【実施例】
【0054】
本発明のさらなる詳細は、次の非限定的実施例において記載される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、単に例示として示されており、添付の実施形態を限定するとして解釈されるべきではないことは理解されるべきである。本開示およびこれらの実施例から、当業者は本発明のある種の特徴を確認でき、その精神および範囲を逸脱することなく、種々の用法および状態に適応させるために本発明の種々の変更および改変を加えられる。これらの実施例において用いられる材料および方法は次のとおり記載される。
【0055】
マウス
正常メスC57BL/6マウス、6から12週齢をウサギ抗マウス胸腺細胞グロブリンポリクローナル抗体(mATG)のin vivo研究のために用い、Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME)またはTaconic Laboratories(Hudson、NY)から得た。アレムツズマブ関連研究は、Charles River Laboratories/Genzyme Corp.から得たヒトCD52(huCD52)トランスジェニック(Tg)マウス、6〜12週齢を用いた。マウスを実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for Care
and Use of Laboratory Animals)に従い、American Association for Accreditation of Laboratory Animals Care I認証評価の下で収容および保持し、これらの研究で用いたすべての動物プロトコールは、Institutional Animals Care and Use Committeeによって認可された。
【0056】
非臨床薬理学研究のために用いたhuCD52 Tgマウスは、Xenogen(Cranbury、NJ、USA)によって作製された。マウスを作製するために、ヒト染色体1由来のゲノムDNAおよそ145キロベースを含有するバクミド構築物をCD−1胚性幹細胞のマウスゲノムに無作為に組み込んだ。このバクミドが含有したヒトゲノムDNAの広がりのために、構築物はヒトCD52に加えて未知の機能の合計5個の部分的または全長遺伝子を含んだ。バクミドに含有された5個の部分的または全長遺伝子セグメントは、次のとおりであった:ヒトCD52遺伝子、新規遺伝子(DKFZP434L0117)の3’末端、SH3BGRL3遺伝子(SH3ドメイン結合富グルタミン酸タンパク質様3)、ソキウス(socius)(SOC)に関する遺伝子、AIM1L(メラノーマ1様において欠如(absent in melanoma 1−like))遺伝子およびZnフィンガータンパク質683遺伝子。樹立系統3個は作製され、107系統はGenzymeで確立された。
【0057】
抗体投与
ポリクローナル抗体mATGおよびrbIgGをRuzekら、Transplantation、88(2):170〜9頁(2009)に記載のとおり調製し、実験に応じた種々のレジメンで腹腔内注射によって投与した。モノクローナル抗体アレムツズマブは、0.5mg/kgの1回注射または0.5mg/kg/日の3日もしくは5日のいずれかのサイクルのいずれかで静脈内に投与した。
【0058】
Myozyme(登録商標)処置
組換えヒトアルグルコシダーゼアルファ(rhGAA、Genzyme Corp.によってMyozyme(登録商標)として販売)を製剤された薬物製品として用いた。異なる記載がなければ、マウスはrhGAA 20mg/kgで急速投与尾静脈注射によって毎週処置した。すべてのマウスは、rhGAA投与の前に腹腔内へのジフェンヒドラミン(Baxter Healthcare Corporation、Deerfield、IL)5から30mg/kgで予防的に処置された。対照動物は、滅菌0.9%生理食塩水またはrhGAA製剤用緩衝液のいずれかで静脈内処置された。
【0059】
メトトレキサート処置
メトトレキサート(Calbiochem カタログ#454125)は、0.5、1.0、2.0または5mg/kgで腹腔内注射によって1〜3サイクル(各サイクルは実験に応じた3日、6日または7日連続の注射に相当する)投与した。毎月のmATG処置を含む研究では、メトトレキサートは、最初のmATG処置または最初の3回のmATG処置のいずれかの0、24および48時間後に5mg/kgで腹腔内へ投与した。mATGを0および4日目に投与する移植研究では、メトトレキサートを2mg/kgで0から6日目まで毎日、0.5mg/kgで0から6日目まで毎日、または0.5mg/kgで0から11日目まで毎日与えた。
【0060】
mATG処置
ポリクローナル抗体mATGを腹腔内注射として5mg/kgを4週間ごとまたは移植設定の際は初回投与が移植の日(0日目)に与えられ、4日間隔で与えられる2回の20mg/kg投与として投与した。
【0061】
種々の組織由来の細胞調製物
脾細胞およびリンパ節細胞調製物に関して単一細胞懸濁物を採取したマウス脾臓または鼠径部および腸間膜のリンパ節からフロストスライドガラス間での均質化によって2%FCSを含有するPBS中に作製した。脾細胞調製のために赤血球を赤血球溶解溶液(BD
Biosciences、San Diego、CA)での1〜2分間のインキュベーションによって溶解した。血液を後眼窩採血によって単離し、細胞調製を赤血球溶解溶液(BD Biosciences)で赤血球を20〜30分間溶解することによって実施した。すべての組織調製物について、生存細胞をViCell automated counter(Beckman Coulter、Fullerton、CA)を用いて数えた。単離後にすべての細胞調製物を下に記載するアッセイで用いる前にPBS/2%FCSで洗浄した。
【0062】
フローサイトメトリー
異なる組織中の細胞集団の評価のために組織の単一細胞懸濁物を、抗マウスCD4、CD8、CD25、CD44、CD62L(すべての抗体はBD BiosciencesまたはeBioscience、San Diego、CA由来)を含んだ蛍光色素コンジュゲート抗体とインキュベートした。細胞内Foxp3発現分析を抗Foxp3製造者のプロトコール(eBiosciences、San Diego、CA)に従って実施した。抗体とのインキュベーション後、細胞を洗浄し、フローサイトメトリー(FACSCanto、BD BiosciencesおよびFCS Express softw
are、De Novo Software、Los Angeles、CA)によって分析した。
【0063】
評価した細胞集団は次のとおり定義された:
総CD4 T細胞:CD4
+CD8
-、
総CD8 T細胞:CD8
+CD4
-、
CD4未処理細胞:CD4
+CD25
-CD62L
+CD44
-、
CD4メモリー細胞:CD4
+CD25
-CD62L
-CD44
+、
未処理CD8 T細胞:CD8
+CD44
-CD62L
+、
CD8メモリー細胞:CD8
+CD44
+CD62L
-、
制御性T細胞:CD4
+CD25
+Foxp3
+、
総B細胞:CD19
+、
B2/濾胞性B細胞:CD19
+CD21
intCD23
hi、
B1B細胞:CD19
+CD43
+CD11b
+、
移行性1B細胞:CD19
+CD93
+CD23
-IgM
hi、
移行性2B細胞:CD19
+CD93
+CD23
+IgM
hi、
移行性3B細胞:CD19
+CD93
+CD23
+IgM
lo、
辺縁帯B細胞:CD19
+CD21
hiCD23
lo、および
B10B細胞:CD19
+CD5
+CD1d
+。
【0064】
in vitroブロッキング研究は、100μg/mlまでのmATGはこれらの集団の検出を妨げないことを決定した。
【0065】
抗mATG IgG ELISA
マウス血清中の抗mATG IgGのレベルを酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって分析した。簡潔には96ウエルプレート(Corning Inc.、Corning、NY、USA)を一晩、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のウサギIgG 1μg/mlでコートした。Super Block Blocking Buffer(Thermo Scientific、Rockford、IL、USA)でのブロッキング後、血清の段階希釈物をウサギIgGコートプレートに2連で添加し、1時間、37℃でインキュベートした。プレートを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG二次抗体(Southern Biotechnology Associates、Birmingham、AL、USA)を添加し、1時間、37℃でインキュベートした。最終洗浄後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(BioFx、Owings Mills、MD、USA)を添加し、15分間、室温で発色させた。反応を1N HClの添加によって停止させ、吸光度値を450/650nmでELISAプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)で読み取った。エンドポイント力価は、平均が吸光度0.100(Softmax software(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)を用いる)を超えた最低希釈と定義された。
【0066】
mATG特異的IgG ELISA
マウス血清をELISAで決定した。簡潔には96ウエルプレート(Corning Inc.、Corning、NY、USA)を一晩、ヤギ抗ウサギIgG−Fc断片抗体(Bethyl Laboratories、TX、USA)1μg/mlでコートした。0.5%BSA(高純度)でのブロッキング後、標準対照および血清試料を必要に応じて希釈し、コートプレートのウエルに2連で添加し、1時間、36〜38℃で穏やかに振盪させてインキュベートした。プレートを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG−Fc断片抗体(Bethyl Laboratories、TX、USA)を適切に添加し、1時間、36〜38℃で穏やかに振盪させてインキュベ
ートした。最終洗浄後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(BioFx、Owings Mills、MD、USA)を添加し、15分間、23〜25℃で発色させた。反応を1N HCLの添加によって停止させ、吸光度値を450/650nmでELISAプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)で読み取った。最終濃度は標準曲線を内挿された。本方法によるmATG特異的IgGの測定値は218,000を超える抗mATG IgGの力価によってわずかにだけ影響を受けることは予定された。
【0067】
抗アレムツズマブIgG ELISA
