、ネットワークを介した通信装置間の効率的なクロック同期処理を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−003407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、遠方に設置されているGPSアンテナで取得したクロック信号を、IEEE1588によりIPネットワークを経由してBBUに提供するためには、IPネットワーク側の機器が、すべてIEEE1588に対応していなければならない。このため、IPネットワーク側に1台でもIEEE1588に対応していない機器があった場合、クロック信号をBBU側に提供することができず、C−RANを実現することができない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、IEEE1588に対応していない機器があっても、C−RANを構成することができる無線装置、ベースバンド処理装置、無線基地局システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線装置は、無線アクセスネットワークに適用され、ベースバンド処理装置と通信を行なう無線装置であって、高速通信を必要としない低速信号を第1の変調方式で変調する第1の変調部と、高速通信に用いる高速信号を第2の変調方式で変調する第2の変調部と、前記第2の変調方式で変調された高速信号に前記第1の変調方式で変調された低速信号を重畳させて前記ベースバンド処理装置に送信する送受信部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このように、第2の変調方式で変調された高速信号に第1の変調方式で変調された低速信号を重畳させてベースバンド処理装置に送信するので、ベースバンド処理装置にGPSアンテナを設けることなく、クロック信号をベースバンド処理装置に提供することが可能となる。これにより、すべての機器がIEEE1588に対応していなくても、ベースバンド処理装置と配下の無線装置との間でリンクを形成し、通信システムとして稼働させることが可能となる。
【0011】
(2)また、本発明の無線装置は、GPS(Global Positioning System)アンテナを備え、前記第1の変調部は、前記GPSアンテナで取得したクロック信号を前記低速信号として前記第1の変調方式で変調することを特徴とする。
【0012】
このように、GPSアンテナで取得したクロック信号を低速信号として第1の変調方式で変調して、ベースバンド処理装置に送信するので、ベースバンド処理装置にGPSアンテナを設けることなく、クロック信号をベースバンド処理装置に提供することが可能となる。
【0013】
(3)また、本発明の無線装置において、前記第1の変調方式と前記第2の変調方式は、ともに強度変調方式であって、前記第1の変調方式の変調度は前記第2の変調方式の変調度よりも低いことを特徴とする。
【0014】
このように、前記第1の変調方式と前記第2の変調方式は、ともに強度変調方式であって、前記第1の変調方式の変調度は、前記第2の変調方式の変調度よりも低いため、高速信号の通信に影響を与えることなく、低速信号を高速信号に重畳させることが可能となる。
【0015】
(4)また、本発明の無線装置において、前記第1の変調方式は、強度変調方式であると共に、前記第2の変調方式は、位相変調方式であることを特徴とする。
【0016】
このように、第1の変調方式は、強度変調方式であると共に、第2の変調方式は、位相変調方式であるので、高速信号の通信に影響を与えることなく、低速信号を高速信号に重畳させることが可能となる。
【0017】
(5)また、本発明の無線装置において、前記第1の変調方式は、位相変調方式であると共に、前記第2の変調方式は、強度変調方式であることを特徴とする。
【0018】
このように、第1の変調方式は、位相変調方式であると共に、第2の変調方式は、強度変調方式であるので、高速信号の通信に影響を与えることなく、低速信号を高速信号に重畳させることが可能となる。
【0019】
(6)また、本発明の無線装置において、前記高速信号は、CPRI(Common Public Radio Interface)信号であることを特徴とする。
【0020】
このように、高速信号は、CPRI信号であるので、すべての機器がIEEE1588に対応していなくてもC−RANを実現することが可能となる。
【0021】
(7)また、本発明のベースバンド処理装置は、無線アクセスネットワークに適用され、配下の無線装置と通信を行なうベースバンド処理装置であって、いずれかの無線装置から、第2の変調方式で変調され高速通信に用いる高速信号に第1の変調方式で変調され高速通信を必要としない低速信号を重畳した信号を受信する受信部と、前記受信した信号から低速信号を抽出する抽出部と、前記抽出した低速信号を用いて、配下の無線装置に対して、前記第2の変調方式で変調した高速信号を送信する送信部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
