(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381683
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ガス拡散層、当該ガス拡散層を備えた電気化学セル、及び電気分解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/06 20060101AFI20180820BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20180820BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20180820BHJP
C25B 13/04 20060101ALI20180820BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20180820BHJP
【FI】
C25B9/06
H01M4/86 M
C25B13/02 302
C25B13/04 302
!H01M8/10
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-573968(P2016-573968)
(86)(22)【出願日】2015年6月15日
(65)【公表番号】特表2017-526808(P2017-526808A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】EP2015063262
(87)【国際公開番号】WO2015193211
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2017年2月16日
(31)【優先権主張番号】14172465.8
(32)【優先日】2014年6月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ハーン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シュピース
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン シュトラウプ
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−002993(JP,A)
【文献】
特開平07−062582(JP,A)
【文献】
特表2009−526347(JP,A)
【文献】
米国特許第06312572(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B1/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セル(2)のバイポーラ板(10)と、電極(6a、6b)との間に取り付けるためのガス拡散層(8)であって、
重なり合って積層された少なくとも2つのレイヤを含んでおり、
前記レイヤのうちの少なくとも1つは、累進的なばね特性曲線を備えたばね構成要素(12a、12b、12c)として構成されており、
ただし、前記ばね構成要素(12a、12b、12c)は、網目(21b)の形状で構成されている、
又は、
前記ばね構成要素(12a、12b、12c)には、1つ以上の螺旋体(22)が含まれている、
ことを特徴とするガス拡散層(8)。
【請求項2】
少なくとも3つのレイヤが設けられており、
前記ばね構成要素(12a、12b、12c)は、前記ガス拡散層(8)の外側のレイヤを構成している、
請求項1に記載のガス拡散層(8)。
【請求項3】
重なり合って積層された前記少なくとも2つのレイヤは、それらの構造及び/又は組成が互いに異なっている、
請求項1又は2に記載のガス拡散層(8)。
【請求項4】
前記ばね構成要素(12a、12b、12c)は、前記ばね特性曲線が、異なる経過を有する少なくとも2つの領域に区分可能である、ように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のガス拡散層(8)。
【請求項5】
前記ばね構成要素(12a、12b、12c)は、5barまでの押圧力の際に、最大弾性変形に対して60%までになる、前記ばね構成要素(12a、12b、12c)の変形が行われる、ように構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項に記載のガス拡散層(8)。
