特許第6381407号(P6381407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社NTTドコモの特許一覧

特許6381407ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法
<>
  • 特許6381407-ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法 図000002
  • 特許6381407-ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法 図000003
  • 特許6381407-ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法 図000004
  • 特許6381407-ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法 図000005
  • 特許6381407-ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法 図000006
  • 特許6381407-ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法 図000007
  • 特許6381407-ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法 図000008
  • 特許6381407-ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法 図000009
  • 特許6381407-ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381407
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ユーザ装置、基地局、セル管理方法、及びキャリアアグリゲーション判定方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20180820BHJP
   H04W 76/15 20180101ALI20180820BHJP
【FI】
   H04W72/04 111
   H04W76/15
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-218624(P2014-218624)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-86311(P2016-86311A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】藤村 広太
(72)【発明者】
【氏名】陳 宇
【審査官】 大濱 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/073939(WO,A1)
【文献】 特開2014−13998(JP,A)
【文献】 特表2014−503145(JP,A)
【文献】 特開2014−138286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアアグリゲーションをサポートする移動通信システムにおいて基地局と通信を行うユーザ装置であって、
過去に測定を行った通信中でないセルのうち、品質が良好であったセルを仮想SCellとして管理する管理手段と、
前記仮想SCellとして管理されるセルの情報を前記基地局に通知する通知手段と
を備えることを特徴とするユーザ装置。
【請求項2】
前記管理手段は、前記基地局からの指示に基づいて、前記仮想SCellとして管理されているセルをキャリアアグリゲーションのSCellとして設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のユーザ装置。
【請求項3】
前記管理手段は、
前記測定により得られた品質が所定閾値よりも良好なセルの情報を格納する格納手段と、
前記格納手段に情報が格納されているセルのうち、前記ユーザ装置の能力によりキャリアアグリゲーションに使用可能であるセルの情報を仮想SCellの情報として管理する仮想SCell処理手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のユーザ装置。
【請求項4】
前記管理手段は、前記基地局から測定指示を受信した場合に、前記仮想SCellの管理を解除する
ことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載のユーザ装置。
