(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記引張機構は、テンションロッドと、前記テンションロッドを上下方向に延びる軸部周りに回転可能に支持する軸受部と、前記テンションロッドを前記軸部周りに回転させるための回転機構とを有し、
前記接続部材の上端部には、外周面に第2雄ネジ部が形成された凸部が設けられており、
前記テンションロッドの下端部には、前記第2雄ネジ部に螺合する第2雌ネジ部を内周面に有する中空部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の引張装置。
前記凸部は軸径が前記ボルトと略同じであり、前記第2雄ネジ部及び前記第2雌ネジ部には摩擦トルクを低減する摩擦トルク低減材が塗布されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の引張装置。
前記ボルトは六角ボルトであり、前記ボルトの頭部外周面における曲げ形状部に前記第1雄ネジ部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の引張装置。
前記ボルトの頭部の二面幅、前記第1雄ネジ部における雄ネジの外径及び前記第1雄ネジ部における雄ネジの谷の径をそれぞれ、S、D1及びD2としたときに、以下の条件式(1)及び/又は(2)を満足することを特徴とする請求項6に記載の引張装置。
D1>S×1.03・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
D2<S×1.10・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
前記ボルトは六角穴付きボルトであり、前記ボルトの頭部外周面に前記第1雄ネジ部が連続的に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の引張装置。
前記ボルトは四角ボルトであり、前記ボルトの頭部外周面における曲げ形状部に前記第1雄ネジ部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の引張装置。
前記ボルトの頭部の二面幅、前記第1雄ネジ部における雄ネジの外径及び前記第1雄ネジ部における雄ネジの谷の径をそれぞれ、S、D1及びD2としたときに、以下の条件式(3)及び/又は(4)を満足することを特徴とする請求項9に記載の引張装置。
D1>S×1.03・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
D2<S×1.32・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された締付け力検出方法では、ナット上面から突出するボルトの雄ネジ部を引っ張ることを前提としており、ボルトの頭部側から軸力検出を行うことについては考慮されていない。
【0006】
ここで、ボルト頭部と被締結体との間に別の補助部品を介在させ、この補助部品を引張ることにより、ボルト頭部側から軸力検出を行う方法が考えられる。補助部品は、ボルトのみを締結した場合と同様の接触状態が得られることを指向して設計されるが、この設計には限界があり、締結性能(締結トルク等)の変化や、緩み特性の変化を招くおそれがある。また、補助部品が必要になると、部品点数の増加によりコストが増大して、装置の重量化を招く。
【0007】
そこで、本願発明は、部品点数の増加を抑制しながら、ボルト頭部側からボルトを引っ張ることができる引張装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願発明は(1)被締結体に締結されたボルトを上方に引っ張る引張装置であって、前記ボルトの頭部外周面には、第1雄ネジ部が形成されており、前記第1雄ネジ部が螺合する第1雌ネジ部を有する接続部材と、前記第1雄ネジ部を前記第1雌ネジ部に螺合させた状態で、前記接続部材を介して前記ボルトを引っ張る引張機構と、前記接続部材の外周周りに配置され、前記引張機構による引張時に前記被締結体から作用する反力を受けるテンション受部と、を有することを特徴とする。
【0009】
