(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る医用画像診断装置および焦点サイズ校正方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置は、グリッドを有しグリッド電圧に応じて焦点サイズが変化するX線管を備えたX線CTやX線アンギオ装置などの各種の医用画像診断装置に適用することが可能である。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置10の一構成例を示すブロック図である。
【0012】
医用画像診断装置10は、操作コンソール11、X線高電圧装置12、X線管13、X線検出部14、X線光学部15、画像解析部16および記憶部17を有する。
【0013】
操作コンソール11は、ユーザによる操作を受け付けるための操作受付部や各種画像を表示するための表示出力部を備え、ユーザによるX線照射条件(X線条件)や設定焦点サイズなどの入力を受け付けてX線高電圧装置12に与える。
【0014】
操作受付部は、たとえばキーボード、タッチパネル、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を主制御部21に出力する。表示出力部は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、入力受付のための画像などの各種画像を表示する。
【0015】
操作コンソール11は、たとえば一般的なパーソナルコンピュータにより構成されてもよい。操作コンソール11がパーソナルコンピュータにより構成される場合、操作コンソール11、画像解析部16は同一のパーソナルコンピュータにより実現されてもよく、また記憶部17はこのパーソナルコンピュータにより備えられた記憶媒体であってもよい。
【0016】
X線高電圧装置12は、主制御部21、X線電源22およびグリッド制御部23を有する。
【0017】
主制御部21は、CPU、RAMおよびROMをはじめとする記憶媒体などにより構成され、この記憶媒体に記憶された焦点サイズ校正プログラムに従ってX線高電圧装置12の動作を制御する。
【0018】
具体的には、主制御部21は、グリッド制御部23に対して設定グリッド電圧VS
Gに対応するグリッド制御信号を出力する。たとえば記憶部17または主制御部21の記憶媒体に焦点サイズと設定グリッド電圧VS
Gとを関連付けた情報が記憶されている場合、主制御部21は、たとえば操作コンソール11から与えられた設定焦点サイズに関連付けられた設定グリッド電圧VS
Gを抽出し、この設定グリッド電圧VS
Gに対応するグリッド制御信号をグリッド制御部23に与える。
【0019】
また、主制御部21は、出力した設定グリッド電圧VS
Gに応じてX線検出部14に結像された焦点像のサイズを画像解析部16から受けると、この焦点像のサイズにもとづいてX線管13の焦点サイズを求める。そして、求めた焦点サイズとグリッド制御部23に出力した設定グリッド電圧VS
Gとを関連付けた情報を生成し、記憶部17または主制御部21の記憶媒体に記憶させる。焦点サイズと設定グリッド電圧VS
Gとを関連付けた情報が既に記憶されている場合は、生成した情報でこの既に記憶されている情報を更新する。
【0020】
また、主制御部21は、操作コンソール11から受けたX線条件にもとづいてX線管13に印加すべき管電圧kVや管電流mA、照射時間(管電流、管電圧の印加期間)msecなどを設定してX線電源22に与える。また、X線管13が回転陽極タイプである場合は、主制御部21は、X線電源22の内部のステータコイル駆動回路を介してX線管13のターゲット31を回転させる。
【0021】
X線電源22は、主制御部21に制御されて、X線管13に印加すべき管電圧kVや管電流mAをX線管13に供給する。また、X線管13が回転陽極タイプである場合は、X線電源22の内部のステータコイル駆動回路を介してX線管13のターゲット31を回転させる。
【0022】
グリッド制御部23は、主制御部21に制御されて、設定グリッド電圧VS
Gに対応するグリッド制御信号に応じてグリッド電圧V
Gを生成し、X線管13のグリッド32に印加することによりX線管13の焦点サイズを制御する。
【0023】
