【文献】
BRIAN E MITCHELL ET AL,Direct computation of the sound from a compressible co-rotating vortex pair,JOURNAL OF FLUID MECHANICS,CAMBRIDGE UNIVERSITY PRESS,1995年 2月25日,vol. 285, pages 181 - 202,ISSN: 0022-1120, DOI: 10.1017/S0022112095000504
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記渦の変化を追跡する段階は、前記第1の時間と前記第2の時間の間の前記第1及び第2の渦セット内の各渦の変位を識別する追跡アルゴリズムを実行する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記1つ又はそれよりも多くの騒音発生源を識別する段階は、前記第1の時間と前記第2の時間の間の前記第1及び第2の渦セット内の渦の位置及び変位に基づいて共回転渦対を識別する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記1つ又はそれよりも多くの騒音発生源を識別する段階は、前記第1の時間と前記第2の時間の間に伸長、加速又は変形を経ている渦を識別する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記識別された1つ又はそれよりも多くの騒音発生源によって発生される前記音を予測する段階は、該音の周波数、振幅、強度、パワー、及び場所を予測する段階を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
前記識別された1つ又はそれよりも多くの騒音発生源によって発生される前記音を予測する段階は、該音の指向性を予測する段階を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
前記識別された1つ又はそれよりも多くの騒音発生源と前記シミュレーション空間内の前記流体の前記シミュレートされた活動とに少なくとも部分的に基づいて、該騒音発生源を発生させる面上の1つ又はそれよりも多くの領域を識別する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記識別された1つ又はそれよりも多くの領域に基づいて幾何学形状最適化処理を実行し、修正された面幾何学形状を生成する段階を更に含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
前記渦の変化を追跡する段階は、前記第1の時間と前記第2の時間の間の前記第1及び第2の渦セット内の各渦の変位を識別する追跡アルゴリズムを実行する段階を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
前記1つ又はそれよりも多くの騒音発生源を識別する段階は、前記第1の時間と前記第2の時間の間の前記第1及び第2の渦セット内の渦の位置及び変位に基づいて共回転渦対を識別する段階を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
前記1つ又はそれよりも多くの騒音発生源を識別する段階は、前記第1の時間と前記第2の時間の間に伸長、加速又は変形を経ている渦を識別する段階を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
前記プロセッサ及びメモリは、前記識別された1つ又はそれよりも多くの潜在的音発生渦構造によって発生される音を予測するように更に構成されることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
前記プロセッサ及びメモリは、前記識別された1つ又はそれよりも多くの騒音発生源と前記シミュレーション空間内の前記流体の前記シミュレートされた活動とに少なくとも部分的に基づいて、該騒音発生源を発生させる面上の1つ又はそれよりも多くの領域を識別するように更に構成されることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
コンピュータ可読媒体に有形的に具現化されたコンピュータプログラム製品であって、 実行された時に、層流から乱流への境界層遷移を含む物理過程流体流れをシミュレートする命令を含み、
コンピュータに、
物理的装置を、シミュレーション空間における物体としてモデル化させ、
流れデータを生成するために前記シミュレーション空間内の流体の活動をシミュレートさせ、該シミュレーション空間内の該流体の該活動は、該シミュレーション空間内及び前記物理的装置周辺の要素の移動をモデル化するようにシミュレートされ、
前記流体流れシミュレーションにおける第1の時間において、該流体流れによってモデル化された過渡流内の第1の渦セットを識別させ、
前記第1の時間に続く前記流体流れシミュレーションにおける第2の時間において、前記過渡流内の第2の渦セットを識別させ、
前記第1の時間における前記第1の渦セットと前記第2の時間における前記第2の渦セットを比較することによって該渦の変化を追跡させ、該追跡は前記第1の渦セット内の第1の渦が前記第2の渦セット内の第2の渦に対応することを決定することを含み、該追跡は、前記第1の渦セットの半径、循環及び軌道情報の少なくとも1つを前記第2の渦セットと比較することを含み、かつ
前記渦の変化の追跡に基づいて1つ又はそれよりも多くの騒音発生源を識別させる、
ように構成される、
ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書では、流れ誘起騒音識別法(FINSIM)を説明する。流れ内のコヒーレント渦構造は、流れ誘起騒音発生機構に密に関しており、対応する渦の時間推移及び空間推移を特徴付けることにより、騒音を発生させる原因である物理的発生源を識別することができると仮定される。より具体的には、騒音を遠距離場に放射する可能性が高い渦及び渦系を識別して追跡する方法及びシステムを本明細書に説明する。熱構成の場合に、温度場(又はいずれかの対応する受動的又は能動的なスカラー場)の空間変動及び時間変動を解析してエントロピー源の音響放射量を推定するためにFINSIMを使用することができる。
【0029】
本明細書に説明するシステム及び方法は、渦運動(例えば、共回転渦系−CRV)及び渦伸長によって発生する騒音を識別する。例えば、システムは、以下を識別する。
1.対応する各渦対を離散CRV系として識別し、同等な四重極様発生源及び対応する音響放射量を決定し(例えば、過渡的な流れ場を用いてCRV運動を追跡し、Powellの理論に従って放射場を再現する)、
2.流れの中で検出される各渦の伸長速度及び対応する二重極様音響放射量を決定し、及び/又は
3.エントロピー源及び対応する単極様音響放射量を決定する。
【0030】
渦の全体の流れ場の運動を解析することにより、完全な遠距離場騒音を推定することができ、物理的騒音発生源の性質を解析することができる。
【0031】
概要
