特許第6381898号(P6381898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381898
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】コイル搬送装置及びコイル据付方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   A61B5/055 390
   A61B5/055 340
   A61B5/055 350
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-247478(P2013-247478)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-104487(P2015-104487A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】森川 博
(72)【発明者】
【氏名】大庭 典之
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−279237(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0172940(US,A1)
【文献】 特開2011−206230(JP,A)
【文献】 特開2001−061807(JP,A)
【文献】 特表2005−523102(JP,A)
【文献】 実開平06−026804(JP,U)
【文献】 特開平04−325142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒コイルの載置台に載置される複数のガイドレールと、
前記複数のガイドレールの各々に設けられ、前記円筒コイルの両脇下から接触させて前記円筒コイルを支持するとともに、前記ガイドレールに沿って移動するアーム部と、
前記アーム部を昇降させる昇降機とを備えたコイル搬送装置。
【請求項2】
前記アーム部と前記昇降機とを含む可動治具は、連結部材と連結する連結部を備え、
前記複数のガイドレールに対応する複数の前記可動治具が前記連結部材を介して連結される、
請求項1に記載のコイル搬送装置。
【請求項3】
前記複数のガイドレールにそれぞれ1つずつ設けられた、前記アーム部と前記昇降機とを含む一組の可動治具を複数組備える、
請求項1又は2に記載のコイル搬送装置。
【請求項4】
架台装置のボアに挿入された円筒コイルの前又は後の端面と接続する接続部を有する第1の支持部材と、
前記ボアの内壁面と接して、前記ボアの円周方向に沿って動く車輪及び前記第1の支持部材を上下にスライド可能に支持する支持部を有する第2の支持部材と、
前記第2の支持部材に対して前記第1の支持部材を上下に昇降させる昇降機構と、
を備えるコイル搬送装置。
【請求項5】
前記第2の支持部材は、前記ボアの開口端にかかるストッパーを更に備える、
請求項4に記載のコイル搬送装置。
【請求項6】
円筒コイルの載置台に複数のガイドレールを載置する工程と、
前記複数のガイドレールの各々に設けられ、前記円筒コイルの両脇下から接触させて前記円筒コイルを支持するアーム部により前記円筒コイルを支持し、前記アーム部を昇降させる昇降機を作動させて前記円筒コイルを持ち上げる工程と、
ち上げられた前記円筒コイルを前記ガイドレールに沿って搬送、前記円筒コイルを架台装置のボア内に挿入する工程と、
を含むコイル据付方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載のコイル搬送装置を用いて前記ボアに挿入された円筒コイルの位置調整を行う工程を更に含む、
請求項6に記載のコイル据付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、コイル搬送装置及びコイル据付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置の架台装置に設けられた傾斜磁場コイル等の円筒コイルは、架台装置が設置された撮影室内で交換を行う場合がある。この円筒コイルの交換では、古い円筒コイルを取り除いた後に、フォークリフトの爪を差し込んで搬送するための腰下(スキッド)などに載せられた新たな円筒コイルを撮影室内に搬送する。そして、架台装置の前後に梁を渡し、その梁に新たな円筒コイルを載せて腰下から持ち上げて架台装置へ挿入し、据え付ける据付作業を行う。
【0003】
しかしながら、上述した従来の据付作業では、梁を渡すために、梁の支持台を架台装置の前後に備え付けるなど、狭い撮影室内では作業性がよくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−158841号公報
【特許文献2】実開平4−131213号公報
【特許文献3】特開2011−115480号公報
【特許文献4】特開2009−11652号公報