(2)前記引張機構は、テンションロッドと、前記テンションロッドを上下方向に延びる軸部周りに回転可能に支持する軸受部と、前記テンションロッドを前記軸部周りに回転させるための回転機構とを有し、前記接続部材の上端部には、外周面に第2雄ネジ部が形成された凸部が設けられており、前記テンションロッドの下端部には、前記第2雄ネジ部に螺合する第2雌ネジ部を内周面に有する中空部が形成されていることを特徴とする上記(1)に記載の引張装置。
【0010】
(3)前記テンション受部は、上下方向において前記軸受部及び前記被締結体に挟まれていることを特徴とする上記(2)に記載の引張装置。
【0011】
(4)前記凸部は軸径が前記ボルトと略同じであり、前記第2雄ネジ部及び前記第2雌ネジ部には摩擦トルクを低減する摩擦トルク低減材が塗布されていることを特徴とする上記
(2)又は(3)に記載の引張装置。
以上
【0012】
(5)前記接続部材は、前記ボルトよりも引張強度が高いことを特徴とする上記(1)乃至(4)のちいずれか一つに記載の引張装置。
【0013】
(6)前記ボルトは六角ボルトであり、前記ボルトの頭部外周面における曲げ形状部に前記第1雄ネジ部が形成されていることを特徴とする上記(1)乃至(5)のうちいずれか一つに記載の引張装置。
【0014】
(7)前記ボルトの頭部の二面幅、前記第1雄ネジ部における雄ネジの外径及び前記第1雄ネジ部における雄ネジの谷の径をそれぞれ、S、D1及びD2としたときに、以下の条件式(1)及び/又は(2)を満足することを特徴とする上記(6)に記載の引張装置。
D1>S×1.03・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
D2<S×1.10・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0015】
(8)前記ボルトは六角穴付きボルトであり、前記ボルトの頭部外周面に前記第1雄ネジ部が連続的に形成されていることを特徴とする上記(1)乃至(5)のうちいずれか一つに記載の引張装置。
【0016】
(9)前記ボルトは四角ボルトであり、前記ボルトの頭部外周面における曲げ形状部に前記第1雄ネジ部が形成されていることを特徴とする上記(1)乃至(5)のうちいずれか一つに記載の引張装置。
【0017】
(10)前記ボルトの頭部の二面幅、前記第1雄ネジ部における雄ネジの外径及び前記第1雄ネジ部における雄ネジの谷の径をそれぞれ、S、D1及びD2としたときに、以下の条件式(3)及び/又は(4)を満足することを特徴とする上記(9)に記載の引張装置。
D1>S×1.03・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
D2<S×1.32・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
【0018】
(11)前記ボルトは、頭部本体及びフランジ部からなるボルト頭部を備えたフランジボルトであり、前記第1雄ネジ部は、前記頭部本体及び前記フランジ部の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする上記(1)乃至(5)のうちいずれか一つに記載の引張装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ボルトの頭部側面に形成された雄ネジ部に引張装置の雌ネジ部を螺合させて、ボルトを引っ張ることができる。これにより、部品点数の増加を抑制しながら、ボルト頭部側からボルトを引っ張ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態の引張装置は、被締結体をボルト締結体で締結するとともに、被締結体の上面を抑えながらボルトを引っ張る装置であり、ボルトの軸力(言い換えると、ボルトの締結力)検出や、ボルトが締結される被締結体のバネ定数の検出等に用いられる。軸力検出の基本的な考え方は、特許第4028254号に記載された内容と同様である。以下の実施形態では軸力検出を例に挙げ、引張装置の構成及び動作について説明する。
【0023】
図1は本実施形態の引張装置の概略図であり、ボルトを引張る動作を開始した直後の状態を示している。なお、引張装置に含まれる複数の部材を互いに異なる種類のハッチングで表わすことにより、部材間の境界を明確にしている。
