特許第6381557号(P6381557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6381557肺線維症、肝線維症、皮膚線維症、及び心線維症の治療のための置換芳香族化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381557
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】肺線維症、肝線維症、皮膚線維症、及び心線維症の治療のための置換芳香族化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20180820BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20180820BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180820BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20180820BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20180820BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20180820BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20180820BHJP
   C07C 57/30 20060101ALI20180820BHJP
   C07C 57/32 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61K31/192
   A61K31/4418
   A61K31/496
   A61P43/00 105
   A61P1/16
   A61P9/00
   A61P11/00
   A61P17/02
   A61P43/00 121
   C07C57/30CSP
   C07C57/32
【請求項の数】18
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2015-561850(P2015-561850)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-510769(P2016-510769A)
(43)【公表日】2016年4月11日
(86)【国際出願番号】CA2014000237
(87)【国際公開番号】WO2014138907
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月8日
(31)【優先権主張番号】61/798,427
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516212946
【氏名又は名称】プロメティック・ファーマ・エスエムティ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PROMETIC PHARMA SMT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】リヌ・ギャニオン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ブリジット・グルー
(72)【発明者】
【氏名】リリアンヌ・ゲールツ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・サラ−ブルネ
(72)【発明者】
【氏名】マルタン・ルデュック
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・アボット
(72)【発明者】
【氏名】ブーロ・ザシャリエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フランソワ・ビアンヴヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ペロン
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−526052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/192
A61K 31/4418
A61K 31/496
A61P 1/16
A61P 9/00
A61P 11/00
A61P 17/02
A61P 43/00
C07C 57/30
C07C 57/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維性疾患に罹患する対象における線維症の進行を遅延させる、かつ/または、治療するための組成物であって、前記線維性疾患が、肺線維症、肝線維症、皮膚線維症、または心線維症であり;前記皮膚線維症が、瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイド性瘢痕および皮膚線維性障害から選択され;前記心線維症が心筋症であり;治療有効量の式:
【化1】
によって表される化合物、またはその薬学的に許容される塩を含み、式中、
Aは、Cアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CH、もしくはCH(OH)−(CH−CH(式中、nは、3もしくは4である)であり、
は、H、OH、もしくはFであり、
は、H、OH、F、もしくはCH−OHであり、
は、H、OH、F、もしくはCHPhであり、
は、H、OH、もしくはFであり、
Qは、
1)(CHC(O)OH(式中、mは、1もしくは2である)、
2)CH(F)−C(O)OH、
3)CF−C(O)OH、もしくは
4)C(O)−C(O)OHである、組成物。
【請求項2】
該化合物の前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄、または銅の塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
以下の化合物のうちの1つの遊離酸形態、またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【表1】
【表2】
【表3】
【請求項4】
前記線維性疾患が、肺線維症である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記肺線維症が、特発性肺線維症、サルコイドーシス、嚢胞性線維症、家族性肺線維症、珪肺症、石綿肺症、炭坑夫塵肺症、炭素塵肺症、過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitides)、無機粉塵の吸入により生じる肺線維症、感染病原体により生じる肺線維症、有害なガス、エアロゾル、化学粉塵、煙、もしくは蒸気の吸入により生じる肺線維症、薬物誘発間質性肺疾患、肺高血圧症、または慢性閉塞性肺疾患である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記線維性疾患が、肝線維症である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記肝線維症が、慢性肝疾患、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、D型肝炎ウイルス感染症、住血吸虫症、アルコール性肝疾患もしくは非アルコール性脂肪性肝炎、肥満症、糖尿病、タンパク質栄養不良、冠動脈疾患、自己免疫性肝炎、嚢胞性線維症、α1アンチトリプシン欠損症、原発性胆汁性肝硬変、薬物反応、及び毒素への曝露に起因する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記線維性疾患が、皮膚線維症である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が、0.01〜10%(w/w)の化合物または塩を含み、ヒトである対象に局所投与するためのものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
該瘢痕が、火傷、瘢痕、しわ、皮膚線条、日焼けによる損傷、化学的損傷、熱損傷、冷損傷、外傷、外科的傷害、放射線、または潰瘍に由来する、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
該潰瘍が、糖尿病性足部潰瘍、静脈性下肢潰瘍、または褥瘡である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記線維性疾患が、心線維症である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、1〜50mg/kgの化合物または塩を含み、ヒトである対象に経口投与するためのものである、請求項4、6、8または12に記載の組成物。
【請求項14】
第2の化合物と併用するための請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物であって、前記第2の化合物が、免疫抑制薬物、抗炎症性薬物、サイトカイン、モノクローナル抗体、多重受容体チロシンキナーゼ阻害剤、抗酸化剤、酵素阻害剤、インテグリン阻害剤、脂質受容体調節因子、またはチアゾリンジオン(thiazolindione)である、組成物。
【請求項15】
前記線維性疾患が、肺線維症であり、前記第2の化合物が、ピルフェニドンである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記線維性疾患が、肺線維症であり、前記第2の化合物が、ニンテダニブである、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
式:
【化2】
式中、
Aは、Cアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CH、もしくはCH(OH)−(CH−CH(式中、nは、3もしくは4である)であり、
は、H、OH、もしくはFであり、
は、H、OH、F、もしくはCH−OHであり、
は、CHPhであり、
は、H、OH、もしくはFであり、
Qは、
1)(CHC(O)OH(式中、mは、1もしくは2である)、
2)CH(CH)C(O)OH、
3)C(CHC(O)OH、
4)CH(F)−C(O)OH、
5)CF−C(O)OH、もしくは
6)C(O)−C(O)OHである、
によって表される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
化合物XXの遊離酸形態、または薬学的に許容される塩である、請求項17に記載の化合物または塩。
【表4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺線維症、肝線維症、皮膚線維症、及び心線維症を含む、対象における様々な線維性疾患及び状態の予防または治療のための置換芳香族化合物、それらの調製物、それを含む組成物、ならびにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肺線維症
肺線維症(pulmonary fibrosis)とも称される肺線維症(lung fibrosis)は、肺組織の瘢痕を伴う重大な医療状態である。この状態は、肺の肺胞及び間質組織が炎症を起こし、自身で修復をしようとして組織に瘢痕を形成する場合に生じる。肺線維症は、正常な肺実質が線維性組織(線維性瘢痕)で徐々に置換されることを伴う。正常な肺の瘢痕組織での置換は、酸素拡散能力において不可逆的な減少が生じる。現在、回復またはこの肺組織の瘢痕を反転する手段はない。
【0003】
肺線維症は、慢性炎症プロセス(サルコイドーシス、ウェゲナー肉芽腫症)、感染、環境作因(石綿、シリカ、ある特定のガスへの曝露など)、電離放射線への曝露(胸部の腫瘍を治療するための放射線療法など)、慢性状態(狼瘡)、及びある特定の薬物(例えば、アミオダロン、ブレオマイシン、ピンヤンマイシン、ブスルファン、メトトレキサート、及びニトロフラントイン)を含む多くの条件により生じ得る。
【0004】
過敏性肺炎として知られる状態では、肺の線維症は、吸入した有機塵または職業性化学物質に対する増大した免疫反応後に発達し得る。この状態は、ほとんどの場合、細菌、真菌、または畜産物で汚染された塵の吸入に起因する。
【0005】
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、肺組織の煙刺激によって引き起こされる、別の形態の肺線維症である(Gosker et al.(2003) “Myopathological features in skeletal muscle of patients with chronic obstructive pulmonary disease” Eur.Respir.J.22(2),280−285)。喫煙は、COPDの最も一般的な原因であり、大気汚染及び遺伝的性質などのいくつかの他の要因は、より小さい役割を果たす。発展途上世界において、大気汚染の最も一般的な源のうちの1つは、換気不良の調理及び暖房用の火からである。これらの刺激物への長期の曝露は、肺において炎症反応を引き起こし、末梢気道の狭窄、及び肺気腫として知られる肺組織の破壊をもたらす。診断は、肺機能試験によって測定される際の、気流の不良に基づく。ぜんそくとは対照的に、気流の減少は、現在承認されている医薬の投与では有意に改善しない。COPDは、既知の原因への曝露を減少させることによって予防することができる。これは、喫煙率を減少させる、ならびに屋内及び屋外の空気の質を改善するための努力を含む。COPD治療は、禁煙、ワクチン接種、リハビリテーション、ならびにしばしば気管支拡張剤及びステロイドの吸入を含む。一部の人々は、長期酸素療法または肺移植から恩恵を受け得る。急性の悪化の期間を有する者においては、医薬の使用の増加及び入院が必要とされ得る。
【0006】
嚢胞性線維症(CF)もまた、別の形態の肺線維症である。CFは、最も重篤には肺に、かつ膵臓、肝臓、及び腸にも影響を及ぼす常染色体性劣性遺伝病である。濃い粘性の分泌物につながる、上皮にわたる塩化物及びナトリウムの異常な輸送によって特徴付けられる。嚢胞性線維症という名称は、膵臓内の特徴的な瘢痕(線維症)及び嚢胞形成を指し、1930年代に最初に認識された。呼吸困難は、最も深刻な症状であり、抗生物質及び他の医薬で治療される頻繁な肺感染に起因する。他の症状(副鼻腔感染、成長不良、及び不妊を含む)は、身体の他の部分に影響を及ぼす。CFは、タンパク質、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)に対する遺伝子における突然変異によって引き起こされる。このタンパク質は、汗、消化液、及び粘液の成分を制御することが必要とされる。CFTRは、肺に位置する肺胞上皮などの上皮膜にわたる塩化物及びナトリウムイオンの移動を制御する。CFを有しないほとんどの人々は、CFTR遺伝子の2つのワーキングコピーを有し、障害の劣性の性質により、両方のコピーは、CFの発症に対して欠落していなければならない。CFは、いずれのコピーも正常に働かない(突然変異の結果として)時に発症し、したがって、常染色体性劣性遺伝を有する。有意な病理学的特性として末梢肺線維症を有する疾患である嚢胞性線維症及び特発性肺線維症におけるマスト細胞における研究(Andersson et.al.(2011)“Activated MC(TC)mast cells infiltrate diseased lung areas in cystic fibrosis and idiopathic pulmonary fibrosis”Respiratory Research 12(1),139)。CF及びIPFは異なる病因を有するが、線維性病変の基本的な病理学的特性は、過剰なコラーゲン沈着を含む。
【0007】
一部の対象において、慢性の肺の炎症及び線維症は、識別可能な原因を伴わずに発症する。これらの対象の大半は、特発性肺線維症(IPF)と呼ばれる状態を有する。IPFは、病因が未知の慢性進行性肺線維症である。プレドニゾンは、IPFの通常の治療であるが、肺線維症の前兆である炎症の減少が目的である他の免疫抑制療法と共に治療することができる。プレドニゾンは、肺機能の改善に対して適度の測定可能な効果を有するが、その長期有効性に関する乏しい証拠ならびにその安全性に関する懸念がその使用を制限する。実際、ほとんどの免疫抑制剤は、ほとんど治療効果を有さず、肺移植が必要であり得る。残念ながら、末期長期疾患(long disease)を有する患者において、移植の成功は限られており、患者の生存期間中央値は、診断後4〜6年である。そのため、尚も新規のIPFに有効な治療の必要性が存在する。
【0008】
IFN−γ及びミコフェノール酸モフェチルなどの肺における線維症の阻害または遅延に特異的に対処する候補薬物を用いて、いくつかの臨床試験が行われている。さらなる例としては、作用機構が十分に定義されていないがCTGFを減少させるように思われ、臨床試験においていくつかの結果を示したピルフェニドン、リゾホスファチジン酸受容体拮抗薬として機能し、標準的な肺線維症マウスモデル(ブレオマイシン誘発肺線維症)において顕著な抗線維化活性を呈する置換ビフェニルカルボン酸が挙げられる。そのため、この化合物は、IPFの治療の臨床試験中であると報告されている。経口的に活性な候補薬物を用いたタンパク質キナーゼ酵素の阻害または経口的に活性な抗酸化剤を用いた治療は、肺線維症に2つの治療アプローチ:複数のキナーゼ阻害剤(ニンテダニブなど)及びJNK(キナーゼ)阻害剤(タンジセルチブなど)を提供する。また、IPFの薬物候補は、抗酸化剤N−アセチルシステインを含む。しかしながら、今まで、タンパク質キナーゼ阻害剤及び抗酸化剤の進展には、毒性及び/または有効性の問題により、IPFの治療に関して疑問であった。タンパク質キナーゼ酵素及び関連受容体は、正常及び疾患状態にある細胞集団の間に広範に分布し、そのため、阻害は、特に急速に増殖する細胞集団の間に生じる毒性をもたらし得る。
【0009】
加えて、臨床試験は、IPFの治療のために、異なる線維化促進性(profibrotic)タンパク質(サイトカイン(CTGF、TGF−β、MCP−1、IL−4、及びIL−13)、インテグリン(αvβ6)、及び酵素(LOXL2酵素))を標的とするモノクローナル抗体を用いて進行中である。しかしながら、いくつかの問題は、毒性(タンパク質免疫原性を含む)、製造の困難(バッチの一貫性、スケールアップ、費用)、及び管理(冷蔵の必要性、経口的に活性ではない)を含む、IPFの治療(他の組換えタンパク質に適用される)のためのモノクローナル抗体の開発及び使用に関係する。
【0010】
さらに、研究試験が行われているが、どの薬物もこの状態を大幅に抑えることができる証拠はない。肺移植は、重度の症例において利用可能な唯一の治療選択肢である。残念ながら、末期肺疾患を有する患者において、移植の成功は限られている。そのため、尚も新規のIPFに有効な治療の必要性が存在する。したがって、尚も新規の簡便に投与される(経口的に活性な)有効な合成(容易に製造される)化合物が必要である。
【0011】
肝線維症
肝線維症または肝性線維症は、細胞外マトリクスタンパク質(コラーゲンを含む)の過剰な沈着、及び大半の慢性肝疾患において生じる後続の瘢痕プロセスである。時間と共に、進行した肝線維症は、肝臓の硬変をもたらす。硬変は、慢性肝疾患の最終期であり、一般に、不可逆的であり、長期の予後不良を伴う。進行期において、唯一の選択肢は、肝臓移植である。肝癌のリスクは、硬変と共に大幅に増加し、硬変は、前癌状態(肝細胞癌)と見なされる。実際、硬変及び肝癌は、世界的に、死亡原因の10の中に入る。そのため、尚も肝線維症及び後続の肝硬変に有効な新規治療の必要性が存在する。残念ながら、利用可能な治療の選択肢はわずかであり、ほとんどの治療は肝硬変の原因及び/または症状に対処することからなる。瘢痕及び硬変後の肝線維症を回復させる治療はない。肝臓移植は、進行期の線維症を有する患者に利用可能な唯一の治療である。したがって、肝線維症を回復させる、治療する、その進行を遅延する、または予防するために、あまり侵襲的ではないであろう代替的な方法が必要とされる。
【0012】
腹部における流体の貯留(腹水)は、肝硬変に関連する共通の問題である。治療の選択肢は、低ナトリウム食、利尿薬、及び針を腹腔内に挿入することによる(穿刺)流体の除去を含む。肝硬変は、アルコール乱用、ウイルス肝炎(B、C、及びD)、肥満症に関連する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、糖尿病、タンパク質栄養不良、冠動脈疾患、副腎皮質ステロイド、自己免疫性肝炎、遺伝性疾患(嚢胞性線維症、α−1アンチトリプシン欠損症等)、原発性胆汁性肝硬変、薬物反応、及び毒素への曝露に起因する。
【0013】
肝臓における線維症の阻害または遅延に具体的に対処する候補薬物を用いて、限られた数の臨床試験が行われている。しかしながら、これらの試験は、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)などの特定の肝疾患を標的とする。NASHは、脂肪肝(NAFLD)と炎症の組み合わせを指し、ほとんど、または全くアルコールを飲まない個人において生じる。システアミンは、強力な肝臓抗酸化剤グルタチオンの前駆体であり、グルタチオンの増加したインビボ産生がNASH関連肝疾患の改善をもたらすと考えられている。そのため、システアミンは、NASHを有する小児患者の臨床試験において評価段階にある。ビタミンE及びセレニウムなどの他の抗酸化剤が評価段階にあるが、NASHの治療におけるそれらの有効性は未知である。また、糖尿病ではない患者においてさえ、抗糖尿病薬の使用がNASHの治療に関して評価段階にある。このアプローチは、大半のNASH患者がインスリン耐性を有するという事実に対処する。再度、肝線維症、後続の瘢痕、及び肝硬変の治療に尚も新規の簡便に投与される(経口的に活性な)有効な化合物の必要性が存在する。