マウスは、アレムツズマブ処置の4〜6日後に採血し、特異的抗アレムツズマブIgGをELISAによって測定した。簡潔には96ウエルプレート(Corning Inc.、Corning、NY、USA)を一晩、PBS(pH7.2)中のアレムツズマブ3μg/mlでコートした。PBS中の0.1%BSAでのブロッキング後、血清の段階希釈物を、アレムツズマブコートプレートに2連で添加し、1時間、37℃でインキュベートした。プレートを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG二次抗体(Southern Biotechnology Associates、Birmingham、AL、USA)を添加し、1時間、37℃でインキュベートした。最終洗浄後、TMB基質(BioFx、Owings Mills、MD、USA)を添加し、15分間、室温で発色させた。反応を1N HClの添加によって停止させ、吸光度値を450/650nmでELISAプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)で読み取った。エンドポイント力価は、Excel software(Microsoft、Redmond、WA、USA)を用いて0.2の吸光度値で内挿された対数的に変換した試料希釈の真数と定義された。
【0068】
抗rhGAA IgG ELISA
マウスは、rhGAA処置の4〜6日後に採血し、特異的IgGをELISAによって測定した。簡潔には96ウエルプレート(Corning Inc.、Corning、NY、USA)を一晩、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中のrhGAA 5μg/mlでコートした。PBS中の0.1%BSAでのブロッキング後、血清の段階希釈物を、rhGAAコートプレートに2連で添加し、1時間、37℃でインキュベートした。プレートを洗浄し、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG二次抗体(Southern
Biotechnology Associates、Birmingham、AL)を添加し、1時間、37℃でインキュベートした。最終洗浄後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(TMB、KPL、Gaithersburg、MD)を添加し、15分間、室温で発色させた。反応を1N HClの添加によって停止させ、吸光度値を450/650nmでELISAプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)で読み取った。エンドポイント力価は、Softmax software(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて0.2の吸光度値をもたらした試料希釈の逆数と定義された。
【0069】
ex vivo研究
C57BL/6(Jackson Laboratories)またはE4GAAKO(Charles River)マウス、8〜12週齢にメトトレキサート(Calbiochem カタログ#454125)5mg/kgを腹腔内注射で1〜3サイクル(単一サイクルは3日連続注射に相当する)与えた。Myozyme(登録商標)(Genzyme Corporation)20mg/kgを尾静脈注射で1回または毎週投与2〜6回で最初のメトトレキサート投与と共に開始して与えた。動物は処置開始後毎週または毎日屠殺した。脾臓、腸間膜および鼠径リンパ節をTおよびB細胞サブセットのフローサイトメトリー分析のために収集し、血清をELISAアッセイのために収集した。脾臓
をスライドガラスの間で処理し、赤血球(RBC)を溶解緩衝液(BD Biosciences(カタログ#555899)から購入)で製造者の説明書に従って溶解した。リンパ節をスライドガラスの間で処理し、2%ウシ胎児血清(FCS)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。細胞を4%ウシ胎児血清および総マウスIgG 25μg/mLを含有するPBS 200μLに再懸濁し、30分間、4℃でブロッキングした。脾臓細胞およそ300万個およびリンパ節細胞100万個をさまざまな抗体カクテルで染色し、Becton Dickinson CANTOIIフローサイトメーターのハイスループットサンプラー(HTS)で分析した。細胞事象少なくとも100,000個をリンパ球ゲート内で取得した。抗マウス抗体カクテルは、PE−CD21/35 カタログ#552957、FITC− カタログ#553138、PE−CD138 カタログ#553714、PE−CD127 カタログ#552543、APC−Cy7−CD19 カタログ#557655、FITC−CD43 カタログ#553270、PE−Cy7−CD4 カタログ#552775、FITC−CD3e カタログ#553062、APC−CD11b カタログ#553312、PE−Cy7−IgM カタログ#552867、APC−Cy7−CD8 カタログ#557654、PE−CD273(PD−L2) カタログ#557796、APC−CD138 カタログ#558626、PE−Cy7−CD11b カタログ#552850、PE−CD93(初期B系列)カタログ#558039、APC−CD69 カタログ#560689、Pe−Cy7−CD24 カタログ#560536、FITC−CD1d カタログ#553845、APC−CD5 カタログ#550035およびPercp−Cy5−7AAD カタログ#559925からなり、すべてBD Pharmingenから購入した。FITC−FoxP3 intracellular staining kitはeBioscienceから購入した。Pacific Blue(PB)−CD25 カタログ#102022、PB−CD23 カタログ#101616およびPB−CD86 カタログ#105022はBioLegendから購入した。リンパ球サブセットの分析は、De Novo Softwareから供給されるFCS express version 3 softwareで実施した。割合はバッチ処理オプションで作成し、絶対数は得られた細胞計数により算出した。脾臓およびリンパ節細胞計数はBeckman Coulter Vi−cell XR cell viability analyzerで製造者の説明書に従って得た。
【0070】
in vitroおよびサイトカイン分析
C57BL/6(Jackson Laboratories)またはE4GAAKO(Charles River)マウス、8〜12週齢にメトトレキサート(Calbiochem カタログ#454125)5mg/kgを腹腔内注射、単一サイクル(3日連続投与)でrhGAA 20mg/kgでの処置と共に開始して与えた。1D11研究用に動物を1D11または13C4(Genzyme Corporation)のいずれかの5mg/kgの腹腔内注射で1週間に3回、隔日でrhGAAおよびメトトレキサート処置と共に開始して処置した。動物はrhGAA開始後マウス株に応じて6または7日目に屠殺した。脾臓を単一細胞懸濁物に調製し、製造者の説明書に従ってRoboSep(STEMCELL technologies)装置に装填し、B細胞ネガティブ選択に供した。精製B細胞を96ウエル丸底プレート(Costar カタログ#3799)に1ウエルあたり細胞500,000個で播種し、無刺激でまたはLPS(Sigma
カタログ#L5014)10μg/mLと共に48時間、37℃でインキュベートした。製造者の説明書に従ってすべてのウエルにMonensin(BD Bioscience カタログ#554724)を供与した。細胞を少なくとも4時間、37℃でインキュベートした。試料をV底ウエル(USA Scientific カタログ#651201)に移し、1200rpmで、5分間、4℃で回転させた。細胞を4%ウシ胎児血清および総マウスIgG 25μg/mlを含有するPBS 200μLに再懸濁し、30分間、4℃でブロッキングした。プレートを再度回転させ、上に記載の抗体カクテル10
μlを添加したPBS/2%FCS 90μLに再懸濁し、20分間(染色手順の最後の10分間に7AAD 5μLを添加して)、4℃でインキュベートした。試料への緩衝液100μLの添加とその後の回転は、洗浄として用いた。試料はタンパク質の表面分析および即時取得のために緩衝液に再懸濁する、またはIL−10(BioLegend カタログ#505008)、TGF−ベータ(BioLegend カタログ#141404)およびFoxP3(eBioscience カタログ#11−5773−82)の細胞内染色のために、製造者の説明書に従ってFix/Perm(eBioscience カタログ#11−5773)に再懸濁することができた。追加的表面染色は、TGF−ベータおよびTim−1(BioLegend カタログ#119506)抗体を含んだ。すべての試料は上に記載のとおり取得し、分析した。
【0071】
動物および心臓同種移植片モデル
C57BL/6およびBALB/cマウスはCharles River(Kingston、NYまたはRaleigh、NC)から得て、これらの実験に8から13週齢の間で用いた。ドナー同種C57BL/6マウスをKetamine(Fort Dodge Animal Health/Pfizer、Fort Dodge、IA)およびXylazine(Lloyd、Shenandoah、IA)の腹腔内注射で最初に麻酔し、胸骨正中切開を実施した。ドナー心臓を、上大静脈および肺静脈を結紮および分割する前に、in situで下大静脈および大動脈を通じて冷却ヘパリン処置乳酸リンゲル溶液(Baxter Healthcare、Deerfield、IL)1mlでゆっくり灌流した。次いで上行大動脈および肺動脈を切除し、移植片をドナーから取り出し、心臓を移植まで氷冷生理食塩水中で保存した。レシピエントマウス(Balb/c)を同様に麻酔し、ドナーマウスについて(腹腔を開いたこと以外は)上に記載したとおり準備した。開いた腹腔を見るために外科用顕微鏡を用い、腹部大動脈(AA)および下大静脈(IVC)を単離した。ドナー心臓をレシピエント腹部に(逆さまに)置き、移植片を、ドナー肺動脈とレシピエント下大静脈の間、同様にドナーの大動脈とレシピエントの腹部大動脈の間を端側吻合で血行再建した。止血を確認後、腹筋をrunning 5−O
Vicryl suture(Ethicon、Johnson & Johnson、Somerville、NJ)で閉じ、皮膚をrunning 5−0 Ethilon suture(Ethicon)で閉じた。標準的な術後痛評価および管理を実施した。移植片は、触診によって最初の30日間、1週間に5〜7回、次いで研究の終了まで1週間に3〜4回評価した。
【0072】
C57Bl/6マウスをrhGAA(Genzyme Corporation)20mg/kg静脈内投与1回、メトトレキサート(APP Pharmaceuticals,LLC)5mg/kg 3回連続の腹腔内投与および1D11または13C4のいずれかの5mg/kg(Genzyme Corporation)隔日3回投与で処置した。メトトレキサート、1D11および13C4処置はrhGAA注射と共に開始した。脾臓を処置開始7日後に収集し、B細胞、培養およびフロー分析のために上に記載のとおり処理した。追加的にrhGAA力価データを上に記載のとおり12週間にわたるrhGAAの毎週投与、メトトレキサート1または3サイクルのいずれかでの投与および12週間の1D11または13C4の週3回隔日投与で動物を処置することによって得た。血清試料をELISA分析のために2週間ごとに収集した。
【0073】
病理組織学および免疫組織化学
心臓移植片を10%中性緩衝ホルマリン中で固定し、右および左心室ならびに流出路を曝すために縦軸に沿って二分し、パラフィン包埋のためにルーチン的に処理した。切片を5ミクロンで切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)またはマッソントリクロームで染色した。連続切片も下に記載のとおり免疫染色した。各H&E染色切片を同種移植片拒絶病態(例えば脈管炎、心筋変性および壊死、心筋炎)の種々の特性について組織
学的グレーディングスキームを用いて定性的に評価した。
【0074】
