(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、実施形態に係る治具の使用例を示す図である。
図1に示されるように、水平梁(H鋼25)の上面に治具1を取り付けて使用する場合を例として説明する。以下の説明では、治具1がH鋼25の上フランジ25Fを挟み込んでH鋼25に取り付けられて使用される状態を、単に使用状態と称する。各図に示されるように、Z軸を鉛直軸とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を設定し、使用状態における各部の位置関係の説明にX,Y及びZを用いる場合がある。X方向はH鋼25の幅方向、Y方向はH鋼25の延在方向、Z方向は鉛直方向である。
【0014】
治具1は、例えば建物Bの内部においてウインチ100によるワイヤWを介した荷物Lの荷揚げ等のために使用される。建物Bの内部においては、例えばH鋼25の上方に建物Bの天井C等の障害物が存在することにより、クレーン等を使用しての荷物Lの荷揚げができないことがある。このような状況において、治具1は、H鋼(対象物)25の上面に取り付けられて使用される。H鋼25は、建物Bの床Fから立設された柱101の上部に架け渡された水平梁であり、上フランジ25Fを有する。建物Bは、特に限定されるものではなく、例えば工場等の建物、屋外のプラント等の構造物であってもよい。対象物としては、特に限定されるものではなく、例えば建物の梁や柱、屋外の構造物の構造部材であってもよく、H鋼以外の鉄骨材や木材であってもよい。
【0015】
図2は、実施形態に係る治具を示す斜視図である。
図3は、使用状態における
図2の治具をY方向から見た図である。
図4は、使用状態における
図2の治具をX方向から見た一部断面図である。
図5は、使用状態における
図2の治具をY方向から見た一部断面図である。
図2〜5に示されるように、治具1は、治具本体部2と、クランプ部7と、を備える。治具1は、治具本体部2及びクランプ部7でH鋼25の上フランジ25Fを挟み込んでH鋼25に取り付けられて使用される。
【0016】
図1〜
図3に示されるように、治具本体部2は、使用状態において、治具の目的(ここでは荷物Lの荷揚げ)に供する部材が設けられる本体である。治具本体部2は、XY平面に沿って延びる長方形状の板状部材であり、使用状態においてその長手方向がX方向となるように配置される。治具本体部2としては、例えば鋼板が用いられる。治具本体部2の長手方向の長さは、H鋼25の上フランジ25Fの幅(X方向の長さ)よりも長い。使用状態において、治具本体部2は、その下面2bの長手方向の中央部においてH鋼25の上フランジ25Fの上面25aに接している。
【0017】
治具本体部2は、長手方向の端部側に形成された凸部2c〜2f及び凹部2g,2hを含む。凸部2c〜2fは、長方形状の板状部材において一対の短辺から凹部2g,2hを切り欠くことで形成される。凹部2g,2hは、後述の第1の滑車30及び第2の滑車40にワイヤWを掛けた場合において、ワイヤWが治具本体部2に干渉しないように設けられた切欠きである。
【0018】
治具本体部2の凸部2c〜2fには、それぞれ貫通孔2zが設けられている。貫通孔2zには、連結ワイヤ4が取り付けられている。連結ワイヤ4は、治具1の取り付け作業時等にクランプ部7が落下しないように、治具本体部2とクランプ部7とを接続する。連結ワイヤ4は、クランプ部7においては、貫通孔7zに取り付けられている。なお、
図2に示す例では、図の簡略化のため一箇所の凸部2dに取り付けられた連結ワイヤ4のみが示されている。
【0019】
図4に示されるように、治具本体部2の凸部2c〜2fには、それぞれ貫通孔3aが設けられている。貫通孔3aには、ねじ山が設けられていない。凸部2c〜2fの上面には、貫通孔3aに同軸にナット3が溶接されている。すなわち、治具本体部2には接続用棒材6(後述)に螺合するナット3が固定されている。
【0020】
接続用棒材6は、治具本体部2の凸部2c〜2fと後述のクランプ部7とを接続するための部材である。接続用棒材6としては、例えばボルトが用いられる。接続用棒材6は、凸部2c〜2fの貫通孔3aにそれぞれ挿通され、凸部2c〜2fの上面に固定されたナット3に螺合する。接続用棒材6は、治具本体部2に対する回転によって治具本体部2に対してZ方向に沿って進退する。
【0021】
図1〜
図3に示されるように、治具本体部2の上面2aには、第1の滑車30と、第2の滑車40とが設けられている。第1の滑車30は、治具本体部2の一端側(X方向の負の側)における上面2aに配置されている。
【0022】
