(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記R1〜R10の隣接した2以上の何れかは互いに結合して、R1とR6またはR2とR10を含む芳香環以外の飽和または不飽和の環を形成することを特徴とする請求項1又は2の何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
請求項1〜3の何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一つに含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(Organic Electroluminescence Display:有機EL表示装置)の開発が盛んになってきている。有機EL表示装置は、液晶表示装置等とは異なり、陽極及び陰極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることにより、発光層における有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)としては、例えば、陽極、陽極上に配置された正孔輸送層、正孔輸送層上に配置された発光層、発光層上に配置された電子輸送層及び電子輸送層上に配置された陰極から構成された有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている。陽極からは正孔が注入され、注入された正孔は正孔輸送層を移動して発光層に注入される。一方、陰極からは電子が注入され、注入された電子は電子輸送層を移動して発光層に注入される。発光層に注入された正孔と電子とが再結合することにより、発光層内で励起子が生成される。有機エレクトロルミネッセンス素子は、その励起子の輻射失活によって発生する光を利用して発光する。尚、有機エレクトロルミネッセンス素子は、以上に述べた構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0004】
有機エレクトロルミネッセンス素子を表示装置に応用するにあたり、有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化及び長寿命化が求められており、有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化及び長寿命化を実現するために、正孔輸送層の定常化、安定化、耐久化などが検討されている。
【0005】
正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては、カルバゾール誘導体や芳香族アミン系化合物等の様々な化合物が知られているが、素子の長寿命化に有利な材料として、縮合環で置換したカルバゾール誘導体が提案されている(特許文献1〜4)。しかしながら、芳香族アミン系化合物等は電子耐性が低いことから、これらの材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子も充分な発光寿命を有しているとは言い難く、現在では一層、高効率で低電圧駆動が可能であり、発光寿命の長い有機エレクトロルミネッセンス素子が望まれている。特に、赤色発光領域および緑色発光領域に比べて、青色発光領域では、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率が低いため、発光効率の向上が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題を解決するものであって、高効率、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、下記一般式(1)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【化1】
式中、Ar
1は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、または炭素数1以上15以下のアルキル基であり、Ar
2は炭素数6以上30以下の炭素原子骨格を有する縮合環、または炭素原子及び窒素原子を骨格に有する縮合環であり、前記Ar
1と前記Ar
2とは互いに異なる置換基であり、R
1〜R
17は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、ハロゲン原子または重水素原子であり、a及びbは0以上3以下の整数であり、L
1とL
2は単結合または炭素数4以上の2価の連結基である。
【0009】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一方のカルバゾール部位に縮合環部位を導入することにより、正孔輸送性と電子耐性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子において高効率、長寿命の正孔輸送層を形成することができる。
【0010】
また、本発明の一実施形態によると、下記一般式(2)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【化2】
式中、Ar
1は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、または炭素数1以上15以下のアルキル基であり、Ar
2は炭素数6以上30以下の炭素原子骨格を有する縮合環、または炭素原子及び窒素原子を骨格に有する縮合環であり、前記Ar
1と前記Ar
2とは互いに異なる置換基であり、R
1〜R
17は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、ハロゲン原子または重水素原子であり、a及びbは0以上3以下の整数であり、L
1とL
2は単結合または炭素数4以上の2価の連結基である。
【0011】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一方のカルバゾール部位に縮合環部位を導入することにより、正孔輸送性と電子耐性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子において高効率、長寿命の正孔輸送層を形成することができる。
【0012】
また、本発明の一実施形態によると、下記一般式(3)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【化3】
式中、Ar
1は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、または炭素数1以上15以下のアルキル基であり、Ar