【請求項5】
前記管理手段は、前記セルを前記仮想SCellとして管理する場合に、前記ユーザ装置の無線部に対して、当該セルを非アクティベート化されたSCellと見なして動作を行うように指示する
ことを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載のユーザ装置。
【請求項6】
キャリアアグリゲーションをサポートする移動通信システムにおいてユーザ装置と通信を行う基地局であって、
前記ユーザ装置において過去に測定を行った通信中でないセルのうち、品質が良好であったセルが仮想SCellとして管理される場合に、当該仮想SCellとして管理されるセルの情報を前記ユーザ装置から受信する受信手段と、
前記仮想SCellとして管理されるセルの情報に基づいて、前記ユーザ装置に対して当該セルをSCellとして追加するか否かを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする基地局。
【請求項7】
前記判定手段は、前記仮想SCellとして管理されるセルが前記基地局の配下のセルであり、かつ、当該セルの品質が十分に良い場合に、前記ユーザ装置に対して当該セルをSCellとして追加すると判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の基地局。
【請求項8】
キャリアアグリゲーションをサポートする移動通信システムにおいて基地局と通信を行うユーザ装置が実行するセル管理方法であって、
過去に測定を行った通信中でないセルのうち、品質が良好であったセルを仮想SCellとして管理するステップと、
前記仮想SCellとして管理されるセルの情報を前記基地局に通知するステップと
を備えることを特徴とするセル管理方法。
【請求項9】
キャリアアグリゲーションをサポートする移動通信システムにおいてユーザ装置と通信を行う基地局が実行するキャリアアグリゲーション判定方法であって、
前記ユーザ装置において過去に測定を行った通信中でないセルのうち、品質が良好であったセルが仮想SCellとして管理される場合に、当該仮想SCellとして管理されるセルの情報を前記ユーザ装置から受信するステップと、
前記仮想SCellとして管理されるセルの情報に基づいて、前記ユーザ装置に対して当該セルをSCellとして追加するか否かを判定するステップと
を備えることを特徴とするキャリアアグリゲーション判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアアグリゲーションをサポートする移動通信システムにおけるユーザ装置UE及び基地局eNBに関連するものである。
【背景技術】
【0002】
LTEシステムでは、所定の帯域幅(最大20MHz)を基本単位として、複数のキャリアを同時に用いて通信を行うキャリアアグリゲーション(CA:Carrier Aggregation)が採用されている(非特許文献1)。キャリアアグリゲーションにおいて基本単位となるキャリアはコンポーネントキャリア(CC:Component Carrier)と呼ばれる。
【0003】
CAが行われる際には、ユーザ装置UEに対して、接続性を担保する信頼性の高いセルであるPCell(Primary cell)及び付随的なセルであるSCell(Secondary cell)が設定される。ユーザ装置UEは、第1に、PCellに接続し、必要に応じて、SCellを追加することができる。PCellは、RLM(Radio Link Monitoring)及びSPS(Semi-Persistent Scheduling)等をサポートする単独のセルと同様のセルである。
【0004】
SCellは、PCellに追加されてユーザ装置UEに対して設定されるセルである。SCellの追加及び削除は、RRC(Radio Resource Control)シグナリングによって行われる(非特許文献2)。SCellは、ユーザ装置UEに対して設定された直後は、非アクティブ状態(deactivate状態)であるため、アクティブ化することで初めて通信可能(スケジューリング可能)となるセルである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS 36.300 V12.1.0 (2014−03)
【非特許文献2】3GPP TS 36.331 V12.2.0 (2014−06)
【非特許文献3】3GPP TS 36.133 V12.4.0 (2014−07)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に、ユーザ装置UEと基地局eNB間の通信をNon−CA状態からCA状態に遷移させる場合の手順例を示す。図1を参照して手順概要を説明する。