図4に示されるように、第1の滑車30は、支持部31、ローラ32、軸33及びU字部材34を有している。支持部31は、軸33によりローラ32を回転可能に軸支する。支持部31は、一対の立設部31aと、各立設部31aの下端部を接続する接続部31bと、を含む。一対の立設部31aは、ZX平面に沿って互いに略平行に延びており、それぞれ接続部31bと直交している。一対の立設部31aは、Y方向から見て上端側がローラ32の形状に合わせて円弧状に丸められている。支持部31は、例えば鋼板が用いられる。支持部31は、鋼板が曲げられることで一対の立設部31aと接続部31bとが形成されてもよいし、各立設部31aの下端部で鋼板が溶接されることで一対の立設部31aと接続部31bとが形成されてもよい。接続部31bは、例えば溶接により、治具本体部2の上面2aに固定されている。
【0023】
第1の滑車30は、ローラ32からのワイヤWの脱落を抑制するU字部材34を有する。U字部材34は、U字状に折り曲げられた棒状部材である。U字部材34は、棒状部材の両端部が一対の立設部31aにおける軸33付近に固定され、Z方向に対して傾斜して上方に突設されている。U字部材34は、例えば鉄筋が用いられ、溶接により各立設部31aに固定される。
【0024】
図3に示されるように、第1の滑車30は、Z方向から見て第1の滑車30の少なくとも一部がH鋼25の上フランジ25Fと重複するように配置されている。好ましくは、第1の滑車30は、Z方向から見て第1の滑車30の軸33が、H鋼25の上フランジ25Fと重複するように配置されている。これにより、治具本体部2がH鋼25の上フランジ25Fに好適に支えられ、例えば荷物Lの荷揚げによりワイヤW及び軸33を介して第1の滑車30に荷重が掛けられた際に、治具本体部2に加えられるねじりモーメント等を抑制できる。第1の滑車30は、Z方向から見てローラ32の外周側が凹部2gに重複するように配置されている。よって、ワイヤWが凹部2gを通るため、ワイヤWと治具本体部2との干渉を回避できる。
【0025】
第2の滑車40は、支持部、ローラ、軸及びU字部材を有し、第1の滑車30と同様に構成されている。第2の滑車40は、治具本体部2の他端側(X方向の正の側)における上面2aに配置されている。第2の滑車40は、H鋼25のウェブ25Wに沿う平面に関して第1の滑車30と対称となる位置に配置されている。
【0026】
図2及び
図3に示されるように、クランプ部7は、治具本体部2に接続用棒材6を介して接続されている。クランプ部7は、治具本体部2の凸部2c〜2fに対応するように複数個設けられている。具体的には、クランプ部7は、治具本体部2の凸部2c及び2fに対応するように一対設けられると共に、治具本体部2の凸部2d及び2eに対応するように一対設けられている。つまり、治具本体部2には一対のクランプ部7が二組接続され、各クランプ部7がZ方向から見て治具本体部2の四隅に対応する位置に配置されている。
【0027】
クランプ部7は、Z方向においてH鋼25の上フランジ25Fを治具本体部2と共に挟み込む。クランプ部7は、治具本体部2の凸部2c〜2fに固定されたナット3と、接続用棒材6を介して接続されている。なお、以下では特に言及しない場合、便宜上、クランプ部7の向きが使用状態における向き(クランプ部7の長手方向がX方向に沿うような向き)であるとして説明する。
【0028】
図4及び
図5に示されるように、クランプ部7は、クランプ土台部8と、締付用棒材18と、を備える。クランプ土台部8は、平板材9と、アングル材(規制部材)14と、を有する。
【0029】
平板材9は、接続用棒材6に交差する平面に沿って延びる長方形状の板状部材である。本実施形態では、平板材9は、接続用棒材6に直交するXY平面に沿って延びている。つまり、使用状態において、平板材9の治具本体部2側の上面9aと、H鋼25の第1の面25bとは略平行となる。第1の面25bは、H鋼25の上フランジ25Fにおける上面25aとは反対側の面である。平板材9としては、例えば鋼板が用いられる。平板材9は、X方向においては締付用棒材18の軸線がH鋼25の第1の面25bに交差する程度の長さを有しており、Y方向においては治具本体部2の凸部2c〜2fと同程度の幅を有している。
【0030】
平板材9には、貫通孔11aが設けられている。貫通孔11aには、ねじ山が設けられていない。平板材9の下面9bには、貫通孔11aに同軸にナット(他のナット)11が溶接されている。接続用棒材6は、平板材9の貫通孔11aにそれぞれ挿通され、平板材9の下面9bに固定されたナット11に螺合する。すなわち、平板材9には接続用棒材6に螺合するナット11が固定されている。
【0031】
