特許第6381893号(P6381893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381893
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】毛髪化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20180820BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20180820BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180820BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/02
   A61K8/41
   A61K8/19
   A61K8/46
   A61K8/34
   A61Q5/10
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-226423(P2013-226423)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-86175(P2015-86175A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 実薫子
【審査官】 進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−286754(JP,A)
【文献】 特開2005−053877(JP,A)
【文献】 特開2013−151464(JP,A)
【文献】 特開2002−241249(JP,A)
【文献】 特開2010−111607(JP,A)
【文献】 特開2009−269876(JP,A)
【文献】 特開2002−226343(JP,A)
【文献】 Mandom, Indonesia, "Natural Hair Bleach & Colour", Mintel GNPD ID#1060716,2009年 3月,検索日:2017年12月26日,URL,http://www.gnpd.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含み乳化物である第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを構成に含む複数剤式の毛髪化粧料組成物であって、
当該第1剤は、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を3質量%以上含有し、数平均分子量が1290以上7300未満のポリエチレングリコールを含有し、カチオン性界面活性剤を含有する、毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
アシルメチルタウリン塩を0.1〜5質量%含有する第1剤を除く、請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記カチオン性界面活性剤が塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムである請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
毛髪化粧料組成物を構成する複数剤を混合した混合物の粘度が5,000〜30,000mPa・sである、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の毛髪化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、毛髪化粧料組成物に関する。詳しくは、第1剤の乳化安定性及び使用時の操作性が良好な毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを構成に含む毛髪化粧料組成物において、アンモニアの刺激臭を低減しつつ毛髪に明度を付与するためのアルカリ剤として炭酸塩が知られている。
【0003】
下記特許文献1は、炭酸系のアンモニウム塩とリン酸塩とを併用し、特定範囲内のpH値とした第1剤を構成に含む毛髪化粧料組成物を開示する。
【0004】
下記特許文献2は、炭酸カリウム、高級アルコール及びカチオン性界面活性剤を併用した第1剤を構成に含む毛髪化粧料組成物を開示する。
【0005】
即ち、下記特許文献1〜2は、第1剤が塩であるアルカリ剤を含んでいる毛髪化粧料組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−150223号公報
【特許文献2】特開2012−97025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
塩である酸化染料は保存中に酸化されにくい性質を有しているので、塩である酸化染料の使用は、染料自体の保存や毛髪化粧料組成物の製造しやすさの観点から有利である。
【0008】
しかし、塩であるアルカリ剤や塩である酸化染料を含有した毛髪化粧料組成物の第1剤において、当該塩の含有量が多く剤型が乳化物である場合、乳化物の分離が生じることがある等、製剤の乳化安定性について改善の要望があった。
【0009】
