(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381815
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】電離放射線のシンチレーション検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/202 20060101AFI20180820BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20180820BHJP
G21K 4/00 20060101ALN20180820BHJP
【FI】
G01T1/202
G01T1/20 B
!G21K4/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-538244(P2017-538244)
(86)(22)【出願日】2016年2月8日
(65)【公表番号】特表2018-513351(P2018-513351A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】CZ2016000012
(87)【国際公開番号】WO2016127959
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年8月21日
(31)【優先権主張番号】PV2015-82
(32)【優先日】2015年2月9日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】513157822
【氏名又は名称】クライツール スポル.エス アール.オー.
【氏名又は名称原語表記】CRYTUR SPOL.S R.O.
(73)【特許権者】
【識別番号】517247974
【氏名又は名称】フィジカルニ ウスタフ エーヴィー シーアール、ヴィー.ヴィー.アイ.
【氏名又は名称原語表記】FYZIKALNI USTAV AV CR,V.V.I.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ホスポドコーヴァ、アリス
(72)【発明者】
【氏名】ブラチェク、カレル
(72)【発明者】
【氏名】フリチウス、エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】トウス、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ニキ、マーティン
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/138617(US,A1)
【文献】
米国特許第6515313(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0101219(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/195606(US,A1)
【文献】
国際公開第2005/097945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶基板(1)を含み、該単結晶基板(1)上に、エピタキシによって、最小数で1つの窒化物半導体層(3、4、5、6)を前記単結晶基板(1)上で結合するために最小数で1つのバッファ層(2)が加えられ、前記窒化物半導体層は、0≦x<1、0≦y<1、及び0≦x+y≦1が有効であるAlyInxGa1-x-yNの一般的公式で示され、最小数で2つの窒化物半導体層(3、4)は層状ヘテロ構造において配置され、この構造は、電子及びホールの放射再結合のための最小数で1つのポテンシャル井戸を含有する、電離放射線、特に、電子、X線、または粒子放射線を検出するためシンチレーション検出器であって、
前記バッファ層(2)上に、最小数で1つの底部窒化物半導体層(3)が配置されており、前記底部窒化物半導体層(3)の上に、最小数で1つの活性共役の、主に同じ偏光の窒化物半導体層(3、4)が配置されており、該活性共役は、AlybInxbGa1-xb-ybN型の前記障壁層(4)から成り、xb≦xw及びyb≦ywが有効であるポテンシャル井戸の典型であるAlywInxwGa1-xw-ywN型の層(5)からできている、または、最小数で1つの活性共役の窒化物半導体層(4、5)に、ルミネセンス減衰時間を減少させるポテンシャル井戸の典型である、前記層(5)内で該層に接合するキャリア吸着層を作製するために、yd≦yw及びxd≧xw+0.3が有効である、厚さ(t3)が2nm未満のAlybInxbGa1-xb-ybN型の最小数で1つの層(7)が挿入され、前記基板(1)から離れる方向で一番上の活性共役の層(3、4)の上に、最小数で1つの最上部窒化物半導体層(6)が配置されている
