【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、粉砕、脱水、乾燥処理された水洗浄品を圧縮成型してペレット化したバイオマス燃料については、輸送工程や貯蔵工程での管理方法の要点がこれまで不明であった。本発明者は、8週間にわたる長期試験の結果、以下の各点を明らかにした。
【0009】
(1)温度30℃以下、相対湿度70%以下の貯蔵環境であれば、バイオマス燃料に対して、ペレットの機械的強度や微生物の増殖に係る問題が生じない。
(2)貯蔵環境がある一定以上の温度に達した場合には、バイオマス燃料が蓄熱して熱暴走が生じるため、最悪の場合には自然発火する可能性がある。
(3)バイオマス燃料が水に濡れた場合には、発熱量の低下と共に、当該バイオマス燃料ペレットが膨潤して解れ易くなり、ハンドリング性状が悪化してしまう。例えば、ペレットが短繊維となったり、粉状に分解される場合がある。
【0010】
本発明は上記の問題点を解決して、パーム油産業から生じるEFB、OPT及びOPFを水洗、脱水、乾燥後に圧縮成型して得られたペレット状のバイオマス燃料を、安全性を保ちつつ、品質低下を生じさせず、且つハンドリング性状を悪化させない状態で貯蔵するためのバイオマス燃料の貯蔵方法、及び貯蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵方法であって、
前記ペレット状のバイオマス燃料を貯蔵する貯蔵庫内に乾燥用ガスを通気させて、前記ペレット状のバイオマス燃料を乾燥させる工程(a)を有することを特徴とする。
【0012】
本発明で貯蔵対象とされる「ペレット状のバイオマス燃料」は、加工時の圧縮成型工程を経て製造された、製造直後のバイオマス燃料ペレットが、一般社団法人日本木質ペレット協会規格「木質ペレット品質規格」記載の機械的耐久性(DU)では96.5%以上、又は、JIS Z 8841「造粒物−強度試験方法」記載の落下強度では97%以上の、機械的強度を有していたものを指すものとして構わない。更に、この「ペレット状のバイオマス燃料」は、直径3〜25mm、長さ5〜150mmの、円柱状又は実質的に円柱状に成型されたものを指すものとして構わない。
【0013】
乾燥工程(a)が実行されることで、貯蔵されているペレット状のバイオマス燃料の含水率が低い値に保たれるため、膨潤によって崩壊する現象を未然に防止できる。更に、乾燥工程(a)が実行されることで、ペレット状のバイオマス燃料が乾燥されて含水率が減少することによって、含水によって低下した発熱量が回復すると共に機械的強度も回復し、ハンドリング性状が回復する。
【0014】
なお、乾燥工程(a)で回復するバイオマス燃料の発熱量とは、例えば、JIS Z 7302-2「廃棄物固形化燃料−第2部:発熱量試験方法」記載の真発熱量(低位発熱量)をいう。
【0015】
また、乾燥工程(a)で回復するバイオマス燃料の機械的強度とは、例えば、一般社団法人日本木質ペレット協会規格「木質ペレット品質規格」記載の機械的耐久性(DU)、又は、JIS Z 8841「造粒物−強度試験方法」記載の落下強度等で測定される、バイオマス燃料ペレットが有する衝撃力に対する耐久性をいう。
【0016】
好ましいハンドリング性状を有するためにペレット状のバイオマス燃料が有する機械的強度は、前記機械的耐久性(DU)では96.5%以上、好ましくは97.5%以上、特に好ましくは98%以上であり、前記落下強度では97%以上、好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0017】
前記貯蔵方法は、更に、前記ペレット状のバイオマス燃料の含水率を測定する工程(b)を有し、
前記工程(a)は、前記工程(b)において測定された前記ペレット状のバイオマス燃料の含水率が、15質量%より大きく、40質量%以下の基準値を超えた場合に実行されるものとしても構わない。
【0018】
ペレット状のバイオマス燃料の含水率が40質量%を超えると、膨潤による崩壊現象が生じてしまい、乾燥処理を実行してもペレットが形状を維持することが難しくなる。このため、かかる状態のバイオマス燃料を乾燥して含水率を低減させても、粉末又は短繊維状に分解したバイオマス燃料が得られてしまい、ハンドリング性状を回復させることは困難な場合がある。よって、ペレット状のバイオマス燃料の含水率が、40質量%以下である「基準値」を超えた場合に、乾燥工程(a)を実行するのが好ましい。
【0019】
他方、ペレット状のバイオマス燃料の含水率が15質量%以下であると、場合によっては膨潤によってペレットの表面に少量のささくれ部が認められることもあるが、搬送などで受ける機械的衝撃には十分に耐えて自形を保持することができる機械的強度を有しており、ハンドリング性状に問題は生じない。このため、ペレット状のバイオマス燃料の含水率が15質量%以下である場合には、必ずしも乾燥工程(a)を実行する必要がない。すなわち、ペレット状のバイオマス燃料の含水率が、15質量%より大きく、40質量%以下である「基準値」を超えた時点で、乾燥工程(a)を実行するものとすることができる。