免疫組織化学をBond−Max automated immunostaining system(Leica Microsystems Inc.、Buffalo
Grove、IL)を用いて実施した。CD3およびFoxp3二重免疫陽性細胞を検出するために、移植片組織切片をBond Polymer Refine Detection kitおよびBond Polymer AP Red kit(Leica、Buffalo Grove、IL)を製造者の指針に従って用いる抗CD3および抗Foxp3抗体での二重免疫染色に供した。簡潔には、パラフィン包埋移植片の脱パラフィン切片を熱誘導エピトープ修復(99℃で25分間)に供し、無血清タンパク質ブロック(Dako、Carpentaria、CA)、ウサギモノクローナル抗CD3抗体(Lab Vision/Neo Marker)、ペルオキシダーゼコンジュゲートポリマー、ペルオキシダーゼブロックおよびジアミノベンジジン検出試薬に続いて、ラット抗マウスFoxp3抗体(eBioscience Inc.、San Diego、CA)、次いでウサギ抗ラット抗体(Vector Laboratories,Inc.、Burlingame、CA)とインキュベートした。次いでスライドをBond Polymer APとインキュベートし、赤色検出試薬(red detection reagent)を混合し、最後にヘマトキシリンで対比染色した。陰性対照スライドでは、一次抗CD3および抗Foxp3抗体をChromepure全ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、PA)およびラットIgG2a(AbD Serotec、Raleigh、NC)でそれぞれ置き換えた。
【0075】
血清同種抗体レベル
血清同種抗体レベルを心臓移植または正常マウス由来の血清を1:50希釈でSV40形質転換C57BL/6線維芽細胞株(SVB6)とインキュベートし、続いてFITCウサギ抗マウスIgG(Dako、Carpinteria、CA)を用いて線維芽細胞結合抗体(同種抗体)を検出することによっておよびフローサイトメトリー分析によって決定した。実験間の同種抗体レベルを標準化するために血清染色線維芽細胞の幾何平均蛍光強度をアイソタイプ対照染色線維芽細胞で割った。血清抗体の同種線維芽細胞への結合は、同じ血清試料がSV40形質転換BALB/c線維芽細胞株(SVBalb)に結合しないこと(データ未記載)から明確に同種抗体であった。
【0076】
養子移入マウスモデル
C57BL/6マウスはJackson Laboratoriesから得て、特定病原体不在の条件下に収容した。対照マウスにはrhGAA 20mg/kg静脈内注射1回を与えた。寛容化マウスには、3日連続のメトトレキサート0.5mgの腹腔内注射に加えてrhGAA 20mg/kg静脈内注射1回を与えた。脾臓を最初のrhGAA注射の6日後に両ドナー群から採取し、プールされた単一細胞懸濁物中に処理した。細胞を洗浄し、0.22μMフィルターを通して濾過した。次いで細胞をStemCell Technologies RoboSep細胞分離システムを用いてB細胞を濃縮し、200μl静脈内注射を可能にするように再懸濁した。寛容化および非寛容化レシピエント群は、高細胞濃度10×10
6または低細胞濃度5×10
6のいずれかを静脈内注射を介して受けた。対照群にはrhGAAのみまたはrhGAAおよびメトトレキサート(3日連続MTX注射の単一サイクル)を与えた。すべての群は、毎週のrhGAA 20mg/kg静脈内注射を受け、16週間、隔週でBD Vacutainer血清分離チューブに後眼窩採血された。血清を取り出しELISAでの使用まで−20℃未満で保存した。抗rhGAA抗体力価をELISAを用いて決定し、SpectraMax M2で読み取り、力価値を外挿するためにSoftmaxを用いて算出した。対照および力価情報を含む生データSoftmaxファイルおよびEXCEL集計表をネットワークサーバーに
保存した。すべてのグラフおよび統計はGraphPad Prism softwareを用いて作成した。
【0077】
〔実施例1〕
抗薬物抗体は抗体治療薬に応答して産生される
ポリクローナル抗体mATGは、抗原提示細胞を含む種々の免疫細胞型に結合した。本発明者らのデータは、mATGの1回コース(3日間隔で与える25mg/kgの2回投与、腹腔内投与)がマウスで100,000(
図1A)もの高い抗mATG IgG力価を生じうることを示した。連続する毎月注射(5mg/kg、4週間ごと)として与えられる場合、抗mATG力価はさらに増大し、5回の毎月注射後に最大5×10
6の力価で
あった(
図1B)。1回コースおよび毎月注射の両方についてウサギIgG(rbIgG)を対照として用いた。
【0078】
アレムツズマブは、マウスCD52と交差反応しないことから、アレムツズマブでの前臨床研究は、導入遺伝子発現パターンがヒトにおけるCD52発現と類似しているhuCD52 Tgマウスで行われなければならなかった。mATGと同様に、アレムツズマブの静脈内投与(0.5mg/kg)は顕著なADA応答をhuCD52 Tgマウスで誘発した。これらの応答は、最初の4回処置を通じて増大し、次いでアレムツズマブの5回目投与後にhuCD52 Tgマウスがもはや抗アレムツズマブ抗体を生成しないように下降した(
図2)。この非応答性は自然寛容が生じたことを示唆した(Rosenbergら、Blood、93(6):2081〜8頁(1999))。
【0079】
データは、C57BL/6マウスでのmATGに対するADA力価およびhuCD52
Tg CD1マウスでのアレムツズマブに対するADA力価が高かったこと(>100,000)を示した。この高レベルの免疫原性はmATGおよびアレムツズマブが抗原提示細胞に結合する能力に起因する可能性があり、したがってそれらに対する免疫応答を誘導するための抗原処理および提示を増強していた。
【0080】
〔実施例2〕
メトトレキサートは単一サイクルの投与で抗mATG IgG応答を制御する
Thymoglobulin(登録商標)処置後に上昇した抗体力価が報告されており、血清病、急性腎不全および心臓血管反応の症例報告がThymoglobulin(登録商標)で処置した患者について記載された(Boothpurら、上記;Lundquistら、Liver Transpl、13(5):647〜50頁(2007);Busaniら、Minerva Anestesiol、72(4):243〜8頁(2006);Tanrioverら、Transplantation、80(2):279〜81頁(2005);Buchlerら、Clin Transplant、17(6):539〜45頁(2003))。メトトレキサートが抗mATG応答を低減できるか、したがってこれらの安全性の懸念を軽減できるかを決定するために、メトトレキサート単一サイクルとしてのみ与える3日間レジメンをマウスでの抗mATG IgG応答を制御する手段として評価した。これは、ERTのコンテクストにおいて与えられた少なくとも3サイクルと対立するものとして、メトトレキサート単一サイクルのみがmATGと共に投与された以前公表されたレジメンとは区別された。2回のmATG投与(25mg/kg、3日間隔)の最初に開始して5mg/kg、6日連続で腹腔内に投与されたメトトレキサート(Calbiochem カタログ#454125)は、抗mATG IgG応答を処置後少なくとも8週間にわたって95%(効果曲線下面積を比較して)抑制できた(
図3)。
【0081】
次にmATG 5mg/kg/注射での5回の毎月注射後のメトトレキサートの抗mATG力価への効果を評価した。リンパ球復活がmATG処置の1カ月後にほぼ完全である
ことから(Ruzek、上記)、mATG処置の毎月注射を実施した。次いで抗薬物抗体応答を毎月処置の20週間にわたって毎週定量した。この期間中、mATGによるCD4+T細胞除去にもかかわらず、抗体力価は500万にも達した(
図1B)。興味深いことに、非特異的ウサギIgGをmATGと同じ用量レベルおよび計画で受けた動物は、低い抗ウサギIgG応答を示した(
図1B)。mATGの増強された免疫原性に関する一つの可能性は、濾胞性樹状細胞(補体存在下でB細胞応答を有意に増強できる)などの抗原提示細胞(APC)へのmATGの特異的結合である可能性があった。メトトレキサートの2つの処置レジメンも評価した。酵素補充治療(ERT)での以前の研究では、酸性アルファ−グルコシダーゼの最初の3回投与中に与えられたメトトレキサート3サイクルが少なくとも8カ月間にわたる毎週のERT投与の間、抗体力価の低減の維持を提供した(Josephら、Clin Exp Immunol、152(1):138〜46頁(2008))。メトトレキサートの同様のコースをmATGのコンテクスト(メトトレキサート5mg/kgがmATG投与の15分間以内ならびに毎月のmATG処置の最初の3回それぞれの24および48時間後に与えられる)において評価した。このレジメンは、抗mATG抗体応答を力価およそ400万から力価816,000に低下させ、効果曲線下面積を比較して79%の低減を得るのに成功した(
図4A)。
【0082】
追加的に、毎月mATG処置の最初の5回だけ与えられたメトトレキサート1回コースの抗mATG IgG応答への効果を評価し、3サイクルレジメンと直接比較した。驚くべきことに、この単一サイクルレジメンは、抗mATG IgG力価を3サイクルレジメンよりもさらに、力価およそ50,000まで低減した(
図4B)。効果曲線下面積を比較して、単一サイクルレジメンは、抗mATG IgG力価を98%低減した一方で、3サイクルレジメンは力価を69%低減した(
図4C)。3サイクルに対して単一サイクルレジメンでの増大した効果は、恐らく抗体力価制御を介在している細胞を殺すことにより、増加したメトトレキサート曝露がその寛容効果を事実上拮抗した可能性があることを示唆した。
【0083】
〔実施例3〕
メトトレキサートは免疫寛容の活性機構を誘導する
上に示したとおり、メトトレキサートの非常に短期のコースは、複数ラウンドの抗原負荷にわたって抗体応答を有意に制御できた。このコンテクストにおいて短期のサイクルは、検査の数カ月間にわたって(抗体力価およびサイトカインレベルの両方に)持続的な効果を作り出したメトトレキサート単一サイクルであった。この長期間の抗体応答制御は、メトトレキサートが免疫寛容を誘導すること成功したことを示唆した。これまでのところ、メトトレキサートを、mATGの5カ月連続投与のコンテクストにおいて評価した。免疫寛容機構が活性化されたかどうかをさらに評価するために、5回の毎月mATG注射を当初に受けた動物の処置を8週間保留した。この休息期間後に動物にmATGの最終注射を与えた。免疫寛容の機構が用いられた場合、抗mATG IgG力価は6回目のmATG処置後に有意には増大しないはずであった。
【0084】
本発明者らのデータは、予想されたとおり、メトトレキサートを投与されなかった動物は抗mATG IgG力価の増大を経験したことを示した(
図5)。対照的にmATGの最初の注射と共にメトトレキサート単一サイクルだけを受けた動物は、有意により高い抗mATG IgG力価を生じなかった(
図5)。同様の傾向がメトトレキサート3サイクルで処置した動物において(効果はそれほど劇的ではなかったが)観察された(
図5)。効果曲線下面積を比較した場合、メトトレキサート1回コースは力価を99%低減した一方で3サイクルレジメンは力価を85%低減した。これらのデータは、メトトレキサートが想起応答制御を保持できることを示し、マウスがこの抗原に対する寛容を生じたことを示唆した。
【0085】
メトトレキサート処置動物は連続するmATG処置で増大した測定可能な力価を生じたが、全体としてメトトレキサート処置動物での力価レベルはmATG単独で処置した動物において観察されたものよりも一貫して100分の1であった(