陰極33は、X線電源22のフィラメント加熱回路により管電流mAを制御されて加熱されると、熱電子を放出できる状態になる。この状態でターゲット31がステータコイル駆動回路により回転し、X線管13に管電圧kVが印加されると、熱電子がターゲット31に衝突してX線が照射される。このとき、グリッド制御部23によりグリッド32に負の電圧(グリッド電圧V
G)が印加されると、X線管13の陰極33から放出された熱電子束は絞りこまれ、ターゲット31上の衝突面積が小さくなり、X線管13の焦点サイズは小さくなる。このため、グリッド電圧V
Gを制御することにより、X線管13の焦点サイズを制御することができる。グリッド制御部23は、グリッド制御信号に応じてたとえば−3000Vから0Vまでの電圧をグリッド電圧V
Gとしてグリッド32に印加可能に構成される。
【0024】
なお、以下の説明では、グリッド32がX線管13の焦点の幅W方向および長さL方向のそれぞれを制御するための2組備えられ、グリッド制御部23がこの2組のグリッド32のそれぞれに対してグリッド電圧V
GW、V
GLを印加する場合の例について示す。2組のグリッド32を用い、それぞれに別の電圧を印加することにより、焦点形状を2次元的に変更することができ、たとえば焦点形状を正方形に近づけることができる。
【0025】
X線管13は、ターゲット31、グリッド32および陰極(カソードフィラメント)33を有する。陰極33は1つであってもよい。X線管13の焦点サイズは、グリッド32に印加されるグリッド電圧V
GW、V
GLに応じて変化する。なお、ターゲット31は回転しない固定陽極タイプであってもよいし、回転する回転陽極タイプであってもよい。
【0026】
X線検出部14、X線光学部15を挟んでX線管13と対向する位置に設けられ、X線検出部14に照射されたX線を検出する。X線検出部14は、この検出したX線の強度に応じた信号を画像解析部16に出力する。
【0027】
医用画像診断装置10としてX線CT装置を用いる場合は、X線検出部14はたとえば回転するガントリによりX線管13と対向する位置にX線管13と一体として保持され、たとえば2次元に配置された複数のX線検出素子(電荷蓄積素子)により構成される。また、医用画像診断装置10としてX線アンギオ装置を用いる場合は、X線検出部14はCアームによりX線管13と対向する位置にX線管13と一体として保持され、たとえば平面検出器(FPD:flat panel detector)により構成される。
【0028】
X線光学部15は、X線管13の焦点像をX線検出部14に結像させるための光学系であり、結像要素41と、結像要素41を囲む周囲要素42と、周囲要素42を支持する基板43とを有する。X線管13から照射されたX線ビームは、X線錐の中心位置に設置された結像要素41により絞りこまれ、X線検出部14にX線管13の焦点像を結像させる。
【0029】
図2は、ピンホールカメラ法を利用する場合におけるX線光学部15の断面図である。
【0030】
X線光学部15の結像要素41としては、たとえば
図2に示すようにピンホールカメラ法(医用X線管装置 JIS Z 4704)に用いられるピンホールを用いることができる。結像要素41としてピンホールを用いる場合、周囲要素42は金90%と白金10%の合金やタングステンまたはタングステンカーバイドなどにより構成され、結像要素41は、周囲要素42にピンホールとして形成される。基板43は、周囲要素42を支持することができればよく、鉛、鉄などの金属で構成されてもよいし、アクリル板などの非金属で構成されてもよい。
【0031】
なお、X線光学部15は、画像解析部16がX線管13の焦点像のサイズを出力できるようにX線管13の焦点像に相当する像をX線検出部14に結像することができればよく、たとえば結像要素41としてX線集光レンズを用いてもよい。また、結像要素41としてピンホールカメラ法におけるピンホールと同等の径を有する鉛などのX線遮蔽物を用い、周囲要素42をアクリル板などの結像要素41よりもX線透過率の高い物質で構成してもよい。
【0032】
画像解析部16は、X線管13から照射されてX線光学部15を介してX線検出部14に結像された焦点像のサイズを出力する。
【0033】
図3は、結像要素41としてピンホールを用いる場合において、X線検出部14に結像されたX線管13の焦点像51のサイズから焦点サイズを求める方法の一例を説明するための説明図である。
