特許第6381377号(P6381377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381377
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】印刷用版
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/20 20060101AFI20180820BHJP
   B41F 27/10 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B41N1/20
   B41F27/10
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-178375(P2014-178375)
(22)【出願日】2014年9月2日
(65)【公開番号】特開2016-52719(P2016-52719A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186854
【氏名又は名称】昭和アルミニウム缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】奥 智宏
(72)【発明者】
【氏名】大西 利彦
(72)【発明者】
【氏名】北川 亨
(72)【発明者】
【氏名】戸島 斉
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 兼司
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−137505(JP,A)
【文献】 特開2010−253794(JP,A)
【文献】 特開平02−185655(JP,A)
【文献】 特開2010−214943(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02191969(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/20
B41F 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の版胴に装着され、円筒状に形成されて用いられる印刷用版であって、
金属製板材からなる版本体と、
前記版本体の端部に設けられ、前記版胴に設けられた位置決め用突部に係合可能な切欠きが形成されてなる位置決め用切欠部と、
前記版本体と一体成形され、前記位置決め用切欠部を補強する補強部と、
を備え
前記補強部は、前記位置決め用切欠部の端部から所定の間隔をおいて位置決め用切欠部の周囲に沿って設けられ、前記版本体の外周面に対して凸状のビード部が形成され、かつ置決め用切欠部の端部からビード部までの縁部が版本体の内側に突出してなることを特徴とする印刷用版。
【請求項2】
前記補強部は、前記位置決め用切欠部と連続する前記版本体の端部に沿って、前記位置決め用切欠部の周囲から連続して形成されることを特徴とする請求項に記載の印刷用版。
【請求項3】
前記版本体の外周面に1つの版部のみを設けた、缶体の印刷をするための版であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷用版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製、特にアルミニウム合金製飲料缶の印刷に用いられる印刷用版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置のシリンダに装着されて使用され、画像パターンを有する印刷用版を用いて、金属製の缶体に印刷することが知られている。
【0003】
特許文献1には、印刷用版とシリンダとの周方向の相対位置及び軸線方向の相対位置を決定するために、スリーブ体がなす円筒の軸線方向端部に向けて開口して形成され、シリンダに設けられたガイド部材に係合される複数の位置決め用切欠部をスリーブ体の周方向に備えた印刷用版が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−254623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された位置決め用切欠部の構成では、ガイド部材に当接する位置決め用切欠部の端部の強度が些か不足してしまうことにより、ガイド部材に位置決め用切欠部を係合させる際に、位置決め用切欠部の端部に塑性変形が生じてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、金属製缶、特にアルミニウム合金製飲料缶の印刷に用いられる、装着時の変形の虞が低減した印刷用版の提供を目的とする。
【0007】