【0020】
なお、上記の「基準値」は、15質量%より大きく、40質量%以下の範囲内において、適宜変更することができる。
【0021】
上記測定工程(b)でのペレット状のバイオマス燃料の含水率の測定には、例えば、JIS Z 7302-3「廃棄物固形化燃料−第3部:水分試験方法」記載の方法を使用することができる。具体的には、乾燥室温度107±2℃で1時間加熱した場合の加熱前後の質量を用いればよい。更に、熱天秤分析(TG)等の機器分析を用いることもできる。
【0022】
前記乾燥用ガスの温度は、175℃以下とすることができる。前記乾燥用ガスの温度が175℃を超える場合、バイオマス燃料が蓄熱して熱暴走し、発火するおそれがある。従って、前記乾燥用ガスの温度は、好ましくは170℃以下、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは120℃以下である。
【0023】
なお、前記乾燥用ガスの温度は、常温(15℃)以上とすることができる。ただし、乾燥用ガスの温度が高いほど、バイオマス燃料の含水率を低下させるのに要する時間を短縮化できるため、常温より高い温度であるのが好ましい。更に、前記乾燥用ガスの温度を十分に高い温度(例えば80℃以上)とすることで、バイオマス燃料中に微生物類が存在していても、それらを死滅させることができるという効果も奏される。
【0024】
前記乾燥用ガスの少なくとも一部に、セメント製造設備から排気される高温ガス、又は発電プラントから排気される高温ガスが含まれるものとしても構わない。すなわち、セメント製造設備や、発電プラント(例えばバイオマス発電プラント)の近傍に、貯蔵庫を配置することで、上記各設備から排出される熱を有効に活用することができる。
【0025】
また、前記乾燥用ガスの少なくとも一部に、前記ペレット状のバイオマス燃料を運搬する船舶から排気される高温ガスが含まれるものとしても構わない。この場合、貯蔵対象となるペレット状のバイオマス燃料は、船舶によって運搬されているペレット状のバイオマス燃料に対応する。
【0026】
前記工程(a)において、前記貯蔵庫内に貯蔵された前記ペレット状のバイオマス燃料を切返しながら、前記乾燥用ガスを通気させるものとしても構わない。これにより、貯蔵庫内に多量のペレット状のバイオマス燃料が積み上げられた場合においても、貯蔵庫の庫内床面近くでの局所的な蓄熱が抑制され、各バイオマス燃料に対して満遍なく乾燥用ガスを通気させることができる。
【0027】
前記工程(a)において、前記貯蔵庫の庫内床よりも下側の位置から上方に向かって前記乾燥用ガスを通気させるものとしても構わない。貯蔵庫内に多量のペレット状のバイオマス燃料が積み上げられた場合、水分は貯蔵庫の庫内床面の近傍のペレットに多く含まれやすい。上記方法によれば、庫内床面の近くに配置された、含水率の比較的高いバイオマス燃料に対して重点的に乾燥用ガスが吹き付けられるため、含水率を効率的に低下させることができる。
【0028】
また、本発明は、ペレット状のバイオマス燃料の貯蔵庫であって、
前記バイオマス燃料が貯蔵される貯蔵空間の床を構成する庫内床と、
前記貯蔵空間の天井を構成する庫内天井と、
前記貯蔵空間の水平方向に係る周囲を取り囲む庫内壁と、
前記庫内床の下方に配置され、乾燥用ガスが通気可能に構成された配管と、
前記配管を通気する前記乾燥用ガスを、前記貯蔵空間に向かって上方に噴出させるための噴出口とを備えたことを特徴とする。
【0029】
上記構成の貯蔵庫によれば、貯蔵空間内に貯蔵されたペレット状のバイオマス燃料に対して、乾燥用ガスを通気させて含水率を低下させることができるため、安全性を保ちつつ、品質低下を生じさせず、且つハンドリング性状を悪化させない状態で、ペレット状のバイオマス燃料を貯蔵することができる。
【0030】
なお、前記貯蔵庫は、ペレット状のバイオマス燃料を運搬する船舶に設置されているものとすることができる。この場合、前記貯蔵庫は船舶の船倉に対応する。
【0031】
前記庫内天井は、外縁部の高さ位置が、前記外縁部よりも内側に位置する中央部の高さ位置よりも低い形状を示し、且つ、前記外縁部の先端が前記庫内壁よりも外側に位置しているものとしても構わない。これにより、庫内天井に付着した結露由来の水分を、貯蔵空間内に滴下することを抑制しながら、庫内天井を伝って貯蔵庫外へと排出させることができる。
【0032】
前記貯蔵庫は、前記庫内床に近い位置に配置された前記ペレット状のバイオマス燃料と、前記庫内床から離れた位置に配置された前記ペレット状のバイオマス燃料とを切返すための、切返し装置を備えるものとしても構わない。
【0033】
前記配管は、セメント製造設備から排気される高温ガスの通気口、又は発電プラントから排気される高温ガスの通気口と接続可能に構成されているものとしても構わない。なお、前記貯蔵庫が前記ペレット状のバイオマス燃料を運搬する船舶に設置されている場合においては、前記配管が、前記船舶から排気される高温ガスの通気口と接続可能に構成されているものとしても構わない。