図1Aは、流れ誘起騒音識別のための処理の流れ図を示している。システムは、例えば、Navier−Stokes及び格子Boltzmannに基づく数値流体力学ソルバーによる流体流れシミュレーションからの過渡流データを受け入れる。そのようなシミュレーションデータは、渦を識別するのに使用される時間依存及び空間依存の容積情報を提供する。
【0032】
本方法は、流れシミュレーション中の複数の時間段階において、渦と、場所、長さ、及び半径、並びに循環のような渦性質とを識別するために流れデータを解析する段階(10)を含む。下記でより詳細に説明するように、各時間フレームに対して、システムは、本明細書では渦中心線と呼ぶ接続点セットによって各々が表される複数の渦を識別する。各渦に対する中心線及び渦の場所は、様々な技術を用いて発生させることができる。例えば、3次元シミュレーションでは、渦を含む可能性が高いシミュレートされた系内の領域を識別するために、λ
2判断基準(例えば、渦領域を渦核の内側の全ての点において対称テンソル(Ω
2+S
2)の第2固有値λ
2(λ
1≧λ
2≧λ
3)が負である領域として識別するのに使用される判断基準)を使用することができる。渦を含む可能性が高いものとして識別される複数の領域は、集合的に、手動で課せられた閾値又は方法によって自動的に決定された閾値よりも小さいλ
2値を有する領域を含む等値面として表すことができる。従って、識別される等値面は、シミュレーション空間の範囲で複数の領域を含むことになり、閾値条件を満たす渦の全てを含むことになる。個々の渦に関連付けられた等値面の自己完結部分を識別するために、更に別の等値面計算を完了することができる。例えば、フラッディングアルゴリズムは、非接触ボクセル集合を分離することができ(各集合が、1つの渦/1つの接触渦群に対応するように)、次いで、アルゴリズムが、各群が単一渦を表すように大きいボクセル集合を小さい集合に分割することができる(再分割処理を1回よりも多い回数繰り返すことができる)。一部の例では、閾値個数よりも少ないボクセルを含むボクセル集合又は閾値数よりも小さい最大循環を有するボクセル集合を除去することができる(例えば、無視することができる渦を考察から除外にするために)。そのような自己完結等値面が識別されると、識別された渦の各々を三角形分割するか、又は他に各々に対する中心線を決定するアルゴリズムを使用することができる。以下により詳細に説明するように、渦を識別するのに渦度及び/又はQ判断基準のような他の量を使用することができる。
【0033】
流体流れシミュレーション中の少なくとも2つの時間フレームに対して、系内の渦セットを識別し終わると、本方法は、2つの異なる時間段階において識別された渦を比較することによる渦の空間追跡段階を含む(12)。より具体的には、アルゴリズムが、可能である場合に、第1の時間段階における渦の各々を第2の時間段階において関連の渦とこれらの渦の中心線表現に基づいて照合する。これに加えて、このアルゴリズムは、第2の時間フレーム内の特定の渦が、前段階で識別された渦のインスタンス化であるか、新しい渦のインスタンス化であるか、複数の新しい渦への渦の分割のインスタンス化であるか、又は新しい単一渦への複数の渦の融合のインスタンス化であるかを決定する。渦の各々が有する運動を追跡することにより、各渦に関するサイズ、速度、強度、伸長、移動方向、及びいずれかの動的情報が生成される。
【0034】
追跡情報を用いて、システムは、騒音生成渦に対する有望な候補である単純又は複雑な渦系を識別する(14)。より具体的には、共回転系又は高い伸長速度を有する渦は、他の渦よりも騒音を発生させる可能性が高い。従って、追跡情報に基づいて、これらの特性を満たす渦又は渦系(例えば、共回転渦、及び長くなる、短くなるか、又は捻れることによって伸長を経ている渦)をサイズ情報、速度情報、及び移動方向情報に基づいて識別することができる。
【0035】
渦及び渦系を識別した後に、システムは、渦によって発生する騒音をモデル化する(16)。騒音モデル化段階は、各発生源に関するかつ全ての個々の発生源の全手法に関する周波数、振幅、場所、指向性、及び放射パワーの再現を含む。共回転渦の場合に、全ての上記情報が、Powellの理論の一般化によって導出される渦音の理論に基づいて再現される。この理論は、渦力学(例えば、回転速度、成長速度、及び/又は相対運動)と騒音発生の間を関連付ける。伸長渦の場合に、Powellの理論から導出された二重極様騒音モデルに結合された追跡アルゴリズムは、伸長騒音寄与へのアクセスを与える。この寄与は、渦構造の形状、長さ、強度、循環、及び変形速度の推移に関する。
【0036】
システムはまた、騒音情報の有利な特徴を抽出してシステムの操作者に表示するために、決定した騒音情報に対して後処理操作を実施する(18)。例えば、騒音発生構造の密度マップを生成するためのデータの後処理を使用することができる。共回転渦及び伸長渦によって発生した騒音に基づいて騒音発生構造の度数を示す密度マップを生成するために、例えば、複数の異なる時間フレームからの騒音データを加え合わせることができる。別の例では、多数の騒音発生構造を有する場所を識別する後処理を使用することができる。別の例では、共回転渦及び伸長渦によって発生した騒音に基づいて時間平均放射音響パワーマップを生成するために、複数の異なる時間フレームからの騒音データを合計することができる。別の例では、騒音発生構造の密度及び個数を観察する方向によって騒音発生構造をフィルタリングするが、特定の方向に向いた騒音だけに対してそれを行う後処理を使用することができる。別の例では、ある一定の周波数の騒音のみがユーザに表示されるように、周波数に基づいてデータを後処理することができる。別の例では、騒音の発生の原因である周辺形状(段差、間隙、及び/又は鋭角縁部)の領域を識別して位置付けるために、発生源に関する情報を流れデータに結合することができる。
【0037】
Powellの渦音の理論の概要
上述のように、系内に発生される音を決定するための1つの方法は、渦音に関するPowellの理論の適用に基づくことができる。自由流れでは、流れ誘起音は、渦運動によって発生されると考えられる。固体面は存在しないので、運動量の変動はなく、これは、流れ内のいずれかの場所で渦度変動が発生すると、あらゆる他の場所で反対の変動が発生することを意味する。各渦は、強度変化と形状変化を受け、これらの変化は、両方の場合に二重極様放射を発生させる。この場合に、渦運動に起因する遠距離場音響密度変化に関する一般表現は、次式のように導出することができる。
(1a)
ここでy
jは、積分ベクトル
の
上への投影であり、
は、観察者位置ベクトルであり、
は、渦度ベクトルであり、
は、速度ベクトルである。
は、流体の要素容積である。ρ
∞は平均密度であり、cは音速である。渦核線要素に関する積分Vの容積の離散化が使用され、式1aから、遠距離場密度変化に関する新しい表現式が以下の通りに導出される。
(1b)
ここで、kは、1つの固有離散渦核線の1つの部分要素を表している。次いで、
図2Aに表すような2yだけ分離し、同じ循環Γ(それぞれ矢印34及び32で表す)を有する2つの共回転渦30、36の系について考察する。そのような系は、Γ及びyが一定である、角速度Ω
s=Γ/(4πy
2)における軸O(38)の周りの渦回転を誘起する。この角速度を式1bに使用すると、密度変化が次式によって与えられる。
(2)
ここで、Δlは、渦核線要素の長さである。λが音響波長である時に、音響波の時間遅延が無視されるようにΔl≪λであると仮定する。
