(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381389
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ケミカルルーピング燃焼システムならびにその運転方法
(51)【国際特許分類】
F24V 30/00 20180101AFI20180820BHJP
F23B 99/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
F24V30/00 301
F23B99/00
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-199421(P2014-199421)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-69494(P2016-69494A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 豊
(72)【発明者】
【氏名】竹田 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉廻 秀久
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−194213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
F24V 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物の酸素キャリア金属粒子を供給しながら形成した反応層に固体燃料とガス化剤を供給して前記固体燃料を熱分解させて、生成した固体成分をそのまま残して前記反応層で酸化反応を行う燃料反応器と、
前記燃料反応器で生成した気体成分を取り出して、酸化物の酸素キャリア金属粒子を供給しながら形成した反応層に導入して前記気体成分の酸化反応を行う揮発分反応器と、
前記燃料反応器によって還元された酸素キャリア金属粒子を前記燃料反応器から取り出して、空気で酸化して酸化物の酸素キャリア金属粒子とする空気反応器を備え、
前記燃料反応器と揮発分反応器と空気反応器の間を前記酸素キャリア金属粒子が循環流動するように流路で連結されたケミカルループ燃焼システムにおいて、
前記酸素キャリア金属粒子の流れに対して前記燃料反応器と揮発分反応器が並列に配置されて、
前記空気反応器から排出される前記酸化物の酸素キャリア金属粒子の流路が前記燃料反応器に接続される流路と前記揮発分反応器に接続される流路に分岐され、
前記燃料反応器から排出される還元された酸素キャリア金属粒子を前記空気反応器へ供給する流路と、前記揮発分反応器から排出される還元された酸素キャリア金属粒子を前記空気反応器へ供給する流路を備えたことを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項2】
請求項1に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記空気反応器から排出される前記酸化物の酸素キャリア金属粒子の流路上に前記酸化物の酸素キャリア金属粒子の分級装置を設け、
前記分級装置から粒子径の小さい酸素キャリア金属粒子の排出流路が前記燃料反応器側に接続され、粒子径の大きい酸素キャリア金属粒子の排出流路が前記揮発分反応器側に接続されていることを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項3】
請求項2に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記粒子径の小さい酸素キャリア金属粒子が前記燃料反応器で移動層を形成する粒子径を有し、前記粒子径の大きい酸素キャリア金属粒子が前記揮発分反応器で流動層を形成する粒子径を有することを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項4】
請求項3に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記燃料反応器で生成した気体成分を前記揮発分反応器に流動化ガスとして供給することを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記揮発分反応器の排出ライン上に排ガス中の二酸化炭素を分離・回収するための二酸化炭素分離・回収手段が設けられていることを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記燃料反応器に供給するガス化剤として、前記揮発分反応器から排出される排ガスを再循環して使用することを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項7】
酸化物の酸素キャリア金属粒子を供給しながら形成した反応層に固体燃料とガス化剤を供給して前記固体燃料を熱分解させて、生成した固体成分をそのまま残して前記反応層で酸化反応を行う燃料反応工程と、
前記燃料反応行程で生成した気体成分を取り出して、酸化物の酸素キャリア金属粒子を供給しながら形成した反応層に導入して前記気体成分の酸化反応を行う揮発分反応工程と、