図6)。抗体力価のより低いレベルは、安全性リスクおよび有効性効果に関する可能性を有意に低減するはずであった。理論に束縛されることを意図しないが、これらのデータは、抗mATG IgG応答を有意に低減できる制御の活性機構が誘導され、メトトレキサート処置後に長く保持されることを示唆した。
【0086】
〔実施例4〕
メトトレキサート単一サイクルは、抗アレムツズマブ応答を有意に制御できる
再発寛解型多発性硬化症では、アレムツズマブが年サイクルで投与され、患者はADAを生じる場合があった(Colesら、N Engl J Med、359(17):1786〜801頁(2008))。免疫原性および薬物動態検査は複数の第III相研究で進行中であることから、抗アレムツズマブ抗体が患者のサブセットで曝露、有効性および/または安全性に強い影響を与えるかどうかは不明確であった。したがって本発明者らは、メトトレキサート単一サイクルがアレムツズマブの5回の毎月1回注射サイクル後にADA力価を制御できるかどうかを評価した。HuCD52 Tgマウスにアレムツズマブ(0.5mg/kg)を静脈内へ毎月、5カ月連続で与えた。メトトレキサートを0.5、1または5mg/kgでアレムツズマブの毎月投与の最初の15分前ならびに投与の24および48時間後に与えた。メトトレキサート1mg/kgは、抗アレムツズマブ応答を88%低減したことから、いくらかの利益を提供した(
図7A)。メトトレキサート5mg/kgは抗アレムツズマブIgG応答を99%低減するのに成功した(
図7A)。メトトレキサートは、自然寛容には効果を有さないと考えられた。
【0087】
第2の研究は、上の発見を確認した。上記のとおり、huCD52トランスジェニックマウスをアレムツズマブ0.5mg/kgの毎月投与5回で処置した。また、マウスを、アレムツズマブの最初の投与と関連してメトトレキサート5mg/kg/日の毎日投与3回で処置したまたはしなかった(
図7B)。血清試料を抗アレムツズマブ力価を評価し、寛容を確認するために研究を通じて収集した。力価データは、5回目の毎月投与の24時間後に得た。データはメトトレキサートが抗アレムツズマブ抗体力価を低減することを実証した(
図7C)。
【0088】
〔実施例5〕
メトトレキサートは、臨床的に関連するアレムツズマブ投与レジメンのコンテクストにおいて抗アレムツズマブ抗体応答を制御できる
アレムツズマブの臨床的に関連する投与スキームのコンテクストにおいてメトトレキサートがADAを制御するのに成功できるかどうかをhuCD52 Tgマウスで評価するために一連の実験を実施した。臨床では、アレムツズマブは12mg/日の毎日処置5回の初回サイクルとして投与された。患者での初回処置サイクルの12カ月後、アレムツズマブ12mg毎日投与3回の追加的サイクルを投与した。2回目処置サイクルの時点で、循環CD19
+B細胞のレベルはベースライン値に回復した;しかし、循環CD4
+ヘルパーT細胞およびCD8
+細胞傷害性T細胞のレベルは完全には復活しなかった(Cole
sら、N Engl J Med、359(17):1786〜801頁(2008))。
【0089】
最初に、アレムツズマブ毎日処置5回後に循環TおよびB細胞サブセットの除去および復活の動態をhuCD52 Tgマウスで調査した。アレムツズマブ0.5mg/kg(ヒト投与量12mg/kgに相当)、5日連続で静脈内注射を介して処置したhuCD52 Tgマウスの末梢血では、総CD3
+T細胞、CD4
+ヘルパーT細胞、およびCD8
+細胞傷害性T細胞は、処置後4週で処置前のレベルには回復しなかったが、CD19
+B
細胞の数は対照レベルに戻った(
図8A〜D)。
【0090】
再処置時に患者によって経験される細胞環境を刺激するために、アレムツズマブを第単一サイクルの4から5週間後にhuCD52 Tgマウスに再投与した。アレムツズマブの初回コースが5日サイクルであることから、メトトレキサートは各日のアレムツズマブ処置の15分前に、およびその後2日間投与した。このレジメンで与えられたメトトレキサートの最大累積サイクル用量は、14mg/kg(2mg/kg/日)であり、これはメトトレキサートが5mg/kg/日の3日間コースとして与えられる場合の累積用量15mg/kgに非常に近かった。本発明者らは、メトトレキサートの2、1および0.5mg/kg/日投与の、アレムツズマブ処置3サイクルにわたる抗アレムツズマブ抗体への効果を評価した。1mg/kgでは、メトトレキサートは検査したマウス8匹のうちの7匹で力価を制御すると考えられ、全体的として力価を79%低減した(
図9B)。2mg/kgでは、メトトレキサートは効果曲線下面積を比較した場合にADAを98%低減するのに成功した(
図9A)。
【0091】
〔実施例6〕
メトトレキサートはmATGの薬物動態および薬力学を改善できる
ADAは、タンパク質治療薬の薬物動態および薬力学を妨害する場合があった。本発明者らは、抗mATG IgG ADA応答がmATG薬物動態を妨害するかどうかを評価した。マウスをmATG単独またはメトトレキサート単一サイクルを伴うmATGのいずれかの5カ月間毎月注射で処置した。メトトレキサートは5mg/kgの毎日投与3回で投与した。循環mATGのレベルをアッセイするために1カ月目、3カ月目および5カ月目の後の種々の時期に血液をサンプリングした(
図10)。
【0092】
1カ月目では、循環mATGのレベルは両処置群において同様であったが、3および5カ月目ではメトトレキサート処置群だけが測定可能な循環mATGのレベルを有した。メトトレキサート投与なしで、3回目および5回目のmATG投与後に測定したmATGのレベルは、1回目投与後に測定したものよりも有意に低かった(
図10)。以前の研究は、メトトレキサートが抗mATG IgG応答を有意に低減することを示した。したがってmATGに対する抗体がmATG曝露および薬物動態を妨害すると考えられた。
【0093】
mATGに対する抗体が繰り返し投与後に循環mATGのレベルを有意に低減すると考えられることから、再投与された場合、mATGの薬力学が同様に負の影響を受けることが予想できた。血液、脾臓およびリンパ節中のリンパ球除去を(力価が最高であった)5回目の毎月mATG処置後に評価した。上に記載のとおりメトトレキサートで処置した動物には、処置の単一サイクルのみを与えた。
【0094】
循環CD4
+およびCD8
+T細胞のレベルは、mATGで処置したがメトトレキサートではしなかった動物では5回目のmATG処置後に未変化であった。しかしmATGおよびメトトレキサート単一サイクルで処置した動物では、循環CD4
+およびCD8
+T細胞は、有意に除去された(
図11)。この効果は、脾臓およびリンパ節においても同様に観察された。メトトレキサート処置は、脾臓および血液中の制御性T細胞の割合を増加させるmATGの能力を増強した(
図12A〜B)。同様の効果が血液およびリンパ節で観察された。mATGおよびThymoglobulin(登録商標)処置後に増強された制御性T細胞の存在は、この治療薬の有効性に寄与すると想定された(Ruzekら、Blood、111(3):1726〜34頁(2008))。mATGの連続するコース後のこの効果の保持を補助するメトトレキサートの能力は、抗体抗ウサギIgG力価を有意に低減するという潜在的に追加される利益であった。
【0095】
これまでのところ、薬物動態および有効性の研究は、抗mATG抗体がmATGの曝露
および有効性を妨害することを示唆した。抗mATG IgG力価とmATG曝露との直接比較は、エンドポイント力価が10,000を超える場合に循環mATGのレベルが有意に低減されたことを明らかにした(
図13a)。さらに抗mATG IgG力価が100,000を超える場合、mATG介在細胞除去は阻害された(
図13bおよび13c)。力価と細胞除去の間のR
2相関は、>0.7であった。
【0096】
〔実施例7〕
メトトレキサートは、アレムツズマブの薬力学を改善できる
メトトレキサートは、mATGの薬力学を増強するだけでなく、抗アレムツズマブ応答が除去活性の一部を中和すると考えられる場合に、循環TおよびB細胞のアレムツズマブ介在除去も復元させた。本実施例において記載される研究では、アレムツズマブの毎月静脈内注射5回をメトトレキサートを伴ってまたは伴わずにhuCD52 Tgマウスに与えた。メトトレキサート5mg/kgを6カ月研究の最初の3日間毎日投与した。両処置群の動物からアレムツズマブの5回目投与の2日前および5回目投与の1日後に血液を採取した。細胞集団をフローサイトメトリーで実施例6に記載のとおり評価した。
【0097】
本発明者らのデータは、循環T細胞の絶対数が処置の前後で同様であると考えられたことからアレムツズマブの5回目の毎月投与がもはやT細胞を除去しないと考えられることを示した(
図14(各時点は異なるセットの動物を表す))。対照的に、メトトレキサートは、T細胞を除去するアレムツズマブの能力を復元させたと考えられた(P=0.012)。アレムツズマブ単独で処置した動物での循環T細胞の絶対数を、アレムツズマブと、アレムツズマブ投与の2日前または1日後のいずれかでのメトトレキサートとの両方で処置した動物と比較すると、循環T細胞の数はメトトレキサート処置動物において有意により低かった(P=0.034および0.02;
図14)。同様にメトトレキサート処置は、アレムツズマブによるB細胞の除去を増強すると考えられ(それぞれP=1.2×10
-5、P=0.02)、循環B細胞の数はメトトレキサート処置動物で処置1日後にさらに減少した(
図14)。
【0098】
〔実施例8〕
メトトレキサート単一サイクルは、抗rhGAA抗体応答を有意に制御できる
本発明者らは、rhGAA酵素補充治療におけるメトトレキサートの効果も研究した。この研究では、動物にrhGAAを12週間連続で毎週注射し、次いで4週間休息させ、次いで16週目にrhGAAで再負荷した。動物に1週目にメトトレキサート5mg/kgの3日連続投与の単一サイクルまたは1、2および3週目それぞれに単一サイクル(合計3サイクル)も与えた。rhGAA特異的IgG力価を0(すべての処置前)、6、8、12、16、18および20週目に動物で測定した。本発明者らのデータは、メトトレキサート単一サイクルが抗rhGAA応答を3サイクルレジメンと同様に少なくとも20週間にわたって制御したことを示した(
図15)。
【0099】
研究は、抗rhGAA力価を生じることにおけるT細胞の役割を評価するためにT細胞欠損Nu/Nuマウスにおいても実施した。これらの実験で本発明者らはrhGAAに対するADDがこれらのT細胞欠損マウスではほとんどから全く生じなかったことを繰り返し観察した(
図37A〜B)。これらのデータは、T細胞が抗rhGAA力価に寄与するという意見を裏付けた。これによりメトトレキサートがrhGAAに対するADAを制御できることから、rhGAAへのT細胞応答にも影響を与えると考えられた。
【0100】
〔実施例9〕
メトトレキサートは心臓同種移植のmATG介在生着を増強する
正常マウスにおいてメトトレキサートがmATGの有効性を増強できるかどうかを評価することに加えて、本発明者らは移植設定においてmATG機能がメトトレキサートによ
って増大されうるかどうかを調査した。Thymoglobulin(登録商標)が臨床的に移植生着を延長するための誘導治療として用いられることから、本発明者らはマウス同種心臓移植モデルにおいてメトトレキサートの追加がmATGの有効性を増大できるかどうかを評価した。mATG 20mg/kgを0および4日目に投与し、メトトレキサート2mg/kgを0〜6日目に処置の単一サイクルとして投与した。
【0101】
