特許第6381872号(P6381872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381872
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】長大海上浮体設備
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/44 20060101AFI20180820BHJP
   B63B 35/00 20060101ALI20180820BHJP
   B63B 9/06 20060101ALI20180820BHJP
   B63B 29/00 20060101ALI20180820BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20180820BHJP
   B63B 27/30 20060101ALI20180820BHJP
   B65D 88/04 20060101ALI20180820BHJP
   B65D 88/10 20060101ALI20180820BHJP
   F17C 3/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B63B35/44 C
   B63B35/00 T
   B63B35/44 B
   B63B9/06 101
   B63B29/00 Z
   B63B25/16 101Z
   B63B25/16 103
   B63B27/30
   B65D88/04 Z
   B65D88/10 Z
   F17C3/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-139540(P2013-139540)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-13494(P2015-13494A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】506261143
【氏名又は名称】森元 信吉
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】森元 信吉
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−219049(JP,A)
【文献】 特開2011−219051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/44
B63B 9/06
B63B 25/16
B63B 27/30
B63B 29/00
B63B 35/00
B65D 88/04
B65D 88/10
F17C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ350〜550m、幅45〜80m、深さ25〜35mの長大海上浮体構造を有する浮体設備であって、
船倉内にLNG貯蔵タンクを設置したタンク領域と、天然ガス液化プラントを含む工場領域とが、平面的に見て分離しており、
前方を工場領域、後方をタンク領域及び最後方の居住区とし、前記工場領域の後部で幅方向中央の甲板上に、少なくとも船員が前記工場領域及び前記タンク領域を監視可能なコントロール室を設けたことを特徴とする長大海上浮体設備。
【請求項2】
前記貯蔵タンク領域の少なくとも上には、LNG貯蔵及び搬出用関連配管系統以外の天然ガス液化用工場設備を配置しない請求項1記載の長大海上浮体設備。
【請求項3】
長さ単位での複数のブロック建造方式により、少なくともタンク領域と長さ方向に隣接する工場領域とを個別に建造し、その後、タンク領域と工場領域とを長さ方向に繋ぎ合わせた請求項1または2記載の長大海上浮体設備。
【請求項4】
前記貯蔵タンクは、モス型タンク、メンブレン型タンクまたは独立方形タンクから選ばれる請求項1記載の長大海上浮体設備。
【請求項5】
海上浮体設備の後方に外部との移送場が設けられている請求項1記載の長大海上浮体設備。
【請求項6】
