特許第6381880号(P6381880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381880
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   A61B5/055 311
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-194520(P2013-194520)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-58220(P2015-58220A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年7月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 健輔
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−172915(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/041084(WO,A1)
【文献】 特開2003−225225(JP,A)
【文献】 特開2009−000370(JP,A)
【文献】 特開2010−088872(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0154646(US,A1)
【文献】 特開2013−102889(JP,A)
【文献】 篠田 健輔,P-3-232 脊椎MRIにおける画像輝度分布の特徴解析処理を用いた矢状断面及び椎間板断面の自動検出方法の開発,日本磁気共鳴医学会雑誌,2013年 9月18日,Vol.33 SUPPLEMENT,448頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め画像上で撮像断面を設定する第1の設定部と、
前記第1の設定部によって少なくとも2軸の方向に傾きを有する前記撮像断面が設定された場合に、前記撮像断面に対して設定される位相エンコード方向の向きを、前記撮像断面の少なくとも2軸分の傾きの情報を用いて、前記撮像断面に垂直な軸を回転軸とした面内回転によって、前記撮像断面内であって基準となる方向に基づき定まる向きに設定する第2の設定部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第2の設定部は、前記撮像断面内において前記撮像断面の傾きと同一の傾きを有するベクトルを前記撮像断面の傾きの情報を用いて算出し、当該ベクトルと前記基準となる方向とに基づき、前記位相エンコード方向の向きを設定することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第2の設定部は、前記位置決め画像に平行な方向に基づいて、前記位相エンコード方向の向きを設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記第2の設定部は、先に設定されている他の撮像断面の位相エンコード方向の向きに基づいて、前記第1の設定部によって新たに設定された撮像断面の位相エンコード方向の向きを設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第2の設定部は、被検体の前後方向、左右方向及び頭尾方向のいずれか一つに基づいて、前記位相エンコード方向の向きを設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記第2の設定部は、前記第1の設定部によって前記撮像断面が設定された際に、当該撮像断面の位相エンコード方向の向きを設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
被検体の画像に基づいて、撮像対象となる被検体の対象部位の位置及び向きを示す位置情報を検出する検出部をさらに備え、
前記第1の設定部は、前記位置情報に基づいて前記撮像断面を設定することを特徴とする請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記位置決め画像上で撮像断面を追加する指示を受け付ける受付部をさらに備え、
前記第2の設定部は、前記指示が受け付けられた場合に、当該指示により追加された撮像断面について前記位相エンコード方向の向きを設定することを特徴とする請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
位相エンコード方向を一括して設定する指示を受け付ける受付部をさらに備え、
前記第2の設定部は、前記指示が受け付けられた場合に、設定済みの撮像断面について前記位相エンコード方向の向きを設定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
椎間板及び椎体のうち少なくとも一方を含む位置決め画像上で、少なくとも2軸の方向に傾きを有する撮像断面の設定を受け付ける撮像断面受付部と、
前記撮像断面受付部によって設定された撮像断面それぞれの、少なくとも2軸分の傾きの情報と、全撮像断面に共通に適用される基準とを用いて、各撮像断面内において、当該撮像断面に垂直な軸を回転軸とした面内回転によって、当該撮像断面の傾きと同一の傾きを有し、且つ、他の撮像断面との間で向きが揃うように、各撮像断面に対する位相エンコード方向を設定する設定部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置を用いた撮像では、撮像対象となる被検体の対象部位について、あらかじめ撮像断面が設定される。例えば、対象部位の種類や形状によっては、一つの撮像プロトコルで複数の撮像断面が設定される場合や、撮像断面が空間的に傾いて設定される場合もある。そして、撮像断面が設定される際には、撮像プロトコルに応じて良好な画質が得られるように、適切な位相エンコード方向が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−172915号公報
