(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381866
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】電気自動車またはハイブリッド自動車の車体構造、この車両、および、車両の車室の温度を制御する/変更するための方法
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20180820BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20180820BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20180820BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20180820BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20180820BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
B60H1/22 671
B62D29/04 A
B60J5/04 R
B60H1/32 621Z
F28D20/02 Z
B32B7/02 104
B32B7/02 105
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-194934(P2012-194934)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2013-60186(P2013-60186A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】1158192
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591136931
【氏名又は名称】ハッチンソン
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スウォボダ バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】ドミニアク クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】カラム シモン
(72)【発明者】
【氏名】プーパ−パルシグノー ナディーヌ
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0127025(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0154784(US,A1)
【文献】
特開2006−002976(JP,A)
【文献】
特開2010−012833(JP,A)
【文献】
特開平10−151997(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/053853(WO,A1)
【文献】
特開2011−116233(JP,A)
【文献】
特開平05−124443(JP,A)
【文献】
実開平04−101707(JP,U)
【文献】
特開平07−329554(JP,A)
【文献】
実開平03−073825(JP,U)
【文献】
特開2000−314187(JP,A)
【文献】
特開2006−347506(JP,A)
【文献】
特開平10−311693(JP,A)
【文献】
特表2001−527635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池を有する電気自動車またはハイブリッド自動車の車体構造(1,1’,1”)であって、少なくとも1つの内部パネル(3)と、1つの外部パネル(4)と、これらのパネル間の1つの中間層(2,2’,2”)とを備え、前記パネルがそれぞれ熱伝導性で電気絶縁性の材料に基づいており、前記中間層が、少なくとも1つの相変化材料PCM(PCM1,PCM2)と、電気部品(5,5’,5”)とを備え、前記電気部品は、前記少なくとも1つのPCMに結合されて前記蓄電池に接続されるように構成されるとともに、前記蓄電池が再充電されているときに利用できる電気エネルギーを前記少なくとも1つのPCMの融解により蓄えられる熱エネルギーへと変換することができ、それにより、車両の使用時に前記蓄電池が放電している間、前記少なくとも1つのPCMに蓄えられた前記熱エネルギーが、前記少なくとも1つのPCMの結晶化により、前記少なくとも1つのPCMから車両の内部へと伝えられるようにすることができ、逆に、前記少なくとも1つのPCMは、前記PCMの融解により、車両内の過剰な熱を吸収することができ、