図2はボルトの斜視図である。引張装置1は、接続部材2と、引張機構3と、テンション受部4と、ハンドル5とを含む。なお、一点鎖線で示すXは、上下方向に延びる引張装置1の回転軸を示している。
【0024】
接続部材2は、円柱部21及び円柱部21の上面に形成された凸部22を含む。円柱部21の下端部には、上下方向に延びる接続部材中空部21aが形成されている。接続部材中空部21aの周面には、回転軸X周りに延びる第1雌ネジ部21a1が形成されている。凸部22は、円柱部21よりも径が小さい円柱形状に形成されており、その外周面には回転軸X周りに延びる第2雄ネジ部22aが形成されている。接続部材2には、ボルト10よりも引張強度が高い材料を用いることができる。これにより、軸力検出の際に、接続部材2が塑性変形することを防止できる。
【0025】
引張機構3は、テンションロッド31と、軸受部32と、角ドライブ33(回転機構に相当する)と、レンチ34(回転機構に相当する)とを含む。テンションロッド31は、円柱状の小径ロッド部31aと円柱状の大径ロッド部31bとからなり、小径ロッド部31aの上端部及び大径ロッド部31bの下端部が互いに連接している。これらの小径ロッド部31a及び大径ロッド部31bは、一体的に形成されている。
【0026】
小径ロッド部31aの下端部には、テンションロッド中空部311が形成されており、このテンションロッド中空部311の内周面には、回転軸X周りに延びる第2雌ネジ部311aが形成されている。大径ロッド部31bの上端部には、取り付け開口部312が形成されている。
【0027】
軸受部32はスラスト軸受けであり、テンションロッド31の小径ロッド部31aを回転可能に支持している。軸受部32の上端面はテンションロッド31の大径ロッド部31bに接触しており、軸受部32の下端面はテンション受部4の上端面に接触している。つまり、軸受部32は、上下方向において、大径ロッド部31b及びテンション受部4により挟まれている。
【0028】
角ドライブ33は、大径ロッド部31bの取り付け開口部312に着脱可能に装着されており、角ドライブ33を回転させることにより、テンションロッド31を回転軸X周りに回転させることができる。角ドライブ33は、ハンドル5及びレンチ34を用いて回転させることができる。本実施形態の構成では、レンチ34を用いてテンションロッド31を回転軸X周りに1回転させた時に、テンションロッド31の第2雌ネジ部311aのネジピッチ分だけ接続部材2が上動するように設計されている。なお、本実施形態では、角ドライブ33、ハンドル5及びレンチ34を用いてテンションロッド31を回転させたが、本発明はこれに限るものではなく、テンションロッド31を回転させる動力を発生させることが可能な他の駆動手段を用いることもできる。
【0029】
レンチ34は、水平方向に長尺に形成されており、同一の力で回転させた時に、ハンドル5よりも大きなトルクを得ることができる。レンチ34には、図示しない角度センサ(例えば、ジャイロセンサ)が設けられている。角度センサによって、テンションロッド31の回転量を計測することができる。ただし、レンチ34ではなく、テンションロッド31に直接角度センサを取り付けてもよい。
【0030】
テンション受部4には、軸力を検出するための図示しない軸力検出部が設けられている。軸力検出部には、例えば歪ゲージを用いることができる。歪ゲージは、力が加わると変形し、その変形量に応じた電気信号を出力する。テンション受部4の下端部には、上下方向に延びるテンション中空部41が形成されている。テンション中空部41の内部には、接続部材2が収容されており、接続部材2の円柱部21はテンション中空部41の内周面に沿って配置されている。つまり、テンション受部4は、接続部材2を包囲するように配設されている。
【0031】
ここで、引張機構3の構成は上述の構成に限るものではなく、接続部材2及びボルト10を回転させずに上動させることができれば、他の構成であってもよい。例えば、円柱部21の上面に内周面に雌ネジを有する凹部を形成し、テンションロッド31の下端部(つまり、小径ロッド部31aの下端部)に外周面に雄ネジが形成された凸部を形成するとともに、この凸部を前記の雌ネジに螺合させることにより、接続部材2及びボルト10を引っ張る構成であってもよい。また、テンションロッド31による回転動作ではなく、油圧による引張力と上下の変位量とを測定することにより、軸力を検出してもよい。