図2に使用される単位ベクトルを例えば共回転渦(CRV)系の概略図を提供している
図2Aに記載している。上述の結果、このCRV系に対応する放射音パワーは、以下の通りである。
(3)
【0038】
Powellの理論は、粘性効果を無視し(下記で解説する)、その結果、CRVの永久運動が発生する。同等な音響系は、軸の周りに回転する4つの定圧極からなる回転四重極である。
【0039】
音は、流れ内の渦の強度変化によっても発生される。例えば、渦輪の伸長によってエオルス音が発生し、放射騒音は、二重極放射と同等である。しかし、そのような強度変化は、流れの中で孤立しては発生せず、遅延した期間で反対の伸長が遅れて見られる可能性が高く、離脱がもたらされる。その結果、振動する四重極様騒音発生源が見られることになる。Powellは、二重極様放射に関する理論も発展させた。変化速度に関する対応する式は、以下の通りである。
(4)
この場合に、
は、Lambベクトルであり、
である。渦伸長では、渦要素の軸に対して直角な方向の渦要素の加速は、局所変化二重極様の流れをもたらすので(Lambベクトルの時間微分の空間積分によって結果として)音放射が発生する。
【0040】
Powellの理論の拡張
Powellの理論では、渦は、その循環と回転軸を中心とする場所とよって表される。渦のサイズと循環の両方の変化を考慮するために、回転速度に関して以下の通りにScully渦モデルが使用される。
(5)
【0041】
2つの渦の強度差は、回転系に対して影響を有する。異なる循環を有する2つの渦(例えば、
図2Bの渦50、52)に着目し、
図2Bに定めているパラメータにより、系の角速度は、以下の通りである。
(6)
【0042】
回転中心の位置は、次式によって与えられる。
(7、8)
【0043】
式1bから始めて、系の幾何学的パラメータ(
図2B)を使用すると、密度摂動及び音響パワーは、次式になる。
(9)
(10)
ここで、R、θ、及びZは、CRV系の座標系内の
の円柱座標である。
【0044】
上式では、渦の形状がコヒーレントのままに留まる(すなわち、点モデルによって良好に近似される)と仮定している。循環比がある閾値よりも大きい場合に、低循環渦のサイズ変化によって騒音発生を導入するより複雑な粘性効果が起こる。
図2Aは、共回転渦(CRV)系の例示的概略図を示し、
図2Bは、異なる強度の循環を有する共回転渦系の例示的概略図を示している。
【0045】
粘性効果が考慮される場合に、より複雑な機構が含まれ、CRV渦対は最終的に融合する。融合処理は、以下の4つのステージからなる。
・第1の拡散ステージ
・対流ステージ
・第2の拡散ステージ
・最終拡散ステージ
【0046】
第1の拡散ステージは、平方根の法則
に従って渦核半径の増大をもたらす、各渦の回転及び流体の粘性に起因する各渦の拡散に対応する。このステージ中には、Powellの四重極類似を首尾良く当て嵌めることができる。対流ステージは、b
0=2y
0が2つの渦の間の初期距離である時に、核半径がr
c critical=0.290b
0のような限界値に達した時に始まる。b
0の前にある係数は、厳密な構成条件に依存する。層状渦の場合の対流ステージの持続時間t
cは、実験からt
c=8.1*(b
02/Γ
0)として公知である。渦間の距離は、このステージ中に減少し、拡散は、小さい役割しかもたらさない。更に、このステージ中には回転速度が増大し、渦糸をもたらす非対称渦度場を提供する。第2の拡散ステージは、渦が融合する(b=0)のに必要な期間に対応し、最終拡散ステージは、得られる単一融合後渦糸の拡散である。本明細書に説明するCRV系のLBMシミュレーションから得られた4つのステージを
図3に例示している。
図3は、(a)第1の拡散段階、(b)対流段階、(c)第2の拡散段階、(d)最終拡散段階におけるLBM CRVシミュレーションから得られた瞬間渦度場Ω[s^(−1)]を示している。
【0047】
騒音発生源識別
本明細書に説明する流れ誘起騒音識別法(FINSIM)手法は、現実の産業の場合の任意に複雑な流れの中における音発生の原因である渦構造を識別して追跡する。考察する渦構造は、共回転渦(CRV)対及び伸長を経ている渦(例えば、不均一な速度で)である。CRV発生源に対しては、FINSIMは、各対応する渦対を離散CRV系として識別し、同等な四重極様発生源及び対応する音響放射を決定する。渦の全体の流れ場の運動を調べることにより、完全な四重極ベースの遠距離場騒音を推定することができ、物理的騒音発生源の性質を解析することができる。提案する追跡手法は、騒音発生に対して最も重要な機構であると考えられる第1の拡散ステージ中と、CRV運動の対流ステージの開始点とにおいて有効である。
【0048】
図1Bを参照すると、流れ誘起騒音識別法(FINSIM)手法に関する流れ図が示されている。FINSIM手法は、高レベルにおいて、渦検出102と、渦追跡114と、騒音特性132を生成するための騒音モデル化128/130とを含む。
【0049】
FINSIM手法の渦検出102部分は、渦の識別に使用される。渦の識別は、瞬間圧力、渦度、Q判断基準、λ
2判断基準、又は過渡かつ乱流において離散渦を識別することができる他の方法に基づくことができる。2次元では、渦度に基づいて渦を抽出することができる。3Dの場合に、λ
2判断基準の使用がより適切である可能性が高い。
【0050】
より具体的には、
図1Cに示すように、渦検出処理102は、流れシミュレータから測定値ファイル100を受け入れる(150)。測定値ファイルは、系内の各ボクセル内(又は識別領域に対するボクセル部分集合内)の粒子流に関する圧力及び速度ベクトルの最小値を含む情報を含む。測定値ファイルは、流れデータの1つ又はそれよりも多くのフレーム(例えば、シミュレーション中の別個の時間段階)を含む。流れデータに基づいて、システムは、各フレームにおける各ボクセルに関するλ
2及び渦度ベクトルを計算する(152)。これらの値は、渦を位置付けるために使用することができる。例えば、低いλ
2値は、渦の中心線に近い可能性が高い。次いで、λ
2及び渦度ベクトルは、各々が1つの渦/1つの接触渦群に対応する渦ボクセル集合(例えば、等値面)を生成するのに使用される(154)。ボクセル集合を生成するために、システムは、λ
2及び渦度ベクトルに対する値を定められた閾値と比較して、値が定められた範囲にあるλ
2及び渦度ベクトルを有するボクセル部分集合を選択する。初期のボクセル集合は、重ね合わせ渦を含むことができ、従って、システムは、渦集合を改善して各接触渦群を単体の渦に分離する(156)。小さい渦(例えば、閾値サイズよりも小さい渦)を除去するために、システムは、サイズに基づいて集合をフィルタリングする(158)。残りのボクセル集合に関して、システムは、各ボクセル集合に対する中心線を生成する(160)。中心線情報は、場所106、並びに長さ及び半径108のような様々な渦性質104を含む。
【0051】
FINSIM手法の渦追跡部分114は、各渦の変位を識別する。この部分では、離散時間t
i及びt
i+1における全ての渦のパラメータ(場所、半径、循環等)が計算され、追跡アルゴリズムが、t
iとt