ことを特徴とするシンチレーション検出器。
【請求項2】
前記障壁層(4)及びポテンシャル井戸の典型である前記層(5)の組成及び厚さは、GaNバッファ層上で調製されたエピタキシャル面における張力の相互の補償についての関係|d1・(4.3・xw−yw)+d2・(4.3・xb−yb)|≦1に準拠し、厚さ(d1、d2)はナノメートルとされる
請求項1に記載のシンチレーション検出器。
【請求項3】
前記ヘテロ構造の活性部分は、全体の厚さ(h)が200nmを超える、最小数で2つの活性共役の窒化物半導体層(4、5)を含む
請求項1または2に記載のシンチレーション検出器。
【請求項4】
前記底部窒化物半導体層(3)はAlyInxGa1-x-yN型であり、0≦x<0.5及び0≦y<0.5が有効である
請求項1ないし3のいずれかに記載のシンチレーション検出器。
【請求項5】
前記ヘテロ構造は、前記最上部窒化物半導体層(6)の外表面から最小数で1μmの深さへとIV族元素の原子がドープされる
請求項1ないし4のいずれかに記載のシンチレーション検出器。
【請求項6】
1019cm-3までの濃度のシリコン原子に関係する
請求項5に記載のシンチレーション検出器。
【請求項7】
前記単結晶基板(1)は、イットリウムアルミニウム灰チタン石、GaN単結晶形成、またはサファイア基による材料から製造されたものである
請求項1ないし6のいずれかに記載のシンチレーション検出器。
【請求項8】
前記単結晶基板(1)は、前記バッファ層(2)がAlyInxGa1-x-yNで作製され、該層の厚さ(t4)が50nm未満である時、希土類元素がドープされるイットリウムアルミニウム灰チタン石によって作製されたものである
請求項7に記載のシンチレーション検出器。
【請求項9】
前記希土類元素はセリウムによって表される
請求項8に記載のシンチレーション検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電離放射線、特に、電子、X線、または粒子放射線を検出するように設計される、窒化物ヘテロ構造による半導体単結晶シンチレーション検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNまたはZnOなどの広範なバンドギャップを有する半導体は、電離放射線の検出器における利用にとって適している。このタイプの材料は、1ns程度の短い減衰時間の励起ルミネセンスを示し、耐放射線性を有する。GaNの利点は、より高い結晶学的性質で、かつ、単結晶基板の広い表面に対して、重なり合ったいくつかの異なる層まで加えられる均質なエピタキシャル層の形で調製できることによって、ヘテロ構造の作製がもたらされることである。これらのヘテロ構造は、低い非放射損失、及び狭い範囲のルミネセンス最大値を有する。
【0003】
特許文献1には、電離放射線による励起のための半導体の形の窒素による化合物の周期表からのIII族元素を含む半導体シンチレータが記載されている。この半導体化合物は、一般に基板と呼ばれるものの上に形成される層に構造化される。さらに、半導体層と基板との間に、バッファ層と呼ばれる半導体構造を円滑化/改善するための半層があることが考えられる。III族元素によるさまざまな窒素化合物及びそれらの合金は、重なり合うように加えられる異なる層において利用可能であり、ヘテロ構造を作製することができる。
【0004】
別の既知の特許文献2には、光放射、ルミネセンスによる電子入射に対する蛍光剤反応について記載されている。蛍光剤は、単結晶キャリア基板の窒化物半導体サンドイッチ構造を含み、この構造において、障壁層はポテンシャル井戸の典型である層と交互になっている。半導体層は、1基板側の表面上に形成されるヘテロ構造を作製する。ポテンシャル井戸は、優先的に、In
xGa
1-xN合金半導体で作製される。
【0005】
上記解決策の不利点は、異なる組成を有する層の界面間に形成される強力なピエゾ電界を考慮しないことである。このピエゾ電界は、電子−ホール波動関数オーバーラップを減少させ、その結果、ルミネセンス強度を大幅に減少させ、ルミネセンス減衰時間を延長させる。これは、シンチレータにおいて、集約度が小さくなり、反応が緩慢になることを意味する。上記の解決策の次の不利点は、電離放射線の入射中に、半導体材料における非放射電子−ホール再結合に対して比較的大量のエネルギーが消費されることから成る。ポテンシャル井戸の存在はこの割合を改善するが、結果として生じる、放射及び非放射再結合に対して消費されるエネルギーの割合は、依然満足させるものではない。結果として生じる再結合エネルギーの割合を改善すると思われる半導体層におけるポテンシャル井戸をより大きい数にすることは、In