【請求項6】
前記ばね構成要素(12a、12b、12c)は、5barと25barとの間の押圧力の際に、最大弾性変形に対して60%と90%との間にある、前記ばね構成要素(12a、12b、12c)の変形が行われる、ように構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のガス拡散層(8)。
【請求項7】
前記ばね構成要素(12a、12b、12c)は、導電性材料から構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のガス拡散層(8)。
【請求項8】
前記ばね構成要素(12a、12b、12c)は、外形が板(12a、12c)の形状で構成されている、
請求項1から7までのいずれか1項に記載のガス拡散層(8)。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のガス拡散層(8)を備えた電気化学セル(2)。
【請求項10】
請求項9に記載の電気化学セル(2)を備えた電気分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル用の、特にPEM電気分解セル用のガス拡散層に関する。本発明はさらに、上記のようなガス拡散層を備えた電気化学セル、特にPEM電気分解セル、又はガルバニ電池ならびに電気分解装置に関する。
【0002】
電気化学セルは広く公知であり、ガルバニ電池と電気分解セルとに区分される。電気分解セルとは、電流によって強制的に化学反応が引き起こされる装置のことであり、ここでは電気エネルギの少なくとも一部が化学エネルギに変換される。ガルバニ電池とは、化学エネルギを電気エネルギに自発的に変換する(電気分解セルとは)相補的な装置のことである。このようなガルバニ電池の公知の装置は、例えば燃料電池である。
【0003】
水素ガス及び酸素ガスを形成するために電気分解セルを用い、電流によって水を分解することは十分に公知である。ここでは主に2つの技術システム、すなわちアルカリ電気分解装置と、PEM(Proton-Exchange-Membrane)電気分解装置とが区別される。
【0004】
技術的な電気分解装置の核心部分は、2つの電極及び電解質を含む電気分解セルである。PEM電気分解セルでは、電解質はプロトン導電性膜から構成され、この膜の両側に電極が設けられている。膜及び電極からなるユニットは、MEA(英語:Membrane-Electrode-Assembly、ドイツ語:Membran-Elektroden-Einheit)と称される。これらの電極には、複数の電気分解セルから構成される電気分解スタックの組立状態において、ガス拡散層を介して、複数のいわゆるバイポーラ板が接触接続しており、これらのバイポーラ板により、このスタックの個々の電気分解セルが互いに分離されている。ここでは電気分解セルのO
2側は正極に、またH
2側は負極に対応し、これらは、それらの間に設けられた膜・電極ユニットによって分離されている。
【0005】
PEM電気分解セルにはO
2側に完全な脱塩水が供給され、この脱塩水は、アノードにおいて酸素ガス及びプロトン(H
+)に分解される。プロトンは、電解質膜を通って移動してカソード(H
2側)で水素ガスに再結合される。電極に接触しているガス拡散層により、電極の接触接続に加えて、最適な水分配(ひいては膜の濡れ性)及び生成ガスの搬出が保証される。したがってガス拡散層として必要になるのは、電極に良好かつ持続的に接触接続する導電性の多孔性要素である。付加的な要求としては、場合によっては電気分解装置に生じる製造許容差を補償すべきであり、これにより、どのような許容差が生じた場合であってもMEAの均一な接触接続を可能になるようにする。
【0006】
これまでは一般的に、焼成した金属板がガス拡散層として使用されていた。この金属板は確かに、導電率及び多孔性についての要求を満たしてはいたが、ガス拡散層の両面における電気分解セルの構成部分の付加的な許容差を補償することは不可能であった。さらにこのような板についての製造コストは比較的高く、またこのような板を製造する際に必要なプレス圧に起因して、サイズについての大きさの制限がある。さらに、サイズの大きな構成部分では、容易には制御できない遅延問題が発生する。
