(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381385
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】筒状メッシュフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20180820BHJP
B29C 33/44 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
B01D39/16 Z
B29C33/44
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-193432(P2014-193432)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-64331(P2016-64331A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧 健二朗
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−70721(JP,A)
【文献】
特開2013−193035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/16
B29C 33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の異物を濾し取る筒状のフィルタ部と、前記フィルタ部の中心軸に沿った一端部に前記フィルタ部の周方向に沿って形成された第1のリング状部と、前記フィルタ部の前記中心軸に沿った他端部に前記フィルタ部の周方向に沿って形成された第2のリング状部と、を備えた筒状メッシュフィルタにおいて、
前記第1のリング状部と前記第2のリング状部の少なくとも一方は、前記フィルタ部よりも厚肉に形成され、
前記フィルタ部は、内周側部分と外周側部分とを有し、
前記フィルタ部の前記内周側部分は、前記中心軸に沿って延び且つ前記中心軸の周囲に等間隔で配置された同形状の複数の縦桟で構成され、
前記フィルタ部の前記外周側部分は、前記内周側部分の外周に沿って延び且つ前記中心軸に沿った方向に等間隔で配置された同形状の複数の横桟で構成され、前記横桟の前記縦桟と交差する部分が前記縦桟と一体に形成され、
前記フィルタ部の前記縦桟と前記横桟の交差しない部分には、流体の通過を可能にする開口部が形成され、
前記第1のリング状部、前記第2のリング状部、及び前記フィルタ部は、前記第1のリング状部と前記第2のリング状部のうちの前記フィルタ部よりも厚肉の一方を形作る金型の第1のキャビティ部分に先に溶融樹脂を射出することにより、前記第1のキャビティ部分を満たした溶融樹脂が前記フィルタ部を形作る金型の第2のキャビティ部分を均等に流動し、前記第2のキャビティ部分を満たした溶融樹脂が前記第1のリング状部と前記第2のリング状部のうちの他方を形作る金型の第3のキャビティ部分に供給され、一体として射出成形される、
ことを特徴とする筒状メッシュフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体中の異物を濾し取るために使用する筒状メッシュフィルタに関し、特に、射出成形により一体成形された筒状メッシュフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管や潤滑装置等のオイル配管の途中には筒状メッシュフィルタが配置され、この筒状メッシュフィルタで燃料やオイル等の流体中の異物を濾し取るようになっている。
【0003】
(第1従来例)
図5は、第1従来例の筒状メッシュフィルタ100を示す図である。この
図5に示すように、第1従来例に係る筒状メッシュフィルタ100は、筒状のフィルタ部101と、筒状のフィルタ部101の一方の開口端側に位置する第1のリング状部102と、筒状のフィルタ部101の他方の開口端側に位置する第2のリング状部103と、第1のリング状部102と第2のリング状部103を筒状のフィルタ部101の母線方向に沿って接続する複数のリブ104と、で構成されている。そして、この筒状メッシュフィルタ100は、筒状のフィルタ部101を構成する合成繊維網105が隣り合うリブ間104,104の開口部にインサート成形で固定され、筒状のフィルタ部101が形作られるようになっている。なお、合成繊維網105は、
図5(d)に示すように、合成繊維106が格子状に編まれたものであり、異物を濾し取るフィルタ機能を発揮するようになっている。
【0004】
しかしながら、
図5に示した第1従来例の筒状メッシュフィルタ100は、インサート成形する際に、複数(隣り合うリブ間104,104の開口部分の数と同数)の合成繊維網105を金型内の所定位置に配置しなければならず、製造工数が嵩み、生産効率が良くなかった。
【0005】
(第2従来例)
そこで、第1従来例の不具合を解消するものとして、
図6乃至
図7に示す第2従来例に係る筒状メッシュフィルタ110が案出された。この第2従来例に係る筒状メッシュフィルタ110は、全体(第1及び第2のリング状部111,112、複数のリブ113、及びフィルタ部114)を一体として射出成形し、生産効率を向上させた(特許文献1参照)。
