特許第6381858号(P6381858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6381858金属板の板反り矯正装置及び金属板の連続めっき処理設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6381858
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】金属板の板反り矯正装置及び金属板の連続めっき処理設備
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/20 20060101AFI20180820BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20180820BHJP
   B21D 1/05 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   C23C2/20
   C23C2/40
   B21D1/05 P
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-513689(P2018-513689)
(86)(22)【出願日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】JP2017043023
【審査請求日】2018年3月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】米倉 隆
(72)【発明者】
【氏名】丹原 正雄
(72)【発明者】
【氏名】吉川 雅司
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−011171(JP,A)
【文献】 特開平02−054746(JP,A)
【文献】 特開平03−166354(JP,A)
【文献】 特開平09−025552(JP,A)
【文献】 特開2004−107681(JP,A)
【文献】 実開昭55−054359(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の連続めっき処理設備で用いられる前記金属板の板反り矯正装置であって、
前記金属板の搬送方向を変化させる固定ロールよりも前記金属板の搬送方向の下流側においてめっき用の溶融金属ポット内に配置されるシンクロールと、
前記固定ロールと前記シンクロールとの間に配置され、前記金属板の反りを矯正するための矯正ロールと、を備え、
前記固定ロールの直径D1に対する前記シンクロールの直径D3の比D3/D1が1.5以上であり、
前記固定ロールは、前記金属板が巻きついた状態で前記金属板の搬送方向を変化させるように構成され、
前記固定ロール及び前記シンクロールは、前記金属板の第1面に接するように構成され、
前記矯正ロールは、前記金属板の前記第1面と反対側の第2面に接するように構成された
ことを特徴する金属板の板反り矯正装置。
【請求項2】
前記矯正ロールは、該矯正ロールの前記金属板側への押し込み量を調節可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の金属板の板反り矯正装置。
【請求項3】
前記矯正ロールの前記金属板側への押し込み量に対応する該矯正ロールの見かけ直径をD2としたとき、D1<D2<D3の関係が成り立つ
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板の板反り矯正装置。
【請求項4】
前記シンクロールの直径D3は、1200mm以上である
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の金属板の板反り矯正装置。
【請求項5】
前記固定ロールは、前記金属板を熱処理するための炉の内部に設置された
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の金属板の板反り矯正装置。
【請求項6】
前記固定ロールは、前記炉の出口部に設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の金属板の板反り矯正装置。
【請求項7】
前記固定ロールは、前記金属板に与える張力を調節するためのブライドルロールであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の金属板の板反り矯正装置。
【請求項8】