追加的に本発明者らは、同じレジメンでまたは12日連続の延長したレジメンで与えられるメトトレキサートの4分の1の用量(0.5mg/kg)を調査した。マウス群は、無処置(生理食塩水対照)、mATG単独または、mATGとメトトレキサートとの組合せレジメンのいずれかを受けた。正常マウスでの研究と同様に、mATGと同時投与されたメトトレキサートは、用いられたレジメンにかかわらずmATGに対する抗薬物抗体力価を低減した(
図16Aおよび表1)。さらに抗体力価の低減と同時に発生したのは、この移植設定におけるmATG曝露の観察された増大であった(
図16)。移植された組織に対する強く同時発生的な免疫応答の状態下に適したアジュバント効果を与えると、抗薬物抗体力価は、正常マウス設定においてよりもさらに速く増大し、最初のmATG投与の7日間以内に検出不能に近いmATGレベルをもたらした(
図16B)。対照的に移植7日後までに抗ウサギIgG抗体力価はメトトレキサートで処置したマウスにおいて有意により低く、循環mATGレベルはこれらのマウスにおいて有意により高かった。これは、進行中の炎症応答状態下では、抗薬物抗体応答が加速される場合があり、薬力学および有効性に恐らくさらにより大きな影響を有することを強調した。重要なことに、これらの状態下でさえメトトレキサートは強い阻害効果をmATG抗薬物抗体に有し、mATG曝露を増強した。しかし、mATGとメトトレキサートとの組合せ処置では21日目まで循環mATGレベルがいまだ低く検出不能であることから、追加的寛容機構が>100日間の移植片生着をもたらしていると考えられた。これらの結果は、同種移植片の生着についてのmATGとメトトレキサート処置との間の顕著な相乗作用を実証し、正常マウスにおいて観察されたのと同様のレベルのmATG抗薬物抗体の低減およびmATG曝露の増強を示した。
【0102】
【表1】
【0103】
追加的データは、mATGとメトトレキサートとの組合せ処置が抗同種移植片応答を低減することに加えて心臓同種移植片の生着を有意に延長したことを確認した(
図17および18)。実際に両方のmATGまたはメトトレキサート処置単独はそれぞれ15および20日間の平均生着延長のわずかな利益を提供した一方で、mATGと評価されたいずれかのメトトレキサートレジメンとの同時投与は、ほとんどのマウスが最大100日間を超
えてそれらの移植片を保有して心臓移植片生着における劇的な利益を実証した(
図17)。心臓移植片生着がmATGおよびメトトレキサートでの初期の短期の誘導処置後に長く継続したことから、このレジメンは免疫抑制性よりはむしろ寛容原性であると考えられた。他の免疫抑制剤(例えばミコフェノール酸モフェチル、デキサメタゾン、ラパマイシンおよびシクロホスファミド)がmATGと同時投与された場合に移植片生着を有意に延長できなかったことから、効果はmATGとメトトレキサートとの組合せに特有であった。注目すべきことに、メトトレキサート処置単独も抗同種移植片抗体を有意に低減でき、抗体応答制御へのメトトレキサートの効果を一般にさらに立証した(
図18)。この筋書きではメトトレキサートは、心臓同種移植片の複数の抗原に対する抗体応答を同時に制御できると考えられた。さらなる低減がmATGをメトトレキサート処置と組み合わせることによって誘導された(
図18C)。
【0104】
〔実施例10〕
メトトレキサート誘導寛容の機構はメトトレキサートの現在公知であり、認められた機能とは異なる
上の実施例で記載されたメトトレキサートの投与レジメンは、以前記載されたものとは異なる機構を引き起こすと考えられた。メトトレキサートは、増殖細胞の死を誘導することによってその抑制効果を介在すると考えられている葉酸アンタゴニストであった。上に提示したmATGデータは、メトトレキサート処置動物で抗体応答は誘導されるが、各連続するmATG処置では有意に低下したままであることを実証した。これらのデータは、B細胞応答が積極的に管理されたことを示唆した。理論に束縛されることを意図せず、本発明者らは、メトトレキサートがこれらの応答をそれらが生じた際に制御する制御性細胞集団(複数可)を誘導できるとの仮説を立てた。本発明者らは、Myozyme(登録商標)およびメトトレキサートで処置した動物での種々の脾臓BおよびT細胞サブセットへのメトトレキサート処置の効果をMyozyme(登録商標)単独で処置した動物と比較して調査した。本発明者らは、Myozyme(登録商標)処置7および8日後(メトトレキサート処置4および5日後;
図19)にB10制御性B細胞集団における有意な増加を観察した。
【0105】
追加的に、多数の活性化B細胞サブセットがメトトレキサート処置後に有意に増加した(
図20)。これらの集団は、活性化辺縁帯B細胞、活性化濾胞性B細胞ならびに活性化移行性2および3B細胞を含んだ。細胞集団は以下のとおり定義された:B2/濾胞性B細胞:CD19
+CD21
intCD23
hi;移行性2B細胞:CD19
+CD93
+CD23
+IgM
hi;および移行性3B細胞:CD19
+CD93
+CD23
+IgM
lo;辺縁帯B細胞:CD19
+CD21
hiCD23
lo。Myozyme(登録商標)2サイクルおよびメ
トトレキサートを与えられた(Myozyme(登録商標)は1および8日目に投与され、メトトレキサート5mg/kgは1〜3および8〜10日目に与えられた)動物における脾臓細胞集団の毎日の評価は、これらの活性化B細胞集団が増加したままであることを実証した(
図21)。この結果は、メトトレキサート処置後に予想された応答が活性化、増殖細胞の死であったことから驚くべきことであった。対照的に、活性化ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞および制御性T細胞集団はほとんど未変化のままであった(
図22)。ヘルパーT細胞はCD4+と定義され、細胞傷害性T細胞はCD8+と定義され、制御性T細胞はCD4+CD25+およびFoxP3+と定義された。これらの発見は、増加したB細胞集団がメトトレキサート誘導免疫寛容の介在を補助できることを示唆した。
【0106】
〔実施例11〕
メトトレキサートはmATGとの組合せで選択されたB細胞集団を増加させる
上の実施例では各mATG処置後に、mATG単独で処置したマウスならびにmATGおよびメトトレキサートで処置したマウスの両方においてADA力価は増大し、両セットの動物が抗体応答に寄与できるB細胞を含有したことを示唆した(
図6)。それが真実で
あるとすると、少なくとも2つの仮説を描くことができた。最初の仮説は、メトトレキサートがMyozyme(登録商標)に応答できる大部分のB細胞を殺した可能性があり、残った少数がこのわずかな応答の原因であるとすることであった。これは可能ではあるが、複数の実験からのフローサイトメトリーデータは、Myozyme(登録商標)およびメトトレキサート処置後にB細胞集団の減少を示していなかった。第2の仮説は、Myozyme(登録商標)に応答できるB細胞集団がメトトレキサートのこの短期のコースでは殺されずに残り、Myozyme(登録商標)への各曝露後に制御性細胞によって制御されるとすることであった。これまでのところ、表現型データは、メトトレキサートおよびMyozyme(登録商標)での処置後のB細胞サブセットの増強を記載した。これらのB細胞の表現型は、動物研究においておよび寛容移植患者において記載された制御性B細胞サブセットに類似していると考えられた。したがって本発明者らは、この第2の仮説を異なる処置のコンテクストにおいて検討しようとした。
【0107】
動物はmATGで毎月、5カ月間処置され、メトトレキサート5mg/kgの単一サイクルを研究の最初の3日間、メトトレキサート5mg/kgの3サイクルのいずれかを受けたまたはメトトレキサートを受けなかった(
図23)。3つの処置群での細胞集団における差異を次いで、5回目のmATG投与の1日前および5回目のmATG投与2日後での動物における集団を比較することによって評価した。
【0108】
驚くべきことに、メトトレキサート単一サイクルでの処置の5カ月後、メトトレキサート単一サイクルおよびmATGを受けたマウスとmATG単独またはメトトレキサート3サイクルを伴うmATGのいずれかを受けたマウスとの間に差異を観察した。予想外に効果を実証した2つの細胞集団は、活性化濾胞性B細胞および活性化移行性3B細胞(それぞれ
図24A〜B)であった。mATG単独またはメトトレキサート3サイクルとの組合せのいずれかで処置したマウスでは、これらの細胞集団の絶対細胞数において減少が観察された。しかしメトトレキサート単一サイクルのみを受けたマウスでは、これらの集団において統計的に有意な減少は観察されず、メトトレキサートのこの投与レジメンがこれらの集団のいくらかの増殖を誘導したことを示唆した。興味深いことに、これら両方の細胞集団は、Myozymeとの組合せでのメトトレキサート処置直後に増やされたことも示された(
図21)。同様のサブセットが寛容移植患者においても同定された。メトトレキサート単一サイクル処置が、抗原曝露で活性化および抑制性になるこれらのB細胞サブセットを誘導できる可能性があった。
【0109】
〔実施例12〕
メトトレキサートは、アレムツズマブとの組合せで選択されたB細胞集団を増加させる
実施例4に記載のとおり、huCD52トランスジェニックマウスをアレムツズマブ0.5mg/kgの毎月投与で5カ月間を1回、アレムツズマブの初回投与に関連するメトトレキサート5mg/kg/日の毎日投与3回を伴ってまたは伴わずに処置した。細胞集団をアレムツズマブの5回目投与の2日前ならびに1、7および/または28日後のマウスの血液および脾臓においてフローサイトメトリーによって評価した。
【0110】
血液ではアレムツズマブの薬力学的効果は、メトトレキサート処置動物においてアレムツズマブの5回目投与24時間後に増強された。統計的に有意な細胞除去がT細胞およびB細胞サブセットの両方で5回目投与の1日後に観察され、抗アレムツズマブ力価がこれらの動物で低く、アレムツズマブ介在除去を妨害しないと考えられることを示す以前のデータと一致した。対照的にアレムツズマブ単独で処置したマウスは、アレムツズマブ薬力学を妨害するアレムツズマブ中和抗体をより多く有する可能性があった。
図25Aに示すとおり、アレムツズマブ処置マウスではT細胞サブセットの有意な除去はなかったが、アレムツズマブおよびメトトレキサートで処置したマウスは、アレムツズマブ投与1日後に総T細胞、ヘルパーT細胞および制御性T細胞における有意なアレムツズマブ介在除去を
示した。同様の発見が循環B細胞サブセットで観察されたが(
図25B)、細胞数減少に向かう傾向は、アレムツズマブ単独で処置した動物でも観察された。循環T細胞集団と同様に、脾臓T細胞集団はメトトレキサート処置動物において5回目のアレムツズマブ処置1日後に有意に除去された(
図26A〜B)。
【0111】
アレムツズマブおよびメトトレキサートで処置したマウスでのT細胞除去とは対照的に、濾胞性B細胞以外の分析された各脾臓B細胞集団は、有意に除去されなかった(
図27)。この評価は、制御性B細胞集団、B10B細胞を含んだ。理論に束縛されることを意図せず、本発明者らはメトトレキサートがこれらのB細胞集団の一部またはすべてを(それらのアレムツズマブ介在除去とは反対に)増やすことができるとの仮説を立てた。免疫細胞が血液中では分化しないことから、この増殖は血液の高速の流動性環境では生じないと予想された。代わりに免疫応答は、(細胞/細胞相互作用およびサイトカイン/ケモカイン開始応答が組織の多様な微細環境において生じうる)脾臓および他の末梢リンパ組織において生じた。これらは、血液および脾臓において観察されたB細胞のアレムツズマブ介在除去の差次的効果を説明できた。これらのデータは、(脾臓B細胞がmATGと組み合わされたメトトレキサート単一サイクルで処置したマウスで増やされると考えられた)mATGで作成されたデータに類似していた(