本願発明者は鋭意研究を重ねた結果、上記塩の含有量が一定量以上であり乳化物である第1剤において、数平均分子量が特定の範囲内であるポリエチレングリコールを含有することにより、良好な乳化安定性が得られることを見出した。
【0010】
意外なことに、当該第1剤を構成に含む毛髪化粧料組成物は、更に使用時の操作性も良好であった。
【0011】
よって、第1剤の乳化安定性及び使用時の操作性が良好な毛髪化粧料組成物を提供することを、本願が解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明は、
アルカリ剤を含み乳化物である第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを構成に含む複数剤式の毛髪化粧料組成物であって、
当該第1剤は、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を3質量%以上含有し、数平均分子量が1290以上7300未満のポリエチレングリコールを含有する、毛髪化粧料組成物である。
【0013】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明は、
前記第1剤が更にカチオン性界面活性剤を含有する第1発明に記載の毛髪化粧料組成物である。
【0014】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明は、
前記カチオン性界面活性剤が塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムである第2発明に記載の毛髪化粧料組成物である。
【0015】
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明は、
毛髪化粧料組成物を構成する複数剤を混合した混合物の粘度が5,000〜30,000mPa・sである、第1発明〜第3発明のいずれかに記載の毛髪化粧料組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本願が開示する毛髪化粧料組成物は、第1剤の乳化安定性及び使用時の操作性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願が開示する発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0018】
本願は、アルカリ剤を含み乳化物である第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを構成に含む複数剤式の毛髪化粧料組成物であって、
当該第1剤は、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を3質量%以上含有し、数平均分子量が1290以上7300未満のポリエチレングリコールを含有する、毛髪化粧料組成物を開示する。
【0019】
毛髪化粧料組成物は、酸化染毛剤組成物、毛髪脱色剤組成物、又は毛髪脱染剤組成物として構成されて良い。好ましくは、毛髪化粧料組成物は酸化染毛剤組成物として構成される。
【0020】
毛髪化粧料組成物の適用対象は、好ましくはヒトの毛髪であり、より好ましくはヒトの頭髪である。
【0021】
〔第1剤〕
第1剤は塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を含有する。
【0022】
ここで、塩とは、毛髪化粧料組成物の製剤上許容される塩を指す。
【0023】
第1剤における、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上の含有量は3質量%以上である。当該含有量が3質量%未満では、乳化物が分離するという上記課題自体が生じにくい。
【0024】
第1剤における、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上の含有量は、4質量%以上として良く、4.5質量%以上として良く、5質量%以上として良く、5.5質量%以上として良く、6質量%以上としても良い。また、当該含有量について、含有量の上限は8質量%として良い。
【0025】
第1剤は、塩である酸化染料を含有できる。塩である酸化染料を含む場合は、第1剤における塩である酸化染料の含有量は0.001質量%以上としてよく、0.01〜8質量%としてよく、0.1〜5質量%としてよい。
【0026】
上記塩であるアルカリ剤として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩、アルギニン塩酸塩、リジン塩酸塩等の塩基性アミノ酸塩等がある。
【0027】
第1剤は、毛髪の明度向上の観点から、塩であるアルカリ剤として炭酸塩を含有して良い。一方、塩であるアルカリ剤として炭酸塩を含有しなくても、第1剤の乳化安定性及び使用時の操作性を良好に確保可能である。また、第1剤は、塩であるアルカリ剤としてアンモニウム塩を含有して良い。
【0028】
酸化染料は、主要中間体とカップラーとを含む概念である。
【0029】
上記主要中間体として、例えば、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン(p−トルイレンジアミン)、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール等がある。
【0030】
