【文献】
Hossein Najafi, Mohammad Erfan Danesh Jafari, and Mohamed Oussama Damen,Adaptive Soft-Output Detection in MIMO Systems,Forty-Sixth Annual Allerton ConferenceAllerton House, UIUC, Illinois, USA,2008年 9月26日
【文献】
Mahmoud Taherzadeh, Amin Mobasher, and Amir K. Khandani,Communication Over MIMO Broadcast ChannelsUsing Lattice-Basis Reduction,IEEE TRANSACTIONS ON INFORMATION THEORY, VOL. 53, NO. 12,2007年12月
多次元コンステレーションの送信シンボルベクトルを形成する符号化ビットの軟推定値を計算する方法であって、
前記送信
シンボルベクトルは、送信元からチャネルを通じて受信機によって受信され、
前記方法は、
整数エントリー又はガウス整数エントリーを有する所定のベクトルのリストLを前記受信機のメモリから取得するステップと、
前記送信元と前記受信機との間のチャネル行列推定H及び受信シンボルyを取得するステップと、
簡約チャネル行列H
r及び基底変換行列Tを前記チャネル行列推定から取得するステップであって、ここで、H=H
rTである、ステップと、
少なくとも前記簡約チャネル行列及び前記受信シンボルから、整数座標を有するベクトルx(ハット)を計算するステップであって、前記整数座標を有するベクトルは、観測値y’=H
r−1yに対する、整数座標を有する最近ベクトルである、ステップと、
前記所定のベクトルのリストを、前記整数座標を有するベクトルx(ハット)の回りにシフトし、シフトされたベクトルのリストであるリスト
【数1】
を取得するステップと、
リストL
s∩C
Rを取得するために、シンボルの全ての可能なベクトルx=Tz
の集合である変換された多次元コンステレーションC
Rに属しないL
sの前記ベクトルを除去するステップと、
前記シフトされたベクトルのリストに属する前記ベクトルのリストL
s∩C
Rのベクトルと、前記多次元コンステレーション及び前記基底変換行列から取得される変換された多次元コンステレーションとに従って、前記符号化ビットの軟推定を計算するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
前記所定のベクトルのリストは、下限及び上限によって境界が定められた実部及び虚部を有する全ての前記ベクトルを含む、格子の原点を中心とした球形の所定のベクトルのリスト又は立方体のベクトルのリストである
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記簡約チャネル行列は、事前に計算された簡約チャネルの集合又は基底変換行列の集合から、所与の性能指数に従って、1つの簡約チャネル又は1つの基底変換行列を選択することによって取得される
ことを特徴とする、請求項1から2のいずれか1項に記載の方法。
前記チャネル行列のランダム集合に対するチャネル簡約アルゴリズムのオフライン前処理は、基底変換行列の候補行列の集合を、前記候補行列の集合を空集合に初期化するとともに関連付けられた確率のベクトルを空ベクトルに初期化することによって取得することと、中心に位置するエントリー及び単位分散エントリーを有するチャネルの期待分布に従ってチャネル行列をランダムに生成することと、基底変換行列を取得するために格子簡約を適用することと、前記取得された基底変換行列が前記候補行列の集合にまだ存在しない場合には前記取得された基底変換行列を前記候補行列の集合に加えること、又は前記取得された基底変換行列に関連付けられた確率を変更することとを所与の回数行い、最も高い確率を有する前記候補行列の集合の所定の数の基底変換行列を選択することによって実行される
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
前記チャネル行列のランダム集合に対するチャネル簡約アルゴリズムのオフライン前処理は、簡約チャネル行列の候補行列の集合を、前記候補行列の集合を空集合に初期化するとともに関連付けられた確率のベクトルを空ベクトルに初期化することによって取得することと、中心に位置するエントリー及び単位分散エントリーを有するチャネルの期待分布に従ってチャネル行列をランダムに生成することと、簡約チャネル行列を取得するために格子簡約を適用することと、前記取得された簡約チャネル行列が前記候補行列の集合にまだ存在しない場合には前記取得された簡約チャネル行列を前記候補行列の集合に加えること、又は前記取得された簡約チャネル行列に関連付けられた確率を変更することとを所与の回数行い、最も高い確率を有する前記候補行列の集合の所定の数の簡約チャネル行列を選択することによって実行される
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