前記矯正ロールは、前記金属板を熱処理するための炉の出口部と前記溶融金属ポットとの間に設けられたスナウトの内部に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の金属板の板反り矯正装置。
【請求項9】
前記シンクロールよりも前記搬送方向の下流側に設けられた板反り計測装置と、
前記板反り計測装置の計測結果に基づいて前記矯正ロールの前記金属板側への押し込み量を調節するように構成されたコントローラと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の金属板の板反り矯正装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の板反り矯正装置を備えたことを特徴とする金属板の連続めっき処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属板の板反り矯正装置及び金属板の連続めっき処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状の金属板を連続的に溶融めっき処理する場合、例えば金属板における溶融金属の付着量を均一にするため等の理由により、溶融金属のポット(めっき浴)出側における金属板の板幅方向の反りを低減して金属板を平坦化することが要求されることがある。
【0003】
溶融金属ポット出側における金属板の板幅方向の反りを低減するための機構として、例えば、特許文献1及び2には、鋼帯の溶融めっき処理のためのめっき浴の上流側に、めっき浴中のシンクロール通過後の鋼帯の幅方向反りと反対方向の反りを与えるロールを設けた連続溶融めっき装置が開示されている。
また、特許文献2には、めっき浴の上流側に設けられた上述のロール(スナブロール)の軸を平行移動させて、鋼板のパスライン方向に対する該ロールの押し込み量を調節可能とし、鋼板の板幅等に応じてこの押し込み量を調節することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−54746号公報
【特許文献2】特開平3−166354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者らの鋭意検討の結果、特許文献1及び2に記載のように溶融金属ポット(めっき浴)の上流側に、シンクロール通過後の金属板の幅方向の反りと反対方向の反りを与える矯正ロールを設けた場合、特に金属板の板厚が比較的大きい場合(例えば鋼板の場合1.5mm程度以上)に、矯正ロールの見かけ直径(押し込み量)を最小値と最大値の間で変化させても、矯正ロールの上流側で生じた金属板の反りを効果的に矯正できない場合があることがわかった。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、板厚が比較的大きい場合であっても、金属板の板幅方向の反りを効果的に矯正可能な金属板の反り矯正装置及び金属板の連続めっき処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る金属板の板反り矯正装置は、
金属板の連続めっき処理設備で用いられる前記金属板の板反り矯正装置であって、
前記金属板の搬送方向を変化させる固定ロールよりも前記金属板の搬送方向の下流側においてめっき用の溶融金属ポット内に配置されるシンクロールと、
前記固定ロールと前記シンクロールとの間に配置され、前記金属板の反りを矯正するための矯正ロールと、を備え、
前記固定ロールの直径D1に対する前記シンクロールの直径D3の比D3/D1が1.5以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、板厚が比較的大きい場合であっても、金属板の板幅方向の反りを効果的に矯正可能な金属板の反り矯正装置及び金属板の連続めっき処理設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る連続めっき処理設備の概略的な構成図である。
図2】一実施形態に係る板反り矯正装置の概略図である。
図3】金属板の板反り量について説明するための図である。
図4】一実施形態に係る板反り矯正装置による金属板の板反り量とシンクロールの直径D3との相関関係の一例を示すグラフである。
図5】一実施形態に係る板反り矯正装置による金属板の板反り量とシンクロールの直径D3との相関関係の一例を示すグラフである。
図6】実施例に係る板反り矯正装置による金属板の板反り量と矯正ロールの見かけ直径D2との相関関係の一例を示すグラフである。
図7】比較例に係る板反り矯正装置による金属板の板反り量と矯正ロールの見かけ直径D2との相関関係の一例を示すグラフである。
