(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381802
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ノンハロゲン樹脂組成物、及びそれを用いて製造されたプリプレグと積層板
(51)【国際特許分類】
C08G 59/58 20060101AFI20180820BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20180820BHJP
C08L 61/34 20060101ALI20180820BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20180820BHJP
C08L 35/06 20060101ALI20180820BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20180820BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20180820BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20180820BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
C08G59/58
C08L63/00
C08L61/34
C08L71/12
C08L35/06
C08K5/49
C08K3/00
C08J5/24
H05K1/03
H05K1/03 610R
H05K1/03 610S
H05K1/03 610T
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-525534(P2017-525534)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2018-502937(P2018-502937A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】CN2014092842
(87)【国際公開番号】WO2016074291
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2017年5月11日
(31)【優先権主張番号】201410633018.5
(32)【優先日】2014年11月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514309583
【氏名又は名称】廣東生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】李 輝
(72)【発明者】
【氏名】方 克洪
【審査官】
安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0107256(US,A1)
【文献】
台湾特許出願公開第201100488(TW,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C08G 59/00− 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンハロゲン樹脂組成物であって
、下記化学構造式に示されるジシクロペンタジエニルアルキル基構造を有する
エポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂50〜100重量部、ベンゾオキサジン20〜70重量部、ポリフェニレンエーテル5〜40重量部、スチレン−無水マレイン酸5〜30重量部、ノンハロゲン難燃剤5〜40重量部、硬化促進剤0.2〜5重量部、フィラー20〜100重量部を成分として含
み、
前記ベンゾオキサジンはフッ化ベンゾオキサジン樹脂、脂肪族ベンゾオキサジン樹脂又はジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は1000〜4000である、ことを特徴とするノンハロゲン樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
前記エポキシ樹脂はさらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三官能エポキシ樹脂、四官能エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂
又はリン含有エポキシ樹脂から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ベンゾオキサジンはフッ化ベンゾオキサジン樹脂又は脂肪族ベンゾオキサジン樹脂から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項4】
前記フッ化ベンゾオキサジン樹脂は下記化学構造式
【化2】
から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項5】
前記脂肪族ベンゾオキサジン樹脂の化学構造式は、
【化3】
(式中、nは2又は3である。)である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂の化学構造式は、
【化4】
である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項7】