前記シフトされたベクトルのリストに属する前記コンステレーションベクトルに従った前記符号化ビットの前記軟推定の前記計算は、前記チャネルを通じて受信された送信シンボルベクトルを用いて実行される
ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の概要】
【0005】
M×N複素行列Hによって表されるN個の入力及びM個の出力を有する線形チャネル上での直交振幅変調QAMコンステレーションのN個のシンボルの送信を考えることにする。
【0006】
受信機では、M個の複素ガウスエントリーのベクトルが線形観測値Hzに加算され、これによって、以下のチャネルモデル:y=Hz+ηが得られる。ここで、E[zz
†]=ρI
Nであり、E[ηη
†]=I
Mであり、x
†はxの転置共役を示し、ρは定義によると信号対雑音比(SNR)を示し、I
NはN×N単位行列である。
【0007】
シンボルz
iは、ベクトルzのi番目のエントリーであり、サイズ2
siの直交振幅変調QAMに属し、複数のs
i個の符号化ビットを搬送する。ここで、コンステレーションシンボルは、整数の集合{0,1,
・・・,2
si/2−1}に属するそれらの実部及び虚部を有するものと仮定する。
【0008】
QAM変調のそのような定義は中心に位置するものではない。中心に位置する(centered)QAM変調が送信されるときに、y
(c)及びz
(c)を受信シンボルベクトル及びQAMシンボルベクトルと定義し、H
(c)を等価チャネルと定義すると、中心に位置していないQAM変調が送信されるときの受信シンボルベクトル及びQAMシンボルベクトル並びに等価チャネルの以下の関係が得られる。
【数1】
【0009】
上記モデル上での各送信について、符号化ビットは、送信されるデータを搬送する情報ビットのベクトルから符号化ステップによって生成される符号化ビットのより大きなベクトルのサブセットである。
【0010】
符号化ビットのベクトルcを変調シンボルのベクトルzに変換するバイナリーラベリングは、Ω(c)=z、Ω
−1(z)=c及びΩ
j−1(z)=c
jであるようなΩ(・)で示される。c
jは、符号化ビットのベクトルcのj番目のビットである。多次元QAMコンステレーションは、C={z}と呼ばれる。すなわち、シンボルの全ての可能なベクトルzの集合である。
【0011】
幾つかの受信機は、符号化ビットの軟出力推定を実行するだけでなく、エラー訂正符号の復号化の以前の反復の出力から軟入力事前情報(soft input a priori information)も取り込む。これらの受信機は、情報ビットに関する推定値を生成する軟入力軟出力復号器の入力に軟推定値を提供するだけでなく、復号化の次の反復において軟出力検出器にフィードバックされる符号化ビットに関する軟出力推定値も提供する。
【0012】
上記モデルに関連付けられた最適な軟入力軟出力検出器は、雑音がガウス分布を有するとき、以下の演算を実行することによって、zに関連付けられたj番目の符号化ビットの外部対数尤度比LLR
jを計算する。
【数2】
ここで、π
jは、j番目の符号化ビットが1に等しい事前確率であり、復号化の以前の演算において軟出力復号器によって提供され、復号化の最初の反復において0.5に初期化されるようになっている。
【0013】
各LLRの計算は、
【数3】
個の距離‖y−Hz’‖
2の計算を必要とすることに気付くことができる。
【0014】
各距離は、(N+1)・M個の乗算及びN+M−1個の加算を必要とする。
【0015】
したがって、チャネル入力の数Nが大きいとき、複雑度が高い。
【0016】
さらに、総スペクトル効率Σ
Ni=1s
iが大きい場合、複雑度は解決困難なものとなるおそれがある。
【0017】
低複雑度とともに準最適性に達する別の選択肢は、対数尤度比LLRの計算において加算の最も重要な項をもたらすベクトルのリストを引き出すことである。その場合、この計算は、ベクトルのリストに対してのみ実行される。‖y−Hz’‖<Rの境界値をもたらす候補ベクトルz’∈Cのみが考慮される。
【0018】
これは、ベクトルyを中心とする半径Rの超球に属する全てのベクトルHz’をリストすることと等価である。Hz’のベクトルは、線形チャネルH上で送信される多次元QAM変調を変換したものである多次元平行体に属する。また、これらのベクトルは、Hを生成行列として有するコンステレーションを形成する。そのようないわゆるリスト球復号器(list sphere decoder)は、準最適な性能を提供するが、リスト内のベクトルの数が雑音サンプルごとに大きく変動するとき又は各チャネルの実現が変化するとき、チップセットにおける実際の実施を停止させる主な欠点を有する。
【0019】
別の可能性は、zの硬出力推定z(ハット)を最初に実行し、yの代わりにHz(ハット)をリストの中心にし、これによって、いわゆるシフトリスト球復号器(shifted list sphere decoder)を得ることである。適度な複雑度に対して、この手法は、より良好な性能を示すが、依然として、チャネルが変化するとき、動的なリストを必要とする。しかしながら、チャネルが一定であるとき、リストは、格子の原点の周りに生成することができ、硬検出の最初のステップにおいて取得された推定値Hz(ハット)の回りにシフトさせることができる。このシフト手法は、格子の線形性を用いることによって関係している。