上記カップラーとして、例えば、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸、ハイドロキノン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、3,3’−イミノジフェニール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、タンニン酸等がある。
【0031】
上記塩である酸化染料として、例えば、上記酸化染料の塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等がある。
【0032】
第1剤は、上記塩である酸化染料に該当しない任意の酸化染料を含有して良い。当該任意の酸化染料として、上記主要中間体及びカップラーとして記載した成分を例示できる。
【0033】
第1剤は、上記塩であるアルカリ剤に該当しない任意のアルカリ剤を含有して良い。当該任意のアルカリ剤として、例えば、アンモニア、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等)、有機アミン類(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)等がある。第1剤は、アンモニアを含有して良い。
【0034】
ポリエチレングリコールは、エチレングリコールの重合体である。第1剤は、数平均分子量が1290以上7300未満のポリエチレングリコールを含有する。当該数平均分子量は、1290〜5000としてよく、1290〜4000としても良い。
【0035】
第1剤における、上記数平均分子量が1290以上7300未満となるポリエチレングリコールの含有量は特に限定されない。第1剤の乳化安定性を良好に確保する観点から、当該含有量は3質量%以上が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。また、当該含有量は5〜15質量%としてよく、5〜13質量%としてよい。
【0036】
第1剤は高級アルコールを含有して良い。高級アルコールとは、炭素数6以上の1価アルコールである。当該炭素数は12〜22として良い。高級アルコールは、その1種又は2種以上を第1剤に含有させて良い。
【0037】
高級アルコールの具体例として、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール、デシルテトラデカノール等がある。
【0038】
第1剤における高級アルコールの含有量は特に限定されない。第1剤の乳化安定性の観点から、第1剤における高級アルコールの含有量を5質量%以上とすることが好ましく、6〜15質量%とすることがより好ましく、8.5〜15質量%とすることが更に好ましい。
【0039】
第1剤は、カチオン性界面活性剤を含有しても良い。カチオン性界面活性剤は、その1種又は2種以上を使用して良い。
【0040】
当該カチオン性界面活性剤として、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルケニルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルケニルジメチルアンモニウム塩、アルキロイルアミドプロピルジメチルアミン、アルキルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩等を例示できる。
【0041】
具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化イソステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ココイルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化γ−グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルエチルアンモニウム、塩化オクチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム、塩化ベヘン酸アミドプロピル−N,N−ジメチル−N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アンモニウム、タロウジメチルアンモニオプロピルトリメチルアンモニウムジクロライド、塩化ベンザルコニウム等を例示できる。
【0042】
上記カチオン性界面活性剤として、第1剤の乳化安定性の観点から、好ましくはアルキルトリメチルアンモニウム塩である。上記カチオン性界面活性剤として、より好ましくは、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、及び塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムから選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくは塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムである。
【0043】
第1剤における上記カチオン性界面活性剤の含有量は特に限定されない。乳化安定性を良好に確保する観点から、当該含有量は0.3〜4質量%が好ましい。乳化安定性の観点から、当該含有量を0.5質量%以上とすることが好ましい。当該含有量は、0.5〜2.5質量%としてもよい。
