(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
レスベラトロール(resveratrol)は、サーチュイン(sirtuin)の活性化物質として知られており、様々な健康保持・増進に関する作用効果、たとえば、老化の防止、寿命の延長、癌発生の予防、抗炎症作用、肥満・生活習慣病の予防、血圧上昇の抑制、動脈硬化の防止、認知症の予防、放射線による障害の抑止、に関する多数の医学的エビデンスが報告されている。また、レスベラトロールは、新聞、雑誌、テレビなどのマスメディアにおいても数多く取り上げられており、最近は特に健康食品素材として大きな注目を集めている。
【0003】
レスベラトロール(3,4’,5−トリヒドロキシ−trans−スチルベン)は、ブドウ、イタドリ(虎杖)、メリンジョ(インドネシア原産の木の実)、ピーナッツ、リンゴンベリー、ブルーベリー、クランベリーなどの各種天然物に含まれるポリフェノールの1種である。これらの天然物中には、レスベラトロール単量体だけでなく、その二量体や配糖体、及びその他のレスベラトロール含有化合物が存在しており、これらは全体としてレスベラトロール類として総称されている。
【0004】
レスベラトロール類は、その由来する原料によって、含まれる主成分が異なっている。たとえば、ブドウ由来のレスベラトロール類には、trans−レスベラトロールをはじめとして、レスベラトロールの二量体であるε―ビニフェリン、及び複数のレスベラトロールオリゴマー(ピセアタノールなど)が主として含まれているのに対し、イタドリ由来のレスベラトロール類には、主としてtrans−レスベラトロールが含まれるだけであり、オリゴマーはほとんど含まれていない。なお、trans−レスベラトロールについては、サーチュインの活性化作用のほか、さまざまな生理的作用が確認されているが、ε―ビニフェリンについても、サーチュインの活性化作用や抗酸化作用などが確認されている。
【0005】
近年、レスベラトロール類の機能性に着目し、天然物から抽出したレスベラトロール類の製剤、たとえば、栄養補助サプリメントが多数開発、販売されている。現在のところ、レスベラトロールは、化学的に合成することは可能であるが、レスベラトロールのオリゴマーは分子構造が複雑で化学的に合成することは困難であるため、全て天然物由来である。また、レスベラトロールの製剤としては、現状では、レスベラトロール単独の粉末製剤や、原料であるレスベラトロールをそのまま他の成分と配合した製剤が多い。
【0006】
最近の傾向として、レスベラトロールを単独で製品化するよりも、機能性健康食品素材として各種食品に添加したり、生理活性素材として化粧品に添加したりして、健康の保持・増進に役立つ機能を付与した食品や化粧品を製造することに関心が集まっている。
しかしながら、レスベラトロールは上記のとおり、生理的に優れた機能を有する一方、エタノールなどの有機溶媒には溶けやすいものの(エタノールへの溶解度:50g/L)、水に対して難溶性であるため(水への溶解度:0.03g/L)、特に飲料などの水系食品や水系化粧品にそのままの状態で添加すると沈殿が生じてしまい、また、生体内への吸収率(生体内利用率)も低いという問題がある。そのため、従来、レスベラトロールの用途は限定されており、その可溶化方法が強く望まれていた。レスベラトロールの水溶化が可能になれば、飲料などへの適用が可能となり、また、生体内への吸収率も高まることが期待できるため、レスベラトロールの機能をより十分に発揮させることが可能となる。
【0007】
レスベラトロールの水溶化に関しては、水溶性を獲得するために、レスベラトロールに親水性基を導入することも考えられるが、それによりレスベラトロールの機能性が変化してしまうおそれがある。そこで、親水性基を導入することなく水溶性を向上させたレスベラトロールの1例として、レスベラトロールを含む植物抽出溶液と、環状オリゴ糖類溶液とを混合して混合溶液とした後、該混合溶液の溶媒を除去して得たレスベラトロール粉末製剤が知られている(特許文献1)。この特許文献1に記載のレスベラトロール粉末製剤は、環状オリゴ糖の分子内にレスベラトロールなどを取り込ませて包接させることにより、該粉末製剤の水溶性を高めており、これにより飲料や化粧品への配合を容易にしている。