即ち、本発明は下記[1]〜[8]に記載の構成を有する。
【0008】
[1] 円筒状の版胴に装着され、円筒状に形成されて用いられる印刷用版であって、
金属製板材からなる版本体と、
前記版本体の端部に設けられ、前記版胴に設けられた位置決め用突部に係合可能な切欠きが形成されてなる位置決め用切欠部と、
前記版本体と一体成形され、前記位置決め用切欠部を補強する補強部と、
を備えることを特徴とする印刷用版。
【0009】
[2] 前記補強部は、前記位置決め用切欠部の周囲に沿って形成されることを特徴とする前項1に記載の印刷用版。
【0010】
[3] 前記補強部は、ビード部が形成されてなることを特徴とする前項1または2に記載の印刷用版。
【0011】
[4] 前記補強部は、前記位置決め用切欠部の端部から所定の間隔をおいて設けられ、前記版本体の外周面に対して凸状のビード部が形成されてなることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の印刷用版。
【0012】
[5] 前記補強部は、前記位置決め用切欠部と連続する前記版本体の端部に沿って、前記位置決め用切欠部の周囲から連続して形成されることを特徴とする前項2に記載の印刷用版。
【0013】
[6] 前記補強部は、前記位置決め用切欠部の縁部が折り曲げられてなる折曲部が形成されてなることを特徴とする前項1に記載の印刷用版。
【0014】
[7] 前記折曲部は、前記位置決め用切欠部の縁部が外側に折り曲げられて形成されることを特徴とする前項6に記載の印刷用版。
【0015】
[8] 前記版本体の外周面に1つの版部のみを設けた、缶体の印刷をするための版であることを特徴とする前項1〜7のいずれかに記載の印刷用版。
【発明の効果】
【0016】
上記[1]に記載の発明によれば、円筒状の版胴に装着され、円筒状に形成されて用いられる印刷用版であって、金属製板材からなる版本体と、版本体の端部に設けられ、版胴に設けられた位置決め用突部に係合可能な切欠きが形成されてなる位置決め用切欠部と、版本体と一体成形され、位置決め用切欠部を補強する補強部と、を備えるので、補強部で補強されることにより位置決め用切欠部の強度が高まり、位置決め用突部に係合することによる変形の生じる虞が低減する。
【0017】
また、補強部が版本体とは別部材で設けられるのではなく、版本体と一体成形されるので、補強部が脱落するなどの虞がない。
【0018】
上記[2]に記載の発明によれば、補強部は、位置決め用切欠部の周囲に沿って形成されるので、位置決め用切欠部の周囲の強度が向上して、位置決め用切欠部の設けられた側の部位が軸方向に沿って折れ曲がるなどの変形を防止することができる。
【0019】
上記[3]に記載の発明によれば、補強部は、ビード部が形成されてなるので、補強部を容易に成形することができる。
【0020】
上記[4]に記載の発明によれば、補強部は、位置決め用切欠部の端部から所定の間隔をおいて設けられ、版本体の外周面に対して凸状のビード部が形成されてなるので、版本体の位置決め用切欠部とビード部との間の部位が、ビード部の凸方向(径方向外側)と反対方向(径方向内側)に湾曲するよう形成されるため、位置決め用突部に位置決め用切欠部を係合させた際に、位置決め用切欠部が位置決め用突部を乗り越えるなどする虞がなくなる。
【0021】
上記[5]に記載の発明によれば、補強部は、位置決め用切欠部と連続する版本体の端部に沿って、位置決め用切欠部の周囲から連続して形成されるので、円筒状の印刷用版に位置決め用切欠部が設けられることにより当該部分の強度が不足して変形が生じ易い、位置決め用切欠部の入口部分と連続する版本体の端部が、補強部によって補強されることにより、版本体の端部に生じる変形を防止して版胴の周面に沿わせることができる。
【0022】
上記[6]に記載の発明によれば、補強部は、位置決め用切欠部の縁部が折り曲げられてなる折曲部が形成されてなるので、版本体の位置決め用切欠部の縁部に折り曲げ加工を施すことによっても位置決め用切欠部の強度を高めることができる。
【0023】
上記[7]に記載の発明によれば、折曲部は、位置決め用切欠部の縁部が外側に折り曲げられて形成されるので、位置決め用切欠部を含めた印刷用版の内周面が版胴の外周面に当接するように構成されることにより、位置決め用切欠部の縁部を内側に折り曲げて形成された場合のように、内側に折り曲げた部位の厚みの分だけ位置決め用切欠部が版胴の外周面から浮き上がるなどして、版胴の外周面に当接すべき位置決め用切欠部付近の印刷用版の変形を引き起こす虞がなく、スムーズに印刷用版を版胴に装着させることができる。
【0024】