【0044】
第1剤は、上記した各成分の他、任意成分を含有してよい。当該任意成分として、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水等の水、酸性染料、塩基性染料、天然染料、ニトロ染料、分散染料、HC染料等の直接染料、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等の溶剤、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素、ラノリン等の油脂、ミツロウ等のロウ、ステアリン酸等の高級脂肪酸、エステル類、シリコーン類、増粘剤、アミノ酸類(但し、アルカリ剤に該当する塩基性アミノ酸及び塩基性アミノ酸塩を除く)、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等の水溶性高分子、L−アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム等の還元剤、糖類、防腐成分、ヒドロキシエタンジホスホン酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸及びそれらの塩等のキレート成分、pH調整成分、酸化防止剤、植物又は生薬抽出物、アスコルビン酸類を含むビタミン類、香料、セラミド類、紫外線吸収剤、帯電防止剤、毛髪柔軟剤、浸透促進剤等を含有しても良い。また、例えば、「医薬部外品原料規格2006」(薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。
【0045】
なお、第1剤は、リン酸塩を含有しないこととしても良い。リン酸塩を含有しなくても第1剤の乳化安定性及び使用時の操作性を良好に確保可能である。また、リン酸塩の含有量の上限を製剤上許容される不純物量としてもよい。当該リン酸塩の具体例として、例えば、上記特許文献1段落0015に記載のものがある。
【0046】
第1剤は乳化物である。常法により、第1剤を乳化物として調製可能である。第1剤における水の含有量は50質量%以上としてよい。
【0047】
第1剤の粘度は特に限定されない。第1剤の粘度は5,000〜100,000mPa・sとしてよく、7,000〜50,000mPa・sとしてもよい。
【0048】
本願において、粘度はB型粘度計を用いて測定する。粘度10,000mPa・s未満の場合は、25℃、1分間、回転速度:12rpm、3号ローター使用の条件下で測定する。粘度10,000mPa・s以上50,000mPa・s未満の場合は、25℃、1分間、回転速度:12rpm、4号ローター使用の条件下で測定する。粘度50,000mPa・s〜100,000mPa・sの場合は、25℃、1分間、回転速度:6rpm、4号ローター使用の条件下で測定する。粘度計については、例えば、VISCOMETER TV−10を使用してよい。
【0049】
以上のとおり、本願は、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を3質量%以上含有し、数平均分子量が1290以上7300未満のポリエチレングリコールを含有する、第1剤の乳化安定化方法をも開示する。当該乳化安定化方法では、上記した第1剤の構成を適宜採用できる。
【0050】
また、本願は、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を3質量%以上含有し、数平均分子量が1290以上7300未満のポリエチレングリコールを含有し、乳化物である毛髪化粧料組成物の第1剤の製造方法をも開示する。当該製造方法では、上記した第1剤の構成を適宜採用できる。
【0051】
〔第2剤〕
第2剤は酸化剤を含有する。当該酸化剤として、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの酸化剤はその1種又は2種以上を使用して良い。これらの酸化剤の中でも、メラニンの分解に優れることから、好ましくは第2剤は過酸化水素を含有する。
【0052】
第2剤における酸化剤の含有量は特に限定されない。例えば、0.4質量%〜13質量%とすることができる。
【0053】
第2剤は、当該酸化剤の他、任意成分を含有してよい。当該任意成分として、例えば、上記第1剤の任意成分として記載した成分、カチオン性界面活性剤、高級アルコール、ポリエチレングリコール、フェノキシエタノール等の酸化剤安定化成分等を含有しても良い。
【0054】
第2剤の剤型は特に限定されない。例えば、液状、ペースト状、ゲル状、乳化物(乳液、クリーム等を含む概念である。)等がある。好ましくは、乳化物である。第2剤は、常法により調製可能である。
【0055】
第2剤の粘度は特に限定されない。第2剤の粘度は、例えば、1,000〜30,000mPa・sとして良い。
【0056】
〔毛髪化粧料組成物を構成する他の剤について〕
本願が開示する毛髪化粧料組成物は、アルカリ剤を含み乳化物である第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを構成に含む複数剤式である。毛髪化粧料組成物は2剤式であって良い。また、3剤式以上の複数剤式であっても良い。
【0057】