【0006】
この第2従来例に係る筒状メッシュフィルタ110は、
図8に示すように、溶融樹脂が金型115のキャビティ116の第1のキャビティ部分117(第1のリング状部111と第2のリング状部112のいずれか一方を形成するためのキャビティ部分)に開口するゲート118からキャビティ116内に射出され、キャビティ116の形状と同様の形状に形作られている。
【0007】
このような第2従来技術に係る筒状メッシュフィルタ110は、フィルタ部114の開口部120を形作る桟121,122の幅寸法w1,w2が狭く(例えば、0.15mm)、フィルタ部114の開口部120が小さい場合(例えば、正方形の開口部120の一辺の長さが0.1mmの場合)、射出成形時における最終充填部がフィルタ部114になり、フィルタ部114にショートショットに起因する成形不良が生じることがある。すなわち、筒状メッシュフィルタ110の射出成形時において、キャビティ116の第1のキャビティ部分117に射出された溶融樹脂は、第1のキャビティ部分117を満たした後、流動抵抗の大きなフィルタ部114を形作る第2のキャビティ部分123に流れ込まず、流動抵抗の小さな複数のリブ113を形作る第3のキャビティ部分124を流動し、複数のリブ113を形作る第3のキャビティ部分124から第4のキャビティ部分125(第1のリング状部111と第2のリング状部112のいずれか他方を形成するためのキャビティ部分)に流れ込み、第1,第3及び第4のキャビティ部分117,124,125を満たした後、他部(117,124,125)よりも流動抵抗が大きなフィルタ部114を形作る第2のキャビティ部分123に流れ込む。その結果、筒状メッシュフィルタ110は、射出成形時において、フィルタ部114を形作るための第2のキャビティ部分123の最終充填部にガスが閉じこめられてショートショットを生じる場合があり、フィルタ部114にショートショットに起因する成形不良を生じることがある。
【0008】
そこで、第2従来技術に係る筒状メッシュフィルタ110は、ショートショットに起因するフィルタ部114の成形不良を防止するため、フィルタ部114のうちの溶融樹脂の最終充填部になる部分に島状の樹脂溜まり126を形成し、この島状の樹脂溜まり126でガス抜きを行えるようにしている。なお、この島状の樹脂溜まり126は、各リブ113,113間のフィルタ部114にそれぞれ設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−32376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、第2従来技術に係る筒状メッシュフィルタ110は、島状の樹脂溜まり126を形成する分だけフィルタ部114の開口部120が塞がれ、フィルタ部114の開口率(筒状のフィルタ部114の外周面の面積に対する開口部120の総面積の割合)が小さくなるという不具合を有している。
【0011】
そこで、本発明は、フィルタ部の開口率が大きい筒状メッシュフィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る筒状メッシュフィルタ1は、流体中の異物を濾し取る筒状のフィルタ部2と、前記フィルタ部2の中心軸3に沿った一端部に前記フィルタ部2の周方向に沿って形成された第1のリング状部4と、前記フィルタ部2の前記中心軸3に沿った他端部に前記フィルタ部2の周方向に沿って形成された第2のリング状部5と、を備えている。この本発明に係る筒状メッシュフィルタ1において、前記第1のリング状部4と前記第2のリング状部5の少なくとも一方は、前記フィルタ部2よりも厚肉に形成されている。また、前記フィルタ部2は、内周側部分6と外周側部分7とを有している。また、前記フィルタ部2の前記内周側部分6は、前記中心軸3に沿って延び且つ前記中心軸3の周囲に等間隔で配置された同形状の複数の縦桟8で構成されている。また、前記フィルタ部2の前記外周側部分7は、前記内周側部分6の外周に沿って延び且つ前記中心軸3に沿った方向に等間隔で配置された同形状の複数の横桟10で構成され、前記横桟10の前記縦桟8と交差する部分が前記縦桟8と一体に形成されている。また、前記フィルタ部2の前記縦桟8と前記横桟10の交差しない部分には、流体の通過を可能にする開口部11が形成されている。そして、前記第1のリング状部4、前記第2のリング状部5、及び前記フィルタ部2は、前記第1のリング状部4と前記第2のリング状部5のうちの前記フィルタ部2よりも厚肉の一方(4)を形作る金型12の第1のキャビティ部分20に先に溶融樹脂を射出することにより、前記第1のキャビティ部分20を満たした溶融樹脂が前記フィルタ部2を形作る金型12の第2のキャビティ部分21を均等に流動し、前記第2のキャビティ部分21を満たした溶融樹脂が前記第1のリング状部4と前記第2のリング状部5のうちの他方(5)を形作る金型12の第3のキャビティ部分22に供給され、一体として射出成形されるようになっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の筒状メッシュフィルタは、射出成形時における最終充填部が第1のリング状部と第2のリング状部のうちのいずれかになり、射出成形時における最終充填部がフィルタ部にならないため、フィルタ部にガス抜き用の樹脂溜まりを設ける必要がない分だけ、フィルタ部にガス抜き用の樹脂溜まりを設けた筒状メッシュフィルタよりもフィルタ部の開口率を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る筒状メッシュフィルタを示す図である。