【0008】
しかしながら、上記レスベラトロール粉末製剤は、水に溶かした場合に、包接されなかったレスベラトロールなどの難水溶性物質が沈殿として生じる場合がある。また、レスベラトロール単体では、環状オリゴ糖の分子内に包接されるが、たとえば、ブドウ抽出物のように、分子量の大きいオリゴマーを含むレスベラトロール類を使用した場合には、環状オリゴ糖の分子内に包接されなくなるおそれがある。
【0009】
また、レスベラトロールは、非常に乳化・分散しにくく、分散後の安定性にも欠けることが知られている。そこで、分散安定性に優れた、レスベラトロール組成物の1例として、レスベラトロールと、ショ糖脂肪酸エステルを含む乳化剤と、水溶性高分子とを含むと共に、ポリグリセリン脂肪酸エステルがショ糖脂肪酸エステルに対して質量比で0.1倍量以下であって、レスベラトロールを含む分散粒子の粒子径が200nm以下である分散組成物が報告されている(特許文献2)。
【0010】
その他、レスベラトロールを高濃度で飲料に含有させると、えぐ味が感じられ、しかもあと味に不快な異味が口内に残りやすいという問題がある。そこで、レスベラトロールを高濃度で含有しても、えぐ味及びあと味の改善された飲料の1例として、レスベラトロールを0.09〜0.19質量%含有し、pHが3〜5である容器詰飲料が報告されている(特許文献3)。
【0011】
一方、天然物からレスベラトロール類を含む抽出物を得るための方法としては、たとえば、ヨーロッパ系ブドウ属(Vitis Vinifera)及び/又はアメリカ系ブドウ(Vitis Labrusca)に属する植物の芽及び蔓から炭素数1以上5以下の極性溶媒を用いてレスベラトロール類を抽出する方法が報告されている(特許文献4)。そして、該方法で得られたレスベラトロール類含有組成物は、投与経路に応じた適切な剤形、たとえば、液剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠などの経口剤、直腸投与剤などの種々の剤形に調製して使用できることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述したように、レスベラトロールは水に対して難溶性であるため、その適用範囲が狭く、用途が限定されている。レスベラトロールの水溶性を高めるために、親水性基をレスベラトロールに導入することも考えられるが、それによってレスベラトロールの機能性が失われるおそれがある。したがって、レスベラトロールに親水性基を導入することなく、レスベラトロールの水に対する分散性を向上させて、より多くの製品に素材として添加できるようにして、レスベラトロールの適用範囲を広げ、用途を拡大することが期待されている。
【0014】
また、難溶性物質であるレスベラトロールの水溶性が向上すれば、生体内での吸収性が改善されることが予想され、その結果、レスベラトロールの機能を十分に享受することが可能になると考えられる。
【0015】
さらに、前述したように、レスベラトロールの機能性に着目し、レスベラトロールを含有した製品が多数開発されているものの、それらの多くは、レスベラトロール単独物を配合したものであり、天然物から抽出したレスベラトロール類を直接配合したものは少ないのが現状である。
天然物から得られたレスベラトロール類を含む抽出物は、レスベラトロールと同等又はそれ以上の生理活性を有することも明らかになってきているため、天然物から得られたレスベラトロール類含有抽出物を配合した水溶化製剤の開発が期待されている。
【0016】
しかしながら、前述したように、レスベラトロール類は、非常に乳化・分散しにくく、水性液としては乳化状としても安定な性状を得ることが困難である。ましてや、水溶液状の安定した水溶化製剤はほとんど知られておらず、そのため、安定した水溶化状態が維持される、レスベラトロール類の水溶化製剤に対する需要が非常に高まっている。
【0017】