毛髪化粧料組成物が3剤式以上の複数剤式である場合、上記第1剤及び第2剤に加えて、例えば、酸化助剤、トリートメント剤、香料、浸透剤等の追加の剤を構成に含んでよい。当該追加の剤の剤型はその機能や特性等を考慮して適宜決定される。
【0058】
〔使用方法〕
本願が開示する毛髪化粧料組成物は、周知の方法に従って使用可能である。
【0059】
第1剤と第2剤の混合比は特に限定されない。例えば、質量基準で第1剤:第2剤=1:5〜5:1の割合で混合して使用して良い。
【0060】
毛髪化粧料組成物が3剤式以上の複数剤式である場合は、更に構成に含まれる上記追加の剤の機能や特性等を考慮して、当該追加の剤の混合比を適宜決定できる。
【0061】
毛髪化粧料組成物を構成する各剤の混合物(以下、単に混合物と呼ぶ場合がある。)の剤型は適宜選択可能である。混合物は、例えば、乳化物、泡状、ペースト状、ゲル状等として良い。好ましくは、混合物は乳化物である。より好ましくは、混合物はクリームである。
【0062】
使用時の操作性を良好に確保する観点から、上記数平均分子量が1290以上7300未満のポリエチレングリコールの混合物中の含有量は1.5〜10質量%であることが好ましい。混合性を向上して使用時の操作性を向上する観点から、当該含有量は2.5〜6.5質量%であることがより好ましい。
【0063】
混合物の粘度は特に限定されない。混合物の粘度は5,000〜30,000mPa・sとしてよく、10,000〜25,000mPa・sとしてよい。
【0064】
毛髪化粧料組成物の毛髪への適用方法は特に限定されない。例えば、手袋を装着した手で毛髪に適用しても良いし、櫛を用いて毛髪に適用しても良いし、刷毛を用いて毛髪に適用しても良いし、内容物を充填する容器本体と当該容器本体に連結されるとともに同容器本体内の内容物を吐出するノズル部もしくは櫛部とを備えたアプリケータ容器を用いて毛髪に適用しても良い。
【0065】
毛髪化粧料組成物がトリートメント剤を構成に含む場合は、混合時に第1剤、第2剤及びトリートメント剤を混合しても良いし、染毛処理/脱色や脱染処理後にトリートメント剤を用いてトリートメント処理を行ってもよい。
【0066】
以上のとおり、本願は操作性に優れた毛髪化粧方法をも開示する。当該毛髪化粧方法では、上記「発明を実施するための形態」に記載した構成を適宜採用できる。
【実施例】
【0067】
以下、本願における実施例を記載する。本願が開示する発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されない。
【0068】
後に示す表の説明をする。各成分の含有量を示す数値の単位は質量%である。
【0069】
「ポリエチレングリコール400」は、数平均分子量380〜420の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール1000」は、数平均分子量950〜1050の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール1540」は、数平均分子量1290〜1650の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール2000」は、数平均分子量1850〜2150の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール4000」は、数平均分子量2600〜3800の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール6000」は、数平均分子量7300〜9300の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール20000」は、数平均分子量15500〜25000の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「高重合ポリエチレングリコール」は、数平均分子量が20000以上のポリエチレングリコールである。
【0070】
「硫酸トルエン−2,5−ジアミン」及び「塩酸2,4−ジアミノフェノキシエタノール」は「塩である酸化染料」である。「炭酸水素アンモニウム」及び「塩化アンモニウム」は「塩であるアルカリ剤」である。
【0071】
〔各試験で使用する染料及びアルカリ剤〕
後述の試験で使用する染料及びアルカリ剤の処方を表1に示す。表1の「塩類の合計含有量」欄には、「塩である酸化染料」及び「塩であるアルカリ剤」の合計含有量を記載した。
【0072】
〔表1〕
【0073】
次に、各試験の試験方法及び評価基準について説明する。
【0074】
〔高温安定性 60℃ 1W 試験〕
各例に係る第1剤30gを蓋付ガラス容器に入れ、60℃で1週間保存した。その間、目視にて下記の評価を行った。
「◎」:保存1週間の時点で乳化物の状態を維持していた。
「○」:保存2日間の時点で乳化物の状態を維持していた。
「△」:保存1日間の時点で乳化物の状態を維持していた。
「×」:保存1日間未満で分離が確認された。
各例の評価結果は表に記載した。
【0075】
〔高温安定性 50℃ 1M 試験〕
各例に係る第1剤30gを蓋付ガラス容器に入れ、50℃で1ヶ月間保存した。その後、目視にて乳化物の状態を維持しているか否かの評価を行った。
「○」:保存1ヵ月間の時点で乳化物の状態を維持していた。
「×」:保存1ヵ月間の時点で分離が確認された。
各例の評価結果は表に記載した。
【0076】
〔第1剤の粘度測定〕