図8】見かけ直径D2の算出方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
まず、図1を参照して、幾つかの実施形態に係る連続めっき処理設備の全体構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る連続めっき処理設備の概略的な構成図である。図1に示すように、連続めっき処理設備100は、帯状の金属板2(例えば鋼板)を連続的にめっき処理するための設備であって、金属板2を熱処理するための炉3と、炉3の外部に設けられ、めっき浴8を形成するポット6(溶融金属ポット)と、金属板2へのめっき液(溶融金属)の付着量を調節するためのワイピングノズル10と、を備える。
なお、図1中の矢印は、金属板2の搬送方向(移動方向)を示す。
【0012】
炉3は、該炉3の内部を通過する金属板2を熱処理するための装置であり、例えば、金属板2を連続的に焼鈍処理するように構成されていてもよい。
炉3の内部には、複数のロール14が設けられている。これらのロール14で金属板2に張力を与えたり、金属板2の方向転換をしたりすることで金属板2を搬送するようになっており、これにより金属板2を連続的に処理することが可能となっている。
炉3の内部には、還元性又は非酸化性のガスが供給されるようになっていてもよい。
【0013】
図1に示す炉3の出口部4には、金属板2に与える張力を調節するためのブライドルロール16A,16Bが設けられている。
炉3の内部は、位置によって温度が異なる場合がある。例えば、炉3の出口部4では比較的低温であるのに対し、出口部4よりも金属板2の搬送方向における上流側(以下、単に「上流側」ともいう。)の例えばバーナ付近の位置では比較的高温である。このように、炉内に温度分布がある場合、炉内の位置によって、金属板に与えるべき張力が異なる。そこで、ブライドルロール16A,16Bは、例えば、炉3の内部の温度分布に応じて、適切な張力を金属板2に与えるように構成されていてもよい。
【0014】
炉3の出口部4とポット6の間には、金属板2の通路を形成する筒状の部材であるスナウト5が設けられる。スナウト5のポット6側の端部は、ポット6に貯留された溶融金属(めっき浴8)に浸漬するように設けられており、炉3の内部から外部へのガスの流出、あるいは、炉3の外部から内部へのガス(例えば空気)の流入が防止されるようになっている。
【0015】
ポット6にはめっき液としての溶融金属が貯留され、めっき浴8が形成される。
ポット6内に貯留される溶融金属の種類は特に限定されないが、例えば金属板2が鋼板である場合、亜鉛又はアルミニウム、又は、これらを含む合金であってもよい。
【0016】
また、ポット6内には、シンクロール20が設けられている。炉3の内部からスナウト5を通ってめっき浴8に導入された金属板2は、シンクロール20によって上向きに方向転換され、表面に溶融金属が付着した金属板2がポット6の上方へと進行するようになっている。
【0017】
シンクロール20よりも金属板2の搬送方向における下流側(以下、単に「下流側」ともいう。)には、ワイピングノズル10及び板反り計測装置12が設けられる。
【0018】
ワイピングノズル10は、例えば、金属板2の板幅方向に沿って延在するとともに、金属板2のパスラインに向かって開口するスリットを含んでいてもよい。ワイピングノズル10は、例えば上述のスリットから、搬送される金属板2に向かってガスを噴出させて、金属板2の表面における溶融金属の厚さが均一になるように、金属板2に過剰に付着した溶融金属を吹き払うことにより取り除くように構成される。
【0019】
板反り計測装置12は、該板反り計測装置12の設置位置における金属板2の反り量を計測する装置であり、ワイピングノズル10よりも上流側又は下流側のいずれに設けられていてもよい。板反り計測装置12は、例えば、金属板2の板幅方向に沿って配列され、金属板2との距離を計測可能にそれぞれ構成された複数の位置センサを含んでいてもよい。
後述するように、幾つかの実施形態に係る板反り矯正装置1は、板反り計測装置12の計測結果に基づいて板反りを矯正するように構成されていてもよい。
【0020】
なお、上述した炉3の内部に設けられた複数のロール14のうち少なくとも幾つかは、連続めっき処理設備100の通常運転時に、搬送される金属板2の搬送方向を変化させるように構成される。金属板2の搬送方向を変化させるロールでは、金属板2がロールに巻きつく状態になるのが通常であり、例えば、金属板2の搬送方向を90°以上変更させるようなロールでは、ロールの金属板が巻き付いていることが目視で容易に確認できる。このように金属板2がロールに巻きつく状態では、通常、金属板2に板幅方向の反り(C反り)が生じる。