図24A〜B)。実際に本明細書に記載のすべての研究では、メトトレキサート処置後の増殖が活性化細胞の特定の集団を評価した際に観察された。しかし、活性化および非活性化細胞の両方を含む細胞集団(総濾胞性B細胞など)の総数を評価する場合、メトトレキサート処置動物で有意な増殖は観察されなかった。
【0112】
アレムツズマブ処置24時間後の脾臓細胞集団とは対照的に、アレムツズマブの単一用量(メトトレキサートを伴わない)での処置3日後、脾臓細胞サブセットは有意に除去された(
図28A)。B細胞復活が3日の印までに始まりうることから、アレムツズマブ処置動物においてB細胞除去がアレムツズマブ処置3日後においてよりも24時間で、より大きい場合がある可能性があった。これは、末梢血中のこれらの集団を評価するいくつかの研究において実証された。除去は、末梢血において投与後3時間程度の早期で観察された。処置3日後までに、循環B細胞プールは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で処置した対照マウスにおいてよりもアレムツズマブ処置マウスにおいていまだに有意に低かったが、除去パーセントは24時間のものほど高くなかった。24時間での除去パーセントは92%であり、3日での除去は36%であった(
図28B)。B細胞再構成は1回投与後に急速に生じると考えられた。
【0113】
結論として、動物がメトトレキサートを受けた5カ月後および抗原曝露の直後に、メトトレキサートが、寛容誘導の介在を補助する可能性があるB細胞集団を増やした可能性があると考えられた。増やされたと考えられる集団は、メトトレキサート処置の直後に増加したものに類似していた(
図21)。これらを基に、メトトレキサートが、免疫応答が抗原曝露時に(メトトレキサートでの処置のずっと後でさえも)積極的に制御されるようにする環境を誘導できることが示唆された。
【0114】
〔実施例13〕
サイトカインレベルへのメトトレキサートの効果
サイトカインは、B細胞応答において2つの役割を演じた。例えばB細胞活性化サイトカインIL−6およびBAFFは、B細胞分化のためにも必要であった。メトトレキサートが、B細胞集団を増加させると考えられることから、これらのサイトカインが増加することが予想できた。しかしIL−6は炎症促進性でもあり、したがって上昇したレベルはメトトレキサート誘導効果を妨害する可能性があった。IL−6と同様に、IL−10は、血漿細胞へのB細胞の分化および免疫抑制にも関与した。
【0115】
BAFFデータは、アレムツズマブの5回目投与の24時間後に採取した血清試料から作成した(
図29A)。これは、上に提示したこの研究由来の細胞データの続きであった。この時点でBAFFレベルに差異は観察されなかった(
図29B)。
【0116】
【表2】
【0117】
サイトカインレベルをアレムツズマブ第2サイクルの1週間後に評価した(
図29B)。一般にアレムツズマブ第2サイクルの1週間後、サイトカインレベルは低いと考えられた。この時点で統計的に有意な増加がメトトレキサート2mg/kgで処置した動物のTNF−アルファレベルにおいて観察された。この増加は、メトトレキサート誘導寛容に関するまたは炎症応答の徴候である変化を反映する可能性があった。他のサイトカインにおいて観察された傾向(IL−6の明らかな増加およびIL−7のわずかな減少可能性など)も注目された(
図30)。
【0118】
制御性B細胞は、IL−10分泌と関連していた。IL−10分泌制御性B細胞がメトトレキサート誘導寛容において役割を演じるかどうかを評価する1つの様式は、メトトレキサートがIL−10欠損動物において抗体応答を制御できるかどうかを評価することであった。この種の評価は、上に述べたとおり、IL−10が血漿細胞分化のために必要であり、したがって抗体応答はこれらの動物においてより低い可能性があることから困難である可能性があった。この注意を念頭に置いて本発明者らは、IL−10がメトトレキサート誘導寛容において役割を演じる可能性があることを示唆する興味深い傾向を観察した。
【0119】
この研究では、動物は静脈内Myozyme(登録商標)20mg/kgを9週間毎週受けた。メトトレキサート3サイクルを、5mg/kg/日でMyozyme(登録商標)の最初の3回の毎週処置の0、24および48時間後に投与した。抗Myozyme(登録商標)力価を4、6および9週目に評価した(
図31)。rhGAAおよびrhGAA/メトトレキサート処置IL−10ノックアウトマウスでの平均力価値を比較すると、わずかな傾向は9週目に観察されたが、力価における有意な低下は観察されなかった。予想されたとおり、抗体力価は、C57BL/6野生型動物のようにはIL−10ノックアウト動物では高くなかった。rhGAAおよびメトトレキサートで処置したC57BL/6野生型動物における抗rhGAA応答は、4、6および9週で低下していた。対照的に4および6週目での抗rhGAA力価は、rhGAAおよびメトトレキサートで処置したIL−10ノックアウトマウスにおいて低下していなかった。9週目で、IL−10欠損
マウスにおける寛容の遅延性誘導を示す可能性があるわずかな低下があった。これは、IL−10が制御性B細胞から分泌される唯一の抑制性サイトカインではないという報告と一致した(Sagooら、J.Clin.Investigation;120(6):1848〜1861頁(2010))。TGF−ベータも制御性B細胞応答と関連していた。そのような遅延がある場合、TGF−ベータなどの他のサイトカインもメトトレキサート寛容効果の介在を補助できる可能性があった。これまでのところ、これらのデータは、IL−10がメトトレキサート誘導寛容において役割を演じる可能性があることを示唆した。
【0120】
〔実施例14〕
アレムツズマブ関連二次自己免疫の処置におけるメトトレキサートの役割
アレムツズマブ処置多発性硬化症患者は、二次自己免疫を発症する場合があった。アレムツズマブ処置後に発症する最も一般的な自己免疫障害は、甲状腺自己免疫に関するものであった。追加的に免疫性血小板減少性紫斑病およびグッドパスチャー症候群もアレムツズマブで処置した多発性硬化症患者において観察された。3種すべての自己免疫は、B細胞応答および自己抗体が疾患発症および病態に直接結び付くことからB細胞性であった。アレムツズマブ処置とこれらの二次疾患の発症との関連は、十分に理解されていなかった。
【0121】
アレムツズマブ処置後、T細胞およびB細胞は除去された。これらの除去されたTおよびB細胞の大部分は、中枢神経系で発現される抗原と相互作用する自己反応性細胞である可能性があった。結果として、アレムツズマブによるそれらのその後の除去は、このモノクローナル抗体治療の治療利益に寄与すると考えられた。自己免疫疾患に罹患している患者は、種々の自己免疫疾患に関連する複数の抗原に対する自己反応性(すなわち自己反応性B細胞および自己反応性抗体)を含むと記載されていた。環境的、生理学的および遺伝的要因はすべて、自己免疫疾患が続いて生じやすいかどうかの決定に寄与し、どの自己免疫疾患が患者に存在することになるかに影響する。自己免疫疾患の1種に罹患している患者が他も発症することは珍しくない。
【0122】
アレムツズマブのコンテクストにおいて、1つの仮説は、多発性硬化症に関するものほど著明ではなかった固有の自己反応性が、アレムツズマブ処置後にリンパ球除去環境において拡大することが可能になることであった。自己免疫疾患を発症する人々は、多数の異なる抗原に対する自己反応性を、したがって他の自己免疫を発症する素因を典型的には有した(すなわち「固有の自己反応性」)。この考えを裏付けるのは、アレムツズマブがすべてのB細胞集団を等しくは除去しないことを示すhuCD52 Tgマウスでのデータであった(
図27)。実際に、低親和性自己反応性B細胞、特に辺縁帯B細胞の構成を支持するB細胞レパートリーにおいて不均衡があると考えられた。重要なことに、辺縁帯B細胞が甲状腺自己免疫と関連していた(Segundoら、Thyroid、11(6):525〜530頁(2001))。追加的に、多発性硬化症、EAEのマウスモデルにおいて自己免疫の抑制を補助することが示された(Matsushitaら、J.Clin.Investigation、118:3420〜3430頁(2008))およびヒトにおいて存在することが示された(Iwataら、Blood、117:530〜541頁(2011))制御性B細胞サブセット、B10B細胞は、辺縁帯B細胞よりも長期間除去された。アレムツズマブの第単一サイクル中のメトトレキサート処置の短いコースは、制御性B10B細胞の提示の増加を補助し、アレムツズマブ処置後にB細胞レパートリーで辺縁帯B細胞がより均等に提示されるようにおよび/または辺縁帯B細胞を制御性辺縁帯B細胞(CD1d+辺縁帯細胞)に分化させるようにB細胞のバランス復元を補助できた。
【0123】
脾臓B細胞集団をアレムツズマブのB細胞除去への効果を決定するために研究した(図
32)。アレムツズマブ0.5mg/kgをhuCD52 Tgマウスに5日連続で静脈内投与した。具体的には、濾胞性B細胞集団(典型的には自己反応性ではない)、B1B細胞および辺縁帯B細胞(両方とも自己反応性である)、B10B細胞(制御性である)ならびに移行性B細胞および辺縁帯B細胞(制御性B細胞に分化できると考えられている)を検討した。
【0124】
濾胞性B1および制御性B細胞がアレムツズマブ処置後1および/または2週間で除去された一方で、辺縁帯B細胞および移行性1(T1)および移行性2(T2)B細胞はいずれの時点でも除去されなかった(
図32)。移行性3B細胞(T3)は、処置の1週間後に除去されただけであり、制御性B細胞の数は対照処置動物よりもアレムツズマブ処置マウスにおいて一般に低いと考えられたが、統計的差異は2および4週目では観察されなかった。
【0125】
アレムツズマブでの処置のコンテクストにおけるメトトレキサートのB細胞集団への効果を検討するために、第2の研究を表3および
図33に示すとおり実施した。驚くべきことに、アレムツズマブを伴うメトトレキサートの同時処置は、アレムツズマブ単独で観察された除去よりもアレムツズマブ処置の直後での辺縁帯B細胞のより強い除去を可能にし(
図34)、それにより感染への適正な早期応答のために必要な、適切なレベルの自然発生低親和性自己反応性B細胞を有するバランスのとれた免疫環境を促進した。
【0126】
アレムツズマブ単独で処置したマウス群は本研究に含まれ、メトトレキサートだけで処置したマウスがこの短いサイクルのレジメンで抗原刺激不在下での細胞効果(これは、メトトレキサート単独で処置した対照マウスにおいて観察された効果とは異なる可能性がある)を示すことを明らかにした(
図34)。本研究において作成されたデータ(脾臓B細胞集団がメトトレキサート処置の最終日の2日後に評価された)は、メトトレキサートが辺縁帯B細胞の除去を増強できることを示唆した。これは、アレムツズマブを伴って送達された場合にメトトレキサートが、自然発生B細胞サブセットが非自己反応性B細胞サブセットと適切なバランスにある細胞環境をもたらしうるとの仮説を裏付けた。
【0127】
【表3】
【0128】
Myozyme(登録商標)を伴うメトトレキサート処置の直後での細胞集団の毎日の
評価に基づいて、本発明者らは、アレムツズマブのコンテクストにおいて、B10B細胞集団および他の潜在的制御性B細胞集団がメトトレキサート処置の5〜6日後より早くではなくメトトレキサートによって増やされるとの仮説を立てた。本発明者らは、そのような集団がメトトレキサート処置後2日程度の早期では増やされたことを観察しておらず、このことはこの仮説と一致した。対照的にmATGおよびアレムツズマブ処置のコンテクストにおいて見られるように、メトトレキサート処置後より長い期間において効果は異なると考えられた。それら両方の筋書きでメトトレキサート処置5カ月後、B細胞サブセットは、mATGおよびアレムツズマブ投与後1および2日でメトトレキサート処置マウスにおいて増やされたと考えられた(アレムツズマブデータに関して