【特許文献2】特開2012−045192号公報
【特許文献3】特開2005−237968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、複数の撮像断面が傾いて設定される場合でも、各撮像断面の位相エンコード方向を揃えることができる磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、第1の設定部と、第2の設定部とを備える。第1の設定部は、位置決め画像上で撮像断面を設定する。第2の設定部は、前記第1の設定部によって少なくとも2軸の方向に傾きを有する前記撮像断面が設定された場合に、前記撮像断面に対して設定される位相エンコード方向の向きを、前記撮像断面の少なくとも2軸分の傾きの情報を用いて、前記撮像断面に垂直な軸を回転軸とした面内回転によって、前記撮像断面内であって基準となる方向に基づき定まる向きに設定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成を示す図である。
図2図2は、複数の撮像断面のPE方向を揃える機能の一例を示す図(1)である。
図3図3は、複数の撮像断面のPE方向を揃える機能の一例を示す図(2)である。
図4図4は、複数の撮像断面のPE方向を揃える機能の一例を示す図(3)である。
図5図5は、複数の撮像断面のPE方向を揃える機能の一例を示す図(4)である。
図6図6は、第1の実施形態に係るMRI装置の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る第1の設定部によって行われる第1の方法を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る第1の設定部によって行われる第2の方法を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る第1の設定部によって行われる第3の方法を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態に係る第1の設定部によって行われる第4の方法を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る第1の設定部によって行われる第5の方法を示す図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る表示制御部によって表示される撮像断面の一例を示す図(1)である。
図13図13は、第1の実施形態に係る表示制御部によって表示される撮像断面の一例を示す図(2)である。
図14図14は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる撮像領域設定方法の処理手順を示すフローチャートである。
図15図15は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われる撮像領域設定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、図面を参照しながら、MRI装置の実施形態を説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成を示す図である。図1に示すように、このMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、シーケンス制御部10、及び計算機システム20を備える。
【0009】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0010】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx,y,zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、x,y,zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、z軸方向は、静磁場と同方向とする。傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0011】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するx,y,zの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gss、位相エンコード用傾斜磁場Gpe及びリードアウト用傾斜磁場Groにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gssは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Gpeは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Groは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0012】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、後述する寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、制御部26による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0013】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から供給される高周波パルス電流によりRF(Radio Frequency)パルス(高周波磁場パルス)を発生する。