前記スチレン−無水マレイン酸の化学構造式は、以下のとおりである、ことを特徴とする請求項1
〜6のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【化5】
(式中、xは1〜4、6、8であり、nは1〜12であり、x、nはいずれも整数である。)
【請求項8】
前記ノンハロゲン難燃剤はホスファゼン、ポリリン酸アンモニウム、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、ジメチル−メチルホスフェート、レゾルシノールジキシリルホスフェート、リン窒素系化合物、ポリ燐酸メラミン、メラミンシアヌレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド又はDOPO含有フェノール樹脂から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項9】
前記硬化促進剤はイミダゾール系促進剤である、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項10】
前記フィラーは無機フィラーであり、前記無機フィラーは水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、雲母、ベーマイト、か焼タルク、タルカム粉末、窒化ケイ素又はか焼カオリンから選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項11】
前記フィラーは有機フィラーであり、前記有機フィラーはポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリフェニレンサルファイド又はポリエーテルスルホン粉末から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項12】
前記フィラーの粒径は0.01〜50μmである、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のノンハロゲン樹脂組成物を用いて製造されるプリプレグであって、前記プリプレグは基材、及び浸漬乾燥後に前記基材に付着したノンハロゲン樹脂組成物を含む、ことを特徴とするプリプレグ。
【請求項14】
請求項13に記載のプリプレグを含むことを特徴とする積層板。
【請求項15】
請求項14に記載の積層板を含むことを特徴とするプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層板の技術分野に関し、具体的には、樹脂組成物に関し、特にノンハロゲン樹脂組成物、及びそれを用いて製造されたプリプレグ、積層板及びプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハロゲン含有難燃剤(特に臭素系難燃剤)は高分子難燃材料として幅広く使用されており、且つ優れた難燃作用を果たす。しかしながら、火災現場を深く研究した結果、ハロゲン含有難燃剤は難燃効果に優れ、且つ添加量が少ないが、ハロゲン含有難燃剤を使用した高分子材料が燃焼過程で大量の有毒な腐食性気体や煙を生じて、窒息死を引き起こし、その危害性が火災自体よりも深刻である。従って、欧州連合の『廃電気電子機器についての指令』及び『電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限についての指令』が2006年7月1日に正式実施されているにつれ、ノンハロゲン難燃性プリント回路基板の開発は産業開発作業の重点となり、各銅張積層板の生産者は次々とノンハロゲン難燃性銅張積層板を開発している。
【0003】
従来、工業上、一般的にリン含有樹脂を使用することにより難燃効果を実現するが、大量のリンの導入によって、基材の吸水性が高くなり、耐薬品性が低下する。近年、ベンゾオキサジンをマトリックス樹脂としてノンハロゲン基材に用いる開発はますます注目されている。ベンゾオキサジンは酸素原子と窒素原子で構成されたベンゾ六員複素環系であり、開環重合の特徴を有し、重合時に小分子を放出することがなく、重合後にフェノール樹脂と類似する網状構造が形成され、製品は硬化収縮性が低く、気孔率が低く、優良な力学的特性、電気的特性や難燃性等を有する。
【0004】
一方、電子工業の急速な発展に伴って、電子製品は軽薄短小化、高密度化、安全化、高機能化の方向に発展しており、電子部品に対してより高い信号伝送速度及び伝送効率が求められており、このようにして、担体としてのプリント回路基板に対する要求が高くなり、電子製品の情報処理の高速化及び多機能化に伴い、使用周波数が増加しており、3GHz以上の周波数が徐々に主流となる傾向があり、積層板材料の耐熱性に対してより高い要求を保持するほかに、その要求される誘電率と誘電正接がますます低くなっている。
【0005】
従来の伝統的なFR−4は電子製品に対する高周波化及び高速化発展による要求を満たすことが困難であり、また、基板材料は、従来のように機械的支持作用を果たすものでなく、電子ユニットと共にPCBとなるものであり、端末メーカーのデザイナーにとって製品の性能を向上させるための重要な手段となるものである。高誘電率(Dk)は信号伝送速度を遅くさせて、高誘電正接(Df)は信号の一部を熱エネルギーに変換させて基板材料で損失するため、低誘電率、低誘電正接を有する高周波伝送として、特にノンハロゲン高周波板材の開発は、銅張積層板業界の重点となっている。