このような状況に鑑み、本発明の目的は、水溶化状態を安定して維持することができる、レスベラトロール類の水溶化製剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、本発明の水溶化製剤が主として食品に使用されることを前提としていることから、食品のいわゆる一次機能、二次機能、三次機能を考慮しつつ、レスベラトロール類の物理化学的性質などに関するデータをもとにして検討したところ、アラビアガムにレスベラトロール類を吸着させることで水への分散性を向上できることを見出し、食品に用いることができる安全性の高い素材の選定、好ましい配合比率、並びに製造方法について検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)を含むことを特徴とするレスベラトロール類の水溶化製剤である。
(A)レスベラトロール類
(B)グリセリン
(C)エタノール
(D)アラビアガム
(E)水
【0019】
また、本発明は、以下の工程(a)、(b)及び(c)を有するレスベラトロール類の水溶化製剤の製造方法である。
(a)レスベラトロール類、グリセリン及びエタノールを混合したA液を調製する工程、
(b)アラビアガム及び水を混合したB液を調製する工程、
(c)B液に対して、A液を添加して混合することにより、レスベラトロール類の水溶化製剤を得る工程。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水溶化製剤は、水溶化状態を安定して維持することができ、これにより、飲料をはじめとした多くの水系食品や化粧品などにレスベラトロール類を素材として添加することが可能となる。また、本発明の水溶化製剤は、レスベラトロール類に親水性基を導入することなく水溶化した製剤形態であるため、レスベラトロール類の有益な機能性を損なうことなく、その機能を十分に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の水溶化製剤は、水には溶けにくいレスベラトロール類を水系の各種食品や化粧品などに配合しやすくするため、水溶化状態を安定して維持することができるレスベラトロール類の水溶化製剤を提供するものである。該水溶化製剤は、前述したように、以下の(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)を必須の構成成分として含むことを特徴とする。以下、本発明の水溶化製剤について詳細に説明する。
(A)レスベラトロール類
(B)グリセリン
(C)エタノール
(D)アラビアガム
(E)水
【0022】
(A)レスベラトロール類
本発明の水溶化製剤の構成成分であるレスベラトロール類とは、その代表的成分であるtrans−レスベラトロールを少なくとも含み、レスベラトロール類の供給源となる天然物に応じて、cis−レスベラトロール、レスベラトロールの二量体、オリゴマー及びその他のレスベラトロール含有化合物を適宜含むものをいう。したがって、本発明では、trans−レスベラトロール単独物も前記レスベラトロール類の範囲に含まれる。
【0023】
本発明で使用するレスベラトロール類としては、有機化学的又は微生物を用いて合成したものや、ブドウ、イタドリ、メリンジョ、リンゴンベリー、ピーナッツ等の天然物からの抽出物を用いることができる。
【0024】
上記レスベラトロール類として、天然物からの抽出物を用いる場合は、特にブドウからレスベラトロール類を抽出した生成物(ブドウ由来のレスベラトロール類)であることが好ましい。ブドウ由来のレスベラトロール類には、trans―レスベラトロール、ε―ビニフェリン(viniferin)などの二量体、ピセアタノール(piceatannol)などのオリゴマー及びその他のレスベラトロール含有化合物が主成分として含まれており、レスベラトロール類の中でも、有効成分とされるtrans―レスベラトロール及びε―ビニフェリンが豊富に含まれているため、レスベラトロールによる優れた機能性を得るうえで効果的である。なお、天然物から抽出したレスベラトロール類には、レスベラトロール類以外のポリフェノール及びその他の成分が含まれていてもよい。
【0025】
