特許第6381472号(P6381472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許6381472-凝集混和装置の凝集状態監視装置 図000002
  • 特許6381472-凝集混和装置の凝集状態監視装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381472
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】凝集混和装置の凝集状態監視装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   C02F11/14 DZAB
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-70485(P2015-70485)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-190175(P2016-190175A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 崇
(72)【発明者】
【氏名】東 隆司
(72)【発明者】
【氏名】片岡 麻子
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−169306(JP,A)
【文献】 特開平7−167770(JP,A)
【文献】 特開2010−167363(JP,A)
【文献】 特開2010−167362(JP,A)
【文献】 特開2011−5403(JP,A)
【文献】 特開2008−122731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/10−11/20
B01D 21/01
C02F 1/52− 1/56
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
B01F 15/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥と凝集剤の混和用の槽体と、槽体の内部に配置した駆動軸の軸心廻りに回転するパドルを有する撹拌機と、槽体の内部を撮影する撮影装置を備え、
撮影装置は、設定回転数で回転する撹拌機のパドルが駆動軸の軸心廻りで定点の位置にあるときを撮影タイミングとして槽体内部を撮影することを特徴とする凝集混和装置の凝集状態監視装置。
【請求項2】
撮影装置は、定点観測的に繰り返し槽体内部を撮影することを特徴とする請求項1に記載の凝集混和装置の凝集状態監視装置。
【請求項3】
撮影装置は、撮影視野内にパドルの回転方向後方側の直近領域を含んで撮影することを特徴とする請求項1または2に記載の凝集混和装置の凝集状態監視装置。
【請求項4】
槽体は駆動軸の半径方向においてパドルの通過経路に対向する側面位置に監視窓を有し、撹拌機はパドルと一体に回転して監視窓の内面上を摺動するワイパーを有し、撮影装置はワイパーが監視窓を通過するときを撮影タイミングとすることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の凝集混和装置の凝集状態監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理施設等において使用する凝集混和装置における汚泥の凝集状態を監視する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の凝集混和槽では、汚泥の凝集状態を把握して評価するために、凝集混和槽に設けた監視窓から槽内の凝集フロックを監視している。また、例えば特許文献1に記載するものでは、凝集フロックを含む原液が原液供給管から流入する四角柱状の筐体に、筐体の内部を外部から視認可能な検視窓を設け、筐体と原液供給管とを結合する結合管を設けており、筐体内のスクレーパーを往復運動させて筐体と原液供給管との間で原液を流入出させるとともに、スクレーパーで監視窓を掃除し、監視窓を通して筐体内の凝集フロックを監視している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4966985号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凝集混和槽において、監視窓から槽内の凝集フロックを監視する場合には、槽内に配置した撹拌機によって槽内に生じる旋回流に伴って凝集フロックが流動するために、監視員が目視によって凝集フロックを捉えることが困難であり、流動する凝集フロックを監視員の主観で定性的に評価するので、個々人による判断結果の差が大きくなる。
【0005】
さらに、監視窓の内面上を流れる凝集フロックの流れは、撹拌機のパドルが監視窓に対して何処に位置しているかによって変動し、パドルの回転方向前方側の領域ではパドルに押されて流動性が高くなり、回転方向後方側の領域では流動性が低くなるので、常に同条件下で凝集フロックを監視することが困難であった。
【0006】
本発明は上記した課題を解決するものであり、槽体内における凝集フロックの状態を正確に捉えて、かつ常に同条件下で凝集フロックを監視できる凝集混和装置の凝集状態監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の凝集混和装置の凝集状態監視装置は、汚泥と凝集剤の混和用の槽体と、槽体の内部に配置した駆動軸の軸心廻りに回転するパドルを有する撹拌機と、槽体の内部を撮影する撮影装置を備え、撮影装置は、設定回転数で回転する撹拌機のパドルが駆動軸の軸心廻りで定点の位置にあるときを撮影タイミングとして槽体内部を撮影することを特徴とする。
【0008】
本発明の凝集混和装置の凝集状態監視装置において、撮影装置は、定点観測的に繰り返し槽体内部を撮影することを特徴とする。
本発明の凝集混和装置の凝集状態監視装置において、撮影装置は、撮影視野内にパドルの回転方向後方側の直近領域を含んで撮影することを特徴とする。
【0009】
本発明の凝集混和装置の凝集状態監視装置において、槽体は駆動軸の半径方向においてパドルの通過経路に対向する側面位置に監視窓を有し、撹拌機はパドルと一体に回転して監視窓の内面上を摺動するワイパーを有し、撮影装置はワイパーが監視窓を通過するときを撮影タイミングとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、設定回転数で回転する撹拌機のパドルが駆動軸の軸心廻りで定点の位置にあるときを撮影タイミングとして槽体内部を撮影することで、外力が加わらない通常状態にある凝集フロックを常に同条件下で、かつ静止画として監視することができる。