2は炭素数6以上30以下の炭素原子骨格を有する縮合環、または炭素原子及び窒素原子を骨格に有する縮合環であり、前記Ar
1と前記Ar
2とは互いに異なる置換基であり、R
1〜R
17は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、ハロゲン原子または重水素原子であり、a及びbは0以上3以下の整数であり、L
1とL
2は単結合または炭素数4以上の2価の連結基であり、L
3は炭素数4以上の2価の連結基である。
【0013】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一方のカルバゾール部位に縮合環部位を導入することにより、正孔輸送性と電子耐性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子において高効率、長寿命の正孔輸送層を形成することができる。
【0014】
また、本発明の一実施形態によると、前記何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層に含む有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、一方のカルバゾール部位に縮合環部位を導入した有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いることで、正孔輸送性と電子耐性が向上し、高効率、長寿命を実現することができる。
【0016】
また、本発明の一実施形態によると、前記何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一つに含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0017】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、一方のカルバゾール部位に縮合環部位を導入した有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一つに含むことにより、正孔輸送性と電子耐性が向上し、高効率、長寿命を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、高効率、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述の問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者は、カルバゾール部位に縮合環部位を導入した有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いることにより、電子耐性が低い芳香族アミン化合物では達成できなかった高効率、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子を実現可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
以下、図面を参照して本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。但し、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料の一般式を下記式(4)で示される2つのカルバゾール部位を有し、一方のカルバゾール部位に縮合環部位を導入したカルバゾール誘導体である。
【化4】
【0023】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、式(4)中、Ar
1は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、または炭素数1以上15以下のアルキル基であり、Ar
2は炭素数6以上30以下の炭素原子骨格を有する縮合環、または炭素原子及び窒素原子を骨格に有する縮合環であり、Ar
1とAr
2とは互いに異なる置換基である。
【0024】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、式(4)中、R
1〜R
17は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、ハロゲン原子または重水素原子であり、a及びbは0以上3以下の整数であり、L
1とL
2は単結合または炭素数4以上の2価の連結基であり、L
3は炭素数4以上の2価の連結基である。
【0025】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一方のカルバゾール部位に縮合環部位を導入することにより、正孔輸送性と電子耐性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子において高効率、長寿命の正孔輸送層を形成することができる。
【0026】
なお、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、式(4)中のR
1〜R
10の隣接した2以上の何れかが互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成してもよい。
【0027】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、より具体的には、下記一般式(5)で表されるフェニレン基を介して結合した2つのカルバゾール部位を有し、一方のカルバゾール部位に縮合環部位を導入したカルバゾール誘導体である。
【化5】
【0028】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、式(5)中、Ar
1は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、または炭素数1以上15以下のアルキル基であり、Ar
2は炭素数6以上30以下の炭素原子骨格を有する縮合環、または炭素原子及び窒素原子を骨格に有する縮合環であり、Ar
1とAr
2とは互いに異なる置換基である。
【0029】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、式(5)中、R
1〜R
17は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、ハロゲン原子または重水素原子であり、a及びbは0以上3以下の整数であり、L
1とL
2は単結合または炭素数4以上の2価の連結基である。