図5に示されるように、平板材9には、貫通孔12aが設けられている。貫通孔12aには、ねじ山が設けられていない。平板材9の下面9bには、貫通孔12aに同軸にナット12が溶接されている。締付用棒材18は、平板材9の貫通孔12aにそれぞれ挿通され、平板材9の下面9bに固定されたナット12に螺合する。すなわち、平板材9には締付用棒材18に螺合するナット12が固定されている。
【0032】
平板材9では、治具本体部2に対する接続用棒材6の回転によって平板材9(クランプ土台部8)の治具本体部2に対する進退方向の位置調整が可能とされている。また、平板材9では、平板材9に対する接続用棒材6の回転によって平板材9(クランプ土台部8)の治具本体部2に対する進退方向の位置調整が可能である。すなわち、クランプ土台部8は、治具本体部2に対して進退方向に位置調整可能とされている。ここでは、クランプ土台部8は、使用状態において、及びH鋼25から治具1を下した状態において、治具本体部2に対して進退方向に位置調整可能である。なお、使用状態においては、進退方向はZ方向に沿う方向である。
【0033】
具体的には、接続用棒材6をクランプ土台部8に対して回転させない状態で接続用棒材6を治具本体部2に対して回転させることにより(治具本体部2に対する接続用棒材6の回転により)、クランプ土台部8は、治具本体部2に対して進退方向に位置調整可能である。あるいは、接続用棒材6を治具本体部2に対して回転させない状態で接続用棒材6をクランプ土台部8(平板材9)に対して回転させることにより(平板材9に対する接続用棒材6の回転により)、クランプ土台部8は、治具本体部2に対して進退方向に位置調整可能である。
【0034】
アングル材(規制部材)14は、接続用棒材6に対して近接離間する方向(ここではX方向成分を含む方向)のH鋼25の位置を規制するための部材である。アングル材14は、第1の板部15と、第2の板部16と、を有する。第1の板部15は、平板材9の治具本体部2側の上面9aに固定される。第2の板部16は、第1の板部15から直角に屈曲され、上面9aに直交する。第2の板部16は、H鋼25の位置を規制するための規制面17を含む。第2の板部16のZ方向に沿う幅は、H鋼25の上フランジ25Fの厚さ以下とされている。
【0035】
アングル材14は、平板材9の治具本体部2側の上面9aに固定されている。具体的には、アングル材14は、平板材9の治具本体部2側の上面9a上において接続用棒材6と締付用棒材18との間に固定されている。アングル材14では、使用状態において第2の板部16の規制面17がH鋼25の第2の面25cに近接する。第2の面25cは、H鋼25の第1の面25bに交差する平面上に延在する上フランジ25Fの小口である。本実施形態では、第2の面25cと第1の面25bとは、互いに直交する平面である。第2の面25cは、第1の面25bに略直角に交差し、YZ平面に沿って延びている。
【0036】
アングル材14は、第1の板部15が上面9a上に載置された状態で溶接される。アングル材14では、第1の板部15が上面9a上に載置されることで、第2の板部16が平板材9の上面9aに対して直角に位置決めされる。そして、使用状態においては、平板材9の上面9aとH鋼25の第1の面25bとが略平行であり、第1の面25bと第2の面25cとが直交する。そのため、第2の板部16の規制面17は、使用状態においてH鋼25の第1の面25bに交差する平面上に延在する第2の面25c(フランジ小口)に沿って位置することとなる。ここでは、規制面17は、第2の面25cに略平行となっている。なお、アングル材14では、使用状態において規制面17が第2の面25cに密着していてもよい。
【0037】
アングル材14は、治具本体部2に二組接続されたクランプ部7それぞれに設けられている。そして、使用状態において、一対のうちの一方のクランプ部7の規制面17と、他方のクランプ部7の規制面17との間にH鋼25の上フランジ25Fが配置される。
【0038】
締付用棒材18は、その先端18aをH鋼25の第1の面25bに押し当てることでH鋼25を挟み込む部材である。締付用棒材18としては、例えばボルトが用いられる。締付用棒材18は、平板材9の貫通孔12aに挿通され、平板材9に固定されたナット12に螺合する。締付用棒材18は、クランプ土台部8から治具本体部2側に突出する先端18aを有する。締付用棒材18は、平板材9に固定されたナット12に螺合することから、クランプ土台部8に対する締付用棒材18の回転によって締付用棒材18の先端18aがH鋼25の第1の面25bに押し当てられる。これにより、治具本体部2と先端18aとでH鋼25の上フランジ25Fが挟持され、治具1がH鋼25に取り付けられた状態となる。
