特許第6381814号(P6381814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ THK株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381814
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】運動案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   F16C29/06
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-536552(P2017-536552)
(86)(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公表番号】特表2018-501451(P2018-501451A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】CN2016071040
(87)【国際公開番号】WO2016131356
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2017年7月10日
(31)【優先権主張番号】201510084770.3
(32)【優先日】2015年2月16日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】陳 瑜
(72)【発明者】
【氏名】王 美樂
(72)【発明者】
【氏名】彦本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】郭 光明
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−087135(JP,A)
【文献】 実開昭59−094618(JP,U)
【文献】 特開昭59−190513(JP,A)
【文献】 特開昭61−092319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00− 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側面に2列の転動体転走溝がそれぞれ形成された軌道台と、
前記転動体転走溝に対向し、負荷通路を形成する負荷転動体転走溝を有し、前記軌道台に組みつけられ、当該軌道台に沿って移動自在な移動体と、
接触角線が前記転動体転走溝に対して前記軌道台の外方で交わるよう配列された転動体と、
2列に配列された前記転動体の前記軌道台側に配置される転動体保持部材と、を備え、
前記移動体は移動体本体と、
前記移動体本体の両端に取り付けられる蓋体と、からなる運動案内装置において、
前記転動体保持部材は前記軌道台の長手方向に延びる板状に形成され、当該長手方向と直交する板状の転動体保持部を有し、
前記転動体保持部は2列に配列された前記転動体を前記軌道台側から同時に保持し、
前記移動体本体は前記転動体保持部と対向する内壁部を有し、前記転動体保持部と前記内壁部との間に隙間を有することを特徴とする運動案内装置。
【請求項2】
前記転動体保持部材は前記転動体保持部以外に、更に固定部を有し、前記固定部は屈曲部と係止部とを有し、前記蓋体には前記屈曲部を収容する収容溝と前記係止部を収容する係止溝とが形成されることを特徴とする請求項の運動案内装置。
【請求項3】
前記転動体保持部は、その一部に窪みが形成されることを特徴とする請求項またはの運動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運動案内装置に関しており、詳細に、転動体保持部材を備えた運動案内装置に関している。
【背景技術】
【0002】
運動案内装置の一種としてのリニアガイドは、軌道レールと、軌道レールに沿って移動可能に組み付けられる移動ブロックと、を備える。軌道レールと移動ブロックとの間には、転がり運動可能に多数のボールが介在される。多数のボールはサーキット状のボール循環路を循環する。該ボール循環路は、軌道レールに設けられたボール転走溝と、移動ブロックに設けられ且つ該軌道レールに設けられたボール転走溝に対向する負荷ボール転走溝とからなる負荷通路と、移動ブロックに設けられ且つ該負荷通路と平行な無負荷通路と、移動ブロックに設けられ且つ負荷通路の端部と無負荷通路の端部とを接続するU字状の方向転換路と、から構成される。
【0003】
上記のリニアガイドにおいては、負荷通路を転動するボールを保持するためのボール保持部材が必要である。
【0004】