【0032】
次に、ボルト及び被締結体について詳細に説明する。ボルト10は、六角ボルトであり、ボルト軸部11及びボルト頭部12から構成されている。ボルト軸部11には雄ネジが形成されている。被締結体Hは、上下方向において重ね合わされた被締結体H1及びH2からなり、これらの被締結体H1及びH2には夫々ボルト孔H1a及びH2aが形成されている。ボルト孔H2aの周面には、ボルト軸部11の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部が形成されている。ボルト孔H1aに挿入されたボルト10がボルト穴H2aと螺合することによって、ボルト10が被締結体Hに締結される。
【0033】
なお、ボルト孔H2aに雌ねじ部を形成せずに、ボルト10をボルト孔H1a,H2aに挿入し、被締結体H(H2)の端面から下方に突出したボルト軸部11に不図示のナットを螺合させることにより、ボルト10を被締結体Hに締結してもよい。
【0034】
ここで、
図2に図示するように、ボルト頭部12の側面には第1雄ネジ部12aが周方向に間欠的に形成されている。すなわち、個々の第1雄ネジ部12aは、ボルト頭部12の側面における曲げ形状部に形成されている。
【0035】
ここで、ボルト頭部12の二面幅をS、ボルト頭部12の第1雄ネジ部12aにおける「雄ネジの外径」をD1、ボルト頭部12の第1雄ネジ部12aにおける「雄ネジの谷の径」をD2としたときに、以下の条件式(1)及び/又は(2)を満足することが好ましい。
D1>S×1.03・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
D2<S×1.10・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0036】
条件式(1)を満足することにより、被締結体Hにボルト10を締結する際にボルト頭部12に対する締結工具の引掛りをよくすることができる。条件式(2)を満足することにより、ボルト10を接続部材2で引っ張る際に接続部材2の第1雌ネジ部21a1に対する第1雄ネジ部12aの引掛りをよくすることができる。
【0037】
ここで、ボルト10の被締結体Hに対する摩擦トルクは、接続部材2のテンションロッド31に対する摩擦トルクよりも大きく設定されている。つまり、締結状態にあるボルト軸部11の雄ネジ部とボルト孔H2aの雌ネジ部との摩擦トルクは、螺合状態にある凸部22の第2雄ネジ部22aとテンションロッド31の第2雌ネジ部311aとの摩擦トルクよりも大きい。これにより、軸力検出を行う際に、ボルト10が回転することを防止できる。
【0038】
上述の摩擦トルクの大小関係を実現するために、本実施形態では、ボルト軸部11及び凸部22の径寸法を互いに略同じに設定するとともに、潤滑剤(摩擦トルク低減材に相当する)を塗布することによりテンションロッド31の第2雌ネジ部311aに対する凸部22の摩擦トルクを低減している。ここで、別の方法として、凸部22の径をボルト軸部11の径よりも小さくすることにより、摩擦トルクを低減する方法も考えられる。しかしながら、凸部22の径が小さくなると、引張時に応力が増大して、凸部22が破損するおそれがある。そこで、本実施形態では、ボルト軸部11及び凸部22の径寸法を互いに略同じに設定するとともに、潤滑剤を用いて凸部22とテンションロッド31との摩擦トルクを低減することにより、上述の摩擦トルクの大小関係を実現している。
【0039】
次に、軸力検出時における引張装置1の動作について説明する。初期状態において、ボルト10は被締結体Hに締結されているものとする。また、引張機構3、テンション受部4及びハンドル5は、予め組み立てられてユニット化されているものとする。
【0040】
最初に、ボルト頭部12の第1雄ネジ部12aを接続部材2の第1雌ネジ部21a1に螺合させて、接続部材2及びボルト10を連結する。すなわち、ボルト頭部12の上面が接続部材中空部21aの天面に当接する位置まで螺進させ、接続部材2及びボルト10を互いに螺合させる。
【0041】