【0007】
アルカリ電気分解装置において電気コンタクトを作製するため、弾力性要素を備えたガス拡散電極を使用することは、例えば国際公開第2007/080193号(WO 2007/080193 A2)及び欧州特許出願公開第2436804号明細書(EP 2436804 A1)に記載されている。
【0008】
欧州特許第1378589号明細書(EP 1378589 B1)にはばね板が記載されており、ここでは個々のばね要素が交互に上及び下に向かって曲げられている。このばね板は、イオン交換電気分解装置のカソード側だけに組み込まれているため、このばね板はカソードに直接接触接続する。
【0009】
米国特許出願公開第2003/188966号明細書(US 2003/188966 A1)には、分離壁とカソードとの間に配置されている、電気分解セル用の別のばね構成要素が記載されている。このばね構成要素には、複数の板ばね要素が含まれており、これらの板ばね要素は、均一な適合化のため、カソードに接触している。
【0010】
さまざまに構成された別の複数のガス拡散電極は、国際公開第2002035620号(WO 2002035620 A2)、独国特許出願公開第10027339号明細書(DE 10027339 A1)及び独国特許出願公開第102004023161号明細書(DE 102004023161 A1)に記載されている。
【0011】
本発明の根底を成す課題は、電気化学セル、特に電気分解セル又はガルバニ電池に、特にバイポーラ板の領域において、場合によって発生する構成部材許容差を補償することである。
【0012】
この課題は、本発明により、電気化学セルのバイポーラ板と電極との間に取り付けるためのガス拡散層によって解決され、このガス拡散層には、重なり合って積層された少なくとも2つのレイヤが含まれており、これらのレイヤのうちの1つは、累進性のばね特性曲線を備えたばね構成要素として構成されている。
【0013】
上記の課題はさらに本発明により、上記のようなガス拡散層を備えた電気化学セル、特にPEM電気分解セルによって解決される。
【0014】
上記の課題はさらに本発明により、上記のようなPEM電気分解セルを備えた電気分解装置によって解決される。
【0015】
ガス拡散層について以下で説明する複数の利点及び複数の有利な実施形態は、その意味に則して、電気化学セル、ガルバニ電池、特に燃料電池、PEM電気分解セル及び/又は電気分解装置に適用可能である。
【0016】
本発明は、累進的なばね特性により、接触する複数の構成部材のあらゆる製造許容差状態において、押圧力が十分になることが保証される、という知識に基づいている。ここでは累進的なばね特性のガス拡散層への具現化は、ばね構成要素の幾何学形状によって得られる。
【0017】
ばね構成要素とは、弾性的に復元する特性を有しており、すなわち負荷の下ではしなり、かつ、負荷を取り除いた後は元の形態に戻る、ガス拡散層の層又はレイヤのことである、と理解される。
【0018】
ばね特性曲線は、ばねの力・変位経過(プログレス)を示す。すなわちこのばね特性曲線は、線図の形態で、ばねの力・変位比の効率がどのくらいであるのかを示すのである。累進的なばね特性曲線は、これが、均一に徐々に負荷を加え続けると、ばね変位がますます小さくなる、という特性を有する。累進的な特性曲線では、進んだ変位に比べて、使用され消費される力が増大する。これとは択一的に、線形なばね特性曲線及び累退的なばね特性曲線も存在する。
【0019】
考えられ得る実施例において、上記の電気化学セルのガス拡散層には少なくとも3つのレイヤが含まれており、したがって内側のレイヤ及び外側のレイヤが含まれている。特に有利であることが判明したのは、ばね構成要素が、ガス拡散層の外側のレイヤを構成する場合である。
【0020】
「外側のレイヤ」は、ガス拡散層に隣接する構成要素に接触するために設けられている。
【0021】
本発明において「外側のレイヤ」とは、2つ以上のレイヤがある場合に、外側の、特にバイポーラ板に直接隣接するレイヤが、累進的なばね特性曲線を有するばね構成要素として構成されている、ことであると理解される。
【0022】