【0020】
本発明は、送信元からチャネルを通じて受信機によって受信される送信シンボルベクトルを形成する符号化ビットの軟推定値の計算の複雑度を低減することを可能にする方法及びデバイスを提供することを目的とする。
【0021】
そのために、本発明は、多次元コンステレーションの送信シンボルベクトルを形成する符号化ビットの軟推定値を計算する方法であって、前記送信ベクトルは、送信元からチャネルを通じて受信機によって受信され、該方法は、
整数エントリー又はガウス整数エントリーを有する所定のベクトルのリストを前記受信機のメモリから取得するステップと、
前記送信元と前記受信機との間のチャネル行列推定及び受信シンボルを取得するステップと、
簡約チャネル行列及び基底変換行列を前記チャネル行列推定から取得するステップと、
少なくとも前記簡約チャネル行列及び前記受信シンボルから、整数座標を有するベクトルを計算するステップと、
前記所定のベクトルのリストを、前記整数座標を有するベクトルの回りにシフトし、シフトされたベクトルのリストを取得するステップと、
前記シフトされたベクトルのリストに属するベクトルと、前記多次元コンステレーション及び前記基底変換行列から取得される変換された多次元コンステレーションとに従って、前記符号化ビットの軟推定を計算するステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0022】
また、本発明は、多次元コンステレーションの送信シンボルベクトルを形成する符号化ビットの軟推定値を計算するデバイスであって、前記送信ベクトルは、送信元からチャネルを通じて受信機によって受信され、該デバイスは、
整数エントリー又はガウス整数エントリーを有する所定のベクトルのリストを前記受信機のメモリから取得する手段と、
前記送信元と前記受信機との間のチャネル行列推定及び受信シンボルを取得する手段と、
簡約チャネル行列及び基底変換行列を前記チャネル行列推定から取得する手段と、
少なくとも前記簡約チャネル行列及び前記受信シンボルから、整数座標を有するベクトルを計算する手段と、
前記所定のベクトルのリストを、前記整数座標を有するベクトルの回りにシフトし、シフトされたベクトルのリストを取得する手段と、
前記シフトされたベクトルのリストに属するベクトルと、前記多次元コンステレーション及び前記基底変換行列から取得される変換された多次元コンステレーションとに従って、前記符号化ビットの軟推定を計算する手段と、
を備えることを特徴とする、デバイスに関する。
【0023】
したがって、上記受信機の実施が容易になる。その場合、チップセットにおいて軟推定値を実施することが可能である。
【0024】
特定の特徴によれば、前記所定のベクトルのリストは、球形の所定のベクトルのリスト又は立方体のベクトルのリストである。
【0025】
したがって、全てのベクトルではなくベクトルのリストのみを考慮する準最適性は制限される。
【0026】
特定の特徴によれば、前記整数座標を有するベクトルは、前記簡約チャネル行列から計算されたMMSEフィルターを連続的に適用して、整数値への丸めを実行することによって取得される。
【0027】
したがって、リストは、システムの性能を改善する良好な候補ベクトルを中心にしている。
【0028】
特定の特徴によれば、前記チャネル行列推定から基底変換行列が更に取得され、前記整数座標を有するベクトルは、該基底変換行列から更に計算される。
【0029】
したがって、リストは、システムの性能を改善するより一層良好な候補ベクトルを中心にしている。
【0030】
特定の特徴によれば、前記簡約チャネル行列は、チャネル簡約アルゴリズムを計算することによって取得される。
【0031】
したがって、簡約チャネル行列は、現在のチャネル推定に適合している。
【0032】
特定の特徴によれば、前記簡約チャネル行列は、事前に計算された簡約チャネルの集合又は基底変換行列の集合から、所与の性能指数に従って、1つの簡約チャネル又は1つの基底変換行列を選択することによって取得される。
【0033】
したがって、簡約チャネル行列を取得するのに必要とされる複雑度が大幅に低減される。
【0034】
特定の特徴によれば、前記性能指数は、前記簡約チャネル行列の前記逆行列と、前記簡約チャネル行列の前記逆行列の前記共役転置との乗算によって取得される行列のトレースの前記値である。
【0035】
したがって、簡約チャネル行列は、現在のチャネル推定によく適合している。
【0036】
特定の特徴によれば、前記性能指数は、前記簡約チャネル行列をユニタリー行列及び上三角行列に分解することによって取得される該上三角行列から求められる。
【0037】
したがって、簡約チャネル行列は、現在のチャネル推定によく適合している。
【0038】
特定の特徴によれば、前記簡約チャネルの集合又は前記基底変換行列の集合は、チャネル行列のランダム集合に対するチャネル簡約アルゴリズムのオフライン前処理から取得される。