【0039】
次に、
図3〜
図5を参照して、治具1の取付方法の一例について説明する。
図3に示されるように、まず、治具1がH鋼25の上に載置される。具体的には、治具本体部2の長手方向の中央部において治具本体部2の下面2bがH鋼25の上フランジ25Fの上面25aに接するように、治具1が載置される。このとき、治具本体部2の長手方向がX方向に沿う方向となるように、治具1が載置される。
【0040】
続いて、少なくとも上フランジ25Fの厚みよりも大きく離間するように、先端18aを治具本体部2に対して退かせる。具体的には、上述したようにクランプ土台部8を治具本体部2に対して進退方向に位置調整してもよく、締付用棒材18を平板材9に対して回転させてもよい。続いて、先端18aと治具本体部2との間にH鋼25の上フランジ25Fが配置された状態とすると共に、治具本体部2に対してクランプ土台部8を近接させる。具体的には、上述したようにクランプ土台部8を治具本体部2に対して進退方向に位置調整する。
【0041】
そして、平板材9の長手方向がX方向に沿うようにクランプ土台部8の向きが調整される。これにより、規制面17の少なくとも一部がH鋼25の第2の面25cにX方向から見て重複した状態(
図4参照)となる。この状態においては、規制面17が接続用棒材6に対して近接離間する方向のH鋼25のX方向の位置を規制することができる。また、例えば先端18aが第1の面25bに押し当てられた状態から締付用棒材18を平板材9に対して回転させて更に先端18aで第1の面25bを押そうとした場合に、その反力で平板材9がY方向を軸として回転するように変形することが抑制される。よって、例えばクランプ土台部8を手で押さえなくとも、Y方向を軸として回転するような平板材9の動きが抑制される。また、平板材9の厚さ方向にナット11及びナット12が重ねられて固定されているため、Y方向を軸として回転するような平板材9の動きが一層抑制される。
【0042】
続いて、締付用棒材18の先端18aがH鋼25の第1の面25bに押し当てられるように、クランプ土台部8に対して締付用棒材18を回転させる。これにより、治具本体部2と先端18aとでH鋼25の上フランジ25Fが挟持され、治具1がH鋼25に取り付けられた状態となる。
【0043】
以上のように構成された治具1のクランプ部7は、平板材9の一表面である上面9aにアングル材14を固定することで、H鋼25に対する位置規制といった機能を発揮する部分が構成されている。よって、平板材9やその他の汎用材料を組み合わせて、比較的容易にクランプ部7の機能部分を構成することができる。
【0044】
また、アングル材14は、平板材9の治具本体部2側の上面9aに固定される第1の板部15と、第1の板部15から直角に屈曲され規制面17を含む第2の板部16と、を有する。これにより、例えば第1の板部15を平板材9の治具本体部2側の上面9aに載置して固定することで、規制面17が平板材9に対して交差(直交)するようにアングル材14を位置決めして取り付けることができる。このように、アングル材14の規制面17の位置決めが容易となる。
【0045】
また、治具本体部2には一対のクランプ部7が接続されており、使用状態において、一対のうちの一方のクランプ部7の規制面17と、他方のクランプ部7の規制面17との間にH鋼25の上フランジ25Fが配置されている。規制面17と第2の面25cとは、その間にわずかなX方向の隙間がある状態、又は密着した状態とされている。これにより、使用状態において、治具本体部2に接続された一対のクランプ部7の規制面17により、一対のクランプ部7を結ぶ方向(X方向)のH鋼25の位置が規制される。よって、使用状態において治具1のH鋼25に対するX方向の位置ずれを抑制することができる。特に、治具本体部2には、一対のクランプ部7が二組接続され、各クランプ部7がZ方向から見て治具本体部2の四隅に対応する位置に配置されている。これにより、例えば治具1がXY平面内を回転するような治具1の位置ずれが抑制される。また、規制面17により、接続用棒材6に対して近接離間する方向(X方向)のH鋼25の位置が規制されるため、Y方向を軸として回転するような平板材9の動きが抑制される。このように、治具1をH鋼25に一層確実に固定できる。
【0046】
また、治具本体部2には接続用棒材6に螺合するナット3が固定されており、平板材9には接続用棒材6に螺合する他のナット11が固定されている。治具本体部2に対する接続用棒材6の回転、又は平板材9に対する接続用棒材6の回転によってクランプ土台部8の治具本体部2に対する進退方向(Z方向に沿う方向)の位置調整が可能である。これにより、治具本体部2とクランプ土台部8との離間距離を容易に変更でき、異なる厚みのH鋼25に対して治具を使用することができる。