送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルス電流を送信RFコイル6に供給する。受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、上記のRFパルスの影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。この受信RFコイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、その磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0014】
受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号データを生成する。この受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによってMR信号データを生成する。このMR信号データには、前述したスライス選択用傾斜磁場Gss、位相エンコード用傾斜磁場Gpe及びリードアウト用傾斜磁場Groによって、位相エンコード方向、リードアウト方向、スライスエンコード方向の空間周波数の情報が対応付けられてk空間に配置される。そして、MR信号データを生成すると、受信部9は、そのMR信号データをシーケンス制御部10へ送信する。
【0015】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス実行データに基づいて、傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動することによって、被検体Pのスキャンを実行する。ここでいうシーケンス実行データとは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、被検体Pのスキャンを実行するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。なお、シーケンス制御部10は、シーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動した後に、受信部9からMR信号データが送信されると、そのMR信号データを計算機システム20へ転送する。
【0016】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、計算機システム20は、MRI装置100が有する各部を駆動することで、被検体Pのスキャンや画像再構成などを行う。この計算機システム20は、インタフェース部21、画像再構成部22、記憶部23、入力部24、表示部25及び制御部26を有する。
【0017】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、このインタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス実行データを送信し、シーケンス制御部10からMR信号データを受信する。MR信号データを受信すると、インタフェース部21は、各MR信号データを被検体Pごとに記憶部23に格納する。
【0018】
画像再構成部22は、記憶部23によって記憶されたMR信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータ又は画像データを生成する。また、画像再構成部22は、生成したスペクトラムデータ又は画像データを被検体Pごとに記憶部23に格納する。
【0019】
記憶部23は、後述する制御部26によって実行される処理に必要な各種データや各種プログラムなどを記憶する。例えば、記憶部23は、インタフェース部21によって受信されたMR信号データや、画像再構成部22によって生成されたスペクトラムデータや画像データなどを、被検体Pごとに記憶する。この記憶部23は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。
【0020】
入力部24は、操作者から各種操作を受け付けることで、各種指示や各種情報の入力を受け付ける。この入力部24としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0021】
表示部25は、制御部26による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。この表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0022】
制御部26は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。この制御部26は、例えば、入力部24を介して操作者から入力される撮像条件に基づいて各種のシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データをシーケンス制御部10に送信することによってスキャンを制御する。また、制御部26は、スキャンの結果としてシーケンス制御部10からMR信号データが送られた場合に、そのMR信号データに基づいて画像を再構成するよう画像再構成部22を制御する。
【0023】
