特許第6381836号(P6381836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6381836ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵方法、ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6381836
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵方法、ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
   B65G 3/04 20060101AFI20180820BHJP
   B65D 88/74 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B65G3/04 Z
   B65D88/74
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-4261(P2018-4261)
(22)【出願日】2018年1月15日
【審査請求日】2018年1月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 裕太
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−187083(JP,A)
【文献】 特開2013−199515(JP,A)
【文献】 特開2010−163509(JP,A)
【文献】 特開平08−172895(JP,A)
【文献】 特開平06−050016(JP,A)
【文献】 特開2017−075318(JP,A)
【文献】 特開2006−159096(JP,A)
【文献】 特開平11−217576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 3/00− 3/04
B65G 1/00− 1/133
B65G 1/14− 1/20
B65D 88/00−90/66
C10L 5/00− 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵方法であって、
前記ペレット状のバイオマス燃料を貯蔵する貯蔵庫内に、前記貯蔵庫の庫内床よりも下側の位置から前記庫内床を介して上方に向かって、前記庫内床の面上に貯蔵された前記ペレット状のバイオマス燃料に対して乾燥用ガスを通気させて、前記ペレット状のバイオマス燃料を乾燥させる工程(a)を有し、
前記乾燥用ガスの温度が、80℃以上、175℃以下であることを特徴とする、貯蔵方法。
【請求項2】
前記ペレット状のバイオマス燃料の含水率を測定する工程(b)を有し、
前記工程(a)は、前記工程(b)において測定された前記ペレット状のバイオマス燃料の含水率が、15質量%より大きく、40質量%以下の基準値を超えた場合に実行されることを特徴とする、請求項1に記載のペレット状のバイオマス燃料の貯蔵方法。
【請求項3】
前記工程(a)において、前記貯蔵庫内に貯蔵された前記ペレット状のバイオマス燃料を切返しながら、前記乾燥用ガスを通気させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のペレット状のバイオマス燃料の貯蔵方法。
【請求項4】
前記乾燥用ガスの少なくとも一部に、セメント製造設備から排気される高温ガス、発電プラントから排気される高温ガス、又は前記ペレット状のバイオマス燃料を運搬する船舶から排気される高温ガスが含まれることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のペレット状のバイオマス燃料の貯蔵方法。
【請求項5】
ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫であって、
前記ペレット状のバイオマス燃料が貯蔵される貯蔵空間の床を構成する庫内床と、
前記貯蔵空間の天井を構成する庫内天井と、
前記貯蔵空間の水平方向に係る周囲を取り囲む庫内壁と、
前記庫内床の下方に配置され、乾燥用ガスが通気可能に構成された配管と、