図35を参照されたい)。興味深いことに、この時点で辺縁帯B細胞も増加していると考えられた(これは統計的に有意ではないが)。
【0129】
メトトレキサートは、タンパク質治療および移植心臓組織抗原に対する寛容を誘導し、それによりADAおよび抗同種移植片抗体の産生および分泌に関するB細胞免疫応答を抑止した。したがって本発明者らは、メトトレキサートがアレムツズマブ処置後に細胞環境の制御を補助できるだけでなく、自己タンパク質への寛容を誘導でき、B細胞性自己免疫疾患の発症および病態に寄与する自己抗体の生成に関するB細胞免疫応答を軽減できるとの仮説を立てた。
【0130】
この仮説を検討するために、動物に5カ月間毎月アレムツズマブを投与した。メトトレキサートを5mg/kgで動物の一群に最初のアレムツズマブ処置後のみ3日連続で与えた。アレムツズマブ処置の5回目投与の2日前および1日後に動物を分析のために屠殺した。血清サイトカインレベルをアレムツズマブ処置の前後で評価した。驚くべきことに、これらの結果は、炎症促進性サイトカインMCP−1、IL−13、IL−6およびIL−12のレベルがメトトレキサートで処置した動物においてアレムツズマブの5回目投与の24時間後、いずれかのメトトレキサートを投与された5カ月後に低下したことを示唆した(
図36)。これらのサイトカインは、B細胞応答および免疫細胞動員を促進するだけでなく、それらは、過敏症反応において役割を演じることもできた。これらのデータは、メトトレキサートが注入関連反応の阻止を補助できることを示唆した。
【0131】
〔実施例15〕
メトトレキサートは、制御性B細胞集団の特異的誘導を通じて免疫寛容を誘導する
本発明者らのデータは、メトトレキサートが、他者らによって示唆された(Messingerら、Genetics in Medicine 14:135〜142頁(2012)およびLacanaら、Am J Med Genet Part C Semin Med Genet 160C:30〜39頁(2012))増殖細胞を殺す予想された手段によってではなく、TGF−ベータ、IL−10およびFoxP3を発現する制御性B細胞集団の特異的誘導を通じて免疫寛容を誘導することを驚くべきことに示した。メトトレキサート単一サイクルによってMyozyme(登録商標)に対して寛容化されたマウス由来のB細胞は免疫寛容を未処理動物に移入すると考えられた。さらに、IL−10およびTGF−ベータの両方がメトトレキサート誘導免疫寛容のために必要であると考えられた。いくつかの細胞サブセットでは、メトトレキサートがTGF−ベータを誘導し、これが次にIL−10およびFoxP3を誘導するとも考えられた。この機構は新規かつ予想外であり、メトトレキサート3サイクル、Rituximab(登録商標)(B細胞除去剤)および場合により静脈内免疫グロブリン(IVIG)での同時処置を含む現在の臨床免疫寛容プロトコールの価値を問題にした(Messingerら、上記)。この組合せ処置は十分であると考えられるが、本発明者らのデータは、1)メトトレキサート単一サイクルは、現在観察されたものよりもさらに低いADA力価を生じる可能性があること、および2)過剰量のメトトレキサートおよびリツキシマブが投与された場合、免疫寛容は保持されない可能性があることを示唆した。リツキシマブの初回用量は、リツ
キシマブ介在B細胞除去が血液および組織中のすべてのB細胞を包括的に除去するとは考えられていないことから過剰に有害ではない可能性があった。本明細書に記載の研究で見られたとおり、アレムツズマブはB10B細胞を積極的に除去するが、メトトレキサートでの処置はメトトレキサートの最初のサイクル後何カ月間もアレムツズマブ寛容の保持を補助すると考えられるこれらの細胞になお接触できる。さらにリツキシマブ処置には、(本明細書で示すとおり)免疫寛容を誘導および介在するようにメトトレキサートによって影響されると考えられる移行性B細胞提示の増加がすぐに続いた。これらの機構のデータが反直感的および予想外であったことから、低用量のメトトレキサート単一サイクルは(とりわけ)リンパ球除去タンパク質治療に対する免疫寛容を誘導する驚くべき有効な方法であった。
【0132】
上に記載のとおり、いくつかのB細胞サブセットは、メトトレキサートとタンパク質治療薬との同時投与直後に細胞割合および/または細胞数において有意に増加した。さらにこれらのサブセットは、メトトレキサート寛容化マウスでメトトレキサート単一サイクル処置のずっと後に増加したと考えられた(例えば
図24、27および35を参照されたい)。併せてこれらのデータは、これらの細胞集団が免疫寛容誘導の誘導および保持の両方を積極的に介在できることを示唆した。この仮説をさらに立証するために本発明者らは、これらの細胞集団が免疫制御にしばしば関連するサイトカインおよび他のタンパク質を発現するかどうかを調査した。
【0133】
免疫制御と関連する1つの細胞型はB10B細胞であった。ヒトおよびマウスの両方においてB10B細胞は、それらのIL−10発現によって特徴付けられ(Matsushitaら、J.Clin.Invest.118:3420〜3430頁(2008)、Iwataら、Blood、117:530〜541頁(2011))、IL−10コンピテントマウスにおいて免疫応答だけを抑制できた。B10B細胞は、メトトレキサート寛容化マウスにおいて増加しており(
図19)、IL−10ノックアウト動物はメトトレキサート誘導免疫寛容に非応答性であった(
図31)。Myozyme(登録商標)、またはMyozyme(登録商標)およびメトトレキサートで処置した動物から単離したB10B細胞をIL−10タンパク質発現についてフローサイトメトリーによって評価した。IL−10は両処置群由来のB10細胞において発現されていたが、IL−10を発現しているB10B細胞の数はMyozyme(登録商標)およびメトトレキサートで処置した動物において増加していた(
図38)。IL−10は、活性化CD86+および非活性化CD86−B10B細胞の両方において2日間の培養後に発現されていた(
図39)。以前の研究は、IL−10発現がPMA/イオノマイシンまたはLPSなどの刺激物質による細胞のin vitro刺激後にのみ測定されたことを示すと考えられた(Carterら、J Immunol 186:5569〜5579頁(2011);Yanabaら、J Immunol 182:7459〜7472頁(2009))。驚くべきことに本発明者らの研究では、培養脾臓B細胞は、IL−10の測定を可能にするためにいかなる刺激または操作も必要とせず、より直接的にこれらのB10B細胞がIL−10をin vivoで発現することを示唆した。本明細書で提供するデータは、非刺激培養において作成された。追加的に本発明者らは、メトトレキサートがIL−10を発現する細胞集団を特異的に増殖できたことを本発明者らが初めて実証したと考えた。さらにこれらの細胞集団は、Myozyme(登録商標)単独で処置した動物からよりもMyozyme(登録商標)およびメトトレキサートで処置した動物から単離した場合に、よりIL−10を発現すると考えられた(
図54)。
【0134】
TGF−ベータ発現は、制御性T細胞において免疫制御と関連し、しばしば制御性T細胞におけるIL−10発現と結び付いた。さらにいくつかの報告は、制御性B細胞がTGF−ベータを発現できることを示していると考えられた。B10B細胞がTGF−ベータを発現すると報告されたことはないが、本発明者らは、Myozyme(登録商標)単独
、またはMyozyme(登録商標)およびメトトレキサートで処置したマウスのB10B細胞におけるTGF−ベータ発現をフローサイトメトリーを用いて評価することを決めた。予想外に本発明者らは、B10B細胞がTGF−ベータを発現し、TGF−ベータ発現細胞の数がメトトレキサート寛容化動物において増加したことを見出した(
図40A)。さらにこれらの培養細胞では、TGF−ベータは活性化(CD86+)および非活性化(CD86−)B10B細胞の両方で発現された(
図40B)。これは、メトトレキサート処置がTGF−ベータを発現する細胞の数を増加させるという追加的な新規観察であった。追加的にメトトレキサートは、TGF−ベータの発現レベルを増加させた(
図55)。
【0135】
FoxP3は、免疫制御と関連する別のタンパク質であった。FoxP3は制御性T細胞のマーカーであった。FoxP3は、マウスのB10B細胞で発現されていると報告されていなかった。本発明者らは、メトトレキサート誘導免疫寛容の存在下および非存在下でB10B細胞におけるFoxP3発現をフローサイトメトリーを用いることによって調査した。B10B細胞は、Myozyme(登録商標)単独で処置した動物において見られたとおりFoxP3を発現すると考えられた(
図41A)。FoxP3+B細胞の数はメトトレキサートおよびMyozyme(登録商標)の両方での処置で増加したと考えられた(
図41B)。追加的に培養された活性化(CD86+)および非活性化(CD86−)B10B細胞の両方がFoxP3を発現すると考えられた(
図41)。これはB10B細胞がFoxP3を発現することの最初の報告であった。本発明者らは、FoxP3が活性化(CD86+)および非活性化(CD86−)B10B細胞の両方で発現され、FoxP3の発現はメトトレキサート処置で増加することを見出した(
図56)。
【0136】
追加的B細胞型が単一サイクルメトトレキサート誘導免疫寛容で有意に増加したことから、本発明者らはこれらの細胞型のいくつかがIL−10、TGF−ベータおよびFoxP3を発現したかどうかを評価した。移行性2、移行性3および濾胞性B細胞は、IL−10(
図42)、TGF−ベータ(
図43)およびFoxP3(
図44)を発現することが見出され、これはこれらの各B細胞サブセットに関して新規で予想外のことであった。B10細胞で観察されたとおり、IL−10、TGF−ベータおよびFoxP3B細胞サブセットの絶対細胞数は、Myozyme(登録商標)単独で(
図42〜44AおよびC)処置したマウスと比較してメトトレキサートで増加した(
図42〜44BおよびC)。メトトレキサート処置は、Myozyme(登録商標)単独でまたはMyozyme(登録商標)およびメトトレキサートで処置した動物におけるこれらのタンパク質の平均蛍光強度でのシフトによって見られるとおり、複数の細胞サブセットにおけるIL−10、TGF−ベータおよびFoxP3の統計的に有意な増加も誘導した(
図54〜56)。
【0137】
メトトレキサートおよびMyozyme(登録商標)での処置によって増やされた複数のTGF−ベータ発現B細胞集団をさらに調査するために、次に本発明者らは、TGF−ベータがメトトレキサート誘導免疫寛容のために必要であるかどうかを決定することを試みた。研究の間を通じて腹腔内注射で週3回与えられた抗TGF−ベータ抗体(1D11、Genzyme)5mg/kgまたはアイソタイプ対照(13C4)の存在下または非存在下でMyozyme(登録商標)、またはMyozyme(登録商標)およびメトトレキサートで動物を処置した。抗体力価を隔週で動物の4つの異なる群において評価した。TGF−ベータがメトトレキサート誘導免疫寛容のために必要である場合、本発明者らは抗TGF−ベータ抗体で処置した動物が低減した抗Myozyme力価を示すべきでないことを予想した。6週目力価を
図45に示し、TGF−ベータがメトトレキサート誘導免疫寛容のために必要である場合があることを示唆した。これが早期の時点であることから、いくつかの動物だけが抗Myozyme応答を生じる時間を有していた。重要なことに、この時点の力価は、rhGAA単独での2匹の動物ならびにrhGAAおよびメトトレキサートおよび1D11で処置した動物が高力価を示した6週目で
図15Cに示したも
のと類似していたと考えられた。比較して、rhGAAおよびメトトレキサートでまたはrhGAAおよびメトトレキサートおよび13C4で処置した動物で高力価を示したものはなかった。