前記燃料反応行程によって還元された酸素キャリア金属粒子を取り出して、空気で酸化して酸化物の酸素キャリア金属粒子とする空気反応工程を備え、
前記燃料反応工程と揮発分反応工程と空気反応工程の間で前記酸素キャリア金属粒子を循環流動させるケミカルループ燃焼システムの運転方法において、
前記酸素キャリア金属粒子の流れに対して前記燃料反応工程と揮発分反応工程を並列に設けて、
前記空気反応工程から排出される前記酸化物の酸素キャリア金属粒子を前記燃料反応工程と前記揮発分反応工程に分けて供給し、
前記燃料反応工程から排出される還元された酸素キャリア金属粒子と、前記揮発分反応工程から排出される還元された酸素キャリア金属粒子を前記空気反応工程に戻すことを特徴とするケミカルルーピング燃焼システムの運転方法。
【請求項8】
請求項7に記載のケミカルルーピング燃焼システムの運転方法において、
前記空気反応工程から排出される前記酸化物の酸素キャリア金属粒子を、粒子径の小さい酸素キャリア金属粒子と粒子径の大きい酸素キャリア金属粒子に分級する分級工程を設け、
前記分級工程で得られた粒子径の小さい酸素キャリア金属粒子を前記燃料反応工程に供給し、
前記分級工程で得られた粒子径の大きい酸素キャリア金属粒子を前記揮発分反応工程に供給することを特徴とするケミカルルーピング燃焼システムの運転方法。
【請求項9】
請求項8に記載のケミカルルーピング燃焼システムの運転方法において、
前記粒子径の小さい酸素キャリア金属粒子が前記燃料反応工程で移動層を形成する粒子径を有し、前記粒子径の大きい酸素キャリア金属粒子が前記揮発分反応工程で流動層を形成
する粒子径を有することを特徴とするケミカルルーピング燃焼システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球温暖化問題となる二酸化炭素(CO
2)の排出削減に係り、特に化石燃料ボイラ発電などで使用する化石燃料を燃焼することによって発生するCO
2の分離回収技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因の一つとして、大規模火力発電設備からのCO
2の排出が問題視され、燃焼排ガスからのCO
2を分離・回収して貯留する技術(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)が、CO
2の排出削減に有効な手段として注目されている。
【0003】
化石燃料を使用するボイラ設備に適用可能なCCS技術として化学吸収法、酸素燃焼法、ケミカルルーピング燃焼(CLC:Chemical Looping Combustion)法などがある。特にCLCは、化学吸収法の液再生エネルギーや、酸素燃焼法における酸素製造装置の動力が不要であるため、CCS技術の消費エネルギーを大幅に低減し、発電効率の低下を抑制できるという特長を有している。
【0004】
CLCシステムの原理について、
図4(a),(b)を用いて説明する。
図4(a)は二塔式CLCシステム、
図4(b)は三塔式CLCシステムを示している。
【0005】
CLCの基本構成は、空気反応器1と燃料反応器2の二塔で構成され、その間を酸素キャリア金属粒子(MeO)4と酸素キャリア金属粒子(Me)5が循環流動するシステムになっている。
【0006】
空気反応器1内では酸素キャリア金属粒子(Me)5が酸化剤(空気中の酸素)により酸化されて酸素キャリア金属粒子(MeO)4、燃料反応器2内では酸素キャリア金属粒子(MeO)4が還元剤として使用される固体炭素質燃料(石炭)7により還元されて酸素キャリア金属粒子(Me)5となる。
【0007】
より具体的に各反応器1,2内で起こる化学反応式を以下に示す。
【0008】
燃料反応塔:石炭+MeO⇒Me+CO
2+H
2O (1)
空気反応塔:Me+空気(O
2+N
2)⇒MeO+N
2 (2)
しかし、燃料反応器2内での石炭の反応は以下の3段階で反応が進むと考える。
【0009】
STEP1 石炭熱分解:石炭⇒チャー(C)+揮発分(CH
4+CO+H
2等)(3)
STEP2 揮発分酸化反応:揮発分(CH
4+CO+H
2等)+MeO
⇒Me+CO
2+H
2O (4)
STEP3 チャーガス化反応:チャー(C)+H
2O/CO
2+MeO
⇒Me+CO
2+H
2O (5)
これらの化学反応において、律速反応はチャーガス化反応である。これは、石炭を熱分解したときに発生する揮発分がチャーのガス化反応を阻害しているためと言われている(非特許文献1参照)。
【0010】
従って、揮発分を分離すれば、チャーのガス化反応を効率よく進行できる可能性がある。そこで本発明者らはCLCシステムにおいて石炭と酸素キャリア金属粒子の反応性を向上させるため、
図4(b)に示すように、空気反応器1と燃料反応器2の間に揮発分反応器3を設けて、空気反応器1と揮発分反応器3と燃料反応器2を直列に配置した三塔式CLCシステムを提案した(特開2013−194213号公報 特許文献1参照)。
【0011】
図5は、この従来技術である三塔式CLCシステムを示す概略系統図である。
【0012】
