(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381615
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】消費率限度を使用する輝度劣化の削減のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20180820BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20180820BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20180820BHJP
G09G 3/3208 20160101ALI20180820BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
G09G3/20 670K
G09G5/10 B
G09G5/00 550C
G09G5/00 550X
G09G3/3208
G09G3/20 642D
G09G3/20 642E
G09G3/20 670L
G09G3/20 631U
G09G3/20 611A
G09G3/20 642P
G09G3/20 670Q
H05B33/14 A
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-232230(P2016-232230)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-102453(P2017-102453A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2016年11月30日
(31)【優先権主張番号】14/954,296
(32)【優先日】2015年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505450755
【氏名又は名称】ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ポール フレデリック ルーサー ウェインドルフ
【審査官】
斎藤 厚志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−321789(JP,A)
【文献】
米国特許第06456016(US,B1)
【文献】
特開2001−312249(JP,A)
【文献】
特開2011−112889(JP,A)
【文献】
特開2003−202838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/20
G09G 3/3208
G09G 5/00
G09G 5/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに結合され、前記ディスプレイに電力を提供し、それによって表示輝度を制御するように構成された輝度制御システムであって、当該輝度制御システムは、消費率(CR)の限度を受け取るための入力部を含んでいる、という輝度制御システムと、
前記ディスプレイに近接し、前記輝度制御システムと電気的に通信する温度センサと、を含み、
前記消費率(CR)は、前記ディスプレイの動作輝度Lopと、前記ディスプレイの最大表示輝度Lmax と、前記温度センサによって測定される温度°Kと、の関数であり、
前記輝度制御システムは、前記ディスプレイの最大表示輝度Lmax と前記温度センサによって測定される温度°Kと前記消費率の限度とに基づいて、前記ディスプレイの動作輝度Lopを計算し、当該計算された前記ディスプレイの動作輝度Lopに基づいて前記表示輝度を変えるように構成されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記表示輝度は、前記消費率の限度の下で、最大化される
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記温度センサは、サーミスタである
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記輝度制御システムは、所定のルックアップテーブルの値と前記測定された温度を相互に関連付けることに基づいて輝度を読み出す
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記輝度制御システムは、PID制御ループを利用する
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
輝度制御システムと統合されたディスプレイであって、
消費率(CR)の限度と、
前記ディスプレイに近接し、前記輝度制御システムと電気的に通信する温度センサと、
を備え、
前記消費率(CR)は、前記ディスプレイの動作輝度Lopと、前記ディスプレイの最大表示輝度Lmax と、前記温度センサによって測定される温度°Kと、の関数であり、
前記輝度制御システムは、前記ディスプレイと結合され、前記ディスプレイに電力を提供し、それによって表示輝度を制御するように構成されており、
前記輝度制御システムは、前記ディスプレイの最大表示輝度Lmax と前記温度センサによって測定される温度°Kと前記消費率の限度とに基づいて、前記ディスプレイの動作輝度Lopを計算し、当該計算された前記ディスプレイの動作輝度Lopに基づいて前記表示輝度を変えるように構成されている
ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項7】
前記表示輝度は、前記消費率の限度の下で、最大化される
ことを特徴とする請求項6に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記温度センサは、サーミスタである
ことを特徴とする請求項6に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記輝度制御システムは、所定のルックアップテーブルの値と前記測定された温度を相互に関連付けることに基づいて輝度を読み出す
ことを特徴とする請求項6に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記輝度制御システムは、PID制御ループを利用する