【0014】
皮膚線維症
皮膚線維症または皮膚性線維症は、皮膚の過剰な瘢痕であり、病的な創傷治癒応答の結果である。広範囲の線維性皮膚疾患が存在する:強皮症、腎性線維化皮膚症、混合性結合組織疾患、硬化性粘液水腫、浮腫性硬化症、及び好酸球性筋膜炎。化学物質への曝露または物理的要因(機械的外傷、火傷創傷)も、線維性皮膚疾患の潜在的な原因である。皮膚性線維症は、免疫、自己免疫、及び炎症機構により駆動され得る。コラーゲン産生と線維芽細胞による分解の平衡は、皮膚における線維化プロセスの病理生理において重要な役割を果たす。形質転換成長因子−β(TGF−β)及びインターロイキン−4(IL−4)などのある特定のサイトカインは、創傷(would)治癒及び線維症を助長する一方、インターフェロン−γ(IFN−γ)及び腫瘍壊死因子−α(TNF−α)など、他は、抗線維化である。正常な皮膚の線維芽細胞は、静止状態である。それらは、制御された量の結合組織タンパク質を合成し、低増殖活性を有する。皮膚傷害後、これらの細胞は、活性化される、すなわち、それらは、α−平滑筋アクチン(α−SMA)を増殖、発現し、大量の結合組織タンパク質を合成する。活性化された細胞は、筋線維芽細胞と呼ばれることが多い。
【0015】
創傷治癒プロセスの一部として、及び線維症を伴う瘢痕の形成は、皮膚線維症の間、特に瘢痕が顔及び/または身体の他の露出した部分に形成される場合、美容の観点から特に望ましくない。強皮症は、皮膚線維症を指し、強とは、硬いを意味し、皮とは、皮膚を意味する。しかしながら、皮膚線維症は、特に全身性強皮症の一部である場合、健康に重要な結果をもたらす場合がある。後者は、自己免疫が病因の結合組織疾患を指す。限られた皮膚強皮症は、顔及び足の皮膚に限定される一方、びまん性皮膚強皮症は、より多くの皮膚に広がり、内臓臓器に進行する場合がある。
【0016】
皮膚線維症を治療するための最もよく見られるアプローチは、免疫抑制療法の使用である。理論的根拠は、自己免疫による病因が後続の組織損傷及び線維症と共に疾患の炎症態様に関与していることである。試験された薬物は、メトトレキサート、ミコフェノール酸、モフェチル、シクロホスファミド、及びシクロスポリンを含む。ある程度の改善が免疫抑制療法で観察されたが、確定的な臨床データ及び実証可能な(demonstrable)有効性の欠如と共に、薬物の安全性に関する懸念が残る。
【0017】
皮膚線維症、線維性皮膚疾患、及び皮膚の病理的瘢痕を治療するための効果的な薬学的調製物を開発する必要性が存在する。
【0018】
心線維症
心疾患の特徴である心線維症は、心突然死、心室性頻脈性不整脈、左室(LV)機能不全、及び心不全の一因となると考えられている。心線維症は、筋細胞死、炎症、負荷の増大、肥大、ならびに多くのホルモン、サイトカイン、及び成長因子による刺激後に生じるフィブリル化されたコラーゲンの不均衡な沈着を特徴とする。
【0019】
心線維症は、心線維芽細胞の不適切な増殖による心臓弁の異常な肥厚を指す場合もあるが、より一般的には、心筋の線維芽細胞の増殖を指す。線維細胞は、通常、コラーゲンを分泌し、心臓のための構造的支持を提供するように機能する。過剰に活性化される時、このプロセスは、弁の肥厚及び線維症を引き起こし、白色組織が、主に三尖弁上で増大するが、肺動脈弁上でも生じる。肥厚及び柔軟性の損失は、最終的には、弁の機能不全及び右側の心不全につながる場合がある。
【0020】
心臓弁線維症または他の場所の線維症の最も明白な治療は、刺激薬物の停止及びセロトニンの産生からなる。重度の狭窄(血流の遮断)に対する外科的な三尖弁置換は、一部の患者において必要不可欠であった。また、赤ワインに見られる化合物レスベラトロールは、心線維症の発達を遅らせることが分かった。[Olson et al.(2005)“Inhibition of cardiac fibroblast proliferation and myofibroblast differentiation by resveratrol”American journal of physiology.Heart and circulatory physiology 288(3):H1131−8;Aubin,et al.(2008)“Female rats fed a high−fat diet were associated with vascular dysfunction and cardiac fibrosis in the absence of overt obesity and hyperlipidemia:Therapeutic potential of resveratrol”.The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 325(3):961−8。マイクロRNA阻害(例えば、miR−21)のような心線維症を無効にするより最新のアプローチが動物モデルにおいて試験されている。
【0021】
心線維症を予防または治療するための薬物は市販されておらず、効果的な薬学的調製物を開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0022】
驚くべきことに、本発明者は、本発明の化合物が、肺、肝臓、皮膚、及び心臓において、抗線維化活性を示すと判断した。本発明の化合物が良好な安全プロファイルを有することが分かり、本発明者は、本発明の化合物が、肺線維症、肝線維症、皮膚線維症、及び心線維症の予防/治療のための優れた薬物候補であると結論付けた。心線維症(「cardiac fibrosis」及び「heart fibrosis」)は、本明細書において同義的に使用され、同じものを示すことが意図される。
【0023】
より具体的には、本発明は、線維性疾患を予防する、かつ/または、その進行を遅延させる、かつ/または、治療することを必要とする対象に、それを行うための方法に関する。線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、皮膚線維症、または心線維症である。該方法は、治療有効量の式:
【化1】
によって表される化合物、またはその薬学的に許容される塩の投与を含み、式中、
Aは、Cアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CH、もしくはCH(OH)−(CH−CHであり、nは、3もしくは4であるか、または好ましくは、Cアルキル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CHであり、nは、3であるか、または好ましくは、Cアルキル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CH、もしくはCH(OH)−(CH−CHであり、nは、4であり、
は、H、OH、もしくはFであるか、または好ましくは、HもしくはOHであり、
は、H、OH、F、もしくはCH−OHであるか、または好ましくは、H、OH、もしくはFであるか、または好ましくはHもしくはOHであり、
は、H、OH、F、もしくはCHPhであるか、または好ましくは、H、OH、もしくはFであるか、または好ましくは、HもしくはOHであり、
は、H、OH、もしくはFであるか、または好ましくは、HもしくはOHであり、
Qは、
1)(CHC(O)OH(式中、mは、1もしくは2である)、
2)CH(CH)C(O)OH、
3)C(CHC(O)OH、
4)CH(F)−C(O)OH、
5)CF−C(O)OH、もしくは
6)C(O)−C(O)OHである。
【0024】
好ましい実施形態では、本化合物の薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄、または銅である。本化合物の好ましい薬学的に許容される塩は、ナトリウムである。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によると、化合物は、以下の化合物のうちの1つである。
【表1】
【表2】
【表3】
【0026】
実施形態において、線維性疾患は、肺線維症である。この実施形態において、治療有効量は、好ましくは、約1〜約50mg/kg、及び好ましくは、約1〜約20mg/kgである。化合物は、好ましくは、経口投与される。対象は、好ましくは、ヒトである。本発明の好ましい実施形態によると、肺線維症は、特発性肺線維症、サルコイドーシス、嚢胞性線維症、家族性肺線維症、珪肺症、石綿肺症、炭坑夫塵肺症、炭素塵肺症、過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitides)、無機塵の吸入により生じる肺線維症、感染病原体により生じる肺線維症、有害なガス、エアロゾル、化学塵、煙、もしくは蒸気の吸入により生じる肺線維症、薬物誘発間質性肺疾患、または肺高血圧症である。
【0027】
実施形態において、線維性疾患は、肝線維症である。この実施形態において、治療有効量は、好ましくは、約1〜約50mg/kgである。化合物は、好ましくは、経口投与される。対象は、好ましくは、ヒトである。本発明の好ましい実施形態によると、肝線維症は、慢性肝疾患、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、D型肝炎ウイルス感染症、住血吸虫症、アルコール性肝疾患もしくは非アルコール性脂肪性肝炎、肥満症、糖尿病、タンパク質栄養不良、冠動脈疾患、自己免疫性肝炎、嚢胞性線維症、α−1アンチトリプシン欠損症、原発性胆汁性肝硬変、薬物反応、及び毒素への曝露に起因する。
【0028】
ある実施形態では、線維性疾患は、皮膚線維症である。この実施形態において、化合物は、好ましくは、局所または経口投与される。局所投与される時、本発明の化合物の治療有効量は、好ましくは、約0.01〜約10%(w/w)である。対象は、好ましくは、ヒトである。経口投与される時、本発明の化合物の治療有効量は、好ましくは、約1〜約50mg/kgであり、対象は、ヒトである。本発明の好ましい実施形態によると、皮膚線維症は、瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイド性瘢痕、皮膚線維性障害、創傷治癒、創傷治癒遅延、乾癬、または強皮症である。該瘢痕は、火傷、外傷、外科的傷害、放射線、または潰瘍に由来し得る。該潰瘍は、糖尿病性足部潰瘍、静脈性下肢潰瘍、または褥瘡であってよい。
【0029】
ある実施形態では、線維性疾患は、心線維症である。この実施形態において、治療有効量は、好ましくは、約1〜約50mg/kg、及び好ましくは、約1〜約20mg/kgである。化合物は、好ましくは、経口投与される。対象は、好ましくは、ヒトである。
【0030】
前の実施形態の投薬量に加えて、上述の全ての線維性疾患に関して、本発明の化合物がヒトに局所投与される場合、化合物の治療有効量は、好ましくは、約0.01〜約10%(w/w)、もしくは約0.1〜10%(w/w)、もしくは約1.0〜約10%(w/w)、約0.1〜約5%(w/w)、もしくは約1.0〜約5%(w/w)に相当する。上述の全ての線維性疾患において、本発明の化合物がヒトに経口投与される場合、化合物の治療有効量は、好ましくは、約1〜約50mg/kg、もしくは約1〜約25mg/kg、もしくは約1〜約10mg/kg、約5〜約25mg/kg、もしくは約10〜20mg/kgである。
【0031】
好ましい実施形態によると、本発明はまた、哺乳類の肺、肝臓、皮膚、もしくは心臓などの臓器におけるコラーゲン分泌またはコラーゲン沈着に拮抗するための方法に関し、治療有効量の本発明の化合物のそれを必要とする哺乳類への投与を含み、臓器は、肺、肝臓、皮膚、もしくは心臓である。それを必要とする哺乳類は、肺、肝臓、皮膚、もしくは心臓などの臓器における過剰なコラーゲン分泌またはコラーゲン沈着下にある哺乳類である。通常、臓器における過剰なコラーゲン分泌またはコラーゲン沈着は、損傷または傷害に起因する。そのような損傷及び傷害は、臓器特異的であり、本明細書では背景の項、及び本明細書全体において詳細に説明される。以前で詳細に説明される治療有効量はまた、臓器におけるコラーゲン分泌またはコラーゲン沈着に拮抗するために本方法に適用される。本明細書で説明される投与経路もまた、本方法に適用される。化合物は、好ましくは、完全に、または部分的に、臓器におけるコラーゲン沈着のレベルに拮抗するように、十分な期間にわたって投与される。本明細書で使用される「拮抗する(antagonizing)」という用語は、「低減する(decreasing)」または「減少する(reducing)」を意味することが意図される。十分な期間は、1週、または1週〜1か月、または1か月〜2か月、または2か月以上であり得る。慢性状態に対して、本発明の化合物は、生涯、有利に投与することができる。
【0032】
本発明はまた、細胞におけるコラーゲン産生を減少させるための方法に関し、細胞を治療有効量の本発明の化合物と接触させることを含む。コラーゲンは、好ましくは、コラーゲン1である。コラーゲン産生は、好ましくは、コラーゲンmRNA発現、またはコラーゲンタンパク質の産生である。好ましい実施形態によると、細胞は、培養物内にあるか、臓器の一部であるか、または完全に生きた動物の一部である臓器の一部であり、前記動物としては、制限することなく、マウス、ラット、またはヒトが挙げられる。完全に生きた動物の一部である臓器の一部である場合、細胞を治療有効量の本発明の化合物と接触させるステップは、化合物を動物に投与することと同等である。完全に生きた動物の一部である臓器の一部であり、かつ生きた動物がヒトである場合、治療有効量の化合物は、好ましくは、約0.01〜約10%(w/w)、もしくは約0.1〜10%(w/w)、もしくは約1.0〜約10%(w/w)、約0.1〜約5%(w/w)、もしくは約1.0〜約5%(w/w)の局所投与、または好ましくは、約1〜約50mg/kg、もしくは約1〜25mg/kg、もしくは約1〜約10mg/kg、もしくは約5〜約25mg/kg、もしくは約10〜約20mg/kgの経口投与に対応する。培養された細胞の場合では、化合物の治療有効量は、0,01〜0,5mM、及び好ましくは約0,2mMである。
【0033】
別の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、治療有効量の第2の化合物と併用して投与され、第2の化合物は、好ましくは、肺線維症、肝線維症、もしくは皮膚線維症を予防もしくは治療するのに効果的である、またはそれらを潜在的に予防もしくは治療することが既知である治療薬剤である。別の好ましい実施形態において、化合物は、治療有効量の第2の化合物と併用して投与され、第2の化合物は、免疫抑制薬物、抗炎症性薬物、サイトカイン、モノクローナル抗体、多重受容体チロシンキナーゼ阻害剤、抗酸化剤、酵素阻害剤、インテグリン阻害剤、脂質受容体調節因子、またはチアゾリンジオン(thiazolindione)である。
【0034】
線維性疾患が肺線維症である、好ましい実施形態において、本発明の化合物は、治療有効量のピルフェニドンと併用して投与される。この場合、好ましい化合物は、化合物Iである。肺線維症に罹患する対象がヒトである場合、経口投与される時、化合物Iの治療有効量は、約1〜約50mg/kg、または約1〜25mg/kg、または約1〜約10mg/kg、約5〜約25mg/kg、または約10〜約20mg/kgであり、ピルフェニドンは、約10mg/kg〜約40mg/kg、または約1.0g/日〜約2.5g/日である。本発明の化合物及び第2の治療薬剤の併用は、単一の調製物において、または別個の調製物において、投与することができる。
【0035】
本発明は、線維性疾患を予防する、かつ/または、その進行を遅延させる、かつ/または、治療することを必要とする対象に、それを行うためのキットにも関する。本キットは、式:
【化2】
によって表される化合物、またはその薬学的に許容される塩(式中、
Aは、Cアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CH、もしくはCH(OH)−(CH−CHであり、nは、3もしくは4であるか、または好ましくは、Cアルキル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CHであり、nは、3であるか、または好ましくは、Cアルキル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CH、もしくはCH(OH)−(CH−CHであり、nは、4であり、
は、H、OH、もしくはFであるか、または好ましくは、HもしくはOHであり、
は、H、OH、F、もしくはCH−OHであるか、または好ましくは、H、OH、もしくはFであるか、または好ましくはHもしくはOHであり、
は、H、OH、F、もしくはCHPhであるか、または好ましくは、H、OH、もしくはFであるか、または好ましくは、HもしくはOHであり、
は、H、OH、もしくはFであるか、または好ましくは、HもしくはOHであり、
Qは、
1)(CHC(O)OH(式中、mは、1もしくは2である)、
2)CH(CH)C(O)OH、
3)C(CHC(O)OH、
4)CH(F)−C(O)OH、
5)CF−C(O)OH、もしくは
6)C(O)−C(O)OHである)と、
治療有効量の化合物を、該線維性疾患に罹患する前記対象に投与するための説明書と、を含み、線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、心線維症、または皮膚線維症である。
【0036】
線維性疾患が肺線維症、心線維症、または肝線維症である場合、キットは、好ましくは、約1〜約50mg/kgの化合物を、毎日、ヒトである対象に経口投与するための説明書をさらに含む。キットはまた、経口投与のための上で開示される治療有効量の化合物のうちのいずれかを投与するための説明書を含み得る。
【0037】
線維性疾患が皮膚線維症である場合、キットは、好ましくは、約0.01〜約10%(w/w)の化合物を、毎日、ヒトである対象に局所投与するための説明書、または約1〜約50mg/kgの化合物を、毎日、ヒトである対象に経口投与するための説明書をさらに含む。キットはまた、局所投与のための上で開示される治療有効量の化合物のうちのいずれかを投与するための説明書を含み得る。
【0038】
本発明はまた、式:
【化3】
によって表される新規化合物、またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、
Aは、Cアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CH、もしくはCH(OH)−(CH−CH(式中、nは、3もしくは4である)であり、
は、H、OH、もしくはFであり、
は、H、OH、F、もしくはCH−OHであり、
は、CHPhであり、
は、H、OH、もしくはFであり、
Qは、
1)(CHC(O)OH(式中、mは、1もしくは2である)、
2)CH(CH)C(O)OH、
3)C(CHC(O)OH、
4)CH(F)−C(O)OH、
5)CF−C(O)OH、もしくは
6)C(O)−C(O)OHである。
【0039】
この化合物の好ましい実施形態は、以下の構造を有する化合物XXである。
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】ビヒクル(水)(Bleo)での経口処理と比較した、100及び200mg/kgの用量の化合物Iでの経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルにおける体重損失の回復を示す。
図2】病変の有意な減少を示す、100及び200mg/kgの用量の化合物Iでの経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺の組織学的試料のHEP(Hemalun with Eosin/Ploxine)及びマッソン3色染色法を使用した評価を示す。
図3】100及び200mg/kgの用量の化合物Iでの経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織の顕微鏡写真を提示する。
図4】100及び200mg/kgの用量の化合物Iでの経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織のCTGF含有量を提示する。ラットCTGF TaqMan(登録商標)Gene Expression Assayを使用したリアルタイムPCRは、ラットGapdh内因性対照に対して正規化した。
図5】100及び200mg/kgの用量の化合物Iでの経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織のIL−23p19含有量を提示する。ラットIL−23p19 TaqMan(登録商標)Gene Expression Assayを使用したリアルタイムPCRは、ラットGapdh内因性対照に対して正規化した。
図6】100及び200mg/kgの用量の化合物Iでの経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織のコラーゲン1含有量を示す。ラットコラーゲン1 TaqMan(登録商標)Gene Expression Assayを使用したリアルタイムPCRは、ラットGapdh内因性対照に対して正規化した。
図7】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからのブレオマイシンによって影響を受けた肺の割合(%)を示す。
図8】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからのブレオマイシンによって影響を受けた肺、ならびに正常なマウス(ブレオマイシンなし)(対照)の肺組織の組織学的病変スコアを提示する。
図9】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからのブレオマイシンによって影響を受けた肺、ならびに正常なマウス(ブレオマイシンなし)(擬似)の肺組織における、濾液中の白血球に見出されるコラーゲンの割合(%)によって乗算される白血球浸潤(炎症ゾーン)の割合(%)によって判定され、かつマッソン3色染色法を使用した組織形態計測によって定量化される、病変スコアを示す。