【0007】
図1に示すように、Non−CA状態(ステップ1)において、基地局eNBがユーザ装置UEに対して周辺セルの品質測定を指示する(ステップ2)。ユーザ装置UEは、測定を行って(ステップ3)、測定結果を基地局eNBに返す(ステップ4)。基地局eNBは、ユーザ装置UEから受信した測定結果に基づき、CAを設定することを決定し(ステップ5)、SCellの追加を指示する(ステップ6)。そして、CA状態になり(ステップ7)、ユーザ装置UEから基地局eNBへ設定完了の確認メッセージが送信される(ステップ8)。
【0008】
上記のステップ2では、ユーザ装置UEに対してRRC信号による測定指示を行うことで異周波セルの品質の測定をさせている。
【0009】
ユーザ装置UEは、通信中の周波数とは異なる周波数の無線品質を測定する際に、受信周波数を該当周波数に合わせるためにRF tuning(無線チューニング)をする必要があり、その際に、現状の通信を一旦中断する必要があることから、基地局eNBから受信する測定指示により、周期的に訪れるMeasurement gapが設定される。
【0010】
Measurement Gapを設定すると、その分通信に割り当てることのできるSubframe数が削減されてしまうため、スループットが低下する。また、図1に示すように、測定の指示、測定報告の手順が発生することにより、CA状態に遷移するまで時間がかかり、CAのメリットを最大限に享受できない。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、移動通信システムにおいて、キャリアアグリゲーションを設定する手順を簡易化することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の形態によれば、キャリアアグリゲーションをサポートする移動通信システムにおいて基地局と通信を行うユーザ装置であって、
過去に測定を行った通信中でないセルのうち、品質が良好であったセルを仮想SCellとして管理する管理手段と、
前記仮想SCellとして管理されるセルの情報を前記基地局に通知する通知手段とを備えるユーザ装置が提供される。
【0013】
また、本発明の実施の形態によれば、キャリアアグリゲーションをサポートする移動通信システムにおいて基地局と通信を行うユーザ装置が実行するセル管理方法であって、
過去に測定を行った通信中でないセルのうち、品質が良好であったセルを仮想SCellとして管理するステップと、
前記仮想SCellとして管理されるセルの情報を前記基地局に通知するステップとを備えるセル管理方法が提供される。
【0014】
また、本発明の実施の形態によれば、キャリアアグリゲーションをサポートする移動通信システムにおいてユーザ装置と通信を行う基地局が実行するキャリアアグリゲーション判定方法であって、
前記ユーザ装置において過去に測定を行った通信中でないセルのうち、品質が良好であったセルが仮想SCellとして管理される場合に、当該仮想SCellとして管理されるセルの情報を前記ユーザ装置から受信するステップと、
前記仮想SCellとして管理されるセルの情報に基づいて、前記ユーザ装置に対して当該セルをSCellとして追加するか否かを判定するステップとを備えるキャリアアグリゲーション判定方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施の形態によれば、移動通信システムにおいて、キャリアアグリゲーションを設定する手順を簡易化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】課題を説明するための図である。
図2】本発明の実施の形態に係る通信システムの構成図である。
図3】本実施の形態における処理手順の例を示すシーケンス図である。
図4】ユーザ装置UEの機能構成例を示す図である。
図5】ユーザ装置UEの機能構成例を示す図である。
図6】ユーザ装置UEにおいて管理されるテーブルの例を示す図である。
図7】ユーザ装置UEの動作例を説明するためのフローチャートである。
図8】基地局eNBの機能構成例を示す図である。
図9】基地局eNBの動作例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。また、本実施の形態では、LTEの移動通信システムを対象とするが、本発明はLTEに限らず他の移動通信システムにも適用可能である。また、本実施の形態において、「LTE」と記述した場合のRel(リリース番号)は、キャリアアグリゲーション(CA)が規定されるRelであればどのRelでもよい。
【0018】
(システム全体構成、動作概要)