ブドウ由来のレスベラトロール類は、ブドウ科(Vitaceae)のブドウ(Vitis spp.)を由来原料とし、ブドウの種類は特に限定されるものではない。ブドウの種類としては、具体的には、デラウエア、巨峰、甲州、ピオーネ、マスカット、シュナンブラン、グレナッシュ、マタロ、ミュラーテュルガウ、トレッビアーノ、ベリーA、カベルネソービニオン、メルロー、ピノノアール、カベルネフラン、シラー、シャルドネ、ソービニヨンブラン、セミヨン、シラー、ガメイ、リースリング、アリゴテ、ミュスカデル、ソーヴィニョン、フォルブランシュ、ミュスカデ、シュナン、グロロー、ピノー・ドーニス、ピノ・ムニエ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、シルヴァネール、プールサール、サヴァニャン、ジャケール、モンドーズ、ルーセット、カリニャン、サンソー、クレレット、グルナッシュ・ノワール、ムルヴェードル、ユニ・ブラン、ニエルチオなどが例示される。
【0026】
ブドウ由来のレスベラトロール類は、ブドウ果実(果肉及び皮を含む)、ブドウ種子、ブドウ葉、ブドウ新芽又はブドウに由来するものから抽出することによって得ることができる。ブドウに由来するものとしては、たとえば、ブドウジュース、ワイン、ブドウジュースやワインの製造時の残渣、ブドウジュースやワインの濃縮物又は乾燥物が挙げられる。なお、レスベラトロールの濃度は、白ワインよりも赤ワインの方が約10倍程度高い。
【0027】
ブドウからレスベラトロール類を抽出するには、天然物の抽出に用いられている一般の方法を利用することができ、たとえば、レスベラトロール類はブドウの果皮、葉、新芽の部位に多く含まれていることから、該部位を必要により乾燥した後、水、熱水、有機溶媒などを用いて抽出する方法が採用できる。該有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチルなどが例示される。上記溶媒で抽出して得た抽出液をそのまま、あるいは濃縮したエキスを用いるか、あるいはこれらエキスを吸着法、たとえば、イオン交換樹脂を用いて不純物を除去して精製したものをレスベラトロール類として用いることもできる。また、ワイン、ワインの濃縮物、濃縮乾固した固形物中にもレスベラトロール類は含まれているので、それらをレスベラトロール類として用いることもできる。その他、ブドウジュースやワイン製造時に発生するブドウの残渣をそのまま用いるか、それから上記抽出方法と同様にして抽出したものをレスベラトロール類として用いることもできる。
【0028】
ブドウ以外の原料として、イタドリは、根に多くのレスベラトロール類を含むことから、当該部位を上記と同様な一般的な抽出方法により得られるイタドリ抽出物をレスベラトロール類として用いることも好ましい。
【0029】
前記レスベラトロール類として、天然物からの抽出物を用いる場合、該抽出物中に含まれるレスベラトロール類の含有量は特に限定されないが、通常、trans―レスベラトロールの含有量は、該抽出物全体の5〜10質量%であることが一般的である。
【0030】
レスベラトロール類として市販品を用いることは何ら差し支えない。たとえば、市販品の例として、「VINEATROL 20M」、「VINEATROL 30Y」(サンブライト社製、商品名)が挙げられる。いずれもブドウ新芽由来レスベラトロールであり、「VINEATROL 20M」は、レスベラトロール総量が20質量%、「VINEATROL 30Y」は、レスベラトロール総量が30質量%である。
【0031】
レスベラトロール類に含まれるtrans―レスベラトロールは、本発明の水溶化製剤全体の0.1〜1.0質量%の量で存在することが、trans―レスベラトロールの分散安定性などの観点から好ましい。したがって、天然物からの抽出物を用いる場合は、最終製品である水溶化製剤全体中に含まれるtrans―レスベラトロールの量が上記範囲内となるよう、該抽出物に含まれるtrans―レスベラトロールの量を考慮して配合することが好ましい。
【0032】
(B)グリセリン
本発明においては、成分(B)として三価アルコールであるグリセリンを使用する。グリセリンは、本発明の水溶化製剤を製造する際に、レスベラトロール類、特にレスベラトロール類を含むブドウ抽出物、を溶解させて後述するA液を調製するうえで重要な成分である。グリセリンの配合量は、該水溶化製剤全体の9.75〜78.00質量%、特に19.50〜78.00質量%とすることが好ましい。上記範囲外であるとレスベラトロール類の溶解が不十分となり水溶化製剤に沈殿が生じるおそれがある。
【0033】
(C)エタノール