以上、MRI装置100の構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、撮像対象となる被検体の対象部位について撮像断面を設定する機能を有する。例えば、対象部位の種類や形状によっては、一つの撮像プロトコルで複数の撮像断面が設定される場合や、撮像断面が空間的に傾いて設定される場合もある。そして、撮像断面が設定される際には、撮像プロトコルに応じて良好な画質が得られるように、適切な位相エンコード(phase encode:PE)方向が設定される。
【0024】
ここで、対象部位について複数の撮像断面が設定される場合には、通常、各撮像断面のPE方向は同じ方向に沿うように揃えて設定される。このため、MRI装置には、複数の撮像断面についてPE方向を揃える機能が備えられる場合もある。例えば、このような機能として、設定済みの複数の撮像断面について、全ての撮像断面を位置決め画像に直交させたうえで、各撮像断面のPE方向を位置決め画像の奥行き方向に揃えて設定し、その後、各撮像断面のPE方向を各撮像断面内で任意の方向に揃えて変更するものがある。
【0025】
図2〜5は、複数の撮像断面のPE方向を揃える機能の一例を示す図である。なお、図2及び4は、それぞれ被検体のサジタル像を示しており、図3及び5は、それぞれ被検体のコロナル像を示している。これらの画像はいずれも位置決め画像として用いられており、各画像上に表示された立方体形状又は矩形状のグラフィックは、それぞれ撮像断面を示している。また、各撮像断面の上面に沿って配置された矢印のグラフィックは、それぞれ各撮像断面のPE方向を示している。
【0026】
例えば、図2及び3に示すように、被検体のサジタル像及びコロナル像を位置決め画像として、各画像上で斜めに傾くように撮像断面が設定されていたとする。このような場合に、上述した機能では、例えば、図4に示すように、サジタル像を用いてPE方向を揃えてしまうと、サジタル像に直交するように撮像断面が設定されることになる。この結果、図5に示すように、コロナル像上では撮像断面の傾きが無くなってしまうことになる。
【0027】
これに対し、本実施形態に係るMRI装置100は、設定された撮像断面について、空間的な傾きを維持した状態で、基準となる方向に基づいて当該撮像断面のPE方向を設定する。したがって、本実施形態によれば、複数の撮像断面が傾いて設定される場合でも、各撮像断面のPE方向を揃えることができる。以下、このようなMRI装置100について詳細に説明する。なお、以下では、撮像の対象部位が椎間板である場合を例に挙げて説明する。
【0028】
図6は、第1の実施形態に係るMRI装置100の詳細な構成を示す機能ブロック図である。なお、図6では、図1に示した計算機システム20が有する各部のうち、インタフェース部21、記憶部23、入力部24、表示部25、及び制御部26を示している。
【0029】
図6に示すように、記憶部23は、画像記憶部23aと、位置情報記憶部23bと、撮像条件記憶部23cと、被検体情報記憶部23dとを有する。
【0030】
画像記憶部23aは、画像再構成部22によって生成された画像データを記憶する。例えば、画像記憶部23aは、被検体の背骨が描出された位置決め用サジタル像を記憶する。ここでいう位置決め用サジタル像は、被検体の椎間板及び脊柱管を含むサジタル断面に平行であり、かつ、少なくとも椎間板を含んだサジタル像である。この位置決め用サジタル像は、例えば、FE(Field Echo)系のシーケンスなど、椎間板を椎体と比較して高い信号値で撮像可能なシーケンスによって撮像される。
【0031】
位置情報記憶部23bは、撮像対象となる対象部位の位置及び向きを示す位置情報を記憶する。例えば、位置情報記憶部23bは、画像記憶部23aによって記憶された位置決め用サジタル像から検出された椎間板の位置情報を記憶する。ここでいう位置情報は、椎間板の位置及び向きを示す情報であり、例えば、椎間板の向きを示す第1のベクトルと、第1のベクトルの起点位置を示す座標又は第2のベクトル(所定の基準位置を起点とするベクトル)などによって表される。
【0032】
撮像条件記憶部23cは、各種撮像法及び各種パルスシーケンスに関する撮像条件を撮像プロトコルごとに記憶する。ここでいう撮像条件には、繰り返し時間(TR:Repetition Time)やエコー時間(TE:Echo Time)、マトリクス数、撮像断面の長さ、幅及び厚さ、PE方向などの撮像パラメータが含まれる。また、撮像条件には、撮像法(スピンエコー法やEPI(Echo Planar Imaging)法などのパルスシーケンス種)や、脂肪抑制パルス、反転パルスなどのプリパルスの種類、数、順序、撮像領域の撮像順序なども含まれる。なお、椎間板を撮像する場合には、撮像条件には、撮像対象とする椎間板の数も含まれる。また、複数の撮像断面を各断面の厚さ方向に並べたスラブと呼ばれる(スライスグループとも呼ばれる)単位で撮像断面が設定される場合には、撮像条件には、1つのスラブに含める撮像断面の数も含まれる。
【0033】
被検体情報記憶部23dは、被検体に関する被検体情報を記憶する。ここでいう被検体情報は、例えば、被検体の識別情報、氏名、年齢、身長、体重などである。
【0034】
また、制御部26は、検出部26aと、受付部26bと、第1の設定部26cと、第2の設定部26dと、表示制御部26eと、撮像制御部26fとを有する。
【0035】
検出部26aは、被検体の画像に基づいて、対象部位の位置及び向きを示す位置情報を検出する。具体的には、検出部26aは、被検体の対象部位が描出された画像を解析して、当該対象部位の位置及び向きを示す位置情報を抽出する。また、検出部26aは、検出した位置情報を位置情報記憶部23bに記憶させる。
【0036】