前記配管を通気する前記乾燥用ガスを、前記庫内床を介して前記貯蔵空間に向かって上方に噴出させるための噴出口とを備えたことを特徴とする、ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫。
【請求項6】
前記庫内天井は、外縁部の高さ位置が、前記外縁部よりも内側に位置する中央部の高さ位置よりも低い形状を示し、且つ、前記外縁部の先端が前記庫内壁よりも外側に位置していることを特徴とする、請求項に記載のペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫。
【請求項7】
前記庫内床に近い位置に配置された前記ペレット状のバイオマス燃料と、前記庫内床から離れた位置に配置された前記ペレット状のバイオマス燃料とを切返すための、切返し装置を備えたことを特徴とする、請求項5又は6に記載のペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫。
【請求項8】
前記配管は、セメント製造設備から排気される高温ガスの通気口、又は発電プラントから排気される高温ガスの通気口と接続可能に構成されていることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載のペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫。
【請求項9】
前記ペレット状のバイオマス燃料を運搬する船舶に設置されていることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載のペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫。
【請求項10】
前記配管は、前記船舶から排気される高温ガスの通気口と接続可能に構成されていることを特徴とする、請求項に記載のペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス燃料の貯蔵方法、及び貯蔵庫に関し、特に、ペレット状に固められたバイオマス燃料の貯蔵方法、及び貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のパーム油生産量は5500万トンを超え、日本においても年間約70万トンのパーム油が、インスタント麺等の食品向けや、洗剤や石鹸等の非食品向けに使用されている。
【0003】
ところで、パーム油の生産工程及びパーム油を産するパーム椰子のプランテーションからは、パーム椰子果房から果実を脱果した後に残る空果房(EFB:Empty Fruit Bunches)、25〜30年毎に伐採更新されるパーム椰子の樹幹(OPT:Oil Palm Trunk)、及びパーム椰子果房1個の採取につき2〜3本が切り落とされ、更にパーム樹幹伐採時にはパーム樹幹1本あたり30〜50本生えているパーム椰子の茎葉(OPF:Oil Palm Frond)が、大量に排出される。
【0004】
EFB、OPT、及びOPFは、火力発電用燃料として利用可能な程度の熱量を有しており、バイオマス発電における主燃料としての利用技術の開発が推進されている。これらパーム油産業からの上記バイオマスを利用したバイオマス燃料は、マレーシアやインドネシア等の東南アジアにおけるパーム椰子の生産国で加工された後、消費国である日本等へ運搬される。このため、加工から使用までの長期の期間、かかるバイオマス燃料が品質の低下等を生じないように取り扱う必要がある。
【0005】
パーム椰子の生産国で行われるバイオマス燃料の加工は、粉砕等の単純加工のみの場合もあれば、例えば、下記特許文献1のように、破砕工程、温水加水工程、圧搾脱水工程等を経ることによってバイオマス燃料からカリウム等の忌避成分を除去する場合や、更に下記特許文献2の様に、パーム油の絞り粕であるパーム核粕(PKE:Palm Kernel Expeller)とEFB等との混合物を圧縮成形して水分含量が10重量%以下のペレットとする場合まで、種々の態様がある。
【0006】
粉砕のみ等の単純加工の場合、バイオマスに付着している微生物の増殖によってバイオマス燃料中の有機物の分解による燃料成分の減少が生じると共に、自然発火などの安全面や腐敗臭などの衛生面の問題も生じるため、例えば、下記特許文献3の様な殺菌処理を施す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−122026号公報