この時、接続部材2の下端部と被締結体H1との間には、微小なクリアランスが形成されている。なお、接続部材2の下端部が被締結体H1に圧接した状態で軸力検出を行うと、検出誤差が大きくなる。すなわち、接続部材2の下端部と被締結体H1との間に微小なクリアランスを形成した状態で軸力検出を行うことにより、検出誤差を少なくすることができる。
【0042】
次に、接続部材2の凸部22の先端にテンションロッド中空部311の下端部を位置決めする。この時、テンション受部4は被締結体H1の上方に位置している(言い換えると、テンション受部4及び被締結体H1は互いに非接触の状態である)。続いて、手動によりハンドル5を回転軸X周りに回転させ、第2雌ネジ部311a及び第2雄ネジ部22aを螺合させる。ハンドル5をさらに回転させると、テンションロッド31が軸受部32及びテンション受部4とともに下方に螺進して、テンション受部4が被締結体H1に着座する。
【0043】
図1は、テンション受部4が被締結体H1に当接した直後の状態を示しており、テンションロッド31の下端部と円柱部21の上端部との間には、クリアランスS1が形成されている。また、凸部22の先端とテンションロッド中空部311の上端部との間には、クリアランスS1よりも大きいクリアランスS2が形成されている。
【0044】
テンション受部4が被締結体H1に着座すると、ハンドル5による手動操作ではトルクが小さいため、テンションロッド31をそれ以上回転させることができない。そこで、レンチ34による手動操作でテンションロッド31を回転させる。これにより、接続部材2を上動させることができる。なお、接続部材2は上動する際に回転しない。
【0045】
接続部材2が上動すると、軸受部32を介して大径ロッド部31bからテンション受部4に対して押し下げ力が働く。一方、被締結体H1に着座しているテンション受部4は下方に移動することができないため、軸受部32及び被締結体H1によって狭圧され、被締結体H1からテンション受部4に対して反力が働く。この時、歪ゲージから電気信号(例えば、電圧)が出力され、この出力信号から軸力を算出することができる。なお、算出した軸力は、例えばレンチ34やテンション受部4の外周面に設けられた図示しない表示部に表示させることができる。また、クリアランスS2は、クリアランスS1よりも大きいため、円柱部21が小径ロッド部31aに当接する前に、凸部22がテンションロッド中空部311の上端部に当接することを防止できる。つまり、ボルト10を引っ張るための十分な作動長さを確保できるため、軸力検出不能となることを防止できる。
【0046】
このように、本実施形態では、ボルト頭部12の側面に形成された第1雄ネジ部12aを接続部材2に螺合させて、ボルト10を引っ張る方法を採用しているため、以下の効果が得られる。
・ボルト10を引っ張るための補助部品が不要となるため、部品点数の削減と、締結部材の軽量化を図ることができる。
・補助部品を用いずにボルトのみを被締結体に締結した状態を基本状態としたときに、基本状態に対してボルト座面の接触状態、ボルト材質は変わらないため、締結性能が同じとなり、ゆるみ特性が変化することもない。
・さらに、基本状態からボルト座面の接触状態、ボルト材質は変わらないため、ボルト締結時の締付けトルクを変更する必要もない。
【0047】
(第2実施形態)
図3を参照しながら、第2実施形態について説明する。本実施形態は、ボルトの種類が第1実施形態と異なる。ボルト以外の構成は、第1実施形態と同様であるから詳細な説明を省略する。
【0048】
ボルト100は、六角穴付きボルトであり、ボルト軸部101及びボルト頭部102から構成される。ボルト軸部101には雄ネジ部が形成されている。ボルト孔H1aに挿入されたボルト100をボルト穴H2aと螺合させることによって、ボルト100を被締結体Hに締結することができる。
【0049】
なお、ボルト孔H2aに雌ねじ部を形成せずに、ボルト100をボルト孔H1a,H2aに挿入し、被締結体H(H2)の端面から下方に突出したボルト軸部101に不図示のナットを螺合させることにより被締結体Hに締結させることもできる。
【0050】
ボルト頭部102の頂面には、六角穴102aが形成されている。この六角穴102aに不図示の六角レンチ等を差し込み、回転軸X周りに回すことにより、被締結体Hにボルト100を締結することができる。ボルト頭部102の側面には第1雄ネジ部102bが周方向に途切れることなく連続的に形成されている。軸力検出は、ボルト頭部102の第1雄ネジ部102bを接続部材2の第1雌ネジ部21a1に螺合させた状態で行うことができる。