図2に、本発明の実施の形態における通信システムの構成図を示す。図2に示すように、本実施の形態における通信システムは、基地局eNBとユーザ装置UEとを含むシステムである。基地局eNBとユーザ装置UEとでCA通信を行うことが可能である。図2では、基地局eNBとユーザ装置UEはそれぞれ1つずつ示されているが、これは図示の便宜上のものであり、それぞれ複数存在してもよい。
【0019】
また、図2の例では、1つのセルが示されているが、これも図示の便宜上のものであり、複数のセルが存在してもよい。また、例えば、基地局eNBから離れた場所に、基地局eNBと光ファイバ等で接続されるRRH(Remote Radio Head)が備えられる構成であってもよい。
【0020】
(処理シーケンス例)
本実施の形態では、ユーザ装置UEは、過去に測定を行ったセルのうち、現在通信中でない品質が良かったセルを「仮想SCell」として管理するとともに、「仮想SCell」の情報を基地局eNBに通知する。そして、基地局eNBは、当該ユーザ装置UEとの間でCAを行うか否かの決定のためにユーザ装置UEに対する測定指示を行うことなく、「仮想SCell」の情報に基づいてCAを行うか否かを決定し、CAを行う場合に仮想SCellをCAのSCellとして追加するよう指示する動作を実施する。
【0021】
以下、上記の動作を含む処理シーケンス例を図3を参照して説明する。図3では、ハンドオーバを実施し、「過去に測定を行ったセル」を、ハンドオーバ前に接続していたセルとしているが、これは一例である。「過去に測定を行ったセル」は、これに限られない。例えば、「過去に測定を行ったセル」が、測定指示に基づき測定したセルでなく、Idle状態のときにcell selection/reselectionのために測定したセルであってもよい。
【0022】
図3の最初の状態において、ユーザ装置UEはセルAに接続し、通信を行っているものとする。また、セルAの測定結果を保持しているものとする。この測定結果は、例えば、セルAへの在圏時の測定結果であってもよいし、例えば定期的な測定を指示する測定指示に基づいて測定を行った測定結果であってもよい。
【0023】
図3に示すように、Non−CA状態(ステップ101)において、基地局eNBがユーザ装置UEに対して周辺セルの品質測定を指示し(ステップ102)、ユーザ装置UEは、測定を行う(ステップ103)。ここで測定する量は、ステップ102における指示内容に応じた量であり、例えば、RSRP及び/又はRSRQである。これらを総称して「品質」もしくは「受信品質」と呼ぶ。
【0024】
ステップ103において、ユーザ装置UEは、セルBの受信品質が良好であることを示す測定結果を得たとする。ユーザ装置UEは、測定結果(セルBのセルID、周波数、品質を含む)を基地局eNB(セルA)に通知する(ステップ104)。基地局eNBは、ユーザ装置UEが接続すべきセルをセルBであると決定し、ユーザ装置UEに対してセルBへのハンドオーバを行わせる(ステップ105)。
【0025】
一方、セルAとの接続を切断し、セルAでの通信を行わなくなったユーザ装置UEは、ステップ106において、セルAを仮想SCellとして管理することで、仮想CA状態に遷移する。セルAを仮想SCellとして管理するとは、例えば、セルAの情報(セルID、周波数、品質等)を、仮想SCellの情報として管理(格納)する等である。
【0026】
なお、仮想SCellは、通常のSCellとは異なり、無線リソース等の設定はしないため、仮想CA状態では、CAは行われていない。ただし、モデム(無線部)は仮想ScellのCC(周波数)を、Secondary CCとしてチューニングする。これにより、ユーザ装置UEは、仮想SCellについて、これがDeactivated SCellであるとした場合と同様に、当該セルと同一CC(周波数)の他セルの測定をMeasuremnt Gapなしに行うことができる。
【0027】
ステップ107において、ユーザ装置UEは、仮想SCell情報通知信号を基地局eNB(セルB)に送信する。仮想SCell情報通知信号には、仮想SCellとして管理されているセルのセル固有情報(本例ではセルAのセルID)と、過去に測定した当該セルの品質が含まれる。なお、仮想SCell情報通知信号は、RRC信号であってもよいし、MAC信号であってもよいし、その他の信号であってもよい。
【0028】
仮想SCell情報通知信号を受信した基地局eNBは、仮想SCell情報通知信号により通知されたセルIDと品質とに基づいて、ユーザ装置UEに対して当該セルを追加することにより、CAを行うか否かを判断する。具体的な判断方法については後述する。図3の例では、基地局eNBは、CAを行うと判断し(ステップ108)、セルAをSCellとして追加するようユーザ装置UEに指示する(ステップ109)。その後、ユーザ装置と基地局eNB間でCAが開始され(ステップ110)、ユーザ装置UEから基地局eNBへ設定完了の確認メッセージが送信される(ステップ111)。