【特許文献2】特開2016−98373号公報
【特許文献3】特開2017−176925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、粉砕、脱水、乾燥処理された水洗浄品を圧縮成型してペレット化したバイオマス燃料については、輸送工程や貯蔵工程での管理方法の要点がこれまで不明であった。本発明者は、8週間にわたる長期試験の結果、以下の各点を明らかにした。
【0009】
(1)温度30℃以下、相対湿度70%以下の貯蔵環境であれば、バイオマス燃料に対して、ペレットの機械的強度や微生物の増殖に係る問題が生じない。
(2)貯蔵環境がある一定以上の温度に達した場合には、バイオマス燃料が蓄熱して熱暴走が生じるため、最悪の場合には自然発火する可能性がある。
(3)バイオマス燃料が水に濡れた場合には、発熱量の低下と共に、当該バイオマス燃料ペレットが膨潤して解れ易くなり、ハンドリング性状が悪化してしまう。例えば、ペレットが短繊維となったり、粉状に分解される場合がある。
【0010】
本発明は上記の問題点を解決して、パーム油産業から生じるEFB、OPT及びOPFを水洗、脱水、乾燥後に圧縮成型して得られたペレット状のバイオマス燃料を、安全性を保ちつつ、品質低下を生じさせず、且つハンドリング性状を悪化させない状態で貯蔵するためのバイオマス燃料の貯蔵方法、及び貯蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵方法であって、
前記ペレット状のバイオマス燃料を貯蔵する貯蔵庫内に乾燥用ガスを通気させて、前記ペレット状のバイオマス燃料を乾燥させる工程(a)を有することを特徴とする。
【0012】
本発明で貯蔵対象とされる「ペレット状のバイオマス燃料」は、加工時の圧縮成型工程を経て製造された、製造直後のバイオマス燃料ペレットが、一般社団法人日本木質ペレット協会規格「木質ペレット品質規格」記載の機械的耐久性(DU)では96.5%以上、又は、JIS Z 8841「造粒物−強度試験方法」記載の落下強度では97%以上の、機械的強度を有していたものを指すものとして構わない。更に、この「ペレット状のバイオマス燃料」は、直径3〜25mm、長さ5〜150mmの、円柱状又は実質的に円柱状に成型されたものを指すものとして構わない。
【0013】
乾燥工程(a)が実行されることで、貯蔵されているペレット状のバイオマス燃料の含水率が低い値に保たれるため、膨潤によって崩壊する現象を未然に防止できる。更に、乾燥工程(a)が実行されることで、ペレット状のバイオマス燃料が乾燥されて含水率が減少することによって、含水によって低下した発熱量が回復すると共に機械的強度も回復し、ハンドリング性状が回復する。
【0014】
なお、乾燥工程(a)で回復するバイオマス燃料の発熱量とは、例えば、JIS Z 7302-2「廃棄物固形化燃料−第2部:発熱量試験方法」記載の真発熱量(低位発熱量)をいう。
【0015】
また、乾燥工程(a)で回復するバイオマス燃料の機械的強度とは、例えば、一般社団法人日本木質ペレット協会規格「木質ペレット品質規格」記載の機械的耐久性(DU)、又は、JIS Z 8841「造粒物−強度試験方法」記載の落下強度等で測定される、バイオマス燃料ペレットが有する衝撃力に対する耐久性をいう。
【0016】
好ましいハンドリング性状を有するためにペレット状のバイオマス燃料が有する機械的強度は、前記機械的耐久性(DU)では96.5%以上、好ましくは97.5%以上、特に好ましくは98%以上であり、前記落下強度では97%以上、好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0017】
前記貯蔵方法は、更に、前記ペレット状のバイオマス燃料の含水率を測定する工程(b)を有し、
前記工程(a)は、前記工程(b)において測定された前記ペレット状のバイオマス燃料の含水率が、15質量%より大きく、40質量%以下の基準値を超えた場合に実行されるものとしても構わない。
【0018】
ペレット状のバイオマス燃料の含水率が40質量%を超えると、膨潤による崩壊現象が生じてしまい、乾燥処理を実行してもペレットが形状を維持することが難しくなる。このため、かかる状態のバイオマス燃料を乾燥して含水率を低減させても、粉末又は短繊維状に分解したバイオマス燃料が得られてしまい、ハンドリング性状を回復させることは困難な場合がある。よって、ペレット状のバイオマス燃料の含水率が、40質量%以下である「基準値」を超えた場合に、乾燥工程(a)を実行するのが好ましい。