なお、「金属板2がロール14に巻付いている」とは、金属板2の曲げ直径がロール14の直径と一致する場合,つまり,金属板2がロール14と面で接触する状態であることを意味する。
【0021】
また、複数のロール14のうち少なくとも幾つかは、連続めっき処理設備100の通常運転時において、ロール14の回転軸の位置が固定された固定ロールである。
【0022】
次に、図1図3を参照して、上述の連続めっき処理設備100に適用される板反り矯正装置1について説明する。
図2は、一実施形態に係る板反り矯正装置1の概略図であり、図3は、金属板2の板反り量wについて説明するための図であり、ワイピングノズル10の位置における、搬送方向に直交する平面での金属板2の断面を示すものである。なお、図2は、図1に示す連続めっき処理設備100の部分的な拡大図であるが、図2おいては、説明の都合上、図1で示した炉3及びスナウト5の図示を省略している。
【0023】
図1及び図2に示すように、一実施形態に係る板反り矯正装置1は、金属板2の搬送方向を変化させる固定ロールであるブライドルロール16Bよりも下流側においてポット6内に配置されるシンクロール20と、ブライドルロール16B(固定ロール)とシンクロール20との間に配置された矯正ロール18と、を備えている。矯正ロール18は、めっき浴8の上方に設けられており、図1に示すようにスナウト5の内部に設けられていてもよい。
なお、ブライドルロール16Bは、炉3の出口部4に設けられたブライドルロール16A,16Bのうち、下流側に位置する一方である。
【0024】
矯正ロール18は、該矯正ロール18の回転軸19を移動させることにより、金属板2側への(あるいは、金属板2のパスライン側への)押し込み量d2(図2参照)を調節可能に構成されている。図1及び図2に示すように、矯正ロール18は、金属板2を挟んで、ブライドルロール16B(固定ロール)及びシンクロール20とは反対側に設けられている。
なお、図2には、押し込み量d2がゼロのときの矯正ロール18及び金属板2が破線で示されており、このとき、金属板2は矯正ロール18に押し込まれることなく、ブライドルロール16Bとシンクロール20との間において直線状の形状を有している。
【0025】
矯正ロール18は、押し込み量d2に応じた見かけ直径D2を有する。矯正ロール18の見かけ直径D2は、金属板2と矯正ロール18の接触部近傍での金属板2の曲率の逆数の2倍で定義される値である。見かけの直径D2は,矯正ロール,固定ロール,金属板の板厚,板幅,等の幾何学的条件と,金属板2のヤング率,降伏応力,板張力といった力学的特性の両方の影響を受けるが,押し込み量d2を調整することで,矯正ロール18の実際の直径(金属板2がロール18に巻き付いた状態)から無限大(押し込み量d2がゼロの状態)まで調整可能である。
【0026】
ここで、図8は、見かけ直径D2の算出方法の一例を説明するための図である。
矯正ロール18の見かけ直径D2は、例えば、図8に示すように、金属板2の延在する方向を含む垂直面内において、互いに直交する任意の2方向をx軸及びy軸とし、この垂直面内における金属板2の曲げ形状に関し、金属板2と押込みロールの接点Pc(側面視で点接触に近い状態)を含む前後で、y=f(x)の関数となる近似曲線を創る。この近似曲線を板とロールの接触部の近傍でxに関して2階微分することで曲率半径を求め、その曲率半径の2倍が見かけ直径D2となる。
なお、上述の垂直面内における金属板2の曲線は、ある水平線に対して金属板2の側面高さに関する連続的な実測や、金属板2の側面の写真の情報処理に基づいて得ることも可能である。
ただし、実際の板反り矯正装置1の運転においては、曲率半径の測定まではしなくてもよく、矯正ロール18の押込み量d2を調整することで、結果的に、適切な範囲の見かけ半径D2の状態とすることができる。
【0027】
そして、図1及び図2に示す板反り矯正装置1において、ブライドルロール16B(固定ロール)の直径D1に対するシンクロールの直径D3の比D3/D1は、1.5以上である。
また、図1及び図2に示す板反り矯正装置1において、ブライドルロール16B(固定ロール)の直径D1、矯正ロール18の見かけ直径D2、及び、シンクロール20の直径D3は、D1<D2<D3の関係を満たす。
【0028】
上述の連続めっき処理設備100においては、ブライドルロール16B(固定ロール)、矯正ロール18、及びシンクロール20のそれぞれの出側において、板幅方向の板反り(図3に示すように、板幅方向中央部が、板幅方向の両端部に比べて板厚方向に突出した反り、すなわちC反り)が生じることがある。