【0034】
ピンホールカメラ法では、ピンホールの径がX線管13の焦点サイズよりも十分に小さいとき、X線管13の焦点位置52からピンホールまでの距離をA、ピンホールからX線検出部14までの距離をBとすると、W方向にΔW、L方向にΔLのサイズを有する焦点が、拡大率(倍率)M=B/Aで拡大された焦点像51としてX線検出部14に結像することが知られている。X線検出部14が出力する画像信号はX線検出部14に照射されたX線の強度分布信号であり、ピンホールを通過してX線検出部14に照射されるX線の強度は強く、周囲要素42で遮られたX線の強度は弱い。
【0035】
図4は、
図3に示す例においてX線検出部14が出力する幅W方向および長さL方向のX線強度分布の一例を示す説明図である。
【0036】
X線検出部14が出力するX線強度分布をW方向およびL方向についてそれぞれグラフにすると、
図4に示すように台形状になる。このため、画像解析部16は、X線検出部14の出力にもとづいて、各台形の上底と下底の中央に閾値を設け、閾値を超える部分の距離を測定することで焦点像51のW方向およびL方向のサイズを得ることができる。
【0037】
したがって、主制御部21は、画像解析部16から受けた焦点像51のサイズを拡大率Mで除すことにより、X線管13の焦点サイズを求めることができる。
【0038】
図5は、X線光学部15が寝台61に支持される様子の一例を示す説明図である。
【0039】
拡大率Mは、正確に設定するためには、X線管13、X線検出部14およびX線光学部15を正確に位置決めすることが重要である。これらを正確に位置決めするためには、たとえばX線光学部15を寝台61に支持させるとよい。
【0040】
この場合、寝台61は、床面62に載置され、被検体を載置する天板63を有する。天板63の一部、たとえば天板63のX線照射軸側の先端には、X線光学部15を支持する支持部材64が設けられる。支持部材64は、たとえば天板63からX線照射軸側に突出するように、X線光学部15を支持する。X線光学部15の結像要素41は、X線錐の中心に位置するようにたとえばレーザマーカ65を用いて位置決めされる。
【0041】
X線管13およびX線検出部14は、天板63の上面の法線方向に沿った所定位置で停止させておくとよい。この所定位置における焦点位置52と床面62との距離Hxはあらかじめ測定しておく。また、焦点位置52とX線検出部14の検出面との距離Sは既知である。また、天板63の上面から支持部材64に支持されたX線光学部15までの高さdも既知の一定値である。したがって、床面62から天板63の上面までの高さHbを制御することにより、拡大率Mを制御することができる。床面62から天板63の上面までの高さHbは、たとえば主制御部21が寝台61の駆動機構を制御することにより任意に設定することができる。
【0042】
図6は、周囲要素42の像にもとづいて拡大率Mを算出する様子の一例を示す説明図である。
【0043】
周囲要素42と基板43とが異なるX線透過率を有する場合、X線検出部14には周囲要素42の輪郭UW×ULの像71が結像される。この場合、画像解析部16は、この周囲要素42の輪郭の像71のサイズM・UWおよびM・ULを出力するとよい。主制御部21は、この輪郭の像71のサイズを、X線光学部15上での周囲要素42の実際の輪郭のサイズで除すことにより、拡大率Mを求めることができる。
【0044】
図7は、X線光学部15の複数のマーカ72の像にもとづいて拡大率Mを算出する様子の一例を示す説明図である。
【0045】
X線検出部14に識別可能な像が結像される複数のマーカ72をX線光学部15に設け、複数のマーカ72の像の間の距離を用いて拡大率Mを求めることもできる。マーカ72は、X線検出部14に識別可能な像が結像されるものであればよく、マーカ72とその周囲の部材とのX線透過率が異なっていればよい。
【0046】
また、マーカ72の1つとして結像要素41を利用してもよい。結像要素41と周囲要素42とは当然にX線透過率が異なるためである。
図7には、マーカ72の1つとしてピンホールの結像要素41を利用する場合の例を示した。また、たとえば基板43を鉛で構成している場合は、マーカ72の1つまたは複数は鉄やアクリルなどで構成されてもよいし、基板43に設けられた開口部であってもよい。
【0047】