【0039】
したがって、良好な簡約チャネル行列の集合を求めることは容易である。
【0040】
特定の特徴によれば、前記チャネル行列のランダム集合に対するチャネル簡約アルゴリズムのオフライン前処理は、基底変換行列の候補行列の集合を空集合に初期化するとともに関連付けられた確率のベクトルを空ベクトルに初期化することによって前記候補行列の集合を取得することと、中心に位置するエントリー及び単位分散エントリーを有するチャネルの期待分布に従ってチャネル行列をランダムに生成することと、基底変換行列を取得するために格子簡約(lattice reduction:格子基底縮小)を適用することと、前記取得された基底変換行列が前記候補行列の集合にまだ存在しない場合には前記取得された基底変換行列を前記候補行列の集合に加えること、又は前記取得された基底変換行列に関連付けられた確率を変更することとを所与の回数行い、最も高い確率を有する前記候補行列の集合の所定の数の基底変換行列を選択することによって実行される。
【0041】
特定の特徴によれば、前記チャネル行列のランダム集合に対するチャネル簡約アルゴリズムのオフライン前処理は、簡約チャネル行列の候補行列の集合を空集合に初期化するとともに関連付けられた確率のベクトルを空ベクトルに初期化することによって前記候補行列の集合を取得することと、中心に位置するエントリー及び単位分散エントリーを有するチャネルの期待分布に従ってチャネル行列をランダムに生成することと、簡約チャネル行列を取得するために格子簡約を適用することと、前記取得された簡約チャネル行列が前記候補行列の集合にまだ存在しない場合には前記取得された簡約チャネル行列を前記候補行列の集合に加えること、又は前記取得された簡約チャネル行列に関連付けられた確率を変更することとを所与の回数行い、最も高い確率を有する前記候補行列の集合の所定の数の簡約チャネル行列を選択することによって実行される。
【0042】
特定の特徴によれば、前記チャネル行列は、円分プリコーディング対角チャネル(cyclotomic precoded diagonal channel)であり、前記簡約チャネル行列の集合は、円分回転の円分体に対するオフライン前処理から取得される。
【0043】
したがって、良好な簡約チャネル行列の集合は、求めることが容易であり、限られた集合の濃度で非常に良好な性能を提供する。
【0044】
特定の特徴によれば、前記シフトされたベクトルのリストに属する前記コンステレーションベクトルに従った前記符号化ビットの前記軟推定の前記計算は、前記基底変換行列の前記逆行列と前記整数座標を有するベクトルとの乗算によって実行される。
【0045】
特定の特徴によれば、前記シフトされたベクトルのリストに属する前記コンステレーションベクトルに従った前記符号化ビットの前記軟推定の前記計算は、前記チャネルを通じて受信された送信シンボルベクトルを用いて実行される。
【0046】
更に別の態様によれば、本発明は、プログラマブルデバイス内に直接ロード可能とすることができるコンピュータープログラムであって、該コンピュータープログラムがプログラマブルデバイスにおいて実行されると本発明による方法のステップを実施する命令又はコード部を含む、コンピュータープログラムに関する。
【0047】
このコンピュータープログラムに関する特徴及び利点は、本発明による方法及び装置に関連して上記で述べたものと同じであるので、ここでは繰り返さないことにする。
【0048】
本発明の特徴は、一例示の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、本発明が実施されるが無線システムを表している。
【0051】
本発明は、送信元Srcによって転送された信号が受信機Recに転送される一例において開示される。
【0052】
例えば、送信元Srcは、衛星又は地上送信機に含めることができ、信号を少なくとも1つの受信機にブロードキャストし、送信元Srcは、単一の受信機Recに信号を転送することもできる。
【0053】
受信機Recは、ビデオ信号のようなデータが転送される移動端末とすることができる。
【0054】
硬出力受信機の性能を改善するには、格子簡約を用いることができる。格子簡約は、チャネルHが変化するごとに実行される。チャネルHは以下の分解:H=H
rTを提供する。ここで、H
rは、例えば、ミンコフスキー(Minkowski)簡約、コルキン−ゾルタレフ(Korkin-Zolotarev)簡約、又はレンストラレンストラロヴァス(Lenstra Lenstra Lovasz)簡約に従って簡約される。これは、H
rがHと同じ格子を生成するが、より多くの直交基底ベクトルを有することを意味する。
【0055】
基底変換行列Tは、整数エントリー、又は複素入力の場合にはガウス整数エントリーに関してユニモジュラーである。これは、基底行列の行列式の絶対値が1であること、及び基底行列の逆行列が整数エントリー、又は複素数の場合にはガウス整数エントリーを有することを意味する。
【0056】
定義によれば、変換された多次元コンステレーションは、C