この三塔式CLCシステムは、空気反応器1−サイクロン13−揮発分反応器3−燃料反応器2−空気反応器1の間は、酸素キャリア金属粒子(MeO)4、(Me)5が循環できるようループ状の流路によって連結されている。
【0013】
空気反応器1には、燃料反応器2からの酸素キャリア金属粒子(Me)5と、空気予熱器16によって加温された空気6が供給され、空気反応器1内において前記(2)式の反応により、酸素キャリア金属粒子(Me)5が酸化されて酸素キャリア金属粒子(MeO)4となる。
【0014】
空気反応器1からは、酸素キャリア金属粒子(MeO)4と、N
2(窒素)、O
2(残存酸素)、NOx(窒素酸化物)ならびに飛灰などを含んだ排気ガス8が排出され、酸素キャリア金属粒子(MeO)4と排気ガス8は比重の差によってサイクロン13で分離される。
【0015】
サイクロン13で分離された排気ガス8は高温であるため熱交換器15で冷却され、さらに空気予熱器16で空気6と熱交換して、最後に排ガス浄化装置14で飛灰が除去されて大気へ放出される。前記熱交換器15で得られた蒸気は図示しない発電設備に送られる。
一方、サイクロン13で分離された酸素キャリア金属粒子(MeO)4は、Lバルブ配管20を通して揮発分反応器3に送られる。
【0016】
揮発分反応器3内は流動層が形成されており、流動化ガスとして燃料反応器2から発生した揮発分が主成分である生成ガス11を利用することで、揮発分ガスと酸素キャリア金属粒子(MeO)4の接触を良好に行い、反応性を高める効果がある。
【0017】
揮発分反応器3からは、CO
2(二酸化炭素)9やH
2O(水蒸気)10などが排出される。これらのガスは高温のため、熱交換器(排熱回収ボイラ)17で熱回収されて、熱回収で生成された過熱蒸気は発電に利用される。熱交換器17を通過した後、CO
2圧縮液化装置18に送られてCO
2の回収が行われる。
【0018】
燃料反応器2には、石炭などの固体燃料7と、CO
2やH
2Oなどのガス化剤19と、揮発分反応器3からの酸素キャリア金属粒子(MeO)4,(Me)5が供給されて、前述のように燃料反応器2内での石炭の反応が3段階で進んでいると考えられる。
【0019】
この三塔式CLCシステムでは、燃料反応器2内でのチャー滞留時間を確保するために、燃料反応器2内は移動層としてある。移動層とは、酸素キャリア金属粒子(MeO)4,(Me)5が連続的に供給され、砂時計の如く、酸素キャリア金属粒子(MeO)4、(Me)5が充填されたままゆっくりと下方へ移動し、ガス(ガス化剤19)は酸素キャリア金属粒子の隙間を流れて上方へ移動し、チャーはその移動層内でゆっくりとガス化反応する。
【0020】
移動層は気泡流動層のようにガス流速が速くないため、チャーが飛散して、燃料反応器2の内面に固着するようなことは無いという特長を有している。
【0021】
図4において符号36は、空気反応器1から排出される反応後ガス(N
2,O
2)である。
【0022】
なお、CLCシステムに関する先行技術文献としては、例えば下記の特許文献1〜4や非特許文献1,2などを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2013−194213号公報
【特許文献2】EP2623182A1
【特許文献3】特開2011−178572号公報
【特許文献4】US2014/0072917A1
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】林:次世代高効率石炭ガス化技術の開発:CCT workshop 2009 1411966461642_0.pdf
【非特許文献2】NEDO:ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト、ゼロエミッション石炭火力基板技術開発、次世代高効率ガス化技術最適化調査研究、CO2分離型化学燃焼利用技術に関する検討、H25年度調査研究成果発表会
【非特許文献3】日本紛体工業編:流動層ハンドブック:培風館 pp45−48、
図2.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、従来技術のCLCシステムでは酸素キャリア金属粒子(MeO)4,(Me)5の使用量が非常に多く、例えば、石炭1に対して約100倍の重量の酸素キャリア金属粒子が必要になる。
【0026】
前記非特許文献2によると、例えば、250MWth規模の事業用プラントでは、石炭36t/hに対し酸素キャリア金属粒子(イルメナイト:FeTiO
3)の循環量が3,600t/hと非常に多くなる。従って、燃料反応器2ならびに揮発分反応器3の巨大化、それに伴う補強鉄骨などによるコストアップ等といった課題が生じる。
【0027】
さらに、酸素キャリア金属粒子(MeO)4,(Me)5は揮発分反応器3を通過して燃料反応器2へ移動する際、吸熱反応により酸素キャリア金属粒子(MeO)4,(Me)5の顕熱が下がり、そのためにチャーのガス化反応速度が低下する。
【0028】
ケミカルルーピング燃焼技術は、流動層が採用される。流動層の大型化は、反応器断面積が増加するのに伴い流動化空気量が増加するために大容量ファンが必要になる。しかし、ファンの大型化には限界があり、さらに動力や設備費が甚大に増加し、現状の流動層技術では大型化が困難とされている。
【0029】