成分(C)のエタノールは、本発明の水溶化製剤を製造する際に、成分(B)と共に、レスベラトロール類、特にレスベラトロール類を含むブドウ抽出物を溶解させて後述するA液を調製するうえで重要な成分である。エタノールの配合量は、該水溶化製剤全体の9.75〜48.75質量%、特に9.75〜39.00質量%とすることが好ましい。上記範囲外であるとレスベラトロール類の溶解が不十分となり水溶化製剤に沈殿が生じるおそれがある。
【0034】
(D)アラビアガム
成分(D)のアラビアガムは水溶性高分子であり、レスベラトロール類を吸着させることにより、水への分散性を向上させている。アラビアガムの配合量は、該水溶化製剤全体の0.50〜3.00質量%とすることが好ましい。上記範囲外であるとレスベラトロール類の溶解が不十分となり水溶化製剤に沈殿が生じるおそれがある。
【0035】
(E)水
成分(E)の水は各成分の濃度を調整する点で重要な機能を果たす。水の配合量は、該水溶化製剤全体の9.75〜78.00質量%、特に9.75〜39.00質量%とすることが好ましい。
【0036】
本発明の水溶化製剤には、前記成分(A)〜(E)以外に、必要に応じて、他の成分として、他の生理活性物質、矯味剤、矯臭剤、着色剤、保存剤、pH調整剤等を配合することができる。これらの成分の配合量は特に制限はなく、水溶化製剤の安定性などを考慮して適宜決定すればよい。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤の配合は、レスベラトロール類の溶解性を低下させるので、本発明の水溶化製剤には、該乳化剤を配合しないものとする。
【0037】
本発明の水溶化製剤は、各種食品のほか、化粧品、医薬部外品などの水系製品の素材として添加することができる。食品としては、たとえば、飲料(ジュース、コーヒー、ココア、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料);調味料(味噌、醤油、トマト加工調味料、みりん類、食酢類);スープ類;乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト);乳化食品(ドレッシング、マヨネーズ、マーガリン);発酵食品(納豆);菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、ゼリー、グミ、錠菓);麺類(そば、うどん、ラーメン)、並びに、各種の健康食品、栄養補助食品(栄養ドリンク)が挙げられる。本発明の水溶化製剤は水系食品に配合が容易であるため、特に飲料、調味料、スープ類に用いるのに好適である。食品中のレスベラトロール類の濃度は所望する範囲で適宜決定されるが、通常は、trans−レスベラトロールが50〜1000mg/Lの範囲となる濃度である。
【0038】
その他、化粧品、医薬部外品などの水系製品としては、クリーム、化粧水、乳液、オーデコロン、香水、口紅、リップクリーム、シャンプー、リンス、石鹸、ボディシャンプー、ひげ剃り用クリーム、口中清涼剤、制汗剤、薬用化粧品、育毛剤、養毛剤、染毛剤、入浴剤などが例示される。
【0039】
本発明の水溶化製剤は、代表的には、以下の工程(a)、(b)及び(c)からなる方法によって、沈殿が生じない安定した水溶化状態の水溶化製剤を効率よく製造することができる。
(a)レスベラトロール類、グリセリン、及びエタノールを混合したA液を調製する工程、
(b)アラビアガム及び水を混合したB液を調製する工程、
(c)B液に対して、A液を添加して混合することにより、レスベラトロール類の水溶化製剤を得る工程。
【0040】
(a)工程においては、レスベラトロール類、グリセリン、エタノール及び必要に応じて配合される他の成分を混合してA液を調製する。レスベラトロール類、グリセリン及びエタノールの配合量については前述したとおりである。
【0041】
(b)工程においては、アラビアガム、水及び必要に応じて配合される他の成分を混合してB液を調製する。この場合、得られたB液を60〜70℃に加温し、この加温した状態のB液を後の(c)工程で用いると、レスベラトロール類の沈殿が生じにくくなるため好ましい。アラビアガム及び水の配合量については前述したとおりである。
【0042】