【0051】
本実施形態のボルト100を用いることにより、第1実施形態のボルト10と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(第3実施形態)
図4を参照しながら、第3実施形態について説明する。本実施形態は、ボルトの種類が第1及び第2実施形態と異なる。ボルト以外の構成は、第1実施形態と同様であるから詳細な説明を省略する。
【0053】
ボルト200は、四角ボルトであり、ボルト軸部201及びボルト頭部202から構成される。ボルト軸部201には雄ネジ部が形成されている。ボルト孔H1aに挿入されたボルト200をボルト孔H2aに螺合させることによって、ボルト200を被締結体Hに締結することができる。
【0054】
なお、ボルト孔H2aに雌ねじ部を形成せずに、ボルト200をボルト孔H1a,H2aに挿入し、被締結体H(H2)の端面から下方に突出したボルト軸部201に不図示のナットを螺合させることにより被締結体Hに締結することもできる。
【0055】
ここで、ボルト頭部202の側面には第1雄ネジ部202aが周方向に間欠的に形成されている。すなわち、個々の第1雄ネジ部202aは、ボルト頭部202の側面における曲げ形状部に形成されている。軸力検出は、ボルト頭部202の第1雄ネジ部202aを接続部材2の第1雌ネジ部21a1に螺合させた状態で行うことができる。
【0056】
ここで、ボルト頭部202の二面幅をS、ボルト頭部202の第1雄ネジ部202aにおける「雄ネジの外径」をD1、ボルト頭部202の第1雄ネジ部202aにおける「雄ネジの谷の径」をD2としたときに、以下の条件式(3)及び/又は(4)を満足することが好ましい。
D1>S×1.03・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
D2<S×1.32・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
【0057】
条件式(3)を満足することにより、被締結体Hにボルト200を締結する際にボルト頭部202に対する締結工具の引掛りをよくすることができる。条件式(4)を満足することにより、ボルト200を接続部材2で引っ張る際に接続部材2の第1雌ネジ部21a1に対する第1雄ネジ部202aの引掛りをよくすることができる。
【0058】
(第4実施形態)
図5を参照しながら、第4実施形態について説明する。本実施形態では、第1乃至第3実施形態のボルトに代えて、フランジボルトが用いられる。
【0059】
ボルト300は、フランジボルトの一例であるフランジ付き六角ボルトであり、ボルト軸部301及びボルト頭部302から構成される。ボルト軸部301には雄ネジ部が形成されている。ボルト孔H1aに挿入されたボルト300をボルト孔H2aに螺合させることによって、ボルト300を被締結体Hに締結することができる。
【0060】
ボルト頭部302は、頭部本体302a及びフランジ部302bから構成されている。頭部本体302a及びフランジ部302bは一体的に形成されており、フランジ部302bは、頭部本体302aよりも径方向外側に張り出している。頭部本体302aの外周面には周方向に延びる第1雄ネジ部302a1が間欠的に形成されている。フランジ部302bの外周面には周方向に延びる第1雄ネジ部302b1が連続的に形成されている。これらの第1雄ネジ部302a1及び302b1は、互いに同じピッチでなければならない。ピッチが異なると、第1雄ネジ部302a1及び302b1に接続部材2を螺合させることができない。図示はしないが、これらの第1雄ネジ部302a1及び302b1が螺合する第1雌ネジ部を接続部材中空部21aに形成しておくことにより、接続部材を介してボルト300を引っ張ることができる。
【0061】
本実施形態では、頭部本体302a及びフランジ部302bの双方に雄ネジ部を形成したが、本発明はこれに限るものではなく、頭部本体302a及びフランジ部302bのいずれか一方に雄ネジ部を形成し、他方に雄ネジ部を形成しないフランジボルトを用いることもできる。
【0062】