例えば、検出部26aは、画像記憶部23aに記憶されている位置決め用サジタル像に基づいて、複数の椎間板それぞれについて位置情報を検出する。ここで、検出部26aが用いる椎間板の検出方法としては、各種の方法を用いることが可能である。例えば、検出部26aは、被検体の複数のサジタル像を用いた方法で位置情報を検出する。この方法では、検出部26aは、被検体の椎間板及び脊柱管を含むサジタル断面に平行であり、かつ、少なくとも椎間板を含む複数のサジタル像それぞれから背骨領域を抽出する。また、検出部26aは、抽出した複数の背骨領域それぞれから2次元の椎間板領域を抽出する。そして、検出部26aは、抽出した複数の2次元の椎間板領域に基づいて、複数のサジタル像にまたがる3次元の椎間板領域を抽出する。
【0037】
受付部26bは、入力部24を介して、操作者から各種指示や各種情報の入力を受け付ける。具体的には、受付部26bは、撮像対象である被検体の対象部位について撮像断面を追加する指示を受け付ける。また、受付部26bは、設定済みの撮像断面の位置や傾きを変更する指示を受け付ける。
【0038】
例えば、受付部26bは、表示部25に表示された位置決め用サジタル像に対して、当該位置決め用サジタル像に描出された背骨に含まれる複数の椎間板のうち、撮像断面が設定されていない椎間板に新たに撮像断面を設定する指示を受け付ける。また、受付部26bは、表示部25に表示された位置決め用サジタル像に対して、設定済みの撮像断面の位置や傾きを設定し直す指示を受け付ける。
【0039】
第1の設定部26cは、撮像対象となる被検体の対象部位について撮像断面を設定する。具体的には、第1の設定部26cは、検出部26aによって検出された対象部位の位置情報に基づいて撮像断面を設定する。このとき、第1の設定部26cは、対象部位の位置情報に基づいて、当該対象部位に関する撮像断面の空間的な傾きを設定する。さらに、第1の設定部26cは、撮像条件記憶部23cに記憶されている撮像条件に基づいて、撮像断面の長さや幅、厚さ、PE方向などを設定する。
【0040】
例えば、第1の設定部26cは、位置決め用サジタル像に含まれる椎間板について、検出部26aによって検出された椎間板の位置情報及び撮像条件記憶部23cに記憶されている撮像条件に基づいて、椎間板ごとに撮像断面を設定する。具体的には、第1の設定部26cは、まず、位置決め用サジタル像に含まれる複数の椎間板の中から、撮像条件で定められた撮像対象とする椎間板の数だけ椎間板を選択する。このとき、例えば、第1の設定部26cは、複数の椎間板のうち上側(頭側)又は下側(足側)から順に椎間板を選択する。または、第1の設定部26cは、複数の椎間板のうち中央付近から椎間板を選択してもよい。その後、第1の設定部26cは、選択した椎間板について、撮像断面を設定する。このとき、例えば、第1の設定部26cは、選択した椎間板を含むように、撮像条件で定められた数の撮像断面を含むスラブを設定する。
【0041】
また、第1の設定部26cは、受付部26bによって受け付けられた指示に基づいて撮像断面を設定する。具体的には、第1の設定部26cは、操作者からの指示に応じて、新たに撮像断面を追加したり、設定済みの撮像断面の位置や傾きを変更したりする。このとき、第1の設定部26cは、操作者からの指示に基づいて、撮像断面の空間的な傾きを設定する。また、第1の設定部26cは、撮像条件記憶部23cに記憶されている撮像条件に基づいて、撮像断面の長さや幅、厚さ、PE方向などを設定する。
【0042】
例えば、第1の設定部26cは、位置決め用サジタル像に含まれる椎間板について、操作者からの指示に応じて、まだ撮像断面が設定されていない椎間板に新たに撮像断面を設定する。このとき、例えば、第1の設定部26cは、撮像断面がまだ設定されていない椎間板を含むように、撮像条件で定められた数の撮像断面を含むスラブを設定する。
【0043】
第2の設定部26dは、第1の設定部26cによって設定された撮像断面について、空間的な傾きを維持した状態で、基準となる方向に基づいて当該撮像断面のPE方向を設定する。なお、ここでいう撮像断面の空間的な傾きとは、例えば、位置決め画像として用いられる被検体の直交3断面の画像(サジタル像、コロナル像、及びアキシャル像)における傾きである。この傾きは、例えば、直交3断面の画像のうち1つの画像上で傾いている場合にはシングルオブリークと呼ばれ、2つの画像上で傾いている場合にはダブルオブリークと呼ばれる。
【0044】
具体的には、第2の設定部26dは、第1の設定部26cによって撮像断面が設定された際に、第1の設定部26cによって設定されたPE方向を変更することで、当該撮像断面のPE方向を設定する。このとき、第2の設定部26dは、第1の設定部26cによって設定された撮像断面の向きを同一面内で変えることで、当該撮像断面のPE方向を変更する。なお、第2の設定部26dは、撮像断面のPE方向を90度又は270度ずらす場合には、リードアウト方向とPE方向とを入れ替えてもよい。
【0045】
より具体的には、例えば、第2の設定部26dは、以下で説明する5つの方法のうち操作者によって選択された方法を用いて、撮像断面のPE方向を設定する。なお、このとき、第2の設定部26dによって用いられる方法は、例えば、操作者によって撮像条件の一部として入力される。
【0046】
まず、第1の方法では、第2の設定部26dは、撮像断面を設定する際に用いられる位置決め画像の断面に平行な方向に基づいて、撮像断面のPE方向を設定する。具体的には、第1の方法では、第2の設定部26dは、位置決め画像の断面に平行な方向及び位置決め画像の奥行き方向のうち操作者によって選択された方向に基づいて、撮像断面のPE方向を設定する。
【0047】