【特許文献5】実公平7−31768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、円筒コイルを架台装置へ据え付ける据付作業を行う際の作業性の向上を可能とするコイル搬送装置及びコイル据付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のコイル搬送装置は、複数のガイドレールと、アーム部と、昇降機とを備える。複数のガイドレールは、円筒コイルの載置台に載置される。アーム部は、前記複数のガイドレールの各々に設けられ、前記円筒コイルの両脇下から接触させて前記円筒コイルを支持するとともに、前記ガイドレールに沿って移動する。昇降機は、アーム部を昇降させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、架台装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は、架台カバーの構成例を示す説明図である。
図3図3は、架台装置に据え付けられた円筒コイルを示す説明図である。
図4図4は、円筒コイルを架台装置へ据え付ける様子を示す説明図である。
図5図5は、実施形態にかかるコイル搬送装置を示す斜視図である。
図6図6は、図5の領域の拡大図である。
図7図7は、可動治具の斜視図である。
図8図8は、可動治具の側面図である。
図9図9は、可動治具の上面図である。
図10図10は、コイル搬送装置を用いて円筒コイルを磁石架台へ挿入する工程を示す説明図である。
図11図11は、位置調整にかかるコイル搬送装置を示す斜視図である。
図12図12は、位置調整にかかるコイル搬送装置を第2の支持部材側から見た側面図である。
図13図13は、位置調整にかかるコイル搬送装置を第1の支持部材側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施形態にかかるコイル搬送装置及びコイル据付方法を詳細に説明する。なお、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0009】
図1は、架台装置10の一例を示す斜視図である。なお、以下の説明において、架台装置10における位置又は方向を示す場合には、架台装置10の中心を基準にして、寝台12が置かれた側を前側と定義し、その反対側を後側と定義する。また、架台装置10の中心を基準にして、寝台12の天板13に載置される被検体の体軸と略一致する軸を軸Zと定義する。また、架台装置10の中心を基準にして前側を向いた際の、軸Zより右を右側と定義し、軸Zより左を左側と定義する。また、軸Zより上を上側と定義し、軸Zより下を下側と定義する。
【0010】
図1に示すように、架台装置10は、磁気共鳴現象を利用して被検体の画像の元になる磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号データを収集する装置である。具体的には、架台装置10は、架台カバー16で囲われた内部に、MR信号データを収集する磁石架台11を有する。磁石架台11は、静磁場磁石と、傾斜磁場コイルと、送信コイルとを有する(いずれも図示しない)。また、磁石架台11の内側に形成された撮像空間には、受信コイル(図示しない)が配置されている。
【0011】
静磁場磁石は、概略円筒状に形成され、円筒内に形成された撮像空間に静磁場を発生させる。傾斜磁場コイルは、静磁場磁石の内周側に配置され、撮像空間に傾斜磁場を発生させる。送信コイルは、傾斜磁場コイルの内周側に配置され、撮像空間に高周波磁場を発生させる。受信コイルは、高周波磁場の影響によって被検体から発生するMR信号を受信する。
【0012】
また、架台装置10は、磁石架台11への撮像空間へ通じるボア14の左右両側に寝台操作部15を備える。寝台操作部15は、操作者から寝台12の動作に関する指示を受け付ける。具体的には、寝台操作部15は、天板13の移動機構にかかる操作指示を受け付ける。寝台12の天板13に載置された被検体は、寝台操作部15の操作によって、撮像空間内へ移動される。
【0013】
図2は、架台カバー16の構成例を示す説明図である。例えば、図2に示すように、架台カバー16は、部分カバー16a〜16iに分割される。ここで、部分カバー16aは、磁石架台11の右側面下側に配置される。部分カバー16bは、磁石架台11の右側面上側に配置される。部分カバー16cは、磁石架台11の左側側面に配置される。部分カバー16dは、磁石架台11の上面に配置される。部分カバー16eは、磁石架台11の前面の中央周辺に配置される。部分カバー16fは、磁石架台11の後面に配置される。部分カバー16gは、磁石架台11の前面上部に配置される。部分カバー16hは、磁石架台11の前面左側下部に配置される。部分カバー16iは、磁石架台11の前面右側下部に配置される。
【0014】
このように、架台カバー16を複数の部分カバー16a〜16iに分解可能に構成することによって、例えば、架台装置10が設置又は撤去される際などに、作業員が、架台カバー16を分解して容易に運搬することができるようになる。また、例えば、磁石架台11の局所的な点検が行われる場合に、作業員が、点検したい箇所を覆う部分カバーを取り外すだけで、容易に点検の作業を行うことができるようになる。