上記[8]に記載の発明によれば、版本体の外周面に1つの版部のみを設けた、缶体の印刷をするための版であるので、位置決め用切欠部の折り曲がりが生じ易い小径の印刷用版であっても、補強部を形成することによって位置決め用切欠部周辺の強度が向上して、確実に位置決め用突部と係合できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の印刷用版について説明するための説明図である。
図2】本発明の印刷用版の版胴への装着を説明するための説明図である。
図3】本発明の印刷用版の版胴への装着を説明するための説明図である。
図4】本発明の印刷用版に設けられた補強部の平面図及びA−A断面図である。
図5】本発明の別実施形態に係る印刷用版に設けられた位置決め用切欠部及び補強部の平面図である。
図6】本発明の別実施形態に係る印刷用版に設けられた補強部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1は、印刷用版1について説明するための説明図、図2,3は、印刷用版1の版胴2への装着を説明するための説明図、図4は、印刷用版1に設けられた補強部15の平面図及びA−A断面図、図5は、別実施形態に係る印刷用版1に設けられた位置決め用切欠部14及び補強部15の平面図、図6は、別実施形態に係る印刷用版3に設けられた補強部35の説明図である。
【0028】
まず、図1〜4を参照して、版胴2に装着された円筒状の印刷用版1を備える版装着装置について説明する。
【0029】
以降では、図2に示す版胴2の上下を上下とし、左側を前面或いは先端、右側を後面或いは後端とし、前面から見て左右を左右とする。
【0030】
版装着装置は、印刷対象物に対して印刷を行う印刷機、印刷機に用いられる印刷用版1に対して印刷模様を彫刻する彫刻機に共通して備えられるものである。
【0031】
版胴2に装着される印刷用版1としては、円筒状に形成された印刷用版1、特に、小径の印刷用版1が用いられる。
【0032】
印刷される被印刷物は飲料用金属缶であり、特にアルミニウム又はアルミニウム合金製の平板を、ドロー&アイアニング(DI)成形した有底円筒状の飲料用金属缶が好適に印刷される。
【0033】
版装着装置は、印刷機の機枠から前方に突出するように設けられた図示しない版駆動軸と、版駆動軸の先端部側から嵌め込まれて、版駆動軸の外周面に固定される版胴2と、を備えている。
【0034】
版駆動軸は、その基端部側が印刷機の機枠に回転支持され、公知の駆動手段により所定方向に所定速度で回転させられる。
【0035】
版胴2は、円筒状に形成され、版駆動軸が挿通させられる挿通孔がその中心に設けられている。
【0036】
版胴2の外周には、版駆動軸と同心の円筒状の版装着面22が形成されており、版装着面22には、後述する印刷用版1が着脱可能に設けられる。
【0037】
版胴2は、重量軽減のために内部が取り除かれて空洞になっており、外周に版装着面22が形成された円筒部と、版胴2の前面を覆う蓋部26と、を備えている。
【0038】
版胴2は、挿通孔に版駆動軸を嵌め合わせた状態で版駆動軸に固定され、版駆動軸と一体となって回転する。
【0039】
版装着面22は、装着された印刷用版1の内面との摩擦抵抗による固定力を確保するため、その表面粗さはRa1μm以下程度で静摩擦を保つことが望ましい。
【0040】
また、その表面粗さを小さく保ち、かつ表面に傷が付きにくい点を考慮すると、版装着面22は、ハードクロム塗装(メッキ)することが好ましい。
【0041】
印刷用版1には、弾性材料で円筒状に形成された版本体11と、版本体11の外周部の一部に形成された版部12とが備えられている。
【0042】
版本体11は、弾性材料製シートが円筒状に形成されて両端部が重ね合わされて接合されることにより構成され、版部12は、接合部13を除く版本体11の外周面の所定箇所に設けられている。
【0043】
弾性材料製シートは、磁性あるいは非磁性の適当な金属等の長方形状の弾性材料製シートからなり、例えば、市販のブリキ板(Fe)が採用され、シートの厚さは、円筒状に形成できて、かつ弾性力により円筒状を保持できる程度であればよく、この例では、約0.26mmである。
【0044】
版本体11には、版部12となる樹脂層がその片面に形成されており、この樹脂層は、例えばポリビニルアルコール系、ビニルエステル系またはポリアミド系等の樹脂を採用することができ、ショアD硬度で例えば硬化後D20〜80程度のものが好適である。
【0045】
例えば、通常のオフセット印刷用のUV硬化樹脂(紫外線硬化樹脂)を採用すると、それ以外の硬化樹脂のような溶剤や高圧スチームによる煩雑な洗浄作業を必要とせず、一般に水洗浄で容易に洗浄作業を行うことができる。
【0046】
樹脂層の厚さは、印刷の版部12として必要な厚みがあればよく、この例では、弾性材料製シートの片面に厚さ0.4〜0.6mmの層を接着させている。
【0047】
円筒状に形成された印刷用版1は、版胴2の先端側から嵌め込まれることによって、版胴2の外周面である版装着面22に装着される。