累進的なばね特性曲線を有するばね構成要素をガス拡散層として使用することにより、通常の押圧力(約5〜25bar)の領域において、ばね構成要素の大きな変形が行われるため、大きな構成部材許容差が調整されるのに対し、過負荷時にはさらなるばね変位が小さくなるため、このばね構成要素が大きな圧力に持ちこたえる、という複数の重要な利点が得られる。これにより、動作押圧力をはるかに上回る負荷の場合に、ばね構成要素の過大な塑性変形が阻止される。
【0023】
この弾力性は、第1に、MEAとバイポーラ板との間の電気的な接触接続を形成するために使用され、この電気的な接触接続は、小さな押圧力の際にもすでに保証される。第2にこの押圧力により、MEAとの均一かつ平坦な接触接続が保証される。構成的な型押しに応じて、上記のばね構成要素により、流入する水が事前に分配させられる。さらにこのばね構成要素を介して電流が流れる。
【0024】
重なり合って積層された上記の少なくとも2つのレイヤは有利には、それらの構造及び/又は組成が互いに異なっている。これは特に、これらのレイヤの機能によって特定される。ガス拡散層が2つのレイヤからなる構造の場合、1つのレイヤはバイポーラ板上にあり、別の1つのレイヤは電極上にある。これに対応して、2つのレイヤの特性が異なり、ひいては構造ないしは組成が異なる。外側の2つのレイヤ間に1つ以上の中間レイヤが設けられる場合にも同じことが成り立つ。
【0025】
ガス拡散層には有利には3つのレイヤ、すなわち、接触接続構成要素と、拡散構成要素と、ばね構成要素とが含まれている。内側の接触接続構成要素は、ガス拡散層を電極に均一に接触接続するために使用される。したがって例えばフリース又は極めて細かく穿孔された板などの細かな材料を使用することが推奨される。中間の拡散構成要素は、発生したガスの搬出に使用され、ここではすべての電流もこの構成要素を通過する。外側のばね構成要素は、すでに説明したようにもっぱら、隣接する複数の部材の許容差状態に依存せずに、可能な限りに安定した押圧力を保証する。
【0026】
許容差補償に使用する際の複数の要求を満たす、ばね構成要素の特に高いフレキシビリティを考慮して、このばね構成要素を構成し、ばね特性曲線が、異なる経過(プログレス)を有する少なくとも2つの領域、特に3つの領域に区分可能である、ようにする。ここでこのばね構成要素は、最大の押圧力の領域において、最大の弾性変形によって特徴付けられる。ここで最大の弾性変形とは、ばね構成要素の弾性特性と、純粋な塑性特性との間の境界のことである、と理解される。ここで部分的に弾性でありかつ部分的に塑性であるばね構成要素の特性は、最大の塑性変形下でも発生する。特にばね構成要素の最大の弾性変形変位は、約50barの押圧力時に得られる。約50barを上回るとばねは純粋に塑性的に振る舞い、すなわちこの負荷及びこれを上回る負荷の際にはこの変形は非可逆的である。
【0027】
構成部材許容差を迅速に補償することを考慮して、有利には、5barまでの押圧力の際に、最大の弾性変形に対して60%まで、特に80%までになる、ばね構成要素の変形が行われるように、ばね構成要素を構成する。
【0028】
さらに、ばね構成要素は有利には、5barと25barとの間の押圧力の際に、最大の弾性変形に対して60%と90%との間にある、ばね構成要素(12a、12b、12c)の変形が行われる、ように構成されている。
【0029】
ばね構成要素は有利には、導電性材料から構成されており、特に貴金属、チタン、ニオブ、タンタル及び/又はニッケルから構成されている。ばね構成要素のこのような組成により、特にこれを電流分配器として使用することができる。
【0030】
第1の有利な実施形態によれば、ばね構成要素は、穿孔された板の形態で構成される。このような構成の特徴は、比較的製造が容易なことである。
【0031】
択一的に有利な実施形態によれば、ばね構成要素は、網状組織の形態で構成される。ここでは、この網状組織の種類及び密度により、ばね特性を容易に変化させることができる。
【0032】
ばね構成要素には有利には1つ以上の螺旋体が含まれている。ここではばね特性は、螺旋体の形状及び配置によって特定される。
【0033】
本発明の複数の実施例を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】例示的にPEM電気分解セルとして構成されている電気化学セルの基本構造を示す図である。
【
図3】ガス拡散層のばね構成要素の第1実施形態の側面図である。
【
図4】ガス拡散層のばね構成要素の第1実施形態の平面図である。