図5に示す従来技術では、揮発分反応器3と燃料反応器2が直列に配置されため、揮発分反応器3から燃料反応器2へ移動する酸素キャリア金属粒子(Me)5には未反応の酸素キャリア金属粒子(MeO)4が含まれる。すなわち燃料反応器2には、酸素キャリア金属粒子が余分に供給されることになる。
【0030】
一方、燃料反応器2へ移動反応する酸素キャリア金属粒子には揮発分反応器3で反応した酸素キャリア金属粒子(Me)5が含まれており、燃料反応器2の反応に不要な酸素キャリア金属粒子(Me)5が供給されることになる。従って、揮発分反応器3ならびに燃料反応器2の両反応器に供給される酸素キャリア金属粒子は余分に供給されているため、両反応器の寸法が大きくなった。
【0031】
そこで、各反応器で必要な酸素キャリア金属粒子量だけ供給すれば反応器内の酸素キャリア量を減少し、反応器サイズがコンパクト化できる可能性を見出した。
【0032】
本発明はこのような技術背景においてなされたものであり、その目的は揮発分反応器と燃料反応器の粒子層重量を低減して、両反応器のコンパクト化、補強鉄骨不要による軽量化が図れ、また、燃料反応器に入る酸素キャリアの顕熱低下を防止できるチャーガス化反応速度低下を抑制できるケミカルルーピング燃焼システムならびにその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
前記目的を達成するため、第1の本発明は、
酸化物の酸素キャリア金属粒子を供給しながら形成した反応層に固体燃料とガス化剤を供給して前記固体燃料を熱分解させて、生成した固体成分をそのまま残して前記反応層で酸化反応を行う燃料反応器と、
前記燃料反応器で生成した気体成分(後述の生成ガス)を取り出して、酸化物の酸素キャリア金属粒子を供給しながら形成した反応層に導入して前記気体成分の酸化反応を行う揮発分反応器と、
前記燃料反応器によって還元された酸素キャリア金属粒子を前記燃料反応器から取り出して、空気で酸化して酸化物の酸素キャリア金属粒子とする空気反応器を備え、
前記燃料反応器と揮発分反応器と空気反応器の間を前記酸素キャリア金属粒子が循環流動するように流路で連結されたケミカルループ燃焼システムを対象とするものである。
【0034】
そして本発明の第1の手段は、前記酸素キャリア金属粒子の流れに対して前記燃料反応器と揮発分反応器が並列に配置されて、
前記空気反応器から排出される前記酸化物の酸素キャリア金属粒子の流路が前記燃料反応器に接続される流路と前記揮発分反応器に接続される流路に分岐され、
前記燃料反応器から排出される還元された酸素キャリア金属粒子を前記空気反応器へ供給する流路と、前記揮発分反応器から排出される還元された酸素キャリア金属粒子を前記空気反応器へ供給する流路を備えたことを特徴とするものである。
【0035】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記空気反応器から排出される前記酸化物の酸素キャリア金属粒子の流路上に前記酸化物の酸素キャリア金属粒子の分級装置(例えば後述の第1サイクロンと第2サイクロンなど)を設け、
前記分級装置から粒子径の小さい酸素キャリア金属粒子の排出流路が前記燃料反応器側に接続され、粒子径の大きい酸素キャリア金属粒子の排出流路が前記揮発分反応器側に接続されていることを特徴とするものである。
【0036】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、
前記粒子径の小さい酸素キャリア金属粒子が前記燃料反応器で移動層を形成する粒子径を有し、前記粒子径の大きい酸素キャリア金属粒子が前記揮発分反応器で流動層を形成する粒子径を有することを特徴とするものである。
【0037】
本発明の第4の手段は前記第3の手段において、
前記燃料反応器で生成した気体成分を前記揮発分反応器に流動化ガスとして供給することを特徴とするものである。
【0038】
本発明の第5の手段は前記第1ないし第4のいずれかの手段において、
前記揮発分反応器の排出ライン上に排ガス中の二酸化炭素を分離・回収するための二酸化炭素分離・回収手段(例えば後述の二酸化炭素圧縮液化装置など)が設けられていることを特徴とするものである。
【0039】
本発明の第6の手段は前記第1ないし第5のいずれかの手段において、
前記燃料反応器に供給するガス化剤として、前記揮発分反応器から排出される排ガスを再循環して使用することを特徴とするものである。
【0040】
前記目的を達成するため第2の本発明は、
酸化物の酸素キャリア金属粒子を供給しながら形成した反応層に固体燃料とガス化剤を供給して前記固体燃料を熱分解させて、生成した固体成分をそのまま残して前記反応層で酸化反応を行う燃料反応工程と、
前記燃料反応行程で生成した気体成分を取り出して、酸化物の酸素キャリア金属粒子を供給しながら形成した反応層に導入して前記気体成分の酸化反応を行う揮発分反応工程と、
前記燃料反応行程によって還元された酸素キャリア金属粒子を取り出して、空気で酸化して酸化物の酸素キャリア金属粒子とする空気反応工程を備え、
前記燃料反応工程と揮発分反応工程と空気反応工程の間で前記酸素キャリア金属粒子を循環流動させるケミカルループ燃焼システムの運転方法を対象とするものである。
【0041】