R={Tz}であること、すなわち、シンボルの全ての可能なベクトルの集合x=Tzであることに留意されたい。
【0057】
したがって、硬出力復号器は、通常、チャネルモデルy=H
rx+ηに基づいて硬出力判定を実行し、次いで、線形復号器を用いることによってzに関する推定値を取得するのに関係x=Tzを用いる。そのような検出器の性能は良好であり、これは、直交性の仮定がかなり有効であることを意味する。格子簡約ステップは高い複雑度を有するが、チャネルが変化しないときは直ちに幾つかの復号化ステップ間で相互的にすることができる。これは、前処理ステップとしてシフトリスト復号器(shifted list decoder)と組み合わせることができる。
【0058】
本発明は、まず、格子簡約によって提供されるほぼ直交性の利益を得る。確かに、格子分解H=H
rTを適用した後、以下のチャネルモデル:H
r−1y=Tz+η’を取得することができる。ここで、η’は白色ガウス雑音として近似することができ、新たなSNRはρ’として近似することができる。
【0059】
このチャネルモデルは、定義によれば、簡約チャネルモデル(Reduced Channel Model)を表すRCMと呼ばれるもの、すなわち、格子簡約が実行されない場合に対応する観測チャネルモデルを表すOCMと対比をなすものによる格子簡約後のチャネルモデルである。
【0060】
本発明によれば、受信機Recは、多次元コンステレーションの送信シンボルベクトルを形成する符号化ビットの軟推定値を計算する。この送信ベクトルは、
−整数エントリー又はガウス整数エントリーを有する所定のベクトルのリストを受信機メモリから取得することと、
−送信元と受信機との間のチャネル行列推定及び受信シンボルを取得することと、
−チャネル行列推定から簡約チャネル行列及び基底変換行列を取得することと、
−少なくとも簡約チャネル行列及び受信シンボルから整数座標を有するベクトルを計算することと、
−所定のベクトルのリストを、整数座標を有するベクトルの回りにシフトして、シフトされたベクトルのリストを取得することと、
−シフトされたベクトルのリストに属するベクトルと、多次元コンステレーション及び基底変換行列から取得される変換された多次元コンステレーションとに従って符号化ビットの軟推定を計算することと、
によって、チャネルを通じて送信元から受信機によって受信される。
【0061】
図2は、本発明が実施される受信機のアーキテクチャを表す図である。
【0062】
受信機Recは、例えば、バス201によって互いに接続された構成要素と、
図3に開示されるようなプログラムによって制御されるプロセッサ200とに基づくアーキテクチャを有する。
【0063】
ここで、受信機Recは、専用集積回路に基づくアーキテクチャを有することができることに留意すべきである。
【0064】
バス201は、プロセッサ200を、読み出し専用メモリROM202、ランダムアクセスメモリRAM203及び無線インターフェース205にリンクする。
【0065】
メモリ203は、変数と、
図3に開示されるようなアルゴリズムに関連したプログラムの命令とを収容するように意図されたレジスタを含む。
【0066】
プロセッサ200は、無線インターフェース205の動作を制御する。
【0067】
読み出し専用メモリ202は、
図3に開示されるようなアルゴリズムに関連したプログラムの命令を含む。これらの命令は、受信機Recに電源が投入されると、ランダムアクセスメモリ203に転送される。
【0068】
図3に関して以下で説明するアルゴリズムの全てのステップは、PC(パーソナルコンピューター)、DSP(デジタル信号プロセッサ)又はマイクロコントローラー等のプログラマブルコンピューティングマシンによる一組の命令又はプログラムの実行によってソフトウェアで実施することもできるし、それ以外にFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)等のマシン又は専用構成要素によってハードウェアで実施することもできる。
【0069】
換言すれば、受信機Recは、
図3に関して以下で説明するアルゴリズムのステップを受信機Recに実行させる回路部、又は回路部を備えるデバイスを備える。
【0070】
図3は、シフトリスト球復号器の量子化リストアルファベットに基づいて受信された符号化ビットの軟推定を実行するアルゴリズムを表している。
【0071】
より正確に言えば、本アルゴリズムは、受信機Recのプロセッサ200によって実行される。
【0072】
ステップS30において、プロセッサ200は、所定のベクトルのリスト
【数4】
のオフライン計算を実行する。
【0073】
例えば、プロセッサ200は、格子の原点を中心とする球形のベクトルのリストを取得するために、U. Finkce及びM. Pohstの論文「Improved Methods for calculating Vectors of short length in a Lattice including a complexity analysis」(Mathematics of computation vol 44 pp 463 in 1985)に開示されているような方法を用いる。この所定のリストは、立方形に属する