【0029】
上記のように、本実施の形態において、ユーザ装置UEは、基地局eNBから測定を指示されるより先に、自律でSCell候補となりうるセルを「仮想SCell」として準備しておくこととしたので、Non−CA状態からCA状態への遷移手順を簡易化でき、遷移に要する時間を短縮できる。
【0030】
なお、本実施の形態では、過去に測定したセルの品質に基づいてSCell追加判定を行うことから、測定時のセルの品質と、SCell追加判定時における当該セルの品質との間に大きな相違が生じている可能性が考えられるが、大きな相違があっても、実害はない。以下、各状態に分けて説明する。
【0031】
(1)仮想CA状態
仮想CA状態においては、当該セルを使用した通信は行われないので実害はない。
【0032】
(2)SCellとして追加後(Deactivated状態)
この場合も当該セルを使用した通信は行われないので実害はない。また、このとき、そのCC(周波数)上の他のセルに対してのMeasurement Gapの起動は不要であり、その分のスループットの低減を回避できる。更に、当該セルの品質が非常に悪くなっている場合、SCellとして削除される。
【0033】
(3)Scellとして追加後(Activated状態)
品質が非常に悪くなっている場合は、SCellとして削除される。このとき、SCellとしての通信の寄与ができないため、CA状態でもPCell分のスループットしか出ないが、それでもMeasurement Gap起動による悪影響と比較するとメリットがある。
【0034】
以下では、上記のシーケンスの動作を実行するユーザ装置UEと基地局eNBの構成及び動作例を説明する。
【0035】
(ユーザ装置UEの構成、動作)
図4に、本実施の形態におけるユーザ装置UEの機能構成図を示す。図4に示すように、本実施の形態のユーザ装置UEは、DL信号受信部101、UL信号送信部102、測定制御部103、CA制御部104を含む。なお、図4は、ユーザ装置UEにおいて本発明の実施の形態に特に関連する機能部のみを示すものであり、ユーザ装置UEは、少なくともLTEに準拠した移動通信システムにおけるユーザ装置UEとして動作するための図示しない機能も有するものである。また、図4に示す機能構成は一例に過ぎない。本実施の形態に係る動作を実行できるのであれば、機能区分や機能部の名称はどのようなものでもよい。
【0036】
DL信号受信部101は、基地局eNBから各種の信号を無線受信し、受信した物理レイヤの信号からより上位のレイヤの信号を取得する機能を含む。UL信号送信部102は、ユーザ装置UEから送信されるべき上位のレイヤの信号から、物理レイヤの各種信号を生成し、無線送信する機能を含む。
【0037】
測定制御部103は、基地局eNBからの指示に基づいて、もしくは、自律的に、セルの品質測定を行うとともに、測定結果を記憶手段(メモリ等)に保持し、通信に使用しないセルのセルIDと品質(過去に測定したセルの品質)等を仮想SCellの情報としてCA制御部104に通知する機能を有する。
【0038】
CA制御部104は、CAを構成するセル(CC)の管理、追加、削除、アクティベート、ディアクティベート等を行うとともに、仮想SCellの管理・制御等を実施する。
【0039】
図5に、ユーザ装置UEの機能構成の他の例を示す。図5は、図4に比べて、より実装に近い形で機能構成を示したものである。
【0040】
図5に示す例において、ユーザ装置UEは、無線部201、L2処理部202、RRC処理部203を有する。また、RRC処理部203は、測定結果管理部213と仮想SCell処理部223を含む。
【0041】
無線部201は、基地局eNBとの間の無線インタフェースにおけるPHY(Physical)レイヤの処理を実行する。L2処理部202は、MAC(Media Access Control)レイヤ、RLC(Radio Link Control)レイヤ、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤの処理を実行する。RRC処理部203は、RRC(Radio Resource Control)レイヤの処理を実行する。
【0042】
本実施の形態では、RRC処理部203の中に仮想SCell処理に関する機能部である測定結果管理部213と仮想SCell処理部223が含まれる。なお、図4との関係でいえば、例えば、測定結果管理部213の機能は図4の測定制御部103に含まれ、仮想SCell処理部223の機能は図4のCA制御部104に含まれる。また、仮想SCell処理部223は、無線部201とのインターフェース(IF)を有する。