そして本発明の第7の手段は、前記酸素キャリア金属粒子の流れに対して前記燃料反応工程と揮発分反応工程を並列に設けて、
前記空気反応工程から排出される前記酸化物の酸素キャリア金属粒子を前記燃料反応工程と前記揮発分反応工程に分けて供給し、
前記燃料反応工程から排出される還元された酸素キャリア金属粒子と、前記揮発分反応工程から排出される還元された酸素キャリア金属粒子を前記空気反応工程に戻すことを特徴とするものである。
【0042】
本発明の第8の手段は前記第7の手段において、
前記空気反応工程から排出される前記酸化物の酸素キャリア金属粒子を、粒子径の小さい酸素キャリア金属粒子と粒子径の大きい酸素キャリア金属粒子に分級する分級工程を設け、
前記分級工程で得られた粒子径の小さい酸素キャリア金属粒子を前記燃料反応工程に供給し、
前記分級工程で得られた粒子径の大きい酸素キャリア金属粒子を前記揮発分反応工程に供給することを特徴とするものである。
【0043】
本発明の第9の手段は前記第8の手段において、
前記粒子径の小さい酸素キャリア金属粒子が前記燃料反応工程で移動層を形成する粒子径を有し、前記粒子径の大きい酸素キャリア金属粒子が前記揮発分反応工程で流動層を形成する粒子径を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0044】
本発明は前述のような構成なっており、揮発分反応器と燃料反応器の粒子層重量を低減できるため、両反応器のコンパクト化、補強鉄骨不要による軽量化が可能となる。また、燃料反応器に入る酸素キャリアの顕熱低下を防止できるため、チャーガス化反応速度低下を抑制できるケミカルルーピング燃焼システムならびにその運転方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の実施例に係るCLCシステムの基本構成を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るCLCシステムの具体例を示した概略系統図である。
【
図3】本発明の実施例2に係るCLCシステムの具体例を示した概略系統図である。
【
図4】CLCシステムの原理について説明するための図であって、(a)は二塔式CLCシステム、(b)は三塔式CLCシステムを示している。
【
図5】従来の三塔式CLCシステムを示した概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に本発明の各実施例を図面とともに説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例に係るCLCシステムの基本構成を示す概略構成図である。
【0047】
図4(b)示す従来技術のCLCシステムと
図1に示す本発明の実施例に係るCLCシステムの異なる点は、
図4(b)示す従来技術のCLCシステムでは、空気反応器1と揮発分反応器3と燃料反応器2が直列に配置されており、空気反応器1から移動して来た酸素キャリア金属粒子(MeO)4が全量揮発分反応器3に送られ、揮発分反応器3から排出された酸素キャリア金属粒子(MeO、Me)12が全量燃料反応器2に送られるシステムになっている。
【0048】
これに対して本発明の実施例に係るCLCシステムでは、揮発分反応器3と燃料反応器2が並列に配置されており、空気反応器1から取り出された酸化物の酸素キャリア金属粒子(MeO)4が2系統に分配されて、燃料反応器2と揮発分反応器3に同時にかつ個別に供給されるシステムになっている点である。
【0049】
図2は、本発明の実施例1に係るCLCシステムの具体例を示した概略系統図である。
【0050】
この三塔式CLCシステムは
図2に示すように、空気反応器1−サイクロン13−(燃料反応器2あるいは揮発分反応3)−空気反応器1の間は、酸素キャリア金属粒子(MeO)4、(Me)5、24、25が循環流動できるようループ状の流路によって連結されている。
【0051】
空気反応器1には、燃料反応器2からの酸素キャリア金属粒子(Me)24ならびに揮発分反応3からの酸素キャリア金属粒子(Me)25が合流して酸素キャリア金属粒子(Me)5として、また空気予熱器16によって加温された空気6が供給され、空気反応器1内において酸素キャリア金属粒子(Me)5が酸素キャリア金属粒子(MeO)4となる。
【0052】
空気反応器1からは、酸素キャリア金属粒子(MeO)4と、N
2(窒素)、O
2(残存酸素)、NOx(窒素酸化物)ならびに飛灰などを含んだ排気ガス8が排出され、酸素キャリア金属粒子(MeO)4と排気ガス8はサイクロン13で比重差により分離される。
【0053】
サイクロン13で分離された燃焼排気ガス8は熱交換器15で冷却され、さらに空気予熱器16で空気6と熱交換し、最後に排ガス浄化装置14で飛灰が除去されて大気へ放出される。前記熱交換器15で得られた蒸気は、図示しない発電設備に送られる。一方、酸素キャリア金属粒子(MeO)4は、その重量によりサイクロン13の下部に落下する。
【0054】
図1に示すように燃料反応器2と揮発分反応器3は酸素キャリア金属粒子(MeO)4,(Me)5の流れに対して並列に配置されて、空気反応器1からの排出流路が途中から排出流路11aと11bに分岐され、一方の排出流路11aは途中にLバルブ配管20を有して揮発分反応器3に接続され、他方の排出流路11bは途中にLバルブ配管21を有して燃料反応器2に接続されている。