【0030】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、フェニレン基を介して結合した2つのカルバゾール部位を有し、一方のカルバゾール部位に縮合環部位を導入したカルバゾール誘導体であることにより、化合物全体のπ共役が適度に広がり、正孔輸送性の向上が期待できる。
【0031】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、より具体的には、下記一般式(6)で表されるフェニレン基を介して2つのカルバゾール部位が結合したカルバゾール誘導体であり、縮合環部位を導入した一方のカルバゾール部位は、2位の位置でフェニレン基に結合する。
【化6】
【0032】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、式(6)中、Ar
1は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、または炭素数5以上15以下のアルキル基であり、Ar
2は炭素数6以上30以下の炭素原子骨格を有する縮合環、または炭素原子及び窒素原子を骨格に有する縮合環であり、Ar
1とAr
2とは互いに異なる置換基である。
【0033】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、式(6)中、R
1〜R
17は炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、ハロゲン原子または重水素原子であり、a及びbは0以上3以下の整数であり、L
1とL
2は単結合または炭素数4以上の2価の連結基である。
【0034】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、フェニレン基を介して2つのカルバゾール部位が結合したカルバゾール誘導体であり、縮合環部位を導入した一方のカルバゾール部位は、2位の位置でフェニレン基に結合することにより、HOMOのエネルギー準位が下がることで正孔注入性を調整することができる。
【0035】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化7】
【0036】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化8】
【0037】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化9】
【0038】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化10】
【0039】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に好適に用いることがでる。また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることができる。これにより、正孔輸送性と電子耐性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化、長寿命化を実現することができる。
【0040】
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す模式図である。有機エレクトロルミネッセンス素子100は、例えば、基板102、陽極104、正孔注入層106、正孔輸送層108、発光層110、電子輸送層112、電子注入層114及び陰極116を備える。一実施形態において、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に用いることがでる。また、一実施形態において、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることができる。
【0041】
例えば、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を正孔輸送層108に用いる場合について説明する。基板102は、例えば、透明ガラス基板や、シリコン等から成る半導体基板樹脂等のフレキシブルな基板であってもよい。陽極104は、基板102上に配置され、酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等を用いて形成することができる。正孔注入層106は、陽極104上に配置され、例えば、4,4',4"-Tris (N-1-naphtyl-N-phenylamino) triphenylamine (1-TNATA)、4,4 -Bis(N,N -di(3-tolyl)amino)-3,3-dimethylbiphenyl (HMTPD) 等を含む。正孔輸送層108は、正孔注入層106上に配置され、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いて形成される。発光層110は、正孔輸送層108上に配置され、例えば、9,10-Di(2-naphthyl)anthracene(ADN)を含むホスト材料にTetra-t-butylperylene (TBP) をドープして形成することができる。電子輸送層112は、発光層110上に配置され、例えば、Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminium(Alq3)を含む材料により形成される。電子注入層114は、電子輸送層112上に配置され、例えば、フッ化リチウム(LiF)を含む材料により形成される。陰極116は、電子注入層114上に配置され、Al等の金属や酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明材料により形成される。上記薄膜は、真空蒸着、スパッタ、各種塗布など材料に応じた適切な成膜方法を選択することにより、形成することができる。
【0042】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100においては、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いることにより、高効率、長寿命の正孔輸送層が形成される。なお、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、TFTを用いたアクティブマトリクスの有機EL発光装置にも適用することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100においては、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層、または発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることにより、高効率、長寿命を実現することができる。