xGa
1-xNの異なる格子定数によって引き起こされるIn
xGa
1-xN井戸の数が増加することによる構造におけるひずみが増加することによって阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7053375号明細書
【特許文献2】米国特許第8164069号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、既知の解決策の欠点を解消すると考えられる電離放射線を検出するための単結晶窒化物シンチレーション検出器を作製し、ピエゾ電界の影響を抑え、構造におけるひずみを減少させ、これによって、入射電離放射線に対するルミネセンス反応の強度及び速度を増加させるようにすることである。
【0008】
所定の課題は、電離放射線、特に、電子、X線、または粒子放射線を検出するためのシンチレーション検出器を作製することによって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
シンチレーション検出器は、最小数で1つのバッファ層が加えられる単結晶基板を含む。バッファ層は、エピタキシによって、最小数で1つの窒化物半導体層を単結晶基板に安定的に結合するために加えられる。窒化物半導体層は、0≦x≦1、0≦y≦1、及び0≦x+y≦1の関係が適用されるAl
yIn
xGa
1-x-yNの一般的公式で示される。同時に、最小数で2つの窒化物半導体層は層状ヘテロ構造になるように配置され、この構造は、入射放射線によって生じた電子及びホールの放射再結合のための最小数で1つのポテンシャル井戸を含有する。
【0010】
本発明の原理は、バッファ層が最小数で1つの底部窒化物半導体層で作製され、底部窒化物半導体層の上に、最小数で1つの活性共役の、主に同じ偏光の窒化物半導体層が配置されているという事実を含む。この活性共役は、Al
ybIn
xbGa
1-xb-ybN型の障壁層から成り、ポテンシャル井戸の典型であるAl
ywIn
xwGa
1-xw-ywN型の層からできており、ここで、活性共役に対してxb≦xw及びyb≦ywの関係が有効である。あるいは、活性共役の層が同じ偏光を有さない場合、最小数で1つの活性共役の窒化物半導体層に、ルミネセンス減衰時間を減少させるポテンシャル井戸の典型である、該窒化物半導体層内でこの層に接合するキャリア吸着層を作製するために、yd≦yw及びxd≧xw+0.3が有効である、厚さが2nm未満のAl
ydIn
xdGa
1-xd-ydN型の最小数で1つの層が挿入される。基板から離れる方向で一番上の活性共役の上に、最小数で1つの最上部窒化物半導体層が配置されている。
【0011】
主に、同じ偏光の活性共役の層によるシンチレーション検出器の利点は、ホール及び電子波動関数の改善されたオーバーラップによって引き起こされる、ナノ秒単位の短い減衰時間、及び高いルミネセンス強度を含む。電子及びホール波動関数のオーバーラップを増加させる別のやり方は、電子及びホール空間近似をもたらす、電子及びホールを内部で引っ張るキャリア吸着層の挿入であり、これによって、励起したルミネセンス強度が増加し、シンチレータルミネセンス反応がより速くなる。
【0012】
本発明による、GaNバッファ層によるシンチレーション検出器の別の好ましい実施態様では、障壁層及びポテンシャル井戸の典型である層の組成及び厚さは、エピタキシャル構造におけるひずみの相互の補償についての関係
|d
1・(4.3・xw−yw)+d
2・(4.3・xb−yb)|≦1
に従い、厚さd1及びd2はナノメートルとされる。ヘテロ構造の活性領域におけるひずみの補償によって、ヘテロ構造のこの活性領域のサイズを増加させることができるため、検出される放射線の入射のための領域が拡大され、放射再結合のために放出される電子及びホールの数が増加し、この結果、シンチレーション検出器関数が改善される。
【0013】
本発明によるシンチレーション検出器の別の好ましい実施態様では、ヘテロ構造の活性領域は、全体の厚さが200nmを超える、最小数で2つの周期的に繰り返される活性共役の窒化物半導体層を含む。
【0014】
本発明によるシンチレーション検出器の別の好ましい実施態様では、底部窒化物半導体層はAl
yIn
xGa
1-x-yN型であり、この場合、0≦x<0.5、0≦y<0.5、及び0≦x+y≦1が有効である。
【0015】
本発明によるシンチレーション検出器の別の好ましい実施態様では、最上部窒化物半導体層の外表面から最小数で1μmの深さへとIV族元素の原子でドープして、該構造の十分な伝導性を達成し、入射電子ビームによって引き起こされる余分な陰電荷を遠ざけることが可能になる。10