【0055】
従って、空気反応器1から排出された酸素キャリア金属粒子(MeO)4は2系統に分配され、一方は排出流路11aからLバルブ配管20を通過して揮発分反応器3へ移動し、もう一方は排出流路11bからLバルブ配管21を通過して燃料反応器2へ移動する。
【0056】
なお、酸素キャリア金属粒子(MeO)4の分配量は、Lバルブ配管20、21に供給する搬送ガス(図示せず)の流量を調整することにより制御できる。
【0057】
燃料反応器2には、固体燃料(石炭)7と、ガス化剤(CO
2、H
2O)19が供給されている。燃料反応器2の内部では移動層が形成され、固体燃料(石炭)7が揮発分とチャーに熱分解する。揮発分は生成ガス11として燃料反応器2から取り出されて揮発分反応器3へ移動する。チャーは燃料反応器2内でガス化剤19によってガス化反応を越し(前記式5参照)、生成ガス11として揮発分と共に揮発分反応器3へ移動する。
【0058】
燃料反応器2内の酸素キャリア金属粒子(MeO)4は生成ガス11との反応により還元されて酸素キャリア金属粒子(Me)24となり、その酸素キャリア金属粒子(Me)24はLバルブ配管23を有する排出流路37aを通して燃料反応器2から取り出され、途中で後述する酸素キャリア金属粒子(Me)25と合流して、空気反応器1へ移動する。
【0059】
一方、揮発分反応器3の内部では、燃料反応器2から送られてきた生成ガス11が、酸素キャリア金属粒子(MeO)4を浮遊流動させながら酸素キャリア金属粒子(MeO)4と反応して(前記式4参照)、その結果、CO
2ガス9とH
2O(水蒸気)10が生成する。
【0060】
また、揮発分反応器3内の酸素キャリア金属粒子(MeO)4は生成ガス11との反応により還元されて酸素キャリア金属粒子(Me)25となり、その酸素キャリア金属粒子(Me)25はLバルブ配管22を有する排出流路37bを通して揮発分反応器3から取り出されて、空気反応器1へ移動する。
【0061】
揮発分反応器3内で生成したCO
2ガス9とH
2O(水蒸気)10は、揮発分反応器3からの排出ラインを通って熱交換器17に送られて冷却され、熱交換器17で得られた過熱蒸気は図示しない発電設備に送られる。
【0062】
その後、CO
2ガス9とH
2O(水蒸気)10は脱硝装置、除塵装置、脱硫装置等(何れも図示せず)で不純物の除去がなされ、CO
2圧縮液化装置18でCO
2ガス9の圧縮液化が行われて、CO
2回収行される。
【0063】
燃料反応器2内では、チャーの滞留時間を確保するために、燃料反応器2内は移動層を形成している。移動層とは、酸素キャリア金属粒子(MeO)4が連続的に供給され、砂時計の如く、酸素キャリア金属粒子(MeO)4が充填されたままゆっくりと下方へ移動する。
【0064】
一方、燃料反応器2の下部から供給されたガス(ガス化剤27)は酸素キャリア金属粒子(Me)25の隙間を流れて上方へ移動し、チャーはその移動層内でガス化反応する(前記式5参照)。
【0065】
揮発分反応器3は流動層とし、流動化ガスとして燃料反応器2から発生した生成ガス11を利用することで、酸素キャリア金属粒子(MeO)4との接触を良好に行い、反応性を高める効果がある。
【0066】
次に、本発明の特徴点である酸素キャリア金属粒子(MeO)4の2分割供給について詳細に説明する。
【0067】
次の表1は、250MWth級CLCシステムの概念設計例を示す表で(出典:非特許文献2)、従来技術である比較例と本発明の実施例1を比較して示したものである。
【0069】
この表1の結果から明らかなように、比較例において、揮発分反応器3には未反応の酸素キャリア金属粒子(MeO)4が約32%分が過剰に供給され、燃料反応器2には反応済みの酸素キャリア金属粒子(Me)5が約67%分が不要に供給されている。
【0070】
そのため、燃料反応器2および揮発分反応器3ともに反応器断面積が非常に大きく、両反応器の寸法も大きくなっている。これは
図5に示すように、揮発分反応器3と燃料反応器2が直列に配置されているためである。
【0071】
さらに、比較例の酸素キャリア金属粒子(MeO)4の温度は、揮発分反応器3は吸熱反応であるため、空気反応器1の出口では950℃あった酸素キャリア金属粒子(MeO)4は、揮発分反応器3を通過して、燃料反応器2に供給する頃には900℃まで低下している。燃料反応器入口温度が950℃から50℃低下した場合、チャーのガス化反応速度は約1/2遅くなるため、CLCシステムの効率が低下するといった課題が生じる。
【0072】
これに対して本発明の実施例1は、
図1および
図2に示すように燃料反応器2と揮発分反応器3を並列に配置して、酸素キャリア金属粒子(MeO)4を2分して燃料反応器2と揮発分反応器3に個別に供給するシステムになっている。
【0073】
そのため、両反応器2,3内に滞留させる酸素キャリア金属粒子の重量が低減でき、燃料反応器2が約7割、揮発分反応器2が約3割まで寸法を短くすることが可能である。また、燃料反応塔3の入口温度は揮発分反応器2を通過しないため、温度を低下せずに950℃で供給でき、チャーガス化反応速度の低下を防止できる。
【0074】