図10】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のHEPで染色されたブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織の顕微鏡写真を提示する。
図11】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺、ならびに正常なマウス(ブレオマイシンなし)(対照)からの肺組織のAshcroftのスコアによって判定される肺線維症の視覚的格付けを提示する。
図12】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織、ならびに正常なマウス(ブレオマイシンなし)(対照)からの肺組織のTGF−β mRNA含有量を示す。
図13】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織、ならびに正常なマウス(ブレオマイシンなし)(対照)からの肺組織のCTGF mRNA含有量を示す。
図14】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織、ならびに正常なマウス(ブレオマイシンなし)(対照)からの肺組織のIL−23p19 mRNA含有量を示す。
図15】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織、ならびに正常なマウス(ブレオマイシンなし)(対照)からの肺組織のIL−6 mRNA含有量を示す。
図16】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織、ならびに正常なマウス(ブレオマイシンなし)(対照)からの肺組織のコラーゲン1 mRNA含有量を示す。
図17】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織、ならびに正常なマウス(ブレオマイシンなし)(対照)からの肺組織のフィブロネクチン(FN−1)mRNA含有量を示す。
図18】化合物I(200mg/kg)、ピルフェニドン(400mg/kg)、化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)の併用での経口処理、またはビヒクル(水)(Bleo)での経口処理後のブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルからの肺組織、ならびに正常なマウス(ブレオマイシンなし)(対照)からの肺組織のコラーゲン3 mRNA含有量を示す。
図19】化合物Iでの毎日の経口投与、またはビヒクル(水)(CCl)での経口投与後のCCl誘発肝線維症マウスモデルからの肝臓、ならびに正常なマウス(CClなし)(対照)からの肝臓における、ヒドロキシプロリンレベルを示す。
図20】化合物Iでの毎日の経口投与、またはビヒクル(水)(CCl)での経口投与後のCCl誘発肝線維症マウスモデルからの肝臓におけるコラーゲンレベルを示す。
図21】化合物I(200mg/kg)での毎日の経口投与、またはビヒクル(水)(CCl)での経口投与後のCCl誘発肝線維症マウスモデルからの肝臓、ならびに正常なマウス(CClなし)(対照)からの肝臓の顕微鏡写真を表す。
図22】毎日100mg/kg及び200mg/kgの用量の化合物I及び化合物Vでの毎日の経口投与、またはビヒクル(水)(CCl)での経口投与後のCCl誘発肝線維症マウスモデルからの肝臓における、組織形態計測(マッソン3色染色法)によって判定される、全肝臓領域にわたるコラーゲン含有量の割合(%)を示す。
図23】化合物I(0.5mM)単独、TGF−β単独、もしくは併用、またはそれらを伴わずに(未処理)培養される、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)におけるCTGF mRNA含有量を示す。ヒトCTGF TaqMan(登録商標)Gene Expression Assayを使用したリアルタイムPCRは、ヒトGAPDH内因性対照に対して正規化し、参照は、TGF−βで処理した細胞(RQ=1)である。
図24】化合物I(0.5mM)単独、TGF−β単独、もしくは併用、またはそれらを伴わずに(未処理)培養される、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)におけるコラーゲン1 mRNA含有量を示す。ヒトコラーゲン1 TaqMan(登録商標)Gene Expression Assayを使用したリアルタイムPCRは、ヒトGAPDH内因性対照に対して正規化し、参照は、TGF−βで処理した細胞(RQ=1)である。
図25】化合物I(0.5mM)単独、TGF−β単独、もしくは併用、またはそれらを伴わずに(未処理)培養される、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)におけるα−SMA mRNA含有量を示す。ヒトα−SMA TaqMan(登録商標)Gene Expression Assayを使用したリアルタイムPCRは、ヒトGAPDH内因性対照に対して正規化し、参照は、TGF−βで処理した細胞(RQ=1)である。
図26】擦過への処理された細胞の転移及び浸潤の減少を示す、化合物I(0.5mM)を伴って、及びそれを伴わずに培養される、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の擦過アッセイ(転移及び浸潤アッセイ)を表す。
図27】5/6−Nxラットにおけるカテーテル(カテーテルを伴うNX)の使用が、カテーテル(NX)を埋め込まれていない5/6−Nxラットと比較して、及び非腎摘出ラット(擬似)と比較して、心臓病変レベルの増加を誘発することを示す。
図28】非処理5/6−Nxラット(NX)と比較した、化合物Iでの静脈内(iv)投与、または化合物Iでの経口(po)投与後の5/6腎摘出されたカテーテル挿入された(5/6−Nx)ラットからの心臓における、組織学的評価(HPE及びマッソン3色染色法)によって判定される病変レベルを表す。
図29】非処理5/6−Nxラット(NX)と比較した、化合物Iでの静脈内(iv)投与、または化合物Iでの経口(po)投与後の5/6腎摘出されたカテーテル挿入された(5/6−Nx)ラットからの心臓における炎症レベルを表す。
図30】非処理5/6−Nxラット(NX)と比較した、化合物Iでの静脈内(iv)投与、または化合物Iでの経口(po)投与後の5/6腎摘出されたカテーテル挿入された(5/6−Nx)ラットからの心臓における壊死レベルを表す。
図31】非処理5/6−Nxラット(NX)及び非腎摘出ラット(擬似)と比較した、化合物Iでの静脈内(iv)投与、または化合物Iでの経口(po)投与後の5/6腎摘出されたカテーテル挿入された(5/6−Nx)ラットからの心臓におけるヒドロキシプロリン(コラーゲン)含有量を表す。
図32】化合物Iの経口投与で処理された5/6腎摘出されたカテーテル挿入された(5/6Nx)ラット、及び非処理5/6−Nxラット(NX)の心臓の40Xの拡大図での顕微鏡写真を示す。
図33】化合物Iの経口投与で処理された5/6腎摘出されたカテーテル挿入された(5/6Nx)ラット、及び非処理5/6−Nxラット(NX)の心臓の100Xの拡大図での顕微鏡写真を示す。
図34】化合物Iの静脈内投与で処理された5/6腎摘出されたカテーテル挿入された(5/6Nx)ラット、及び非処理5/6−Nxラット(NX)のの心臓の40Xの拡大図での顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書で使用される、用語「アルキル」は、5個もしくは6個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは直鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むことが意図される。上に定義されるアルキルの例としては、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソ−ペンチル、イソ−ヘキシル、t−ペンチル、及びt−ヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、本明細書で使用される、用語「アルケニル」は、5個もしくは6個の炭素原子を有し、少なくとも2個の炭素原子は2重結合により互いに結合され、EもしくはZの位置化学及びそれらの組み合わせを有する不飽和の直鎖もしくは分枝鎖の炭化水素基を含むことが意図される。上に定義されるアルケニルの例としては、1−ペンテニル、2−ペンテニル、1−ヘキセニル、及び2−ヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩は、1つ以上の非対称中心、キラル軸、及びキラル平面を含み得、よって、鏡像異性体、ジアステレオマー、及び他の立体異性形態を生じさせることができ、その後、(R)−または(S)−などの絶対立体化学に関して定義され得る。したがって、本発明は、全てのそのような可能な異性体、ならびにそれらのラセミ形態及び光学的に純粋な形態を含むことが意図される。光学的に活性な(+)及び(−)、(R)−及び(S)−、または(D)−及び(L)−の異性体は、キラル合成素子またはキラル試薬を使用して調製されるか、または逆相HPLCなどの従来の技法を使用して分解することができる。ラセミ混合物を調製し、その後、個々の光学異性体に分離するか、またはキラル合成によりこれらの光学異性体を調製することができる。鏡像異性体は、当業者に既知の方法によって、例えば、結晶化、ガス−液体もしくは液体クロマトグラフィ、または1つの鏡像異性体を鏡像異性体特異的試薬と選択的に反応させることによって後に分離することができるジアステレオ異性体塩の形成によって分解することができる。
【0043】
本明細書で使用される、用語「薬学的に許容される塩」は、生物学的に、ないしは別の方法で望ましくないものではない遊離酸の生物学的効果及び性質を維持するそれらの塩を意味することが意図される。これらの塩は、無機塩基もしくは有機塩基を有機酸に付加することから生じる。無機塩基から調製された塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄、または銅などを含むが、これらに限定されない。有機塩基から調製された塩は、一級、二級、及び三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及び塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、及びヒスチジン)の塩を含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩の例は、例えば、Berge et al.,“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66,1−19(1977)に記載される。本発明の化合物の好ましい塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、及びマグネシウム、より好ましくはナトリウムである。薬学的に許容される塩は、従来の化学的な方法によって、酸部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を、水中もしくは有機溶媒中、または水性/有機溶媒混合物中の化学量論量の適切な塩基と反応させることにより調製される。塩は、化合物の最終単離もしくは精製中に、または遊離酸形態の本発明の精製された化合物を、所望の対応する塩基と別個に反応させ、生成物である塩を単離することにより、原位置で調製することができる。
【0044】
本明細書において上に示され、本明細書において以下に例示されるように、本発明の化合物は、有益な薬学的性質を有し、対象における様々な疾患及び状態の予防ならびに/または治療において有用な薬学的用途を有し得る。本発明によって想定される医療及び薬学的用途は、肺線維症、肝線維症、心線維症、及び皮膚線維症に対処するものを含むが、これらに限定されない。
【0045】
用語「対象」は、肺線維症が生じ得る、またはそのような状態の影響を受けやすい生存生物を含む。用語「対象」は、哺乳類または鳥類などの動物を含む。好ましくは、対象は、哺乳類である。より好ましくは、対象は、ヒトである。さらにより好ましくは、対象は、治療を必要とするヒト患者である。
【0046】
本明細書で使用される、「予防する」または「予防」は、疾患もしくは障害を獲得するリスクの可能性(またはそれに対する感受性)の少なくとも減少を指す(すなわち、疾患の臨床症状のうちの少なくとも1つを、疾患に曝される、またはその素因になり得るが、疾患の症状をまだ経験していない、もしくは表さない患者において発達させない)ことが意図される。そのような患者を特定するための生物学的及び生理学的パラメータは、本明細書において提供され、医師にも周知である。
【0047】
対象を「治療」または「治療する」という用語は、疾患もしくは状態、疾患もしくは状態の症状、または疾患もしくは状態のリスク(またはそれに対する感受性)を遅延させる、緩慢にする、安定させる、回復させる、治癒する、軽減する、緩和する、変更する、修正する、その悪化を低下させる、寛解する、改善する、または影響を及ぼす目的で、本発明の化合物を対象に適用もしくは投与する(または本発明の化合物を対象からの細胞もしくは組織に適用または投与する)ことを含む。用語「治療する」は、緩解する、寛解する、悪化速度を低下させる、疾患の重篤度を低下させる、安定させる、症状を減少させる、または傷害、病態、もしくは状態を対象により忍容させる、変性もしくは減退の速度を遅延させる、変性の最終点をより小さく衰弱させる、または対象の身体的もしくは精神的健康を改善するなど、任意の客観的もしくは主観的パラメータを含む、傷害、病態、もしくは状態の治療または寛解の成功の兆候を指す。
【0048】
本発明は、それを必要とする対象において、肺線維症、肝線維症、心線維症、または皮膚線維症を予防及び/または治療するための方法、化合物、組成物、及びキットに関する。
【0049】
用語「肺線維症(pulmonary fibrosis)」または「肺線維症(lung fibrosis)」は、肺における過剰な線維性結合組織の形成または発達(線維症)、それによって、瘢痕(線維性)組織の発達をもたらすことを意味する。より正確には、肺線維症は、肺の肺胞及び間質組織の膨張ならびに瘢痕を引き起こす慢性疾患である。瘢痕組織は、健康な組織を置換し、炎症を引き起こす。この慢性炎症は、同時に、線維症の前兆である。この肺組織への損傷は、後に呼吸をますます困難にさせる肺の硬化を引き起こす。
【0050】
肺線維症は、小さい粒子(石綿、研削石、金属塵、タバコ煙に含まれる粒子、シリカ塵等)の吸入により誘発される肺への顕微鏡的損傷を含む、多くの異なる原因により生じ得る複雑な病気である。代替的に、肺線維症は、他の疾患(自己免疫疾患、ウイルスもしくは細菌感染等)の二次的影響として生じ得る。細胞毒性剤(例えば、ブレオマイシン、ブスルファン、及びメトトレキサート)、抗生物質(例えば、ニトロフラントイン、スルファサラジン)、抗不整脈薬(例えば、アミオダロン、トカイニド)、抗炎症剤(例えば、金、ペニシラミン)、違法薬物(例えば、クラック、コカイン、ヘロイン)などのある特定の薬物も肺線維症を引き起こす場合がある。しかしながら、肺線維症が既知の原因なく現れる場合、「特発性」または特発性肺線維症(IPF)と称される。
【0051】
肺線維性障害は、肺実質への急性傷害から始まり、慢性間質炎症、後に線維芽細胞の活性化及び増殖につながり、そして最終的には一般的な最終点である肺線維症及び組織破壊へ進行すると考えられる。現在の研究は、炎症がIPFにはあまり重要ではなく、これは、まだ知られていないある誘因(複数可)に応答した、主に線維芽細胞の活性化及び増殖の障害であると思われることを示す。広義には、線維性肺疾患の症状は、以下のように分類することができる:それらは、慢性、潜行性、及び緩徐進行性であってよい、それらは、回復、寛解、再発、または進行性経過を伴う亜急性であってよい、及びそれらは、劇症性、進行性、寛解、または回復経過を伴う急性であってよい。慢性、潜行性、及び緩徐進行性経過を伴う障害は、臨床的にIPFに似ており、通常、共通の病態(すなわち、UIP)を共有するものである。結合組織疾患(例えば、関節リウマチ、CREST症候群(皮膚石灰沈着症、レイノー病、食道運動障害、強指症、及び毛細血管拡張症)、症候群/進行性全身性強皮症、全身性狼瘡エリテマトーデス、混合性結合組織疾患、塵肺症(pneumoconioses)(例えば、石綿肺症、珪肺症)、慢性過敏性肺炎、及び薬物関連肺線維症(例えば、ブレオマイシンによる)の多くが、一般的にこのカテゴリーに入る。職業上の曝露(例えば、塵肺症)に関連する臨床的に明白な肺疾患の発達は、一般的に、曝露から何年も経った後に生じる。放射線線維症は、多くの場合、放射線曝露から数ヶ月から数年後に発達する。数ヶ月から数年の遅延時間は、肺毒性薬物の使用と線維性疾患の発達との間に生じ得る。作用は用量依存(例えば、ブレオマイシン)であってよいが、他の場合では、関係はあまり明白ではない。結合組織疾患の肺症状は、関節疾患の前に、それと同時に、またはその発症から数年後に発達し得る。肺サルコイドーシスは、発症が時折急性もしくは亜急性であるが、いくつかの場合では、長い時間を経て知らない間に存在し得る。様々な経過を伴う亜急性の症状は、特発性器質化肺炎(COP)により典型的に表される。COPは、多くの場合、インフルエンザのような病気の発症から数週間または数ヶ月後に発達する。経過は、様々であり、自発的に寛解するか、または進行するかのいずれかであり得る。この障害は、ステロイド療法に非常に応答性であるが、ステロイドが中止または減らされる場合、再発し得る。いくつかの場合では、COPは、末期の線維性肺疾患に進行し得る。急性発症の障害は、重度の肺傷害の特発性形態である、急性間質性肺炎(AIP)により典型的に表される。組織病理は、びまん性肺胞損傷を伴う成人呼吸促迫症候群のものである。患者は、肺疾患の既往歴がないか、または根底にある間質性疾患の加速期の一部としてのいずれかを示す。大半の患者は、急速に呼吸不全に進行する。一部の患者は、ステロイドまたは他の免疫抑制療法により好転し得る。
【0052】
用語「肝線維症」は、肝臓において過剰な線維性結合組織の形成または発達(線維症)、それによって、瘢痕(線維性)組織の発達をもたらすことを意味する。瘢痕組織は、線維症のプロセスにより健康な組織を置換し、その後、肝硬変をもたらす。
【0053】
用語「皮膚線維症」または「皮膚性線維症」は、上皮細胞または線維性結合組織の過剰増殖(線維症)、それによって、瘢痕(線維性)組織の発達をもたらすことを意味する。瘢痕組織は、線維症のプロセスによって健康な組織を置換し、全身性強皮症の前兆であり得る。皮膚線維症は、これらに限定されないが、血管及び静脈、顎下、胆嚢、甲状腺濾胞、汗腺管、卵巣、腎臓の管などの臓器もしくは腺の内部空洞、歯肉、舌、口蓋、鼻、咽頭、食道、胃、腸、直腸、肛門、及び膣の上皮細胞、真皮、瘢痕、皮膚、及び頭皮を含む、あらゆる皮膚組織及び上皮細胞の線維症を網羅することが意図される。本発明の化合物は、創傷の治癒及び以下の活動のうちの1つ以上の促進に関して活性である。
−コラーゲンの組織化の改善及び/または該創傷における創傷細胞充実性の減少
−該創傷における線維芽細胞及び上皮細胞によるコラーゲン過剰産生の減少
−該創傷における上皮間葉移行の減少
−該創傷における線維芽細胞遊走及び活性化の減少
−該創傷における皮膚肥厚の減少及び/または阻害
−炎症細胞の該創傷への動員の減少及び/または阻害。
【0054】
用語「心線維症(「cardiac fibrosis」または「heart fibrosis」)」は、心臓線維芽細胞の不適切な増殖による、心臓弁の異常な肥厚を意味するが、一般的には、心筋における線維芽細胞の増殖を指す。線維細胞は、通常、コラーゲンを分泌し、心臓のための構造的支持を提供するように機能する。過剰に活性化される時、このプロセスは、弁の肥厚及び線維症を引き起こし、白色組織が、主に三尖弁上で増大するが、肺動脈弁上でも生じる。肥厚及び柔軟性の損失は、最終的には、弁の機能不全及び右側の心不全につながる場合がある。
【0055】
一般に、予防的及び治療的使用は、本明細書に記載される化合物を、対象、好ましくは、それを必要とするヒト患者に投与することを含む。
【0056】
本発明による化合物は、同じ薬学的組成物または第2の薬学的組成物に含まれ得る治療有効量の第2の化合物と併用して投与され得る。第2の化合物は、有利に、免疫抑制剤(これらに限定されないが、シクロスポリン、アザチオプリン、シクロホスファミド、もしくはミコフェノール酸モフェチルを含む)、抗炎症薬(これに限定されないが、副腎皮質ステロイド薬(例えば、プレドニゾン)を含む)、サイトカイン(これらに限定されないが、インターフェロン−α、インターフェロンγ、インターロイキン12を含む)、モノクローナル抗体(これらに限定されないが、CTGF、TGF−β、MCP−1、IL−4、及びIL−13)、複数受容体チロシンキナーゼ阻害剤(これらに限定されないが、ニンテダニブ及びJNK(キナーゼ)阻害剤タンジセルチブ(CC−930)を含む)、抗酸化剤(これらに限定されないが、N−アセチルシステイン、ピルフェニドン、ビタミンE、S−アデノシルメチオニン、もしくはペニシラミンなど)、酵素阻害剤(これに限定されないが、リジルオキシダーゼ様2(LOXL2酵素)を含む)、インテグリン阻害剤(これに限定されないが、αβなど)、脂質受容体調節剤(これに限定されないが、リゾホスファチジン酸受容体拮抗薬を含む)、ピルフェニドン、またはチアゾリンジオンである。
【0057】
本発明の関連する態様は、本明細書に記載される本発明の化合物のうちの1つ以上を含む薬学的組成物及びキットに関する。本明細書において、上で示されるように、本発明の化合物は、肺線維症、肝線維症、心線維症、及び皮膚線維症を予防及び/または治療するのに有用であり得る。
