【実施例】
【0067】
以下、本願における実施例を記載する。本願が開示する発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されない。
【0068】
後に示す表の説明をする。各成分の含有量を示す数値の単位は質量%である。
【0069】
「ポリエチレングリコール400」は、数平均分子量380〜420の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール1000」は、数平均分子量950〜1050の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール1540」は、数平均分子量1290〜1650の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール2000」は、数平均分子量1850〜2150の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール4000」は、数平均分子量2600〜3800の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール6000」は、数平均分子量7300〜9300の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「ポリエチレングリコール20000」は、数平均分子量15500〜25000の範囲内にあるポリエチレングリコールである。
「高重合ポリエチレングリコール」は、数平均分子量が20000以上のポリエチレングリコールである。
【0070】
「硫酸トルエン−2,5−ジアミン」及び「塩酸2,4−ジアミノフェノキシエタノール」は「塩である酸化染料」である。「炭酸水素アンモニウム」及び「塩化アンモニウム」は「塩であるアルカリ剤」である。
【0071】
〔各試験で使用する染料及びアルカリ剤〕
後述の試験で使用する染料及びアルカリ剤の処方を表1に示す。表1の「塩類の合計含有量」欄には、「塩である酸化染料」及び「塩であるアルカリ剤」の合計含有量を記載した。
【0072】
〔表1〕
【0073】
次に、各試験の試験方法及び評価基準について説明する。
【0074】
〔高温安定性 60℃ 1W 試験〕
各例に係る第1剤30gを蓋付ガラス容器に入れ、60℃で1週間保存した。その間、目視にて下記の評価を行った。
「◎」:保存1週間の時点で乳化物の状態を維持していた。
「○」:保存2日間の時点で乳化物の状態を維持していた。
「△」:保存1日間の時点で乳化物の状態を維持していた。
「×」:保存1日間未満で分離が確認された。
各例の評価結果は表に記載した。
【0075】
〔高温安定性 50℃ 1M 試験〕
各例に係る第1剤30gを蓋付ガラス容器に入れ、50℃で1ヶ月間保存した。その後、目視にて乳化物の状態を維持しているか否かの評価を行った。
「○」:保存1ヵ月間の時点で乳化物の状態を維持していた。
「×」:保存1ヵ月間の時点で分離が確認された。
各例の評価結果は表に記載した。
【0076】
〔第1剤の粘度測定〕
調製後の第1剤の粘度を測定した。
使用機器:VISCOMETER TV−10(東機産業株式会社製)。
使用条件:
(i)粘度10,000mPa・s未満の場合は、25℃、1分間、回転速度:12rpm、3号ローター使用の条件下で測定した。
(ii)粘度10,000mPa・s以上50,000mPa・s未満の場合は、25℃、1分間、回転速度:12rpm、4号ローター使用の条件下で測定した。
(iii)粘度50,000mPa・s〜100,000mPa・sの場合は、25℃、1分間、回転速度:6rpm、4号ローター使用の条件下で測定した。
測定結果は表の「1剤粘度」欄に記載した。粘度の単位は「mPa・s」である。
【0077】
〔混合物の粘度測定〕
表2に示す処方の乳化物である第2剤を使用した。上記「第1剤の粘度測定」と同じ測定方法にて測定した当該第2剤の粘度は4550mPa・sである。
【0078】
〔表2〕
【0079】
調製後の各例に係る第1剤と、上記第2剤とを質量基準で1:1で混合し、混合物を得た。当該混合物について、上記「第1剤の粘度測定」と同じ測定方法にて粘度を測定した。
測定結果は表の「混合粘度」欄に記載した。粘度の単位は「mPa・s」である。
【0080】
〔操作性試験〕
調製後の各例に係る第1剤と、表2に記載の第2剤とを質量基準で1:1で混合し、混合物を得た。
【0081】
第1剤と第2剤の混合性、ヒト頭髪を使用して作製したウィッグに混合物を塗布する際の混合物の伸び、及び混合物のウィッグからの垂れ落ちの観点から操作性を評価した。