図7は、第1の実施形態に係る第1の設定部26cによって行われる第1の方法を示す図である。図7は、第1の設定部26cによって設定された撮像断面71と、撮像断面71の設定に用いられた位置決め画像72とを示している。ここで、例えば、撮像断面71に垂直なベクトルをV、当該撮像断面71に設定されたPE方向のベクトルをPE0(図示は省略)とする。この場合に、第2の設定部26dは、位置決め画像の断面に平行な方向にPE方向を設定する場合には、Vを回転軸として、位置決め画像72の断面と平行になるように撮像断面71の断面内でPE0を回転して、ベクトルPE1を求める。また、位置決め画像の奥行き方向にPE方向を設定する場合には、第2の設定部26dは、位置決め画像72の断面と平行になるようにPE0を回転した後に、さらに、撮像断面71の断面内でPE0を90度又は270度回転して、ベクトルPE2を求める。ここで、奥行き方向に設定されたPE方向は、必ずしも位置決め画像に直交する方向にはならない。そして、第2の設定部26dは、求めたベクトルPE1又はPE2の方向を撮像断面71のPE方向として設定する。
【0048】
なお、第2の設定部26dは、位置決め画像の断面に平行な方向にPE方向を設定する際に、PE方向を右側から左側に向かう方向とするか、左側から右側に向かう方向にするかについては、操作者からの指定に応じて決定する。また、第2の設定部26dは、位置決め画像の奥行き方向にPE方向を設定する際に、PE方向を手前側から奥側に向かう方向とするか、奥側から手前側に向かう方向とするかについても、操作者からの指定に応じて決定する。
【0049】
また、第2の方法では、第2の設定部26dは、対象部位について先に設定されている他の撮像断面のPE方向に基づいて、第1の設定部26cによって新たに設定された撮像断面のPE方向を設定する。具体的には、第2の方法では、第2の設定部26dは、対象部位について先に設定されている他の撮像断面のPE方向と、新たに設定された撮像断面の面ベクトルとを含む平面と平行になるように、新たに設定された撮像断面のPE方向を設定する。
【0050】
図8は、第1の実施形態に係る第1の設定部26cによって行われる第2の方法を示す図である。図8は、第1の設定部26cによって新たに設定された撮像断面81と、撮像断面81が設定される前に設定されていた撮像断面82とを示している。ここで、例えば、撮像断面81に垂直なベクトルをV、当該撮像断面81に設定されたPE方向のベクトルをPE0(図示は省略)、撮像断面82に設定されたPE方向のベクトルをPEとする。この場合に、第2の設定部26dは、Vを回転軸として、VとPEとを含む面と平行になるように撮像断面81の断面内でPE0を回転して、ベクトルPE1を求める。このとき、第2の設定部26dは、先に設定されていた撮像断面82のPE方向の向きにベクトルPE1の向きを合わせる。そして、第2の設定部26dは、求めたベクトルPE1の方向を撮像断面81のPE方向として設定する。
【0051】
また、第3の方法では、第2の設定部26dは、被検体の前後方向、左右方向及び頭尾方向のいずれか一つに基づいて、撮像断面のPE方向を設定する。具体的には、第3の方法では、第2の設定部26dは、被検体の前後(A−P)方向、左右(R−L)方向及び頭尾(H−F)方向のうち操作者によって選択された方向に、撮像断面のPE方向を設定する。
【0052】
図9は、第1の実施形態に係る第1の設定部26cによって行われる第3の方法を示す図である。図9は、第1の設定部26cによって新たに設定された撮像断面91を示している。ここで、例えば、撮像断面91に垂直なベクトルをV、当該撮像断面91に設定されたPE方向のベクトルをPE0(図示は省略)とする。また、基準となる方向として、操作者によってA−P方向が選択されたとする。この場合に、第2の設定部26dは、Vを回転軸として、VとA−P方向のベクトルとを含む面と平行になるように撮像断面91の断面内でPE0を回転して、ベクトルPE1を求める。そして、第2の設定部26dは、求めたベクトルPE1の方向を撮像断面91のPE方向として設定する。
【0053】
また、第4の方法では、第2の設定部26dは、第2の方法と同様に、対象部位について先に設定されている他の撮像断面のPE方向に基づいて、第1の設定部26cによって新たに設定された撮像断面のPE方向を設定する。しかし、第4の方法では、第2の設定部26dは、ベクトルの面内回転を用いずに、撮像断面のPE方向を設定する。
【0054】
図10は、第1の実施形態に係る第1の設定部26cによって行われる第4の方法を示す図である。図10は、第1の設定部26cによって新たに設定された撮像断面101と、撮像断面101が設定される前に設定されていた撮像断面102とを示している。ここで、例えば、撮像断面101の2つの辺に沿った2つのベクトルをR及びC、撮像断面101に設定されたPE方向のベクトルをPE0(図示は省略)、撮像断面102に設定されたPE方向のベクトルをPEとする。この場合に、第2の設定部26dは、ベクトルR及びCのうちPEとのなす角が小さい方のベクトルの方向を、撮像断面101のPE方向として設定する。図10に示す例では、ベクトルRとPEとのなす角がベクトルCとPEとのなす角よりも小さいため、ベクトルRの方向が撮像断面101のPE方向として設定される。
【0055】
また、第5の方法では、第2の設定部26dは、第3の方法と同様に、被検体の前後方向、左右方向及び頭尾方向のいずれか一つに基づいて、第1の設定部26cによって設定された撮像断面のPE方向を設定する。しかし、第5の方法では、第2の設定部26dは、ベクトルの面内回転を用いずに、撮像断面のPE方向を設定する。
【0056】
図11は、第1の実施形態に係る第1の設定部26cによって行われる第5の方法を示す図である。図11は、第1の設定部26cによって新たに設定された撮像断面111を示している。ここで、例えば、撮像断面111の2つの辺に沿った2つのベクトルをR及びC、撮像断面111に設定されたPE方向のベクトルをPE0(図示は省略)とする。また、基準となる方向として、操作者によってA−P方向が選択されたとする。この場合に、第2の設定部26dは、ベクトルR及びCのうち前後方向のベクトルとのなす角が小さい方のベクトルの方向を、撮像断面111のPE方向として設定する。図11に示す例では、RとA−P方向のベクトルとのなす角がCとA−P方向のベクトルとのなす角よりも小さいため、ベクトルRの方向が撮像断面111のPE方向として設定される。