【
図5】ガス拡散層のばね構成要素の第2実施形態の側面図である。
【
図6】ガス拡散層のばね構成要素の第2実施形態の平面図である。
【
図7】
図5及び
図6に示した第2実施形態の一部である螺旋体を示す図である。
【
図8】ガス拡散層のばね構成要素の第3実施形態の側面図である。
【
図9】ガス拡散層のばね構成要素の第3実施形態の斜視図である。
【0035】
同じ参照符号は、図が変わっても意味は同じである。
【0036】
図1には、PEM電気分解セルとして構成されている電気化学セル2の構造が略示されている。電気化学セル2は、電流によって水を分解して水素及び酸素を生成する、ここでは詳しく示していない電気分解装置の一部である。
【0037】
電気化学セル2は、プロトン導電性膜4(Proton-Exchange-Membrane、PEM)からなる電解質を有し、この膜4の両側には電極6a、6bが設けられている。膜及び電極からなるユニットは、MEA(Membrane-Electrode-Assembly)と称される。ここでは参照符号6aでカソードを、参照符号6bでアノードを示している。電極6a、6bにはそれぞれガス拡散層8が接触している。ガス拡散層8には、いわゆるバイポーラ(双極)板10が接触接続しており、これらのバイポーラ板は、電解質スタックの組立状態において、複数の個別の電解質セル2を互いに分離している。
【0038】
電気化学セル2には水が供給され、この水はアノード6bにおいて酸素ガスO
2及びプロトンH
+に分解される。プロトンH
+は、電解質膜4を通ってアノード6aの方向に移動する。カソード側においてプロトンは、水素ガスH
2に再結合される。
【0039】
別の実施例において電気化学セル2は、電流を形成するためのガルバニ電池ないしは燃料電池として構成されている。本発明によれば、
図1に示した電気分解セルに類似して、このように形成される電気化学セル2のガス拡散層8を変更することができる。したがって一般性を制限することなく以下では、例示的に、電気分解セルとして構成された電気化学セル2を引き合いに出すことにする。
【0040】
ガス拡散層8により、水の最適な分配及び生成ガスの搬出が保証される。ガルバニ電池の場合、ガス拡散層8は対応して、それぞれの電極への反応物質の供給に使用される。ここで重要であるのは、いずれの場合においてもガス拡散層8が、ガス状の生成物ないしは出発物質に対して透過性を有することである。
【0041】
ガス拡散層8は、特に電気分解セルの場合にさらに電流分配器として使用される。これらのような理由から、ガス拡散層8は、導電性かつ多孔性材料から形成される。
【0042】
図示の実施例においてガス拡散層8により、構成部材許容差、特に接触するバイポーラ板10の構成部材許容差が補償される。このためにガス拡散層8には、重なり合って積層された複数のレイヤが含まれており、外側のレイヤは、ばね構成要素12a、12b、12c(
図3〜
図9を参照されたい)として構成されており、これらのばね構成要素は、累進的なばね特性曲線を有する。ガス拡散層8には特に、図示した接触接続構成要素と、拡散構成要素と、ばね構成要素とが含まれており、これらは、構造及び/又は組成が互いに異なっている。
【0043】
図2には、2つの累進的なばね特性曲線(プログレス曲線のばね特性)K1及びK2が例示されている。x軸にはSでばね変位が、またy軸にはFでばね力が示されている。
図2からわかるようにこのばね特性曲線は、3つの領域に区分されている。図示の実施例において約50barにある最大の弾性変形V
maxは、このばね特性曲線の弾性的な経過と、塑性的な経過との間、ないしはこのばねの弾性的な特性と、塑性的な特性との間の移行点を表している。最大の弾性変形V
max(=100%)の右側では、このばねの純粋な塑性変形が行われる。
【0044】
第1領域Iにおいてばね構成要素は、5barまでの比較的小さい押圧力において比較的大きく変形し、特にばね特性曲線K1の変形は20%と30%との間にあり、ばね特性曲線K2の変形は、60%を上回るところにも達している。
【0045】
押圧力が5barと25barとの間にある第2領域IIにおいて、ばね構成要素の変形は、最大の弾性変形V
maxに対して約60%と約90%との間にある。
【0046】