ことを特徴とする請求項6に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、それらの多数の優位点のために、より当たり前になってきている。しかしながら、OLEDディスプレイのような発光型ディスプレイの技術は、示差的エージング(つまり輝度劣化)に悩まされ、寿命予想に応えることを保証するためには、注意深く分析し使用しなければならない。示差的エージングは、使用頻度が高いディスプレイの部分または色が、使用頻度が低い部分よりもより低い輝度を発する場合である。液晶、干渉変調器、LCOS、マイクロミラー、及び電気泳動ディスプレイのようなライトバルブ技術は、それらが局所化された画面の使用とは関係なく減衰する一般的な光源に依存するため、示差的エージングに悩まない。発光型技術のディスプレイは、示差的エージングに悩むので、長い期間にわたって同じデータを表示する場合、スクリーンセーバー機能が必要になる。OLEDディスプレイは多くの利点を有するが、OLEDの主要な不利な点はエージングである。さらに、OLEDディスプレイのエージングは、一般的には自動車環境と関連付けられ、昇温で大幅に加速される。
【背景技術】
【0002】
例えば、ディスプレイの開発者は、ディスプレイの視認性を維持するために、OLEDが600cd/m
2を超えるレベルで駆動されることを設定または要求することがあり、恒久的な輝度消費の量(つまり、輝度が減少する量)は、OLED動作温度が増すにつれ、劇的に増加する。焼き付けられた画像の影響を最小限に抑えるためにピクセルレベルで適用され得る補償の量は、制限される。このことは、めったに起こらない悪条件下でOLEDの消費率を最小限に抑えるために他の方法の使用を必要とする。
【0003】
示差的エージングに関連する問題に対応するために、別の技法、熱ディレーティングが提案されている。熱ディレーティング方法は、OLEDの寿命を最大にするために、表示技術の操作と関連する全体的な温度の制御を可能にする。
【0004】
ただし、上記に提案された方法のそれぞれは、輝度劣化に関連する問題点を処理するほど十分に堅牢ではない場合がある。
【0005】
ディスプレイの輝度劣化を補償するためのシステムが本明細書で説明される。システムは、ディスプレイに結合され、ディスプレイに電力を提供し、それによって表示輝度を制御するように構成された輝度制御システムを含み、当該輝度制御システムは、消費率(CR)限度を受け取るための入力部と、ディスプレイに近接してコントローラと電気的に通信する温度センサとを含み、輝度制御システムは、温度センサによって測定される温度及びCR限度に基づいて表示輝度を変えるように構成されている。
【0006】
システムの別の例では、表示輝度は、消費率とディスプレイの最大輝度とディスプレイの温度との関係性によって決定される。
【0007】
システムの別の例では、表示輝度は、以下の関係性を利用することによって、CR限度未満になるように最大化される。
【0008】
システムの別の例では、温度センサはサーミスタである。
【0009】
システムの別の例では、輝度制御システムは、所定のルックアップテーブルの値と測定された温度を相互に関連付けることに基づいて、輝度を読み出す。
【0010】
システムの別の例では、輝度制御システムは、関係性を実行するための回路が実装される。
【0011】
システムの別の例では、輝度制御システムは、PID制御ループを利用する。
【0012】
輝度制御システムと統合されたディスプレイも提供される。当該ディスプレイは、消費率(CR)限度と、ディスプレイに近接してコントローラと電気的に通信する温度センサとを含み、輝度制御システムは、当該ディスプレイに結合され、当該ディスプレイに電力を提供してそれによって表示輝度を制御するように構成され、輝度制御システムは、温度センサによって測定される温度及びCR限度に基づいて表示輝度を変えるように構成される。
【0013】
本発明の追加の目的、特徴、及び優位点は、本明細書に添付され、本明細書の一部を成す図面及び特許請求の範囲を参照して、以下の説明を検討した後に当業者に容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本明細書に開示される態様に従って、輝度劣化を補償するためのシステムのブロック図である。
【
図2】消費率(CR)に対する輝度及び温度の相違の関係性を描くグラフである。
【
図3】CR限度によって制約される時の輝度と温度の関係性を描くグラフである。
【
図4】
図1のシステムを使用することと、
図1のシステムを使用しないことと、の相違を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、本発明の原理を具現化するシステムが、符号10で示されている。システム10は、その主要な構成要素として、制御回路12(輝度制御システム)、発光型ディスプレイ14、及び温度センサ16(例えば、サーミスタを介する)を含む。所望される輝度信号18が制御回路12に提供され、所望される輝度信号18は多くの場合、表示明度制御装置(不図示)から生成される。
【0016】
制御回路12は、所望される輝度信号18に基づいてディスプレイ駆動信号20を生成する。ディスプレイ駆動信号20は、発光型ディスプレイ14に提供され、発光型ディスプレイ14を特定の表示輝度レベルで動作させる。温度センサ16は発光型ディスプレイ14に近接して位置し、発光型ディスプレイ14の温度を監視するように構成される。温度センサ16は、制御回路12によって受信されるフィードバック信号22を生成する。フィードバック信号22は計算された輝度に基づく。L
opとして知られる計算された輝度は後述され、温度センサ16によって測定される既知の温度及びCR限度23によって部分的に導き出される。
【0017】
CR限度23は、本明細書で開示される実験的に導き出された式/グラフで説明される関係性を介してユーザによって設定される。CR限度23は手作業で設定されてもよいし、ルックアップテーブルによって設定されてもよいし、温度に基づく関係性を計算するために利用される電子回路によって設定されてもよい。
【0018】
制御回路12は、測定された温度を受け取り、CR限度23を確立するために導き出された関係性に測定された温度を適用し、(ディスプレイ駆動信号20に発光型ディスプレイ14を修正させるフィードバック信号22を介して)発光型ディスプレイ14にL
opを通信するように構成された論理回路を含む。