図1(a)は筒状メッシュフィルタの正面図であり、
図1(b)は筒状メッシュフィルタの側面図であり、
図1(c)は筒状メッシュフィルタの背面図であり、
図1(d)は
図1(a)のA1−A1線に沿って切断して示す筒状メッシュフィルタの断面図である。
【
図2】
図2(a)は
図1(b)のB1部の拡大図(筒状メッシュフィルタの外側の一部拡大図であって、
図1(a)のC1方向から見た筒状メッシュフィルタの一部拡大図)であり、
図2(b)は
図2(a)のA2−A2線に沿って切断して示す断面図(筒状メッシュフィルタの一部拡大断面図)であり、
図2(c)は
図1(a)のC2方向から見た筒状メッシュフィルタの一部拡大図(筒状メッシュフィルタの内側の一部拡大図)であり、
図2(d)は
図2(c)のA3−A3線に沿って切断して示す断面図(筒状メッシュフィルタの一部拡大断面図)である。
【
図3】本発明に係る筒状メッシュフィルタを射出成形するために使用される金型を示す図である。
図3(a)は金型の一部平面図(
図3(b)のA4−A4線に沿って切断して示す金型の一部平面図)であり、
図3(b)は金型構造を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4(a)はキャビティの一部断面図(
図3(b)のB2部の拡大図)であり、
図4(b)は
図4(a)のA5−A5線に沿って切断して示すキャビティの内面の一部拡大図であり、
図4(c)は
図4(a)のA6−A6線に沿って切断して示すセンターピンの外周面の一部拡大図である。
【
図5】第1従来例の筒状メッシュフィルタを示す図である。
図5(a)は筒状メッシュフィルタの正面図であり、
図5(b)は筒状メッシュフィルタの側面図であり、
図5(c)は筒状メッシュフィルタの背面図であり、
図5(d)は
図5(b)のB3部の拡大図である。
【
図6】第2従来例の筒状メッシュフィルタを示す図である。
図6(a)は筒状メッシュフィルタの正面図であり、
図6(b)は筒状メッシュフィルタの側面図であり、
図6(c)は筒状メッシュフィルタの背面図であり、
図6(d)は
図6(a)のA7−A7線に沿って切断して示す筒状メッシュフィルタの断面図である。
【
図7】
図7(a)は
図6(b)のB4部の拡大図であり、
図7(b)は
図7(a)A8−A8線に沿って切断して示す断面図である。
【
図8】第2従来例の筒状メッシュフィルタを射出成形するための金型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0016】
図1乃至
図2は、本発明の実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1を示す図である。なお、
図1(a)は筒状メッシュフィルタ1の正面図であり、
図1(b)は筒状メッシュフィルタ1の側面図であり、
図1(c)は筒状メッシュフィルタ1の背面図であり、
図1(d)は
図1(a)のA1−A1線に沿って切断して示す筒状メッシュフィルタ1の断面図である。また、
図2(a)は
図1(b)のB1部の拡大図(筒状メッシュフィルタ1の外側の一部拡大図であって、
図1(a)のC1方向から見た筒状メッシュフィルタ1の一部拡大図)であり、
図2(b)は
図2(a)のA2−A2線に沿って切断して示す断面図(筒状メッシュフィルタ1の一部拡大断面図)であり、
図2(c)は
図1(a)のC2方向から見た筒状メッシュフィルタ1の一部拡大図(筒状メッシュフィルタ1の内側の一部拡大図)であり、
図2(d)は
図2(c)のA3−A3線に沿って切断して示す断面図(筒状メッシュフィルタ1の一部拡大断面図)である。
【0017】
これら
図1乃至
図2に示すように、筒状メッシュフィルタ1は、流体中の異物を濾し取る筒状のフィルタ部2と、このフィルタ部2の中心軸3に沿った一端部に形成された第1のリング状部4と、フィルタ部2の中心軸3に沿った他端部に形成された第2のリング状部5と、を備えている。この筒状メッシュフィルタ1は、全体が樹脂(POM(ポリアセタール)、66ナイロン等)によって一体に形成されている。
【0018】
第1及び第2のリング状部4,5は、フィルタ部2の開口端に沿って形成された環状体であり、フィルタ部2の径方向外方に鍔状に出っ張っており、フィルタ部2よりも厚肉に形成されている。
【0019】