【0019】
他方、ペレット状のバイオマス燃料の含水率が15質量%以下であると、場合によっては膨潤によってペレットの表面に少量のささくれ部が認められることもあるが、搬送などで受ける機械的衝撃には十分に耐えて自形を保持することができる機械的強度を有しており、ハンドリング性状に問題は生じない。このため、ペレット状のバイオマス燃料の含水率が15質量%以下である場合には、必ずしも乾燥工程(a)を実行する必要がない。すなわち、ペレット状のバイオマス燃料の含水率が、15質量%より大きく、40質量%以下である「基準値」を超えた時点で、乾燥工程(a)を実行するものとすることができる。
【0020】
なお、上記の「基準値」は、15質量%より大きく、40質量%以下の範囲内において、適宜変更することができる。
【0021】
上記測定工程(b)でのペレット状のバイオマス燃料の含水率の測定には、例えば、JIS Z 7302-3「廃棄物固形化燃料−第3部:水分試験方法」記載の方法を使用することができる。具体的には、乾燥室温度107±2℃で1時間加熱した場合の加熱前後の質量を用いればよい。更に、熱天秤分析(TG)等の機器分析を用いることもできる。
【0022】
前記乾燥用ガスの温度は、175℃以下とすることができる。前記乾燥用ガスの温度が175℃を超える場合、バイオマス燃料が蓄熱して熱暴走し、発火するおそれがある。従って、前記乾燥用ガスの温度は、好ましくは170℃以下、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは120℃以下である。
【0023】
なお、前記乾燥用ガスの温度は、常温(15℃)以上とすることができる。ただし、乾燥用ガスの温度が高いほど、バイオマス燃料の含水率を低下させるのに要する時間を短縮化できるため、常温より高い温度であるのが好ましい。更に、前記乾燥用ガスの温度を十分に高い温度(例えば80℃以上)とすることで、バイオマス燃料中に微生物類が存在していても、それらを死滅させることができるという効果も奏される。
【0024】
前記乾燥用ガスの少なくとも一部に、セメント製造設備から排気される高温ガス、又は発電プラントから排気される高温ガスが含まれるものとしても構わない。すなわち、セメント製造設備や、発電プラント(例えばバイオマス発電プラント)の近傍に、貯蔵庫を配置することで、上記各設備から排出される熱を有効に活用することができる。
【0025】
また、前記乾燥用ガスの少なくとも一部に、前記ペレット状のバイオマス燃料を運搬する船舶から排気される高温ガスが含まれるものとしても構わない。この場合、貯蔵対象となるペレット状のバイオマス燃料は、船舶によって運搬されているペレット状のバイオマス燃料に対応する。
【0026】
前記工程(a)において、前記貯蔵庫内に貯蔵された前記ペレット状のバイオマス燃料を切返しながら、前記乾燥用ガスを通気させるものとしても構わない。これにより、貯蔵庫内に多量のペレット状のバイオマス燃料が積み上げられた場合においても、貯蔵庫の庫内床面近くでの局所的な蓄熱が抑制され、各バイオマス燃料に対して満遍なく乾燥用ガスを通気させることができる。
【0027】
前記工程(a)において、前記貯蔵庫の庫内床よりも下側の位置から上方に向かって前記乾燥用ガスを通気させるものとしても構わない。貯蔵庫内に多量のペレット状のバイオマス燃料が積み上げられた場合、水分は貯蔵庫の庫内床面の近傍のペレットに多く含まれやすい。上記方法によれば、庫内床面の近くに配置された、含水率の比較的高いバイオマス燃料に対して重点的に乾燥用ガスが吹き付けられるため、含水率を効率的に低下させることができる。
【0028】
また、本発明は、ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫であって、
前記バイオマス燃料が貯蔵される貯蔵空間の床を構成する庫内床と、
前記貯蔵空間の天井を構成する庫内天井と、
前記貯蔵空間の水平方向に係る周囲を取り囲む庫内壁と、
前記庫内床の下方に配置され、乾燥用ガスが通気可能に構成された配管と、
前記配管を通気する前記乾燥用ガスを、前記貯蔵空間に向かって上方に噴出させるための噴出口とを備えたことを特徴とする。
【0029】