【0006】
上記問題を解決するために、CN101684191Bには、ベンゾオキサジン、スチレン−無水マレイン酸、リン含有硬化剤の組み合わせにより、エポキシ樹脂を硬化させて、低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を得ることが提案されているが、スチレン−無水マレイン酸だけで材料の誘電特性を低下させると、他の問題の発生が避けられず、特に粘着性への影響が顕著である。なぜなら、スチレン−無水マレイン酸(SMA)は、分子構造中の非極性スチレン構造単位が変性マトリックス樹脂の極性を低下させ、樹脂と銅箔の相互作用力を弱め、また、SMA中の大量のベンゼン環構造によって樹脂架橋ネットワ
ークの脆性を向上させ、動的条件での粘着特性にも悪影響を及ぼしたため、基材同士及び基材と銅箔との接着強度を低下させるからである。
【0007】
CN100523081Cには、ベンゾオキサジン、スチレン−無水マレイン酸及びその他の硬化剤の組み合わせにより、リン含有エポキシ組成物及びノンハロゲン・ノンリンエポキシ組成物を硬化させて、低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を得ることが提案されているが、リン含有エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする場合、優れた難燃性を実現するが、リンを大量で導入することにより、基材の吸水性に大きな影響を及ぼし、さらに板材の他の様々な性能に悪影響を及ぼすに違いない。
【0008】
CN103131131Aには、ベンゾオキサジン、スチレン−無水マレイン酸及びアミン系硬化剤の組み合わせにより、エポキシ樹脂を硬化させて、低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を得ることが提案されているが、普通のベンゾオキサジンを使用することにより、エポキシ樹脂の硬化と難燃性付与の目的を達成できるが、普通のベンゾオキサジンは誘電率が高いため、高周波高速伝送に対応できない場合が多く、且つアミン系硬化剤を導入することにより粘着性を向上できるが、吸湿性が高く、それを用いてエポキシ樹脂を硬化させる際に耐熱性が不十分であるという欠陥が存在することから、高多層回路基板への応用に悪影響を及ぼす。
【0009】
従って、如何に低誘電率、低誘電正接を有するとともに、耐薬品性に優れたプリプレグ及び積層板を生産するかは現在解決すべき問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、樹脂組成物、特にノンハロゲン樹脂組成物、及びそれを用いて製造されたプリプレグ、積層板及びプリント回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術案を採用する。
【0012】
第一方案によれば、本発明は、エポキシ樹脂50〜100重量部、ベンゾオキサジン20〜70重量部、ポリフェニレンエーテル5〜40重量部、スチレン−無水マレイン酸5〜30重量部、ノンハロゲン難燃剤5〜40重量部、硬化促進剤0.2〜5重量部、フィラー20〜100重量部を成分として含むノンハロゲン樹脂組成物を提供する。
【0013】
本発明のエポキシ樹脂は、下記化学構造式に示されるジシクロペンタジエニルアルキルフェノール構造を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有する。
【化1】
【0014】
本発明のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三官能エポキシ樹脂、四官能エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂又はリン含有エポキシ樹脂から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂の含有量は50〜100重量部であり、たとえば50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部、90重量部、95重量部、100重量部であってもよく、好ましくは50〜90重量部、より好ましくは50重量部である。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物にはジシクロペンタジエニルアルキルフェノール構造を有するエポキシ樹脂が含まれ、該エポキシ樹脂は基材の誘電特性の低下に役立ち、また、アルキル基構造は誘電特性をより最適化できるだけでなく、基材の吸水率を大幅に低下させる。
【0017】
本発明のベンゾオキサジンはフッ化ベンゾオキサジン樹脂、脂肪族ベンゾオキサジン樹脂又はジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0018】
本発明のフッ化ベンゾオキサジン樹脂は下記化学構造式から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である。
【化2】
【0019】
本発明の脂肪族ベンゾオキサジン樹脂の化学構造式は、以下のとおりである。
【化3】
(式中、nは2又は3である。)
【0020】
本発明のジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂の化学構造式は、以下のとおりである。
【化4】
【0021】