【0043】
前述したように、ユーザ装置UEは、測定を行ったセルの情報を保持するとともに、当該セルの情報を仮想SCellとして管理する動作を行う。図6に、ユーザ装置UEにおいて当該セルの情報を保持するテーブルの例を示す。図6に示すように、当該テーブルは物理セルID、周波数、測定結果である品質を対応付けて格納する。測定結果管理部213は、ユーザ装置UEにより測定されたセルの測定結果を図6に示す形で保持する。なお、保持する測定結果は、品質が所定の閾値を超えたセルのみとする。また、測定結果を記録してから、更新がないまま所定期間を経過したセルの情報を破棄することとしてもよい。測定結果管理部213は、図6に示すテーブルのサブセット(のテーブル)を仮想SCellの情報として保持する。
【0044】
次に、図7のフローチャートを参照して、図5に示すユーザ装置UEの動作例として、仮想SCellに関する動作例を説明する。
【0045】
測定結果管理部213は、ユーザ装置UEが現在通信中の周波数を含む、各周波数(CC)毎に、測定がなされたセルに対して、測定結果が所定の閾値を超えたセルの情報を図6に示したテーブルの形で記憶する(ステップ201)。前述したように、記憶したセルの情報を所定期間後に破棄するようにしてもよい。
【0046】
上記所定の閾値については、予めユーザ装置UE内部で保持されていてもよいし、事前に基地局eNBからRRC信号や報知信号でユーザ装置UEに通知することとしてもよい。
【0047】
ユーザ装置UEがNon−CA状態になったときに、測定結果管理部213は、テーブルに記憶しているセルの中から、ユーザ装置UE自身のCapability上、CAの対象とできるCCに該当するセルを仮想SCell候補として選択し、当該セルの情報(セルID、周波数、品質等)を仮想Scell処理部223に通知する(ステップ202)。仮想Scell候補が複数ある場合には、当該複数のセルを通知してもよいし、例えば品質の良いものから所定個(例:1個)のセルを通知してもよい。
【0048】
なお、「Non−CA状態になったとき」とは、例えば、ある1つのセルと通信を開始したとき、CA状態においてSCellが削除されてCA状態ではなくなったとき、等である。
【0049】
測定結果管理部213から仮想Scell候補の情報を受信した仮想SCell処理部223は、受信したセルの情報を仮想SCellの情報としてテーブルに記憶するとともに、仮想CA状態を起動して、無線部201に対して、指定のセルに関してDeactivated Scellと同様の動作を行うように通知し、更に、基地局eNBに仮想SCell情報通知信号を送信する(ステップ203)。
【0050】
なお、「仮想CA状態を起動する」とは、例えば、仮想SCell処理部223が、仮想CA状態か否かを示すフラグを持ち、当該フラグを立てるとともに、上記のように無線部201への通知、及び基地局eNBへの通知を行うことに相当する。仮想CA状態が解除された場合は当該フラグは削除される。
【0051】
仮想CA状態において、仮想Scell処理部223は、仮想SCell状態解除トリガを検知すると(ステップ204)、仮想SCell情報を削除することにより仮想CA状態を解除する。また、このとき、無線部201へ仮想CA状態解除を通知し、「Deactivated Scellと同様の動作」を解除する。
【0052】
「仮想SCell状態解除トリガ」は、例えば、基地局eNBから正式にSCell追加指示を受けたこと、基地局eNBからSCell測定指示を受けたこと、再接続が発生したこと等である。
【0053】
上記のように、仮想Scellを無線部201(モデム)側でDeactivated SCellとして扱わせることにより、異周波測定の際に、仮想SCellと同じCC(周波数)のセルの測定においては、Deactivated SCellがあるCC(周波数)の測定の規定(非特許文献3)に準拠した動作を行うことができる。よって、その際には3GPPの標準規定上必要であるMeasurement Gapの設定が不要となり、その分のスループットの劣化を回避する事ができる。
【0054】
なお、本実施の形態における「仮想SCell」と「Deactivated Cell」との間には、例えば、L2レベルのUE動作において、仮想SCellはL2(MACレベル)での動作はないが、Deactivated SCellにおいては、Activated SCell状態への遷移の指示がMACで送信されてこないかを監視する必要があるという点で大きな相違がある。また、L3(RRCレベル)において、基地局eNBは、UEへの指示を行う関係上、Deactivated Scellを必ず認識しているが、仮想SCellについては、ユーザ装置UEから報告を受信するまで、基地局eNB側では認識しなくてよい。このように、仮想SCell」と「Deactivated Cell」との間には大きな相違がある。