画像解析部16は、X線検出部14に結像された複数のマーカ72の像の中心位置を求め、この中心位置間の距離を出力する。主制御部21は、この中心位置間の距離を、X線光学部15上での複数のマーカ72の距離Δmで除すことにより、拡大率Mを求めることができる。
【0048】
周囲要素42の像にもとづいて拡大率Mを算出する方法や、X線光学部15の複数のマーカ72の像にもとづいて拡大率Mを算出する方法によれば、実測にもとづく拡大率Mを用いて焦点サイズを正確に求めることができる。また、この場合、X線光学部15の位置からB/Aを求めて拡大率Mを算出する必要がないため、X線光学部15の位置合わせを精密に行う必要がなく、またX線光学部15の位置を知る必要もない。
【0049】
次に、本実施形態に係る医用画像診断装置10の動作の一例について説明する。
【0050】
医用画像診断装置10による焦点サイズの校正方法としては、大きく次の2つの方法を用いることができる。
【0051】
まず、焦点サイズの第1の校正方法について説明する。第1の校正方法は、設定焦点サイズに対応する設定グリッド電圧VS
Gを求めることにより焦点サイズとグリッド電圧との関係を校正し、ユーザの所望する設定焦点サイズを正確に実現する方法である。第1の校正方法では、焦点サイズとグリッド電圧V
Gとをあらかじめ関連付けた情報(X線管13の標準特性情報)を、記憶部17または主制御部21の記憶媒体に記憶させておく。以下の説明では、標準特性情報が記憶部17に記憶されている場合の例について示す。
【0052】
図8は、W方向およびL方向のそれぞれについて焦点サイズとグリッド電圧V
GW、V
GLとをあらかじめ関連付けた標準特性情報の一例を示す説明図である。
【0053】
操作コンソール11から設定焦点サイズの情報を受けると、主制御部21は、記憶部17に記憶された標準特性情報(
図8参照)を用いて、この設定焦点サイズに関連付けられたグリッド電圧V
GW、S
GLの情報を取得する。そして、主制御部21は、このグリッド電圧V
GW、V
GLを設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLとし、この設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLに対応するグリッド制御信号をグリッド制御部23に出力する。グリッド制御部23は、グリッド制御信号に応じてグリッド電圧V
GW、V
GLを生成し、X線管13のグリッド32に印加することによりX線管13の焦点サイズを制御する。主制御部21は、このグリッド電圧V
GW、V
GLでX線検出部14に結像された焦点像51のサイズから焦点サイズを求める。
【0054】
主制御部21は、求めた焦点サイズと設定焦点サイズとの差が閾値以内になるように設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLを修正して再度X線管13にX線光学部15を介してX線検出部14に焦点像51を結像させて焦点サイズを求めることを繰り返す。そして、閾値以内となった際の設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLと設定された焦点サイズとで、標準特性情報を更新するか、または標準特性情報とは別にこの実測した設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLと設定された焦点サイズとの関係を記憶部17に記憶させる。
【0055】
続いて、第1の校正方法において、求めた焦点サイズと設定焦点サイズとの差が閾値以内になるように設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLを修正する方法の詳細について説明する。
【0056】
たとえば、設定焦点サイズΔW×ΔLが1.0mm×1.0mmであり、標準特性情報においてこの設定焦点サイズに関連付けられたグリッド電圧V
GW、V
GLを−1100V、1200Vであり、グリッド制御部23の設計上の特性が−500V/1V(出力/入力)である場合について考える。
【0057】
この場合、主制御部21は、設定グリッド電圧VS
GW=−1100V、VS
GL=−1200Vとし、対応する次のグリッド制御信号をグリッド制御部23に出力する。
W方向グリッド制御信号:−1100V/(−500V/1V)=2.2V