【数5】
の全てのベクトルをリストすることによって立方体のような他の形式とすることができる。すなわち、リストのエントリーの実部及び虚部は上限及び下限によって境界が定められている。このリストのサイズは、対象の複雑度又はFPGAの実施態様におけるチップセットのサイズに適合するように選択される。
【0074】
次のステップS31において、プロセッサ200は、無線インターフェースI/F205から観測値y及び行列チャネル推定Hを取得する。
【0075】
ベクトルyは、送信モデルの定義に従って幾つかのアンテナ、タイムスロット、又は副搬送波にわたって受信することができる。
【0076】
チャネル推定Hは、例えば、送信元Srcによって送信されたパイロットシンボルの使用によって、例えば、Hの各係数を推定することを可能にする以前のチャネル推定ステップによって取得される。
【0077】
MIMOチャネルでは、送信元SrcはN個の送信アンテナを有し、受信機RecはM個の受信アンテナを有する。M×N行列Hの係数は、ゼロ平均単位分散を有するガウス独立同一分布とみなされる。
【0078】
プリコーディングされた対角フェージングチャネルの場合、送信元Srcは、M=NのQAMシンボルをM×Mプリコーディング行列Φと線形結合し、M個の線形結合のそれぞれをM個のフェージングチャネルのうちの1つにおいて並列に送信する。この並列送信は、対角M×M行列Δによって表される。ここで、Δ
i,iは、Δのi番目の対角係数であり、i番目の並列フェージングチャネルのフェージングを表す。
【0079】
したがって、M×M行列Hは、プリコーディングステップと並列フェージングチャネル上での送信とを連結したものをH=ΔΦとして表している。
【0080】
次のステップS32において、プロセッサ200は、チャネル簡約=H
rTを計算する。H
rは簡約チャネル行列であり、Tは基底変換行列である。H=H
rTであるような行列Hから行列H
r及びTを提供するチャネル簡約の計算は、例えば、A Lenstra、H Lenstra及びL. Lovaszの論文「Factoring polynomials with rational coefficients」(Mathematische Annalen, vol 261, pp 515-532 1982)に開示されているようなLLL簡約から得られる。
【0081】
チャネル簡約は、例えば、C. Ling、W. H Mow及びN. Howgrave-Grahamの論文「Variants of the LLL algorithm in digital communications. Complexity analysis and fixed complexity implementation」(Computing Research Repository vol abs/1006. 1661, 2010)に開示されているように計算される。
【0082】
チャネル簡約は、例えば、C. P Schnorrの論文「A hierarchy of polynomial time lattice basis reduction algorithms」(Theoretical Computer Science, vol 53, pp 201-224, 1987)に開示されているように計算される。
【0083】
一実現変形形態では、プロセッサ200は、受信機Recにおける複雑度の低減を可能にするために、格子簡約アルゴリズムをオンラインで用いることなく、メモリに記憶された候補行列Tの集合をオフラインで定義する。
【0084】
プロセッサ200は、チャネル行列Hを取得し、候補行列Tの集合Bに属する既定の数の候補基底変換行列Tに対してループを実行し、各候補基底変換行列Tについて、簡約チャネルH
r=HT
−1を計算し、プロセッサ200は、性能指数を、例えば以下のように定義する。
−最小にされるtrace(H
r−1H
r−†)の値。ここで、†は転置共役演算子である、
−最小にされる
【数6】
によって定義される値。ここで、行列Rは、QR分解H
r=QRによって得られ、ここで、Qはユニタリー行列であり、Rは上三角行列である。
【0085】
プロセッサ200は、性能指数を最適化する対(T,H
r)を選択する。
【0086】
プロセッサ200は、オフライン最適化において、候補行列Tの集合を空集合に初期化するとともに確率の関連付けられたベクトルを空ベクトルに初期化することによって候補行列Tの集合Bを取得する。プロセッサ200は、チャネルの期待分布、例えば、中心に位置するエントリー及び単位分散エントリーを有する独立同一分布複素ガウス多変量分布に従ってチャネル行列Hをランダムに生成する。プロセッサ200は、次に、T及びH
rを取得するために既に開示したように、格子簡約を適用する。プロセッサは、この簡約の結果として候補行列Tを取得し、取得された候補行列が候補行列Tの集合Bにまだ存在しない場合には取得された行列Tを候補行列Tの集合Bに加えるか、又は取得された行列に関連付けられた出現確率を変更する。プロセッサ200は、この動作を所与の回数繰り返す。最後に、プロセッサ200は、最も高い確率を有する候補行列Tの集合Bの所与の数の行列Tを選択する。