例えば、特許文献1には運動案内装置に用いられ、ボールを保持するためのボール保持部材が開示されている。該特許文献1においては、例えば、その図4に示すように、ボール保持部材10、ボール保持部材11及びボール保持弾性部材13により、移動ブロックの一側の上下両列のボールを保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2649745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1においては、移動ブロックの一側の上下両列のボールを同時に保持するために、上記の総計3つの部材が必要であるので、部材の点数が多く、取付作業が複雑である。
【0007】
本発明は、以上のような実情に鑑みなされたものであり、転動体を保持するための転動体保持部材の点数が少なく、取付作業が容易である運動案内装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を実現するために、本発明は、両側面に2列の転動体転走溝がそれぞれ形成された軌道台と、前記転動体転走溝に対向し、負荷通路を形成する負荷転動体転走溝を有し、前記軌道台に組みつけられ、当該軌道台に沿って移動自在な移動体と、接触角線が前記転動体転走溝に対して前記軌道台の外方で交わるよう配列された転動体と、2列に配列された前記転動体の前記軌道台側に配置される転動体保持部材と、を備え、前記移動体は移動体本体と、前記移動体本体の両端に取り付けられる蓋体と、からなる運動案内装置において、前記転動体保持部材は前記軌道台の長手方向に延びる板状に形成され、当該長手方向と直交する板状の転動体保持部を有し、前記転動体保持部は2列に配列された前記転動体を前記軌道台側から同時に保持し、前記移動体本体は前記転動体保持部と対向する内壁部を有し、前記転動体保持部と前記内壁部との間に隙間を有することを特徴とする運動案内装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の運動案内装置により、転動体保持部材は2列に配列された転動体を同時に保持する転動体保持部を有するので、1つの転動体保持部材で、他の部材を必要とせずに、移動体の一側の上下両列の転動体を同時に保持できて、部材の点数を低減し、取付作業を容易に行うことができる;転動体保持部が軌道台の長手方向に延びる板状に形成され、当該長手方向と直交するように設けられるので、形状が簡単であり、製造が容易であり、さらに、相応的に移動体及び軌道台も特殊加工が要らない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の運動案内装置の斜視図である。
図2図2は、本発明の運動案内装置の分解斜視図である。
図3(a)】図3(a)は、本発明の運動案内装置の図1におけるA−Aに沿って切られた断面図である。
図3(b)】図3(b)は、図3(a)におけるEに示す部分の拡大図である。
図4図4は、本発明の一つの実施形態の転動体保持部材の斜視図である。
図5(a)】図5(a)は、本発明の移動体の斜視図である。
図5(b)】図5(b)は、本発明の移動体の図5(a)におけるB−Bに沿って切られた断面図である。
図5(c)】図5(c)は、図5(b)におけるCに示す部分の拡大図である。
図6(a)】図6(a)は、本発明の蓋体の斜視図である。
図6(b)】図6(b)は、本発明の蓋体の図6(a)におけるD−Dに沿って切られた断面図である。
図7図7は、本発明のもう一つの実施形態の転動体保持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の各部分の構造及び機能を詳しく説明する。なお、以下の説明では、同じ又は相応な部材や構造に対して同じ符号を付して重複の説明を省略する。
【0012】
図1に示すように、運動案内装置の一種としてのリニアガイド1は、軌道レール2と、軌道レール2に沿って移動可能に組み付けられる移動ブロック3と、を備え、移動ブロック3が軌道レール2の長手方向に沿って直線運動する。また、軌道レール2がベースなどの固定側に取り付けられ、移動ブロック3がテーブルなどの案内対象を取り付ける。
【0013】
そして、図2に示すように、移動ブロック3はスライダ3aと、エンドプレート3b1、内側方向転換路形成部材3b2、及びエンドプレートシール3b3とを備える。また、内側方向転換路形成部材3b2をエンドプレート3b1におけるスライダ3a側の面に嵌合することにより、後述のボールBが移動ブロック3を方向転換するためのU字状の方向転換路を形成する。さらに、ねじ5は、エンドプレート3b1、及び内側方向転換路形成部材3b2をスライダ3aにねじ止め固定するためのものである。また、ねじ6は、後述のボール保持部材4をエンドプレート3b1に取り付けた後、エンドプレートシール3b3をエンドプレート3b1にねじ止め固定するためのものである。