【0058】
本発明の関連する態様は、肺線維症、肝線維症、心線維症、及び皮膚線維症に関する化合物の予防的及び治療的使用に関する。肺線維症は、いくつかの重度の合併症をもたらす可能性がある。線維性肺は、低下した酸素摂取能を有するため、血液酸素レベルの低下(低酸素血症)を発達し得る。酸素の欠乏は身体全体に影響を与える可能性がある。肺線維症の別の合併症は、肺高血圧症(肺動脈における血圧上昇)である。肺における瘢痕組織は、血液がそれらを通って流れるのをより困難にさせる可能性がある。圧力の増加は、心臓をより激しく機能させ、心臓の衰弱及び拡張につながり、そのポンプ効率を低下させ、心不全をもたらす。これは、個人が腹部における流体蓄積、足の膨張、または頚静脈における顕著な脈動を発達させる場合に疑われる。
【0059】
肝線維症は、肝臓の重度な機能不良をもたらす場合があり、肝臓の完全な機能不全をもたらし得る。
【0060】
皮膚線維症は、外科手術または事故による皮膚傷害後に重度の美容問題及び皮膚の硬化をもたらす細かい痕、永久的な傷跡、及び瘢痕につながる場合がある。
【0061】
心線維症は、心臓の重度な機能不良、及び死をもたらし得る。
【0062】
本明細書で使用される、用語「治療有効量」は、特定の障害、疾患、もしくは状態を治療または予防するために対象に投与される場合、その障害、疾患、もしくは状態のそのような治療または予防をもたらすのに十分である化合物の量を意味する。投薬量及び治療有効量は、例えば、採用される特定の薬剤の活性、対象の年齢、体重、一般健康状態、性別、及び食事、投与時間、投与経路、排出速度、ならびに任意の薬物併用、適用される場合、実施者が化合物が対象に対して有すること望む作用及び化合物の性質(例えば、生体利用性、安定性、有効性、毒性等)、ならびに対象が罹患する特定の障害(複数可)を含む、様々な因子により変動し得る。加えて、静脈内投与される治療有効量は、対象の血液パラメータ、例えば、脂質プロファイル、インスリンレベル、糖血症、または肝臓代謝に依存し得る。治療有効量は、疾患状態、臓器の機能、または根底にある疾患もしくは合併症の重篤度によっても変動する。そのような適切な用量は、本明細書に記載されるアッセイを含む任意の利用可能なアッセイを使用して決定され得る。本発明の化合物の1つ以上がヒトに投与される場合、医師は、例えば、最初は比較的低用量を処方し、その後、適切な応答が得られるまで用量を増加する。ヒトにおける本発明による化合物の経口投与のための用量は、ヒトにおいて、1〜50mg/kg、好ましくは5〜20mg/kg、より好ましくは5〜15mg/kg、またはより好ましくは約1〜約10mg/kgである。ヒトにおける本発明の化合物の局所投与の用量は、0.01〜10%(w/w)、好ましくは0.1〜5%(w/w)、より好ましくは1〜5%である。マウスの代謝は、ヒト代謝より速く任意の化合物を排除するため、マウスにおける化合物の試験において、用量は、10倍〜20倍増加され得る。
【0063】
本明細書で使用される、用語「薬学的組成物」は、本発明による少なくとも1つの化合物及び薬学的に許容されるビヒクルの存在を指す。
【0064】
「薬学的に許容されるビヒクル」は、化合物が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を指す。用語「薬学的に許容される」は、妥当な利益・リスク比に見合う過度の毒性、非適合性、不安定性、刺激、アレルギー応答等なく、ヒト及び下等動物の組織との接触に使用するのに適切である、薬物、薬剤、不活性成分等を指す。好ましくは、動物、より具体的には、ヒトに使用するために、連邦もしくは州政府の規制当局によって承認されるか、または承認可能である、あるいは米国薬局方もしくは他の一般的に認識される薬局方に列記される化合物または組成物を指す。薬学的に許容されるビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、それらの好適な混合物、及び植物油を含む溶媒または分散媒であってよい。薬学的に許容されるビヒクルのさらなる例としては、注射液USP用の水、水性ビヒクル(これらに限定されないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースと塩化ナトリウムの注射液、ならびに乳酸リンゲル注射液など)、水混和性ビヒクル(これらに限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなど)、ならびに非水性ビヒクル(これらに限定されないが、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。微生物の作用の防止は、抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等の添加よって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、またはポリアルコール(マンニトール及びソルビトールなど)が組成物に含まれる。注射可能な組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを、組成物中に含むことによってもたらされ得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、有効量の上述の式の化合物を含む。3−ペンチルフェニル酢酸、3−ヒドロキシ−5−ペンチルフェニル酢酸、及び3−フルオロ−5−ペンチルフェニル酢酸のナトリウム塩が特に好ましい。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明は、肺線維症、肝線維症、心線維症、及び皮膚線維症を予防及び/または治療するための薬学的組成物に関する。
【0067】
本発明の化合物は、利用可能な技術及び手順を使用して、投与前に薬学的組成物に製剤化され得る。例えば、薬学的組成物は、局所、経口、静脈内(iv)、筋肉内(im)、デポ−im、皮下(sc)、デポ−sc、舌下、鼻腔内、くも膜下腔内、局所、もしくは直腸経路によって投与するのに好適な様式に製剤化され得る。
【0068】
好ましくは、本発明の化合物(複数可)は、経口投与または局所投与され得る。製剤は、都合良く、単位投薬量形態で提示されてよく、薬学分野において周知のいずれの方法によって、調製されてよい。これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物を、薬学的に許容されるビヒクル(例えば、不活性希釈剤もしくは同化可能な食用担体)及び任意に、1つ以上の補助成分と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を、液体担体、または微粉化固形担体、またはその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて、産物を成形することによって調製される。そのような薬学的に有用な組成物中の治療薬の量は、好適な投薬量が得られる量である。
【0069】
経口投与に好適な本発明の製剤は、カプセル(例えば、硬殻または軟殻ゼラチンカプセル)、カシェ剤、ピル、錠剤、ロゼンジ剤、粉末、顆粒、ペレット、糖衣剤、例えば、コーティングされた(例えば、腸溶コーティング)もしくは非コーティングされた形態で、または水性もしくは非水性液体の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型液体エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップとして、または香錠剤として、または洗口剤としてであってよく、各々、活性成分として既定量の本発明の化合物を含む。本発明の化合物は、ボーラス、舐剤、もしくはペーストとして投与されるか、または対象の食事に直接組み込まれてもよい。さらに、ある特定の実施形態では、これらのペレットは、(a)即時もしくは迅速な薬物放出(すなわち、ペレット上にコーティングを有さない)を提供する、(b)例えば、経時的な持続性薬物放出を提供するためにコーティングされる、または(c)より良い消化管の忍容性のために腸溶コーティングでコーティングされるように製剤化され得る。コーティングは、本発明の化合物(複数可)が所望の位置の周辺に、または所望の作用を延長するために様々な時間で放出されるように、典型的には、pHもしくは時間依存コーティングを用いて、従来の方法によって達成され得る。そのような投薬量形態は、典型的には、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ワックス、及びシェラックのうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0070】
経口投与用の固形投薬量形態では、本発明の化合物は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどの1つ以上の薬学的に許容される担体、または以下のうちのいずれかと混合され得る:充填剤もしくは延長剤(デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、もしくはケイ酸など)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、もしくはアカシアなど)、保水剤(グリセロールなど)、崩解剤(寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムなど)、溶液遅延剤(solution retarding agent)(パラフィンなど)、吸収促進剤(4級アンモニウム化合物など)、湿潤剤(例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなど)、吸収剤(カオリン及びベントナイト粘土など)、潤滑剤(タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物)、ならびに着色剤。カプセル剤、錠剤、及びピルの場合、薬学的組成物はまた、緩衝剤を含んでもよい。類似する種類の固形組成物は、ラクトースもしくは乳糖などの賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用する軟質及び硬質のゼラチンカプセルの充填剤としても採用され得る。
【0071】
経口組成物は、典型的には、液体溶液、エマルジョン、懸濁液などを含む。そのような組成物の調製に好適な薬学的に許容されるビヒクルは、当該技術分野において周知である。シロップ、エリキシル剤、エマルジョン、及び懸濁液用の担体の典型的な成分は、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体スクロース、ソルビトール、及び水を含む。懸濁液に関して、典型的な懸濁剤は、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、トラガカント、及びアルギン酸ナトリウムを含み、典型的な湿潤剤は、レシチン及びポリソルベート80を含み、典型的な防腐剤は、メチルパラベン及び安息香酸ナトリウムを含む。経口液体組成物は、上に開示される甘味剤、風味剤、及び着色剤などの1つ以上の成分も含み得る。
【0072】
注射可能用途に好適な薬学的調製物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)、または分散液、及び滅菌注射可能溶液もしくは分散液の即時調製用の滅菌粉末を含み得る。全ての場合において、組成物は、滅菌でなければならず、容易に注射できる程度に流体でなければならない。これは、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の混入作用から保護されなければならない。滅菌注射可能溶液は、必要な量の治療薬を、必要に応じて、上に列挙された成分のうちの1つまたはその組み合わせを有する適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散液は、治療薬を、基本的な分散媒及び上に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。滅菌注射可能溶液の調製用の滅菌粉末の場合、調製方法は、活性成分(すなわち、治療薬)に、その事前に滅菌濾過された溶液からの任意の追加的な所望の成分を添加した粉末をもたらす、真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0073】
吸入によりエアロゾルとして投与するのに好適な薬学的製剤も提供される。これらの製剤は、本明細書のいずれの式の所望の化合物またはそのような化合物(複数可)の複数の固形粒子の溶液もしくは懸濁液を含む。例えば、本発明の化合物の金属塩は、吸入による投与のための活性薬学的成分(API)の微粒子の調製に適している物理的な化学性質を有することが期待されるが、これらの化合物の遊離酸形態ではない。所望の製剤は、小さなチャンバに配置され、噴霧され得る。噴霧は、薬剤もしくは塩を含む複数の液滴または固形粒子を形成するように、圧縮空気により、または超音波エネルギーにより達成され得る。液滴または固形粒子は、約0.5〜約5ミクロンの範囲の粒径を有するべきである。固形粒子は、本明細書に記載されるいずれの式の固形剤、またはその塩を、微粉化などの当該技術分野において既知の適切な様式で処理することによって、得ることができる。固形粒子または液滴の大きさは、例えば、約1〜約2ミクロンである。この点において、この目的を達成するために、市販の噴霧器が利用可能である。エアロゾルとして投与に好適な薬学的製剤は、液体形態であってよく、製剤は、水を含む担体中に、本明細書に記載されるいずれの式の水溶性薬剤、またはその塩を含む。噴霧化を受ける際、所望の大きさの範囲内の液滴の形成を十分にもたらすために、製剤の表面張力を低下させる界面活性剤が存在し得る。
【0074】
本発明の組成物は、例えば、対象の表皮もしくは上皮組織上に組成物を直接配置するか、または塗布することにより、または「パッチ」を介して経皮的に対象に局所投与することもできる。そのような組成物は、例えば、ローション、クリーム、溶液、ゲル、エマルジョン、及び固形を含む。これらの局所用組成物は、通常、約0.01〜約10%(w/w)、もしくは約0.1〜約5%(w/w)、もしくは約1〜約5%(w/w)の本発明の化合物の有効量を含み得る。局所投与に好適な担体は、典型的には、連続フィルムとして皮膚の適所に残留し、発汗または水中への浸漬により剥がれない。一般に、担体は、本来、有機的であり、治療薬に分散または溶解することが可能である。担体は、薬学的に許容される軟化薬、乳化剤、増粘剤、溶媒などを含み得る。担体は、胎脂を含み得る。局所製剤は、これらに限定されないが、保護剤、吸着剤、粘滑薬、軟化薬、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、緩衝剤、可溶化剤、皮膚浸透剤、及び界面活性剤などの1つ以上の賦形剤を含む。好適な保護剤及び吸着剤は、散布粉末、ステアリン酸亜鉛、コロジオン、ジメチコン、シリコーン、炭酸亜鉛、アロエベラゲル及び他のアロエ製品、ビタミンEオイル、アラトイン(allatoin)、グリセリン、ワセリン、及び酸化亜鉛を含むが、これらに限定されない。好適な粘滑薬は、ベンゾイン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルアルコールを含むが、これらに限定されない。好適な軟化薬は、動物及び植物の脂肪ならびに油、ミリスチルアルコール、ミョウバン、及び酢酸アルミニウムを含むが、これらに限定されない。好適な防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化デカリニウム、及び塩化セチルピリジニウムなどの4級アンモニウム化合物、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、及びチメロサールなどの水銀物質、アルコール物質、例えば、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、及びベンジルアルコール、抗菌エステル、例えば、パラオキシ安息香酸のエステル、ならびにクロロヘキシジン、クロロクレゾール、安息香酸、及びポリミキシンなどの他の抗菌剤を含むが、これらに限定されない。好適な抗酸化剤は、アスコルビン酸及びそのエステル、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、ならびにEDTA及びクエン酸などのキレート剤を含むが、これらに限定されない。好適な保湿剤は、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素、及びプロピレングリコールを含むが、これらに限定されない。本発明と共に使用するための好適な緩衝剤は、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、及びホウ酸緩衝剤を含むが、これらに限定されない。好適な可溶化剤は、4級塩化アンモニウム、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、レシチン、及びポリソルベートを含むが、これらに限定されない。好適な皮膚浸透剤は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクチルフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N−デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリル酸メチル、モノオレイン酸グリセロール、及びモノオレイン酸プロピレングリコール)、ならびにN−メチルピロリドンを含むが、これらに限定されない。
【0075】
対象薬剤の全身送達を達成するのに有用な他の組成物は、舌下、頬側、及び経鼻投薬形態を含み得る。そのような組成物は、典型的には、スクロース、ソルビトール、及びマンニトールなどの可溶性充填剤物質、ならびにアカシア、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの結合剤のうちの1つ以上を含む。上に開示される滑剤、潤滑剤、甘味剤、着色剤、抗酸化剤、及び風味剤も含まれ得る。
【0076】
本発明による化合物はまた、非経口、腹腔内、脊髄内、または脳内投与され得る。そのような組成物に関して、本発明の化合物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物、ならびに油中で調製され得る。通常の保管及び使用条件下において、この調製物は、微生物の成長を防止するための防腐剤を含み得る。
【0077】
肺線維症、肝線維症、心線維症、または皮膚線維症の予防/その進行の遅延/治療の方法に関して、本発明の方法は、本発明による少なくとも1つの化合物、または薬学的に許容される塩を、肺線維症、肝線維症、心線維症、または皮膚線維症の予防及び/またはその進行の遅延及び/または治療のための別の治療的に有効な薬剤の投与と一緒に同時投与することも含み得る。したがって、本発明は、上述の疾患または状態のうちのいずれか1つの症状もしくは合併症を予防、減少、または排除するための方法にも関する。本方法は、それを必要とする対象への本発明の化合物の投与を含み、第1の薬学的組成物が、本発明の少なくとも1つの化合物を含み、第2の薬学的組成物が、1つ以上の追加の活性成分を含み、全ての活性成分は、治療される疾患もしくは状態のうちの1つ以上の症状または合併症を阻害、減少、もしくは排除するのに十分な量で投与される。一態様では、第1及び第2の薬学的組成物の投与は、時間的に、少なくとも約2分間の間隔があけられる。好ましくは、第1の薬剤は、式Iの化合物である。第2の薬剤は、上文に記載される化合物のリストから選択され得る。
【0078】
本発明は、本明細書に示される実施形態に限定されることを意図しないが、本明細書に開示される原理及び新規特徴と一致する最も広い範囲と一致するものとする。
【0079】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、そうでないと明確な指示がない限り、対応する複数の参照物を含む。
【0080】
特に指示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分、反応条件、濃度、性質などの量を表す全ての数字は、全ての場合において、用語「約」により修飾されるものと理解する。少なくとも、各数字パラメータは、少なくとも、報告される有効桁数を考慮し、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。したがって、特に逆のことを指示しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数字パラメータは、得ることが求められる性質によって変動し得る近似値である。実施形態の広い範囲を示す数字範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例中に示される数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、実験、試験測定、統計分析などの変動に起因するある特定の誤差を本質的に含む。
【0081】
当業者であれば、ほんの日常的な実験を使用して、本明細書に記載される具体的な手順、実施形態、特許請求の範囲、及び実施例に対する多数の均等物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって網羅されると考えられる。本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、さらなる限定として解釈されてはならない。
【実施例】
【0082】