【0047】
なお、治具本体部2の凸部2c〜2fには、ねじ山が設けられていない貫通孔3aがそれぞれ設けられている。凸部2c〜2fの上面には、貫通孔3aに同軸にナット3が溶接されている。平板材9には、ねじ山が設けられていない貫通孔11a及び貫通孔12aが設けられている。平板材9の下面9bには、貫通孔11aに同軸にナット11が溶接され、貫通孔12aに同軸にナット12が溶接されている。このように、汎用材料であるナット3,11及び12を用いることで、治具本体部2又は平板材9にねじ山を形成するよりも容易にクランプ部7の機能部分を構成することができる。
【0048】
また、平板材9には締付用棒材18に螺合するナット12が固定されており、クランプ土台部8に対する締付用棒材18の回転によって締付用棒材18の先端18aがH鋼25の上フランジ25Fの第1の面25bに押し当てられる。これにより、締付用棒材18を平板材9に対して回転させることで、H鋼25に対して治具1を容易に取り付けて使用することができる。
【0049】
なお、上述した治具1によれば、治具1の取付けの際に、規制面17の少なくとも一部がH鋼25の第2の面25cにX方向から見て重複した状態とされるため、規制面17により接続用棒材6に対して近接離間する方向(X方向)のH鋼25の位置が好適に規制される。よって、例えば先端18aが第1の面25bに押し当てられた状態から締付用棒材18を平板材9に対して回転させて更に先端18aで第1の面25bを押そうとした場合に、その反力で平板材9がY方向を軸として回転するように変形することが抑制される。また、平板材9の厚さ方向にナット11及びナット12が重ねられて固定されているため、Y方向を軸として回転するような平板材9の動きが一層抑制される。その結果、治具本体部2と先端18aとでH鋼25の上フランジ25Fを確実に挟持することができる。
【0050】
以上、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0051】
上記実施形態では、治具本体部2が単一の板状部材であるとして説明したが、治具本体部2を複数の板状部材で構成してもよい。例えば、治具本体部2のX方向にスライド可能なスライド機構を設けて、治具本体部2をX方向に伸縮可能に構成してもよい。この場合、上フランジ25FのX方向の幅が異なるH鋼25に対しても、治具1を容易に取り付けることができる。
【0052】
また、治具1は、H鋼25の上フランジ25Fの上面25aに位置するように取り付けられたが、H鋼の下フランジの下面に位置するように取り付けられてもよいし、垂直に延びるH鋼の柱の側方フランジの側面に位置するように取り付けられてもよい。
【0053】
また、規制部材は、アングル材14に限られない。例えば、
図6(a)に示されるような治具1Aにおいては、規制部材は、側端部15Aと、規制面17Aを含む板本体部16Aとを有する平板材14Aにより構成されてもよい。この場合、平板材14Aは、側端部15Aが上面9aに対して突き当たる状態で、かつ、板本体部16Aが平板材9の上面9aに直交する状態で平板材9に溶接され、平板材9の治具本体部2側の上面9aに固定される。これにより、使用状態において、板本体部16Aの規制面17がH鋼25の第2の面25cに近接するような状態とすることができる。
【0054】
また、第2の面25c(上フランジ25Fの小口)は、第1の面25bに略直角に交差し、YZ平面に沿って延びていたが、
図6(b)に示されるように、YZ平面に傾斜する平面に沿って延びていてもよい。この場合、治具1Bにおいて、規制部材は、第1の板部15Bと、規制面17Bを含む第2の板部16Bとを有するV字アングル材14Bにより構成されてもよい。V字アングル材14Bは、第1の板部15Bが上面9aに載置された状態で平板材9に溶接されることで、平板材9の治具本体部2側の上面9aに固定される。これにより、使用状態において、第2の板部16Bの規制面17がH鋼25の第2の面25cに近接するような状態とすることができる。
【0055】
また、接続用棒材6は、治具本体部2の貫通孔3aに挿通されてナット3に螺合していたが、治具本体部2の貫通孔3aに直接ねじ山が切られて、当該ねじ山に螺合していてもよい。接続用棒材6は、平板材9の貫通孔11aに挿通されてナット11に螺合していたが、平板材9の貫通孔11aに直接ねじ山が切られて、当該ねじ山に螺合していてもよい。締付用棒材18は、平板材9の貫通孔12aに挿通されてナット12に螺合していたが、平板材9の貫通孔12aに直接ねじ山が切られて、当該ねじ山に螺合していてもよい。