【0048】
印刷用版1の版部12は、印刷用版1が版胴2に装着されたときに版装着面22に密着する版本体11の外面部分に形成されている。
【0049】
版胴2には、円筒部の一部が取り除かれて、平坦な面が形成されてなる版固定部材装着面23が設けられており(図3参照)、円筒部の外周の版固定部材装着面23を除く部分が印刷用版1の装着される版装着面22となっている。
【0050】
版固定部材装着面23には、後に詳述するが、版胴2の外周面に径方向内外へ移動可能に設けられた、印刷用版1を固定するための版固定部材24が設けられている。
【0051】
版固定部材装着面23は、版装着面22を含む円筒面よりも径方向内側に位置している。
【0052】
版装着面22の外径と、印刷用版1の内径は、略同等の寸法となるように設定される。
【0053】
版胴2が版固定部材装着面23を有しているため、版装着面22と版固定部材装着面23を合計した周長は、版胴2の版装着面22が形成する円筒面の周長より短くなる。
【0054】
印刷用版1の内周面の周長は、版胴2の版装着面22と版固定部材装着面23を合計した周長よりも僅かに大きく、版胴2の版装着面22が形成する円筒面の周長より僅かに小さい寸法に設定されている。
【0055】
これにより、版胴2に対する印刷用版1の挿入を容易なものとするとともに、版固定部材24に押された部位が印刷用版1の他の部位より径方向外側に突出する事態を回避することができるようになっている。
【0056】
版固定部材装着面23には、版固定部材装着面23の軸方向長さの大部分にわたり、軸方向に長い方形状に形成された溝部が形成されている。
【0057】
当該溝部は、横断面形状が方形状で、両側壁及び底壁は平坦面に形成されている。
【0058】
溝部には、版固定部材24が版胴2の径方向に移動可能に嵌め込まれており、版固定部材24には、例えば、その内部に版胴2の軸方向に延びる回転軸が設けられている。
【0059】
回転軸は、版固定部材24の内部において回転可能に構成されており、例えば、版胴2の後面側から前面の蓋部26を突き抜けるように、版胴2の軸方向に伸びて設けられている。
【0060】
回転軸の先端部は、版胴2の前面の蓋部26を突き抜け、回転軸を回転操作する際に摘ままれるなどして操作される操作部27を設けている。
【0061】
版固定部材24は、操作部27が操作されることによる回転軸の回転に伴って、版胴2の内部で版胴2の径方向に位置移動可能に構成されている。
【0062】
版固定部材24は、軸方向に長い方形状に形成され、版胴2の径方向に移動しうるように版固定部材装着面23に形成された溝部に嵌められている。
【0063】
版固定部材24は、版胴2の溝部の軸方向両端壁に対して周方向及び軸方向にほぼ隙間なく嵌まり、周方向両側壁及び軸方向両端壁の面と平行に版胴2の径方向に移動する。
【0064】
版固定部材24の径方向外側の端面241は、版装着面22と同じ曲率、或いは同程度の曲率の円筒面で形成されている。
【0065】
尚、版固定部材24の径方向外側の端面241は、版装着面22と同じ曲率、或いは同程度の曲率の円筒面で形成されることが好ましいが、版固定部材装着面23と平行な平坦面で形成されるのであってもよい。
【0066】
版固定部材24は、印刷用版1の版部12を含む外表面が形成する円筒面の内側の範囲内で、版胴2に装着された印刷用版1の一部を径方向内側から径方向外側に押して拡径するようになっている。
【0067】
版胴2の円筒部の後端面の外周部には、印刷用版1の軸方向の装着位置を決めるためのエンドストッパー25が固定されている。
【0068】
エンドストッパー25は、版装着面22より径方向外側に少し張り出した円環状に形成されている。
【0069】
エンドストッパー25は、印刷用版1を版胴2の先端側から嵌め込むと、印刷用版1の後端部側が当接するように構成されている。
【0070】
エンドストッパー25が設けられることにより、印刷用版1の後端部を版胴2の所定位置に正確に且つ簡単に取付けられるようになる。
【0071】
版胴2の下側且つエンドストッパー25の手前側には、少なくとも印刷用版1の周方向の位置決めをするための周方向位置決め用突部21が設けられている。
【0072】
周方向位置決め用突部21は、例えば、版胴2の径方向外側へ僅かに突出し、平面視で略半円形状の段部が形成されている。
【0073】
印刷用版1は、版胴2の版装着面22に装着された際の後端側の端部111に位置決め用切欠部14が形成され、版胴2の位置決め用突部21と係合するようになっている。
【0074】
位置決め用切欠部14は、印刷用版1の軸方向に延びる切欠きが形成されてなり、その奥端部に周方向位置決め用突部21の外周形状と一致する曲率を有する円弧部141が形成されている。
【0075】