(c)工程においては、前記工程によって調製したB液に対して、A液を添加して混合することにより、レスベラトロール類の水溶化製剤を得る。A液とB液を混合するに際して、A液に対して、B液を少しずつ添加して混合するよりも、B液に対して、A液を少しずつ添加して撹拌混合すると、レスベラトロール類の沈殿が生じにくくなるため好ましい。なお、この水溶化製剤には、レスベラトロール類を完全に水溶液化しているものだけでなく、コロイド等の微粒子として存在するものも含まれる。
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない
【実施例】
【0044】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
1.レスベラトロール類を含む水溶化製剤の調製
エタノールにブドウ抽出物(レスベラトロール類を含む)をある程度溶かしたところにグリセリンを添加し、撹拌しながら溶解させて溶液(A液)を調製した。該ブドウ抽出物は、原料としてブドウの果皮を用いて、エタノールでレスベラトロール類を溶解、抽出し、フィルターでろ過した溶液を分離、精製したものであり、trans―レスベラトロール、ε―ビニフェリンなどが含まれる。
一方、水にアラビアガムを添加し、70℃に加温して溶液(B液)を調製した。
次いで、このB液に対して、先のA液を少しずつ添加して撹拌混合し、室温で放冷することにより、表1に示す割合(質量%)で各成分を含む水溶化製剤を調製した(実施例1〜6、比較例1〜4)。このようにして得られた実施例1〜6及び比較例1〜4の各水溶化製剤中のtrans−レスベラトロール量(質量%)を測定した。その結果を表1に示す。なお、trans−レスベラトロール量の測定は以下の方法により行った。
(1)標準溶液の調製
trans−レスベラトロール (和光純薬工業社製)10mgを精秤し、50mL容メスフラスコに採取する。50%エタノール溶液を加えて溶解させ、同溶液でメスアップする。0.45μmフィルターで濾過し、標準溶液とする。
(2)試料溶液の調製
レスベラトロール水溶化製剤0.5gを精秤し、50mL容メスフラスコに採取する。50%エタノール溶液を加えて溶解し、同溶液でメスアップする。0.45μmフィルターで濾過し、試料溶液とする。
(3)HPLC条件
カラム:Mightysil RP-18GP II(関東化学社製)
移動相:(A)1%酢酸水、(B)メタノール
グラジエント条件
流速:1.0mL/分
検出波長:310nm
カラム温度:30℃
注入量:10μL
(4)含有量計算法
trans−レスベラトロール含有量(質量%)=(試料面積÷標準面積)×(標準採取量÷試料採取量)×100
【0045】
2.酸性希釈液の調製
実施例1〜6及び比較例1〜4の各水溶化製剤に含まれるtrans−レスベラトロールの最終濃度が1.0mg/100mLとなるように、各水溶化製剤をクエン酸酸性溶液(pH3.0)で希釈し、溶解させた。得られた酸性希釈液を80℃で30分間加熱した後、室温で放冷することにより、実施例1〜6及び比較例1〜4の各水溶化製剤に対応する酸性希釈液を調製した。
【0046】
3.目視による外観評価
実施例1〜6及び比較例1〜4の各水溶化製剤について、それぞれの外観を目視により、表2に示した基準で評価した。その結果を表1に示す。
また、同様に、実施例1〜6及び比較例1〜4の各酸性希釈液について、それぞれの外観を目視により、表2に示した基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
4.外観評価の結果
表1から明らかなように、実施例1〜6の各水溶化製剤は、レスベラトロール類の沈殿が全く認められず、安定した水溶化状態の水溶化製剤であることが確認された。
それに対し、本発明で規定する必須成分を欠く比較例1〜4の各水溶化製剤は、レスベラトロールの沈殿が生じ、安定な水溶化製剤でないことが確認された。
また、実施例1〜6の各水溶化製剤から調製した酸性希釈液は、沈殿が全く認められず、安定した安定した水溶化状態の酸性希釈液であることが確認された。
それに対し、本発明で規定する必須成分を欠く比較例1〜4の各水溶化製剤から調製した酸性希釈液は、レスベラトロールの沈殿が存在し、安定な水溶化製剤でないことが確認された。
【0050】
(実施例7)
1.レスベラトロール類を含む水溶化製剤の調製