【0087】
一実現変形形態では、受信機Recにおける複雑度の低減を可能にするために、プロセッサ200は、格子簡約アルゴリズムをオンラインで用いることなく、メモリに記憶された候補行列H
rの集合をオフラインで定義する。プロセッサ200は、チャネル行列Hを取得し、候補行列H
r’の集合B’に属する既定の数の候補行列H
rに対してループを実行し、各候補行列H
rについて、候補基底変換行列
【数7】
を計算し、ここで、
【数8】
は、候補基底変換行列の各係数を最も近い整数値又はガウス整数に丸めることを示し、プロセッサ200は、性能指数を、例えば、最小にされるtrace(TH
−1H
−†T
†)の値として定義する。
【0088】
プロセッサ200は、性能指数を最適化する対(T,H
r)を選択する。
【0089】
プロセッサ200は、オフライン最適化において、候補行列H
r行列の集合を空集合に初期化するとともに関連付けられた確率のベクトルを空ベクトルに初期化することによって候補行列H
rの集合B’を取得する。プロセッサ200は、チャネルの期待分布、例えば、中心に位置するエントリー及び単位分散エントリーを有する独立同一分布複素ガウス多変量分布に従ってチャネル行列Hをランダムに生成する。プロセッサ200は、次に、T及びH
rを取得するために既に開示したように、格子簡約を適用する。プロセッサ200は、この簡約の結果として候補行列H
rを取得し、取得された候補行列が候補行列H
rの集合B’にまだ存在しない場合には取得された行列H
rを候補行列H
rの集合B’に加えるか、又は取得された行列に関連付けられた確率を変更する。プロセッサ200は、この動作を所与の回数繰り返す。最後に、プロセッサ200は、最も高い確率を有する候補行列H
rの集合B’の所与の数の行列H
rを選択する。
【0090】
チャネル行列が、円分プリコーディング対角チャネルである場合、簡約チャネル行列の集合Bは、円分回転の円分体に対するオフライン前処理から取得される。
【0091】
実際は、Φが円分回転である場合、円分体のユニットに関連付けられた候補行列Δ
qの集合Fが考慮される。これらのユニットは、サイズnのベクトルとして表されるn’個の基本ユニットの集合{u
i}から構築することができる。
【0092】
各基本ユニットについて、プロセッサ200は、その対角要素が
【数9】
によって定義される対角行列B
iを定義する。ここで、diagという表記は、行列Aの対角要素を抽出して、ベクトルdiagA=[A
1,1,...,A
n,n]
Tにすることである。ここで、A
i,iは第i行第i列のi番目の要素である。
【0093】
最後に、以下の式を示すことができる。
【数10】
ここで、n’はn以下のパラメーターである。
【0094】
したがって、プロセッサ200は、例えばランダムに選択された格子ベクトルの集合、換言すればk個のベクトルのランダム集合から候補行列Δ
qの集合Fを構築する。次に、各チャネル推定Hについて、プロセッサ200は、Δ=Φ
†Hを計算し、Fから、以下の式:Δ=ξΔ
qとなるような候補Δ
qを選択する。ここで、ξは、ΔをΔ
qにする際の量子化誤差であり、例えば値max
i(|log(|ξ
i|)|)が最小にされるようになっている。
【0095】
次に、円分回転の代数的性質によって、T=Φ
†Δ
qΦ及びH
r=ξΦが与えられる。これによって、行列Tの集合BをΔ
qの集合Fから得ることが可能になる。
【0096】
次のステップS33において、プロセッサ200は、RCMy’=H
r−1yの新たな観測値を計算する。
【0097】
RCMy’=H
r−1yの新たな観測値は、ステップS31において取得された受信観測値yと、ステップS32において取得された簡約チャネルH
rの逆行列とから計算される。
【0098】
次のステップS34において、プロセッサ200は、RCMにおけるy’の最近ベクトルの推定x(ハット)を求める。この推定x(ハット)は、整数座標を有するベクトルである。
【0099】
RCMにおけるy’の最近ベクトルの推定x(ハット)は、例えば、OCMに基づいてMMSEフィルターをyに対して最初に適用し、続いて、その後に、x(ハット)を得るためにTを乗算される判定を適用することによって取得される。
【0100】
RCMにおけるy’の最近ベクトルの推定x(ハット)は、例えば、最も近い整数値を(複素次元の場合には、実部及び虚部に関して独立に)選ぶことによって、すなわち、x’を最初に計算することによって取得される。
【数11】
【0101】
任意選択として、xが多次元QAM変調に属することを確認するには、z’=T
−1x’を計算し、最後にx(ハット)=Tz’’を取得するために、
【数12】
からz’’を得る追加のステップが必要とされる。
【0102】
次のステップS35において、プロセッサ200は、x(ハット)の回りに所定のリストLをシフトし、リスト
【数13】
を生成する。これは、例えば、各x
L∈Lについて、ベクトルx
L+x(ハット)の集合を計算することによって取得される。
【0103】