L方向グリッド制御信号:−1200V/(−500V/1V)=2.4V
【0058】
しかし、グリッド制御部23の実際の特性は、設計上の特性に対して誤差を有することが多い。ここでは、たとえば実際の特性(実特性)がW方向−520V/1V、L方向−530V/1Vであるとする。この場合、上記グリッド制御信号を受けたグリッド制御部23により出力される実際のグリッド電圧V
GW、V
GLは次のようになる。
V
GW=−520V×2.2V=−1144V
V
GL=−530V×2.4V=−1272V
【0059】
いま、X線管13の実特性が、焦点サイズΔW×ΔLを1.0mm×1.0mmとするためのグリッド電圧V
GW、V
GLがそれぞれV
GW=−1050V、V
GL=−1210Vとすると、焦点サイズΔW×ΔLはおおよそ次のようになる。
ΔW=−1050V/−1144V×1mm≒0.92mm
ΔL=−1210V/―1272V×1mm≒0.95mm
【0060】
X線管13から照射されたX線ビームはX線光学部15を介してX線検出部14に照射され、焦点像51を結像する。いま、拡大率(倍率)M=5となる位置にX線光学部15が設置されているものとすると、焦点像51の大きさは次のとおりである。
M・ΔW=0.92mm×5=4.6mm
M・ΔL=0.95mm×5=4.75mm
【0061】
画像解析部16で焦点像サイズ信号に変換されて主制御部21に入力された信号は、主制御部21によって拡大率Mで除された後、設定焦点サイズとの差を求められる。この差が閾値以上である場合は、主制御部21は、この差を補正するように、現在のグリッド制御信号を変更する。変更後のグリッド制御信号は、それぞれ次のようにするとよい。
W方向グリッド制御信号:(4.6mm/5)/1.0mm×2.2V=2.024V
L方向グリッド制御信号:(4.75mm/5)/1.0mm×2.4V=2.28V
【0062】
次に、変更後のグリッド制御信号に応じたグリッド電圧をグリッド32に印加して再度X線照射を行い、焦点像51のサイズを測定する。このとき拡大結像される焦点像51の大きさは次のとおりである。
M・ΔW=−1050V×1.0mm/(−520V×2.024V)×5≒4.99mm
M・ΔL=−1210V×1.0mm/(−530V×2.28V)×5≒5.01mm
【0063】
この焦点像51のサイズを拡大率Mで除すと、焦点サイズはほぼ1mmとなり、焦点サイズが校正されたことがわかる。
【0064】
主制御部21は、この校正後のグリッド制御信号に(−500V/1V)を乗ずることにより、このときのグリッド制御信号に対応する設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLを求める。主制御部21は、この求めた設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLと設定された焦点サイズとで、標準特性情報を更新するか、または標準特性情報とは別に、この求めた設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLと設定された焦点サイズとの関係を記憶部17に記憶させる。また、主制御部21は、グリッド制御信号に対応する設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLを求めずに、この校正後のグリッド制御信号と設定焦点サイズとの関係を記憶部17に記憶させてもよい。
【0065】
図9は、X線検出部14の分解能を考慮した焦点像51のサイズの測定方法の一例について説明するための図である。
【0066】
X線検出部14を構成するX線検出素子のピッチをPmm、拡大率をMとすると、焦点サイズの分解能はP/Mmmとなる。焦点サイズに対してこの分解能が十分に高くない場合は、グリッド電圧V
Gを変化させながら焦点サイズの測定値の変化ポイントを探索するとよい。この場合、設定焦点サイズよりも大きくなるポイントおよび小さくなるポイントの中央値を設定グリッド電圧VS
Gとして記憶部17に記憶させるとよい。
【0067】
ユーザは、よく用いる焦点サイズ(たとえば
図8に示した大焦点、小焦点、極小焦点の3つなど)について第1の校正方法を実行することにより、よく用いる焦点サイズと正確な設定グリッド電圧VS