本明細書において以下に示される実施例は、式Iにより包含されるある特定の代表的な化合物の調製のための例示的な方法を提供する。いくつかの実施例は、本発明のある特定の代表的な化合物の例示的な使用を提供する。有効性に関して本発明の化合物をアッセイするための例示的な方法も提供される。
【0083】
実施例1:
3−ペンチルフェニル酢酸のナトリウム塩(化合物I)の調製のための実験手順
機器類:
全てのHPLCクロマトグラム及び質量スペクトルは、溶出剤として0.01%のTFAを用いた5分間にわたる50〜99%のCHCN−HOの勾配、ならびに溶出剤として0.01%のTFAを用いた、2mL/分の流速、または3分間にわたる50〜99%のCHCN−HOの勾配、続いて、3分間にわたる均一濃度及び2mL/分の流速で、分析C18カラム(250×4.6mm、5ミクロン)を使用してHP1100LC−MS Agilent機器により記録された。
【0084】
化合物I:Sonogashiraの修正された手順を使用した合成:
【化4】
ステップ1:
室温のエタノール(100mL)中の3−ブロモフェニル酢酸(5.02g、23.33mmol)の溶液/懸濁液に、濃硫酸(1mL)を添加した。次いで、無色の固体を80℃で終夜撹拌した。溶液を減圧下で濃縮した。残渣を、酢酸エチル(25mL)、水(25mL)で希釈し、2つの層を分離させた。水性層を、2×酢酸エチル(25mL)及び塩水(20mL)で抽出した。合わせた有機層を、2×重炭酸ナトリウム(25mL)の飽和溶液、塩水(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶液の濾過後、それを乾燥するまで蒸発させた。これにより、明黄色の油(5.4g、95%)を得た。H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.26(t,J=4.7Hz,3H)、3.57(s,2H)、4.15(Q,J=7.0及び14.3Hz,2H)、7.17〜7.26(m,2H)、7.38〜7.44(m,1H)、7.44(d,J=1.56Hz,1H)。
【0085】
ステップ2:
エチル(3−ブロモフェニル)アセテート(0.3g、1.24mmol)及びテトラブチルアンモニウムフルオリド水和物(0.97g、3.72mmol)の混合物を、封止した管において、PdCl(PPh(26mg、0.037mmol;3モル%)及び1−ペンチン(367μl、3.72mmol)で処理した。管を、80℃で2時間加熱した。混合物を水で処理し、ジエチルエーテルで抽出した。有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。酢酸エチル/ヘキサン0:1〜2:98で溶出するBiotage(商標)25Mカラム(シリカ)上での精製により、エチル(3−(ペンチン−1−イル)フェニル)アセテートを淡黄色油(0.23g、79%)として得た。
【0086】
ステップ3:
窒素雰囲気下で、エタノール(5mL)中のエチル[3−[ペンチン−1−イル]フェニル]−アセテート(0.23g、0.98mmol)に、炭素上のPd(10%、25mg、10%w/w)を添加した。混合物を、水素雰囲気下で室温で終夜、激しく撹拌した。溶液を濾過し、パラジウム/炭素をエタノール(20mL)で洗浄した。濾液を、シリカゲルで濃縮した。粗生成物を、10%ヘキサン/酢酸エチルの混合物を使用して、フラッシュクロマトグラフィによって精製した。澄んだ油を得た(0.21g、90%)。
【0087】
ステップ4:
テトラヒドロフラン(5mL)、メタノール(1.5mL)、及び水(1.5mL)中のエステル(0.2g、0.9mmol)の溶液に、0℃の水酸化リチウム(0.09g、3.6mmol)を添加した。反応混合物を終夜、室温で撹拌した。不溶性物質を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。次いで、残渣を2M塩酸で処理し、酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗材料を、40%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するBiotage(商標)40Mカラム(シリカ)上で精製した。これにより、純粋な(3−ペンチルフェニル)酢酸(0.19g、99%)を白色の粘着性の固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ0.90(t,J=7.0Hz,3H)、1.28〜1.38(m,4H)、1.61(qt,J=7.6Hz,15.0Hz,2H)、2.58(t,J=7.6Hz,2H)、3.56(s,2H)、7.07(m,3H)、7.20(m,1H);LRMS(ESI):m/z 207(MH);HPLC:4.3分。
【0088】
ステップ5:
エタノール(4mL)及び水(1mL)中の酸(0.19g、0.82mmol)の撹拌した溶液に、重炭酸ナトリウム(0.07g、0.82mmol)を添加した。反応混合物を室温で終夜、撹拌した。溶媒を蒸発させ、白色の粘着性の固体を水に溶解し、溶液を凍結乾燥させた。これにより、(3−ペンチルフェニル)酢酸(0.17g、92%)の純粋なナトリウム塩を白色の固体として得た。mp 110〜112℃;H NMR(400MHz,CDOD):δ0.89(t,J=6.8Hz,3H)、1.28〜1.37(m,4H)、1.60(qt,J=7.4Hz,15.0Hz,2H)、2.56(t,J=7.6Hz,2H)、3.43(s,2H)、6.96(m,1H)、7.12(m,3H);LRMS(ESI):m/z 207((MH);HPLC:4.3分。
【0089】
実施例2:
3−ヒドロキシ−5−ペンチルフェニル酢酸のナトリウム塩(化合物II)の調製のための実験手順
ステップ1:
アセトン(100mL)中のメチル[3,5−ジヒドロキシフェニル]アセテート(2.1g、11.5mmol)の溶液を、炭酸カリウム(2.4g、17.4mmol)、ヨウ化カリウム(383mg、2.31mmol)、及び臭化ベンジル(1.5mL、12.7mmol)で処理し、混合物を室温で終夜、撹拌した。反応物を水で抽出し、ジクロロメタン(×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空で蒸発させた。粗材料を、40%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するBiotage(商標)40Mカラム(シリカ)上で精製して、メチル[3−ベンジルオキシ−5−ヒドロキシフェニル]アセテート(1.0g、33%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.32〜7.42(m,5H)、6.48(d,J=1.4Hz,1H)、6.38〜6.39(m,2H)、4.99(s,2H)、3.69(s,3H)、3.53(s,2H)。
【0090】
ステップ2:
0℃のジクロロメタン(15mL)中のベンジルエーテル(1.04g、3.8mmol)の溶液を、N−フェニル−ビス(トリフルオロスルホニル)イミド(1.40g、3.9mmol)で処理し、次いで、トリエチルアミン(0.6mL、4.1mmol)をゆっくりと添加した。反応物を0℃で1時間、次いで、室温で1時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、次いで、ジエチルエーテル(×2)で抽出した。合わせた有機抽出物を、1M水酸化ナトリウム水溶液、水(×2)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、次いで、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。25%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するBiotage(商標)40Mカラム(シリカ)上での精製により、メチル[3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル]アセテート(1.2g、79%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.36〜7.46(m,5H)、6.98(s,1H)、6.97(s,1H)、6.84(s,1H)、5.06(s,2H)、3.72(s,3H)、3.63(s,2H)。
【0091】
ステップ3:
ジメトキシエタン(5mL)中のE−1−ペンテン−1−イルボロン酸ピナコールエステル(0.8g、3.9mmol)の溶液を、ジメトキシエタン(5mL)中のトリフラート(1.2g、3.0mmol)の溶液で処理した。溶液を、パラジウムゼロ(0.7g、0.6mmol)及び2M炭酸ナトリウム水溶液(1.3mL、2.6mmol)で処理した。次いで、混合物を90℃で3日加熱した。反応物を室温まで冷却し、セライトを通じて濾過した。濾液を真空で蒸発させ、粗材料を、5%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するBiotage(商標)25Mカラム(シリカ)上で精製して、メチル[3−ベンジルオキシ−5−[ペント−1−エニル]フェニル]アセテート(0.4g、40%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.36〜7.47(m,5H)、6.90〜6.92(m,2H)、6.79(dd,J=2.0,2.0Hz,1H)、6.35(d,J=15.9Hz,1H)、6.24(dt,J=15.9,6.8Hz,1H)、5.07(s,2H)、3.70(s,3H)、3.59(s,2H)、2.20(td,J=7.4,6.8Hz,2H)、1.51(dt,J=7.4Hz,2H)、0.98(t,J=7.4Hz,3H)。
【0092】
ステップ4:
エタノール(13mL)中のアルケン(0.4g、1.2mmol)の溶液を、炭素上の1%パラジウム(40mg)で処理した。混合物を、室温で終夜、水素の1気圧下で撹拌した。反応物を濾過し、真空で蒸発させ、15%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するBiotage(商標)25Sカラム(シリカ)上で精製して、メチル[3−ヒドロキシ−5−ペンチルフェニル]アセテート(0.3g、93%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ6.64(s,1H)、6.58〜6.60(m,2H)、3.70(s,3H)、3.55(s,2H)、2.51(t,J=7.7Hz,2H)、1.55〜1.59(m,2H)、1.28〜1.34(m,4H)、0.88(t,J=7.0Hz,3H)。
【0093】
ステップ5:
エタノール(12mL)中のエステル(0.3g、1.3mmol)の溶液を、水(3mL)及び水酸化リチウム(155mg、6.4mmol)で処理し、混合物を室温で終夜、激しく撹拌した。反応混合物を水(100mL)で希釈し、ジクロロメタンで洗浄し、次いで、1M塩酸水溶液でpH1に酸性化し、ジクロロメタン(×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を、硫酸ナトリウム(0.3g、95%)上で乾燥させた。この材料を、さらなる精製なしで使用した。H NMR(400MHz,CDCl):δ6.66(s,1H)、6.58〜6.59(m,2H)、3.55(s,2H)、2.52(t,J=7.7Hz,2H)、1.55〜1.59(m,2H)。
【0094】
ステップ6:
エタノール(6mL)及び水(6mL)中の酸(0.27g、1.23mmol)の溶液を、重炭酸ナトリウム(0.1g、1.2mmol)で処理し、反応物を室温で数時間、撹拌した。溶媒を真空で濃縮し、溶液を水で希釈し、濾過し(0.2μm)、凍結乾燥させて、ナトリウム[3−ヒドロキシ−5−ペンチルフェニル]アセテートを白色の固体(0.3g、95%)として得た。mp 63〜66℃;H NMR(400MHz,CDOD):δ6.63(s,1H)、6.58(s,1H)、6.42(s,1H)、3.36(s,2H)、2.48(t,J=7.6Hz,2H)、1.55〜1.62(m,2H)、1.26〜1.38(m,4H)、0.89(t,J=6.8Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ177.79,155.31,142.36,137.62,119.08,111.66,111.18,43.70,34.17,29.95,29.56,20.87,11.64;LRMS(ESI):m/z 445.2(2M−2Na+3H)、m/z 223(M−Na+2H);HPLC:3.5分。
【0095】
実施例3:
3−フルオロ−5−ペンチルフェニル酢酸のナトリウム塩(化合物III)の調製のための実験手順
【化5】
ステップ1:
窒素下の0℃のテトラヒドロフラン(6mL)中の3−ブロモ−5−フルオロ安息香酸(2.74g、12.5mmol)の溶液を、12分にわたって、少量ずつ、ボラン−テトラヒドロフラン錯体(1M、15mL、15mmol)で処理し、次いで、反応物を、0℃で70分間、及び室温で22時間、撹拌した。反応物を、メタノール(10mL)の添加によって反応停止させ、メタノール混合物を室温で3時間撹拌し、次いで、メタノールから、次いで、酢酸エチルからの共蒸発と共に、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。材料を酢酸エチル(200mL)に溶解し、溶液を0.5M水酸化ナトリウム水溶液(200mL)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、次いで、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、3−ブロモ−5−フルオロベンジルアルコール(1.79g、67%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.29(s,1H)、7.15(ddd,JHF=8.2Hz,JHH=2.2,1.8Hz,1H)、7.00〜7.02及び7.02〜7.04(dm,JHF=9.2Hz,JHH=非分離,1H)、4.66(s,2H)、2.04(br s,1H);19F NMR(377MHz,CDCl):δ−111.05(dd,JHF=9.3,8.0Hz,1F);13C NMR(101MHz,CDCl):δ162.87(d,JCF=250.6Hz)、145.42(d,JCF=6.9Hz)、125.45(d,JCF=3.1Hz)、122.69(d,JCF=9.2Hz)、118.01(d,JCF=24.6Hz)、112.51(d,JCF=21.5Hz)、63.60(d,JCF=2.3Hz)。
【0096】
ステップ2:
ジクロロメタン(45mL)中の3−ブロモ−5−フルオロベンジルアルコール(1.79g、8.39mmol)及びトリフェニルホスフィン(3.65g、10.10mmol)の溶液を、10分にわたって、少量ずつ、四臭化炭素(3.34g、10.10mmol)で処理し、次いで、反応物を室温で終夜、撹拌した。溶媒を真空で蒸発させ、残渣をジエチルエーテル(diethyleher)(50mL)で処理した。得られた白色のスラリを室温で撹拌し、次いで、セライトを通じて濾過した。残渣をジエチルエーテル(2×50mL)で洗浄し、合わせた濾液及び洗浄液を真空で蒸発させて、粗生成物を得た。2%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するシリカパッド上での精製により、3−ブロモ−5−フルオロ臭化ベンジル(2.21g、98%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.33(s,1H)、7.18(ddd,JHF=8.2Hz,JHH=2.0,2.0Hz,1H)、7.05(ddd,JHF=9.0Hz,JHH=1.8,1.6Hz,1H)、4.38(s,2H);19F NMR(377MHz,CDCl):δ−110.19〜−110.14(m,1F);13C NMR(101MHz,CDCl):δ162.67(d,JCF=252.1Hz)、141.61(d,JCF=8.5Hz)、128.17(d,JCF=3.1Hz)、122.94(d,JCF=10.0Hz)、119.39(d,JCF=24.6Hz)、115.34(d,JCF=22.3Hz)、31.31(d,JCF=2.3Hz)。
【0097】
ステップ3:
水(0.35mL)中のシアン化ナトリウム(0.38g、7.73mmol)の懸濁液を、ジメチルホルムアミド(2.6mL)中の3−ブロモ−5−フルオロ臭化ベンジル(1.38g、5.15mmol)の溶液で処理し、反応物を封止した管において、3時間、75℃で加熱した。反応物を室温まで冷却し、酢酸エチル(50mL)と2.5% w/v重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)との間で分割した。水性相をさらなる量の酢酸エチル(50mL)で抽出し、合わせた抽出物を水(2×50mL)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。10%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するBiotage(商標)40iMカラム(シリカ)上での精製により、2−[3−ブロモ−5−フルオロフェニル]アセトニトリル(0.64g、58%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.26〜7.28(m,1H)、7.17〜7.19及び7.19〜7.21(dm,JHF=8.0Hz,JHH=非分離,1H)、6.98〜7.00及び.7.00〜7.02(dm,JHF=8.8Hz,JHH=非分離,1H)、3.73(s,2H);19F NMR(377MHz,CDCl):δ−109.46(dd,JHF=8.0,8.0Hz,1F);13C NMR(101MHz,CDCl):δ162.90(d,JCF=252.1Hz)、133.95(d,JCF=8.5Hz)、127.24(d,JCF=3.8Hz)、123.53(d,JCF=10.0Hz)、119.22(d,JCF=23.8Hz)、117.00,114.50(d,JCF=23.1Hz)、23.30(d,JCF=1.5Hz)。
【0098】
ステップ4:
ジメトキシエタン(13mL)中の臭化アリール(0.55g、2.58mmol)及び(E)−1−ペンテン−1−イルボロン酸ピナコールエステル(0.61g、3.13mmol)の溶液を、水(3mL)中の炭酸ナトリウム(0.55g、5.17mmol)の溶液で処理した。溶液を窒素で脱酸素化し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.15g、0.13mmol;5モル%)で処理した。次いで、混合物を、封止した管において、17時間、90℃で加熱した。反応物を室温まで冷却し、酢酸エチル(50mL)と1M塩酸水溶液(50mL)との間で分割した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。(3%)酢酸エチル/ヘキサンで溶出するBiotage(商標)40iMカラム(シリカ)上での精製により、(E)−2−[3−フルオロ−5−[ペント−1−エニル]フェニル]アセトニトリル(0.43g、82%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.04(s,1H)、6.97(ddd,JHF=9.8Hz,JHH=2.0,1.5Hz,1H)、6.82〜6.85(m,1H)、6.31(d,J=15.8Hz,1H)、6.25(ddd,J=15.8,5.9,0Hz,1H)、3.68(s,2H)、2.18(td,J=7.2,5.4Hz,2H)、1.49(qt,J=7.4,7.4Hz,2H)、0.95(t,J=7.4Hz,3H);19F NMR(377MHz,CDCl):δ−112.93(dd,JHF=10.6,9.3Hz,1F);13C NMR(101MHz,CDCl):δ163.43(d,JCF=246.0Hz)、141.44(d,JCF=8.5Hz)、133.99,132.37(d,JCF=8.5Hz)、128.42(d,JCF=2.3Hz)、121.60(d,JCF=3.1Hz)、117.66,113.40(d,JCF=23.1Hz)、112.21(d,JCF=22.3Hz)、35.22,23.49(d,JCF=2.3Hz)、22.51,13.94。
【0099】
ステップ5:
メタノール(42mL)中のフェニルアセトニトリル誘導体(0.43g、2.10mmol)の溶液を、水酸化ナトリウム水溶液(5M;21mL、105mmol)で処理し、混合物を、封止した管において、4.5時間、75℃で加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、6M塩酸水溶液(21mL)で反応停止させ、室温で10分間撹拌し、次いで、酢酸エチル(2×75mL)で抽出した。有機抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液(75mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。70%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するBiotage(商標)40iMカラム(シリカ)上での精製により、所望の生成物のメチルエステル(0.09g、18%)、及び約95%純粋な(E)−2−[3−フルオロ−5−[ペント−1−エニル]フェニル]酢酸(0.22g、48%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ11.17(br s,1H)、7.02(s,1H)、6.98(ddd,JHF=9.8Hz,JHH=2.0,1.8Hz,1H)、6.85(ddd,JHF=9.0Hz,JHH=1.8,1.6Hz,1H)、6.33(d,J=15.8Hz,1H)、6.25(dt,J=15.8,6.4Hz,1H)、3.62(s,2H)、2.17〜2.22(m,2H)、1.51(qt,J=7.4,7.4Hz,2H)、0.96(t,J=7.4Hz,3H);19F NMR(377MHz,CDCl):δ−114.10(dd,JHF=9.3,9.3Hz,1F)。