上記構成の貯蔵庫によれば、貯蔵空間内に貯蔵されたペレット状のバイオマス燃料に対して、乾燥用ガスを通気させて含水率を低下させることができるため、安全性を保ちつつ、品質低下を生じさせず、且つハンドリング性状を悪化させない状態で、ペレット状のバイオマス燃料を貯蔵することができる。
【0030】
なお、前記貯蔵庫は、ペレット状のバイオマス燃料を運搬する船舶に設置されているものとすることができる。この場合、前記貯蔵庫は船舶の船倉に対応する。
【0031】
前記庫内天井は、外縁部の高さ位置が、前記外縁部よりも内側に位置する中央部の高さ位置よりも低い形状を示し、且つ、前記外縁部の先端が前記庫内壁よりも外側に位置しているものとしても構わない。これにより、庫内天井に付着した結露由来の水分を、貯蔵空間内に滴下することを抑制しながら、庫内天井を伝って貯蔵庫外へと排出させることができる。
【0032】
前記貯蔵庫は、前記庫内床に近い位置に配置された前記ペレット状のバイオマス燃料と、前記庫内床から離れた位置に配置された前記ペレット状のバイオマス燃料とを切返すための、切返し装置を備えるものとしても構わない。
【0033】
前記配管は、セメント製造設備から排気される高温ガスの通気口、又は発電プラントから排気される高温ガスの通気口と接続可能に構成されているものとしても構わない。なお、前記貯蔵庫が前記ペレット状のバイオマス燃料を運搬する船舶に設置されている場合においては、前記配管が、前記船舶から排気される高温ガスの通気口と接続可能に構成されているものとしても構わない。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ペレット状のバイオマス燃料を、安全性を保ちつつ、品質低下を生じさせず、且つハンドリング性状を悪化させない状態で貯蔵することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係るペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫を含む貯蔵システムの一例を模式的に示すブロック図である。
図2A】貯蔵庫の構造を模式的に示す正面図である。
図2B】貯蔵庫の構造を模式的に示す側面図である。
図3】本発明に係るペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫を含む貯蔵システムの一例を模式的に示す別のブロック図である。
図4】本発明に係るペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫を含む船舶の構造を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、適宜図面を参照して、本発明に係るペレット状のバイオマス燃料の貯蔵方法及び貯蔵庫の実施形態について、説明する。
【0037】
[構造]
図1は、本発明に係るバイオマス燃料の貯蔵方法を実施するための、バイオマス燃料の貯蔵システムの一例である。なお、図1において、実線の矢印はバイオマス燃料の流れを示し、破線の矢印はガスの流れを示している。
【0038】
バイオマス燃料の貯蔵システム1は、貯蔵庫10を備える。貯蔵庫10は、例えば船舶等の多量輸送手段から受け入れたペレット状のバイオマス燃料BFを貯蔵する。貯蔵庫10に貯蔵されたバイオマス燃料BFは、バイオマス発電プラント20に供給され、バイオマス発電プラント20内において発電用の燃料として供される。
【0039】
図1に示される例では、バイオマス発電プラント20から排気される高温ガスHGが通気する配管P3と、大気(冷却用ガス)CAが通気する配管P2とが連結されている。そして、配管P3内を通気する高温ガスHGと、配管P2内を通気する冷却用ガスCAとが混合されて得られる乾燥用ガスG1が、配管P1を通じて貯蔵庫10内に導かれる。バイオマス発電プラント20からは、常時100〜200℃の高温ガスHGが排気されている。このため、貯蔵庫10をバイオマス発電プラント20の近傍に配置させることで、バイオマス発電プラント20からの高温ガスHGを乾燥用ガスG1に有効に活用することができる。
【0040】
図1に示される例では、乾燥用ガスG1を貯蔵庫10側に導くための、ファン3が備えられている。図1では、ファン3は配管P1の途中に設けられている場合が図示されているが、貯蔵庫10内にファンが設けられていても構わないし、双方に設けられていても構わない。ファン3の回転数が制御されることで、配管P1から貯蔵庫10内に導かれる乾燥用ガスG1の流量が調整される。
