特許第6381620号(P6381620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6381620角度位置を把握可能な車セットを有する計時器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381620
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】角度位置を把握可能な車セットを有する計時器
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/00 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   G04C3/00 E
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-245105(P2016-245105)
(22)【出願日】2016年12月19日
(65)【公開番号】特開2017-116541(P2017-116541A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年2月3日
(31)【優先権主張番号】15202349.5
(32)【優先日】2015年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ラゴルゲット
(72)【発明者】
【氏名】マテュー・タルディヴォン
(72)【発明者】
【氏名】ルネ・リュフェネル
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−163128(JP,A)
【文献】 特開2002−277280(JP,A)
【文献】 特開2004−233132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 3/00
G04C 3/14
G01B 7/30
G01D 5/24 − 241
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログディスプレーと、及び前記アナログディスプレーの回転式インジケーターと一体的に回転する少なくとも1つの車セット(MB)とを備える計時器用ムーブメントを有する計時器であって、
前記車セット(MB)は、前記車セット(MB)の回転軸と実質的に垂直に延在しており少なくとも1つの開口(OV)が設けられている導電性のプレート(PT)と、及び前記開口(OV)の基準角度位置を検出する検出デバイスとを有し、
前記検出デバイスは、前記車セット(MB)と平行な平面内に配置されている第1の電極(E1)、第2の電極(E2)及び共通電極(Em)を有する平坦型の電極の組を少なくとも1つ有し、
前記共通電極(Em)は、前記第1の電極(E1)と前記第2の電極(E2)の部分に沿って配置されており、
前記開口(OV)は、不均衡の第1の位置にて前記第1の電極(E1)の上又は下に、均衡位置にて前記第1の電極(E1)と前記第2の電極(E2)の上又は下に、及び不均衡の第2の位置にて前記第2の電極(E2)の上又は下に、少なくとも部分的に位置することができるものであり、
前記車セットを段階的な完全な1回転させるステッピングモーターと、ステップ数の関数として(C2−C1)/(C1+C2)を表す測定信号を生成する測定回路(C1は、前記第1の電極と前記共通電極によって形成されるキャパシターの静電容量であり、C2は、前記第2の電極と前記共通電極によって形成されるキャパシターの静電容量である)とを備える
ことを特徴とする計時器。
【請求項2】
前記第1の電極(E1)、前記第2の電極(E2)及び前記共通電極(Em)はすべて、実質的に同一の面積を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器。
【請求項3】
前記開口(OV)は、前記不均衡の第1の位置、前記均衡位置及び前記不均衡の第2の位置にて、前記共通電極(Em)の上又は下に、少なくとも部分的にある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の計時器。
【請求項4】
前記第1の電極(E1)、前記第2の電極(E2)及び前記共通電極(Em)は、前記均衡位置にて完全に前記開口(OV)の上又は下にある
ことを特徴とする請求項3に記載の計時器。
【請求項5】
前記共通電極(Em)は、互いに電気的に接続している2つの平坦型の半電極(Em1、Em2)を有し、
これらの半電極(Em1、Em2)は、前記第1の電極(E1)と前記第2の電極(E2)によって形成されるアセンブリーの両側に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の計時器。
【請求項6】
前記共通電極(Em)は、互いに電気的に接続されている2つの平坦型の半電極(Em1、Em2)を有し、これらの半電極(Em1、Em2)は、前記第1の電極(E1)と前記第2の電極(E2)の間に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の計時器。
【請求項7】
前記第1の電極(E1)と前記第2の電極(E2)は、横に並んで配置しており、