本発明のベンゾオキサジンの含有量は20〜70重量部であり、たとえば20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部であってもよく、好ましくは40〜50重量部、より好ましくは45重量部である。
【0022】
本発明のポリフェニレンエーテルは低分子量ポリフェニレンエーテルであり、数平均分子量が1000〜4000である。
【0023】
本発明のポリフェニレンエーテルの含有量は5〜40重量部であり、たとえば5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部であってもよく、好ましくは25重量部である。
【0024】
本発明のスチレン−無水マレイン酸の化学構造式は、以下のとおりである。
【化5】
(式中、xは1〜4、6、8であり、nは1〜12であり、x、nはいずれも整数であ
る。)
【0025】
本発明のスチレン−無水マレイン酸の含有量は5〜30重量部であり、たとえば5重量部、10重量部、15重量部、17重量部、20重量部、22重量部、25重量部、30重量部であってもよく、好ましくは10〜20重量部、より好ましくは20重量部である。
【0026】
本発明はスチレン−無水マレイン酸とベンゾオキサジンの組み合わせによりエポキシ組成物を硬化させることによって、基材に低い誘電率及び誘電正接、良好な耐熱性及び耐湿性を付与できる。
【0027】
本発明のノンハロゲン難燃剤は、ホスファゼン、ポリリン酸アンモニウム、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、ジメチル−メチルホスフェート、レゾルシノールジキシリルホスフェート、リン窒素系化合物、ポリ燐酸メラミン、メラミンシアヌレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド又はDOPO含有フェノール樹脂から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0028】
本発明のノンハロゲン難燃剤の含有量は5〜40重量部であり、たとえば5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、22重量部、25重量部、30重量部、40重量部であってもよく、好ましくは20〜22重量部、より好ましくは22重量部である。
【0029】
本発明は難燃作用を有するベンゾオキサジンを主な硬化剤とすると同時に、少量のリン含有難燃剤を添加することによって、リンと窒素による相乗難燃効果を実現するだけでなく、成分中のリン含有量を大幅に減少させると同時に基材の難燃性を向上させ、且つ基材に優れた耐湿性を付与する。
【0030】
本発明の硬化促進剤はイミダゾール系促進剤であってもよく、前記イミダゾール系促進剤は2−メチルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール又は1−シアノエチル置換イミダゾールから選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0031】
本発明の硬化促進剤の含有量は0.2〜5重量部であり、たとえば0.2重量部、0.5重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部であってもよい。
【0032】
本発明のフィラーは無機又は有機フィラーであってもよく、前記フィラーは無機フィラーである場合、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、雲母、ベーマイト、か焼タルク、タルカム粉末、窒化ケイ素又はか焼カオリンから選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物であってもよく、前記フィラーは有機フィラーである場合、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリフェニレンサルファイド又はポリエーテルスルホン粉末から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0033】
本発明のシリカは、結晶型、溶融型又は球形シリカが使用できる。
【0034】
本発明のフィラーの粒径は0.01〜50μmであり、たとえば0.01μm、0.05μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μmであってもよく、好ましくは1〜15μmである。
【0035】
本発明のフィラーの含有量は20〜100重量部であり、たとえば20重量部、30重量部、40重量部、50重量部、60重量部、70重量部、80重量部、90重量部、100重量部であってもよく、好ましくは50重量部である。
【0036】
前記フィラーを本発明の樹脂組成物に均一に分散させるために、さらに分散剤を添加してもよく、用いられる分散剤は、アミノシランカップリング剤又はエポキシシランカップリング剤であり、無機及びガラス織布同士の結合性を改善して、均一に分散させるという目的を達成させ、且つこのようなカップリング剤は重金属を含まないため、人体に悪影響を及ぼすことがなく、使用量が無機フィラーに対して0.5〜2%重量部であり、使用量が高すぎると、反応を速め、貯蔵時間に悪影響を与え、使用量が低すぎると、結合安定性を改善することは、顕著な効果を奏しない。
【0037】