前記工場領域が、天然ガス液化プラント以外に、再ガス化設備、発電所設備、アルミニウム製錬設備あるいはアルミニウム又は鉄のスクラップ再生設備の1又は2以上の付加設備を含む請求項1記載の長大海上浮体設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長大海上浮体設備、特に長大船様の海上浮体設備に関する。さらに詳しくは、LNG貯蔵タンク、天然ガス液化プラント、LNG再液化プラント、電気供給プラント、アルミニウム新地金生産プラント、アルミニウム二次地金生産プラントなどが設けられた長大海上浮体設備に関する。
【背景技術】
【0002】
LNGは、燃焼時に窒素酸化物や亜硫酸ガスの排出量が少ないため、クリーンエネルギーとして年々需要が増大している。LNGは天然ガスを−162℃ほどに冷却して液化したものであり、これをLNG運搬船により消費地に海上輸送している。
【0003】
世界的にエネルギー価格が高騰する中、陸上から遠く離れた大規模海底ガス田の開発プロジェクトが現在本格化している。
【0004】
この傾向に鑑み、海上に、天然ガス液化プラント及びLNG貯蔵タンクを設置した海上浮体設備を設け、この海上浮体設備において、天然ガスの不純物除去や天然ガスを液化し、LNGを貯蔵タンクに貯蔵しつつ、LNG船が到着した時点で、LNG貯蔵タンクからLNGを搬出(出荷)する生産及び輸送方式が注目を浴びている。
陸上に液化プラントを建設する場合と比較して、海洋ガス田及び海中から陸上までの海底パイプライン設備の敷設を削減できることや、沿岸部の開発を伴わないため環境負荷を低減できること、ガス田開発とは異なる国や地域でLNG−FPSOを建造して現地へ曳航できるため労働者確保が比較的容易であること等の利点を有する
これに用いるのが、LNG−FPSO(Floating LNG Production,Storage and Off−loading system)と呼ばれるものであり、海底ガス田から生ずるガスを洋上で液化してLNGを生産し、それをタンクに貯蔵し、LNG運搬船に積み出す機能を備えている。
LNG−FSRU(Floating LNG Storage and Re−gasification Unit)は、LNG運搬船から受容したLNGをガス化して陸上に送り出す機能を有するものである。
【0005】
LNG-FPSOは、生産した大量のLNGを貯蔵するためのタンクを備えるが、そのタンク構造は、これまでのLNG運搬船の建造で培われてきたLNGタンク技術が採用される。しかし、LNG-FPSOとLNG運搬船では、LNG貯蔵タンクの使われ方は同じではないので注意を要する。LNG運搬船の場合、LNG貯蔵タンクは満載か空荷のいずれかの状態で運用され、半載状態はないので、荒天時でも、タンク内の貨液が激しく波立つ現象(スロッシング現象)は起きにくい。荷役作業時だけは、タンク液位が大きく変化するが、荷役作業はたいてい波風の静かな港内で行われていたので、スロッシング(sloshing)はほとんど無視することができた。
【0006】
一方、LNG-FPSOは、気象条件の厳しい外洋に常時係留され、そのLNG貯蔵タンクの液位は、LNG生産量とLNG運搬船への積み出し量の兼ね合いで刻々変動し、半載状態が日常的に生じるので、スロッシング現象が起き易い。
LNG-FPSOでもう一つ重要なことは、LNG運搬船への貨液の積込みが、STS(ship to ship)で、特に、LNG−FPSOにLNG運搬船を横付け(side by side)してローディングアーム、特殊ホース接続方式等を使って行なうことが考えられている。これまでのLNG運搬船が安全な港内に設けられたバースに係船して荷役が行われていたことを考えると、このような外洋でのSTS荷役はリスクが高く、LNG−FPSOとそれに接舷しようとするLNG運搬船との間で衝突事故が起こって船体を損傷したり、ローディングアームからの貨液の漏れによって船体損傷などの事故が起こり得ると考えられる。したがって、LNG−FPSOのタンク及び船の設計に当たっては、このようなリスクも十分に考慮することが必要である。
【0007】