i+1の間の各渦の変位を識別する。より具体的には、追跡アルゴリズムは、シミュレーションの現在フレームからの中心線データ110と、シミュレーションの先行フレームからの中心線データ112とを受け入れる。これらの2つの中心線データセットに基づいて、追跡アルゴリズムは、渦動特性情報116を生成する。この情報は、軌道情報118と、対流速度120と、渦の伸長/変形に関する情報122とを含む。渦動特性情報116に基づいて、追跡アルゴリズムは、共回転渦対に関する追跡データ124と、伸長を経ている渦に関する伸長データ130とを出力することができる。共回転渦対を識別する段階は、例えば、渦系運動を解析する段階を含むことができる。各CRV系の識別は、各渦の位置及び変位の計算、並びにその渦に最も近い隣接渦の決定に基づいている。この場合に、渦及びその隣接渦は、離散CRV系であると考えられる。候補CRV系の個数は、渦間距離が距離閾値よりも大きい系を廃棄することによって低減される。CRV系の自転情報が、その動特性から抽出され、モデル化に使用される。
【0052】
伸長渦を識別する段階は、例えば、個々の構造の長さ又は循環の成長速度(構造識別処理から既知である情報)を計算する段階を含む。渦の長さ又は強度での変化から、伸長渦が検出される。
【0053】
FINSIM手法の騒音モデル化部分128、130は、識別された渦によって発生される騒音を導出する。より具体的には、各CRVに対して、その動特性に基づいて、得られる発生騒音は、拡張Powellの理論に従って導出される。伸長する渦に起因する騒音発生も導出される。騒音モデル化は、系に関する騒音特性セット(例えば、系内の各騒音生成渦に関する騒音特性の全和又は集約)を生成する。騒音特性は、系内の渦に関する周波数134と、場所136と、指向性138と、放射パワー140とを含むことができる。騒音特性は、シミュレートされた系内で識別し、その場所に関連付けることができる。例えば、系内の各ボクセルに関する騒音特性を決定することができる。一部の周波数の音は外乱をもたらす可能性が高く、それに対して他の周波数は、人間の耳が知覚することができるスペクトルの外側にある可能性があるので、周波数情報134は重要である。場所情報136は、系内で騒音を発生させる箇所を識別するのに有利とすることができる。この情報は、シミュレーション中の物体の物理的設計内で騒音発生構造まで遡るために使用することができる。設計内で騒音誘起渦の原因である物理的な場所は、例えば、逆問題を実施することによって決定することができる。流れ内の騒音発生源の場所を把握することにより、例えば、平均流量流線、渦軌道、又は逆粒子追跡アルゴリズムを用いて、音の原因である渦が最初に発生された場所を識別することができる。場所情報は、グラフとして表示することができ、騒音生成渦を有するボクセルは、このグラフ上で識別される。渦に関する指向性情報138も重要である可能性がある。例えば、自動車のサイドミラーが騒音を発生しているが、騒音が、窓に向けてではなく、自動車から離れるように向けられる場合に、自動車内の個人の快適性に対する騒音の影響を低減することができ、従って、騒音をそれ程問題としない場合がある。最後に、ある騒音レベルが閾値よりも小さい場合に、この騒音レベルに対する許容範囲が、システムへの変更を不要にすることができるので、騒音の放射パワー又は振幅140は重要である。
【0054】
図1Bには示していないが、ユーザに理解可能で有利な情報を提供するために、騒音データの後処理を有利とすることができる。例えば、予測される流れ及び放射騒音に対して生成された結果に基づいて、有利な桁、ディスプレイ、及び情報をユーザに提供することができる。これは、渦の場所及び対流速度、固有の渦寿命、渦伸長挙動、瞬間放射周波数、騒音発生源の場所及び強度、周波数依存の強度マップ等に関する情報及び統計を含むことができる。
【0055】
一例では、渦の場所及び対流速度のグラフを生成する後処理を使用することができる。このマップは、各ボクセルに関する対流速度の配色により、又は他にその視覚標識を提供することにより、対流速度の指示を与える。渦が存在しない場所も、渦の不在を示すために同じく配色されることになる(例えば、関係する対流速度が存在しないことになるか、又は対流速度が閾値よりも小さいことになるからである)。一部の例では、単一時点に関する渦の場所、対流速度のマップが表示され、それに対して他の例では、複数の時間フレームの時間推移が示されている。
【0056】
別の例では、中心線の場所の視覚表現を提供することによって渦の場所のグラフを生成する後処理を使用することができる。例えば、系の表現の上に、ボクセル内の適切な視覚標識によって中心線を表示することができる。中心線は複数のボクセルにわたることになるので、ボクセルに対する中心線は、ボクセルの各々内に適切な標識を提供することによって表示されることになる。更に、中心線によって放射される騒音の強度又は振幅を視覚的に示すことができる。例えば、中心線が適切な場所における線で表される場合に、線の幅又は配色は、渦によって発生する音の振幅に関する情報を提供することができる。そのような情報は、シミュレーション中の単一時間段階に対して、又は複数の時間段階にわたる時間に基づく推移として表示することができる。
【0057】
別の例では、系内に発生する音の周波数のグラフを生成する後処理を使用することができる。例えば、騒音発生源の密度(例えば、系内の渦の個数)に対する渦によって発生する音の周波数のグラフを生成することができる。別の例では、放射音響パワー(例えば、様々な渦系によって発生される時間平均音響パワー)に対する渦によって発生する音の周波数のグラフを生成することができる。一部の例では、複数の異なる設計がシミュレートされ、発生音周波数の比較を提供することができる(例えば、両方の設計に関する情報を含むグラフ)。
【0058】
別の例では、渦の場所及び強度のグラフを生成する後処理を使用することができる。このマップは、各ボクセルに関する対流速度の配色により、又は他にその視覚標識を提供することにより、渦強度の指示を与える。渦が存在しない場所も、渦の不在を示すために同じく配色されることになる(例えば、強度が閾値よりも小さいことになるからである)。
【0059】
別の例では、固有の渦寿命のグラフを生成する後処理を使用することができる。例えば、全移動距離による渦の分布のグラフを生成することができる。多くの設計において乱流は問題である場合があり、機械疲労又は物体の間接的相互作用を回避するためには、コヒーレント構造の寿命を低減しなければならない。渦の移動距離を最小にすることによって適切な設計を選択することができる。
【0060】
別の例では、渦伸長挙動のグラフを生成する後処理を使用することができる。例えば、シミュレートされた物体の特定の方向に沿った渦の伸長速度のプロットを生成することができる。一部の設計では、流れ内の乱流、すなわち、渦は、強度又はサイズにおいて可能な限り急速に減衰しなければならず、伸長速度分布を調べることによって効率的な設計を決定することができる。
【0061】
別の例では、瞬間放射周波数のグラフを生成する後処理を使用することができる。例えば、周波数によって配色された騒音発生源の空間マップを生成し、時間動画として提供することができる。一部の設計では、流れの中で発生される騒音は、遠距離場プローブのSPLグラフ内のピークに対応する不法レベルに達する可能性がある。周波数によって配色された発生源のマップは、この特定の音色の原因である流れ領域を識別するのに役立つことになり、発生源の運動の時間動画を通してそのようなレベルの原因である騒音誘起渦の寿命周期に対する洞察をもたらすことになる。