前記電気部品(5,5’,5”)は、受動型の電気部品であるとともに、前記少なくとも1つのPCM(PCM1,PCM2)と接触して前記蓄電池の端子に接続されるように構成される少なくとも1つの電気抵抗器(5,5’,5”)を備える、車体構造(1,1’,1”)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのPCM(PCM1,PCM2)は、その融点が前記PCMの融点よりも高い高分子マトリックス、またはセルラーマトリックス中に分散される請求項1に記載の車体構造(1,1’)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのPCM(PCM1,PCM2)が、微細孔メッシュまたは金属発泡体で形成されている多孔質金属構造によって担持される請求項1に記載の車体構造(1”)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの電気抵抗器(5,5”)が金属タイプから成る請求項1に記載の車体構造(1,1”)。
【請求項5】
前記電気部品(5,5’,5”)は、受動型の電気部品であるとともに、前記少なくとも1つのPCM(PCM1,PCM2)と接触して前記蓄電池の端子に接続されるように構成される少なくとも1つの電気抵抗器(5,5’,5”)を備え、
前記少なくとも1つの電気抵抗器(5,5”)が金属タイプから成り、
前記受動型の電気部品(5)は、前記蓄電池の端子にそれぞれ接続されるべき2つの前記金属抵抗器(5)を備え、該金属抵抗器は、前記内部パネル(3)を貫通して配置されるとともに、前記中間層(2)に現れて、前記高分子マトリックスと該マトリックス中に分散される前記少なくとも1つのPCM(PCM1,PCM2)とに接触する、請求項2に記載の車体構造(1)。
【請求項6】
前記電気部品(5,5’,5”)は、受動型の電気部品であるとともに、前記少なくとも1つのPCM(PCM1,PCM2)と接触して前記蓄電池の端子に接続されるように構成される少なくとも1つの電気抵抗器(5,5’,5”)を備え、
前記少なくとも1つの電気抵抗器(5,5”)が、金属タイプから成り、前記中間層(2”)中で前記担持を形成する微細孔金属発泡体またはメッシュ(5”)で形成されている多孔質構造を備え、該金属発泡体またはメッシュのマイクロキャビティ内には前記少なくとも1つのPCM(PCM1,PCM2)が固定され、前記金属発泡体またはメッシュは、前記発泡体またはメッシュの2つの別個の場所で前記蓄電池の端子に接続されるように構成される、請求項3に記載の車体構造(1”)。
【請求項7】
前記電気部品(5,5’,5”)は、受動型の電気部品であるとともに、前記少なくとも1つのPCM(PCM1,PCM2)と接触して前記蓄電池の端子に接続されるように構成される少なくとも1つの電気抵抗器(5,5’,5”)を備え、
前記少なくとも1つの抵抗器(5’)が、正の温度係数を有するPTCサーミスタ(5’)を形成し、前記高分子マトリックス中に分散される前記少なくとも1つのPCM(PCM1,PCM2)は、少なくとも1つのPTC導電性高分子を含み、
当該車体構造(1’)が、前記中間層(2’)の両側にこれと対峙して適用される電極(7’および8’)を形成する2つのさらなる層を備え、前記電極(7’および8’)はそれぞれ、前記蓄電池の端子に接続されるように構成されるとともに、導電プラスチックあるいは金属層で形成されている、請求項2に記載の車体構造(1’)。
【請求項8】
前記内部パネル(3)および外部パネル(4)は、プラスチックまたはプラスチックマトリックス複合体のタイプから成るとともに、前記少なくとも1つのPCM(PCM1,PCM2)から車両の内部への熱の伝達を促すためにそれぞれが異なる熱伝導率を有し、前記パネルは、少なくとも1つのポリオレフィンで形成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の車体構造(1,1’,1”)。
【請求項9】
蓄電池を有する電気自動車またはハイブリッド自動車であって、前記蓄電池の端子に接続されて、回転成形、押し出し成形、または、射出成形によって得ることができる請求項1から8のいずれか1項に記載の少なくとも1つの車体構造(1,1’,1”)を備える、電気自動車またはハイブリッド自動車。
【請求項10】