【0014】
さらに、図3(a)に示すように、軌道レール2がその両側面に2列のボール転走溝2aがそれぞれ形成されており、スライダ3aがボール転走溝2aに対向し、負荷通路を形成する負荷ボール転走溝3a1を有するとともに、スライダ3aが負荷通路に平行な無負荷通路3a2をさらに有する。軌道レール2と移動ブロック3との間には、転がり運動可能に多数のボールBが介在される。多数のボールBはサーキット状のボール循環路を循環する。該ボール循環路は、上記の負荷通路と、上記の無負荷通路3a2と、負荷通路の端部と無負荷通路3a2の端部とを接続するU字状の方向転換路と、から構成される。これにより、移動ブロック3が軌道レール2に沿って移動自在に直線運動可能である。
【0015】
以下、図3(a)〜図7を参照して、本発明の実施形態のボール保持部材4を詳しく説明する。
【0016】
ボール保持部材4は、軌道レール2と移動ブロック3との間に設けられ、ボールBを保持するためのものであり、図4に示すように、ボール保持部4aと固定部4bとを備え、また、固定部4bは屈曲部4b1と係止部4b2とを備える。
【0017】
具体的に言えば、図3(a)と図3(b)に示すように、ボールBは、接触角線がボール転走溝2aに対して軌道レール2の外方で交わるよう配列されており、ボール保持部材4は、上記のように2列に配列されたボールB間に配置され、且つ軌道レール2の長手方向に延びる板状に形成され、当該長手方向と直交するボール保持部4aを有し、該ボール保持部4aは上記のように2列に配列されたボールBを同時に保持している。これにより、1つのボール保持部材4で、他の部材を必要とせずに、移動ブロック3の一側の上下両列のボールBを同時に保持できて、部材の点数を低減し、取付作業を容易に行うことができる。また、ボール保持部4aが軌道レール2の長手方向に延びる板状に形成され、当該長手方向と直交するように設けられるので、形状が簡単であり、製造が容易であり、さらに、相応的に移動ブロック3及び軌道レール2も特殊加工が要らない。
【0018】
さらに、図3(b)に示すように、スライダ3aはボール保持部4aと対向する内壁部3a3を有し、ボール保持部4aと内壁部3a3との間に隙間を有する。すなわち、ボール保持部4aと内壁部3a3とは接触していないので、ボール保持部材4に対するスライダ3aの影響が低減されてボール保持部材4が相対的に安定するようになる。具体的言えば、スライダ3aの内壁部3a3は製造公差が存在しているので、ボール保持部材4は、この内壁部3a3と接触すると、この内壁部3a3に影響されて変形してしまう恐れがある。それに対して、本発明は、ボール保持部4aと内壁部3a3との間に隙間を設けることにより、上記問題を解消できて、ボール保持部材4によるボールBの保持がもっと安定になる。そして、ボール保持部4aと内壁部3a3との間に隙間を設けることにより、ボール保持部材4とスライダ3aとの位置決めがなくなり、公差上の設計が容易になる。さらに、ボール保持部4aと内壁部3a3との間に隙間を設けることにより、メンテナンスも便利になる。
【0019】
なお、図3(b)における丸印の部分に示すように、スライダ3aは軌道レール2と近接するように形成されている部分を備え、より詳しく言えば、スライダ3aの負荷ボール転走溝3a1側に、ボールBを抱え込むための抱え込みが大きく形成されている。ボールBを抱え込むための抱え込みが大きく形成されて、ある程度ボールBを保持出来ているので、薄い板状のボール保持部4aだけでボールBをより確実で安定に保持することが可能である。
【0020】
さらに、図5(a)〜図5(c)は、図2に示す分解した移動ブロック2を組み立てた後の図を示しているが、エンドプレートシール3b3及びねじ6を省略している。該図5(a)〜図5(c)に示すように、移動ブロック3の一側の上下両列のボールBを同時に保持するボール保持部材4はエンドプレート3b1に係止されている。具体的に言えば、図6(a)及び図6(b)に示すように、エンドプレート3b1におけるスライダ3a側の面と反対側の面には、屈曲部4b1を収容する収容溝3b11と係止部4b2を収容する係止溝3b12とが形成されており、ボール保持部材4は、上記のように2列に配列されたボールBをボール保持部4aにより保持した状態で、例えば弾性により、屈曲部4b1を収容溝3b11に収容するとともに、係止部4b2を係止溝3b12に係止することにより、エンドプレート3b1に係止固定されるようになる。