【0062】
別の例では、周波数依存強度マップを生成する後処理を使用することができる。例えば、各ボクセルに関する対流速度の配色により、又は他にその視覚標識を提供することにより、渦強度の指示を与えるグラフを生成することができる。ユーザが選択した周波数範囲を表示するために、このグラフに関する情報をフィルタリングすることができる。例えば、ユーザは、人間の耳によって検出可能な周波数のみ、又は個人の快適性に対してより破壊的であると受け止められる可能性がある高い周波数のみを表示することを望む可能性がある。関係するボクセルに基づくグラフ内での周波数によるフィルタリングは、ユーザが、系内で、考察する周波数範囲で最も高い騒音量を発生させる場所に注意を集中することを可能にする。
【0063】
別の例では、考察する周波数範囲にわたるパワーのグラフを生成する後処理を使用することができる。例えば、定められた領域内にある全ての発生源のシミュレーション時間との間の平均パワーのSPLグラフを生成することができる。一部の物体では、流れ誘起騒音は、空間内の一部の場所から発する可能性がある。遠距離場では、どの音響パワー量がどの領域から到着するのかを正確に決定するのは困難である場合があり、この情報を計算することは、物体のうちで騒音低減に向けて修正を必要とする部分の優先順位付けをすることにより、より優れた設計処理を助ける。
【0064】
別の例では、特定の領域のためのパワーの指向性を生成する後処理を使用することができる。例えば、考察する特定の領域を中心とする球面にわたる時間平均音響パワーの分布を生成することができる。設計が比較される場合に、放射パワーの合計量だけでなく、その指向性も重要である。方向に基づいて、放射音響パワーは重要である場合があり、すなわち、この方向は、騒音を低減する必要がある方向であり、又は放射音響パワーを無視することができる場合があり、すなわち、この方向は、騒音が重要度を持たない方向である。
【0065】
別の例では、空間内の様々な点において音響信号の再現物を生成する後処理を使用することができる。例えば、伝達音響パワー量を定量化するために、いずれかの面上の圧力音響場を視覚化するか又は使用することができる。流れ領域内では、音響圧力場は、流体力学圧力場の変化の中に隠される可能性があるので、それを直接的に利用することはできない。フィルタリングは困難であり、多くの騒音によって汚染される可能性がある。騒音発生源のモデル化を使用すると、流れ領域内の考察するいずれかの点での音響圧力場の再現により、音響フィルタリングを実施することができる。
【0066】
別の例では、騒音発生源の原点の面マップを生成する後処理を使用することができる。例えば、物体の面を考察する場所から発する流れ誘起騒音発生源の個数によって局所的に配色することができる。一部の設計では、騒音発生の原因である一定の面領域を補正される前に強調表示しなければならない。強調表示された面の小部分を修正することにより、騒音発生源の強度を低下させることができ、設計を改善することができる。
【0067】
格子Boltzmann法(LBM)
本明細書に言及するように、渦を識別して追跡するのに使用される流れ情報を生成するために、様々なタイプの流れシミュレーションを使用することができる。1つのそのような流れシミュレーションは、格子Boltzmann法に基づいている。非定常物理現象を計算するためには、CFD/CAAコードが使用される。このコードは、格子Boltzmann法(LBM)に基づいている。格子に基づく方法は、従来の数値流体力学(CFD)に対する代わりの数値法として提案されている。巨視的な連続体方程式を離散化することに基づく従来法とは異なり、LBMは、「中間視的」運動方程式、すなわち、Boltzmann方程式から始めて、巨視的流体動特性を予測する。格子Boltzmann方程式は、以下の形式を有する。
(11)
ここで、f
iは、離散速度ベクトルの有限セット{c
i:i=0,..b}に従ってi番目の方向に移動する粒子分布関数であり、c
iΔt及びΔtは、それぞれ空間増分及び時間増分である。便宜上、以下の解説ではΔt=1という慣例を選択する。方程式(11)の右辺の衝突項に対しては、最も簡単で最も一般的な実施は、以下のBhatnagar−Gross−Krook(BGK)形式である。
(12)
【0068】
ここで、τは、緩和時間パラメータであり、f
ieqは、マクスウェル−Boltzmann形式に従う局所平衡分布関数である。流体の密度ρ及び速度uのような基本的な流体力学量は、次式のモーメント和によって得られる。
(13、14)
【0069】
低周波数限界及び長波長限界では、離散速度ベクトルセットの適切な選択のために、Chapman−Enskog展開によって示すように、過渡的な圧縮性Navier−Stokes方程式が回復される。得られる状態方程式は、理想気体の法則に従い、流体の動粘性υは、次式のように緩和時間パラメータτ及び温度Tに関する。
(15)
【0070】
式(11〜15)の組合せは、流体力学に対する通常のLBM手法を形成する。このLBM手法は、ボクセルと呼ばれる立方容積要素からなる格子上で解かれ、隣接する分解能領域に関して格子サイズが2倍だけ変化する可変分解能(VR)法が許容される。
【0071】
共回転渦(CRV)
A.数値設定
CRV系をシミュレートするのにLBM直接数値シミュレーション(DNS)が使用され、核半径r
c=8×10
-4mであり、v
max=0.3m/sの時に循環Γ=4πr
cv
maxであるScullyのモデルを用いて2つの初期渦が初期条件として定められる。渦の間の初期距離は、b
0=1.6×10
-4mであり、v
max及びr
cに基づくレイノルズ数Reは、Re=159である。シミュレーション領域は、2048r
c正方形60である(
図4)。シミュレーション領域60は、境界における音響反射を回避するために、高い粘性及び分解能を有するいくつかの流体層のスポンジゾーン62によって囲まれる。スポンジゾーンの外縁部に対する境界条件は、反射条件のない圧力出口であり、特徴的圧力は、p
0=101325Paである。最も小さいボクセルサイズは、Δx=r
c/30である。CRV放射の事前推定波長は、λ=1000r
cであり、シミュレーション領域及び測定領域は、放射音響場を捕捉するほど十分に大きい。シミュレーションは、融合処理が終了するまで、すなわち、300,000時間段階に対応するT=13.3×10
-3sの間実施される。
【0072】
B.CRVシミュレーション結果及び解析
図3は、共回転渦系に関する融合処理の概略図を示している。
図3では、瞬間渦度場を表しており、CRVの4つのステージが回復されていることを見ることができる。運動解析から予測される角度速度は、ω
0=208.3Hzである。シミュレーションの短い初期過渡(t=0.3ms)の後に得られる収束値は、理論値と極めて十分に一致してω
0-sim=208Hz±3Hzである。時間の関数としてのシミュレーション渦核半径は、展開係数α=2.3の二乗則依存性を示している。Cerretelli及びWilliamsonから、Lamb Oseen渦に関するこの値はα=2.24であり、それに対して実験的にはα=1.9が見出され、この値は、予測値とのかなり良好な対等性を有する。