19cm
-3までの濃度のシリコン原子は優先的に使用される。
【0016】
本発明によるシンチレーション検出器の別の好ましい実施態様では、単結晶基板は、イットリウムアルミニウム灰チタン石、単結晶GaN形成、またはサファイアによる材料からできている。
【0017】
本発明によるシンチレーション検出器の別の好ましい実施態様では、成長過程を安定させるために希土類元素がドープされる、単結晶イットリウムアルミニウム灰チタン石基板上で調製される。
【0018】
電離放射線、特に、電子、X線、または粒子放射線を検出するための高速シンチレータの利点は、キャリア吸着層を利用することによってピエゾ電界の影響の解消を含んで、早い減衰時間、より高いルミネセンス強度、ピエゾ電界及び活性領域におけるひずみの少なくとも一部の補償である。
【0019】
本発明は、図面においてより詳しく明確化される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ピエゾ電界の補償がなく、シンチレータのルミネセンス強度を低下させかつその減衰時間を延長する電子及びホール波動関数のオーバーラップが弱い、量子井戸を有するシンチレーション窒化物ヘテロ構造の伝導及び価電子バンドエッジの推移の概略説明図
【
図2】ピエゾ電界が補償され、かつ波動関数がより完全にオーバーラップされたシンチレーション窒化物ヘテロ構造の伝導及び価電子バンドのエッジの推移を概略的に示す説明図
【
図3】浸漬された反転ポテンシャル障壁を有するシンチレーション窒化物ヘテロ構造の伝導及び価電子バンドのエッジの推移を概略的に示す説明図
【
図4】一定の偏光を維持するための個々の成分の割合の3次元グラフ
【
図5】基板上に作製される活性領域のほぼ同じ偏光の個々の層とのヘテロ構造層の模式図
【
図6】浸漬されたキャリア吸着層とのヘテロ構造層の模式図
【
図7】現在の知識(特許文献2による、x=0.13のIn
xGa
1-xN量子井戸の厚さ2.2nm、GaN障壁の厚さ10nm)に従って調製された試料との、提案された解決策(実施例5)に従って調製された試料のフォトルミネセンス強度のスペクトル依存性の比較を示す説明図
【
図8】現在の知識(特許文献2による、x=0.13のIn
xGa
1-xN量子井戸の厚さ2.2nm、GaN障壁の厚さ10nm)に従って調製された試料との、提案された解決策(実施例5−1ns未満の減衰時間)に従って調製された試料の時間分解の積分フォトルミネセンス強度の比較を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に記されかつ図示される本発明の実施態様の特有の例は、例示のために表され、本発明を示される例に限定するものではない。当業者は、日常の実験を行う時、ここに記載される本発明の特有の実施態様の等価物のより多くの量またはより少ない量を見出すことになる、または保証することができる。これらの等価物はまた、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【0022】
図1は、現在の知識に従って設計されたシンチレーション検出器についての電子及びホールの波動関数8及び9と共に伝導及び価電子バンドを示す。
図2及び
図3は、本発明による解決策に従って設計されたシンチレーション検出器についての電子及びホールの波動関数8及び9と共に伝導及び価電子バンド、
図2では平衡偏光による構造、及び
図3ではキャリア吸着層を浸漬させた構造を示す。
図4は、平衡ピエゾ電界を維持するための活性領域の材料の個々の成分の値の割合を示す3次元グラフを示す。
図5は、平衡偏光による単結晶基板1上に作製されるヘテロ構造を概略的に示す。
図6は、キャリア吸着層を浸漬させた単結晶基板1上に作製されたヘテロ構造を概略的に示す。
【実施例1】
【0023】
ピエゾ電界を十分に補償した構造
シンチレータの一部は、MOVPE技術によって調製されたGaNバッファ層2を有する多層半導体窒化物ヘテロ構造である。ヘテロ構造活性領域の品質及び関数にとって、活性領域におけるAl
ybIn
xbGa
1-xb-ybNの障壁層4がエピタキシャル面におけるGaNバッファ層に適合した格子であることと同時に、ポテンシャル井戸の典型であるバンドギャップがより狭いAl
ywIn
xwGa
1-xw-ywN層5が障壁層4と同じ偏光を有することは不可欠である。Al
ybIn
xbGa
1-xb-ybN障壁層4は、In原子のおよそ4.3倍のAl原子(yb=4.3・xb)を含有するものとし、それによって、バッファ層に適合した格子が可能になる。
【0024】
ヘテロ構造は、方位(111)によってYAP(イットリウムアルミニウム灰チタン石)基板1上に調製される。調製後、5分の間に1050℃の温度でNH