【0021】
ボール保持部材4は、上記のような屈曲部4b1及び係止部4b2を有するので、ねじなどの取付部材を必要とせずに、エンドプレート3b1に係止固定され得るので、部材の点数が少なく、取付作業が容易である。
【0022】
また、図7は本発明のボール保持部材4の変形例である。該図7に示すように、この変形例が図4に示すボール保持部材4に対する区別は、ボール保持部4aが、その一部に窪み4a1が形成されることにある。
【0023】
このように、ボール保持部4aに窪み4a1を設けることにより、ボール保持部4aの保持強度を高めてボールBをより安定的に保持することができる。
【0024】
以上、図1〜7に示す具体的な実施形態により、本発明のリニアガイド1の具体的な構造を説明した。
【0025】
以上の説明により、ボールBを保持するためのボール保持部材4の点数が少なく、取付作業が容易であるリニアガイド1を提供するという目的を実現するために、本発明は、両側面に2列のボール転走溝2aがそれぞれ形成された軌道レール2と、ボール転走溝2aに対向し、負荷通路を形成する負荷ボール転走溝3a1を有し、軌道レール2に組みつけられ、当該軌道レール2に沿って移動自在な移動ブロック3と、接触角線がボール転走溝2aに対して軌道レール2の外方で交わるよう配列されたボールBと、2列に配列されたボールB間に配置されるボール保持部材4と、を備え、移動ブロック3はスライダ3aと、スライダ3aの両端に取り付けられるエンドプレート3b1と、からなるリニアガイド1において、ボール保持部材4は軌道レール2の長手方向に延びる板状に形成され、当該長手方向と直交するボール保持部4aを有し、ボール保持部4aは2列に配列されたボールBを同時に保持することを特徴とするリニアガイド1を提供する。
【0026】
ボール保持部材4は2列に配列されたボールBを同時に保持するボール保持部4aを有するので、1つのボール保持部材4で、他の部材を必要とせずに、移動ブロック3の一側の上下両列のボールBを同時に保持できて、部材の点数を低減し、取付作業を容易に行うことができる。また、ボール保持部4aが軌道レール2の長手方向に延びる板状に形成され、当該長手方向と直交するように設けられるので、形状が簡単であり、製造が容易であり、さらに、相応的に移動ブロック3及び軌道レール2も特殊加工が要らない。
【0027】
また、スライダ3aはボール保持部4aと対向する内壁部3a3を有し、ボール保持部4aと内壁部3a3との間に隙間を有する、ということが好ましい。
【0028】
ボール保持部4aと内壁部3a3とは接触していないので、ボール保持部材4に対するスライダ3aの影響が低減されてボール保持部材4が相対的に安定し、且つ、ボール保持部材4とスライダ3aとの位置決めがなくなり、公差上の設計が容易になり、さらに、隙間を有することでメンテナンスも便利になる。
【0029】
また、ボール保持部材4はボール保持部4a以外に、更に固定部4bを有し、固定部4bは屈曲部4b1と係止部4b2とを有し、エンドプレート3b1には屈曲部4b1を収容する収容溝3b11と係止部4b2を収容する係止溝3b12とが形成される、ということが好ましい。
【0030】
ボール保持部材4は、上記のような屈曲部4b1及び係止部4b2を有するので、ねじなどの取付部材を必要とせずに、エンドプレート3b1に係止固定され得るので、部材の点数が少なく、取付作業が容易である。
【0031】
また、ボール保持部4aは、その一部に窪み4a1が形成される、ということが好ましい。
【0032】
これにより、ボール保持部4aの保持強度を高めてボールBをより安定的に保持することができる。
【0033】
以上のように、本発明は図面を参照して好ましい実施形態を十分に記載しているが、当業者は上記の実施形態を基礎として変形又は変更を適宜行うことが勿論である。これらの変形又は変更は、本発明の趣旨を逸脱しない場合には、本発明の保護範囲に含まれると考えられる。
【符号の説明】
【0034】
1 リニアガイド(運動案内装置)
2 軌道レール(軌道台)
2a ボール転走溝
2b 外壁面
3 移動ブロック(移動体)
3a スライダ(移動体本体)
3a1 負荷ボール転走溝
3a2 無負荷通路
3a3 スライダ内壁
3b1 エンドプレート(蓋体)
3b11 収容溝
3b12 係止溝
3b2 内側方向転換路形成部材
3b3 エンドプレートシール
4 ボール保持部材
4a ボール保持部
4a1 窪み
4b 固定部
4b1 屈曲部
4b2 係止部
5 ねじ
6 ねじ
B ボール(転動体)
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6(a)】
図6(b)】
図7