フィルタ部2は、径方向内方側に位置する内周側部分6と、この内周側部分6の外周側に一体に形成された外周側部分7とを有している。フィルタ部2の内周側部分6は、中心軸3に沿って延び且つ中心軸3の周囲に等間隔で配置された同形状の複数の縦桟8で構成され、第1のリング状部4と第2のリング状部5を中心軸3に沿って接続している。フィルタ部2の外周側部分7は、内周側部分6の外周に沿って延び且つ中心軸3に沿った方向に等間隔で配置された同形状の複数の横桟10で構成され、横桟10の縦桟8と交差する部分が縦桟8と一体に形成されている。そして、このフィルタ部2は、縦桟8と横桟10の交差しない部分が流体の通過を可能にする開口部11になっている。なお、本実施形態において、縦桟8及び横桟10は、幅寸法wが0.15mmであり、高さ寸法hが0.15mmになっている。また、開口部11は、一辺の長さLが0.1mmの四角形状になっている。
【0020】
図3乃至
図4は、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1を射出成形するために使用される金型12を示す図である。なお、
図3(a)は金型12の一部平面図(
図3(b)のA4−A4線に沿って切断して示す金型12の一部平面図)であり、
図3(b)は金型12の構造を模式的に示す断面図である。また、
図4(a)はキャビティ13の一部断面図(
図3(b)のB2部の拡大図)であり、
図4(b)は
図4(a)のA5−A5線に沿って切断して示すキャビティ13の内面14の一部拡大図であり、
図4(c)は
図4(a)のA6−A6線に沿って切断して示すセンターピン15の外周面16の一部拡大図である。
【0021】
図3に示すように、金型12は、第1金型17と第2金型18の型合わせ面17a,18a側に、筒状メッシュフィルタ1を射出成形するためのキャビティ13が形成されている。キャビティ13は、第1のリング状部4を形作るための円環状の第1のキャビティ部分20と、筒状のフィルタ部2を形作るための円筒状の第2のキャビティ部分21と、第2のリング状部5を形作るための円環状の第3のキャビティ部分22と、を有している。
【0022】
第1金型17は、第1のキャビティ部分20に開口するゲート23が形成されている。また、第2金型18は、第1金型17との型合わせ面18a側に、キャビティ13の外周側の輪郭を形作るキャビティ穴24が形成された分割スライド型25を有している。この分割スライド型25は、キャビティ穴24の中央にセンターピン15が挿入されており、センターピン15の外周面16とキャビティ穴24の内面との間にキャビティ13が形成されるようになっている。また、この分割スライド型25は、キャビティ穴24を二分割するように形成された第1スライド型26と第2スライド型27からなっており、分割面26a,27aが突き合わされた状態(
図3(a)に示す状態)から互いに反対方向(
図3(a)の+X方向と−X方向)へ分離してスライド移動できるようになっている。また、第2金型18は、キャビティ13の中心軸28に沿った一端側を塞ぐと共に、分割スライド型25を支持するエジェクトプレート30を有している。このエジェクトプレート30は、分割スライド型25が分離した後、センターピン15の中心軸31に沿ってスライド移動し、センターピン15に嵌合した状態の射出成形後の筒状メッシュフィルタ1をセンターピン15から分離する(抜く)ようになっている。
【0023】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、分割スライド型25の第2キャビティ部分21を形作るキャビティ13の内面14には、筒状メッシュフィルタ1のフィルタ部2の横桟10を形作るための周方向溝32がキャビティ13の中心軸28に沿って等間隔で複数形成されている。また、
図4(a)及び
図4(c)に示すように、センターピン15の外周面16で且つ分割スライド型25のキャビティ穴24に嵌合される外周面16には、筒状メッシュフィルタ1のフィルタ部2の縦桟8を形作るための軸方向溝33が周方向に沿って等間隔で複数形成されている。そして、射出成形時において、分割スライド型25のキャビティ穴24に形成された周方向溝32,32間の周方向突状部34は、センターピン15の外周面16に形成された軸方向溝33,33間の軸方向突状部35に当接している。したがって、分割スライド型25の周方向突状部34とセンターピン15の軸方向突状部35の当接部分36(
図4(b)及び
図4(c)の斜線部)は、第2キャビティ部分21を流動する溶融樹脂が供給されず、フィルタ部2の開口部11を形作る。
【0024】
以上のように構成された金型12は、
図3に示すように、第1スライド型26と第2スライド型27が突き合わされ、且つ、第1金型17と第2金型18が型合わせ(型締め)された状態において、ゲート23からキャビティ13の第1のキャビティ部分20に溶融樹脂が射出されると、流動抵抗が第1のキャビティ部分20よりも大きな第2のキャビティ部分21にそのまま流れ込むことがなく、第1のキャビティ部分20を満たした溶融樹脂が第2のキャビティ部分21に均等に供給され、その後、第2のキャビティ部分21を満たした溶融樹脂が第3のキャビティ部分22に供給される。したがって、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1を射出成形する金型12は、最終充填部が第2のリング状部5を形作る第3のキャビティ部分22になり、フィルタ部2が最終充填部にならず、フィルタ部2を形作る第2のキャビティ部分21にガス抜き用の樹脂溜まりを設ける必要がない。その結果、