ここで、本明細書における金属板2の板反り量w(図3参照)は、金属板2の板厚方向における両端点の該板幅方向における距離を意味する。
【0029】
なお、上述の各ロールによって金属板2に与えられる板幅方向の反りの変形の方向(金属板2の板幅方向における中央部の突出方向)は、ロールと金属板2の位置関係に応じて決まるものである。
例えば、図3に示すように、図1及び2に示す板反り矯正装置1において、金属板2の両面を第1面2a及び第2面2bとしたとき、ブライドルロール16B(固定ロール)及びシンクロール20によって金属板2に与えられる板幅方向の反りは、金属板2の中央部が板厚方向において第1面2a側に突出する方向の反り(すなわち、図3に示す方向)であるとともに、矯正ロール18によって金属板2に与えられる板幅方向の反りは、金属板2の中央部が板厚方向において第2面2b側に突出する方向の反り(すなわち、図3に示す方向とは逆方向)である。
【0030】
シンクロール20の下流側におけるワイピングノズル10の位置において、金属板2に上述のような板幅方向の板反りがあると、板幅方向において、ワイピングノズル10と金属板2との距離に分布が生じる。そうすると、ワイピングノズル10と金属板2との距離に応じて、ワイピングノズル10によって吹き落とせる溶融金属(めっき液)の量が板幅方向において均一でなくなる。例えば、ワイピングノズル10と金属板2との間の距離が大きいところでは、ワイピングノズル10によって吹き落とせる溶融金属(めっき液)の量が低減するため、めっき厚さが厚くなってしまう。逆にワイピングノズル10と金属板2との間の距離が小さいところでは、ワイピングノズル10によって吹き落とせる溶融金属(めっき液)の量が増大するため、めっき厚さが薄くなってしまう。、このようにめっき厚が均一でないと,最小部でのめっき厚を確保しようとすると,めっき厚い分コストの増大につながる。また、このように金属板2においてめっき厚さにムラは、後工程での金属板を溶接する際に,溶接性(溶接強度)にムラが発生する場合もあり、金属板2の製品としての品質低下につながる。
【0031】
この点、上述の実施形態に係る板反り矯正装置1によれば、ブライドルロール16B(固定ロール)の直径D1に対する前記シンクロール20の直径D3の比D3/D1を、1.5以上に設定したので、図4図7を参照して以下に説明するように、シンクロール20の出側における板幅方向の板反りを効果的に矯正可能である。
【0032】
ここで、図4及び図5は、それぞれ、一実施形態に係る板反り矯正装置1のシンクロール20出側における金属板2の板反り量wと、シンクロール20の直径D3との相関関係の一例を示すグラフであり、それぞれ、金属板2の板厚tが3.2mm及び2.3mm、かつ、ブライドルロール16B(固定ロール)の直径D1=800mmのときに、矯正ロール18の見かけ直径D2(又は押し込み量d2)を800mmから2000mmの間で変化させた場合に生じ得る板反り量wの範囲を斜線で示したものである。いずれの図も、板反り量wの値の小さい方の線がD2=800mmの場合を示し、板反り量wの値の大きい方の線がD2=2000mmの場合を示す。
【0033】
図4及び図5のグラフから、板厚tによらず、シンクロールの直径D3が大きいほど、矯正ロール18の見かけ直径D2(又は押し込み量d2)によって、板反り量wの調節可能な幅が拡大し,板反りwを0に容易に調整できることがわかる。
【0034】
また、図6及び図7は、それぞれ、実施例及び比較例に係る板反り矯正装置1のシンクロール20出側における金属板2の板反り量wと、矯正ロール18の見かけ直径D2との相関関係の一例を示すグラフである。図6は、上述の板反り矯正装置1において、ブライドルロール16B(固定ロール)の直径D1=800mm、シンクロール20の直径D3=2000mm、D3/D1=2.5とした場合、図7は、上述の板反り矯正装置1において、D1=800mm、D3=900mm、D3/D1=1.1とした場合のグラフである。なお、グラフ中のtは、金属板2の板厚を表す。
【0035】
図7のグラフから、D3/D1=1.1に設定された板反り矯正装置では、板厚がt=1〜2mmで比較的薄い場合には、矯正ロール18の見かけ直径D2を適切に調節することにより(すなわち、矯正ロール18の押し込み量d2を適切に調節することにより)シンクロール20の出側の板幅方向の板反り量をゼロ付近に低減可能である一方、板厚がt=3〜4mm程度で比較的大きい場合には、矯正ロール18の見かけ直径D2を調節しても、板幅方向の板反り量をゼロ付近に低減することはできないことがわかる。