次のステップS36において、プロセッサ200は、変換された多次元コンステレーションC
Rに属しないL
sのベクトルを除去し、リストL
s∩C
Rを取得する。
【0104】
変換された多次元コンステレーションC
Rに属しないL
sのベクトルを除去するために、プロセッサ200は、T
−1によってシフトリストL
sを変換した結果であるリスト
【数14】
を計算し、次に、Cとの交差を適用する。実際は、この交差L’
s∩Cの実施は、L
s∩C
Rを直接計算するよりも容易であり、以下のように実行することができる。
【数15】
【0105】
その結果、残りのベクトルのリストはL’
s∩Cとなり、リストL
s∩C
Rは、Tによる変換を適用することによって取得される。
【0106】
行列Tの集合が事前に計算され、記憶されているとき、ベクトルのリストL’
sは、可能な各Tについて事前に計算して記憶しておくことができる。
【0107】
別の選択肢では、プロセッサ200は、T及びx(ハット)の全ての可能な値について、全てのリストL
s∩C
Rを記憶している。
【0108】
別の選択肢では、プロセッサ200は、T及びT
−1x(ハット)の全ての可能な値について、全てのリストL’
s∩Cを記憶している。
【0109】
次のステップS37において、プロセッサ200は、ベクトルのリストL
s∩C
Rに従って符号化ビットの軟推定を計算する。
【0110】
好ましい実現態様によれば、プロセッサ200は、以下の式に従ってLLRを計算する。
【数16】
この式は、リストL
s∩C
Rを必要とする。
【0111】
別の実現態様では、プロセッサ200は、以下の式に従ってLLRを計算する。
【数17】
この式は、リストL’
s∩Cを必要とする。
【0112】
別の実現態様では、プロセッサ200は、以下の式に従ってLLRを推定する。
【数18】
この式は、リストL
s∩C
Rを必要とし、この式では、必要な数の行列ベクトル乗算H
rxを計算する代わりに行列ベクトル乗算H
r−1yを1回だけ計算することによって、複雑度が幾分削減される。
【0113】
図4は、チャネル及び格子簡約によるコンステレーション変換の幾何学的説明を表している。
【0114】
図4aは、多次元コンステレーションCの実部を、説明図を簡単にするためにN=2である
【数19】
のコンステレーションとして開示している。ベクトルz∈Cは、黒色のドットとして示され、白色のドットは
【数20】
の他のベクトルである。
【0115】
MIMOチャネル変換の後、ベクトルzを含む方形のコンステレーションは、
図4cに黒色のドットとして観測されるベクトルHz∈C
Oを含む平行体コンステレーション(parallelotopic constellation)C
Oにスキューされる。白色のドットとしてマーキングされている観測された格子は、チャネル行列Hによって規定された格子の他のベクトルである。これはOCMに対応する。
【0116】
チャネル簡約後、ベクトルTz∈C
Rを含む
【数21】
におけるコンステレーションを有する観測された格子の最も近い表現が
図4bに示されている。
図4aと
図4cとの間に基底変換があり、変換された多次元コンステレーションC
Rは、
【数22】
における平行体である。これはRCMに対応する。
【0117】
チャネルHがどのようなものであっても、
図4bから
図4cへの変換H
rは、簡約チャネルの特性によってほぼ直交していることが分かり、これは、
図4bに描かれた球が、H
rによる変換後の
図4cでは、ほぼ球形であることを意味する。
【0118】
したがって、本発明は、OCMの代わりにRCMにおいて球形のベクトルのリストを描くことを目的としている。
【0119】
変換された多次元コンステレーションC
Rは、常に
【数23】
にあり、これは、格子の原点に対する最近ベクトルの球形リストを、本発明によれば、1回限り計算し、Tzの硬推定にシフトすることができることを意味する。
【0120】
ベクトルのリストの構築はオフラインで行うことができるので、本発明によって、多くの複雑度が削減される。
【0121】
図4bにおいて検討された球は、T
−1の効果によって、
図4aでは楕円面にスキューされることを観測することができる。
【0122】
また、
図4bにおける変換された多次元コンステレーションC
R={Tz}は、Tの効果によって、
図4aではQAMベクトルの方形多次元コンステレーションのスキューされたものC={z}となっている。
【0123】
したがって、Tは、この時、等価チャネルの役割を果たすが、整数エントリーを有するという特性を有し、高い確率で有限アルファベットに属する。本発明は、この特性を用いて複雑度を更に削減する。
【0124】
最後に、軟出力検出を計算するために、コンステレーションに属するベクトルのみが考慮され、その場合、これによって、コンステレーションの外部のベクトルを拒否する選択の動作が必要になる。
【0125】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で説明した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。