前記車両の車室の周囲の、前記車両の側部ドア、後部ドア、および、ルーフの壁に、前記車体構造(1,1’,1”)が組み込まれている、請求項9に記載の電気自動車またはハイブリッド自動車。
【請求項11】
蓄電池と車室を画定する車体(1,1’,1”)とを有する、請求項9または10に記載の電気自動車またはハイブリッド自動車の前記車室の温度を制御あるいは変更するための方法であって、
a)蓄電池を充電する間、利用できる電気エネルギーを、車体が備える少なくとも1つの相変化材料PCM(PCM1,PCM2)により蓄えられる熱エネルギーへと変換するステップであって、この変換が、前記車体の前記PCMに結合されて前記蓄電池に接続される受動型の電気部品(5,5’,5”)によって行われるステップと、
b)ステップa)で蓄えられた前記熱エネルギーを用いて、車両の使用時に蓄電池が放電している間、前記車室の加熱は、前記PCMの結晶化によりもたらされる前記車室への前記熱エネルギーの放出によって得られ、前記車室の冷却は、逆に、前記PCMの融解によりもたらされる前記車室から前記PCMへの熱の吸収によって得られるステップと、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を有する電気自動車またはハイブリッド自動車の車体構造であって、この自動車が、その車室を画定するその車体内に、少なくとも1つのそのような構造を組み込む、車体構造に関し、また、この車室の温度を制御あるいは変更するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(少なくとも部分的に電気エネルギーを使用して推進される自動車を意味する)には、3つの主要なカテゴリー、すなわち、
−蓄電池内に蓄積される電気を専ら使用して動作するバッテリー駆動電気自動車と、
−燃焼機関と電気モータとの組み合わせによって生み出されるエネルギーにより推進されるハイブリッド車両と、
−燃料電池車両としても知られる水素駆動車両と、が存在する。
【0003】
バッテリー駆動電気自動車の車室を加熱あるいは冷却するために、現在では一般に、バッテリーに接続される温度調節器が使用されるが、この温度調節器は、このバッテリーをOFF操作するだけであり、蓄電池セルに高い要求を突き付け、したがって、これらの車両の走行距離(range)をかなり減少させるという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、蓄電池を有する電気自動車またはハイブリッド自動車の車体構造であって、少なくとも1つの内部パネルと、1つの外部パネルと、これらのパネル間の1つの中間層とを備え、これらのパネルがそれぞれ熱伝導性で電気絶縁性の材料に基づくとともに、この欠点を克服すると同時に、この車両の車室の温度の満足な制御を可能にする車体構造を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明に係るそのような車体構造は、前記中間層が、少なくとも1つの相変化材料PCMと、電気部品とを備え、電気部品が、PCMに結合されてバッテリーに接続されるように構成されるとともに、このバッテリーが再充電されているときに利用できる電気エネルギーを前記少なくとも1つのPCMにより蓄えられる熱エネルギーへと変換することができ、それにより、この蓄えられた熱エネルギーが、その後、前記少なくとも1つのPCMの結晶化により、車両の使用時に車両の内部へと伝えられ、逆に、前記少なくとも1つのPCMが再充電されないときには、PCMが、その融解により、車両内の過剰な熱を吸収することができることを特徴とする。
【0006】
なお、例えば水和塩またはパラフィンなどのこの/これらのPCMは、それらが結晶化するときに熱の放出(発熱・等温反応)により液体状態から固体状態へと変わり、それにより、車両の車室を加熱することができ、逆に、それらが融解するときに熱を吸収して(吸熱反応)固体状態から液体状態へと変わり、それにより、この車室を冷却できるという利点を有する。また、本発明によれば、バッテリーから引き出される電気エネルギーにより得られる熱エネルギーは、この/これらのPCM内に、それ/それらを特徴付ける融解の潜熱により、この/これらのPCMの結晶化を通じて車室を加熱するために車室へ戻される前に蓄えられる。
【0007】
前述したように、本発明に係る車体構造によって使用される電気がバッテリーから再充電段階中に得られてもよいが、別の方法として、車両が駐車するあるいは隣接して駐車する建物(住居、工業施設、または、商業施設)に設けられる電源コンセントから直接に電気がもたらされてもよいことに留意すべきである。