前記共通電極(Em)は、実質的に、前記第1の電極(E1)と前記第2の電極(E2)に沿った環状の部分の形態で延在している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の計時器。
【請求項8】
請求項1に記載の計時器の計時器用ムーブメントの車セット(MB)の角度位置を把握する方法であって、
前記車セット(MB)をステップずつ回転させるステップと、
前記回転と同時に、回転のステップの関数として、(C1−C2)/(C1+C2)を測定するステップであって、ここで、C1は、前記第1の電極(E1)と前記共通電極(Em)によって形成されるキャパシターの静電容量であり、C2は、前記第2の電極(E2)と前記共通電極(Em)によって形成されるキャパシターの静電容量である、ステップと、
前記測定を表す曲線(CB)の最大及び最小を検出するステップと、及び
検出された最大及び最小によって前記車セット(MB)の角度位置を把握するステップと
を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログディスプレーと、及びアナログディスプレーの回転式インジケーターと一体的に回転する少なくとも1つの車セットとを有する計時器用ムーブメントを有する計時器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許EP0952426によって、このような車セットの角度位置を把握するために、特定の材料で作られた表面層と、及び車セットの回転軸とその周部の間の中間領域にある貫通開口とを車セットに設けることが知られている。近接センサーが車セットに対して固定されており、近接センサーは、車セットが基準位置にあるときに、開口のすぐ上又は下に位置している。このセンサーは、特定の材料を検知して、前記材料の近くにおける変化に依存する測定信号を与えることができる。したがって、開口がセンサーの上を通過するときに、測定信号は特定の形状、例えば、ピーク、形状を有する。
【0003】
車セットの角度位置を把握するために、測定信号を記録している間に、ステッピングモーターによって車セットを段階的に1回転を完了させることが提案されている。このようにして、前記ピークは、車セットが基準位置を通過することを示す。測定信号を表すグラフ上にて基準位置を識別すると、その基準位置から、グラフ上の別の点に対応する車セットの角度位置を推定することが容易になり、特に、車セットの初期角度位置、すなわち、回転を始める前の位置を推定することができる。
【0004】
欧州特許EP0952426は、誘導性センサー又は容量性センサーを用いることを提案しているが、容量性センサーが誘導性センサーよりも、環境、及び製造や組み立てによって発生する有害因子に対して敏感であることを明示している。容量性センサーは、特に、車セットの回転軸の方向の車セットとセンサーの間の縦あがきに影響される。この縦あがきが大きいほど、ピークの幅が広くなる。このように、基準角度位置の検出の精度は、直接、縦あがきの影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、容量性センサーによって車セットの角度位置を把握する手法であって、精度が車セットとセンサーの間の縦あがきの変化に影響されないものを提案することによって、前記課題を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明は、アナログディスプレーと、及び前記アナログディスプレーの回転式インジケーターと一体的に回転する少なくとも1つの車セットとを備える計時器用ムーブメントを有する計時器に関する。前記車セットは、前記車セットの回転軸と実質的に垂直に延在しており少なくとも1つの開口が設けられている導電性のプレートと、及び前記開口の基準角度位置を検出する検出デバイスとを有し、前記検出デバイスは、前記車セットと平行な平面内に配置されている第1の電極、第2の電極及び共通電極を有する平坦型の電極の組を少なくとも1つ有し、前記共通電極は、前記第1の電極と前記第2の電極の部分に沿って配置されており、前記開口は、不均衡の第1の位置にて前記第1の電極の上又は下に、均衡位置にて前記第1の電極と前記第2の電極の上又は下に、及び不均衡の第2の位置にて前記第2の電極の上又は下に、少なくとも部分的に位置することができる。
【0007】
第1の電極と共通電極は、容量C1の第1の電気的キャパシターを形成し、第2の電極と共通電極は、容量C2の第2の電気的キャパシターを形成する。車セットを段階的な完全な1回転させるステッピングモーターと、ステップ数の関数として(C2−C1)/(C1+C2)を表す測定信号を生成する測定回路とを用いることによって、最大と最小を示す曲線が得られる。開口が不均衡の第1の位置にあるときに最小となり、開口が不均衡の第2の位置にあるときに最大となり、開口が均衡位置にあるときに曲線はゼロ値となる。
【0008】
最大と最小が車セットの特定の角度位置の特徴を表しているので、測定信号を表すグラフ上で最大と最小を識別することができれば、グラフ上の別の点に対応する車セットの角度位置を推定することができる。特に、それから、車セットの初期角度位置、すなわち、車セットが回転を始める前の位置を推定することができる。これは、求めたい位置である。
【0009】