【実施例】
【0044】
(製造方法)
上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、例えば、以下のように合成することができる。
【化11】
【0045】
(化合物Aの合成)
アルゴン雰囲気下で、1Lの四つ口フラスコに3−(4−ブロモフェニル)−9−フェニル−9H−カルバゾール 20.0gを入れ、350mLのTHF溶媒中で、−78℃で5分攪拌した。そこへ、1.64Mのn−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液) 36.7mL加え−78℃で1時間攪拌した。次にトリメトキシボラン 11.2mL加え室温で2時間攪拌した。その後、2M塩酸水溶液 200mL加え室温で3時間攪拌した。有機層を分取して溶媒留去した。その後、酢酸エチル/ヘキサン溶媒系で再沈殿を行い、白色固体の化合物Aを15.69g(収率85%)得た。
【0046】
(化合物Bの合成)
アルゴン雰囲気下で、1Lの四つ口フラスコに、化合物A 14.0gと3−ブロモカルバゾール 10.4g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh
3)
4) 3.12g、炭酸カリウム(K
2CO
3) 10.7g、水80mL、エタノール30mLを加え、400mLのトルエン溶媒中で、90℃で4時間攪拌した。空冷後、有機層を分取して溶媒留去した。その後、トルエンで再結晶を行い、白色固体の化合物Bを13.1g (収率70%)得た。
【0047】
(化合物10の合成)
アルゴン雰囲気下、500 mLの三つ口フラスコに、化合物B 9.70gと2−ブロモトリフェニレン 6.76g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0) (Pd
2(dba)
3) 1.45g、トリ−tert−ブチルホスフィン((t−Bu)
3P) 510mg、ナトリウムtert−ブトキシド 5.77gを加えて、50mLキシレン溶媒中で、120℃で12時間加熱攪拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒を使用)で精製後、トルエン/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物10を10.7g(収率75%)得た。
【0048】
(化合物の同定方法)
化合物の同定は、
1H−NMR測定及びFAB−MS測定により行った。
【0049】
(化合物Aの同定)
1H−NMR測定で測定された化合物Aのケミカルシフト値は、8.47(d,1H),8.40(d,2H),8.23(d,1H),7.89(d,1H),7.75−7.79(m,1H),7.59−7.64(m,4H),7.42−7.52(m,4H),7.25−7.36(m,1H),1.58(s,2H)であった。
【0050】
(化合物Bの同定)
FAB−MS測定により測定された化合物Bの分子量は、484であった。
【0051】
(化合物10の同定)
1H−NMR測定で測定された化合物10のケミカルシフト値は、8.84−8.86(m,2H),8.70−8.73(m,3H),8.57(d,1H),8.44(q,2H),8.24−8.30(m,2H),7.82−7.88(m,5H),7.53−7.76(m,12H),7.30−7.49(m,7H)であった。また、FAB−MS測定により測定された化合物10の分子量は、710であった。
【0052】
上述したような製造方法を用いて、実施例1〜3の化合物を得た。また、比較例として、比較例1及び比較例2を準備した。
【化12】
【0053】
実施例1〜3及び比較例1、2を正孔輸送材料として用いて、上述した有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。本実施例においては、基板102には透明ガラス基板を用い、150nmの膜厚のITOで陽極104を形成し、60nmの膜厚のTNATAで正孔注入層106を形成し、30nmの膜厚の正孔輸送層108を形成し、ADNにTBPを3%ドープした25nmの膜厚の発光層110を形成し、25nmの膜厚のAlq3で電子輸送層112を形成し、1nmの膜厚のLiFで電子注入層114を形成し、100nmの膜厚のAlで陰極116を形成した。
【0054】
作成した有機エレクトロルミネッセンス素子について、電圧、電流効率及び半減寿命を評価した。なお、電流効率は10mA/cm
2における値を示し、半減寿命は初期輝度1,000cd/m
2からの輝度半減時間を示す。評価結果を表1に示す。
【表1】
【0055】
表1から明らかなように、実施例1〜3の化合物は、比較例1及び2の化合物に比して、低電圧で有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動させた。また、電流効率においては、比較例1は比較例2に比べ高い半減寿命を示した。これは、縮合環部位を導入することにより電子耐性が向上したためと推察される。また、実施例1〜3の化合物は、比較例1及び比較例2に比して有意に高い電流効率と長い寿命を示した。これは、実施例1〜3の化合物において一方のカルバゾール部位にのみ縮合環部位を導入したことによって、分子全体で非対称構造となり、分子配向性やアモルファス膜質に影響を与えたためと推察される。
【0056】
特に、実施例1の化合物においては、一方のカルバゾール部位にトリフェニレン部位を導入することにより、正孔輸送性と電子耐性が飛躍的に向上することが示された。また、実施例2の化合物においては、一方のカルバゾール部位にナフチル基を導入することにより、実施例1に比して半減寿命は短いものの、正孔輸送性と電子耐性が格段に向上することが示された。一方、実施例3の化合物においては、一方のカルバゾール部位にトリフェニレン部位を導入したが、2つのカルバゾール部位がナフチレン基を介して結合することにより、フェニレンに比べ電子耐性が向上したが、2つのナフチレン基の両極性により正孔輸送性が低下したと推察される。
【0057】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一方のカルバゾール部位に縮合環部位を導入することにより、正孔輸送性と電子耐性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子において電子耐性が低い芳香族アミン化合物では達成できなかった高効率、長寿命の正孔輸送層を形成することができる。