【0073】
望ましい四重極モデル化、特に四重極騒音発生源の時間依存特徴付けを可能にするために、2つの渦の完全な時間推移を解析した。
図5A〜
図5Dは、Re=159を有する共回転渦に関する渦度等値線(s
-1)及びDB空間マップ(dB)を示しており、a)及びb)は、t=0.91msで計算されたものである。c)及びd)は、t=6.38msで計算されたものである。
図5b及び
図5dには、それぞれ
図5a及び
図5cにプロットされた渦度場によって放射された騒音の瞬間の周波数及び強度を強調表示した流体平面dBマップ(すなわち、変化する圧力レベルによって配色されたボクセル/区域を有する画像)が示されている。この表現は、いかなる指向性概念もない物理的騒音発生源を示している。2つの渦が近づいて加速するときに、放射周波数が時間と共に増大することが認識される。音響パワーも、融合処理に起因して系が崩壊するまで増大する。
【0074】
再現された全体の放射音響場を
図6に示している。LBMシミュレーションを用いて直接得られた音響場(グレースケールにある)と、FINSIMを用いて計算された圧力波極値(線72、74で表す)の間の比較は十分に一致し、それによって騒音モデル化段階のためのアルゴリズムの適切性証明が与えられる。この例は、2D例でしかないが、この概念(CRV追跡によって音発生を予測するという)が機能することを示している。より具体的には、
図6では、黒色と白色が、LBMから予測された200Hzと1500Hzの間の範囲にあるフィルタリングされた音響圧力場[−0.5Pa,0.5Pa]を示し、線72、74が、FINSIMを用いて計算された最小及び最大の圧力波値に対応する。
【0075】
2Dせん断層流
A.せん断層流
従来の研究では、せん断層の主構造によって発生される騒音が四重極性質を有し、孤立したCRV系と極めて類似の渦ペアリング機構に関することが示されている。ここでは、極めて重要な騒音発生源動特性及び得られる音場が既知である比較的簡単な場合に対してFINSIMを例証するために、第1の調波周波数f
0=40KHzでの2次元強制せん断層がシミュレートされる。
【0076】
せん断層(SL)問題は、厚みδ
w(0)、最大速度U
1、及び最小速度U
2という3つのパラメータによって特徴付けられる。入口速度プロファイルは、次式によって与えられる。
(16)
ここで、θ=δ
w(0)である。強制せん断層の場合に、θ=δ
w(0)(1+0.8sin(2πf
0t))のように正弦波強制成分がθに追加される。対応するレイノルズ数は、δ
w(0)=4.34×10
-5mでRe=250である。
【0077】
シミュレーション領域は、y方向に9600δ
w(0)にわたって延び、xに沿って8800δ
w(0)にわたって延びている。上述の場合のように、無響条件を与えるために、スポンジゾーンを使用する。2D DNS シミュレーションは、80サイクル、すなわち、80回の1次ペアリングにわたって実施される。強制SLに関する
図7に示すように、流れは周期的であり、SL内で発生される2つの連続する渦の1回のペアリング期間中の4つの時点において検出法が適用される。時間依存の流れの結果がFINSIMを用いて処理され、四重極騒音発生源が回復され、これらの四重極騒音発生源をペアリング機構に明示的に関連付けることができる(
図7)。更に、時間及び空間への依存性を示すペアリング周波数に対応する主放射周波数が回復される。より具体的には、
図7は、強制せん断層流の1回のペアリング期間の範囲の4つの時点に対応する流れ及び音響場を示している。上から下へ、t=0s、t=0.146s、t=0.151s、t=0.161sである。左のグラフは、渦度の等値線をs−1に示し、中央のグラフは、騒音発生源の瞬間空間dBマップを示し、右のグラフは、再現音響場を示しており、この図では、線72は圧力波最小値であり、線70は圧力波最大値である。
【0078】
3D噴射流
A.数値設定
噴射流は、航空宇宙産業から重機械産業に至るまでの多くの用途において重要な騒音発生源である。騒音発生の機構(乱流発生及び渦間相互作用)は、多くの研究者によって広範囲にわたって解析されてきたが、騒音が正確に発生される道筋及び場所に対する幾何学設計詳細内容の影響は明確に理解されていない。従って、噴流は、騒音発生源識別に対して着目せずにはいられない例を提供する。
【0079】
円形噴流のシミュレーションは、CMS000構成に対して実施される(例えば、
図11を参照されたい)。3Dへの拡張を含むFINSIMの開発及び検証を助けるために、大きい3D過渡流データセットが生成される。特徴的長さは、ノズル直径に対応するD=50.8mmである。
【0080】
噴流のマッハ数は、M=0.35であり、レイノルズ数は、Re=410,000である。分解能は、Δx=1mmであり、物理的時間t=0.1sのシミュレーションが実施される。上述の2Dの場合と同様に、領域の境界からの擬似反射を回避するために、ノズル及び噴流を取り囲むスポンジゾーン手法が使用される。
【0081】
B.流れ及び騒音結果
図8A及び
図8Bは、噴流軸に沿った平均流れ方向速度成分、及びノズル射出口の3mm上流の場所の流れ方向速度プロファイルをそれぞれ示している。
図8A及び
図8Bでは、噴流軸に沿って及び射出口の3mm上流の場所のノズルプロファイルの両方で実験を行って平均流れ方向速度成分が比較されている。予測結果は、実験と十分に一致している。特に、ノズルの内側の境界層は正確に予測され、噴流膨張が、潜在的コア長と共に良好に回復されている。
図9には、せん断層に存在し、潜在的コアの末端部における噴流の乱流混合によって誘起される構造を含む噴流中の多数の渦の存在を示す渦度場の瞬間スナップショットが表されている(
図9は、様々な場所及び平面における瞬間渦度場を示す)。
【0082】
音響放射を同じ過渡シミュレーションの範囲で捕捉し、瞬間圧力変化を示すスナップショットをx位置合わせ平面に瞬間圧力変化を示す
図10の
図10Aにプロットした。この図では、潜在的コアの末端部から発する主騒音発生源を見ることができる。ノズル射出口から100Dの場所に位置するマイクロフォンにおいて測定された全音レベルの指向性をOASPL指向性プロット
図10Bに示している。騒音レベル及び指向性依存性が良好に予測され、特に大きい観察角度で騒音レベルの増大が得られる。
【0083】
C.FINSIM結果
上記に提供した発生源識別法は、3D過渡入力に適合されたものであり、3D噴流シミュレーションの騒音発生源を解析するのに使用される。最初にシミュレーション測定値ファイルが渦検出法に入力され、渦検出法は、渦核中心線と、半径、場所、長さのような各渦に関する他の幾何学情報とを戻す。渦中心線及び半径(すなわち、λ−2等値面の平均半径)から、渦構造は、
図11(例えば、再現中心線を示す)に視覚化しているように簡略化された形式で再現される。せん断層内には、渦が発生する潜在的コアの近くで密度の渦が観察される。次いで、渦は下流に対流移動し、渦密度は、融合及び散逸に起因して低下する。渦再現処理(各渦の「スケルトン」バージョンを発生させる)の精度を評価するために、初期等値面エンベロープから再現渦メッシュまでの平均距離に基づいて誤差が計算される。次いで、平均距離は、個々のスケルトンの同等な半径によって正規化される。