【0082】
−混合性の評価基準−
上記混合性は、混合性が良好である場合を「○」、毛髪化粧料組成物の使用において問題ない混合性を示す場合を「△」、混合性が不十分である場合を「×」とした。
−伸びの評価基準−
ウィッグに混合物を塗布する際の混合物の伸びは、良好な伸びを示す場合を「○」、不具合を感じない程度の伸びを示す場合を「△」、伸びが不十分である場合を「×」とした。
【0083】
−垂れ落ちの評価基準−
混合物をウィッグ全体に塗布する操作中において垂れ落ちがない場合を「○」、垂れ落ちがあった場合を「×」とした。
【0084】
−操作性の評価−
操作性試験において、上記混合性、伸び、及び垂れ落ちの各評価は10名のパネラーが行い、最もパネラー数が多かった評価を評価結果として採用した。なお、最もパネラー数が多い評価が複数存在した場合は相対的に低い評価を評価結果として採用した。各例の評価結果は表に記載した。
【0085】
上記混合性、伸び、及び垂れ落ちの評価結果に基づき、操作性の評価結果を得た。具体的には、上記混合性、混合物の伸び、及び垂れ落ちの評価結果について、3つ全て「○」である場合は「◎」、2つ「○」である場合を「○」、1つ「○」である場合を「△」、1つも「○」がない場合を「×」とした。各例の評価結果は表に記載した。
【0086】
〔第1試験群〕
下記表3〜表4に記載した実施例1〜13及び比較例1〜5に係る毛髪脱色剤組成物の第1剤を常法により乳化物として調製した。なお、比較例6に係る第1剤は、乳化物として調製できなかった。実施例1〜13及び比較例1〜6に係る第1剤における、塩であるアルカリ剤の合計含有量は3.3質量%である。
【0087】
比較例6を除くこれらの各例について、上記した「高温安定性 60℃ 1W 試験」、「高温安定性 50℃ 1M 試験」、「第1剤の粘度測定」、「混合物の粘度測定」、及び「操作性試験」を行い、結果を表中に記載した。
【0088】
〔表3〕
【0089】
〔表4〕
【0090】
上記試験結果から、以下の事項が考えられた。
【0091】
−第1剤の乳化安定性について−
「高温安定性 50℃ 1M 試験」の結果は、各実施例及び比較例1〜3は良好であったが、一方で比較例4〜5は分離が確認された。なお、比較例4〜5に係る第1剤は乳化物として調製可能であったが、乳化安定性は不十分であり、25℃下でも比較的早期に分離がおこった。比較例4〜5は、数平均分子量7300以上のポリエチレングリコールを含有している。よってこれらの結果から、第1剤の乳化安定性の観点から、好ましいポリエチレングリコールの数平均分子量があると考えられた。
【0092】
「高温安定性 60℃ 1W 試験」の結果は、各実施例はいずれも良好であったのに対し、比較例1〜5はいずれも早い段階で乳化物の分離が確認された。比較例2〜3は数平均分子量1050以下のポリエチレングリコールを含有し、比較例4〜5は、数平均分子量7300以上のポリエチレングリコールを含有している。当該試験の結果から、第1剤の乳化安定性の観点から、ポリエチレングリコールの数平均分子量について、特定の好ましい範囲があると考えられた。
実施例1〜7及び実施例10〜13は、保存1日間未満で分離が確認された各比較例に対して顕著に優れた第1剤の乳化安定性を示した。
【0093】
なお、「高温安定性 50℃ 1M 試験」で良好な結果であった比較例1〜3が「高温安定性 60℃ 1W 試験」では不十分な結果であったので、「高温安定性 60℃ 1W 試験」はより過酷な試験であると考えられた。いずれの試験でも良好な結果を得た各実施例に係る第1剤は、乳化安定性が良好である。
【0094】
各実施例の結果より、第1剤の粘度は5,000〜100,000mPa・sとしてよいと考えられた。一方、比較例4〜5では、第1剤の粘度が低くなってしまった。これが乳化安定性を不十分とする一因となったと考えられた。
【0095】
実施例9〜13の結果より、第1剤の乳化安定性の観点から、第1剤におけるカチオン性界面活性剤の含有量は0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましいと考えられた。
【0096】
実施例1及び実施例8の結果より、第1剤の乳化安定性の観点から、カチオン性界面活性剤として塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムがより好ましいと考えられた。
【0097】