調製後の第1剤の粘度を測定した。
使用機器:VISCOMETER TV−10(東機産業株式会社製)。
使用条件:
(i)粘度10,000mPa・s未満の場合は、25℃、1分間、回転速度:12rpm、3号ローター使用の条件下で測定した。
(ii)粘度10,000mPa・s以上50,000mPa・s未満の場合は、25℃、1分間、回転速度:12rpm、4号ローター使用の条件下で測定した。
(iii)粘度50,000mPa・s〜100,000mPa・sの場合は、25℃、1分間、回転速度:6rpm、4号ローター使用の条件下で測定した。
測定結果は表の「1剤粘度」欄に記載した。粘度の単位は「mPa・s」である。
【0077】
〔混合物の粘度測定〕
表2に示す処方の乳化物である第2剤を使用した。上記「第1剤の粘度測定」と同じ測定方法にて測定した当該第2剤の粘度は4550mPa・sである。
【0078】
〔表2〕
【0079】
調製後の各例に係る第1剤と、上記第2剤とを質量基準で1:1で混合し、混合物を得た。当該混合物について、上記「第1剤の粘度測定」と同じ測定方法にて粘度を測定した。
測定結果は表の「混合粘度」欄に記載した。粘度の単位は「mPa・s」である。
【0080】
〔操作性試験〕
調製後の各例に係る第1剤と、表2に記載の第2剤とを質量基準で1:1で混合し、混合物を得た。
【0081】
第1剤と第2剤の混合性、ヒト頭髪を使用して作製したウィッグに混合物を塗布する際の混合物の伸び、及び混合物のウィッグからの垂れ落ちの観点から操作性を評価した。
【0082】
−混合性の評価基準−
上記混合性は、混合性が良好である場合を「○」、毛髪化粧料組成物の使用において問題ない混合性を示す場合を「△」、混合性が不十分である場合を「×」とした。
−伸びの評価基準−
ウィッグに混合物を塗布する際の混合物の伸びは、良好な伸びを示す場合を「○」、不具合を感じない程度の伸びを示す場合を「△」、伸びが不十分である場合を「×」とした。
【0083】
−垂れ落ちの評価基準−
混合物をウィッグ全体に塗布する操作中において垂れ落ちがない場合を「○」、垂れ落ちがあった場合を「×」とした。
【0084】
−操作性の評価−
操作性試験において、上記混合性、伸び、及び垂れ落ちの各評価は10名のパネラーが行い、最もパネラー数が多かった評価を評価結果として採用した。なお、最もパネラー数が多い評価が複数存在した場合は相対的に低い評価を評価結果として採用した。各例の評価結果は表に記載した。
【0085】
上記混合性、伸び、及び垂れ落ちの評価結果に基づき、操作性の評価結果を得た。具体的には、上記混合性、混合物の伸び、及び垂れ落ちの評価結果について、3つ全て「○」である場合は「◎」、2つ「○」である場合を「○」、1つ「○」である場合を「△」、1つも「○」がない場合を「×」とした。各例の評価結果は表に記載した。
【0086】
〔第1試験群〕
下記表3〜表4に記載した実施例1〜13及び比較例1〜5に係る毛髪脱色剤組成物の第1剤を常法により乳化物として調製した。なお、比較例6に係る第1剤は、乳化物として調製できなかった。実施例1〜13及び比較例1〜6に係る第1剤における、塩であるアルカリ剤の合計含有量は3.3質量%である。
【0087】
比較例6を除くこれらの各例について、上記した「高温安定性 60℃ 1W 試験」、「高温安定性 50℃ 1M 試験」、「第1剤の粘度測定」、「混合物の粘度測定」、及び「操作性試験」を行い、結果を表中に記載した。
【0088】
〔表3〕
【0089】
〔表4〕
【0090】
上記試験結果から、以下の事項が考えられた。
【0091】
−第1剤の乳化安定性について−
「高温安定性 50℃ 1M 試験」の結果は、各実施例及び比較例1〜3は良好であったが、一方で比較例4〜5は分離が確認された。なお、比較例4〜5に係る第1剤は乳化物として調製可能であったが、乳化安定性は不十分であり、25℃下でも比較的早期に分離がおこった。比較例4〜5は、数平均分子量7300以上のポリエチレングリコールを含有している。よってこれらの結果から、第1剤の乳化安定性の観点から、好ましいポリエチレングリコールの数平均分子量があると考えられた。
【0092】
「高温安定性 60℃ 1W 試験」の結果は、各実施例はいずれも良好であったのに対し、比較例1〜5はいずれも早い段階で乳化物の分離が確認された。比較例2〜3は数平均分子量1050以下のポリエチレングリコールを含有し、比較例4〜5は、数平均分子量7300以上のポリエチレングリコールを含有している。当該試験の結果から、第1剤の乳化安定性の観点から、ポリエチレングリコールの数平均分子量について、特定の好ましい範囲があると考えられた。
実施例1〜7及び実施例10〜13は、保存1日間未満で分離が確認された各比較例に対して顕著に優れた第1剤の乳化安定性を示した。
【0093】
なお、「高温安定性 50℃ 1M 試験」で良好な結果であった比較例1〜3が「高温安定性 60℃ 1W 試験」では不十分な結果であったので、「高温安定性 60℃ 1W 試験」はより過酷な試験であると考えられた。いずれの試験でも良好な結果を得た各実施例に係る第1剤は、乳化安定性が良好である。
【0094】
各実施例の結果より、第1剤の粘度は5,000〜100,000mPa・sとしてよいと考えられた。一方、比較例4〜5では、第1剤の粘度が低くなってしまった。これが乳化安定性を不十分とする一因となったと考えられた。
【0095】