LNG運搬船で従来から用いられてきたLNG貯蔵タンクには、自立球形タンク(MOSS方式タンク)、自立角型タンク(SPB方式)およびメンブレンタンクがあり、LNG−FPSOの貯蔵タンクとしても、これら3つのタンク形式のいずれかを採用できる。
【0008】
自立球形タンクであるが、これはアルミ合金で作られた自立式のタンクであり、その赤道部から伸びるスカートを介して、二重船殻構造で作られた船倉内に支持される。断熱層はタンクの外面に施される(外断熱方式)。自立球形タンクは球形であるが故に、船倉内への収まりが悪く、容積効率がよくないという欠点がある。しかしながら、この方式のタンクでは、外断熱式であるので、荒天時におけるスロッシングによっても、断熱層に損傷が生ずることはない。
【0009】
自立角型タンクは、本体がアルミ合金製の方形タンクであり、タンクを補強する桁材はタンクの内側に設けられ、断熱材はタンクの外面に設けられる。このものでは、角型タンクと船の内殻の間にボイドスペースが必要であり、その分、タンクの容積効率が小さくなる。他方、タンク内に桁材を設けることができるので、荒天時、液荷のスロッシングが起こりにくく、たとえ起こっても、タンクの外面にある断熱層は損傷を受けない。
【0010】
メンブレン方式であるが、これは二重船殻構造で作られた船倉内面に、断熱層を間に挟んでニッケル鋼やステンレス鋼の薄板(メンブレン)を張ってLNGタンクを形成する。この方式では、船倉容積のほとんどをタンク容積として利用することができ、容積効率が優れる。反面、液荷のスロッシングによって、メンブレンや断熱層が損傷を受けやすいという欠点がある。また、保冷工事、特にメンブレン同士の溶接が複雑であり、建造に長い工期を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許5697312号
【特許文献2】米国特許7137365号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
LNG−FPSOについては、本発明者が知る限り数隻が建造中である。LNG−FPSOは、LNG貯蔵タンクのほか天然ガス液化プラントも設置するので、安全性に特に注意を払う必要がある。
【0013】
前述のように、LNG-FPSOは、気象条件の厳しい外洋に常時係留され、そのLNG貯蔵タンクの液位は、LNG生産量とLNG運搬船への積み出し量の兼ね合いで刻々変動し、半載状態が日常的に生じるので、スロッシング現象が起き易い。
しかも、作業員にとっては、天候に左右されながら、海上浮体設備上で長期間勤務を続行することを余技なくされ、労働及び生活環境上最大限の改善を図ることが必要である。
【0014】
したがって、本発明の主たる目的は、これらの課題を解決し、従来のLNG-FPSO以上の安全性及び快適性の向上を担保した海上浮体設備を提供すると共に、生産したLNGをより有効的に工場設備、電力供給設備にて利用することにある。
【0015】
その他の課題は、以下の説明により明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
【0017】
<請求項1記載の発明>
長さ350〜550m、幅45〜80m、深さ25〜35mの長大海上浮体構造を有する浮体設備であって、
船倉内にLNG貯蔵タンクを設置したタンク領域と、天然ガス液化プラントを含む工場領域とが、平面的に見て分離しており、
前方を工場領域、後方をタンク領域及び最後方の居住区とし、前記工場領域の後部で幅方向中央の甲板上に、少なくとも船員が前記工場領域及び前記タンク領域を監視可能なコントロール室を設けたことを特徴とする長大海上浮体設備。
【0018】
(作用効果)
LNG-FPSOは、LNG運搬船は、共に従来のLNG船に比較してより一層のスロッシング現象の対策が重要である。また、LNG−FPSOは、LNG貯蔵タンクのほか天然ガス液化プラント、LNG再液化プラント、電気供給プラント、アルミニウム新地金生産プラント、アルミニウム二次地金生産プラント、鉄スクラップ処理プラント、他の生産プラントなどの工場施設も設置するので、安全性に特に注意を払う必要がある。作業員の労働及び生活環境上最大限の改善を図ることも必要である。