印刷用版1が版胴2の後端側まで装着されると、位置決め用切欠部14の円弧部141が、位置決め用突部21の段部に当接することによって印刷用版1の周方向及び版胴2の軸方向の位置決めができるようになっている。
【0076】
図4に基づいて詳述すると、位置決め用切欠部14は、所定の直径寸法で印刷用版1の長手方向端部111を切欠くことによって形成される円弧部141と、円弧部141の円弧上に接する直線が印刷用版1の長手方向端部111と垂直に交わるよう形成される直線部142と、直線部142と印刷用版1の長手方向端部111とによって形成された角部が切り落とされて形成される傾斜部143と、を有している。
【0077】
例えば、円弧部141の直径寸法が6mmに設定されている場合、位置決め用切欠部14の間隔(左右直線部142間の距離)は、円弧部141の直径寸法と同じ6mmに設定される。
【0078】
傾斜部143は、円弧部141の中心点を通る位置決め用切欠部14の対称軸に対して所定の傾斜角度で形成されている。
【0079】
この例では、直線部142と印刷用版1の端部111とで形成された角部は、円弧部141の中心点を通る位置決め用切欠部14の対称軸に対して約30°の傾斜角度で切り落とされて傾斜部143が形成される。
【0080】
位置決め用切欠部14が、版本体11の端部111と位置決め用切欠部14との間の連続する部分に傾斜部143を備えることにより、位置決め用突部21を位置決め用切欠部14に係合させる際に、位置決め用突部21をスムーズに円弧部141側へ案内させることができ、位置決め用突部21と位置決め用切欠部14とを容易に係合させることができる。
【0081】
印刷用版1を巻いた際に、版本体11に設けられた位置決め用切欠部14のような切り欠き部分は、他の部位よりも強度が不足して曲がるなどの変形が生じ易い部分となるが、曲線部151及び直線部152が連続したビード部15が形成されることにより、強度が不足して変形の生じ易い部分の強度を高めることができる。
【0082】
位置決め用切欠部14は、その寸法が大き過ぎると印刷部と重複してしまう虞があり、その寸法が小さ過ぎると、位置決め用突部21と係合させ難くなる虞があるため、位置決め用突部21に対する位置決め用切欠部14のクリアランスが、0μm〜100μmに設定されるような寸法であることが好ましい。
【0083】
位置決め用切欠部14は、位置決め用突部21に当接することなどによる形状の変形などを防止するため、位置決め用切欠部14を補強する補強部15が設けられている。
【0084】
補強部15は、別部材を版本体11に接合する、または嵌合するなどしたものではなく、版本体11自体に加工を施すことにより形成されたもの、即ち、版本体11と一体成形されたものである。
【0085】
ここでは、一例として、凸状或いは凹状のビード部からなる補強部15について説明する。
【0086】
図4(a)に示すように、ビード部15は、位置決め用切欠部14の端部14aから所定の間隔をおいて、位置決め用切欠部14を囲むように、位置決め用切欠部14の周囲に沿って形成されている(曲線部151)。
【0087】
補強部15が、位置決め用切欠部14の周囲に沿って形成されるので、位置決め用切欠部14の周囲の強度が向上して、位置決め用切欠部14の設けられた側の部位が軸方向に沿って折れ曲がるなどの変形を防止することができる。
【0088】
ビード部15は、曲線部151が位置決め用切欠部14と同心状に形成され、曲線部151の端部が、印刷用版1の端部111に沿って、例えば、曲線部151の端部から約1.9mmの長さで延びて設けられている(直線部152)。
【0089】
この例では、曲線部151及びその両側に設けられた直線部152は、連続して形成されたビード部15として設けられている。
【0090】
図4(b)のA−A断面図に基づいてビード部15の形状について詳述すると、ビード部15は、版本体11の外周面に対して凸状に形成される。
【0091】
ビード部15が位置決め用切欠部14の端部14aから所定の間隔をおいて、例えば、凸状に形成された雄型が版本体11に押し当てられ、版本体11の外周面に対して凸状のビード部15が成形される。
【0092】
雄型が版本体11に押し当てられると、位置決め用切欠部14の端部14aからビード部15までの位置決め用切欠部14の縁部16は、図示するように雄型が押し込まれた方向に引っ張られるように変形して、版本体11の内側方向に僅かに突出するように変形する。
【0093】
位置決め用切欠部14の縁部16の間隔は、広過ぎると版本体11の内側方向に突出する変形量が低減してしまい、狭過ぎると縁部16がビード部15の凸方向(径方向外側)に突出するような変形となってしまい好ましくない。
【0094】