第二方案によれば、本発明はさらに、本発明の第一方案に記載のノンハロゲン樹脂組成物を用いて製造されたプリプレグを提供し、該プリプレグは基材、及び浸漬乾燥後に前記基材に付着したノンハロゲン樹脂組成物を含む。
【0038】
本発明の基材はガラス繊維不織布又はガラス繊維織布である。
【0039】
第三方案によれば、本発明はさらに、本発明の第二方案に記載のプリプレグを含む積層板を提供する。
【0040】
第四方案によれば、本発明はさらに、本発明の第三方案に記載の積層板を含むプリント回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0041】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0042】
本発明のノンハロゲン樹脂組成物を用いて製造された積層板は、その誘電率が3.7以下に制御され、誘電正接の最大値がせいぜい0.0057であり、難燃性試験UL−94中のV−0標準に達し、PCT吸水率が0.27〜0.30であり、そのため、該積層板はノンハロゲン難燃を確保するとともに、低誘電率、低誘電正接、優れた耐熱性、粘着性や耐湿性等の総合的性質を有し、ノンハロゲン高周波多層回路基板に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、実施形態によって本発明の技術案をさらに説明する。
【0044】
当業者であれば、前記実施例は本発明を理解しやすくするものであり、本発明を制限するものではないことを了承すべきである。
【0045】
調製例、ジシクロペンタジエニルアルキルフェノールエポキシ樹脂の合成
【0046】
ポリテトラフルオロエチレン製撹拌器、温度計、凝縮還流器を備える四つ口フラスコ(500mL)にパラ(1,1,3,3−テトラメチル)ブチルフェノール270.0gを加えて水浴で加熱して溶融し、三フッ化ホウ素・エーテル1.83gを秤量して、500mLの四つ口フラスコに加え、滴下漏斗に50.1gのジシクロペンタジエンを加えて、滴下速度を制御しながら2hかけて全部のジシクロペンタジエンを滴下し、100℃まで昇温して、4h保温し、室温まで冷却して、さらに一定の温度まで加熱して過剰なジシクロペンタジエンとパラ(1,1,3,3−テトラメチル)ブチルフェノールを留去し、生成物としてジシクロペンタジエニルアルキルフェノール樹脂を得た。
【0047】
前のステップで得られたジシクロペンタジエニルアルキルフェノール樹脂を四つ口フラスコに投入し、エピクロロヒドリン100.0gを秤量して緩慢に添加し、溶解後、昇温して滴下漏斗に33質量%のKOH溶液1molを加え、速度を制御しながら1hかけて滴下を終了し、反応温度を100℃に制御し、滴下終了後、4h保温し、冷却後に水洗して、さらに120℃まで昇温して蒸留し、過剰なエピクロロヒドリンを蒸発除去して、下記化学構造式に示されるジシクロペンタジエニルアルキルフェノール構造を有するエポキシ樹脂を得た。
【化6】
【0049】
エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレン−無水マレイン酸、ノンハロゲン難燃剤、硬化促進剤、フィラー及び溶剤等を、容器に投入し、撹拌して均一に混合し、接着剤を得て、溶剤で溶液の固形分を60%〜70%に調整して接着液を調製し、すなわち本発明のノンハロゲン樹脂組成物接着液を得て、2116電子グレードのガラス繊維布を接着液に浸漬し、オーブンで焼成して半硬化シートを得て、6枚の2116半硬化シートを取って、両面に厚み35μmの電解銅箔を被覆し、ホットプレスで真空積層して、190℃で120min硬化させて、銅張積層板を得た。
【0050】
実施例1〜9及び比較例1〜5に使用される各成分及びその含有量(重量部)は表1に示され、各成分の番号及び対応した成分の名称は以下のとおりである。
(A)エポキシ樹脂
(A−1)調製例で合成したジシクロペンタジエニルアルキルフェノールエポキシ樹脂
(A−2)ビフェニル型エポキシ樹脂:NC−3000−H(日本化薬社製、商品名)
(A−3)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:HP−7200H(大日本インク社製、商品名)
(B)ベンゾオキサジン
(B−1)脂肪族ベンゾオキサジン樹脂:KAH−F5404(韓国Kolon社製、商品名)
(B−2)フッ化ベンゾオキサジン:KAH−F5301(韓国Kolon社製、商品名)
(B−3)ビスフェノールF型ベンゾオキサジン:LZ8280(ハンツマンアドバンストマテリアル社製)
(B−4)ジシクロペンタジエンベンゾオキサジン:LZ8260(ハンツマンアドバンストマテリアル社製)
(C−1)低分子量ポリフェニレンエーテル:MX90(SABIC Innovative Plastics社製 商品名)、数平均分子量1000〜4000
(C−2)高分子量ポリフェニレンエーテル:Sabic640−111(SABIC
Innovative Plastics社製 商品名)数平均分子量15000〜2
0000
(D)スチレン−無水マレイン酸オリゴマー:SMA−EF40(米国Sartomer社製、商品名)
(E)リン含有フェノール樹脂:XZ92741(DOW化学社製、商品名)
(F)硬化促進剤:2E4MZ(四国化成社製、商品名)
(G)フィラー:溶融シリカ。
【0051】
実施例1〜9と比較例1〜5に使用される銅張積層板の調製方法は実施例と同じである。
【0052】