3+N
2雰囲気中で基板1の窒化物形成が行われた。さらに、540℃の温度で厚さt
4が30nmのGaN核形成層2が調製された。GaN底層3は、1.10
17cm
-3の濃度までシリコン原子がドープされ、1050℃の温度で調整された。この底層3の厚さt
1は2μmである。ヘテロ構造の活性領域は、830℃の温度で調整されたより広いバンドギャップを有する層4及びより狭いバンドギャップを有する層5が交互に作製される。活性共役が繰り返される数は12である。障壁層4のパラメータはAl
ybIn
xbGa
1-xb-ybN
ybである。この場合、xb=0.03、yb=0.17であり、層4の厚さd
2は16nmである。層5はパラメータAl
ywIn
xwGa
1-xw-ywNを有する。この場合、xw=0.13、yw=0.24であり、層5の厚さd
1は5nmである。活性層はSi濃度2.10
18cm
-3までシリコンがドープされる。y=0.05の組成によって830℃の温度でAl
yGa
1-yN型の被覆層6が調製された。
【実施例2】
【0025】
部分的に平衡がとれたピエゾ電界を有し、かつエピタキシャル層におけるひずみが十分に補償された構造
多層半導体ヘテロ構造は実施例1に従って調製された。そして、格子定数a
bがより小さい障壁層4の組成及び厚さd
2は、格子定数a
w及び厚さd
1がより大きいポテンシャル井戸の典型である層5によって生じたひずみが、この実施例ではGaNで作製される格子パラメータa
0を有する底層3に対して平衡がとられるような形で配置される。同時に、ピエゾ電界は、ポテンシャル井戸の典型である層4と層5との間で補償される(両方の型は同じ偏光を有する)。活性領域には、830℃の温度で調製された、より広いバンドギャップを有する層4とより狭いバンドギャップを有する層5とが交互に作製される。活性共役が繰り返される数は30である。層4のパラメータはAl
ybIn
xbGa
1-xb-ybNであり、この場合、xb=0、yb=0.15であり、層の厚さd
2は13nmである。層5のパラメータはAl
ywIn
xwGa
1-xw-ywNであり、この場合、xw=0.13、yw=0.24であり、層の厚さd
1は6nmである。
【実施例3】
【0026】
ピエゾ電界及びIn
xGa
1-xNバッファ層が十分に補償された構造
多層半導体ヘテロ構造は実施例1に従って調製された。そして、底層3は、ヘテロ構造活性領域の層におけるAl含有量の減少を可能にした、組成x=0.03のIn
xGa
1-xN型の合金半導体で作製される。活性領域には、830℃の温度で調製された、より広いバンドギャップを有する層4とより狭いバンドギャップを有する層5とが交互に作製される。活性共役が繰り返される数は15である。層4のパラメータはAl
ybIn
xbGa
1-xb-ybNであり、この場合、xb=0.02、yb=0.03であり、層4の厚さd
2は8nmである。層5のパラメータはAl
ywIn
xwGa
1-xw-ywN型であり、この場合、xw=0.08、yw=0.09であり、厚さd
1は2nmである。
【実施例4】
【0027】
浸漬させたキャリア吸着層を有する構造
この構造(
図3及び
図6を参照)は実施例1に従って調製されるが、Al
ywIn
xwGa
1-xw-ywNの組成を有する、バンドギャップがより狭い層5に、キャリア吸着層として薄いIn
xdGa
1-xdNの層7が挿入される。この層7は、内部に電子及びホールを引っ張るため、ピエゾ電界が存在する場合でも電荷キャリアの波動関数のオーバーラップを改善し、それによって、活性領域におけるアルミニウム濃度を減少させることができる。
【0028】
この構造は、方位(111)でYAP(イットリウムアルミニウム灰チタン石)基板1上に調製される。5分の間に1050℃の温度でNH
3+N
2雰囲気中で基板1の窒化物形成が行われた。その後、540℃の温度で厚さt
4が30nmのGaN材料による核形成層2が調製された。次いで、GaN底層3は、1.10
17cm
-3の濃度までシリコン原子をドープして作製され、1050℃の温度で調整された。この層3の厚さt
1は2μmである。
【0029】
活性領域には、830℃、780℃、及び690℃の温度で調整されたより広いバンドギャップ及びより狭いバンドギャップを有する層4、層5、及び層7が交互に作製される。この活性三重項が繰り返される数は15である。
【0030】
層4のパラメータはAl
ybIn
xbGa
1-xb-ybNである。この場合、xb=0.02、yb=0.09であり、層4の厚さd
2は12nmである。層5のパラメータはAl
ywIn
xwGa
1-xw-ywNであり、この場合、xw=0.03、yw=0.07であり、層5の厚さd