そこで、縁部16の間隔は、位置決め用切欠部14の版本体11長手方向における幅寸法の0.5%〜3.0%の範囲に設定され、好ましくは1.0%〜2.5%、より好ましくは、1.5%〜2.0%の範囲に設定される。
【0095】
ビード部15の幅寸法が、版本体11の端部111から版部12までの間隔に対して広過ぎると、ビード部15と版本体11の版部12との間隔が狭くなってしまうため印刷時に悪影響を及ぼし、版本体11の端部111から版部12までの間隔に対して狭過ぎると、縁部16における版本体11の内側方向に僅かに突出するような変形が生じ難くなってしまい好ましくない。
【0096】
そこで、ビード部15の幅寸法は、位置決め用切欠部14の版本体11長手方向における幅寸法の0.5%〜3.0%の範囲に設定され、好ましくは1.0%〜2.5%、より好ましくは、1.5%〜2.0%の範囲に設定される。
【0097】
補強部15は、ビード部が形成されてなるので、補強部15を容易に成形することができる。
【0098】
また、補強部15が、位置決め用切欠部14の端部14aから所定の間隔をおいて設けられ、版本体11の外周面に対して凸状のビード部15が形成されてなる構成であれば、版本体11の位置決め用切欠部14とビード部15との間の部位が、ビード部15の凸方向(径方向外側)と反対方向(径方向内側)に湾曲するよう形成されるため、位置決め用突部21に位置決め用切欠部14を係合させた際に、位置決め用切欠部14が位置決め用突部21を乗り越えるなどする虞がなくなる。
【0099】
更に、補強部15が、位置決め用切欠部14と連続する版本体11の端部111に沿って、位置決め用切欠部14の周囲から連続して形成される構成であれば、円筒状の印刷用版1に位置決め用切欠部14が設けられることにより当該部分の強度が不足して変形が生じ易い、位置決め用切欠部14の入口部分と連続する版本体11の端部111が、補強部15によって補強されることにより、版本体11の端部111に生じる変形を防止して版胴2の周面に沿わせることができる。
【0100】
印刷用版1の製造方法について説明する。
【0101】
版部12となる樹脂層が片面に形成された弾性材料製シートを所定寸法の長方形状に切り出し、展開状態の弾性材料製シートの一方の長手方向端部111の略中央部に位置決め用切欠部14を形成する。
【0102】
位置決め用切欠部14は、例えば、直径6mmの円弧を有する形状のカッターによって切欠きされて円弧部141が形成された後、円弧部141の円弧上に接する直線が印刷用版1の端部111と垂直に交わるように直線部142がカッターによってそれぞれ形成される。
【0103】
続いて、直線部142と印刷用版1の端部111とで形成された角部を、円弧部141の中心点を通る位置決め用切欠部14の対称軸に対して所定の傾斜角度で切り落として傾斜部143を形成する。
【0104】
尚、ここでは、円弧部141、直線部142及び傾斜部143を順番に形成するように説明したが、予め所望する位置決め用切欠部14の形状を模った抜き型を用いて位置決め用切欠部14が形成されるのであってもよい。
【0105】
次に、ビード部15が、位置決め用切欠部14を囲む曲線部151と、その端部が版本体11の端部111に沿って延びる直線部152と、を備え、版本体11の外周面に対して凸状となるように形成する。
【0106】
例えば、曲線部151及び直線部152が連続してなるビード部15を形成することのできる雄型を用いて、版本体11の内側となる面に当該雄型を押し当ててプレス成形することにより、版本体11の外周面に対して凸状のビード部15を得る。
【0107】
弾性材料製シートの片面に形成された樹脂層のうち、版部12とする部分に紫外線を照射して紫外線硬化させ、版部12とならない非版部となる未硬化部分は水で洗い落として除去する。
【0108】
樹脂層の乾燥後、版部12に未硬化部分が残らないように、紫外線の後照射を行う。
【0109】
この例では、1つの版部12が、版本体11の外周面のうち、接合部13及び長手方向端部111から所定幅を除く箇所に形成されている。
【0110】
版部12に対する紫外線照射は、版部12のうち印刷模様が形成される印刷部に対してのみ行い、版部12の中に印刷模様が形成されない非印刷部が含まれている場合には、このような非印刷部に対しては紫外線照射を行わず、非版部とともに樹脂層を除去するようにすることが望ましい。
【0111】
次に、樹脂層の形成されていない面を内側にして版本体11を版巻機に巻き付けて丸め、円筒状に成形する。
【0112】
版巻機によって円筒状に巻かれた版本体11の接合部となる両端部が接合され、円筒状に成形された印刷用版1が得られる。
【0113】
弾性材料製シートの両端部の接合方法としては、溶接による接合が最も好ましいが、容易に剥がれない接着方法が採用されるのであれば特に限定されるものではない。
【0114】