【0057】
図6に戻って、表示制御部26eは、第1の設定部26cによって設定された撮像断面を示す情報を表示部25に表示する。具体的には、表示制御部26eは、表示部25に位置決め画像を表示し、さらに、第1の設定部26cによって設定された撮像断面を示す情報と、第2の設定部26dによって設定されたPE方向を示す情報とを位置決め画像上に表示する。
【0058】
図12及び13は、第1の実施形態に係る表示制御部26eによって表示される撮像断面の一例を示す図である。図12は、位置決め画像として用いられた被検体のサジタル像を示しており、図13は、位置決め画像として用いられた被検体のコロナル像を示している。例えば、図12及び13に示すように、表示制御部26eは、撮像断面を示す立方体形状又は矩形状のグラフィックを位置決め画像上に表示する。また、表示制御部26eは、撮像断面の上面に沿って、当該撮像断面のPE方向を示す矢印のグラフィックを表示する。
【0059】
本実施形態では、第1の設定部26cによって撮像断面が設定された際に、第2の設定部26dによって、各撮像断面の空間的な傾きが維持された状態で、基準となる方向に基づいて各撮像断面のPE方向が設定される。そのため、例えば、図12及び13に示すように、複数の撮像断面が傾いて設定された場合でも、各撮像断面のPE方向を示す矢印のグラフィックが、同じ位置決め画像上で同じ方向に向いて表示されることになる。
【0060】
図6に戻って、撮像制御部26fは、第1の設定部26cによって設定された撮像断面のデータを収集するように、シーケンス制御部10を制御する。具体的には、撮像制御部26fは、第1の設定部26cによって設定された各撮像断面について、第2の設定部26dによって設定されたPE方向でデータを収集するためのシーケンス実行データを生成する。そして、撮像制御部26fは、生成したシーケンス実行データをシーケンス制御部10に送信することで、データ収集を実行させる。
【0061】
図14は、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる撮像領域設定方法の処理手順を示すフローチャートである。図14に示すように、本実施形態に係るMRI装置100では、制御部26が、操作者から撮像領域の設定を開始する指示を受け付けると(ステップS101,Yes)、以下の処理を開始する。
【0062】
まず、検出部26aが、被検体の画像に基づいて、対象部位の位置及び向きを示す位置情報を検出する(ステップS102)。続いて、第1の設定部26cが、検出部26aによって検出された位置情報に基づいて、撮像対象となる被検体の対象部位について撮像断面を設定する(ステップS103)。その後、第2の設定部26dが、第1の設定部26cによって設定された撮像断面について、空間的な傾きを維持した状態で、基準となる方向に基づいて当該撮像断面のPE方向を設定する(ステップS104)。
【0063】
そして、受付部26bが、対象部位について撮像断面を追加する指示を受け付けた場合には(ステップS105,Yes)、第1の設定部26cが、受付部26bによって受け付けられた指示に基づいて撮像断面を設定する(ステップS106)。その後、第2の設定部26dが、第1の設定部26cによって設定された撮像断面について、空間的な傾きを維持した状態で、基準となる方向に基づいて当該撮像断面のPE方向を設定する(ステップS107)。
【0064】
ここで、制御部26が、操作者から撮像領域の設定を終了する指示を受け付けるまでの間は(ステップS108,No)、上述したステップS105〜S107の処理が繰り返される。そして、制御部26が、撮像領域の設定を終了する指示を受け付けた場合には(ステップS108,Yes)、撮像領域設定に関する処理を終了する。
【0065】
上述したように、第1の実施形態によれば、撮像断面が設定される際に、当該撮像断面の空間的な傾きを維持した状態で、当該撮像断面のPE方向が基準となる方向に基づいて設定される。したがって、本実施形態によれば、複数の撮像断面が傾いて設定される場合でも、各撮像断面のPE方向を揃えることができる。
【0066】
すなわち、本実施形態によれば、ダブルオブリークを失うことなく、複数の撮像断面についてPE方向を揃えることができる。これにより、高い再現性で、良好な画質の画像を得ることができる。また、複数の撮像断面について、自動的に、又は、簡便な操作でPE方向が揃えられるので、検査におけるスループットを向上させることができる。
【0067】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、検出に失敗した椎間板を補完する場合の例を説明する。なお、本実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には、図1及び6に示したものと同じであるが、受付部26b及び第2の設定部26dによって行われる処理が異なる。そのため、以下では、本実施形態に係る受付部26b及び第2の設定部26dによって行われる処理を中心に説明する。
【0068】
本実施形態では、受付部26bは、PE方向を一括して設定する指示を受け付ける。また、本実施形態では、第2の設定部26dは、受付部26bによって当該指示が受け付けられた場合に、設定済みの撮像断面についてPE方向を設定する。
【0069】