図3乃至
図4に示した金型12を使用して射出成形された本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1は、少なくとも、フィルタ部2にガス抜き用の樹脂溜まりを設けない分だけ、第2従来例に係る筒状メッシュフィルタ110よりもフィルタ部2の開口部11の数を多くすることができ、フィルタ部2の開口率を大きくすることができる。
【0025】
また、
図3及び
図4に示した金型12は、キャビティ13内の溶融樹脂が冷えて固まって筒状メッシュフィルタ1が形成された後、第1金型17と第2金型18が分離されると共に、この第1金型17と第2金型18の分離に連動して分割スライド型25の第1スライド型26と第2スライド型27とが分離され、筒状メッシュフィルタ1がセンターピン15に嵌合された状態で残る。その後、センターピン15に嵌合された状態の筒状メッシュフィルタ1は、センターピン15に沿ってスライド移動するエジェクトプレート30によって押されてセンターピン15から抜かれ、金型12から取り出される。なお、第1金型17と第2金型18が分離される際には、ゲート23が筒状メッシュフィルタ1の第1のリング状部4の端面4aから分離され、筒状メッシュフィルタ1の第1のリング状部4の端面4aにゲートの切り離し痕37が残る。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1は、射出成形時における最終充填部が第2のリング状部5になり、射出成形時における最終充填部がフィルタ部2にならないため、少なくともフィルタ部2にガス抜き用の樹脂溜まりを設ける必要がない分だけ、フィルタ部2にガス抜き用の樹脂溜まりを設けた筒状メッシュフィルタよりもフィルタ部2の開口部11を多くすることができ、フィルタ部2の開口率を大きくすることができる。また、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1は、第2従来例に係る筒状メッシュフィルタ110と比較し、ガス抜き用の樹脂溜まり126と複数のリブ113を設けない分だけフィルタ部2の開口部11を多くすることができ、フィルタ部の開口率を大きくすることができる。
【0027】
なお、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1は、第1のリング状部4と第2のリング状部5が同一形状である。したがって、ゲート23は、第2のリング状部5を形作るキャビティ部分に開口させてもよい。
【0028】
また、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1は、第1のリング状部4と第2のリング状部5をフィルタ部2よりも厚肉に形成したが、これに限られず、第1のリング状部4と第2のリング状部5の少なくとも一方をフィルタ部2よりも厚肉に形成してもよい。そして、ゲート23は、第1のリング状部4と第2のリング状部5のうちのフィルタ部2よりも厚肉の方を形作るキャビティ部分に開口させてもよい。
【0029】
また、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1は、縦桟8及び横桟10の幅寸法wと高さ寸法hを例示し、開口部11の寸法を例示したが、これに限られず、求められるフィルタ性能に応じた寸法に設定される。
【0030】
また、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1は、軸方向に沿った両端が開口端であるが、これに限られず、軸方向に沿った一端側に蓋部を形成して閉じるか、又は、軸方向に沿った一端側に新たにフィルタ部を形成してもよい。
【0031】
また、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1は、縦桟8及び横桟10の断面形状が正方形の場合を例示したが、これに限られず、幅寸法wと高さ寸法hが異なる矩形形状の縦桟8及び横桟10にしてもよい。
【0032】
また、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1は、開口部11の形状が正方形の場合を例示したが、これに限られず、開口部11の形状を長方形にしてもよい。
【0033】
また、本実施形態に係る筒状メッシュフィルタ1を射出成形する金型12は、第1のキャビティ部分20に開口するピンポイントゲート23を1箇所だけ設置するようになっているが、これに限られず、ピンポイントゲート23を2箇所以上の複数箇所に設置してもよい。また、ゲートは、ピンポイントゲート23に限定されず、リングゲート、サイドゲート等でもよい。
【符号の説明】
【0034】
1……筒状メッシュフィルタ、2……フィルタ部、3……中心軸、4……第1のリング状部、5……第2のリング状部、6……内周側部分、7……外周側部分、8……縦桟、10……横桟、11……開口部、12……金型、20……第1のキャビティ部分、21……第2のキャビティ部分、22……第3のキャビティ部分