各実施例の結果より、第1剤の乳化安定性を良好に確保する観点から、第1剤における高級アルコールの含有量を5質量%以上とすることが好ましく、8.5質量%以上とすることが特に好ましいと考えられた。
【0098】
−操作性について−
「操作性」の結果は、各実施例及び比較例1〜3は良好であったが、一方で比較例4〜5は不十分であった。これらの結果から、操作性の観点から、好ましいポリエチレングリコールの数平均分子量があると考えられた。なお、比較例1〜3の結果より、良好な操作性が得られたとしても、第1剤の乳化安定性が不十分となる場合があることが示された。
【0099】
実施例1〜7の結果より、操作性の観点から、数平均分子量が特定の範囲内のポリエチレングリコールの混合物における含有量を1.5〜10質量とすることが好ましく、2.5〜6.5質量%とすることがより好ましいと考えられた。
【0100】
各実施例の結果より、混合物の粘度は5,000〜30,000mPa・sとしてよいと考えられた。
【0101】
−更なる考察−
特に、実施例8、実施例1〜3と比較例1〜5との対比により、第1剤の乳化安定性及び操作性の両者を良好に並立する観点から、ポリエチレングリコールの数平均分子量について、特定の好ましい範囲があると考えられた。各実施例では、ポリエチレングリコールの数平均分子量が好ましい範囲内にあると考えられ、第1剤が塩であるアルカリ剤を3質量%以上含有しても良好な効果を得た。
【0102】
なお、各実施例は良好な第1剤の乳化安定性が確保されているので、高温安定性試験後の各実施例に係る第1剤を使用しても、操作性の結果は良好であると考えられる。
【0103】
〔第2試験群〕
実施例14について、下記表5に記載した基本処方に、上記表1「各染料・アルカリ処方」のA、E、又はHの処方を加えた3種の毛髪化粧料組成物第1剤を常法により乳化物として調製した。
【0104】
実施例14について、上記した「高温安定性 60℃ 1W 試験」、「高温安定性 50℃ 1M 試験」、「第1剤の粘度測定」、「混合物の粘度測定」、及び「操作性試験」を行い、結果を表6に記載した。なお、第2試験群では、第1剤における染料・アルカリ剤の処方のみが異なっているので、評価結果は「各染料・アルカリ処方」の対応するアルファベットに対して記載する形式とした。
【0105】
〔表5〕
【0106】
〔表6〕
【0107】
上記試験結果から、以下の事項が考えられた。
【0108】
乳化物である第1剤において、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を多く含有しても、第1剤の乳化安定性及び操作性が良好であった。上記第1試験群の結果もあわせると、当該良好な効果は、数平均分子量が特定の範囲内のポリエチレングリコールを使用して得られると考えられた。
【0109】
〔第3試験群〕
実施例15〜24について、下記表7に記載した基本処方に、上記表1「各染料・アルカリ処方」のA〜Hの処方のいずれかを加えた毛髪化粧料組成物第1剤を常法により乳化物として調製した。表1におけるA〜Hの処方のいずれかを加えた8種の第1剤を各実施例について調製するので、全部で80種の第1剤を調製した。なお、上記実施例14と実施例15は基本処方が同じである。
【0110】
実施例15〜24について、上記した「高温安定性 60℃ 1W 試験」を行い、結果を表に記載した。なお、第3試験群では、各実施例について染料・アルカリ剤の処方のみが異なっているので、評価結果は、各実施例について「各染料・アルカリ処方」の対応するアルファベットに対して記載する形式とした。なお、表7には、参考として、「各染料・アルカリ処方」A〜Hにおける塩類の合計含有量を記載してある。
【0111】
〔表7〕
【0112】
上記試験結果から、以下の事項が考えられた。
【0113】
乳化物である第1剤において、塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を多く含有しても、第1剤の乳化安定性が良好であった。
【0114】
実施例18の結果より、第1剤の乳化安定性の観点から、第1剤における高級アルコールの含有量を8.5質量%以上とすることが好ましいと考えられた。高級アルコールの含有量を8.5質量%以上とすることで、第1剤が塩であるアルカリ剤及び塩である酸化染料から選ばれる1種又は2種以上を6質量%以上含有しても、第1剤の乳化安定性が顕著に向上すると考えられた。
【0115】
上記第1試験群及び第2試験群の結果もあわせると、第1剤の乳化安定性及び操作性の両者を良好に並立する観点から、ポリエチレングリコールの数平均分子量について、特定の好ましい範囲があると考えられた。