さらにばね構成要素は、25barを上回る押圧力の場合にわずかな変形だけしか発生しないように構成されているため、正規化したばね変位Sの部分は、K1に対しては60%と100%との間、K2に対しては約85%と100%との間でカバーされている。
【0047】
図3及び
図4には、ばね構成要素12aを備えたガス拡散層8の第1実施例が示されている。このばね構成要素には、表面においてカットされ、曲げられた複数の三角形16を備えた板14が含まれており、これらの三角形は、板14に弾性的な特性を付与している。ばね構成要素12aのこのような弾性的な特性は累進的であるが、板14の大きな塑性変形を回避するために機械的に制限しなければならない。この場合にこれは、三角形16の間に型押しされた複数のスペーサ18によって行われる。これらのスペーサ18は、上に曲げられた三角形16よりも格段に硬いため、ばね構成要素12aのばね特性曲線は、スペーサ18が、隣接しているバイポーラ板10と接触するとただちに大きく上昇する。
図3からわかるように、ガス拡散層8には、フリースから構成された接触接続構成要素19がさらに含まれており、これらの接触接続構成要素は、組立状態において電極6a、6bに接触する。
【0048】
図5及び
図6には、別のばね構成要素12bを備えたガス拡散層8の第2実施形態が記載されている。ここでこのばね構成要素12bには螺旋網状組織が含まれている。この螺旋網状組織には、並んで配置された複数の横棒20が含まれており、この横棒の周りに複数の螺旋体22が巻回されている。
図7にはさらに、個々の螺旋体22が示されており、これらの螺旋体は、この網状組織のばね作用に対する基礎を構成している。螺旋網状組織12bが得られるのは、同じ幾何学形状を有するが巻回方向が逆の複数の螺旋体22が交互に、互いに押し込み合い、かつ、横棒20によって接続される場合である。横棒20は、例えばプラスチックから作製される。螺旋体22は、例えば貴金属、チタン、ニオブ、タンタル又はニッケルなどの導電性材料からなる。
【0049】
図5からはさらに、カバーレイヤ24を読み取ることができ、このカバーレイヤは、ガス拡散層8の接触接続構成要素19として機能する。ここでカバーレイヤ24は、エキスパンドメタルからなる層、又は、別の多孔性かつ機械的に安定した材料からなる層から構成されている。例えば、ワイヤクロス、発泡金属又は焼成した金属板上のフリースも考えられる。
【0050】
図8及び
図9には、第3のばね構成要素12cを備えたガス拡散層8の第3実施形態が示されている。ばね構成要素12cはここでは、交互に逆の起伏を有する波打ち板式に型押しされている。この形状は、図示した方向5への流れの案内が同時に行われるという重要な利点を有する。ここでは弾力性は、極めて柔らかいばねから、衝突に近い特性まで(
図2を参照されたい)の3段階に累進的に増大して発生する。
図8及び
図9では参照符号26により、エキスパンドメタルにおける固定点である箇所が示されている。
図9の斜線が付けられた面28は、カバーレイヤ24ないしは接触接続構成要素19を示しており、これは、複数の電極6a、6bのうちの1つの方を向いている。
【0051】
図8及び
図9に示した、ばね構成要素12cの実施形態は、実質的に平坦に構成されている。ばね構成要素12cの複数の弾性部分は、面の拡がり方向に対して実質的に垂直方向に延在する横方向(
図8)に関し、種々異なる複数の間隔で配置されており、これによって累進的なばね特性曲線が得られる。これによって達成されるのは、変位が小さい場合に、ばね構成要素12cのいくつかのわずかな、外側にある部分だけ変形することである。より大きな変位の場合には、ばね構成要素12cの変形も、変形される部分の個数も共に増大し、これにより、変形に必要な力が非線形に増大し、したがって累進的なばね特性曲線が結果的に得られる。
【0052】
上で説明したすべてのばね構成要素12a、12b、12cないしはガス拡散層8は、これらが、電気分解装置において発生する構成部材許容差を補償して、いかなる許容差の場合であっても膜・電極ユニットの均一な接触接続を可能にする、という特性を有する。ばね構成要素12a、12b、12cの累進的なばね特性曲線に起因して、過負荷の場合のガス拡散層8の片面の過剰な変形を阻止することができる。さらにすべての実施例において、ばね構成要素12a、12b、12cと、接触接続構成要素19、24、28との間に、ここでは詳細に示していない多孔性の拡散構成要素を取り付けることが考えられる。