【0055】
(基地局eNBの構成、動作)
図8に、本実施の形態における基地局eNBの機能構成図を示す。図8に示すように、基地局eNBは、DL信号送信部301、UL信号受信部302、仮想SCell情報処理部303、CA制御部304を含む。なお、図8は、基地局eNBにおいて本発明の実施の形態に特に関連する機能部のみを示すものであり、基地局eNBは、少なくともLTEに準拠した移動通信システムにおける基地局として動作するための図示しない機能も有するものである。また、図8に示す機能構成は一例に過ぎない。本実施の形態に係る動作を実行できるのであれば、機能区分や機能部の名称はどのようなものでもよい。
【0056】
DL信号送信部301は、基地局eNBから送信されるべき上位のレイヤの信号から、物理レイヤの各種信号を生成し、無線送信する機能を含む。UL信号受信部302は、ユーザ装置UEから各種の信号を無線受信し、受信した物理レイヤの信号からより上位のレイヤの信号を取得する機能を含む。
【0057】
仮想SCell情報処理部303は、ユーザ装置UEから受信する仮想SCell情報通知信号に含まれる仮想SCell情報に基づいて、CAを行うか否か等の判断を行う。具体的な処理例については後述する。CA制御部304は、ユーザ装置UEへのCA設定(SCell追加)指示、CAの管理、SCellのactivation/deactivation等のCAに関する制御を実施する。
【0058】
次に、基地局eNBにおける仮想SCell情報処理部303により実行される動作の例について図9のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の動作は一例であり、他にも様々な動作が可能である。
【0059】
基地局eNBがユーザ装置UEから仮想SCell情報通知信号を受信すると(ステップ301)、仮想SCell情報通知信号に含まれる仮想SCell情報(セルID、品質等)が仮想SCell情報処理部303に渡される。
【0060】
仮想SCell情報処理部303は、仮想SCell情報を確認し、報告されたセルIDのセルが基地局eNB自身の管理下にあるかどうかを確認し(ステップ302)、管理下であればステップ303に進み、当該セルの品質が十分であるかどうか(例:所定閾値よりもよいかどうか)を判定する。
【0061】
ステップ303での判定結果がYesであれば、仮想SCell情報処理部303は、当該セルをSCellとして追加する(つまり、CAを設定する)と決定する(ステップ304)。この場合、CA制御部304により、SCell追加指示がユーザ装置UEに送信される。
【0062】
ステップ303での判定結果がNo、つまり、報告されたセルが自分の管理下にあるが品質が十分でない場合、Measurement Gapの設定なしで、仮想SCellと同一CC(周波数)の測定をユーザ装置UEに指示し、仮想SCell情報を破棄する(ステップ305)。ステップ305は、仮想SCellと同一のCC(周波数)の周辺セルがある場合にのみ実行される。仮想SCellと同一のCC(周波数)の周辺セルがない場合、ここでMeasurement Gapの設定ありで、SCell候補測定をユーザ装置UEに指示してもよい。
【0063】
ステップ302の判定結果がNo、すなわち、仮想SCellが自分の管理下のセルではない場合、仮想SCell情報を廃棄する(ステップ306)。また、ここでMeasurement Gapの設定ありで、SCell候補測定をユーザ装置UEに指示してもよい。
【0064】
(実施の形態のまとめ)
以上、説明したように、本実施の形態によれば、キャリアアグリゲーションをサポートする移動通信システムにおいて基地局と通信を行うユーザ装置であって、過去に測定を行った通信中でないセルのうち、品質が良好であったセルを仮想SCellとして管理する管理手段と、前記仮想SCellとして管理されるセルの情報を前記基地局に通知する通知手段とを備えるユーザ装置が提供される。
【0065】
上記の構成により、基地局から測定指示を受信することなく、CA状態への遷移を行うことが可能となるので、CA設定手順を簡易化し、当該手順に要する時間を短縮できる。
【0066】
前記管理手段は、前記基地局からの指示に基づいて、前記仮想SCellとして管理されているセルをキャリアアグリゲーションのSCellとして設定するようにしてもよい。この構成によれば、基地局からの指示に基づいて、仮想SCellのセルをSCellとして設定できるので、基地局判断に基づく適切なCA設定を行うことができる。
【0067】