燃料反応器2に供給するガス化剤19としては、CO
2やH
2O(水蒸気)、もしくはその両方を使用することができる。CO
2やH
2O(水蒸気)を別のシステムから供給しても構わない。また、CO
2の供給元として、CO
2圧縮液化装置18から回収したCO
2を再利用することも可能である。さらに、H
2O(水蒸気)の供給元として、熱交換器15、17から生成した水蒸気を使用することも可能である。
【0075】
さらに、ガス化剤19としてCO
2とH
2O(水蒸気)の混合ガスを使用する場合は、揮発分反応器3から排出されるCO
29、H
2O(水蒸気)10を循環ブロア(図示せず)で再循環して供給すれば、ランニングコストを低く抑えることが可能である。
【0076】
このように揮発分反応器3から排出される排ガス(CO
29、H
2O(水蒸気)10)を再循環する場合は、
図2において、排ガスの排出ライン上に設置された熱交換器17や脱硝装置、除塵装置、脱硫装置等(何れも図示せず)で不純物の除去がなされ後のCO
2圧縮液化装置18の入口直前の所で排出ラインから分岐する再循環ライン(図示せず)を設け、その再循環ラインの先端部を燃料反応器2の下部に接続し、再循環ラインの途中に循環ブロア(図示せず)を付設すればよい。
【0077】
酸素キャリア金属粒子(MeO)4には、例えばニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、カルシウム(Ca)などの酸化物が使用される。特に酸化鉄は、無公害で安価なためCLCシステムに好適である。酸素キャリア金属粒子(MeO)4としては、酸化鉄(Fe
2O
3)を使用した場合の、還元/酸化反応式を下記に示す。
【0078】
還元反応:C(石炭)+6Fe
2O
3⇒4Fe
3O
4+CO
2−吸熱 (9)
酸化反応:4Fe
3O
4+O
2(空気) ⇒6Fe
2O
3+発熱 (10)
酸素キャリア金属粒子(MeO)4として酸化鉄を使用した場合、酸素キャリア金属粒子(MeO)4はFe
2O
3、酸素キャリア金属粒子(Me)5はFe
3O
4となる。そして空気反応器1では前記式(10)に示すようにFe
3O
4とO
2 (空気)の酸化反応が生じ、燃料反応器2と揮発分反応器3では、前記式(9)に示すようにFe
2O
3の還元反応が生じる。
【0079】
生成ガス11の主成分はCH
4とCOとH
2であり、揮発分反応器3では生成ガス11と酸素キャリア金属粒子(MeO)4であるFe
2O
3の間で下記の反応が生じる。
【0080】
CH
4+6Fe
2O
3⇒CO+H
2O+4Fe
3O
4 (11)
CO+3Fe
2O
3⇒CO
2+2Fe
3O
4 (12)
H
2+3Fe
2O
3⇒H
2O+2Fe
3O
4 (13)
循環流動系では粒子搬送用ガスシールバルブとして、一般にメカニカルバルブまたはLバルブなどのニューマティックバルブが用いられている。メカニカルバルブでは600℃以上でシール部が破損するため、本発明ではLバルブ配管などのニューマティックバルブを使用している。Lバルブ配管はL字型の配管で構成されており、エアレーションを行うことで、粒子層を流動化して駆動し、粒子搬送流量を制御するものである。
【0081】
また、酸素キャリア金属粒子を搬送するLバルブ配管に使用する搬送用流体としては、システム系内で生成したCO
2ガスおよび(あるいは)H
2O(水蒸気)が利用される。
【0082】
次に本実施例1の作用、効果について説明する。
【0083】
本実施例1の特徴部分は、揮発分反応器と燃料反応器を並列に配置して、空気反応器から送られてくる酸素キャリア金属粒子を揮発分反応器と燃料反応器に分配して個別に供給する構成にある。
【0084】
これより揮発分反応器内および燃料反応器内に形成される酸素キャリア金属粒子の粒子層重量を低減できるため、両反応器のコンパクト化、補強鉄骨不要による軽量化が可能である。また、燃料反応器に供給される酸素キャリア金属粒子の顕熱低下を防止できるため、チャーガス化反応速度の低下が抑制できる。
【0085】
(実施例2)
次に本発明の実施例2について説明する。実施例2において前記実施例1と相違する点は、酸素キャリア金属粒子を2分割する方法として、大小異なる粒子径の酸素キャリア金属粒子を使用して、2段サイクロン(分級装置)により大粒子径の酸素キャリア金属粒子と小粒子径の酸素キャリア金属粒子に分離して、それぞれ揮発分反応器と燃料反応器に供給する点である。
【0086】
図3は、本発明の実施例2に係るCLCシステムの具体例を示した概略系統図である。この実施例2では
図3に示すように、空気反応器1の後流に第1サイクロン30と第2サイクロン31の2段のサイクロンを設置している。
【0087】
本実施例では、この第1サイクロン30と第2サイクロン31で、粒子径が異なる2種類の酸素キャリア金属粒子(MeO)を分級する分級装置を構成している。
【0088】
そして第1サイクロン30はLバルブ配管20を有する排出流路35bで揮発分反応器3と接続し、第2サイクロン31はLバルブ配管21を有する排出流路35aで燃料反応器2に接続されている。また、第1サイクロン30と第2サイクロン31は、連絡管34で接続されている。
【0089】