上述で説明したように、位置決め用切欠部14を囲むように、且つ位置決め用切欠部14と連続する版本体11の長手方向端部111に沿って補強部15が設けられる構成が好ましいが、この構成に限定されるものではない。
【0115】
例えば、図5(a)で示すように、補強部15のうち版本体11の長手方向端部111に沿った直線部152を備えず、位置決め用切欠部14のみを連続して囲むように版本体11の外周面に対して凸状の曲線部171のみからなる補強部(ビード部)17が形成されているのであってもよい。
【0116】
尚、上述した、曲線部151及び直線部152が連続してなるビード部15や曲線部171のみからなるビード部17以外に、位置決め用切欠部14を囲うように版本体11の外周面に対して凸状が分断して形成されたビード部や、曲線部151及び直線部152にかけて版本体11の外周面に対して凸状が分断して形成されたビード部が設けられるのであってもよいし、直線部152にのみビード部が設けられるものや曲線部151或いは直線部152に局所的にビード部が設けられるものであってもよく、少なくとも位置決め用切欠部14或いは位置決め用切欠部14と連続する版本体11の端部に沿って設けられ、位置決め用切欠部14を補強可能に構成されるのであればよい。
【0117】
このようにビード部の形状が先に説明したビード部15,17の形状と異なる場合であっても、版本体11の位置決め用切欠部14とビード部15,17との間の部位がビード部15,17の凸方向と反対方向に凸状に形成され、位置決め用突部21に位置決め用切欠部14を係合させた際に、位置決め用切欠部14が位置決め用突部21を乗り越えるなどする虞がなくなる。
【0118】
また、上述した位置決め用切欠部14は、版本体11の端部111と位置決め用切欠部14の円弧部141との間の連続する部分に所定の傾斜角度で設定された傾斜部143を設けるように説明したが、これに限定されるものではない。
【0119】
例えば、図5(b)で示すように、版本体11の端部111と位置決め用切欠部14の円弧部141との間の連続する部分に、傾斜部143に代わって丸みを帯びるような成形を施した湾曲部144を形成するのであってもよい。
【0120】
このように位置決め用切欠部14が湾曲部144を有することにより、位置決め用突部21を位置決め用切欠部14に係合させる際に、位置決め用突部21をよりスムーズに円弧部141側へ案内させることができるので、位置決め用突部21と位置決め用切欠部14との係合がより容易になる。
【0121】
また、印刷用版1の変形の虞の低減に繋がることから位置決め用突部21の形状が丸みを帯びた形状であることが好ましいため、位置決め用切欠部14についても丸みを帯びた円弧部141を有する形状に形成されることが好ましいが、長方形状の切欠きが形成されてなるものであってもよい。
【0122】
上述では、印刷用版1の補強部15,17としてビード部が形成されるように説明したが、印刷用版3の補強部35として折曲部351,352,353が形成されるのであってもよい。
【0123】
例えば、図6に示すように、長方形状に切欠いて形成された位置決め用切欠部34の各縁部36を折り曲げて版本体31の外面側に折り重ねることによって補強部35を形成する。
【0124】
具体的には、以下のようにして折曲部35を成形する。ここでは、先の実施形態と相違する部分のみを説明する。
【0125】
まず、長方形状に切り出した展開状態の弾性材料製シートの一方の長手方向端部311の略中央部に、長方形状の切欠きを形成する。
【0126】
長方形状の切欠きの縁部36が自由端となるように、長方形状の切欠きの各直角部37にそれぞれ切込みを入れた切込部371を設ける。
【0127】
直角部37に設けられた切込部371は、直角部37を等分する位置、即ち、切断後の自由端の角部が135°となるように設定されることが好ましい。
【0128】
その後、略角棒状の部材でなる雄部材6を版本体31の裏面(内面)側から長方形状の切欠きの縁部36を上方に押し上げるように、長方形状の切欠きに押し込む。
【0129】
雄部材6は、平面視で四角形状に形成されており、その先端に長方形状の切欠きの各折曲位置361の寸法と略同等寸法の凸部61が設けられ、当該凸部61が長方形状の切欠きに押し込まれる。
【0130】
雄部材6が長方形状の切欠きに徐々に押し込まれることにより、自由端である長方形状の切欠きの縁部36が、上方へと押し上げられて各折曲位置361で折り曲がることにより版本体31の表面(外面)側方向へ広がる。
【0131】
続いて、雄部材6を押し込んで印刷用版3よりも突出させた状態で、上方から雌部材7を被せる。
【0132】
雌部材7は、雄部材6よりも一回り大きな寸法に形成された角棒状の部材であり、雌部材7の端部には、例えば、雄部材6の凸部61と嵌合可能な凹部71を有している。
【0133】