Gとを関連付けた情報を記憶部17に記憶させておくことができる。このため、第1の校正方法による校正後は、主制御部21は、この関連付けた情報を用いることにより、ユーザの所望の焦点サイズを容易に実現することができる。
【0068】
この記憶部17に記憶させた設定グリッド電圧VS
GW、VS
GL(またはグリッド制御信号)と設定された焦点サイズとの関係は、X線管13の実特性およびグリッド制御部23の実特性の非線形要素を反映している。このため、第1の校正方法によれば、X線管13の実特性にばらつきがあっても、またグリッド制御部23のグリッド電圧の出力精度がそれほど高くなくても、X線管13の実特性およびグリッド制御部23の実特性を反映して焦点サイズを校正することができる。換言すれば、第1の校正方法による焦点サイズの校正方法においてX線管13の実特性およびグリッド制御部23の実特性は全く問題にならず、用いる必要もない。
【0069】
また、X線管13の焦点サイズと実際の正確な設定グリッド電圧VS
Gとを関連付けた情報は、X線管13に固有の情報であり、X線管13が異なると標準特性情報も異なる。一方、第1の校正方法によれば、X線管13の実特性を反映した関連付け情報を得ることができる。このため、X線管13を交換した場合であっても、ユーザは、医用画像診断装置10により容易に交換後のX線管13についてのよく用いる焦点サイズと正確な設定グリッド電圧VS
Gとを関連付けた情報を得ることができる。
【0070】
次に、焦点サイズの第2の校正方法について説明する。第2の校正方法は、設定グリッド電圧を変更しつつ焦点サイズを求めることで設定グリッド電圧と焦点サイズとを関連付けた情報を生成することにより、焦点サイズとグリッド電圧との関係を校正し、ユーザの所望する設定焦点サイズを正確に実現する方法である。第2の校正方法は、標準特性情報を必要としない。
【0071】
図10は、設定グリッド電圧を変更しつつ焦点サイズを求めることにより生成されるグリッド制御信号と焦点サイズとを関連付けた情報の一例を示す説明図である。
図10にはグリッド制御信号と焦点サイズとを関連付けた情報の例を示したが、もちろん設定グリッド電圧と焦点サイズとを関連付けた情報を生成してもよい。
【0072】
この設定グリッド電圧(またはグリッド制御信号)と焦点サイズとを関連付けた情報の生成処理は、たとえば操作コンソール11を介してユーザにより指示されて開始される。
【0073】
主制御部21はまず、設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLの初期値VSstとしてたとえば0Vを設定し、この設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLに対応するグリッド制御信号をグリッド制御部23に出力する。グリッド制御部23は、グリッド制御信号に応じてグリッド電圧V
GW、V
GLを生成し、X線管13のグリッド32に印加することによりX線管13の焦点サイズを制御する。主制御部21は、このグリッド電圧V
GW、V
GLでX線検出部14に結像された焦点像51のサイズから焦点サイズを求め、設定グリッド電圧VS
GW、VS
GL=0Vに関連付けて記憶部17に記憶させる。
【0074】
次に、主制御部21は、設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLを現在の値に所定の値−ΔV(たとえば−50V)を加えた電圧として同様に焦点サイズを求め、設定グリッド電圧VS
GW、VS
GL=0V−ΔVに関連付けて記憶部17に記憶させる。これを、設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLがあらかじめ設定した終了値VSendになるまで繰り返す。この結果、主制御部21は、
図10に示す設定グリッド電圧(またはグリッド制御信号)と焦点サイズとを関連付けた情報を生成することができる。
【0075】
この関連付けた情報の生成後は、主制御部21は、この関連付けた情報を用いることにより、ユーザの所望の焦点サイズを容易に実現することができる。また、第2の校正方法は、標準特性情報が必要ない。また、第1の校正方法のようにユーザのよく用いる焦点サイズに限られることなく任意の焦点サイズを正確に実現することができるため、たとえば焦点サイズを連続的に変化させる際にも正確な焦点サイズを実現することができる。