図15は、第2の実施形態に係るMRI装置100によって行われる撮像領域設定方法の処理手順を示すフローチャートである。図15に示すように、本実施形態に係るMRI装置100では、制御部26が、操作者から撮像領域の設定を開始する指示を受け付けると(ステップS201,Yes)、以下の処理を開始する。
【0070】
まず、検出部26aが、被検体の画像に基づいて、対象部位の位置及び向きを示す位置情報を検出する(ステップS202)。続いて、第1の設定部26cが、検出部26aによって検出された位置情報に基づいて、撮像対象となる被検体の対象部位について撮像断面を設定する(ステップS203)。
【0071】
そして、受付部26bが、対象部位について撮像断面を追加する指示を受け付けた場合には(ステップS204,Yes)、第1の設定部26cが、受付部26bによって受け付けられた指示に基づいて撮像断面を設定する(ステップS205)。
【0072】
また、受付部26bが、PE方向を一括して設定する指示を受け付けた場合には(ステップS206,Yes)、第2の設定部26dが、設定済みの各撮像断面について、空間的な傾きを維持した状態で、基準となる方向に基づいて撮像断面のPE方向を設定する(ステップS207)。
【0073】
ここで、制御部26が、操作者から撮像領域の設定を終了する指示を受け付けるまでの間は(ステップS208,No)、上述したステップS204〜S207の処理が繰り返される。そして、制御部26が、撮像領域の設定を終了する指示を受け付けた場合には(ステップS208,Yes)、撮像領域設定に関する処理を終了する。
【0074】
上述したように、第2の実施形態によれば、複数の撮像断面が続けて設定された場合でも、各撮像断面の傾きを変えることなく、各撮像断面のPE方向を一括して揃えることができる。したがって、本実施形態によれば、複数の撮像断面が傾いて設定される場合でも、各撮像断面のPE方向を効率よく揃えることができる。これにより、検査のスループットをさらに向上させることができる。
【0075】
なお、上述した実施形態では、椎間板を対象部位とした場合を例に挙げて説明したが、撮像の対象部位はこれに限られない。例えば、上述した実施形態は、他の部位を撮像する場合でも同様に適用が可能である。
【0076】
例えば、椎体を対象部位とする場合には、第1の設定部26cは、被検体の背骨が描出された画像に基づいて、複数の椎体ごとに各椎体の位置及び向きを示す椎体情報を検出する。例えば、第1の設定部26cは、上述した各実施形態で説明したように、被検体の背骨が描出された画像から位置情報を抽出する。そして、第1の設定部26cは、i(i:自然数)番目とi+1番目の椎間板の中点を、椎体の位置とする。さらに、検出部26aは、i番目とi+1番目の椎間板の向きの平均を、椎体の向きとする。なお、第1の設定部26cは、背骨の両端に位置する椎体の位置及び向きについては、他の椎体の位置及び向きの変化量から求める。このような場合でも、第2の設定部26dは、上述した実施形態と同様に、各撮像断面についてPE方向を設定することが可能である。
【0077】
また、例えば、椎間板及び椎体の両方を対象部位とする場合には、第1の設定部26cは、複数の撮像断面を含むスラブを椎間板及び椎体の両方を含むように設定する。この場合には、1回のシーケンスで、椎間板及び椎体の両方を含んだ撮像が繰り返して行われる。また、例えば、第1の設定部26cは、椎間板及び椎体それぞれにスラブを設定してもよい。この場合には、1回のシーケンスで、椎間板のみを含んだ撮像と椎体のみを含んだ撮像とがそれぞれ行われる。このような場合でも、第2の設定部26dは、上述した実施形態と同様に、各撮像断面についてPE方向を設定することが可能である。
【0078】
また、例えば、下肢を撮像する場合などのように被検体の広い範囲が撮像される場合に、被検体が置かれた天板を移動しながら複数の異なる部位(例えば、腸骨部、大腿部、腓部など)が撮像される場合もある。このような撮像では、撮像範囲に含まれる複数の部位について、各部位の形状や向きに応じて、部位ごとに撮像断面が設定される。このような場合でも、第2の設定部26dは、部位ごとに設定された撮像断面について、上述した実施形態と同様にPE方向を設定することが可能である。
【0079】
また、例えば、同じ対象部位を複数の撮像プロトコルで撮像する場合に、撮像プロトコルごとの撮像断面がまとめて設定される場合もある。このような場合でも、第2の設定部26dは、撮像プロトコルごとに設定された撮像断面について、上述した実施形態と同様にPE方向を設定することが可能である。
【0080】
また、上述した各実施形態で説明した各種の機能は、組み合わせて実施することも可能である。例えば、第1の実施形態で説明したMRI装置100が、第2の実施形態で説明したPE方向を一括して設定する機能を兼ね備えていてもよい。その場合には、受付部26bが、撮像断面を追加又は変更する指示だけでなく、PE方向を一括して設定する指示も受け付ける。そして、第2の設定部26dが、第1の設定部26cによって撮像断面が設定されたときに当該撮像断面のPE方向を設定するだけでなく、受付部26bによってPE方向を一括して設定する指示が受け付けられたときにも、設定済みの撮像断面についてPE方向を設定する。
【0081】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、複数の撮像断面が傾いて設定される場合でも、各撮像断面の位相エンコード方向を揃えることができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
100 MRI装置
20 計算機システム
26 制御部
26c 第1の設定部
26d 第2の設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15