第1実施形態で説明した条件式(1)及び/又は(2)を、本実施形態の頭部本体302aに適用できることは言うまでもない。
【0063】
本願発明は、フランジ付き六角ボルトよりも曲げ形状部の曲線が緩やかに形成されたフランジボルト(
図6参照)にも適用することができる。
図6の符号400、401、402、402a、402b、402a1、402b1は夫々、
図5の符号300、301、302、302a、302b、302a1、302b1に対応しているから、詳細な説明を省略する。
【0064】
(第5実施形態)
図7を参照しながら、第5実施形態について説明する。
図7は、
図1に対応しており、テンション受部4が被締結体H1に当接した直後の状態を示している。本実施形態では、ボルト頭部12と被締結体H1との間に、座金50を介在させている。座金50は、テンション中空部41の内径よりも径寸法が小さく設定されており、接続部材2の下端部と座金50との間には、微小なクリアランスが形成されている。接続部材2の下端部が座金50に圧接した状態で軸力検出を行うと、検出誤差が大きくなる。すなわち、接続部材2の下端部と座金50との間に微小なクリアランスを形成した状態で軸力検出を行うことにより、検出誤差を少なくすることができる。
【0065】
(第6実施形態)
図8を参照しながら、第6実施形態について説明する。
図8は、
図1に対応しており、テンション受部4が保護プレート60に当接した直後の状態を示している。本実施形態では、ボルト頭部12と被締結体H1との間に、保護プレート60を介在させている。保護プレート60は、ボルト軸部11を挿通させるための開口部を有しており、テンション受部4の外径よりも径寸法が大きく設定されている。そのため、ハンドル5を回転させてテンション受部4を下動させた時に、テンション受部4の当接する部材は被締結体H1ではなく保護プレート60となる。この場合、被締結体H1から加わる軸力検出時の反力は、保護プレート60を介してテンション受部4に伝達される。
【0066】
本実施形態の構成は、被締結体Hの剛性(EI)、弾性限界強度がテンション受部4よりも低い場合に、特に好適である。なお、Eはヤング率であり、Iは断面二次モーメントである。すなわち、テンション受部4を被締結体H1に当接させて軸力検出を行うと、被締結体H1の当接部分に荷重が集中する。そのため、被締結体H1の剛性等が低い場合には、被締結体H1が変形するおそれがある。そこで、本実施形態では、テンション受部4の外径よりも径寸法が大きい保護プレート60をテンション受部4と被締結体H1との間に介在させている。これにより、当接面積が増大して、荷重が分散されるため、被締結体Hに加わる負荷を軽減することができる。
【0067】
保護プレート60には、被締結体Hよりも剛性(EI)、弾性限界強度が高い材料(例えば、熱処理した鉄鋼材)を用いることができる。剛性(EI)等の高い保護プレート60を介して反力を検出することにより、軸力検出の検出誤差を小さくすることができる。
【0068】
接続部材2の下端部と保護プレート60との間には、微小なクリアランスが形成されている。微小なクリアランスを形成することによる効果は、第5実施形態と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0069】
(他の実施形態)
本願発明は、二重六角ボルトにも適用することができる。ここで二重六角ボルトとは、六角形の頭部を30度ずらして上下に二重に重ね合わせたボルトのことであり、各頭部に第1実施形態と同様の第1雄ネジ部を形成することができる。ただし、上下に重ね合わせた頭部のうち一方の頭部にのみ第1雄ネジ部を形成する構成であってもよい。本実施形態によれば、ボルトを接続部材2に螺合させる作業を容易に行うことができる。
【解決手段】被締結体Hに締結されたボルト10を上方に引っ張る引張装置1であって、前記ボルト10の頭部12の外周面には、第1雄ネジ部12aが形成されており、前記第1雄ネジ部12aが螺合する第1雌ネジ部21a1を有する接続部材2と、前記第1雄ネジ部12aを前記第1雌ネジ部21a1に螺合させた状態で、前記接続部材2を介して前記ボルト10を引っ張る引張機構3と、前記接続部材2の外周周りに配置され、前記引張機構3による引張時に前記被締結体Hから作用する反力を受けるテンション受部4と、を有することを特徴とする引張装置。