【0008】
また、車室を用いて熱を伝えるために1つ以上のPCM材料を選択して中間層で使用することができ、また、例えばゾル・ゲルタイプの技術(例えば、シランまたはシラノールを発端とする)を使用することによってPCM粒子の周囲で重合されるシェルにより画定されるマイクロビーズの形態で、無機物(例えば、シリカ系)または有機物(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、または、アクリルポリマーなどのラジカルを介して例えば得られる熱可塑性高分子に基づく)である封入体を組み込むマイクロカプセルの形態で、あるいは、好ましくは本発明の第1の実施形態に関連して後述するように好ましくはセルラー熱可塑性マトリックス中に分散される根粒を伴う粉末の形態で、この/これらのPCMを望み通りに使用できることに留意すべきである。
【0009】
さらに、この(これらの)PCMは、単独の形態で、あるいは、
−PCMまたは各PCMの熱伝導率を高めるために充填材(例えば、グラファイト、グラフェン、または、カーボンナノチューブなどの金属充填材または炭素含有充填材)と組み合わせて、および/または、
−難燃剤(例えば、リンまたはハロゲンを含有する難燃剤)と組み合わせて、および/または、
−耐時効剤(例えば、UV安定剤および抗酸化物質)と組み合わせて使用され得ることに留意されたい。
【0010】
本発明の第1の実施形態によれば、前記少なくとも1つのPCMは、光沢が付けられた形態のシートを得るために、その融点がこの/これらのPCMの融点よりも高い高分子マトリックス、好ましくはセルラーマトリックス中に、例えばポリプロピレンに基づくセルラー熱可塑性マトリックス中に、例えば2軸押し出し機によって分散される。
【0011】
本発明の第2の実施形態によれば、前記少なくとも1つのPCMが微細孔メッシュまたは金属発泡体(”金属発泡体”は、既知の態様で、特に非常に高い特定の置換面積を有しかつ例えば電着を使用して高分子構造を金属化することにより得られる例えばクッションの形態を成す非常に高い多孔率を有するセルラー三次元構造を意味する)などの多孔質金属担持体によって担持される。担持体に対するPCMのこの固定または付着を機械的にあるいは化学的に行うことができる。
【0012】
したがって、前記少なくとも1つのPCMは、前記中間層を形成するセルラータイプの固体担持体または媒体のマイクロキャビティ内に有利に組み込まれてもよく、このセルラー媒体は、前述した第1の実施形態における前記セルラー熱可塑性マトリックスによって、また、前述した第2の実施形態における前記多孔質金属担持体によって形成される。
【0013】
両方の実施形態に共通の本発明の他の特徴によれば、前記部品は、受動型であるとともに、前記少なくとも1つのPCMと接触してバッテリーの端子に接続されるように構成される少なくとも1つの電気抵抗器を備えてもよい。
【0014】
本発明のこの第1の実施形態によれば、前記少なくとも1つの抵抗器が正の温度係数を有するPTCサーミスタを形成してもよく、PTCサーミスタは、少なくとも1つのPTC導電性高分子を備える前記高分子マトリックス中に分散される前記少なくとも1つのPCMと、前記中間層の両側にこれと対峙して適用される電極を形成する2つのさらなる層とを伴い、電極はそれぞれ、前記端子に接続されるように構成されるとともに、導電プラスチックに基づきあるいは金属層に基づく。
【0015】
別の方法として、前記少なくとも1つの抵抗器が金属タイプから成ってもよい。
【0016】
前記第1の実施形態によれば、前記受動部品は、この場合、前記端子にそれぞれ接続されるべき2つの前記金属抵抗器を備え、該金属抵抗器は、前記内部パネルを貫通して配置されるとともに、前記中間層に現れて、前記高分子マトリックス(好ましくは、セルラー熱可塑性タイプから成る)と該マトリックス中に分散される前記少なくとも1つのPCMとに接触する。
【0017】
さらにこの別の形態に係るが本発明の前記第2の実施形態によれば、前記少なくとも1つの抵抗器は、前記中間層中で前記担持体を形成する微細孔金属発泡体またはメッシュを備えてもよく、該金属発泡体またはメッシュのマイクロキャビティ内には前記少なくとも1つのPCMが固定され、この金属発泡体またはメッシュは、この発泡体またはメッシュの2つの別個の場所で前記端子に接続されるように構成される。
【0018】
本発明の他の特徴によれば、前記内部パネルおよび外部パネルはそれぞれ、プラスチックまたはプラスチックマトリックス複合体のタイプから成ってもよく、また、前記内部パネルおよび外部パネルはそれぞれ、前記少なくとも1つのPCMから車両の内部への熱の伝達を促すために異なる熱伝導率λ