一方、図6のグラフから、D3/D1=2.5に設定された板反り矯正装置では、t=1.2mm以上4.5mm以下の比較的広い板厚範囲において、矯正ロール18の見かけ直径D2を適切に調節することにより(すなわち、矯正ロール18の押し込み量d2を適切に調節することにより)シンクロール20の出側の板幅方向の板反り量をゼロ付近に低減可能であることがわかる。
【0036】
すなわち、ブライドルロール16B(固定ロール)の直径D1に対するシンクロール20の直径D3の比D3/D1を大きくするほど、矯正ロール18の見かけ直径D2(又は押し込み量d2)の調節により、シンクロール20における板反り量をゼロに近づけることが可能な金属板2の板厚tを大きくすることができることがわかる。
【0037】
これらの知見に基づき、上述の実施形態に係る板反り矯正装置1では、ブライドルロール16B(固定ロール)の直径D1に対する前記シンクロール20の直径D3の比D3/D1を、1.5以上に設定したので、矯正ロール18の見かけ直径D2(又は押し込み量d2)を適切に調節することにより、金属板2の板厚tが比較的大きい場合であっても、ポット6の出側における金属板2の板幅方向の反り量wを効果的に低減して、金属板2の板反りを矯正することができる。
よって、例えばポット6よりも金属板搬送方向の下流側に設けられたワイピングノズル10等により、金属板2の表面における溶融金属の付着量を均一化しやすくなる。
【0038】
また、板反り矯正装置1において、ブライドルロール16B(固定ロール)の直径D1、矯正ロール18の見かけ直径D2、及びシンクロール20の直径D2がD1<D2<D3の関係を満たす場合、ブライドルロール16B(固定ロール)、矯正ロール18、シンクロール20の各々により金属板2に与えられる塑性変形量が、シンクロール20、矯正ロール18、ブライドルロール16B(固定ロール)の順に大きくなる。よって、矯正ロール18での塑性変形の調整範囲でシンクロール20の出側における金属板2の板反りを効果的に矯正することができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、板反り矯正装置1は、板反り計測装置12による板反り量の計測結果に基づいて、矯正ロール18の金属板2側への押し込み量d2を調節するように構成されたコントローラ(不図示)をさらに備えていてもよい。
例えば、上述のコントローラは、板反り計測装置12によって計測されたシンクロール20出側における板反り量wに基づくフィードバック制御により、板反り量wがゼロに近づくように、矯正ロール18の金属板2側への押し込み量d2を調節するように構成されていてもよい。
なお、上述したように、板反り計測装置12が、金属板2の板幅方向に沿って配列され、金属板2との距離を計測可能にそれぞれ構成された複数の位置センサを含む場合、上述のコントローラは、複数の位置センサによる検出結果から金属板2のシンクロール20の出側における板反り量wを算出し、このように算出された板反り量wに基づいて、矯正ロール18の金属板2側への押し込み量d2を調節するように構成されていてもよい。
【0040】
以下、幾つかの実施形態に係る板反り矯正装置1及び連続めっき処理設備100について概要を記載する。
【0041】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る金属板の板反り矯正装置は、
金属板の連続めっき処理設備で用いられる前記金属板の板反り矯正装置であって、
前記金属板の搬送方向を変化させる固定ロールよりも前記金属板の搬送方向の下流側においてめっき用の溶融金属ポット内に配置されるシンクロールと、
前記固定ロールと前記シンクロールとの間に配置され、前記金属板の反りを矯正するための矯正ロールと、を備え、
前記固定ロールの直径D1に対する前記シンクロールの直径D3の比D3/D1が1.5以上である。
【0042】
上述の固定ロール、矯正ロール、シンクロールの順に金属板に変形を加えたときに、各ロールの出側において、金属板に板幅方向の反り(以下、「C反り」又は単に「反り」ともいう。)が生じる場合がある。本発明者らの知見によれば、固定ロールの直径D1に対するシンクロールの直径D3の比D3/D1を大きくするほど、矯正ロールの見かけ直径D2の調節により、シンクロール出側の板幅方向の板反り量の調節可能な幅を広げることができるとともに、該板反り量をゼロに近づけることが可能な金属板の板厚を大きくすることができる。