【0011】
凝集フロックを定点観測的に繰り返し撮影し、凝集フロックを撮影した複数の画像を見比べることで、凝集フロックの凝集状態を一定時間内での平均的な状態として認識することができ、あるいは凝集状態の経時的な変化を認識することができる。
【0012】
槽体内の流れはパドルの前後において変化し、凝集フロックの移動速度や移動方向が変化し、パドルの回転方向前方側の領域ではパドルに押されて排斥された凝集フロックがパドルの周囲に流れ出して流動性が高くなり、パドルの回転方向後方側の領域では、パドルの前面で排斥された領域に、パドルの通過後にパドルの周囲から凝集フロックが流入して集まるので流動性が低くなる。
【0013】
よって、撮影視野内にパドルの回転方向後方側の直近領域を含んで撮影することで、流動性の低い通常状態にある凝集フロックを監視することができる。
ワイパーが通過した後のクリーニングされた状態の監視窓を通して撮影することにより、鮮明な凝集フロックの画像を得て凝集状態を正確に判断することができる。また、ワイパーが監視窓の内面上を摺動することで、パドルの回転方向前方側の領域では排斥力が強くなって凝集フロックの流動性がより高くなり、パドルの回転方向後方側の領域ではパドルの周囲から流入する凝集フロックが増加して流動性がより低くなる。よって、通常状態にある凝集フロックの撮影をより容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態における凝集混和装置を示す縦断面図
図2】同実施の形態における凝集混和装置を示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1、2において、本実施の形態では凝集混和装置が一槽からなる例を示すが、複槽式の凝集混和槽、例えば槽体の隣に緩速撹拌槽や急速撹拌槽を配置した構成においても本発明は実施可能である。
【0016】
撹拌機50は撹拌槽体52の内部にパドル翼53を配置しており、パドル翼53は槽体軸心に沿って上下方向に配置した駆動軸54と、駆動軸54の軸心から放射状に配置した複数のパドル55からなる。撹拌槽体52の上部外側には駆動軸54を回転駆動するモータ56を設けている。
【0017】
撹拌槽体52は駆動軸54の半径方向においてパドル55の通過経路に対向する側面位置にガラス等の透明体からなる監視窓57を有している。撹拌機50は少なくとも一つのパドル55の先端にワイパー58を設けており、ワイパー58はパドル55と一体に回転して監視窓57の内面上を摺動する。
【0018】
監視窓57の外側には、監視窓57を通して撹拌槽体52の内部を撮影する撮影装置59を設けている。撮影装置59は、監視窓57に対向する位置に配置したカメラ60と、カメラ60の撮影動作を制御するコントローラ61からなる。
【0019】
コントローラ61は、駆動軸54の回転をセンサー(図示省略)で検知し、設定回転数で回転する撹拌機50のパドル55が駆動軸54の軸心廻りで定点の位置にあるときを撮影タイミングとしてカメラ60を作動させて槽体内部を撮影する。撮影装置59による撮影は任意に行うことも可能であるが、本実施の形態ではパドル55が定点の位置に達する度に、あるいは数回に1度の割で、定点観測的に繰り返し槽体内部を撮影する。
【0020】
この撮影タイミングとなるパドル55の定点は、何れの位置に設定することも可能であるが、撮影装置59がカメラ60の撮影視野内にパドル55の回転方向後方側の直近領域を含んで撮影することが可能な位置が好ましく、ここではワイパー58が監視窓57を通過するときを撮影タイミングとしており、ワイパー58が撮影視野内から外れた直後とする。
【0021】
撹拌槽体52の側壁の上部位置には凝集汚泥流出口62が設けられており、凝集混和装置の凝集汚泥流出口62に続く後工程には脱水機(図示省略)が配置されて汚泥処理システムを構成している。
【0022】
以下、上記構成における作用を説明する。撹拌機50はモータ56により駆動軸54を回転駆動させ、パドル翼53を汚泥中で回転させて汚泥と高分子凝集剤を混和して凝集ブロックを形成し、凝集汚泥となす。この凝集汚泥を凝集汚泥流出口57から後工程の脱水機に供給して脱水する。
【0023】
撹拌機50における凝集フロックの凝集状態を監視するために、撮影装置59で撹拌槽体52の内部を撮影する。撮影は、設定回転数で回転する撹拌機50のパドル55が駆動軸54の軸心廻りで定点の位置にあるときを撮影タイミングとして撮影する。このとき、凝集フロックには外部から力が作用せず、撹拌時の通常状態にあり、常に同条件下で、かつ静止画として監視することで、監視員の判断結果の差を抑制できる。
【0024】
凝集フロックの撮影は任意のときに行うことも可能であるが、定点観測的に繰り返し撮影して凝集フロックを撮影した複数の画像を見比べることで、凝集フロックの凝集状態を一定時間内での平均的な状態として認識することができ、あるいは凝集状態の変化を認識することができる。
【0025】
撹拌槽体52の内部の流れはパドル55の前後において変化し、凝集フロックの移動速度や移動方向が変化する。すなわち、パドル55の回転方向前方側の領域ではパドル55に押されて排斥された凝集フロックがパドル55の周囲に流れ出して流動性が高くなり、パドル55の回転方向後方側の領域では、パドル55の前面で排斥された領域に、パドル55の通過に伴ってパドル55の周囲から凝集フロックが渦を伴って流入して集まり、流動性が低くなる。
【0026】
よって、カメラ60の撮影視野内にパドル55の回転方向後方側の直近領域を含んで撮影することで、流動性の低い通常状態にある凝集フロックを監視することができる。
パドル55の先端に設けたワイパー58が通過した後のクリーニングされた状態の監視窓57を通して撮影することにより、鮮明な凝集フロックの画像を得て凝集状態を正確に判断することができる。
【0027】
また、ワイパー58が監視窓57の内面上を摺動することで、パドル55の回転方向前方側の領域では排斥力が強くなって凝集フロックの流動性がより高くなり、パドル55の回転方向後方側の領域ではパドル55の周囲から流入する凝集フロックが増加して流動性がより低くなる。よって、通常状態にある凝集フロックの撮影をより容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
50 撹拌機
52 撹拌槽体
53 パドル翼
54 駆動軸
55 パドル
56 モータ
57 監視窓
58 ワイパー
59 撮影装置
60 カメラ
61 コントローラ
62 凝集汚泥流出口
図1
図2