【0019】
係る一例では、実験的試験は、特定のOLEDの消費率を決定するための関係性を決定するために利用されて良い。以下に示されるように、サンプルOLED発光型ディスプレイ14を試験する一例では、消費率(CR)を決定するために以下の値が得られる(ニトは輝度の測定単位である)。
式1
上式で、
L
opは発光型ディスプレイ14の動作輝度である。
L
max=発光型ディスプレイ14の最大表示輝度、及び
°K=温度センサ16によって測定されるケルビン単位の温度
【0020】
式1は、温度だけではなく輝度も既知であるときに、CR限度を計算するために使用され得る。
【0021】
図2は、式1のグラフ200を示す。グラフ200は、3本の軸、つまり(摂氏の)温度軸210、(輝度の)L
op220、及び(カンデラ(cd)/平方メートル(m)
2/時の)CR軸230を含む。図示されるように、多様なCR限度が、輝度及び温度ごとに計算され、3次元グラフに描かれる。
【0022】
描かれている値240は、x軸220及びy軸が変えられる時の、計算されたCR値/限度の3次元グラフを示す。多様な入力(つまり、示されている2本の軸)が、z軸230の値によって示されるように、CR限度の異なる範囲を生成する。示されている範囲は、それぞれ241〜244である。
【0023】
計算されたCRは、より低いL
opで発光型ディスプレイ14を操作する利点を示す。式1を使用するCR
1及びCR
2は、それぞれ2つの試験ケースの消費率の例である。2つの試験ケースは以下の通りである。
【0024】
1.45℃(318°K)で600cd/m2のレベルで動作すること。
【0025】
2.35℃(308°K)で300cd/m2のレベルで動作すること。600cd/m2のケース1と比較して、より低い動作輝度のためにより低い温度が推定されることに留意されたい。
【0026】
このようにして、実験的に導き出された式1を使用すると、より低い輝度動作条件を与えられているとき、OLEDが経験するCRは大幅に減少する。上記に示された例/グラフ200は、温度、輝度レベル、及び実験的に導き出されたCRの間の、重要な実験的に導き出された相互作用を示す。
【0027】
上記に基づき、発光型ディスプレイ14のオペレータは、所定のCR限度23を入力するための入力部を制御回路12に実装できる。したがって、システム10の開発者は特定のCR限度23を提供することができ、それとともに、発光型ディスプレイ14を駆動するために駆動信号20を導き出す(後述の式2参照)ことができる。
【0028】
図3は、測定された温度320とL
op310を関係付けるためのグラフ300を示す。多様な値301〜306がグラフ300上に描かれて示されている。このようにして、(システム10の開発者によってまたは以下に説明される方法によって設定され得る)所望される消費率の場合、描かれたL
opが発光型ディスプレイ14を駆動するために使用されるべきである。
【0029】
式1から以下の関係性が導き出され、L
opについて解かれる。
式2
【0030】
CR限度を知っているまたは設定する重要性は、車両の状況によって例示される。運転者/乗客が車両に乗り込むとき、内部温度は、太陽条件または他の条件のために熱くなっている場合がある(「ホットスタート条件」として知られる)。CR限度が劣化からOLEDを保護するという要求に基づいて設定され、温度が既知である場合、輝度はグラフ300に示されるCR限度を厳守するように改変され得る。これにより、空調がオンになり、車両の車室温度が下がるにつれ、輝度は上昇し得て、ユーザにより明るいディスプレイを提供し得る。
【0031】
図4は、上述されたホットスタート状況に基づいたCR限度の実装を説明するグラフ400を示す。y軸410の左側に、CRが、時間の関数として、具体的には値401及び402とともに、示されている。値401は、CRを制限することなく生成されたCR(通常のCR)を表す。値402は、CRが最大として0.15に制限される状況を表す(グラフに示されるように、温度403が下がるにつれ、値402は式2に示される関係性に基づいて縮小する)。
【0032】
x軸420は(時間数単位の)時間である。期間421及び期間422が示されている。期間421では、温度403は当初、より高い値(約85度)である。一方、温度403は、期間422で平衡状態に落ち着く。
【0033】
値404及び405は、CR限度がそれぞれ使用される場合及び使用されない場合の輝度値を表す。基本的に、輝度値は、実装されているCR限度値402に基づいてより低くなるように制御される。図示されるように、輝度は少なくとも期間421の間より低いため、CRは(401と402との間の値の差によって示されるように)かなり低下する。
【0034】
例で上記を仮定すると、約85度から45度への温度の低下に伴い、輝度がCRで制限されないときと、輝度が使用されるときと、の比較が以下の関係性によって計算できる。
式3
【0035】
式3は特定の輝度劣化(LD)を計算するために統合されて良い。
式4
【0036】
このようにして、グラフ400のサンプル値を使用し、CRが制限されない場合、以下のデルタLDの量が生じる。
【0037】
そして、CRが制限される場合、以下の量のデルタLDが生じる。
【0038】
上式では、「開始」は開始期間ごとに使用されるニト(輝度の単位)の量である。
【0039】
図示されるように、実験的に見つけられたCR限度を実装することによって、開始期間ごとのニトの削減は大幅である(0.00704対0.024)。実験的に計算されたCR限度に輝度を制限することによって、OLED寿命は改善され得、劣化は回避され得る。
【0040】
CR限度を活用するために多様な技法が実装されて良い‐技法のそれぞれが制御システムに実装された状態で、以下がOLEDディスプレイとともに提供される。
測定されたOLED温度の関数として動作輝度を決定するためのルックアップテーブル、
測定されたOLED温度の関数として、動作輝度の間の関係性、及び
測定されたOLED温度の関数として、動作輝度を制御するための比例積分微分(PID)制御ループ。
【0041】
当業者が容易に理解するように、上述の説明は本発明の原理の実装の説明として意図される。本明細書は、本発明が以下の特許請求の範囲に定められるように、本発明の精神から逸脱することなく変更形態、変形形態、及び変更の影響を受けやすいという点で本発明の範囲または応用を制限することを目的としていない。