このように、いずれかの無線装置から、第2の変調方式で変調され高速通信に用いる高速信号に第1の変調方式で変調され高速通信を必要としない低速信号を重畳した信号を受信し、受信した信号から低速信号を抽出し、抽出した低速信号を用いて、配下の無線装置に対して、第2の変調方式で変調した高速信号を送信するので、ベースバンド処理装置にGPSアンテナを設けなくても、クロック信号を取得することが可能となる。これにより、すべての機器がIEEE1588に対応していなくても、ベースバンド処理装置と配下の無線装置との間でリンクを形成し、通信システムとして稼働させることが可能となる。
【0023】
(8)また、本発明の無線基地局システムは、上記(1)から(6)のいずれかに記載の無線装置と、上記(7)記載のベースバンド処理装置と、から構成されることを特徴とする。
【0024】
この構成により、ベースバンド処理装置にGPSアンテナを設けることなく、クロック信号をベースバンド処理装置に提供することが可能となる。これにより、すべての機器がIEEE1588に対応していなくても、ベースバンド処理装置と配下の無線装置との間でリンクを形成し、通信システムとして稼働させることが可能となる。
【0025】
(9)また、本発明のプログラムは、無線アクセスネットワークに適用され、ベースバンド処理装置と通信を行なう無線装置のプログラムであって、高速通信を必要としない低速信号を第1の変調方式で変調する処理と、高速通信に用いる高速信号を第2の変調方式で変調する処理と、前記第2の変調方式で変調された高速信号に前記第1の変調方式で変調された低速信号を重畳させて前記ベースバンド処理装置に送信する処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0026】
このように、第2の変調方式で変調された高速信号に第1の変調方式で変調された低速信号を重畳させてベースバンド処理装置に送信するので、ベースバンド処理装置にGPSアンテナを設けることなく、クロック信号をベースバンド処理装置に提供することが可能となる。これにより、すべての機器がIEEE1588に対応していなくても、ベースバンド処理装置と配下の無線装置との間でリンクを形成し、通信システムとして稼働させることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ベースバンド処理装置にGPSアンテナを設けることなく、クロック信号をベースバンド処理装置に提供することが可能となる。これにより、すべての機器がIEEE1588に対応していなくても、ベースバンド処理装置と配下の無線装置との間でリンクを形成し、通信システムとして稼働させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る無線基地局システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】GPSアンテナが接続された無線装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】無線装置100の動作を示すフローチャートである。
図4】無線装置13がベースバンド処理装置50に送出する信号の一例を示す図である。
図5】無線装置21、31がベースバンド処理装置50に送信する信号の一例を示す図である。
図6】ベースバンド処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図7】ベースバンド処理装置の動作を示すフローチャートである。
図8A】従来の一般的なRAN(Radio Access Network)の構成を示す図である。
図8B】C−RAN(Centralized Radio Access Network)の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、従来の手法では、C−RAN(Centralized Radio Access Network)において、遠方に設置されているGPSアンテナで取得したクロック信号を、IPネットワークを経由してBBUに提供するには、IPネットワーク側のすべての機器がIEEE1588に対応していなければクロック信号のBBUへの提供を実現させることができなかった点に着目し、低速信号としてのクロック信号を高速信号としてのCPRI信号に重畳させることによって、BBUにGPSアンテナが無くても、また、すべての機器がIEEE1588に対応していなくても、C−RANを実現することができることを見出し、本発明をするに至った。
【0030】