本発明では、船倉内にLNG貯蔵タンクを設置したタンク領域と、天然ガス液化プラントを含む工場領域とが、平面的に見て分離している。この最大の利点は、具体的に後述するように、安全性が高まる構造を取ることができるようになることである。
本発明に従って、長さ350〜550m、幅45〜80m、深さ25〜35mの長大な海上浮体設備とすると、工場施設の各装置・機器・配管(これらを「装置類」とも言うことがある。)などを安全なスペースをもって配置できる。また、各装置類を平面的配置とすることにより、ガス比重差によるガス滞留事故を最少化できる。さらに、平面的配置は装置類の保守点検を容易にする。
長大化に伴ってスロッシングに対する危険性が大きくなるが、LNGタンクの組み合わせ配置を最適化する、長大化に伴ってタンク容積量を増大できるバラストタンク配置又は運転操作の最適化によって、スロッシングの対策が可能である。
長さ及び幅が下限値未満であると、安定性において難を生じることがある。また、長さ、幅及び深さが十分大きいので、必要な貯蔵タンクスペース、工場スペースを容易に確保できる。他方、長さ、幅及び深さが過度に大きくとも、ムダなスペースが発生するとともに、造船所で大きさ的に建造限界に達してしまう。
他方で、タンク領域と工場領域とを分離し、その境界に、船員が前記工場領域及び前記タンク領域を目視可能なコントロール室を設けたので、安全性が高まる。なお、コントロール室は単に監視室以外に、コントロール機器や非常用操作機器を配置し、操作室としても使用できる。
なお、海上浮体設備の長大化のために風下舷の海面がより安定するので、スロッシング現象を嫌うタンク領域は後方に配置するので好ましいのである。
【0019】
<請求項2記載の発明>
前記貯蔵タンク領域の少なくとも上には、LNG貯蔵及び搬出用関連配管系統以外の天然ガス液化用工場設備を配置しない請求項1記載の長大海上浮体設備。
【0020】
(作用効果)
貯蔵タンク領域内に、ガス比重が空気より軽いガス、ほぼ同じガス、重いガスが入り込む可能性を排除するため、貯蔵タンク領域の少なくとも上には、LNG貯蔵及び搬出用の関連配管系統以外の天然ガス液化用工場設備を配置しない。これにより、安全性を高めることができる。
【0021】
<請求項3記載の発明>
長さ単位での複数のブロック建造方式により、少なくともタンク領域と長さ方向に隣接する工場領域とを個別に建造し、その後、タンク領域と工場領域とを長さ方向に繋ぎ合わせた請求項1または2記載の長大海上浮体設備。この場合、タンク領域におけるタンク数は1〜5個程度が好ましい。また、複数のタンクとする場合、タンクの形式を同一とするほか、異ならせてもよい。
【0022】
(作用効果)
タンク領域と長さ方向に隣接する工場領域とは、別個の浮体構造物として建造できる。そこで、長さ単位での複数のブロック建造方式により、少なくともタンク領域と長さ方向に隣接する工場領域とを個別に、時間的に同時併行的に建造し、その後、タンク領域と工場領域とを、その船殻のパラレルボディを利用して、長さ方向に繋ぎ合わせると、全体の建造時間を大幅に短縮できる。
長大海上浮体設備を、改造船を利用して建造する場合、工場領域分については、大型のタンカー船や鉱石運搬船を利用し、これに若干の改造を加え、他方で、注意深くブロック建造したタンク領域の新造ブロックと繋ぎ合せることも可能であり、その結果、大幅なコストの低減も可能である。
【0023】
【0024】
【0025】
<請求項4記載の発明>
前記貯蔵タンクは、モス型タンク、メンブレン型タンクまたは独立方形タンクから選ばれる請求項1記載の長大海上浮体設備。
【0026】
(作用効果)
前記貯蔵タンクとしては、モス型タンク、メンブレン型タンクまたは独立方形タンクから選ぶことができ、また、複数種のタンクも設置可能である。
【0027】
<請求項5記載の発明>
海上浮体設備の後方に外部との移送場が設けられている請求項1記載の長大海上浮体設備。
(作用効果)
海上浮体設備の長大化のために風下舷の海面がより安定し、その海面を利用してSTSLNG運搬船への貨液の積込みが、STS(ship to ship)、物資の移送、作業員の移送がより安全に実施できる。
【0028】
(作用効果)