従来技術における場合のように単一の容量の測定ではなく、差分的な容量測定を利用することによって、曲線の形状を車セットと電極の間の縦あがきとは独立にすることが可能になる。したがって、縦あがきが非常に大きい場合であっても、曲線上の最大と最小を正確に識別することができる。また、従来技術の場合のように単一の位置ではなく、曲線上の車セットの2つの特徴的な位置を識別することによって、車セットの角度位置の把握の信頼性を向上させることができる。
【0010】
また、「平坦型の電極」とは、棒形の電極とは対照的に、相当部分が1つの平面内において少なくとも2つの方向に延在している導電性部分を意味している。
【0011】
また、車セットのプレートには、複数の開口が設けられていてもよく、検出デバイスは、前記タイプの電極の組を複数有することができる。この場合において、開口はそれぞれ、車セットの1つの特定の位置において、第1及び第2の電極に対向するように構成している。
【0012】
また、当該計時器は、技術的に可能な組み合わせのいずれにおいても、以下の特徴を一又は複数有することができる。
【0013】
実施形態の1つにおいて、3つの電極はすべて、実質的に同じ面積を有する。ただし、これに制限されない。この構成によって、容量C1と容量C2の間に相当に大きい不均衡が発生し、結果的に、曲線の最大と最小の振幅の絶対値が相当に大きくなる。また、電極のいくつかの構成において、曲線は、最大に対応するピークと最小に対応する底との間に、段を有する。「段」は、両側よりも傾斜が低い区画を意味する。上記構成によって、この段の長さを最小限にすることができる。
【0014】
実施形態の1つにおいて、開口は、不均衡の第1の位置、均衡位置及び不均衡の第2の位置において、共通電極の上又は下に少なくとも部分的にある。ただし、これに制限されない。この構成によって、特に明白なピークと底を得ることが可能になる。
【0015】
実施形態の1つにおいて、3つの電極はすべて、均衡位置において、開口の上又は下にある。ただし、これに制限されない。この場合において、車セットの開口は、前記電極の合計よりも小さいことができる。この構成によって、曲線のピークと底の間のいずれの段をもなくすことが可能になる。
【0016】
実施形態の1つにおいて、共通電極は、互いに電気的に接続される2つの平坦型の半電極を有し、これらの半電極は、第1及び第2の電極によって形成されるアセンブリーの両側に配置されている。ただし、これに制限されない。
【0017】
実施形態の1つにおいて、共通電極は、互いに電気的に接続される2つの平坦型の半電極を有し、これらの半電極は、第1及び第2の電極の間に配置されている。ただし、これに制限されない。
【0018】
実施形態の1つにおいて、第1の電極と第2の電極は、横に並んでおり、共通電極は、実質的に、第1及び第2の電極に沿って環状の部分の形にて延在している。ただし、これに制限されない。この構成によって、相当に大きい表面積を有する第1及び第2の電極を用いることができる。例えば、表面積の合計が実質的に開口の面積と同じであるような第1及び第2の電極を用いることが可能になる。第1及び第2の電極の表面積が相当に大きいことによって、曲線上の最大及び最小の振幅の絶対値が相当に大きくなる。
【0019】
本発明は、さらに、上の段落において記載した計時器の計時器用ムーブメントの車セットの角度位置を把握する方法に関する。例えば、ステッピングモーターによって、前記車セットをステップずつ回転させるステップと、前記回転と同時に、回転のステップの関数として、(C2−C1)/(C1+C2)を測定するステップであって、ここで、C1は、前記第1の電極と前記共通電極によって形成されるキャパシターの静電容量であり、C2は、前記第2の電極と前記共通電極によって形成されるキャパシターの静電容量である、ステップと、前記測定を表す曲線の最大及び最小を検出するステップと、及び検出された最大及び最小によって前記車セットの角度位置を把握するステップとを有する。
【0020】
添付図面を参照しながら以下の説明を読むことによって、他の特徴及び利点が明白になるであろう。ただし、単なる例であって、これに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係る計時器の計時器用ムーブメントの回転式車セットの角度位置を検出するデバイスを示しており、このデバイスは、前記車セットの上に重なり合っている。
図2図2aは、初期角度位置からの前記車セットの完全な1回転をする間に占められる第1の角度位置における図1の検出デバイスと回転式車セットを示している。図2bは、車セットの回転の間に図2aにおける車セットの位置に対応する状態にある段階的に行われる測定の曲線を示している。
図3図3aは、初期角度位置からの車セットの完全な1回転の間に占められる不均衡の第1の位置と呼ばれる第2の角度位置における図1の検出デバイスと回転式車セットを示している。図3bは、図3aにおける車セットの位置に対応する状態の測定曲線を示している。
図4図4aは、初期角度位置からの車セットの完全な1回転の間に占められる均衡位置と呼ばれる第3の角度位置における図1の検出デバイスと回転式車セットを示している。図4bは、図4aにおける車セットの位置に対応する状態の測定曲線を示している。
図5図5aは、初期角度位置からの車セットの完全な1回転の間に占められる不均衡の第2の位置と呼ばれる第4の角度位置における図1の検出デバイスと回転式車セットを示している。図5bは、図5aにおける車セットの位置に対応する状態の測定曲線を示している。