エタノールにブドウ抽出物(レスベラトロール類を含む)をある程度溶かしたところにグリセリンを添加し、撹拌しながら溶解させて溶液(A液)を調製した。該ブドウ抽出物は、実施例1〜6及び比較例1〜4で使用したものと同様のものである。
一方、水にアラビアガムを添加し、70℃に加温して溶液(B液)を調製した。
次いで、このB液に対して、先のA液を少しずつ添加して撹拌混合し、室温で放冷することにより、表3に示す割合(質量%)で各成分を含む水溶化製剤を調製した(実施例7)。このようにして得られた実施例7の水溶化製剤中のtrans−レスベラトロール量(質量%)を前述した方法で測定した。その結果を表3に示す。
【0051】
2.目視による外観評価
実施例7の水溶化製剤について、その外観を目視により、表4に示した基準で評価した。その結果を表3に示す。
【0052】
(比較例5)
1.レスベラトロール類を含む水溶化製剤の調製
エタノールにブドウ抽出物(レスベラトロール類を含む)をある程度溶かしたところに、グリセリンを添加し、撹拌しながら溶解させて溶液(A液)を調製した。該ブドウ抽出物は、実施例1〜6及び比較例1〜4で使用したものと同様のものである。
次いで、このA液にアラビアガムを添加し、70℃に加温した後、これを水に少しずつ添加して撹拌混合し、室温で放冷することにより、表3に示す割合(質量%)で各成分を含む水溶化製剤を調製した(比較例5)。このようにして得られた比較例5の水溶化製剤中のtrans−レスベラトロール量(質量%)を前述した方法で測定した。その結果を表3に示す。
【0053】
2.目視による外観評価
比較例5の水溶化製剤について、その外観を目視により、表4に示した基準で評価した。その結果を表3に示す。
【0054】
(比較例6)
1.レスベラトロール類を含む水溶化製剤の調製
ブドウ抽出物(レスベラトロール類を含む)に グリセリンを添加し、撹拌しながら溶解させて溶液(A’液)を調製した。該ブドウ抽出物は、実施例1〜6及び比較例1〜4で使用したものと同様のものである。
一方、水にアラビアガムを添加し、70℃に加温溶解し、これにエタノールを添加して撹拌混合することにより、溶液(B’液)を調製した。
次いで、このB’液に対して、先のA’液を少しずつ添加して撹拌混合し、室温で放冷することにより、表3に示す割合(質量%)で各成分を含む水溶化製剤を調製した(比較例6)。このようにして得られた比較例6の水溶化製剤中のtrans−レスベラトロール量(質量%)を前述した方法で測定した。その結果を表3に示す。
【0055】
2.目視による外観評価
比較例6の水溶化製剤について、その外観を目視により、表4に示した基準で評価した。その結果を表3に示す。
【0056】
(比較例7)
エタノールにブドウ抽出物(レスベラトロール類を含む)をある程度溶かしたところに、グリセリンを添加し、撹拌しながら溶解させて溶液(A液)を調製した。該ブドウ抽出物は、実施例1〜6及び比較例1〜4で使用したものと同様のものである。
一方、水にアラビアガムを添加し、70℃に加温して溶液(B液)を調製した。
次いで、先のA液に対して、このB液を少しずつ添加して撹拌混合し、室温で放冷することにより、表3に示す割合(質量%)で各成分を含む水溶化製剤を調製した(比較例7)。このようにして得られた比較例7の水溶化製剤中のtrans−レスベラトロール量(質量%)を前述した方法で測定した。その結果を表3に示す。
【0057】
2.目視による外観評価
比較例7の水溶化製剤について、その外観を目視により、表4に示した基準で評価した。その結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
(外観評価の結果)
表3から明らかなように、実施例7の水溶化製剤は、レスベラトロール類の沈殿が全く認められず、安定した水溶化製剤であることが確認された。
比較例5〜7の各水溶化製剤は、レスベラトロール類の微量の沈殿が認められ、実施例5の水溶化製剤に比べるとやや不安定な水溶化製剤であることが確認された。
以上の結果から、アラビアガム及び水を混合したB液に対して、レスベラトロール類、グリセリン、及びエタノールを混合したA液を添加して混合することが、沈殿のない安定した水溶化状態のレスベラトロール類の水溶化製剤を調製するうえで好ましいことが理解できる。