【0041】
更に、図1には、配管P1内を通気する乾燥用ガスG1の流量を制御するための流量調整弁B1が設けられている。流量調整弁B1は、ファン3と同様に、配管P1から貯蔵庫10内に導かれる乾燥用ガスG1の流量を調整する目的で設けられている。
【0042】
図1に示される例では、配管P3内を通気する高温ガスHGの流量を制御するための流量調整弁B3と、配管P2内を通気する冷却用ガスCAの流量を制御するための流量調整弁B2とが設けられている。これらの流量調整弁(B2,B3)の開度が調整されることで、配管P1内を通気する乾燥用ガスG1の温度が調整される。
【0043】
なお、図1に示されるように、配管P1内を通気する乾燥用ガスG1の温度を測定する温度計T1が備えられているものとしてもよい。この場合に、乾燥用ガスG1として設定したい温度(目標値)を予め登録しておき、温度計T1による計測値が登録された前記目標値に一致するように、流量調整弁(B2,B3)の開度が自動的に制御されるものとしても構わない。温度計T1としては、例えば熱電対が用いられる。
【0044】
乾燥用ガスG1の温度(すなわち、上記目標値)は、170℃以下であることが好ましく、150℃以下であるのがより好ましく、120℃以下であるのが更により好ましい。なお、乾燥用ガスG1の温度の下限値は15℃(常温)であり、これは冷却用ガスCAの温度に対応する。
【0045】
図2A及び図2Bは、貯蔵庫10の構造を模式的に示す図面であり、図2Aが貯蔵庫10の正面図に対応し、図2Bが貯蔵庫10の側面図に対応する。
【0046】
図2A及び図2Bに示すように、貯蔵庫10は、ペレット状のバイオマス燃料BFが貯蔵される貯蔵空間10aの床を構成する庫内床14と、貯蔵空間10aの天井を構成する庫内天井11と、貯蔵空間10aの水平方向に係る周囲を取り囲む庫内壁12を備える。貯蔵空間10aは、庫内天井11、庫内壁12及び庫内床14によって形成された密閉性の高い空間であり、貯蔵庫10外からの雨水の流入が抑制されている。また、庫内壁12及び庫内床14は、貯蔵空間10a内に多量のバイオマス燃料BFが積み置きされた場合においても当該バイオマス燃料BFの重量によって変形しない耐力を有している。
【0047】
庫内床14の下方(下面)には、図1内の配管P1を介して通気された乾燥用ガスG1が通気可能に構成された配管13が配置されている。配管13の所定の箇所には、乾燥用ガスG1を貯蔵空間10aに向かって上方に噴出させるための噴出口13aが設けられている。例えば、複数本の配管13が庫内床14の面のほぼ全面にわたって、櫛形状又は格子形状に配設されている。
【0048】
一例として、庫内床14は1〜3%の水勾配と排水溝(不図示)を備えている。これにより、庫内床14に付着した水滴などに伴う水分を、貯蔵庫10外へと排出させることができる。
【0049】
庫内天井11は、外縁部11aの高さ位置が、外縁部11aよりも内側に位置する中央部11bの高さ位置よりも低い形状(例えばアーチ形状)を示す。また、庫内天井11の外縁部11aの先端部が、庫内壁12よりも外側に位置している。かかる構成により、庫内天井11の内側に付着した水分を、庫内天井11を伝って貯蔵庫10外へと導くことができ、貯蔵空間10a内に貯蔵されたバイオマス燃料BFに対して庫内天井11から水分が滴下することが抑制される。
【0050】
図2Bに示すように、貯蔵庫10は、切返し装置15を備えている。切返し装置15は、貯蔵空間10a内に貯蔵されたペレット状のバイオマス燃料BFの切返しを行うことができる。これにより、庫内床14に近い位置に配置されたバイオマス燃料BFと、庫内床14から離れた位置に配置されたバイオマス燃料BFとが撹拌される。切返し装置15は、バイオマス燃料BFの積み付けパイルの最下部から切返しが可能な装置が好ましく、例えば、移動式のスクープ式切返し装置が好適である。また、ホイールローダーなどの重機を使用してもよい。
【0051】