この点、上記(1)の構成では、D3/D1を1.5以上としたので、矯正ロールの見かけ直径D2を適切に調節することにより、板厚が比較的大きい場合であっても、溶融金属ポットの出側における金属板の板幅方向の反りを効果的に低減して、金属板の反りを矯正することができる。
よって、例えば溶融金属ポットよりも金属板搬送方向の下流側でのガスワイピング等により、金属板の表面における溶融金属付着量を均一化しやすくなる。
【0043】
なお、上記(1)とは異なり、溶融金属ポット出側における反りを矯正するための矯正ロールを、シンクロールより下流側の溶融金属ポット内に設ける場合には、矯正ロールの軸受は、異物の噛みこみ防止等のために隙間を大きく確保する必要がある。この場合、軸受の隙間に起因してガタが生じやすくなり、金属板の反り矯正を高精度に行うことが難しい。
この点、上記(1)の構成では、矯正ロールが固定ロールとシンクロールとの間(すなわちシンクロールよりも金属板の搬送方向の上流側)に配置されるので、矯正ロールを溶融金属ポット内に設ける必要がない。このため、ガタの少ない軸受を採用可能であり、金属板の反り量の調整を精度良く行うことができる。また、溶融金属ポット内の矯正ロールを廃止可能であるので、ポット内に矯正ロールを設置することを前提とした既存の溶融金属ポットのサイズを大きくすることなく、直径のより大きなシンクロールを採用することができる。
【0044】
なお、上記(1)における「固定ロール」は、シンクロールの出側において金属板に生じる板反りの主な発生要因となっていたロールであってもよい。すなわち、上記(1)における「固定ロール」は、上述した板反り矯正装置1におけるブライドルロール16Bであってもよいし、炉3の内部に固定された他のロール14であってもよい。また、上記(1)における「固定ロール」は、金属板の搬送方向を変化させる固定ロールのうち、最も下流側に位置する固定ロールであってもよい。
【0045】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記矯正ロールは、該矯正ロールの前記金属板側への押し込み量を調節可能である。
【0046】
上記(2)の構成によれば、矯正ロールの金属板側への押し込み量を調節することにより(すなわち、矯正ロールの見かけ直径D2を調節することにより)、該矯正ロールによる金属板の塑性変形量を変化させることができる。よって、該押し込み量を適切に調節することにより、溶融金属ポットの出側における金属板の板幅方向の反りを効果的に矯正することができる。
【0047】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記矯正ロールの前記金属板側への押し込み量に対応する該矯正ロールの見かけ直径をD2としたとき、D1<D2<D3の関係が成り立つ。
【0048】
上記(3)の構成によれば、固定ロール、矯正ロール、シンクロールの各々により金属板に与えられる塑性変形量が、シンクロール、矯正ロール、固定ロールの順に大きくなる。よって。矯正ロールでの塑性変形の調整範囲で溶融金属ポット出側の金属板の反りを効果的に矯正することができる。
【0049】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
シンクロールの直径D3は、1200mm以上である。
あるいは、幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、シンクロールの直径D3は、1300mm以上である。
【0050】
通常、溶融金属ポット内に設けられるシンクロールの直径は、大きくても1000mm程度である。そして、より大きな直径のシンクロールを採用しようとする場合、シンクロール以外の関連設備(例えば、シンクロールが収容される溶融金属ポット等)も、より大型のものを採用する必要があり、設備コストが増大する。
上記(4)の構成によれば、上述の事情があるにも関わらず、通常よりも大幅に大きな1200mm以上又は1300mm以上の直径を有するシンクロールを採用したので、典型的なサイズの固定ロールを使用したときに、D3/D1を1.5以上としやすくなる。これにより、矯正ロールの見かけ直径D2を適切に調節することにより、板厚が比較的大きい場合であっても、溶融金属ポットの出側における金属板の板幅方向の反りを効果的に矯正することができる。
【0051】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
固定ロールは、金属板を熱処理するための炉の内部に設置されている。
【0052】