図6図6aは、初期角度位置からの車セットの完全な1回転の間に占められる第5の角度位置における図1の検出デバイスと回転式車セットを示している。図6bは、図6aにおける車セットの位置に対応する状態の測定曲線を示している。
図7図7aは、車セットの完全な1回転の後の初期角度位置における図1の検出デバイスと回転式車セットを示している。図7bは、図7aにおける車セットの位置に対応する状態の測定曲線を示している。
図8】本発明の第2の実施形態に係るこのようなデバイスの1つを示している。
図9】本発明の第3の実施形態に係るこのようなデバイスの1つを示している。
図10】本発明の第4の実施形態に係るこのようなデバイスの1つを示している。
図11】本発明の第5の実施形態に係るこのようなデバイスの1つを示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、計時器用ムーブメントを有する計時器に関する。当該計時器用ムーブメントは、ディスクの形態の車セットMBを有し、さらに、幾何学的な回転軸を定めるアーバーを有する。当該計時器用ムーブメントは、アーバー(図示せず)に固定マウントされている回転式インジケーターを有するアナログディスプレーに関連づけられている。前記インジケーターは、時間、分、秒又はアナログディスプレーのために意図された他の情報を示すために使用することができる。
【0023】
車セットMBは、車セットMBの回転軸と実質的に垂直に延在している導電性のプレートPTを有する。プレートPTには、環状の部分の形態の貫通開口OVが設けられており、これは、プレートPTの周部と、アーバーを通すために設けられる中央の穴との間の中間領域に位置している。貫通開口OVは、例えば、120度にわたって延在している。
【0024】
車セットMBの上又は下において車セットMBに対向するように、プレートPAが位置している。これは、例えば、半分のディスクの形態である。プレートPAは、実質的に、車セットMBのプレートPTと平行に、かつ、車セットMBの回転軸と垂直に延在している。好ましいことに、プレートPAは、3つの平坦型の電極がプリントされているプリント回路ボード(PCB)である。車セットと異なり、プレートPAは固定されている。すなわち、車セットは、プレートPAに対して回転することができる。
【0025】
プレートPAは、電極の組を有する。この電極の組は、3つの平坦型の電極によって構成している。これらを第1の電極E1、第2の電極E2及び共通電極Emと呼ぶ。これらの3つの電極E1、E2、Emは、環状の部分の形態である。共通電極Emは、第1の電極E1と第2の電極E2の部分に沿って配置されており、第1の電極E1と共通電極Emで容量C1の第1の電気的キャパシターを、そして、第2の電極E2と共通電極Emで容量C2の第2の電気的キャパシターを形成している。プレートPTに開口OVがあるために、容量C1、C2の値は、電極E1、E2、Emに対する車セットMBの角度位置に依存している。具体的には、容量C1は、開口OVが第1の電極E1と共通電極Emの上にあるときに最大となり、容量C2は、開口OVが第2の電極E2と共通電極Emの上にあるときに最大となる。なぜなら、開口OVが電極の上にあると、ある電極から別の電極への電荷の移動が、プレートPTの導電材料の存在によって促進されなくなるからである。
【0026】
図1に、プレートPA上のこれらの電極E1、E2、Emの第1の構成を示している。この構成において、3つの電極E1、E2、Emは、表面積が実質的に同一であり、また、共通電極Emが第1の電極E1と第2の電極E2の間に配置されている。また、電極E1、E2、Emの表面積の合計は、実質的に、開口OVの面積のオーダーである。図1に示す実施形態において、開口OVは、120度にわたって延在し、電極はそれぞれ、120/3x0.98=38度にわたって延在している(もちろん、このような角度的な特徴には制限されない)。したがって、これらの3つの電極E1、E2、Emが完全に開口OVに対向しており開口OVが完全に電極E1、E2、Emと対向しているような、プレートPAに対する車セットMBの角度位置が存在する(図4aに示している位置)。
【0027】
下で説明する例(これに制限されない)において、図1に対応している角度位置である車セットMBの初期角度位置を把握するために、車セットMBに、その回転軸のまわりの段階的な完全な1回転をさせることを提案する。この回転は、ステッピングモーター(図示せず)によって達成される。このステッピングモーターは、例えば、バイポーラ「ラベット(Lavet)」タイプのモーターである。モーターから車セットへの伝達は、好ましくは、減速ギヤ列(図示せず)によって、形成される。例えば、マイクロコントローラーを有する、電子測定回路は、車セットMBが動くステップ数の関数として(C2−C1)/(C1+C2)の値を測定し、測定曲線CBを生成するように構成している。
【0028】