なお、図3に示すように、セメント製造設備30から排気される高温ガスHGが通気する配管P4も、大気CAが通気する配管P2と連結されているものとしても構わない。この場合、高温ガスHGとして、バイオマス発電プラント20、及び/又はセメント製造設備30から排気されたガスが利用される。高温ガスHGとして用いることが可能なセメント製造設備30からの高温ガスとしては、セメントキルン、クリンカクーラ、廃熱ボイラ、塩素バイパス系からの高温ガス等を用いることができ、温度、水分含有量及び酸素含有率からは、セメントキルン、クリンカクーラ及び塩素バイパス系の間接冷却器からの高温ガスを用いるのが好ましい。
【0052】
[貯蔵方法]
一実施形態において、貯蔵庫10に貯蔵されたバイオマス燃料BFの含水率が測定される(工程(b))。
【0053】
例えば、貯蔵庫10内に貯蔵されたバイオマス燃料BFの中から、一部のバイオマス燃料BFが抽出され、この抽出されたバイオマス燃料BFの含水率が測定される。ここで、庫内床14や庫内壁12の近くに位置するバイオマス燃料BFは、庫内床14や庫内壁12から離れた場所に位置するバイオマス燃料BFと比べて水分を多く含むことが予想される。このため、庫内床14に近い位置に配置された複数のバイオマス燃料BF、及び庫内壁12に近い位置に配置された複数のバイオマス燃料BFがそれぞれ抽出され、これらの含水率が個別に測定される。
【0054】
なお、貯蔵庫10内に貯蔵する段階において、一部のバイオマス燃料BFを抽出し、当該抽出されたバイオマス燃料BFの含水率を測定するものとしても構わない。この場合、JIS K 0060「産業廃棄物の採取方法」に記載されるように、コンベヤやフィーダの落ち口に、落下するペレットの全流幅から採取できるサンプラを使用するのが好ましい。この場合においても、少なくとも一つのバイオマス燃料BFの含水率が所定の基準値を超える場合に、乾燥用ガスG1を配管13内に通気させるものとすることができる。
【0055】
含水率の測定方法としては、例えば、JIS Z 7302-3「廃棄物固形化燃料−第3部:水分試験方法」記載の方法を使用することができる。具体的には、乾燥室温度107±2℃で1時間加熱した場合の加熱前後の質量を用いればよい。更に、熱天秤分析(TG)等の機器分析を用いることもできる。
【0056】
測定された各バイオマス燃料BFの含水率が、所定の基準値を超える場合には、例えばファン3を駆動させると共に流量調整弁B1を開いて、乾燥用ガスG1を配管13内に通気させ、貯蔵空間10aに向かって噴出させる(工程(a))。ここで、上記基準値は、15質量%より大きく、40質量%以下の範囲内の値として設定されている。
【0057】
この工程(a)により、貯蔵空間10a内に貯蔵されたバイオマス燃料BFに対して、乾燥用ガスG1が吹き付けられ、乾燥処理が施される。これにより、バイオマス燃料BFの含水率を低下させることができる。なお、バイオマス燃料BFの含水率が40質量%を超える前段階で、乾燥用ガスG1がバイオマス燃料BFに吹き付けられるため、ハンドリング性状の低下を抑制しながら、バイオマス燃料BFを安定的に貯蔵することができる。
【0058】
なお、この工程(a)の実行時に、切返し装置15を駆動させるものとするのが好ましい。このとき、貯蔵空間10a内に貯蔵されたバイオマス燃料BFの全量に対して切返し処理を行うのがより好ましい。これにより、庫内床14の近くに位置するバイオマス燃料BFと、庫内床14から離れた場所に位置するバイオマス燃料BFとが撹拌されるため、貯蔵空間10a内に貯蔵されたバイオマス燃料BFの全体にわたって乾燥用ガスG1を行き渡らせることができる。
【0059】
[実施例]
4m×8m×2mの貯蔵空間10aを含む模擬的な貯蔵庫10を準備した。
【0060】
次に、直径10mm、長さ30mmの円柱形状を示すペレット状のバイオマス燃料BFを、全体で10m3の量だけ準備した。このバイオマス燃料BFは、含水率が12±3質量%、かさ密度が0.6±0.2(kg/L)であった。
【0061】
次に、このペレット状のバイオマス燃料BFに対し、含水率が33±2質量%となるように水を噴霧して含水させ、貯蔵空間10a内に配置した。このとき、庫内床14の全面にわたってバイオマス燃料BFが敷き詰められ、バイオマス燃料BFの積み上げ高さは、平均で1mであった。
【0062】