本発明の「LNG船」の用語は、LNG運搬船、FLNG船、FSRU船、SRV船など、LNGを利用した工場船を含む広義で使用している。
【0029】
<請求項6記載の発明>
前記工場領域が、天然ガス液化プラント以外に、再ガス化設備、発電所設備、アルミニウム製錬設備あるいはアルミニウム又は鉄のスクラップ再生設備の1又は2以上の付加設備を含む請求項1記載の長大海上浮体設備
(作用効果)
貯蔵タンクに貯蔵した安価なLNGを利用できるので、工場領域が、天然ガス液化プラント以外に、再ガス化設備、発電所設備、アルミニウム精錬設備あるいはアルミニウム又は鉄のスクラップ再生設備の1又は2以上の付加設備を含まることができる。これにより、長大海上浮体設備は種々の機能をもった工場を有するようになる。
【発明の効果】
【0030】
以上のとおり、本発明によれば、従来のLNG-FPSO以上の安全性及び快適性を担保した海上浮体設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】LNG船の正面図である。
図2】LNG船の平面図である。
図3】3−3線矢視の例示図である。
図4】4−4線矢視の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1および図2に示すように、このFLNG1設備は、前から、船首部10、天然ガス液化プラント12を含む工場区域Z1、LNG貯蔵タンク領域Z2(図示例では、これはさらに3つの自立球形(モス型)タンクZ21,Z21,Z21とメンブレン式タンクZ22に分かれている)、機関室14、船尾部16の順で連なっており、機関室の上に居住区18さらに操舵室20が設けられている。タンク区画は横隔壁24によって複数の区画に仕切られている。
【0034】
船首部10にはLNG-FPSOに必要なターレット6が設けられており、海底に固定されたアンカーから延びる係留索7はこのターレット6に接続され、一点係留の状態で各種作業を行う。ターレット6には、海底から立ち上がってくるライザーパイプ8も接続され、ガス田で採取された天然ガスは、このパイプ8を通って、船上の貯蔵タンク領域Z2に送られる。
なお、係留及びLNG取り入れには外置きターレット、内置きターレットいずれも利用可能である。
【0035】
天然ガス液化プラント12で精製、液化された天然ガスは、LNG貯蔵タンク領域Z2に設けられたいくつかのLNG貯蔵タンクに送られ、貯蔵される。貯蔵したLNGの払い出しは、LNG-FPSO設備1にLNG運搬船を横付けし、上甲板上に設けられたローディングアームまたは特殊ホース(図示しない。)を用いて貨液をLNG運搬船に積み込む。
【0036】
図3及び図4はLNG-FPSOの中央タンク部断面図であり、改装前の原油/鉱石専用船が備えていた外殻30と内殻31からなる二重船殻構造をそのまま使い、外殻と内殻の間のスペース12を海水バラストタンクとして用いる。内殻31と上甲板32で囲まれたスペースも、左右一対の縦隔壁33と何枚かの横隔壁24とでいくつかの区画に仕切られている。左右縦隔壁33,33の間に形成される中央列の区画は、もともと原油兼鉱石艙であったところであり、これらの区画を利用して、いくつかのメンブレン式のLNG貯蔵タンク16を形成する。左右の列区画17(もとの原油タンク)は、清水やコンデンセート、パワー設備用などとして用いることができる。
【0037】
メンブレン式タンクZ22は、甲板下の主タンク22aと甲板上の箱状の頭部タンク22bから構成される。この船が原油/鉱石船であった頃、上甲板には、鉱石を積むための倉口(ハッチウエー)が開いており、倉口の周りを取り囲んでハッチコーミングが立っていた。改装時には、このハッチコーミングに継ぎ足すようにして側壁を上に伸ばし、天井を設けることで頭部タンク22bを形成できる。
こうして作られる頭部タンク22bは、甲板上に開いていた穴(もとの倉口)を通じて主タンク22aとで一つのタンクを形成している。
主タンク22aは、二重底34および左右の縦隔壁33,33の内側に断熱層35を形成し、さらにその上をインバー等のメンブレン36で液密に覆うことにより形成される。頭部タンク22bも、同様に内面に断熱層35とメンブレン36を設ける。
【0038】