【0100】
ステップ6:
アセトン(5mL)中の部分的に精製された酸(0.28g、1.26mmol)の溶液を、炭酸カリウム(0.26g、1.90mmol)、ヨウ化カリウム(0.04g、0.25mmol)、及び臭化ベンジル(0.18mL、1.5mmol)で処理し、反応物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を、酢酸エチル(25mL)と1M塩酸水溶液(25mL)との間で分割した。次いで、有機相を、飽和塩化ナトリウム水溶液(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。5%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するBiotage(商標)40iMカラム(シリカ)上での精製により、ベンジル(E)−2−[3−フルオロ−5−[ペント−1−エニル]フェニル]アセテート(0.3g、75%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.32〜7.40(m,5H)、7.03(s,1H)、6.97(ddd,JHF=10.0Hz,JHH=2.3,1.5Hz,1H)、6.86(ddd,JHF=9.0Hz,JHH=2.0,1.7Hz,1H)、6.33(d,J=15.8Hz,1H)、6.23(dt,J=15.8,6.5Hz,1H)、5.16(s,2H)、3.64(s,2H)、2.17〜2.23(m,2H)、1.52(qt,J=7.4,7.4Hz,2H)、0.97(t,J=7.4Hz,3H);19F NMR(377MHz,CDCl):δ−114.34(dd,JHF=9.3,9.3Hz,1F);13C NMR(101MHz,CDCl):δ171.08,163.32(d,JCF=244.4Hz)、140.65(d,JCF=7.7Hz)、136.17(d,JCF=8.5Hz)、135.93,133.05,128.95(d,JCF=3.1Hz)、128.84,128.52(d,JCF=9.2Hz)、128.48,123.09(d,JCF=2.3Hz)、114.78(d,JCF=22.3Hz)、111.46(d,JCF=22.3Hz)、67.04,41.26(d,JCF=1.5Hz)、35.27,22.63,14.00。
【0101】
ステップ7:
酢酸エチル(2mL)中のベンジルエステル(0.16g、0.50mmol)の溶液を、炭素上のパラジウム(1% w/w Pd;15mg)で処理した。混合物を水素で脱気し、室温で終夜、水素の1気圧下で撹拌した。反応物を濾過し、真空で蒸発させて、2−[3−フルオロ−5−ペンチルフェニル]−酢酸(0.11g、97%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ11.47(br s,1H)、6.89(s,1H)、6.81〜6.86(m,2H)、3.62(s,2H)、2.60(t,J=7.8Hz,2H)、1.58〜1.66(m,2H)、1.28〜1.41(m,4H)、0.92(t,J=6.8Hz,3H);19F NMR(377MHz,CDCl):δ−114.34(dd,JHF=9.3,9.3Hz,1F);13C NMR(101MHz,CDCl):δ178.15,163.08(d,JCF=246.0Hz)、145.02(d,JCF=7.7Hz)、135.04(d,JCF=8.5Hz)、125.49(d,JCF=2.3Hz)、114.49(d,JCF=20.8Hz)、113.83(d,JCF=22.3Hz)、41.01(d,JCF=1.5Hz)、35.87(d,JCF=1.5Hz)、31.67,31.03,22.74,14.24。
【0102】
ステップ8:
エタノール(3mL)中の酸(0.11g、0.49mmol)の溶液を、水(0.75mL)中の重炭酸ナトリウム(0.041g、0.49mmol)の溶液で処理し、反応物を室温で17時間、撹拌した。エタノールを真空で蒸発させ、残留する水性シロップを水(10mL)で希釈し、濾過し(0.2μm)、凍結乾燥して、ナトリウム2−[3−フルオロ−5−ペンチルフェニル]アセテートを白色の固体(0.12g、99%)として得た。mp 120〜123℃;H NMR(400MHz,CDOD):δ6.94(s,1H)、6.87(ddd,JHF=9.8Hz,JHH=2.0,2.0Hz,1H)、6.70(ddd,JHF=10.0Hz,JHH=2.0,2.0Hz,1H)、3.45(s,2H)、2.56(t,J=7.7Hz,2H)、1.58〜1.63(m,2H)、1.26〜1.39(m,4H)、0.90(t,J=7.0Hz,3H);19F NMR(377MHz,CDOD):δ−117.54(dd,JHF=10.0,10.0Hz,1F);13C NMR(101MHz,CDOD):δ178.66,163.04(d,JCF=242.9Hz)、145.07(d,JCF=7.7Hz)、140.42(d,JCF=8.5Hz)、125.03(d,JCF=2.3Hz)、112.99(d,JCF=22.3Hz)、112.30(d,JCF=20.8Hz)、44.96,35.53(d,JCF=1.5Hz)、31.46,31.00,22.45,13.30;HPLC:1.2分。
【0103】
実施例4:
化合物IV、E−(3−ペント−1−エニル−フェニル)酢酸のナトリウム塩
上の化合物は、E−(3−ペント−1−エニル−フェニル)酢酸メチルエステルで開始して、化合物Iと同様に調製した。後者は、Suzuki条件の下、3−ブロモフェニル酢酸メチルエステルを、トランス−1−ペンテニルボロン酸ピナコールエステルと反応させることによって調製した。白色の固体;H NMR(400MHz,CDOD):δ=7.32(s,1H)、7.11〜7.18(m,3H)、6.35(d,J=15.7Hz,1H)、6.20〜6.27(m,1H)、3.44(s,2H)、2.19(m,2H)、1.45〜1.54(m,2H)、0.96(t,J=7.4,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ=179.26,138.25,137.92,130.32,130.04,128.06,127.59,126.60,123.52,45.21,35.06,22.52,12.89;LRMS(ESI):m/z 205(MH);HPLC:4.1分。
【0104】
実施例5:
化合物V、(2−ヒドロキシ−5−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上の化合物は、5−ブロモ−2−メトキシフェニル酢酸メチルエステルで開始して、化合物Iと同様に調製した。メトキシ基の脱メチル化は、三臭化ホウ素(1M/CHCl)の溶液を使用して、−78℃で1時間、次いで、0℃で20分間、行われた。白色の固体;H NMR(400MHz,CDOD):δ=6.88(m,2H)、6.71(d,J=8.6Hz,1H)、3.50(s,2H)、2.49(t,J=7.6Hz,2H)、1.54〜1.62(m,2H)、1.29〜1.38(m,4H)、0.91(t,J=7.0Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ=180.08,154.04,134.03,130.26,127.36,124.15,116.57,42.48,34.91,31.60,31.42,22.45,13.24;LRMS(ESI):m/z 177(MH−CO−NaOH);HPLC:3.7分。
【0105】
実施例6:
化合物VI、3−(4−フルオロ−3−ペンチルフェニル)プロピオン酸のナトリウム塩
上の化合物は、E−メチル3−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)アクリレートで開始して、化合物Iと同様に調製した。後者は、室温の乾燥ジクロロメタン中の3−ブロモ−4−フルオロベンズアルデヒド及びエトキシカルボニルメチレントリフェニルホスホランの溶液を混合することによって調製した。白色の固体;H NMR(400MHz,CDOD):δ=6.67〜6.74(m,2H)、6.58(m,1H)、2.49(t,J=7.6Hz,2H)、2.23(t,J=7.4Hz,2H)、2.15(m,2H)、1.25(m,2H)、0.99〜1.06(m,4H)、0.61(t,J=6.7Hz,3H);13C NMR(101MHz,DO):δ=182.38,160.69,158.28,137.37,130.34,129.58,126.84,114.99,39.68,31.51,29.92,28.90,22.31,16.66;LRMS(ESI):m/z 221(MH−HO);HPLC:4.5分。
【0106】
実施例7:
化合物VII、3−(3−ペンチルフェニル)プロピオン酸のナトリウム塩
上の化合物は、3−オキソ−3−ブロモフェニルプロピオン酸エチルエステルで開始して、化合物Iと同様に調製した。ケトン基及び二重結合は、水素圧力下で、エタノール中のパラジウム/炭素を使用して同時に還元した。白色の固体;H NMR(400MHz,CDCl):δ7.14〜7.10(m,1H)、7.04〜7.00(m,2H)、6.95〜6.93(m,1H)、2.88〜2.84(m,2H)、2.55(t,J=7.4Hz,2H)、2.44〜2.40(m,2H)、1.63〜1.55(m,2H)、1.35〜1.28(m,4H)、0.90(m,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ179.3,141.2,140.8,126.7,126.4,124.0,123.8,38.6,34.2,31.2,29.9,29.8,20.9,11.7;LRMS(ESI):m/z 203(MH−CO−NaOH);HPLC:4.5分。
【0107】
実施例8:
化合物VIII、2−(3−ペンチルフェニル)プロピオン酸のナトリウム塩
上の化合物は、2−メチル−2−(3−ペンチルフェニル)マロン酸ジエチルエステルで開始して、化合物Iと同様に調製した。後者は、2−(3−ブロモフェニル)マロン酸ジエチルエステルを、ヨウ化メチルと反応させ、続いて、トランス−1−ペンテニル−1−ボロン酸ピナコールエステルを使用したSuzukiカップリング、次いで、水素化による二重結合の還元によって調製した。白色の固体;H NMR(400MHz,CDOD):δ7.19〜6.95(m,4H)、3.54(q,J=7.0Hz,1H)、2,56(t,J=7.6Hz,2H)、1.64〜1.56(m,2H)、1.38(d,J=7.2Hz,3H)、1.37〜1.20(m,4H)、0.90(t,J=7.0Hz,3H);13C NMR(CDOD):δ182.2,144.4,142.5,127.8,127.6,125.8,124.7,49.2,35.9,31.5,31.3,22.4,19.0,13.2;LRMS(ESI):m/z 221(M−Na+2H);HPLC:4.5分。
【0108】
実施例9:
化合物IX、2−フルオロ−2−(3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上の化合物は、実施例1と同様にエチル2−フルオロ−2−(3−ペンチルフェニル)アセテートから調製した。エステルは、エチル2−(3−ペンチルフェニル)アセテートの、テトラヒドロフラン中の−78℃のリチウムジイソプロピルアミド及びN−フルオロジベンゼンスルホンイミドとの反応によって調製した。白色の固体;H NMR(400MHz,CDOD):δ7.34(s,1H)、7.30(dd,J=7.6,1.4Hz,1H)、7.24(dd,J=7.6,7.6Hz,1H)、7.13(dd,J=7.4,1.0Hz,1H)、5.53(d,JHF=51.3Hz,1H)、2.60(t,J=7.7Hz,2H)、1.59〜1.65(m,2H)、1.27〜1.39(m,4H)、0.76(t,J=6.9Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ173.73(d,JCF=23.9Hz)、141.34,136.37(d,JCF=20.0Hz)、126.79(d,JCF=2.3Hz)、126.40,125.41(d,JCF=5.4Hz)、122.84(d,JCF=5.4Hz)、90.34(d,JCF=183.4Hz)、34.13,29.91,29.65,20.85,11.64;19F NMR(377MHz,CDOD):δ−168.83(d,JHF=51.7Hz,1F);LRMS(ESI陰性):m/z 223.0(100%、M−Na);HPLC:4.1分。
【0109】
実施例10:
化合物X、2−メチル−2−(3−ペンチルフェニル)プロピオン酸のナトリウム塩
【化6】
ステップ1:
無水THF(8mL)中の水素化ナトリウム(鉱油中60% w/w;0.5g、13.6mmol)の懸濁液を0℃まで冷却し、無水THF(4mL)中のメチル[3−ペンチルフェニル]アセテート(1.0g、4.5mmol)の溶液で処理した。反応物を0℃で60分間撹拌し、次いで、ヨウ化メチル(0.7mL、11.3mmol)で処理した。反応物を室温までゆっくりと加温し、この温度で終夜、撹拌した。反応物を、飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)の添加により反応停止させ、混合物をエーテル(3×20mL)で抽出した。合わせた抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、乾燥するまで蒸発させた。酢酸エチル/ヘキサン1:99、次いで2:98で溶出するシリカパッド上での精製により、メチル2−メチル−2−(3−ペンチルフェニル)プロピオネートを無色の油(0.68g、60%)として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ7.18〜7.22(m,1H)、7.08〜7.13(m,2H)、7.02〜7.05(m,1H)、3.62(s,3H)、2.58(t,J=7.6Hz,2H)、1.55〜1.62(m,2H)、1.53(s,6H)、1.28〜1.36(m,4H)、0.90(t,J=7.1Hz,3H);HPLC:5.5分。
【0110】
ステップ2:
THF(8mL)、メタノール(2mL)、及び水(2mL)中のエステルの溶液を、水酸化リチウム(0.2g、8.2mmol)で処理し、反応物を、室温で終夜、次いで、50℃で2日間、及び室温で10日間撹拌した。反応物を濾過し、漏斗をメタノール(2×20mL)で洗浄した。合わせた濾液及び洗浄液を2M塩酸(7mL)で処理し、混合物を酢酸エチル(3×40mL)で抽出した。合わせた抽出物を、水(2×30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、2−メチル−2−(3−ペンチルフェニル)プロピオン酸を淡黄色のシロップ(0.64g、99%)として得た。この材料を、さらなる精製なしで使用した。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.19〜7.27(m,3H)、7.07〜7.10(m,1H)、2.60(t,J=7.8Hz,2H)、1.60(s,6H)、1.58〜1.63(m,2H)、1.30〜1.37(m,4H)、0.89(t,J=7.0Hz,3H);LRMS(ESI):m/z 257(MNa);HPLC:4.7分。
【0111】
ステップ3:
エタノール(16mL)中の酸の溶液を、水(4mL)及び重炭酸ナトリウム(0.2g、2.7mmol)で処理し、反応物を室温で3日間撹拌した。溶媒を真空で蒸発させ、残渣を水に溶解し、濾過し、凍結乾燥して、ナトリウム2−メチル−2−[3−ペンチルフェニル]プロピオネートを白色の固体(0.7g、96%)として得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ7.19〜7.23(m,2H)、7.13(dd,J=7.6,7.6Hz,1H)、6.91〜6.95(m,1H)、2.56(t,J=7.7Hz,2H)、1.56〜1.63(m,2H)、1.46(s,6H)、1.28〜1.39(m,4H)、0.90(t,J=7.0Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ184.35,148.62,142.13,127.51,126.14,125.32,123.16,36.01,31.57,31.40,27.45,22.44,13.22;LRMS(ESI):m/z 235;(M−Na+2H);HPLC:4.6分。
【0112】
実施例11:
化合物XI、2−(3−ヘキシルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上の化合物は、実施例2と同様の、メチル2−(3−ブロモフェニル)アセテート及び(E)−へクス−1−エニルボロン酸ピナコールエステルのSuzukiカップリング、続いて、実施例1と同様の水素化、エステル加水分解、及びナトリウム塩形成によって調製した。白色の固体;H NMR(400MHz,DO):δ7.14(dd,J=7.8,7.6Hz,1H)、7.01(s,1H)、7.00(d,J=7.8Hz,1H)、6.96(d,J=7.6Hz,1H)、3.34(s,2H)、2.46(d,J=7.5Hz,2H)、1.41〜1.48(m,2H)、1.10〜1.18(m,6H)、0.70(t,J=6.8Hz,3H);13C NMR(101MHz,DO):δ181.23,143.98,137.46,129.47,128.73,126.63,126.48,44.58,35.14,31.12,30.94,28.23,22.13,13.53;LRMS(ESI):m/z 265(100%、M+Na);HPLC:4.6分。
【0113】
実施例12:
化合物XII、2−(3−(へクス−1−エニル]フェニル)酢酸のナトリウム塩
上の化合物は、実施例2と同様の、メチル2−(3−ブロモフェニル)アセテート及び(E)−へクス−1−エニルボロン酸ピナコールエステルのSuzukiカップリング、続いて、エステル加水分解及びナトリウム塩形成によって調製した。白色の固体;H NMR(400MHz,CDOD):δ7.33(s,1H)、7.12〜7.19(m,3H)、6.35(d,J=15.8Hz,1H)、6.20(dt,J=15.8,6.8Hz,1H)、3.46(s,2H)、2.17〜2.22(m,2H)、1.33〜1.49(m,4H)、0.93(t,J=7.2Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ179.35,138.27,137.95,130.27,130.16,128.10,127.61,126.64,123.56,45.24,32.66,31.67,22.16,13.22;LRMS(ESI):m/z 263(100%、M+Na);HPLC:4.4分。
【0114】
実施例13:
化合物XIII、2−(2−フルオロ−5−(ペント−1−エニル)フェニル)酢酸のナトリウム塩
上の化合物は、実施例2と同様に、(E)−ペント−1−エニルボロン酸ピナコールエステル及びエチル2−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)アセテートから調製した。融点215〜220℃;白色の固体;H NMR(400MHz,DO):δ7.12〜7.17(m,2H)、6.90(dd,JHF=9.5Hz,JHH=9.5Hz,1H)、6.28(d,J=16.0Hz,1H)、6.15(dt,J=16.0,6.8Hz,1H)、3.37(s,2H)、2.00〜2.05(m,2H)、1.29〜1.34(m,2H)、0.76(t,J=7.4Hz,3H);13C NMR(101MHz,DO):δ180.02,160.30(d,JCF=243.5Hz)、134.09(d,JCF=3.8Hz)、131.99(d,JCF=1.5Hz)、128.99(d,JCF=4.6Hz)、128.49,125.84(d,JCF=7.7Hz)、124.60(d,JCF=17.0Hz)、115.44(d,JCF=21.6Hz)、37.88(d,JCF=2.3Hz)、34.56,22.03,13.13;19F NMR(377MHz,DO):δ−121.11〜−121.05(m,1F);LRMS(ESI):m/z 267(100%、M+Na);HPLC:2.4分。
【0115】
実施例14:
化合物XIV、2−(4−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上の化合物は、実施例2と同様の、ベンジル2−(4−(ベンジルオキシ)−3−ブロモフェニル)アセテート及び(E)−ペント−1−エニルボロン酸ピナコールエステルのSuzukiカップリング、続いて、水素化によって調製した。白色の固体;融点192〜195℃;H NMR(400MHz,CDOD):δ7.01(d,J=2.3Hz,1H)、6.93(dd,J=8.2,2.3Hz,1H)、6.64(d,J=8.2Hz,1H)、3.35(s,2H)、2.53(t,J=7.7Hz,2H)、1.54〜1.61(m,2H)、1.30〜1.37(m,4H)、0.90(t,J=7.2Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ180.25,153.20,130.54,128.80,128.76,127.10,114.49,44.45,31.84,30.10,29.73,22.52,13.31;LRMS(ESI):m/z 245.2(55%、MH)、177.4(100%、M−CONa);HPLC:1.9分。
【0116】
実施例15:
化合物XV、2−(4−フルオロ−3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上の化合物は、メチル2−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)アセテートから、実施例3(ステップ4)と同様のSuzukiカップリング、続いて、実施例1(ステップ3、4、及び5)と同様の水素化、エステル加水分解、及び塩形成によって調製した。出発エステルは、硫酸の存在下での、2−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)酢酸のメタノールとの反応によって調製した。白色の固体;H NMR(400MHz,CDOD):δ7.16(dd,JHF=7.4Hz,JHH=2.3Hz,2H)、7.08(ddd,JHF=5.0Hz,JHH=8.3,2.3Hz,1H)、6.88(dd,JHF=10.1Hz,JHH=8.3Hz,1H)、3.40(s,2H)、2.59(t,J=7.7Hz,2H)、1.55〜1.63(m,2H)、1.28〜1.40(m,4H)、0.90(t,J=7.0Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ179.12,159.88(d,JCF=240.6Hz)、133.88(d,JCF=3.8Hz)、131.26(d,JCF=4.6Hz)、128.78(d,JCF=16.1Hz)、127.96(d,JCF=8.5Hz)、114.26(d,JCF=23.1Hz)、44.38,31.51,30.00,28.76(d,JCF=1.5Hz)、22.36,13.18;19F NMR(377MHz,CDOD):δ−126.45〜−126.40(m,1F);LRMS(ESI):m/z 225.2(M−Na+2H);HPLC:1.9分。
【0117】
実施例16:
化合物XVI、2−(2−フルオロ−3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上の化合物は、3−ブロモ−2−フルオロ安息香酸で開始して、化合物IIIと同様に調製した。白色の固体;H NMR(400MHz,CDOD):δ7.13(ddd,JHF=7.0Hz,JHH=7.4,1.9Hz,2H)、7.03(ddd,JHF=7.0Hz,JHH=7.4,1.9Hz,1H)、6.97(dd,JHH=7.4,7.4Hz,1H)、3.51(d,JHF=1.4Hz,2H)、2.61(t,J=7.6Hz,2H)、1.56〜1.63(m,2H)、1.28〜1.40(m,4H)、0.90(t,J=6.9Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ178.21,159.70(d,JCF=242.9Hz)、129.07(d,JCF=4.6Hz)、128.88,128.43(d,JCF=5.4Hz)、125.02(d,JCF=17.7Hz)、123.31(d,JCF=4.6Hz)、37.89(d,JCF=3.8Hz)、31.55,29.98,28.91(d,JCF=3.1Hz)、22.41,13.26;19F NMR(377MHz,CDOD):δ−126.09〜−126.05(m,1F);LRMS(ESI):m/z 220.0(M−CONa+アセトニトリル)、179.4(M−CONa);HPLC:1.2分。
【0118】
実施例17:
化合物XVII、3−(4−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)プロパン酸のナトリウム塩
上の化合物は、メチル3−(4−ベンジルオキシ−3−ブロモフェニル)プロパノエートから、実施例3(ステップ4)と同様のSuzukiカップリング、続いて、実施例1(ステップ3、4、及び5)と同様の水素化、エステル加水分解、及び塩形成によって調製した。出発エステルは、炭酸ナトリウムの存在下での、3−(4−ベンジルオキシ−3−ブロモフェニル)プロパン酸のアセトン/水中のヨウ化メチルとの反応によって調製した。褐色固体;H NMR(400MHz,CDOD):δ7.34(s,1H)、6.90(d,J=2.2Hz,1H)、6.84(dd,J=8.0,2.2Hz,1H)、6.61(d,J=8.0Hz,1H)、2.75〜2.79(m,2H)、2.52(t,J=7.8Hz,2H)、2.35〜2.39(m,2H)、1.52〜1.60(m,2H)、1.28〜1.41(m,4H)、0.90(t,J=7.0Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ181.15,152.90,133.23,129.71,128.86,126.10,114.57,40.56,32.06,31.79,30.06,29.71,22.48,13.27;LRMS(ESI陰性):m/z 235.3(M−Na);UPLC(System A):5.2分。UPLC System A:移動相A=10mM重炭酸アンモニウム水溶液;移動相B=水;固相=HSS T3カラム;勾配=10分にわたってA中5〜100%のB。
【0119】
実施例18:
化合物XVIII、2−オキソ−2−(3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
【化7】
ステップ1
アセトニトリル(3ml)中のエチル2−(3−メチルフェニル)−2−オキソアセテート(1.06g、5.5mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(9mg、0.06mmol)の溶液を、窒素下で80℃まで加熱し、アセトニトリル(6ml)中のN−ブロモスクシンイミド(1.17g、6.6mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(9mg、0.06mmol)の溶液で、60分にわたって、滴下処理した。反応物を80℃で30分間撹拌し、さらなる量のアゾビスイソブチロニトリル(9mg、0.06mmol)を添加し、混合物を60℃で21.5時間撹拌した。混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(50ml)で希釈した。溶液を水(2×50ml)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄し、次いで、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。ヘキサン中の0〜10%酢酸エチルで溶出する、Biotage(商標)SP1システム(120gシリカカートリッジ)上での精製により、エチル2−(3−(ブロモメチル)フェニル)−2−オキソアセテート(1.30g、95%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.96〜7.97(m,1H)、7.84〜7.87(m,1H)、7.60〜7.62(m,1H)、7.41(dd,J=7.7,7.7Hz,1H)、4.45(s,2H)、4.39(q,J=7.2Hz,2H)、1.34(t,J=7.2Hz,3H)。
【0120】
ステップ2
N,N−ジメチルホルムアミド(0.7ml)及びテトラヒドロフラン(0.5ml)中のエチル2−(3−(ブロモメチル)フェニル)−2−オキソアセテート(0.27g、1.0mmol)及び2−ブロモエタノール(0.19g、1.5mmol)の溶液を、アルゴン下で−60℃まで冷却し、N,N−ジメチルホルムアミド(0.3ml)及びカリウムtert−ブトキシド溶液(テトラヒドロフラン中1M;1.5ml)の混合物を、30分にわたって滴下添加した。反応物をさらに95分間、−60℃で撹拌し、次いで、飽和塩化アンモニウム水溶液(3ml)の添加により反応停止させた。室温まで加温した後、反応混合物を水(10ml)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(10ml)で希釈し、次いで、酢酸エチル(5×10ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液(3×10ml)で洗浄し、次いで、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。ヘキサン中の0〜10%酢酸エチルで溶出するBiotage(商標)SP1システム(25gシリカカートリッジ)上での精製により、エチル2−(3−(ブロモメチル)フェニル)−1,3−ジオキソラン−2−カルボキシレート(0.17g、68%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.62(dd,J=1.6,1.6Hz,1H)、7.52(dd,J=7.4,1.6Hz,1H)、7.39(dd,J=7.8,1.6Hz,1H)、7.33(dd,J=7.8,7.4Hz,1H)、4.47(s,2H)、4.19(q,J=7.1Hz,2H)、4.15〜4.20(m,2H)、4.05〜4.09(m,2H)、1.22(t,J=7.1Hz,3H)。
【0121】
ステップ3
n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M;0.53ml;1.3mmol)の溶液を、窒素下で−10℃のシクロペンチルメチルエーテル(2.6ml)中のヨウ化銅(I)(0.13g、0.66mmol)の懸濁液に、5分にわたって滴下添加した。暗青色の混合物を、−10℃で15分間撹拌し、次いで、−40℃まで冷却し、シクロペンチルメチルエーテル(0.55ml)中の2−(3−(ブロモメチル)フェニル)−1,3−ジオキソラン−2−カルボキシレート(0.17g、0.55mmol)の溶液で、10分にわたり、滴下処理した。反応物を35分にわたって−10℃まで加温し、次いで、1M塩化アンモニウム水溶液(1.4ml)の添加により反応停止させた。室温まで加温した後、反応混合物を酢酸エチル(10ml)と水(15ml)との間で分割した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(15ml)で洗浄し、次いで、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、エチル2−(3−ペンチルフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−カルボキシレート(0.1g、60%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.37〜7.43(m,2H)、7.10〜7.30(m,2H)、3.95〜4.22(m,6H)、2.52〜2.62(m,2H)、1.52〜1.64(m,2H)、1.28〜1.39(m,4H)、1.18〜1.26(m,3H)、0.79−0.93(m,3H)。
【0122】
ステップ4
トリフルオロ酢酸(2ml)及び水(2ml)中のエチル2−(3−ペンチルフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−カルボキシレート(0.09g、0.3mmol)の溶液を、室温で終夜撹拌した。反応混合物を、水(20ml)及び酢酸エチル(40ml)で希釈し、水性相のpHを、固体重炭酸ナトリウム(3.0g)を徐々に添加することによって、pH7に調整した。次いで、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。ヘキサン中の0〜3%酢酸エチルで溶出するBiotage(商標)SP1システム(25gシリカカートリッジ)上での精製により、エチル2−オキソ−2−(3−ペンチルフェニル)アセテート(8mg、10%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.71〜7.75(m,2H)、7.41(d,J=7.6Hz,1H)、7.35(dd,J=8.0,7.6Hz,1H)、4.39(q,J=7.2Hz,2H)、2.60(t,J=7.8Hz,2H)、1.53〜1.60(m,2H)、1.36(t,J=7.2Hz,3H)、1.23〜1.30(m,4H)、0.82(t,J=7.1Hz,3H)。
【0123】
ステップ5
アセトニトリル(0.6ml)中のエチル2−オキソ−2−(3−ペンチルフェニル)アセテート(8mg、0.03mmol)の溶液を、水酸化リチウム(0.15ml、0.3mmol)の50mg/ml水溶液で処理し、反応物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を1M塩酸水溶液(10ml)で反応停止させ、酢酸エチル(10ml)で抽出した。次いで、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(10ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、2−オキソ−2−(3−ペンチルフェニル)酢酸(5.8mg、83%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ8.17(d,J=7.6Hz,2H)、8.11(s,1H)、7.46(d,J=7.6Hz,1H)、7.38(dd,J=7.6,7.6Hz,1H)、2.61(t,J=7.7Hz,2H)、1.62〜1.67(m,2H)、1.30〜1.37(m,4H)、0.83(t,J=6.9Hz,3H)。
【0124】
ステップ6
エタノール(0.4ml)中の2−オキソ−2−(3−ペンチルフェニル)酢酸(6mg、0.02mmol)の溶液を、重炭酸ナトリウム(0.19ml、0.02mmol)の10mg/ml水溶液で処理し、反応物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を真空で蒸発させ、残渣を水(1ml)に溶解し、濾過し(0.2ミクロン)、凍結乾燥させて、ナトリウム2−オキソ−2−(3−ペンチルフェニル)アセテート(3.5mg、58%)を得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ7.77〜7.79(m,2H)、7.38〜7.45(m,2H)、2.67(t,J=7.7Hz,2H)、1.60〜1.68(m,2H)、1.28〜1.39(m,4H)、0.90(t,J=7.0Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ196.04,172.87,143.53,133.78,133.76,129.28,128.43,126.94,35.44,31.32,31.06,22.37,13.16;LRMS(ESI陰性):m/z 218.8(100%、M−Na);UPLC(System B):4.7分。UPLC System B:移動相A=0.1%ギ酸水溶液;移動相B=アセトニトリル中の0.1%ギ酸;固相=HSS T3カラム;勾配=10分にわたってA中5〜100%のB。
【0125】
実施例19:
化合物XIX;2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
【化8】
ステップ1
メタノール(40ml)中の2−(2−ヒドロキシフェニル)酢酸(3.00g、19.7mmol)の溶液を硫酸(0.95ml、17.8mmol)で処理し、反応物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(250ml)で希釈し、溶液を水(2×150ml)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(150ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させ、粗生成物を得た。熱ヘキサンからの再結晶により、メチル2−(2−ヒドロキシフェニル)アセテート(2.83g、87%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.20(ddd,J=7.7,7.4,1.8Hz,1H)、7.09〜7.11(m,1H)、6.94(dd,J=8.0,1.2Hz,1H)、6.88(ddd,J=7.4,7.4,1.2Hz,1H)、3.75(s,3H)、3.69(s,2H)。
【0126】
ステップ2
テトラヒドロフラン(30ml)中のメチル2−(2−ヒドロキシフェニル)アセテート(1.00g、6.0mmol)、トリフェニルホスフィン(2.37g、9.0mmol)、及びペント−1−エン−3−オール(0.78g、9.0mmol)の溶液を窒素下で0℃まで冷却し、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(1.86ml;9.0ml)を10分にわたって滴下添加した。次いで、反応物を21.5時間、60℃まで加熱した。溶媒を真空で蒸発させ、残渣をヘキサン中の5%酢酸エチルで抽出した。抽出物を濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。ヘキサン中の0〜3%酢酸エチルで溶出するBiotage(商標)SP1システム(120gシリカカートリッジ)上での精製により、メチル2−(2−(ペント−1−エン−3−イルオキシ)フェニル)アセテート(0.39g、28%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.21〜7.26(m,1H)、7.20(d,J=7.6Hz,1H)、6.91(ddd,J=7.4,7.4,1.0Hz,1H)、6.87(d,J=8.0Hz,1H)、5.84(ddd,J=17.4,10.7,6.0Hz,1H)、5.26(d,J=17.4Hz,1H)、5.22(d,J=10.7Hz,1H)、4.63(dt,J=6.0,6.0Hz,2H)、3.70(s,3H)、3.68(s,2H)、1.71〜1.87(m,2H)、1.02(t,J=7.5Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDCl):δ172.58,156.28,137.75,131.19,128.50,123.87,120.52,116.66,113.18,79.76,52.00,36.61,28.71,9.62。
【0127】
ステップ3
N−メチル−2−ピロリドン(1.0ml)中のメチル2−(2−(ペント−1−エン−3−イルオキシ)フェニル)アセテート(0.24g、1.0mmol)の溶液を、180℃で30分間、次いで、15分間、Biotage Initiatorにおいてマイクロ波放射で照射した。溶液を酢酸エチル(25ml)で希釈し、次いで、水(4×25ml)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(25ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて、粗生成物を得た。ヘキサン中の0〜7%酢酸エチルで溶出するBiotage(商標)SP1システム(40gシリカカートリッジ)上での精製により、メチル(E)−2−(2−ヒドロキシ−3−(ペント−2−エニル)フェニル)アセテート(0.89g、37%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.09(s,1H)、7.08(dd,J=7.4,1.6Hz,1H)、7.01(dd,J=7.6,1.6Hz,1H)、6.85(dd,J=7.6,7.4Hz,1H)、5.59〜5.70(m,2H)、3.75(s,3H)、3.69(s,2H)、3.41(d,J=4.7Hz,2H)、2.04〜2.11(m,2H)、1.01(t,J=7.4Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDCl):δ174.31,153.53,134.44,129.86,129.32,128.62,127.13,121.08,120.82,52.79,37.59,34.17,25.77,13.97。
【0128】
ステップ4
溶媒としてメタノールを使用して、メチル(E)−2−(2−ヒドロキシ−3−(ペント−2−エニル)フェニル)アセテート(0.14g、0.6mmol)を、化合物I、ステップ3と同様に水素化して、メチル2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)アセテート(0.11g、76%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.57(s,1H)、7.11(dd,J=7.4,1.6Hz,1H)、6.96(dd,J=7.4,1.6Hz,1H)、6.84(dd,J=7.4,7.4Hz,1H)、3.76(s,3H)、3.70(s,2H)、2.68(t,J=7.8Hz,2H)、1.61〜1.67(m,2H)、1.36〜1.43(m,4H)、0.93(t,J=7.0Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDCl):δ175.01,153.48,131.75,129.98,128.75,120.74,120.60,53.01,38.30,32.10,30.50,29.91,22.87,14.34。
【0129】
ステップ5
溶媒としてアセトニトリル/水(4:1)を使用して、メチル2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)アセテート(0.11g、0.5mmol)を、化合物I、ステップ4と同様に加水分解して、2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸(0.57g、57%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ8.70(br s,1H)、7.09(dd,J=7.6,1.6Hz,1H)、6.98(dd,J=7.4,1.6Hz,1H)、6.84(dd,J=7.6,7.4Hz,1H)、3.68(s,2H)、2.62(t,J=7.8Hz,2H)、1.57〜1.65(m,2H)、1.31〜1.40(m,4H)、0.91(t,J=7.0Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDCl):δ179.89,152.79,130.92,130.04,128.98,121.08,120.24,37.74,32.02,30.34,29.78,22.80,14.30。