前記管理手段は、例えば、前記測定により得られた品質が所定閾値よりも良好なセルの情報を格納する格納手段と、前記格納手段に情報が格納されているセルのうち、前記ユーザ装置の能力によりキャリアアグリゲーションに使用可能であるセルの情報を仮想SCellの情報として管理する仮想SCell処理手段とを備える。この構成により、品質の良かったセルのうち、ユーザ装置の能力に見合ったセルのみをキャリアアグリゲーションで使用するセルの候補とすることができる。
【0068】
前記管理手段は、前記基地局から測定指示を受信した場合に、前記仮想SCellの管理を解除する。この構成により、仮想SCellの管理の有無を明確にすることができる。
【0069】
前記管理手段は、前記セルを前記仮想SCellとして管理する場合に、前記ユーザ装置の無線部に対して、当該セルを非アクティベート化されたSCellと見なして動作を行うように指示する。この構成により、非アクティベート化されたSCellがあるCC(周波数)の測定の規定を適用した動作を行うことができる、すなわち、当該周波数のセルをMeasurement gapの設定を行うことなく測定できる。
【0070】
また、本実施の形態により、キャリアアグリゲーションをサポートする移動通信システムにおいてユーザ装置と通信を行う基地局であって、前記ユーザ装置において過去に測定を行った通信中でないセルのうち、品質が良好であったセルが仮想SCellとして管理される場合に、当該仮想SCellとして管理されるセルの情報を前記ユーザ装置から受信する受信手段と、前記仮想SCellとして管理されるセルの情報に基づいて、前記ユーザ装置に対して当該セルをSCellとして追加するか否かを判定する判定手段とを備える基地局が提供される。
【0071】
この構成により、移動通信システムにおいて、CAを設定する手順を簡易化することが可能となる。
【0072】
前記判定手段は、例えば、前記仮想SCellとして管理されるセルが前記基地局の配下のセルであり、かつ、当該セルの品質が十分に良い場合に、前記ユーザ装置に対して当該セルをSCellとして追加すると判定することができる。この構成により、適切にSCellとして追加できるセルの判定を行うことができる。
【0073】
本実施の形態で説明したユーザ装置UEは、CPUとメモリを備え、プログラムがCPU(プロセッサ)により実行されることで実現される構成であってもよいし、本実施の形態で説明する処理のロジックを備えたハードウェア回路等のハードウェアで実現される構成であってもよいし、プログラムとハードウェアが混在していてもよい。
【0074】
本実施の形態で説明した基地局eNBは、CPUとメモリを備え、プログラムがCPU(プロセッサ)により実行されることで実現される構成であってもよいし、本実施の形態で説明する処理のロジックを備えたハードウェア回路等のハードウェアで実現される構成であってもよいし、プログラムとハードウェアが混在していてもよい。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、開示される発明はそのような実施形態に限定されず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。上記の説明における項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。機能ブロック図における機能部又は処理部の境界は必ずしも物理的な部品の境界に対応するとは限らない。複数の機能部の動作が物理的には1つの部品で行われてもよいし、あるいは1つの機能部の動作が物理的には複数の部品により行われてもよい。説明の便宜上、基地局eNB及びユーザ装置UEは機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明の実施の形態に従ってユーザ装置UEが有するプロセッサにより動作するソフトウェア、及び、基地局eNBが有するプロセッサにより動作するソフトウェアはそれぞれ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に保存されてもよい。
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0077】
eNB 基地局
UE ユーザ装置
101 DL信号受信部
102 UL信号送信部
103 測定制御部
104 CA制御部
201 無線部
202 L2処理部
203 RRC処理部
213 測定結果管理部
223 仮想SCell処理部
301 DL信号送信部
302 UL信号受信部
303 仮想SCell情報処理部
304 CA制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9