前述の異径酸素キャリア金属粒子(MeO)としては、例えば平均粒子径が150μmの酸素キャリア金属粒子32(酸素キャリア金属粒子(MeO)>100μm)と、平均粒子径が40μmの酸素キャリア金属粒子33(酸素キャリア金属粒子(MeO)<100μm)の2種類が、空気反応器1内では混合して用いられる。
【0090】
空気反応器1から排出された酸素キャリア金属粒子(MeO)32、33は、排気ガス8により浮遊流動しながら1段目の第1サイクロン30に供給され、ここで粒子径大の酸素キャリア金属粒子32は粒子径小の酸素キャリア金属粒子33と比重差により分離されて、第1サイクロン30の下部に落下する。
【0091】
この粒子径大の酸素キャリア金属粒子(MeO)32はLバルブ配管20を通過し、揮発分反応器3に移動して流動層を形成し、燃料反応器2から供給された生成ガス11と反応して、酸素キャリア金属粒子(Me)25、ならびにCO
29とH
2O10となる(前記式4参照)。
【0092】
揮発分反応器3から排出される酸素キャリア金属粒子25(Me)はLバルブ配管22を有する排出流路37bを通過後、後述する粒子径小の酸素キャリア金属粒子(Me)24と合流し、酸素キャリア金属粒子(Me)5として空気反応器1へ移動する。
【0093】
一方、粒子径小の酸素キャリア金属粒子(MeO)33は、排ガス8と共に第1サイクロン30の上部から排出され、2段目の第2サイクロン31で酸素キャリア金属粒子(MeO)33と排ガス8が分離され、酸素キャリア金属粒子(MeO)33は第2サイクロン31の下部に落下する。
【0094】
粒子径小の酸素キャリア金属粒子(MeO)33はLバルブ配管21を有する排出流路35aを通過し、燃料反応器2に移動して移動層を形成し、チャーガス化反応物と反応し(前記式5参照)、酸素キャリア金属粒子(Me)24と生成ガス11となる。
【0095】
燃料反応器2から排出した酸素キャリア金属粒子(Me)24はLバルブ配管23を有する排出流路37aを通過後、酸素キャリア金属粒子25(Me)と合流して空気反応器1へ移動する。
【0096】
ここで、酸素キャリア金属粒子の粒子径範囲は、粒子径大の酸素キャリア金属粒子32には流動層を形成可能な100〜1000μm、粒子径小の酸素キャリア金属粒子33には流動化しない10〜90μmの2種類の範囲が望ましい。
【0097】
もし、粒子径小の酸素キャリア金属粒子(MeO)33を揮発分反応器3に供給した場合、細かい粒子径により空隙率が低くなり、流動層が形成できず、スラッギングやチャネリングを引き起こす(非特許文献3参照)。このため、1段目の第1サイクロン30は揮発分反応器30に接続して、流動化がし易い粒子径大(100〜1000μm)の酸素キャリア金属粒子(MeO)32を供給しなければならない。
【0098】
一方、燃料反応器2は移動層を形成させるため、流動化できない粒子径小(数10μm)の酸素キャリア金属粒子(MeO)33でも構わない。むしろ、粒子径小の酸素キャリア金属粒子(MeO)33の方が、固体燃料7との接触面積を広く確保できるため反応促進効果が期待できる。
【0099】
また、組成や原料が異なる2種類の酸素キャリア金属粒子(MeO)を用いても構わない。例えば、粒子径大の酸素キャリア金属粒子(MeO)に高反応性だが高価な人工合成粒子、粒子径小の酸素キャリア金属粒子(MeO)に低反応性だが安価な天然鉱物を採用すれば、低コスト化が可能である。
【0100】
例えば、粒子径大の酸素キャリア金属粒子(MeO)としてNiO、粒子径小の酸素キャリア金属粒子(MeO)としてCuOを用いれば、CH
4との反応性が高いNiOは揮発分反応器3で生成ガス11の反応速度を加速する。一方、CuOは燃料反応器2内で、酸素を脱離してチャーのガス化反応を加速する効果が期待できるため、酸素キャリア金属粒子の滞留時間が短くなって、反応器容積のコンパクト化が達成できる。
【0101】
実施例2の作用効果は、前述した実施例1の作用効果が期待できる上、さらに、2種類の異種酸素キャリア金属粒子を使用することで、反応速度が加速され、反応器内に滞留する時間短縮による反応器のコンパクト化や、安価な天然鉱物の酸素キャリア金属粒子の採用による低コスト化が可能である。
【0102】
前記実施例1,2では、揮発分反応器ならびに燃料反応器から排出される酸素キャリア金属粒子が空気反応器の前流側で合流する構成になっているが、合流しないで、揮発分反応器から排出される酸素キャリア金属粒子と、燃料反応器から排出される酸素キャリア金属粒子を個別に空気反応器に供給しても構わない。
【0103】
前記実施例1,2では、空気反応器に空気のみを供給したが、空気と排ガスの混合気体を空気反応器に供給しても構わない。
【符号の説明】
【0104】
1:空気反応器
2:燃料反応器
3:揮発分反応器
4:酸素キャリア金属粒子(MeO)
5:酸素キャリア金属粒子(Me)
6:空気
7:固体燃料(石炭)
8:排気ガス
9:CO
2
10:H
2O
11:生成ガス
13:サイクロン
18:CO
2圧縮液化装置
19:ガス化剤
24:酸素キャリア金属粒子(Me)
25:酸素キャリア金属粒子(Me)
30:第1サイクロン
31:第2サイクロン
32:酸素キャリア金属粒子(MeO)
33:酸素キャリア金属粒子(MeO)
35a,35b:酸素キャリア金属粒子(MeO)