【0130】
ステップ6
2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸(22mg、0.098mmol)を、化合物I、ステップ5と同様に、ナトリウム塩に変換して、ナトリウム2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)アセテート(24mg、98%)を得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ6.91(dd,J=7.5,1.6Hz,1H)、6.87(dd,J=7.5,1.6Hz,1H)、6.66(dd,J=7.5,7.5Hz,1H)、3.49(s,2H)、2.59(t,J=7.7Hz,2H)、1.55〜1.62(m,2H)、1.28〜1.38(m,4H)、0.90(t,J=7.0Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ180.26,154.27,130.75,128.21,127.90,124.24,119.23,42.91,31.83,30.21,29.82,22.51,13.29;LRMS(ESI陰性):m/z 220.8(100%、M−Na);UPLC(System A):5.0分。UPLC System A:移動相A=10mMギ酸アンモニウム水溶液;移動相B=アセトニトリル;固相=HSS T3カラム;勾配=10分にわたってA中5〜100%のB。
【0131】
実施例20:
化合物XX;2−(2−ベンジル−3−ヒドロキシ−5−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
【化9】
上の化合物は、実施例2と同様に(化合物XIと同様に)、メチル(E)−2−(2−ベンジル−3−(ベンジルオキシ)−5−(ペント−1−エニル)フェニル)アセテートから調製した。H NMR(400MHz,CDOD):δ7.13〜7.18(m,4H)、7.03〜7.09(m,1H)、6.63(d,J=1.6Hz,1H)、6.57(d,J=1.6Hz,1H)、4.07(s,2H)、3.37(s,2H)、2.48(t,J=7.7Hz,2H)、1.56〜1.64(m,2H)、1.28〜1.39(m,4H)、0.90(t,J=6.9Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDOD):δ179.51,155.24,141.67,141.46,138.05,128.22,127.83,125.14,123.51,121.79,113.06,42.65,35.61,31.66,31.13,31.10,22.49,13.33;LRMS(ESI+):m/z 312.9(90%、M−Na+2H);UPLC(System A):6.0分。(UPLC System A:移動相A=10mMギ酸アンモニウム水溶液;移動相B=アセトニトリル;固相=HSS T3カラム;勾配=10分にわたってA中5〜100%のB。
【0132】
実施例21:
ブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルへの化合物Iの効果
マウスへの抗癌薬物ブレオマイシンの気管内点滴は、急性炎症、続いて、慢性線維性応答をもたらす。したがって、化合物Iなどの候補抗線維化薬物の評価は、適切な時点でのマウスの処理によって行うことができ、組織学的、生化学的、かつ細胞読み出しは、このモデルにおける候補薬物の有効性を監視するために使用され得る。
【0133】
雄C57BL6マウスに、0日目に硫酸ブレオマイシン(0.025U)の気管内点滴を投与し、ランダム化し、7日目〜20日目に化合物I(経口投与、100mg/kg及び200mg/kg)を投与した。
【0134】
ブレオマイシンの気管内点滴は、5日目〜21日目に体重の有意な損失を誘発した。化合物Iの200mg/kgでの経口処理は、この体重損失を減少させた(図1)。
【0135】
これらの動物からの肺の組織学的検査は、興味深い相違を明らかにした。図2に例解されるように、化合物Iで処理した動物からの肺は、病変の有意な減少を示した。病変スコアは、HEP(Hemalun with Eosin/Ploxine)及びマッソン3色染色法を使用して評価した。病変スコアは、1)破壊された肺構造(細胞及び/もしくは線維症)によって示されるような固結、ならびに2)固結した領域の外側の厚さ及び収縮によって示されるような肺胞壁として記録した。化合物Iでの処理は、用量依存的様態で組織学的病変を減少させた。
【0136】
図3は、ブレオマイシン誘発肺線維症の肺組織からの顕微鏡写真を提示する。化合物Iでの処理が、肺における病変及び線維症を減少させたことが明らかである。
【0137】
肺組織のさらなる分析が行われた。CTGF、コラーゲン1及びIL−23p19 mRNA発現を、リアルタイムPCRによって定量化した。我々の結果は、化合物Iの経口投与が、図4、5、及び6にそれぞれ示されるように、肺におけるこれらの炎症性及び線維化マーカの発現を有意に低減させたことを示す。
【0138】
全体として、我々の結果は、化合物Iでの処理が、進行を予防するため、またはブレオマイシンなどの抗癌化学療法薬剤の臨床的使用に起因する肺損傷の退縮を誘発するために有益であり得ることを示唆する。さらに、我々の結果は、化合物Iでの処理が、特発性肺線維症(IPF)を含む肺線維症の進行を予防するため、またはそれを治療するために有益であり得ることを示唆する。
【0139】
実施例22:
ブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルへの化合物I及びピルフェニドンの効果
ピルフェニドンは、ヨーロッパ及びカナダにおいて、承認を得るための臨床試験におけるIPFの治療のための十分な薬物有効性を実証した。したがって、それは、上の実施例4に記載される同じプロトコルによって、ブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルにおいて、化合物Iと同時に評価した。化合物I(200mg/kg)及びピルフェニドン(400mg/kg)を単独または組み合わせて経口投与した。
【0140】
化合物I及びピルフェニドンを、PBSに可溶化した。併用療法では、ピルフェニドンを化合物Iの溶液に可溶化した。毒性は、化合物Iの処理では報告されなかった。ピルフェニドンでの処理は、併用療法において減少した重篤なめまいを誘発した(表1)。
表1:薬物に関連する毒性。化合物I及びピルフェニドンを、PBSに可溶化した。併用療法では、ピルフェニドンを化合物Iの溶液に可溶化した。
【表5】
【0141】
これらの動物からの肺の組織学的検査は、興味深い相違を明らかにした。図7に例解されるように、ブレオマイシンによって影響される肺の割合(%)は、化合物I及び併用療法(化合物I及びピルフェニドン)で処理された動物においてより低かった。
【0142】
病変スコアは、HEP(Hemalun with Eosin/Ploxine)及びマッソン3色染色法を使用して評価し、1)破壊された肺構造(細胞及び/もしくは線維症)によって示されるような固結、ならびに2)固結した領域の外側の厚さ及び収縮によって示されるような肺胞壁として記録した。図8に提示されるように、化合物Iでの処理は、組織学的レベルでの線維症の減少を実証しなかったピルフェニドンと比較して、組織学的病変を有意に減少させた。化合物I及びピルフェニドンの併用は、さらなる組織学的病変を減少させた。
【0143】
濾液中の白血球に見出されるコラーゲンの割合(%)によって乗算される、白血球浸潤(炎症ゾーン)の割合(%)によって判定される際の病変スコアは、マッソン3色染色法を使用して組織形態計測によって定量化した。ブレオマイシンは、白血球浸潤におけるコラーゲンの割合(%)の強力な増加を誘発し、これは、図9に示されるように、化合物Iでの経口処理で有意に減少する。
【0144】
図10は、HEPで染色されるブレオマイシン誘発肺線維症の肺組織からの顕微鏡写真を提示する。化合物Iでの処理が、破壊された肺構造ならびに肺胞壁及び細胞浸潤の間質厚の減少によって観察されるように、肺における病変及び線維症を減少させたことが明らかである。ピルフェニドン単独では、効果はない。
【0145】
肺線維症の視覚的格付けもまた、Ashcroftのスコアに従って判定した。簡潔に述べると、各肺区分の全領域は、盲検法によって読み取られ、各領域は、0〜8で視覚的に格付けされた。肺線維症を格付けするための基準は、以下の通りであった:グレード0=正常な肺;グレード1=肺胞もしくは気管支壁の最小の線維性肥厚;グレード3=肺構造への明らかな損傷を伴わない中程度の壁の肥厚;グレード5=肺構造への明確な損傷を伴う線維症の増加、及び線維帯もしくは小さい線維性腫瘤の形成;グレード7=構造の重篤な変形、及び大きい線維性領域;グレード8=肺領域の完全な線維性閉塞。
【0146】
マッソン染色法は、肺胞空間が広くなり、コラーゲン線維で充填されたことを示し、化合物I、または化合物I及びピルフェニドンの併用の経口処理で減少した、ブレオマイシン誘発肺線維症における増殖性の線維芽細胞の病変(図11)を示す。ピルフェニドン単独は、Ashcroftの方法に従って格付けされる時、弱い活性を実証した。
【0147】
IPFは、末期の線維症をもたらす慢性間質肺疾患である。病因は、組織恒常性の維持を担い、かつ損傷への応答を調整する、様々なサイトカイン、ケモカイン、及び成長因子によって媒介される、炎症及び構造細胞間のクロストークの調節異常に関連すると考えられる。試験された多くのサイトカインの中で、IL−1−β、IL−17、及びIL−23は、顕著な炎症、組織損傷、及び慢性線維症を実証し、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)及びIL−6は、炎症及び軽度の線維症を誘発し、IL−4及びIL−13は、線維細胞分化及び線維症を促進し、TGF−β及びCTGFは、小さい炎症だが、顕著な進行性の慢性線維症を引き起こす。実際、形質転換成長因子(TGF)−β1は、肺線維症の病因に関与する主な線維形成促進性サイトカインのうちの1つである。それは、筋線維芽細胞への線維芽細胞分化を誘発し、これは、高レベルのコラーゲン、ならびに付随して、肺弾性の損失及び呼吸機能の減少をもたらす。
【0148】
肺線維症への化合物Iの効果を判定するために、肺組織のさらなる分析を行った。TGF−β、CTGF、IL−23、及びIL−6 mRNA発現は、リアルタイムPCRによって定量化した。我々の結果は、化合物Iの経口投与及び併用療法が、図12、13、14、及び15にそれぞれ示されるように、肺におけるこれらの炎症性及び線維化マーカの発現を有意に低減させたことを示す。ピルフェニドンの経口投与は、CTGF mRNA発現に影響はなかったが、TGF−β、IL−23、及びIL−6 mRNA発現を減少させた。
【0149】
IPFは、肥大した線維芽細胞増殖、ならびにコラーゲン及びフィブロネクチンの蓄積によって特徴付けられる。変化したフィブロネクチン発現、分解、及び組織化は、肺線維症と関連付けられている。我々の結果は、ブレオマイシンの気管内吸入が、コラーゲン1及びフィブロネクチン(FN−1)mRNA発現の両方を増加させることを示す。化合物I、ピルフェニドン、及び併用療法の経口処理は、これらの2つの線維化マーカの対照レベルへの有意な減少を誘発した(図16及び17)。加えて、化合物Iでの処理は、コラーゲン3 mRNA発現の弱い減少を誘発した一方、ピルフェニドン処理は、効果はなかった。しかしながら、併用療法は、コラーゲン3発現を対照のレベル近くにまで有意に抑制した(図18)。
【0150】
実施例23:
CCl誘発肝線維症マウスモデルへの化合物Iの効果
肝線維症は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、及び多様な慢性中毒を含む、多くの慢性肝疾患の転帰である。このため、マウスCCl誘発肝線維症への化合物Iの効果を評価することが所望された。CClでの中毒は、肝細胞損傷、壊死、炎症、及び線維症をもたらし、これは、肝類洞に送給及び排出する血管構造(それぞれ門脈路及び中心静脈小根)を連結するように広がり、8〜30週間にわたり、肝細胞癌への線維症の進行をもたらす。したがって、化合物Iなどの候補抗線維化薬物の評価は、適切な時点でのマウスの処理によって行うことができ、組織学的、生化学的、かつ細胞読み出しは、このモデルにおける候補薬物の有効性を監視するために使用され得る。
【0151】
CCl4(コーン油中10%、2ml/kg)を、週に2回、16週間、雄C57BL/6に腹腔内注射した。化合物I(200mg/kg)を、1日目〜113日目まで毎日経口投与した。マウスを安楽死させ(euthanasized)、組織構造及び肝線維化マーカを分析した。
【0152】
化合物Iが肝線維症に効果を有するかどうかを判定するために、ヒドロキシプロリンレベルを使用して、組織中のコラーゲン含有量(肝線維症を示す)を測定した。化合物Iでの経口処理は、肝臓におけるヒドロキシプロリンレベルの有意な減少を誘発した(図19)。
【0153】
肝臓組織におけるコラーゲンレベルの減少はまた、マッソン3色染色法を使用した組織学的顕微鏡写真において観察された。図20、化合物Iは、コラーゲンスコアの有意な減少を誘発した。
【0154】
マッソン3色は、細胞質、ケラチン、筋線維、及び細胞内線維を赤色、核を黒色、ならびにコラーゲン(線維組織)を青色に染色する。図21に例解されるように、全ての対照マウスは、コラーゲンの正常な分布を明らかにした。広範なコラーゲン沈着及び架橋線維症は、CCl4誘発動物において明らかであった一方、コラーゲン沈着、及び門脈−中心管の門脈−門脈間の架橋形成の有意な減少は、化合物Iで処理した動物において観察された。
【0155】
別の実験は、化合物1及び化合物Vで実施され、ここでは、CCL4(オリーブ油中10%、2ml/kg)を、週に2回、8週間、雄C57BL/6に腹腔内注射した。化合物1及び化合物Vを、1日目〜58日目まで毎日経口投与した(100及び200mg/kg)。マウスを安楽死させ(euthanasized)、肝臓中のコラーゲン含有量(線維症のマーカ)を、マッソン3色染色法を使用して、組織形態計測によって定量化した。化合物1及び化合物Vでの経口処理は、肝臓中のコラーゲン含有量の有意な減少を誘発した(図22)。
【0156】
実施例24:
皮膚線維症への化合物の抗線維効果
皮膚線維症への本発明の化合物の効果を、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を使用して研究した。
【0157】
インビトロ分析は、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)における、TGF−β誘発CTGF、コラーゲン1、及びα−SMA(線維症のマーカ)への化合物Iの効果を判定するために行われた。前線維化(CTGF)及び線維性マーカ(コラーゲン1及びα−SMA)の発現を、定量的リアルタイムPCRによって判定した。図23、24、及び25に示されるように、TGF−β(5ng/ml)は、化合物I(500μM)によって阻害される、CTGF、コラーゲン1、及びα−SMA転写産物発現の上方制御を誘発する。また、化合物I単独での細胞の処理は、CTGF、コラーゲン1、及びα−SMAの基本的発現の減少をもたらす。
【0158】
筋線維芽細胞は、コラーゲンなどのマトリクス合成の増加を介して、組織線維症において重要な役割を果たす、線維芽細胞、上皮及び間葉幹/間質(線維細胞)細胞に由来する、最終分化した細胞である。α−SMAは、筋線維芽細胞の公知のマーカである。我々の結果は、化合物Iが、TGF−β誘発線維芽細胞におけるα−SMAの90パーセントの阻害によって実証されるように、線維芽細胞分化を阻害することを示す。
【0159】
筋線維芽細胞はまた、増強された遊走表現型を呈し(Suganuma et al.1995)、かつ多数の前線維性メディエータを放出することが可能である。次の実験(擦過アッセイ、浸潤/転移)は、EGF刺激正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)への化合物Iの効果を判定するために設計された。要約すると、マイトマイシンで処理したNHDFを、EGFで刺激し、化合物I(0.5mM)の存在下または不在下(対照)でインキュベートした。EGFは、化合物Iによって阻害される擦過への線維芽細胞浸潤を刺激した(図26)。
【0160】
実施例25:
線維芽細胞及び上皮細胞における線維性マーカへの化合物の抗線維化効果
CTGF、コラーゲン1、及びα−SMAは、活性化した線維芽細胞によって、及び上皮−間葉遷移(EMT)を受ける上皮細胞によって生成される線維化マーカである。TGF−βを使用して、HK−2細胞(上皮細胞)においてEMTを誘発し、かつ活性化した線維芽細胞(正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)及びラット線維芽細胞(NRK−49F)を誘発して、コラーゲンを分泌させ、強力にα−SMAを発現させた。線維化マーカ(コラーゲン1及びα−SMA)の発現は、定量的リアルタイムPCRによって判定した。表2に示されるように、本発明の化合物は、上皮細胞及び線維芽細胞の両方においてコラーゲン1及びα−SMAを阻害した。
【0161】
表2:上皮細胞(HK2細胞)及び線維芽細胞(NHDF)におけるコラーゲンの阻害の割合(%)、ならびに線維芽細胞(NRK−49F及びNHDF)におけるα−SMAの阻害の割合(%)は、本発明に従ういくつかの化合物に関して判定された。全ての場合において、コラーゲン及びα−SMAのmRNAを測定し、阻害を、それぞれの濃度の試験した化合物の存在下で評価した。化合物は、異なる濃度[mM]で試験した。全ての化合物は、HK−2、NHDF、及びNRK−49F細胞内のコラーゲン及びα−SMAの発現を減少させる。
表2
【表6】
【表7】
n.d.は、判定せずを意味する。
【0162】
実施例26:心線維症マウスモデルへの化合物Iの効果
大腿カテーテルの埋め込みは、我々の5/6腎摘出された(5/6−Nx)モデルにおいて、心線維症の存在を増加させ、それを使用して、心線維症への化合物Iの効果を評価した。要約すると、雄の6週齢Sprague−Dawleyラットを、5/6−Nxまたは擬似手術に供した。簡潔に述べると、左腎の2/3を0日目に除去し、続いて、右腎全摘を7日目に行った。カテーテルを7日目に大腿静脈を介して埋め込んだ。擬似手術されたラットは、腎臓の露出及び腎周囲脂肪の除去を受け、対照として使用された。擬似手術を受けた動物を、ビヒクル(水)で処理し、対照として使用した。21日目に、ラットを、それらの糸球体濾過率(GFR)結果に基づいて、ランダム化した。5/6−Nx動物は、化合物I(10mg/kg)の週に3回の静脈内投与、または化合物I(200mg/kg)の毎日の経口投与で処理した。心線維症は、ヒドロキシプロリン(コラーゲン含有量)の測定によって、ならびに組織学的評価(HPE及びマッソン3色染色法)によって判定した。
【0163】
言及されるように、カテーテルを挿入された5/6腎摘出された動物における化合物の静脈内投与のためのカテーテルの埋め込みは、経口処理(カテーテルなし)と比較して、心線維症を誘発している。経口処理は、本明細書において、「経口」を意味する「po」という表現で識別され、静脈内投与は、「静脈内」を意味する「iv」という表現で識別される。図27に例示されるように、5/6−Nxラットは、弱い心臓病変を有する。しかしながら、カテーテルの埋め込みは、心臓病変(線維症、壊死、及び炎症)の有意な増加(4倍)を誘発する。
【0164】
静脈内化合物Iでの処理が、図28に示されるように全心臓病変を有意に減少させ(p<0.05)、これは、図29に報告されるように炎症の有意な減少、及び図30に報告されるように壊死の有意な減少を含むことが分かる。
【0165】
さらなる分析が、コラーゲンにおいて特異的に検出される、ヒドロキシルプロリン(hydroxylproline)を測定することによって、心臓コラーゲン含有量を測定するために、行われた。ヒドロキシプロリン含有量(コラーゲン)は、図31に報告されるように、腎摘出されたラットの心臓において有意に増加する。化合物Iでの静脈内及び経口処理の両方は、ヒドロキシプロリン含有量の有意な減少を誘発する(図30)。
【0166】
ヒドロキシプロリン(コラーゲン)含有量におけるこの減少は、コラーゲンを染色する(青)ために使用されるマッソン3色染色法で染色される心臓の組織学的顕微鏡写真と相関する。図32及び33は、それぞれ40X及び100Xの拡大図での代表的な動物の心臓の顕微鏡写真を示し、ここでは、化合物Iを受けなかった腎摘出された動物と比較して、化合物Iが経口投与された。図34は、40Xの拡大図での代表的な動物の心臓の顕微鏡写真を示し、ここでは、化合物Iを受けなかった腎摘出された動物と比較して、化合物Iが静脈内投与された。図32、33、及び34は、同様の血清クレアチニンレベルを示す、動物の心臓の顕微鏡写真である。全ての顕微鏡写真において、化合物Iでの静脈内及び経口処理が、線維症(青に着色されたコラーゲン沈着)を減少させることが明らかである。
【0167】
本明細書に言及される、または引用される全ての特許、特許出願、仮出願、及び刊行物は、それらが本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲まで、全ての図及び表を含むその全体が参照により組み込まれる。
【0168】
本明細書で説明される実施例及び実施形態は、例示のみを目的としており、これらを考慮して、種々の修正または変更が当業者に提唱され、本願の趣旨及び範囲内に含まれることを理解するべきである。
図1
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