以下のテスト方法により、実施例1〜4と比較例1〜4で調製された銅張積層板のガラス転移温度(Tg)、剥離強度(PS)、誘電率(Dk)、誘電正接(Df)、難燃性、PCT 2時間後のディップ半田付耐性及び吸水率をテストし、テスト結果を表2に示す。
【0053】
各特性パラメータのテスト方法は以下のとおりである。
【0054】
A ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量法(DSC)により、IPC−TM−650 2.4.25に規定されたDSC方法を用いて測定する。
【0055】
B 剥離強度(PS)
IPC−TM−650 2.4.8方法における「熱応力後」の実験条件で、金属キャップの剥離強度をテストする。
【0056】
C 誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)
ストリップライン共振法を用いて、IPC−TM−650 2.5.5.5に準じて1GHzでの誘電率(Dk)と誘電正接(Df)を測定する。
【0057】
D 難燃性
UL−94標準に準じてテストする。
【0058】
E PCT 2時間後のディップ半田付耐性及び吸水率
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬して、表面銅箔を除去して基板を評価し、基板を圧力鍋に入れて、121℃、2atmで2h処理し、吸水率をテストした後、温度288℃の錫炉に浸漬し、基材に発泡やクラックが発生する際に対応する時間を記録する。基材を錫炉に入れてから5min超えた後にも、発泡やクラックが発生しないと、評価を終了する。
【0062】
(1)実施例1と比較例1を比較して明らかなように、比較例1に比べて、実施例1は誘電率、誘電正接及び吸水率が低い。これは、合成したジシクロペンタジエニルアルキルフェノールエポキシ樹脂を用いた実施例1が、ビフェニル型エポキシ樹脂を用いた比較例1より、低い誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が得られることを示す。
【0063】
(2)実施例2と比較例2を比較して明らかなように、比較例2に比べて、実施例2はガラス転移温度が低いだけでなく、誘電率、誘電正接及びPCT吸水率も比較例2よりも低い。これは、実施例1で合成したジシクロペンタジエニルアルキルフェノールエポキシ樹脂を用いた実施例2は、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を用いた比較例2より、低い誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が得られることを示す。
【0064】
(3)実施例3及び実施例5を比較例3と比較して明らかなように、比較例3に比べて、実施例3と実施例5はガラス化転化温度が高いが、誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が比較例3よりも低く、難燃性がV−0級に達した。これは、脂肪族ベンゾオキサジン及びフッ化ベンゾオキサジンをそれぞれ用いた実施例3及び実施例5が、ビスフェノールFベンゾオキサジンを用いた比較例3より、高いガラス化転化温度、低い誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が得られ、且つ難燃性がより高いことを示す。実施例4と7から明らかなように、ジシクロペンタジエンベンゾオキサジンと脂肪族ベンゾオキサジンのいずれかの使用も高いガラス転移温度、低い誘電率を実現できる。なお、脂肪族ベンゾオキサジンの方が、より高いガラス転移温度及びより低い誘電率を実現できる。
【0065】
(4)実施例4と比較例4を比較した結果、比較例4に比べて、実施例4はより低い誘
電率、誘電正接及びPCT吸水率を有する。これは、低分子量ポリフェニレンエーテルを添加した実施例4が、該成分を添加していない比較例4より、低い誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が得られることを示す。実施例1と比較例5を比較して明らかなように、両方の総合的性質がほぼ同じであるが、高分子量ポリフェニレンエーテルの使用によって、加工性が低下してしまう。
【0066】
(5)実施例1〜4を比較した結果、実施例1の誘電正接、PCT吸水率は最も高く、実施例4の誘電正接及びPCT吸水率は最も低い。これは、調製例で合成したジシクロペンタジエニルアルキルフェノールエポキシ樹脂の添加量の増加に伴って、誘電率、誘電正接、PCT吸水率が全て低下することを示す。
【0067】
実施例1〜9から分かるように、本分野に一般的に使用されるエポキシ樹脂の代わりとしてノンハロゲン樹脂組成物にジシクロペンタジエニルアルキルフェノールエポキシ樹脂を使用することによって、基材の誘電特性をより良好にすることができ、スチレン−無水マレイン酸とベンゾオキサジンの組み合わせによりエポキシ組成物を硬化させると同時に、少量のリン含有難燃剤と低分子量ポリフェニレンエーテルを添加することにより、基材の難燃性、粘着性や耐湿性を向上させ、さらにより優れた総合的性質を付与できる。そのため、ノンハロゲン高多層回路基板に適用でき、使用価値が高い。
【0068】
勿論、以上の実施例は、本発明の好適な実例に過ぎず、本発明の実施範囲を制限するものではなく、本発明の保護範囲に記載の原理に基づいて行った同等変化や修飾は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。