自立球形(モス型)タンクZ21は、円筒形の支持構造37により球形タンクを船体に固定し、LNGの荷重をタンク自身が支える独立タンクである。
【0039】
さて、図1及び図2を振り返ってみると、LNG貯蔵タンク領域Z2の少なくとも上には、LNG貯蔵及び搬出用関連配管系統40以外の天然ガス液化用工場設備を配置しないようにしてある。
【0040】
さらに、天然ガス液化プラント12を含む工場区域Z1には、冷却ボックス41、ガスボイラー42、コンプレッサー及びタービン43、他設備44、46などが、倉内や上甲板32上などの所用位置に配置、設置されている。47はアルミニウム新地金、二次地金生産プラントである。50はパワープラント室である。
【0041】
この場合、工場区域Z1では、上甲板32下方に、1〜3程度の床fを設けて、各種設備を配置すると、各種設備が分散配置されることにより、安全性が高まる。また、天然ガス液化プラント12は、たとえば右舷側に1号機を、左舷側に2号機を配置するなど、左右に分散配置することで、一方の天然ガス液化プラントが停止した場合、他方の天然ガス液化プラントを運転することにより、生産が途切れることなく運転できる。
【0042】
上記の海上浮体設備は、長さ単位での複数のブロック建造方式により、少なくともタンク領域と長さ方向に隣接する工場領域とを個別に建造し、その後、タンク領域と工場領域とを長さ方向に繋ぎ合わせて得ることができる。すなわち、タンク領域Z2と長さ方向に隣接する工場領域Z1とは、建造方式も異なる。そこで、長さ単位での複数のブロック建造方式により、少なくともタンク領域Z2と長さ方向に隣接する工場領域Z1とを個別に、時間的に同時併行的に建造し、その後、タンク領域Z2と工場領域Z1とを長さ方向に繋ぎ合わせると、全体の建造時間を大幅に短縮できる。
必要ならば、最後部領域Z3も分割建造し、繋ぎ合わせることができる。
【0043】
タンク領域Z2と工場領域Z1とを分離した境界に、船員が前記工場領域及び前記タンク領域を目視又は遠隔監視可能なコントロール室45を設けることが望ましい。この監視により、安全性が高まる。なお、コントロール室は単に監視室以外に、コントロール機器や非常用操作機器を配置し、操作室としても使用できる。
【0044】
本発明によれば、海上浮体設備の長大化のために風下舷の海面がより安定するので、スロッシング現象を嫌うタンク領域は前方でなく、後方に配置するので好ましいのである。
また、LNG運搬船への貨液の積込み(STS(ship to ship))、物資の移送、作業員の移送などは、浮体設備1の後方で行うことができる。
【0045】
なお、浮体設備の長さL、幅W及び深さDは図示のとおりである。
【0046】
上記の実施の形態はさらに適宜組み合わせて採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、FLNG船(LNG−FPSO(Floating Production, Storage and Off−loading system))、FSRU船、SRV船に適用できる。
【0048】
本発明のLNG船は、再ガス化設備を含むが、その例として、FSRU(Floating Storage and Re−gasification Unit)やSRV(Shuttle and Re−gasification Vessel)がある。FSRUでは再ガス化装置を搭載し、LNG貯蔵能力を有する船を洋上で固定し、他のLNG船からLNGを受け入れる。FSRUにて再ガス化した天然ガスを、陸上のパイプラインへ送り出す。SRVは他のLNG船からのLNG移送は行わず、液化基地で搭載したLNGを受け入れ地点まで輸送し、甲板上で再ガス化して陸上のパイプラインへガスを送り出す。
【符号の説明】
【0049】
1…FLNG(LNG−FPSO)設備、6…ターレット、10…船首部、12…天然ガス液化プラント、14…機関室、16…船尾部、17…列区画、18…居住区、20…操舵室、Z21…自立球形(モス型)タンク、Z22…メンブレン式タンク、横隔壁24、30…外殻、31…内殻、33…縦隔壁、45…コントロール室、Z1…工場区域、Z2…LNG貯蔵タンク領域、L…長さ、W…幅、D…深さ。
図1
図2
図3
図4