図2a、3a、4a、5a、6a及び7aは、図1の位置からスタートする前記車セットMBの完全な1回転の間のプレートPAに対する車セットMBの順次的な角度位置を示している。図2aの位置においては、第1の電極E1のみが車セットMBの開口OVに対向している。図3aの位置では、第1の電極E1と共通電極Emが、開口OVに対向するように位置している。図4aの位置において、3つの電極E1、E2、Emのすべてが開口に対向している。図5aの位置では、共通電極Emと第2の電極E2が開口に対向している。図6aの位置では、第2の電極E2のみが開口OVに対向している。最後に図7aの位置においては、車セットMBがその初期位置に戻っており、3つの電極E1、E2、Emのいずれも開口OVに対向していない。
【0029】
図2b、3b、4b、5b、6b及び7bはそれぞれ、図2a、3a、4a、5a、6a及び7aにおいて車セットMBが占める位置に対応する時点における(C2−C1)/(C1+C2)を表す測定曲線CBを、車セットMBが動くステップ数Nの関数として示している。
【0030】
図2bに示しているように、車セットMBの初期位置から図2aの位置まで、測定曲線CBはゼロ値を有する。そして、図3bに示しているように、図2aの位置と図3aの位置の間において、値(C2−C1)/(C1+C2)は減少している。曲線CBは、電極E1と共通電極Emの両方が同時に開口OVに対向しているときに最小となっている。
【0031】
図4bに示しているように、図3aの位置と図4aの位置の間において、ゼロ値に戻るまで、曲線CBの値が増加している。そして、図5bに示しているように、図4aの位置と図5aの位置の間において、(C2−C1)/(C1+C2)の値が増加している。曲線CBは、電極E2と共通電極Emが両方とも同時に開口OVに対向しているときに最大となる。
【0032】
そして、図6bに示しているように、図5aの位置と図6aの位置の間において、曲線CBの値は減少してゼロ値に戻る。最後に、車セットMBがその初期角度位置に戻るまで、曲線CBはゼロ値を有する。
【0033】
そして、曲線CBを利用して、車セットMBの2つの特徴的な位置が計算される。第1の位置は、図3aの位置に対応するものであり、この第1の位置において、曲線CBは最小となる。第2の位置は、図5aの位置に対応するものであり、この第2の位置において、曲線CBは最大となる。最小に対応する位置及び最大に対応する位置を達成するステップ数を曲線CBから把握することができるので、それから車セットMBの初期位置を推定することは容易である。
【0034】
図1を参照して説明したものとは異なるようなプレートPA上の電極E1、E2、Emの構成及び/又はプレートPT上の開口OVの構成も可能である。
【0035】
図8の構成では、電極E1、E2、Emは図1のものと同様であるが、開口OVは80度にわたってのみ延在している(当然、この開口角度には制限されない)。したがって、3つの電極がすべて開口OVに対向しているような車セットMBの角度位置はない。この構成によって、図7bにおいて観察される最大に対応するピークと最小に対応する底の間の段を回避することができる。
【0036】
図9の構成において、3つの電極E1、E2、Emの表面積は同じではない。すなわち、第1の電極E1と第2の電極E2は同じ表面積を有するが、共通電極Emは、より大きな表面積を有する。図9に示す実施形態では、第1の電極E1と第2の電極E2は10度にわたって延在しており、共通電極Emは18度にわたって延在している(当然、これらの角度的な特徴には制限されない)。しかし、開口OVは120度にわたって延在している。したがって、開口OVの面積は、電極E1、E2、Emの表面積の和よりも相当に大きい。
【0037】
図10の構成では、第1の電極E1と第2の電極E2が横に並んでおり、共通電極Emは、2つの電気的に接続している半電極Em1、Em2によって形成されている(接続を示していない)。これらの半電極Em1、Em2は、第1の電極E1と第2の電極E2によって形成されるアセンブリーの両側に配置されている。代わりに、これらの2つの半電極を第1の電極E1と第2の電極E2の間に配置することもできる。
【0038】
図11の構成では、第1の電極E1と第2の電極E2が横に並んでおり、共通電極Emが電極E1及びE2の外側部分に沿って配置されている。また、第1の電極E1と第2の電極E2の表面積の合計は、実質的に、開口OVの面積と等しい。したがって、共通電極Emが開口OVに対向しているような角度位置はない。この構成によって、第1の電極E1と第2の電極E2の表面積を増加させることが可能になり、したがって、測定曲線CBのピークと底の振幅を増加させることが可能になる。また、この構成によって、図7bにおいて観察される最大に対応するピークと最小に対応する底の間の段を回避することができる。
【0039】
もちろん、本発明は、図示した例に制限されず、当業者が想到することができる様々な変形実施形態及び改変が可能である。例えば、車セットMBに、K≧2であるKの数の開口OVを設けることができ、また、プレートPAは、上で説明したような3つの電極の組をK≧2であるKセット有することができる。このことによって、より大きな絶対値を有する測定曲線のピークと底の振幅を得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0040】
CB 測定曲線
E1 第1の電極
E2 第2の電極
Em 共通電極
Em1、Em2 半電極
MB 車セット
OV 開口
PA、PT プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11