すなわち、本発明の無線装置は、無線アクセスネットワークに適用され、ベースバンド処理装置と通信を行なう無線装置であって、高速通信を必要としない低速信号を第1の変調方式で変調する第1の変調部と、高速通信に用いる高速信号を第2の変調方式で変調する第2の変調部と、前記第2の変調方式で変調された高速信号に前記第1の変調方式で変調された低速信号を重畳させて前記ベースバンド処理装置に送信する送受信部と、を備えることを特徴とする。
【0031】
これにより、本発明者らは、ベースバンド処理装置にGPSアンテナを設けることなく、クロック信号をベースバンド処理装置に提供することを可能とした。その結果、すべての機器がIEEE1588に対応していなくても、ベースバンド処理装置と配下の無線装置との間でリンクを形成し、通信システムとして稼働させることを可能とした。以下、本発明の実施形態については、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る無線基地局システムの概略構成を示すブロック図である。基地局1は、GPSアンテナ11と無線装置13を備えており、GPS衛星40からクロック信号を取得する。基地局2は、無線装置21を備え、基地局3は、無線装置31を備えている。基地局2および3は、GPSアンテナを備えていない。ベースバンド処理装置50は、配下の基地局1〜3を制御する。ベースバンド処理装置50と各基地局1〜3とは、光ファイバ等の通信回線により接続されている。
【0033】
図1において、クロック源であるGPS衛星40からのクロック信号を受信したGPSアンテナ11は、基地局1内の無線装置13に対して、クロック信号を送信する。当該クロック信号を受け取った無線装置13は、無変調の上り信号、例えば、通信回線が光ファイバの場合は連続光、無線回線の場合は電波を第1の変調方式で変調し、通信回線に送出する。これにより、無線装置13は、クロック信号をベースバンド処理装置50に送信する。
【0034】
次に、ベースバンド処理装置50は、通信回線から受信した上り信号が、第1の変調方式で変調されていることを検知すると、当該信号よりクロック信号を抽出する。そして、当該クロック信号を用いて、配下の無線装置とのリンクアップ動作を開始する。より具体的には、ベースバンド処理装置50は、無変調の下り信号を第2の変調方式でリンクアップのためのデータ系列により変調し、配下の無線装置13、21、31に送出する。
【0035】
次に、無線装置13、21、31は、通信回線から受信した下り信号が、第2の変調方式で変調されていることを検知すると、当該変調方式で送信されたデータ系列を抽出し、リンクアップ動作を開始する。より具体的には、無線装置13、21、31は、上り信号を第2の変調方式でリンクアップのためのデータ系列により変調し、ベースバンド処理装置50に送出する。
【0036】
なお、GPSアンテナが接続された無線装置13は、同一の無変調の上り信号を、第1の変調方式と第2の変調方式で二度変調し、クロック信号とリンクアップのためのデータ系列を、ともに送出する。これにより、無線基地局システム体のクロック配信動作およびリンクアップ処理を実行することが可能となる。
【0037】
図2は、GPSアンテナが接続された無線装置の概略構成を示すブロック図である。この無線装置100は、光ファイバ伝送を行なうための光源101、無線信号を送受信するアンテナ部103、クロック信号を生成するクロック信号生成部105、第1の変調方式を用いて変調を行なう第1の変調部107、種々の信号処理を行なう処理部109、第2の変調方式で変調を行なう第2の変調部111、上りおよび下りの光信号の合成と分離を行なう合分波部113、第2の変調方式で変調された信号を復調する復調部115から構成されている。以下、無線装置100の特徴的な動作を説明する。
【0038】
まず、無線装置100において、クロック信号生成部105が、GPSアンテナからGPS信号を取得し、30.72MHzのクロック信号を生成する。第1の変調部107は、当該クロック信号により、光源101からの連続光を、例えば、10%程度の変調度で強度変調する。一方、第2の変調方式による変調部111は、この時点では何もせず、そのまま光信号を通過させ、合分波部113を経由して通信回線(例えば、光ファイバ)に送出する。
【0039】
次に、無線装置100は、ベースバンド処理装置から信号を受信する。図3は、無線装置100の動作を示すフローチャートである。処理部109は、合分波部113を介して、下り光信号から第2の変調方式の信号を復調する復調部115がリンクアップ用のデータパタンを検知するどうかを判断する(ステップS1)。復調部115が、リンクアップ用データパタンを検知しなければ、ステップS1の判断を繰り返し、復調部115が、リンクアップ用データパタンを検知した場合は、受信した下り信号が、第2の変調方式で正しく変調されているものとみなし、クロック抽出を行う(ステップS3)。次に、リンクアップ用データパタンにて第2の変調方式で上り信号を変調し、送出する(ステップS5)。第2の変調方式としては、例えば90%かそれ以上の変調度での強度変調がある。