iおよびλ
eを有してもよく、この場合、λ
e>λ
iであり、これらのパネルは、例えば、例えばポリエチレンなどの少なくとも1つのポリオレフィンに基づく。
【0019】
なお、本発明に係る車体構造は、例えば熱のこの伝達を微調整するために、前記パネルおよび前記中間層に加えて、他のプラスチックまたは複合層を含んでもよい。
【0020】
本発明に係る蓄電池を有する電気自動車またはハイブリッド自動車は、前記バッテリーの端子に接続されて好ましくは回転成形、押し出し成形、または、射出成形によって得ることができる先に規定された少なくとも1つの車体構造を備える。別の方法として、本発明に係るこれらの車体構造を形成するための鋳造方法またはブロー成形方法を考え出すことができる。
【0021】
この車両は、それが画定する車室のほぼ全体にわたって、特に車両の側部ドア、後部ドア、および、ルーフの壁に、幾つかの前記車体構造を有利に組み込んでもよい。
【0022】
なお、そのような車両の車体を特徴付ける高い表面積は、車体がその壁領域のほぼ全体にわたって組み込むことが好ましいこの(これらの)PCMを使用してこの車室により(場合により熱を放出しあるいは吸収することにより)熱を伝える前記中間層を用いることにより、車両の車室を効果的に加熱しあるいは冷却するためにうまく使用することができる。
【0023】
蓄電池と車室を画定する車体とを有する電気自動車またはハイブリッド自動車の車室の温度を制御あるいは変更するための本発明に係る方法であって、
a)バッテリーを再充電する間、利用できる電気エネルギーを、車体が備える少なくとも1つの相変化材料PCMにより蓄えられる熱エネルギーへと変換するステップであって、この変換が、車体のこの(これらの)PCMに結合されてバッテリーにより給電される電気部品、好ましくは受動電気部品によって行われるステップと、
b)車両の使用時にバッテリーが放電している間、前記少なくとも1つのPCMの結晶化によりもたらされるa)で蓄えられた熱エネルギーの車室への放出によって車室を加熱するステップであって、車室の冷却は、逆に、この(これらの)PCMの融解によりもたらされる車室からこの(これらの)PCMへの熱の吸収によって得られるステップと、を備える方法。
【0024】
なお、車体に組み込まれるこの(これらの)PCMを使用する車室温度のこの制御は、車両のバッテリーに接続される従来の温度調節システムの主電源または二次電源を介した使用を排除しない。
【0025】
本発明の他の特徴、利点、および、詳細は、非限定的な例示として与えられる本発明の1つの典型的な実施形態の以下の説明を読むことにより明らかになり、この説明は以下の添付図面を参照して与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明に係る車体構造の中間熱伝達層の断面における概略図であり、車両バッテリーが再充電されているときのこの層におけるPCMを使用する熱エネルギー蓄積原理を示している。
【
図2】
図2は、この中間熱伝達層の断面における概略図であり、このバッテリーが放電しているときにこの層によって車両の車室へ熱を放出してこの車室を加熱する原理を示している。
【
図3】
図3は、この中間熱伝達層の断面における概略図であり、逆に、この層によってこの車室から熱を吸収して車室を冷却する原理を示している。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態にしたがって熱可塑性マトリックス中に分散されるこれらのPCMを示す
図1〜
図3の中間熱伝達層のような中間熱伝達層を2つの内部パネルと外部パネルとの間に含む本発明に係る車体構造の一部の断面における部分概略図である。
【
図5】
図5は、この中間熱伝達層に結合される2つの金属電気抵抗器も示す
図4の車体構造の断面における部分概略図である。
【
図6】
図6は、これらの抵抗器の代わりにPTC導電性高分子中に分散されるこれらのPCMを2つの電極間に備えるPTCサーミスタを示す、
図5の別の形態にしたがった本発明に係る車体構造の断面における部分概略図である。
【
図7】
図7は、抵抗器を形成してこれらのPCMを支持する中間層に配置される金属メッシュを示す、
図5の他の別の形態にしたがった本発明に係る車体構造の断面における概略部分図である。
【
図8】
図8は、
図7の金属支持メッシュの概略平面図であり、このメッシュのマイクロキャビティ内に収容されるこれらのPCMを示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