雌部材7の先端に設けられた凹部71が雄部材6の凸部61に嵌合することにより、雄部材6及び雌部材7によって長方形状の切欠きの縁部36が版本体31と密着するようにプレスされることにより、補強部35として折曲部351,352,353を有する位置決め用切欠部34を得られる。
【0134】
上述したように、補強部35は、位置決め用切欠部34の縁部36が折り曲げられてなる折曲部35が形成されるので、版本体31の位置決め用切欠部34の縁部36に折り曲げ加工を施すことによって位置決め用切欠部34の強度を高めることができる。
【0135】
また、補強部35が折曲部でなる場合にも、版本体31とは別部材で設けられるのではなく、版本体31と一体成形されるので、補強部35が脱落するなどの虞がない。
【0136】
また、折曲部35が、位置決め用切欠部34の縁部36が外側に折り曲げられて形成されていれば、位置決め用切欠部34を含めた印刷用版3の内周面が版胴2の外周面に当接するように構成されることにより、位置決め用切欠部34の縁部36を内側に折り曲げて形成された場合のように、折り曲げた部位の厚みによって位置決め用切欠部34のみが版胴2の外周面から浮き上がるなどして印刷用版3の変形を引き起こす虞がなく、スムーズに印刷用版3を版胴2に装着させることができる。
【0137】
上述したビード部15,17は、版本体11の外周面に対して凸状のものを一例として説明し、印刷用版1の版胴2への装着時に影響を及ぼすことがないため版本体11の外周面に対して凸状に形成されることが好ましくはあるが、版本体11の外周面に対して凹状のビード部が設けられるのであってもよい。
【0138】
上述では、印刷用版1,3を版胴2に装着した際に、位置決め用切欠部14,34が位置決め用突部21と下側で係合するように配置されるよう説明したが、位置決め用切欠部14,34の配置位置はこれに限定されるものではない。
【0139】
位置決め用切欠部14,34は、目視し易い位置、例えば、版胴2に挿入する際の上側に設けられることが最も好ましいが、印刷用版1,3の接合部13,33以外の部位に設けられるのであればよい。
【0140】
上述では、印刷用版1,3は、版巻機を用いた加工のみによって円筒状に成形されるように説明したが、印刷用版1,3が容易に円筒状に成形され難い場合には、予め少しカールを付けておいてから版巻機で円筒状に成形するのであってもよい。
【0141】
上述した、位置決め用切欠部14,34は、印刷用版1の周方向及び版胴2の軸方向の位置決めができるものと説明したが、これに限定されるものではなく、版胴2にエンドストッパー25を備えている場合には、少なくとも印刷用版1の周方向の位置決めができるように構成されているのであればよい。
【0142】
上述したような印刷用版1,3によれば、円筒状の版胴2に装着され、円筒状に形成されて用いられる印刷用版1,3であって、金属製板材からなる版本体11,31と、版本体11,31の端部111,311に設けられ、版胴2に設けられた位置決め用突部21に係合可能な切欠きが形成されてなる位置決め用切欠部14,34と、版本体11,31と一体成形され、位置決め用切欠部14,34を補強する補強部15,17,35と、を備えるので、補強部15,17,35で補強されることにより位置決め用切欠部14,34の強度が高まり、位置決め用突部21に係合することによる変形の生じる虞が低減する。
【0143】
また、補強部15,17,35が版本体11,31とは別部材で設けられるのではなく、版本体11,31と一体成形されるので、補強部15,17,35が脱落するなどの虞がない。
【0144】
また、版本体11,31の外周面に1つの版部12,32のみを設けた、缶体の印刷をするための版に上述したような補強部15,17,35を適用すれば、位置決め用切欠部14,34の折り曲がりが生じ易い小径の印刷用版1,3であっても、補強部15,17,35を形成することによって位置決め用切欠部14,34周辺の強度が向上して、確実に位置決め用突部21と係合できる。
【0145】
以上説明した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において具体的構成などを適宜変更設計できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明は、金属製缶体を印刷するための印刷用版として用いられる。
【符号の説明】
【0147】
1,3…印刷用版
2…版胴
11,31…版本体
12,32…版部
14,34…位置決め用切欠部
14a…(位置決め用切欠部の)端部
15…補強部(ビード部)
16,36…縁部
17…補強部(ビード部)
21…位置決め用突部
35…補強部(折曲部)
36…縁部
111…(版本体の)端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6