【0040】
次に、下り光信号に対する第2の変調方式の復調を行なう復調部115が、CPRI(Common Public Radio Interface)フレームを受信したかどうかを判断する(ステップS7)。下りCPRIフレームを受信していない場合は、ステップS7の判断を繰り返し、下りCPRIフレームを受信した場合は、下りCPRIフレームからベースバンド信号を生成し、アンテナ部103から空間に向かって電波として送出する(ステップS9)。同時に、アンテナ部103から受信した上りベースバンド信号をCPRIフレーム化して、第2の変調方式にて上り信号を変調し、通信回線に送出する(ステップS11)。
【0041】
図4は、無線装置13がベースバンド処理装置50に送出する信号の一例を示す図である。第2の変調方式で変調された2.5Gbit/sのCPRI信号に、第1の変調方式で変調された30.72MHzのClock信号が重畳されている。このため、光強度は、時間方向に向けて若干波を打っているように観察される。このような上り光信号により、すべての機器がIEEE1588に対応していなくても、クロック信号をベースバンド処理装置に提供することが可能となる図5は、無線装置21、31がベースバンド処理装置50に送信する信号の一例を示す図である。図4と比較すると、クロック信号が重畳されていないため、光強度は一定値となっている。
【0042】
図6は、ベースバンド処理装置の概略構成を示すブロック図である。ベースバンド処理装置500は、上りおよび下りの光信号の合成と分離を行なう合分波部501、第1の変調方式で変調された信号を復調する第1の復調部503、第1の復調部503で復調された信号からクロック信号を再生するクロック信号再生部505、第2の変調方式で変調された信号を復調する第2の復調部507、種々の信号処理を行なう処理部509、光ファイバ伝送を行なうための光源511、および第2の変調方式で信号を変調する第2の変調部513から構成されている。このように構成されたベースバンド処理装置500は、以下のように動作する。
【0043】
図7は、ベースバンド処理装置の動作を示すフローチャートである。まず、第1の復調部503がクロック信号を検知したかどうかを判断する(ステップT1)。第1の復調部503がクロック信号を検知しない場合は、ステップT1の判断を繰り返す。一方、ステップT1において、第1の復調部503がクロック信号を検知した場合は、クロック信号再生部505で、クロック信号を再生する(ステップT3)。次に、リンクアップ用データパタンにて、第2の変調方式で下り信号を変調し(ステップT5)、送出する。
【0044】
次に、復調部507がリンクアップ用データパタンを受信したかどうかを判断し(ステップT7)、リンクアップ用データパタンを受信していない場合は、ステップT7の判断を繰り返す。一方、ステップT7において、リンクアップ用データパタンを受信した場合は、下りベースバンド信号をCPRIフレーム化し、第2の変調部513において、第2の変調方式で下り信号を変調して、送出する(ステップT9)。次に、復調部507が上りCPRIフレームを受信したかどうかを判断し(ステップT11)、上りCPRIフレームを受信していない場合は、ステップT11の判断を繰り返す。一方、ステップT11において、上りCPRIフレームを受信した場合は、上りCPRIフレームから、上りベースバンド信号を生成し、上位側へ送出する(ステップT13)。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、ベースバンド処理装置500にGPSアンテナを設けることなく、クロック信号をベースバンド処理装置500に提供することが可能となる。これにより、すべての機器がIEEE1588に対応していなくても、ベースバンド処理装置500と配下の無線装置13、21、31との間でリンクを形成し、通信システムとして稼働させることが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1−3 基地局
11 GPSアンテナ
13、21、31 無線装置
40 GPS衛星
50 ベースバンド処理装置
80c、81c セル
100 無線装置
101 光源
103 アンテナ部
105 クロック信号生成部
107 第1の変調部
109 処理部
111 第2の変調部
113 合分波部
115 復調部
500 ベースバンド処理装置
501 合分波部
503 第1の復調部
505 クロック信号再生部
507 第2の復調部
509 処理部
511 光源
513 第2の変調部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B