これらの図は、本発明に係る車体構造1,1’,1”の中間熱伝達層2,2’,2”のための2つのPCM、すなわち、PCM1,PCM2の混合を象徴的に単なる一例としてのみ描いており、本発明に係るそのような層2,2’,2”がたった1つのPCMまたは3つ以上のPCMの組み合わせを備えることができることに留意されたい。
【0028】
図1に示されるように、本発明に係る熱伝達方法の第1のステップは、バッテリーが充電されあるいは再充電されているときに利用できる電気エネルギーを、車体に含まれる中間層2が2つのパネル間に備えるPCM、すなわち、PCM1,PCM2によって蓄えられる熱エネルギーへと変換することであり、これらのパネルはそれぞれ車体の内部パネル3および外部パネル4である(これらのパネル3,4は
図4〜
図7において見える)。この電気/熱変換は、中間層2,2’,2”のPCM1およびPCM2に結合されて後述するようにバッテリーの端子に接続される受動電気部品5,5’,5”によって行われ、この蓄積は、前記PCM1およびPCM2の融解の潜熱によって可能にされる。
【0029】
車両の使用時にバッテリーが放電している間に行われる
図2に象徴的に示される第2のステップでは、前記PCM1およびPCM2によって蓄えられる熱エネルギーの車室への放出によって車室が加熱され、この放出はPCMの結晶化によってもたらされる。
【0030】
図3は、車室を冷却するために車室内の過剰な熱を吸収する前記PCM1およびPCM2に存する逆の熱伝達を象徴的に示しており、吸収はPCM1およびPCM2の融解によってもたらされる。
【0031】
例えば、非限定的な例示としてその融点が20℃〜25℃のPCM1およびPCM2を使用することができ、それにより、周囲温度Tが20℃未満のとき(一般的には、
図1および
図2の好ましいシナリオである冬において、この場合、略記”Ext”および”Int”はそれぞれ車体の外部および内部の空間を示している)結晶化によって熱の放出がもたらされ、また、他方では、この温度Tが25℃を超えるとき(一般的には夏において、
図3の好ましいケース)には熱の吸収がもたらされる。
【0032】
図4は、車室の方に面する内部パネル3と、車両の外部の方に面する外部パネル4と、この中間熱伝達層2とを備える本発明に係る車体構造1の一例を示しており、これらのパネル3,4がそれぞれ好ましくは熱可塑性材料または熱可塑性マトリックス複合材料などの熱伝導性で電気絶縁性の材料に基づいており、例えばポリエチレンに基づいていることが強調される。PCM、すなわち、PCM1およびPCM2がその中に分散される熱可塑性マトリックスに関して、該マトリックスは、セルラーマトリックスであることが好ましく、例えばポリプロピレンに基づくことが好ましい。
【0033】
また、
図5〜
図8は、熱をPCM1およびPCM2によって蓄えることができるように中間層2,2’,2”の熱エネルギーへの電気エネルギーの前述した変換を行うことができる受動電気部品5,5’,5”の典型的な実施形態を示しており、この場合、
−
図5では、バッテリーのプラス端子およびマイナス端子にそれぞれ接続されるべき2つの金属抵抗器5から成るこれらの部品を使用しており、金属抵抗器は、内部パネル3を貫通して配置されるとともに、PCM1およびPCM2を含む熱可塑性マトリックスと接触した状態で中間層2に現れ;
−
図6では、正の温度係数PTCサーミスタ5’から成るこれらの部品を使用しており、PTCサーミスタは、熱可塑性マトリックスとしてのPTC導電性高分子6’中に分散されるPCM1およびPCM2と、金属膜または導電プラスチック膜の形態を成す2つの平面電極7’,8’とを伴い、平面電極7’,8’は、このマトリックス6’を両側で挟持するとともに、電極7’,8’にそれぞれ接続される2つの接続配線9’,10’を介してバッテリーのプラス端子およびマイナス端子に接続され;
−
図7および
図8では、PCM1およびPCM2が、前述した熱可塑性マトリックス中に分散されるのではなく、例えば厚さが薄い微細孔メッシュ5”から形成される多孔質金属構造により担持され、該多孔質金属構造は、抵抗器としての機能を果たすとともに、PCM1およびPCM2を収容するマイクロキャビティを有し、メッシュ5”は、このメッシュ5”における2つの別個の場所にそれぞれ接続される2つの接続配線9”,10”を介してバッテリーのプラス端子およびマイナス端子に接続される(なお、別の方法として、この例ではメッシュ5”をPCMを収容する金属発泡体と置き換えることができる)。