図12は、この計算の結果を示しており、各渦を誤差サイズに対応する半径を有する球面として表している。この誤差桁の数値はほぼ1.0の下に留まり、最大で3.0のピーク値が観察されるが、誤差レベルは、再現処理に対して許容可能な精度を示すと考えられる。ピーク値は、実際には、処理の第1の段階に基づいて個々に捕捉されない複雑な交錯構造に対応する。単一等値面が、いくつかの混合渦を同時に表す場合に、FINSIMは、それを1つとして取り扱い、単一管を複雑な渦系に当て嵌めようと試みる。
【0084】
全てのフレームに対して得られる渦管情報は、流れ内の乱流に対して統計を実施することを可能にする。
図13は、(x,y)平面上に投影された渦の分布を示している。
図13では、各フレームからの各渦の場所が、噴流軸を中心とし、3Dという全幅を表す100セル×100セルの格子上に直交方向に投影されている。渦のうちで、その投影が各個々の格子セルの内側に収まる部分をそのセルの色で表している。得られる渦分布は、予測された軸対称性、並びに潜在的コアの境界におけるせん断層内での強い渦凝集度を示している。再現処理では各渦の長さも計算され、0mから0.04mの範囲にわたる100個の値に分割し、流れ方向の場所を0と15Dの間の100個の値に分割することによって構成された
図14にx軸に沿った渦長の分布を示している。
図14に提供している分布は、x=3Dの前の乱流の弱い存在、並びに0.006mよりも小さい長さを有する渦の不在を示している。渦密度は、3D(潜在的コアの末端部)と10Dとの間で最も高い。渦長は、下流に対流移動される時に増大する。
【0085】
渦追跡段階の後に、渦の幾何学的性質の時間変化が計算される。例えば、
図15のスナップショット画像内に示すように、渦の対流速度が計算される。
図15には、30m/sから130m/sまでの対流速度によって配色された再現中心線が示されている。この図では、対流速度が噴流せん断層の外側層内でほぼゼロであり、潜在的コア境界の近くで最大値に達することを見ることができる。流れ方向に沿った対流速度の分布も計算される。
図16は、x軸に沿った平均対流速度のグラフ例を示している。
図16は、対流速度の初期増大に、≒03mで始まる潜在的コアの末端部から下流に移動する緩慢な低下が続くことを示している。対流速度に関しては、99%信頼区間は、平均値と比較して相対的に小さく、約5%である。更に、フレーム毎の渦中心線の長さ変化に基づいて、渦の伸長も計算される。個々の渦の伸長のスナップショット(例えば、0%/sから10000%/sまでの伸長によって配色された再現中心線)を
図17に提供し、噴流軸に沿った伸長の分布を
図18に示している。伸長の分布は、せん断層が潜在的コアの外側境界内で渦を発生し始める場所で3.5%毎フレームのピーク値を示している。次いで、伸長は、約0.7%毎フレームで一定である。この図は、渦が噴流中を下流に移動するときに、その長さが増大し続けることを示しており、これは、主として渦核の散逸の3次元効果に起因する。
【0086】
最後に、渦系検出法は、共回転中の渦対に関する情報を提供する。各時間フレームにおいて、CRVによって放出される音の周波数は、その回転速度から計算される。騒音発生源分布に対応する周波数依存CRV空間分布を調べるために、定められた200Hz帯域の範囲にある周波数を有するCRVの個数が、流れ内の全ての場所において0kHzと5kHzの間の周波数帯域に対して計算される。この個数は、格子セルの単位容積によって正規化される。得られたスカラー量は、騒音発生源密度である。これらの結果を周波数帯域200〜400Hz(a)、800〜1000Hz(b)、2000〜2200Hz(c)、及び3000〜3200Hz(d)に対する騒音発生源密度を示す
図19に提供している。最大密度は、800〜1000Hz帯域範囲に対するセル内で得られる。x=0.2mの場所に噴流軸から90°で位置付けされたプローブにおける1/3オクターブSPLに関するシミュレーション結果を示す
図20に提供しているように、このセルは、遠距離場SPLの最大値が観察される帯域に対応する。渦対の存在は、低い周波数(<200Hz)では0の近くであり、高周波数帯域渦対の計数値は、800〜1000Hzの範囲におけるものよりも小さい。全体的に、CRV騒音発生源は、せん断層内で鉛直渦(従って、乱流)が発生される潜在的コアの近くに凝集される。
【0087】
FINSIM用途
流れ誘起騒音発生源を識別するための本手法の機能を示すために、本手法を騒音発生差が観察される2つの異なる事例に適用する。第1の事例は、
図21A及び
図21Bに幾何学形状をそれぞれ示すSMC000(前節に提供した円形ノズル)及びSMC006(山形紋型ノズル)という2つの噴射ノズル設計の比較である。第2の事例は、異なるレベルの放射音響を発生させることが公知である完全に細部が仕上げられた生産車のための2つの異なるサイドミラー設計の比較である。
【0088】
A.噴射ノズル幾何学形状の比較:SMC000対SMC006
FINSIMを用いたSMC000のシミュレーション及び解析に対しては、第IV節で記述した。SMC006シミュレーションは、ノズル幾何学形状の変化を除いて同一である。FINSIMは両方の事例に適用され、
図22A及び
図22Bに提供している得られた渦の空間分布は、興味深い相違点を示している。SMC006渦分布(
図22A)は、山形紋が潜在的コアを崩壊させる傾向を有するので、より局在化される。SMC000の事例(
図22B)では、渦は、噴流に完全に沿って、潜在的コアの下流、及びその周りに位置する。しかし、SMC006の事例では、渦は、SMC000と比較して流れ方向に約半分の距離しか延びない潜在的コアの末端部に主として位置する。更に、潜在的コアは、SMC006ではより幅広であり、渦は、SMC000と比較して半径方向に更に遠くまで分布する。
【0089】
SMC006では、更に下流で渦の個数に示すように急速に散逸する。渦分布の差を考えると、SMC006騒音発生源の場所がより局在化され、時に特定の周波数帯域においてより集中することを予測することができる。
【0090】
図23は、
図21A及び
図21Bのノズル設計に関して異なる帯域幅においてシミュレートした騒音発生源分布を示している。
図23には、SMC000及びSMC006に対して、騒音発生源分布(前と同じくCRV密度で表す)が示されている。2つの設計を比較するために、各帯域幅における分布は、両方の事例を考慮した最大CRV密度値によって正規化される。これらのプロット図は、低い周波数で、SMC006設計ではCRV騒音発生源の量が多く、ノズルの射出口の近くに局在化されることを示している。噴流中へのノズル山形紋の貫入は乱流を誘起し、潜在的コア長を短縮し、観察される騒音発生源を開発する。渦分布と同様に、CRV騒音発生源の量は、SMC000設計では比較的少なく、噴流柱に沿ってより均等に分布する。1200Hzに至るまで、最も高い騒音発生源凝集度は、SMC006設計に属する。しかし、高い周波数では、この傾向は逆転し、SMC000は、より高い騒音発生源凝集度を有するが、これらの発生源は噴流柱内でそれにも関わらず均等に分布し、それに対してSMC006発生源は、周波数増大と共に個数が減少するが、それにも関わらずより局在化される。