実施例9〜13の結果より、第1剤の乳化安定性の観点から、第1剤におけるカチオン性界面活性剤の含有量は0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましいと考えられた。
【0096】
実施例1及び実施例8の結果より、第1剤の乳化安定性の観点から、カチオン性界面活性剤として塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムがより好ましいと考えられた。
【0097】
各実施例の結果より、第1剤の乳化安定性を良好に確保する観点から、第1剤における高級アルコールの含有量を5質量%以上とすることが好ましく、8.5質量%以上とすることが特に好ましいと考えられた。
【0098】
−操作性について−
「操作性」の結果は、各実施例及び比較例1〜3は良好であったが、一方で比較例4〜5は不十分であった。これらの結果から、操作性の観点から、好ましいポリエチレングリコールの数平均分子量があると考えられた。なお、比較例1〜3の結果より、良好な操作性が得られたとしても、第1剤の乳化安定性が不十分となる場合があることが示された。
【0099】
実施例1〜7の結果より、操作性の観点から、数平均分子量が特定の範囲内のポリエチレングリコールの混合物における含有量を1.5〜10質量とすることが好ましく、2.5〜6.5質量%とすることがより好ましいと考えられた。
【0100】
各実施例の結果より、混合物の粘度は5,000〜30,000mPa・sとしてよいと考えられた。
【0101】
−更なる考察−
特に、実施例8、実施例1〜3と比較例1〜5との対比により、第1剤の乳化安定性及び操作性の両者を良好に並立する観点から、ポリエチレングリコールの数平均分子量について、特定の好ましい範囲があると考えられた。各実施例では、ポリエチレングリコールの数平均分子量が好ましい範囲内にあると考えられ、第1剤が塩であるアルカリ剤を3質量%以上含有しても良好な効果を得た。
【0102】
なお、各実施例は良好な第1剤の乳化安定性が確保されているので、高温安定性試験後の各実施例に係る第1剤を使用しても、操作性の結果は良好であると考えられる。
【0103】
〔第2試験群〕
実施例14について、下記表5に記載した基本処方に、上記表1「各染料・アルカリ処方」のA、E、又はHの処方を加えた3種の毛髪化粧料組成物第1剤を常法により乳化物として調製した。
【0104】
実施例14について、上記した「高温安定性 60℃ 1W 試験」、「高温安定性 50℃ 1M 試験」、「第1剤の粘度測定」、「混合物の粘度測定」、及び「操作性試験」を行い、結果を表6に記載した。なお、第2試験群では、第1剤における染料・アルカリ剤の処方のみが異なっているので、評価結果は「各染料・アルカリ処方」の対応するアルファベットに対して記載する形式とした。
【0105】
〔表5〕
【0106】
〔表6〕
【0107】
上記試験結果から、以下の事項が考えられた。
【0108】
乳化物である第1剤において、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を多く含有しても、第1剤の乳化安定性及び操作性が良好であった。上記第1試験群の結果もあわせると、当該良好な効果は、数平均分子量が特定の範囲内のポリエチレングリコールを使用して得られると考えられた。
【0109】
〔第3試験群〕
実施例15〜24について、下記表7に記載した基本処方に、上記表1「各染料・アルカリ処方」のA〜Hの処方のいずれかを加えた毛髪化粧料組成物第1剤を常法により乳化物として調製した。表1におけるA〜Hの処方のいずれかを加えた8種の第1剤を各実施例について調製するので、全部で80種の第1剤を調製した。なお、上記実施例14と実施例15は基本処方が同じである。
【0110】
実施例15〜24について、上記した「高温安定性 60℃ 1W 試験」を行い、結果を表に記載した。なお、第3試験群では、各実施例について染料・アルカリ剤の処方のみが異なっているので、評価結果は、各実施例について「各染料・アルカリ処方」の対応するアルファベットに対して記載する形式とした。なお、表7には、参考として、「各染料・アルカリ処方」A〜Hにおける塩類の合計含有量を記載してある。
【0111】
〔表7〕
【0112】
上記試験結果から、以下の事項が考えられた。
【0113】
乳化物である第1剤において、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を多く含有しても、第1剤の乳化安定性が良好であった。
【0114】
実施例18の結果より、第1剤の乳化安定性の観点から、第1剤における高級アルコールの含有量を8.5質量%以上とすることが好ましいと考えられた。高級アルコールの含有量を8.5質量%以上とすることで、第1剤が塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を6質量%以上含有しても、第1剤の乳化安定性が顕著に向上すると考えられた。
【0115】
上記第1試験群及び第2試験群の結果もあわせると、第1剤の乳化安定性及び操作性の両者を良好に並立する観点から、ポリエチレングリコールの数平均分子量について、特定の好ましい範囲があると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本願により、第1剤の乳化安定性及び使用時の操作性が良好な毛髪化粧料組成物が提供される。