次に、庫内床14の下方に配設された配管13から乾燥用ガスG1を上方に噴出させた。このとき、90℃以上110℃以下の乾燥用ガスG1を用いた場合、バイオマス燃料BFの1m3あたり4m3/分以上、6m3/分以下の割合で通気すると、24時間の処理で含水率を15質量%まで乾燥させることができた。また、15℃以上25℃以下の乾燥用ガスG1を用いた場合は、同様の通気条件において、70時間の処理で含水率を15質量%まで乾燥させることができた。なお、乾燥用ガスG1の通気中において、切返し装置15としての小型のホイールローダを適宜運転させ、貯蔵空間10a内に積み上げられたペレット状のバイオマス燃料BFの切返し動作を行った。
【0063】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0064】
〈1〉上記の実施形態では、乾燥用ガスG1を生成するための高温ガスHGの供給源として、バイオマス発電プラント20又はセメント製造設備30を挙げて説明したが、これはあくまで一例である。本発明において高温ガスHGの供給源は任意の設備(装置)が利用可能である。例えば、バイオマス発電プラント20以外の発電プラント(例えば火力発電プラント)から排気される高温ガスや、種々の製造工場から排気される高温ガスを利用することも可能である。発電プラントから排気される高温ガスを利用する場合には、触媒による脱硝処理が施された後の、煙突に導かれる前段の高温ガスの一部を利用するのが好適である。
【0065】
〈2〉上記の実施形態において、乾燥用ガスG1は、貯蔵庫10の庫内床14側から、上方(庫内天井11側)に向けて噴出されるものとしたが、この態様は一例である。例えば、庫内壁12側から、内側(貯蔵空間10a)に向けて乾燥用ガスG1が噴出されるものとしても構わないし、庫内天井11側から下方(庫内床14側)に向けて乾燥用ガスG1が噴出されるものとしても構わない。更には、貯蔵空間10a内に堆積したペレット状のバイオマス燃料BFのパイルそのものに通気管を挿入し、乾燥用ガスG1を噴出させるものとしても構わない。
【0066】
〈3〉上記の実施形態において、貯蔵庫10は、切返し装置15を備えているものとして説明したが、貯蔵庫10の大きさ如何によっては、切返し装置15を備えない構成とすることも可能である。また、貯蔵庫10の形状は、図2A及び図2Bに図示された形状には限定されない。
【0067】
〈4〉図4に示すように、貯蔵庫10は、ペレット状のバイオマス燃料BFを運搬する船舶40内に配置されていても構わない。この場合、貯蔵庫10は、船舶40に設けられた船倉45によって構成される。かかる構成によれば、安全性を保ちつつ、品質低下を生じさせず、且つハンドリング性状を悪化させない状態で、ペレット状のバイオマス燃料BFを、目的の場所まで運搬することができる。
【0068】
図4に示す船舶40は、プロペラ41と、プロペラ41の駆動源となるエンジン42とを備えている。エンジン42から排気される高温ガスは、煙突43より排出される。図4に示すように、エンジン42から排気される高温ガスの一部を配管13に導き、配管13から貯蔵庫10(船倉45)内に貯蔵されたペレット状のバイオマス燃料BFに対して、乾燥用ガスG1として供給するものとすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 : ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵システム
3 : ファン
10 : 貯蔵庫
10a : 貯蔵空間
11 : 庫内天井
11a : 庫内天井の外縁部
11b : 庫内天井の中央部
12 : 庫内壁
13 : 配管
13a : 噴出口
14 : 庫内床
15 : 切返し装置
20 : バイオマス発電プラント
30 : セメント製造設備
40 : 船舶
41 : プロペラ
42 : エンジン
43 : 煙突
45 : 船倉
B1,B2,B3 : 流量調整弁
BF : ペレット状のバイオマス燃料
CA : 冷却用ガス
G1 : 乾燥用ガス
HG : 高温ガス
P1,P2,P3,P4 : 配管
T1 : 温度計
【要約】
【課題】ペレット状のバイオマス燃料を、安全性を保ちつつ、品質低下を生じさせず、且つハンドリング性状を悪化させない状態で貯蔵するためのバイオマス燃料の貯蔵方法を提供する。
【解決手段】ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵方法であって、バイオマス燃料を貯蔵する貯蔵庫内に乾燥用ガスを通気させて、バイオマス燃料を乾燥させる工程(a)を有する。
【選択図】 図2A
図1
図2A
図2B
図3
図4