図24には、騒音発生源の全個数を周波数に対してプロットしており、この図は、これら2つのノズル設計に関する騒音発生源の周波数分布の差を明瞭に示しており、SMC006騒音発生源は、SMC000と比較して低い周波数でより凝集され、高い周波数で減少する。
【0091】
現時点では、得られる放射音響パワーは、発生源の強度及びパワーの計算を必要とするので、放射音響パワーの比較は提供されていない。ここまで場所、渦の強度の図解を示していないことに注意されたい。現在まで、中心線の計算は、そのような量を取得するには十分に正確ではなかった。中心線アルゴリズム及び回転検出の新規開発は、この問題を解消し、CRV発生源の強度をファクタとして加え入れ、放射音響パワーを予測することを可能にすることになる。
【0092】
B.自動車サイドミラー設計の比較
次いで、本手法を用いて、完全に細部が仕上げられた実生産車上の2つの異なるサイドミラー設計に関して風騒音発生源を比較する。2つの調査された幾何学形状を
図25A(ミラー1)及び
図25B(ミラー2)に提供している。以前の実験及びシミュレーションによる調査は、ミラー1の方がサイドガラスに対して高い乱流壁圧変化レベルをもたらすが、ミラー2の方が、サイドガラスに対して高い音響レベルを発生させると結論付けた。この仮定に対する証拠は、100Hzを除く全ての周波数でミラー2に対して高いレベルを示す
図26に見られるように、0k法を用いて計算されたサイドガラスに対する音響壁圧負荷から部分的にもたらされる。両方のミラー設計に関して、FINSIMがPowerFLOW結果に適用され、シミュレートされた物理的時間との間の周波数の関数としてのシミュレーション容積にわたるCRV騒音発生源の全個数を
図27に提供している。各周波数で、騒音発生源の個数はミラー1の方が大きい。渦のサイズ及び強度、従って、CRVの強度及び得られるCRV毎の音響パワーが、2つの事例において同等であると仮定すると、騒音発生源の全個数は、全体の音響パワーに十分に対応することになり、従って、ここでFINSIMによって予測される傾向は、ミラー2がより高い音響レベル及び結果をもたらすという予測結果をもたらす。
【0093】
騒音発生源の分布は、噴流例に関するものと同じ方式で計算され、この分布を
図30に提供している。縮小視点では、全体の騒音発生源分布は、2つの設計の間で極めて類似していると考えられる。高い周波数では、両方の設計においてAピラーの近くに多くの騒音発生源が存在し、これは、公知のAピラー渦挙動と十分に一致する。拡大視点では、ミラー2に関する追加の騒音発生源の主な場所は、ミラーハウジングの背面の周りの近くにあると考えられる。
図31及び
図32では、サイドミラーの近くにおける水平面上での速度の大きさが、ミラー1と比較してミラー2の下流により強い再循環を示している。大きい速度の大きさに対応するミラー2の先端部の下流の区域は、ミラー1と比較してより長い距離にわたって延びている。ミラー1では、流れはより早く分離するので、結果として、再循環が起こるミラーの先端部でより低速である。運動エネルギは小さいので、得られる音響エネルギも小さく、高い運動エネルギは、より騒音が大きい強い乱流構造をミラーの先端部に誘起する。強い乱流のせん断層は、高いエネルギ性渦対相互作用密度と相関し、高い騒音発生CRV系密度、従って、
図26でミラー2に関して認識されるように強い騒音発生が引き起こされる。
【0094】
C.追加の自動車サイドミラー設計比較
以下の事例は、2つの類似の設計の間の騒音発生の相違点を正確に決定するFINSIMの機能を示している。ベースラインミラーは、実際の自動車幾何学形状に対応し、このベースラインミラーから、それに段差を追加することにより、後縁部延長(TEE)ミラーが構成される(
図33B上の灰色容積)。ミラー幾何学形状は極めて同様であるので、先縁部の流れは、幾何学形状の修正によって変化しないことが予測される。実験は、自動車の室内騒音のレベルが、TEEミラーにおいてより高いことを示している。流れは窓上で変化しないので、差は、時にミラーの後流中に発生される流れの音響寄与に起因する。この場合に、FINSIMは、ミラーの後流中に実施される。
図34では全CRV個数の差が認識される。この差は、全体の周波数範囲にわたって約25%(≒2dB)で一定である。FINSIMは、音響の発生臭いいて差を検出した。この差は、同じく
図35において認識され、この場合に、xに沿った騒音発生源の分布は、TEE設計では両方の周波数範囲において、特に先縁部の直ぐ下流で高い。
【0095】
結論として、TEE設計は、ベースライン幾何学形状に追加された段差に起因してより大きい騒音を発生させる。これを騒音発生源密度がTEEE設計においてこの追加容積に近い場所で最も高い
図36に例示している。しかし、ベースライン設計では騒音発生源密度レベルは低い。
【0096】
C.HVACダクト設計の比較
以下の事例は、騒音発生源(CRVとしても公知)の場所を正確に決定するためのHVACユニットシステムへのFINSIMの適用を示している。実際のダクト+ベント幾何学形状(
図37)、並びにこのベースラインから導出された新規設計が、FINSIMを用いて比較される。新規設計は、乱流区域内の変化を低減するためのダクト幾何学形状の修正によって得られる。SPLレベルにおける有意な差が認識され、従って、低い室内騒音が認識される。これらの修正を
図38及び
図39に提供している。
【0097】
FINSIMは、
図40に示すように、騒音発生源の場所及び量の差を首尾良く捕捉する。CRVの全個数は、全ての周波数で新規設計から3倍から4倍だけ異なる。新規設計は、ベースラインよりも静かである。更に、
図41及び
図42に示すCRV密度マップは、騒音低減における幾何学形状の修正の効率を示している。FINSIMは、ベースラインにおける発生源の場所を正確に指しているが、将来の設計改善の優先順位付けに対してこれらの発生源を重要度によってランク付けすることができる。
図39のc)に示すベントに近い区域は、ダクト内のより多くのCRVに対して最も寄与する区域である。
【0098】
渦及び共回転渦対の運動を追跡することにより、流れ誘起騒音発生源識別法(FINSIM)は、渦動特性と得られる四重極様騒音放射との間の明白な関連付けを行う。渦対の時間推移及び空間推移を解析することにより、これらの騒音発生源の場所、周波数、指向性、及び強度が回復される。標準的な2D孤立共回転渦(CRV)問題及び強制2Dせん断層流事例のシミュレーション及び解析は、基本概念の実行可能性を検証する。騒音発生源は、正確に位置付けられることが示され、その強度の時間推移は、流れ誘起騒音発生の適切な予測を与える。せん断層流の結果は、平均流によって騒音発生源の対流を捕捉する機能も示している。3次元流への本方法の拡張は、最初に乱流噴流構成に適用される。3D渦検出及び追跡法は、CRV識別を可能にし、渦密度及び騒音発生源の統計的な分布(この場合に、CRV密度によって表される)に対して適切な結果を与えると考えられる。設計比較のためのFINSIMの適用は、2つの異なるノズル幾何学形状による噴流、及び2つの異なるサイドミラーを有する自動車に対して明らかにされる。両方の調査において、予測される全体の騒音発生源傾向は、正確に捕捉される。サイドミラー比較では、FINSIMは、支配的な航空音響発生源の特定の場所を首尾良く提供し、一方のミラーが他方のものよりも音響的に何故優れているのかに関する明確な理解を与える。