【0076】
また、第2の校正方法により得られる関連付け情報もまた、第1の校正方法により得られる関連付け情報と同様に、X線管13の実特性およびグリッド制御部23の実特性の非線形要素を反映している。このため、第2の校正方法によっても、X線管13の実特性にばらつきがあっても、またグリッド制御部23のグリッド電圧の出力精度がそれほど高くなくても、X線管13の実特性およびグリッド制御部23の実特性を反映して焦点サイズを校正することができる。すなわち、第2の校正方法による焦点サイズの校正方法においても、X線管13の実特性およびグリッド制御部23の実特性は全く問題にならず、用いる必要もない。また、第2の校正方法によれば、X線管13を交換した場合、ユーザは、医用画像診断装置10により容易に交換後のX線管13の焦点サイズと正確な設定グリッド電圧VS
Gとを関連付けた情報を得ることができる。
【0077】
図11は、設定焦点サイズに対応する設定グリッド電圧VS
Gを求めることにより焦点サイズとグリッド電圧との関係を容易に校正する際の手順(第1の校正方法の手順)の一例を示すフローチャートである。
図11において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0078】
この手順は、あらかじめ記憶部17または主制御部21の記憶媒体に標準特性情報が記憶されてスタートとなる。
【0079】
まず、ステップS1において、主制御部21は、操作コンソール11から設定焦点サイズの情報を受ける。そして、主制御部21は、記憶部17に記憶された標準特性情報(
図8参照)を用いて、この設定焦点サイズに関連付けられたグリッド電圧V
GW、S
GLの情報を取得し、このグリッド電圧V
GW、V
GLを設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLとする。
【0080】
次に、ステップS2において、主制御部21は、設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLに対応するグリッド制御信号をグリッド制御部23に出力する。グリッド制御部23は、グリッド制御信号に応じてグリッド電圧V
GW、V
GLを生成し、グリッド32に印加する。
【0081】
次に、ステップS3において、X線管13は、X線光学部15を介してX線検出部14に焦点像51を結像する(
図3参照)。
【0082】
次に、ステップS4において、画像解析部16は、X線検出部14の出力にもとづいて焦点像51のW方向およびL方向のサイズを求めて主制御部21に与える。主制御部21は、焦点像51のサイズを拡大率Mで除すことにより、X線管13の焦点サイズを求める。なお、拡大率Mを周囲要素42の像にもとづいて拡大率Mを算出する方法(
図6参照)や、X線光学部15の複数のマーカ72の像にもとづいて拡大率Mを算出する方法(
図7参照)により求める場合には、このステップS4においてまず拡大率Mを求めて、求めた拡大率Mを用いて焦点サイズを求めてもよい。
【0083】
次に、ステップS5において、求めた焦点サイズと設定焦点サイズとの差が閾値以内であるか否かを判定する。差が閾値より大きい場合は、ステップS6に進み、主制御部21は、この差を補正するように現在の設定グリッド電圧を変更し、変更後の設定グリッド電圧で再度焦点サイズを求めるようステップS2に戻る。
【0084】
一方、差が閾値以内の場合は、ステップS7において主制御部21は、現在の設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLと設定焦点サイズとで、標準特性情報を更新するか、または標準特性情報とは別にこの実測した設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLと設定された焦点サイズとの関係を記憶部17に記憶させる。
【0085】
以上の手順により、設定焦点サイズに対応する設定グリッド電圧VS
Gを求めることにより焦点サイズとグリッド電圧との関係を容易に校正することができる。
【0086】
図12は、設定グリッド電圧を変更しつつ焦点サイズを求めることで設定グリッド電圧と焦点サイズとを関連付けた情報を生成することにより、焦点サイズとグリッド電圧との関係を校正する際の手順(第2の校正方法の手順)の一例を示すフローチャートである。