上記(5)の構成によれば、金属板を熱処理するための炉(例えば焼鈍炉等)の内部に固定ロールが設置されている場合において、上記(1)で述べたように、矯正ロールの見かけ直径D2を適切に調節することにより、板厚が比較的大きい場合であっても、溶融金属ポットの出側における金属板の板幅方向の反りを効果的に矯正することができる。
【0053】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
固定ロールは、炉の出口部に設けられている。
【0054】
金属板の加熱炉の内部には、金属板を適切に方向転換しながら搬送するために複数のロールが設けられる場合があり、炉の出口部に設けられるロールは、これらの複数のロールのうち、最下流側に設けられるロールである。そして、最下流側に設けられるロールは、矯正ロールの入側における板幅方向の板反りの支配的な原因となりやすい。
この点、上記(6)の構成によれば、炉の出口部に設けられた固定ロールによって支配的に形成される板幅方向の反りを、矯正ロール及びシンクロールにより効果的に矯正することができる。
【0055】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
固定ロールは、金属板に与える張力を調節するためのブライドルロールである。
【0056】
ブライドルロールは、通常炉の出口部に設けられ、矯正ロールの入側における板幅方向の板反りの支配的な原因となりやすい。
上記(7)の構成によれば、ブライドルロールによって支配的に形成される板幅方向の反りを、矯正ロール及びシンクロールにより効果的に矯正することができる。
【0057】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
矯正ロールは、金属板を熱処理するための炉の出口部と溶融金属ポットとの間に設けられたスナウトの内部に設けられている。
【0058】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の構成において、
金属板の板反り矯正装置は、
シンクロールよりも搬送方向の下流側に設けられた板反り計測装置と、
板反り計測装置の計測結果に基づいて矯正ロールの金属板側への押し込み量を制御して矯正ロールの見かけ直径D2を調節するように構成されたコントローラと、
をさらに備える。
【0059】
上記(9)の構成によれば、コントローラによって、板反り計測装置の計測結果に基づいて矯正ロールの金属板側への押し込み量を制御して矯正ロールの見かけ直径D2を調節するようにしたので、矯正ロールの見かけ直径D2を適切に調節することにより、金属板の板幅方向の反りを効果的に矯正することができる。
【0060】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る金属板の連続めっき処理設備は、(1)乃至(9)の何れかの板反り矯正装置を備えることを特徴とする。
【0061】
上記(10)の構成によれば、D3/D1を1.5以上としたので、矯正ロールの見かけ直径D2を適切に調節することにより、板厚が比較的大きい場合であっても、溶融金属ポットの出側における金属板の板幅方向の反りを効果的に低減して、金属板の反りを矯正することができる。
よって、例えば溶融金属ポットよりも金属板搬送方向の下流側でのガスワイピング等により、金属板の表面における溶融金属付着量を均一化しやすくなる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0063】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0064】
1 板反り矯正装置
2 金属板
2a 第1面
2b 第2面
3 炉
4 出口部
5 スナウト
6 ポット(溶融金属ポット)
8 めっき浴
10 ワイピングノズル
12 板反り計測装置
14 ロール
16A ブライドルロール
16B ブライドルロール
17 仮想ロール
18 矯正ロール
19 回転軸
20 シンクロール
100 連続めっき処理設備
d2 押し込み量
w 板反り量
【要約】
金属板の板反り矯正装置は、金属板の連続めっき処理設備で用いられる前記金属板の板反り矯正装置であって、前記金属板の搬送方向を変化させる固定ロールよりも前記金属板の搬送方向の下流側においてめっき用の溶融金属ポット内に配置されるシンクロールと、前記固定ロールと前記シンクロールとの間に配置され、前記金属板の反りを矯正するための矯正ロールと、を備え、前記固定ロールの直径D1に対する前記シンクロールの直径D3の比D3/D1が1.5以上であることを特徴する。
図1
図2
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