1は2nmである。層7のパラメータはIn
xdGa
1-xdNであり、この場合、xd=0.4であり、層7の厚さt
3は1nmである。活性領域はまた、Si濃度2.10
18cm
-3までシリコンがドープされる。y=0.1の組成によって830℃の温度で調製されたAl
yGa
1-yNの被覆層6も、ヘテロ構造の最上部に加えられる。
【実施例5】
【0031】
浸漬させたキャリア吸着層を有する別の構造
この構造(
図3及び
図6を参照)は実施例4に従って調製されるが、この構造は、層の組成及び厚さ、ならびに使用される基板の型が異なっている。
【0032】
この構造は、c−(0001)方位でサファイア基板1上に調製される。5分の間に1050℃の温度でNH
3+N
2雰囲気中で基板1の窒化物形成が行われた。その後、540℃の温度で厚さt
4が25nmの、GaN材料による核形成層2が調製された。次いで、GaN底層3は、1.10
17cm
-3の濃度までシリコン原子をドープして作製され、1050℃の温度で調製された。この層3の厚さt
1は6μmである。
【0033】
活性領域には、830℃、730℃、及び680℃の温度で調製されたより広いバンドギャップ及びより狭いバンドギャップを有する層4、層5、及び層7が交互に作製される。この活性三重項が繰り返される数は15である。
【0034】
層4のパラメータはAl
ybIn
xbGa
1-xb-ybNである。この場合、xb=0、yb=0であり、層4の厚さd
2は10nmである。層5のパラメータはAl
ywIn
xwGa
1-xw-ywNであり、この場合、xw=0.07、yw=0であり、層5の厚さd
1は2nmである。層7のパラメータはIn
xdGa
1-xdNであり、この場合、xd=0.4であり、層7の厚さt
3は0.8nmである。活性領域にも1.10
19cm
-3のSi濃度までシリコンがドープされる。y=0.1の組成によって830℃の温度で調製されたAl
yGa
1-yNの被覆層6も、ヘテロ構造の最上部に加えられる。
【実施例6】
【0035】
部分的に平衡がとれたピエゾ電界を有し、かつYAP:Ce基板上で調製されたエピタキシャル層におけるひずみが十分に補償された構造
多層半導体ヘテロ構造は、ひずみが十分に補償された構造として実施例2に従って調製されたが、方位(111)でYAP基板上に調製され、Ce(0.17%)によってドープされた。該構造はまた、活性層4及び5の厚さが異なっており、この場合、組成がxb=0、yb=0.15のAl
ybIn
xbGa
1-xb-ybNの障壁層4は厚さd
2=11nmを有し、量子井戸の層5は厚さd
1=5nm、及び組成xw=0.13、yw=0.24を有する。層の二重項が繰り返される数は30である。
【実施例7】
【0036】
部分的に平衡がとれたピエゾ電界を有し、かつYAP:Nd基板上で調製されたエピタキシャル層におけるひずみが十分に補償された構造
多層半導体ヘテロ構造は、ひずみが十分に補償された構造として実施例6に従って調製されたが、方位(111)でYAP基板上に調製され、Nd(0.1%)によってドープされた。該構造はまた、活性層4及び5の厚さが異なっており、この場合、組成がxb=0、yb=0.15のAl
ybIn
xbGa
1-xb-ybNの障壁層4は厚さd
2=9nmを有し、量子井戸の層5は厚さd
1=4nm、及び組成xw=0.13、yw=0.24を有する。層の二重項が繰り返される数は35である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
電離放射線、特に、電子、X線、または粒子放射線を検出するための、本発明によるシンチレーション検出器は、とりわけ、特には、電離放射線を用いて作業する医療分野において、電子顕微鏡において、材料及び製品の研究または解析用に設計された、高速検出を要する装置において、すなわち、集積回路及び他の電子部品の品質を診断する応用において、さらには、高速高解像度CTシステムを含むマイクロラジオグラフィにおいて、及び、天文学、素粒子物理学などの多くの他の研究分野において、利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 単結晶基板
2 バッファ層
3 底部窒化物層
4 障壁層
5 ポテンシャル井戸の典型である層
6 最上部窒化物層
7 キャリア吸着層の典型である層
8 電子の波動関数
9 ホールの波動関数
10 伝導バンドのエッジ
11 価電子バンドのエッジ
d
1 ポテンシャル井戸の典型である層の厚さ
d
2 障壁層の厚さ
t
1 底部窒化物層の厚さ
t
2 最上部窒化物層の厚さ
t
3 キャリア吸着層の典型である層の厚さ
t
4 核形成層の厚さ
h ヘテロ構造活性部分の厚さ