【0087】
まず、ステップS11において、主制御部21は、設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLの初期値VSst(たとえば0V)を設定する。
【0088】
次に、ステップS12において、主制御部21は、設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLに対応するグリッド制御信号をグリッド制御部23に出力する。グリッド制御部23は、グリッド制御信号に応じてグリッド電圧V
GW、V
GLを生成し、グリッド32に印加する。
【0089】
次に、ステップS13において、X線管13は、X線光学部15を介してX線検出部14に焦点像51を結像する(
図3参照)。
【0090】
次に、ステップS14において、画像解析部16は、X線検出部14の出力にもとづいて焦点像51のW方向およびL方向のサイズを求めて主制御部21に与える。主制御部21は、焦点像51のサイズを拡大率Mで除すことにより、X線管13の焦点サイズを求める。なお、拡大率Mを周囲要素42の像にもとづいて拡大率Mを算出する方法(
図6参照)や、X線光学部15の複数のマーカ72の像にもとづいて拡大率Mを算出する方法(
図7参照)により求める場合には、このステップS4においてまず拡大率Mを求めて、求めた拡大率Mを用いて焦点サイズを求めてもよい。
【0091】
次に、ステップS15において、主制御部21は、求めた焦点サイズと現在の設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLとを関連付けて記憶部17に記憶させる。
【0092】
次に、ステップS16において、主制御部21は、設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLを、現在の値に所定の値−ΔV(たとえば−50V)を加えた電圧に変更する。
【0093】
次に、ステップS17において、主制御部21は、変更した設定グリッド電圧VS
GW、VS
GLがあらかじめ設定した終了値VSendより大きいか否かを判定する。終了値VSendより大きい場合は、一連の作業は終了となる。一方、終了値VSend以下である場合は、ステップS12に戻る。
【0094】
以上の手順により、設定グリッド電圧を変更しつつ焦点サイズを求めることで設定グリッド電圧と焦点サイズとを関連付けた情報を生成することにより、焦点サイズとグリッド電圧との関係を校正することができる。
【0095】
本実施形態に係る医用画像診断装置10は、グリッド制御部23に与える設定グリッド電圧と焦点サイズとを関連付けた情報を得ることができる。この情報は、X線管13の実特性およびグリッド制御部23の実特性の非線形要素を反映している。このため、X線管13の実特性にばらつきがあっても、またグリッド制御部23のグリッド電圧の出力精度がそれほど高くなくても、X線管13の実特性およびグリッド制御部23の実特性を反映して焦点サイズを校正することができる。
【0096】
したがって、医用画像診断装置10によれば、X線管13やグリッド制御部23の特性が経年変化を起こした場合であっても、医用画像診断装置10の設置されている場所でユーザ自らが容易にX線管13の焦点サイズと正確な設定グリッド電圧VS
Gとを関連付けた情報を得ることができる。また、ユーザがX線管13を交換した場合や修理のためにグリッド制御部23を交換した場合であっても、同様に、医用画像診断装置10の設置されている場所でユーザ自らが容易に交換後のX線管13の焦点サイズと正確な設定グリッド電圧VS
Gとを関連付けた情報を得ることができる。また、定期点検でX線管13の焦点サイズと正確な設定グリッド電圧VS
Gとを関連付けた情報を得ることにより、常に正確な焦点サイズを実現することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る医用画像診断装置10の焦点サイズ校正方法によれば、X線管13やグリッド制御部23の特性を一切必要としない。このため、X線管13やグリッド制御部23の特性管理や保管管理に特別な配慮を要さない。
【0098】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。