【0138】
追加的に、Myozyme(登録商標)、またはMyozyme(登録商標)およびメトトレキサートで処置した(Myozyme(登録商標)1回処置、またはMyozyme(登録商標)およびメトトレキサート1回処置の7日後に1D11または13C4も同時投与した)動物から脾臓を単離した。この時点でIL−10、TGF−ベータおよびFoxP3を発現する移行性2、移行性3、B10および濾胞性B細胞はMyozyme(登録商標)およびメトトレキサートで処置した動物において増加していた。次いで各群の細胞をプールし、2日間培養し、次いで1D11を伴う抗TGF−ベータ処置がTGF−ベータ、IL−10およびFoxP3を発現する細胞の増殖を妨害するかどうかをアイソタイプ対照抗体(13C4)と比較して決定するためにフローサイトメトリーによって評価した。
【0139】
全く予想外なことに1D11処置は、TGF−ベータを発現している細胞のメトトレキサート誘導増殖だけでなく、IL−10およびFoxP3を発現しているいくつかのサブセットの増殖も妨害した。これはB10B細胞(
図46)および濾胞性B細胞(
図47)について特に当てはまり、FoxP3+濾胞性B細胞は1D11効果を経験したと考えられなかった。1D11処置がTGF−ベータ発現移行性2B細胞を妨害した移行性2B細胞では、IL−10+移行性2B細胞(活性化移行性2B細胞を含む;
図48)では効果は見られなかった。さらに1D11によるFoxP3+移行性2B細胞での効果は、活性化CD86+移行性2B細胞を見る場合を除いて、この小さな処置群では明らかであるとは考えられなかった。重要なことに、これらのデータは、メトトレキサート誘導TGF−ベータがIL−10およびFoxP3といくつかの細胞型においてだけ関連したことを示唆した。移行性3B細胞については、移行性3サブセットにおいて検出可能なTGF−ベータがあったが(
図49)、これらの細胞に1D11処置の明らかな効果はなかった(P<0.05;
図49)。注目すべきことに、活性化CD86+移行性3B細胞では、1D11処置マウスにおけるIL−10+移行性3B細胞の数がより多いと考えられた。これは、この集団が1D11処置による他の細胞型の数における喪失の補償を補助するように増殖した可能性があることを示唆した可能性がある。同様に注目されるのは、1D11処置がこれらの細胞におけるIL−10、TGF−ベータおよびFoxP3の基礎レベルに影響を与えなかったことであったが(それぞれ
図50A〜C)、これらのサイトカインを発現する細胞へのメトトレキサートの効果に影響すると考えられた。
【0140】
要約として、メトトレキサート誘導免疫寛容の際にTGF−ベータ抗体を注射することによってTGF−ベータを妨害することは、アイソタイプ対照で処置した動物と比較してTGF−ベータを発現している細胞の数を低減した。さらに、IL−10およびFoxP3を発現しているB10B細胞においてメトトレキサート誘導寛容について観察された典型的な増加は、1D11処置によって阻害された。1D11処置はある種のB細胞型(しかしすべてのB細胞型ではない)においてTGF−ベータ、IL−10および/またはFoxP3へのメトトレキサートの効果に影響すると考えられた。これらの観察は、驚くべきことであり、メトトレキサートがTGF−ベータを誘導し、これが次にB10B細胞などのある種の細胞でIL−10および潜在的にFoxP3を誘導することを示唆した。TGF−ベータとIL−10およびFoxP3との関連は以前報告されたと考えられるが、これらの細胞型では示されていなかった。さらにメトトレキサートは、この複合シグナル伝達カスケードと同時に関連していなかった。
【0141】
これまでのところ、本発明者らは、ある種のB細胞がメトトレキサート誘導寛容で有意に増加したことおよびこれらのB細胞が免疫制御(抑制)と関連するタンパク質を発現し
たことを実証した。B細胞それ自体がメトトレキサート誘導寛容を介在しているかどうかをより直接的に評価するために、本発明者らはメトトレキサート寛容化マウス由来の総脾臓B細胞が免疫寛容を未処理宿主に移入できるかどうかを評価する養子移入実験を実施した。本発明者らはこの実験をMyozyme(登録商標)およびメトトレキサート処置単一サイクルを用いて実施した。本発明者らは、Myozyme(登録商標)単独または、Myozyme(登録商標)およびメトトレキサートで処置した動物からMyozyme(登録商標)または、Myozyme(登録商標)およびメトトレキサート1回処置の7日後(上に記載のB細胞サブセットがメトトレキサートによって増加した時)に脾臓を単離し、次いですべての脾臓B細胞を精製した。次いでこれらの細胞をMyozyme(登録商標)未処理レシピエントマウスに移入した(
図51A)。移入後、レシピエントを(Myozyme(登録商標)または、Myozyme(登録商標)およびメトトレキサートのいずれかで処置した非移入対照動物と共に)Myozyme(登録商標)20mg/kgで毎週処置した。抗Myozyme抗体力価を評価するために血液を隔週で収集した。脾臓を採取する時点で、各ドナー群由来のB細胞のサブセットをTGF−ベータ+、IL−10+および/またはFoxP3+移行性2、移行性3、B10ならびに濾胞性B細胞における予想された増加を確認するためにフローサイトメトリーによって評価した。ドナー群が予想された表現型を有することを確認した。力価分析は、Myozyme(登録商標)およびメトトレキサート単一サイクルで処置された動物から単離された総脾臓B細胞がMyozyme(登録商標)に対する免疫寛容を未処理宿主に移入できることを示唆した(
図51B)。これは、B細胞がメトトレキサート誘導免疫寛容を介在できることを裏付け、B細胞が抗炎症効果の介在を補助するようにメトトレキサートによって増やされる(殺されるのではなく)と記載されたのはこれが初めてであった。これらのデータは、免疫寛容を誘導するための(現在患者で実施されている)B細胞除去剤とメトトレキサートとの併用も直接問題にした(Messingerら、上記およびLacanaら、上記)。
【0142】
〔実施例16〕
メトトレキサートは移植片病態を改善する
本発明者らは、メトトレキサートが正常動物(
図52)および移植動物(
図53)においてCD4+、CD8+、T制御性(CD4+CD25+FoxP3+)T細胞および総CD19+B細胞を除去しないことを実証する、マウス抗胸腺細胞グロブリンのコンテクストにおける追加的データも作成した。非特異的ウサギIgG単独またはメトトレキサートとの組合せで処置した正常動物を比較すると、血液および脾臓中の細胞集団に有意な変化はなかった(
図52)。さらに、mATG単独で、またはmATGおよびメトトレキサートで処置した動物から単離したこれらの集団を比較しても増強された除去はなかった。むしろ本発明者らは、メトトレキサートによって増加したmATG曝露による可能性が最も高いmATG介在CD4+、CD8+および制御性T細胞効果の伸展だけを観察した(
図52)。追加的に、同種移植を受けた動物でのメトトレキサート処置単独は、これらの特定の細胞サブセットを除去しなかった(
図53)。mATG単独で処置された動物と比較したmATGおよびメトトレキサートで処置された動物におけるCD4+およびCD8+T細胞の数の低下は、メトトレキサート処置のコンテクストにおける場合mATGの延長された効果によって説明できた。重要なことに、メトトレキサートが正常または移植動物のいずれかにおける抗体応答を低減するように活性化B細胞を殺す場合予想されていたようには、メトトレキサートはB細胞の減少を誘導しなかった(
図52および53)。これらのデータは、抗薬物抗体へのメトトレキサートの効果が活性化B細胞の抗葉酸誘導除去によって介在されない可能性があることを示唆した。予想されたとおり、この異所性心臓同種移植片モデルにおいてmATG処置も総B細胞数に強い影響を与えなかった。総合的に、mATGとメトトレキサートとの組合せ処置は、移植片拒絶病態の重症度を弱め、移植片へのT細胞浸潤の減少と関連したが、制御性T細胞表現型を有する細胞の増加には関連しなかった。これは、Myozyme(登録商標)およびアレムツズマブのコンテク
ストにおいて作成された結果と一致した。
【0143】
長期生着移植片における組織学的変化を評価し、移植片生着でのmATGとメトトレキサートとの組合せの機構を理解する両方のために、心臓移植片を収集し、病態および細胞組成に関して評価した。特に、制御性T細胞が移植では長期移植片生着に関連し、Thymoglobulin(登録商標)およびmATGによって誘導され、mATG処置後の遅延移植片拒絶の原因となることが実証されていることから、制御性T細胞と一致する表現型を有するCD3+Foxp3+細胞を評価した。具体的には、心臓移植片をmATGとメトトレキサートとの組合せ処置群および未処置同系群から移植の少なくとも100日後に収集した。未処置マウスおよびmATG単独またはメトトレキサート単独で処置したマウス由来の移植片を比較のために移植片拒絶後に採取した。H&Eもしくはマッソントリクロームで染色した組織切片、または免疫染色した抗CD3および抗Foxp3抗体を移植拒絶の指標である組織学的変化(例えば軽度から中程度の心筋炎、心筋変性および壊死、移植心冠動脈病変(CAV)およびT細胞浸潤)について顕微鏡的に評価した。100日目に、mATGおよびメトトレキサートで同時処置した動物由来の同種移植片は、最小から軽度のCAV病変および未検出から最小の心筋変性および心筋炎を示した。移植片拒絶を示唆する組織学的変化は、同系移植片においてこの後期時点で明らかでなかった(
図54)。組合せ処置群由来の同種移植片は、心筋血管に浸潤している数個の細胞を伴う心筋への軽度のT細胞浸潤を示した。同系移植片は、心筋内にわずかなT細胞を含有した。偶発的二重(occasional dual)CD3およびFoxp3免疫陽性細胞を含むT細胞クラスターが同系移植片および組合せ処置同種移植片の両方の心外膜に存在した。したがって長期生着移植片は、低減した炎症と相関する移植片拒絶の最小の徴候を示した。
【0144】
mATGとメトトレキサートとの組合せ処置の効果は移植時に近いほどより活発に生じやすいことから、本発明者らは病態も評価し、移植心臓同種移植片の細胞浸潤を移植後7日(未処置マウスについて)または14日(すべての処置群について)で特徴付けた。未処置同種移植片は、心筋炎、心筋変性ならびに冠動脈の心外膜および心筋内枝の両方における壊死を含む移植片拒絶病態を示した。対照的にmATGおよびメトトレキサートの両方で処置した動物から単離された同種移植片は、それほど重度ではないCAVを示した。これは、未処置動物由来およびmATGまたはメトトレキサートのいずれかで処置された動物由来の同種移植片と比較されていた(
図58)。予想されたとおり、未処置マウス由来の同系移植片は、これらの時点で病態をほとんどまたは全く示さなかった。CD3+T細胞浸潤が未処置マウスおよびmATGまたはメトトレキサート単独で処置されたもの由来の同種移植片中の心筋および心外膜で観察された。数個のCD3+T細胞もこれらの移植片中のCAV病変に関連する炎症細胞浸潤に存在した。対照的に、mATGとメトトレキサートとの組合せで処置された動物由来の同種移植片は、実質的により低い心筋へのCD3+T細胞浸潤、およびごく最小の心外膜へのCD3+T細胞浸潤を示した。同系心臓移植片は、心外膜だけへの最小のCD3+T細胞浸潤を示した。心外膜への炎症細胞浸潤中のわずかな割合のT細胞は、二重CD3およびFoxp3免疫反応性によって示されるとおり制御性T細胞表現型を有すると考えられたが、この頻度は他の群においてより炎症浸潤において高くはないと考えられた。したがって低減した病態もmATGおよびメトトレキサートでの処置後早期に観察され、低減したおよび心外膜限定の両方のT細胞浸潤と関連した。