【0015】
なお、架台カバー16における部分カバーの区分けは、図2に例示したものに限られない。例えば、図2では、架台カバー16が9つの部分カバーに分割される場合の例を示したが、架台カバー16は、9つより多い数に分割されてもよいし、9つより少ない数に分割されてもよい。
【0016】
また、架台装置10に据え付けられた傾斜磁場コイル、送信コイル等の円筒コイルの交換時には、その作業性を確保するため、架台カバー16の一部が取り外される。
【0017】
図3は、架台装置10に据え付けられた円筒コイル17を示す説明図である。図3に示すように、円筒形状のボア14の内部には、傾斜磁場コイル、送信コイル等の円筒コイル17が据え付けられている。この円筒コイル17の交換は、前後の部分カバー16e、16fを取り外して行う。なお、ボア14については、磁石架台11において形成された円筒形状の空間を意味し、本実施形態では磁石架台11の概略円筒状に形成された静磁場磁石の内側の空間とする。
【0018】
図4は、円筒コイル17を架台装置10へ据え付ける様子を示す説明図である。図4に示すように、台車40を取り付けた載置台50の上に、据え付けるための新たな円筒コイル17を載置して撮影室内に運び込む。なお、ボア14への据え付け作業を容易に行うため、円筒コイル17は予め寝かせた状態で載置台50に載置されるものとする。また、載置台50に載置された円筒コイル17の床面からの高さは、磁石架台11のボア14の床面からの高さよりも若干低いものとする。
【0019】
そして、載置台50に載置された円筒コイル17を持ち上げて磁石架台11のボア14に挿入していく。なお、架台装置10に据え付けられていた古い円筒コイル17は、上述した挿入の手順とは逆の手順で、円筒コイル17をボア14より抜き出した後に、載置台50に載置して撮影室から運び出される。
【0020】
図5は、実施形態にかかるコイル搬送装置1を示す斜視図である。図6は、図5の領域Rの拡大図である。図5に示すように、コイル搬送装置1は、一組のガイドレール2と、ガイドレール2の各々に設けられ、ガイドレール2上を移動可能な一組の可動治具3L、3Rとを備える。なお、本実施形態では、円筒コイル17をY−Y方向において重心を挟むように2箇所で支持するため、可動治具3L、3RをY−Y方向に2組用意しているが、可動治具3L、3Rの組数は少なくとも重心で支持するための1組であればよく、組数は図示例に限定しない。
【0021】
可動治具3L、3Rは、連結部材4を介して連結される。これにより、可動治具3L、3Rは、連動してガイドレール2を移動することができる。連結部材4は、可動治具3L、3Rに対して着脱可能である(詳細は後述する)。コイル搬送装置1は、連結部材4を取り付けた状態で載置台50の上に取り付けてもよいし(図5の矢印参照)、連結部材4を取り外した状態で載置台50の上に取り付けてから連結部材4を取り付けてもよい。例えば、コイル搬送装置1を載置台50に取り付ける際に円筒コイル17が載置台50に載置されている場合には、連結部材4を取り外し、X−X方向における円筒コイル17の両脇下の載置台50の上に、各々のガイドレール2を取り付ける。その後、円筒コイル17の下に通した連結部材4を可動治具3L、3Rに取り付ける。また、円筒コイル17が載置台50に載置されていない場合には、連結部材4を取り付けた状態で載置台50の上に取り付け、載置台50に円筒コイル17を載置した際に、X−X方向においてガイドレール2が円筒コイル17を挟み込むようにする。なお、円筒コイル17が載置台50に載置されていない場合であっても、コイル搬送装置1は、連結部材4を取り外した状態で載置台50の上に取り付けてから連結部材4を取り付けてもよい。
【0022】
載置台50は、フォークリフトの爪を差し込んで搬送するための木製の腰下などである。具体的には、載置台50は、脚で底上げされた田字状の枠51と、円筒コイル17の外周湾曲に合わせた形状の支持板52とを有する構成である。これにより、載置台50は、円筒コイル17を載置した状態で、枠51の下にフォークリフトの爪を差し込んで持ち上げられる。そして、下部に車輪41が設けられた台車40の上に載せられて、撮影室等へ搬送される。
【0023】
ガイドレール2は、下部に枠51の形状に合わせた台座5を備える。例えば、台座5は、枠51の一区画分(田字状の一区画)に対応した形状であってよい。これにより、2つのガイドレール2は、台座5を載置台50の枠51にはめ込んで、台座5の外枠に沿って略平行に取り付けられる。
【0024】
図6に示すように、可動治具3L、3Rは、昇降機104と、この昇降機104により昇降されるアーム部120とを備える。コイル搬送装置1は、可動治具3L、3Rのアーム部120により、載置台50に載置された円筒コイル17を両脇下から持ち上げる。持ち上げられた円筒コイル17は、可動治具3L、3Rに設けられた固定レバー102を作業員が持って押すことで、ガイドレール2に沿って(Y−Y方向に)容易に搬送されることとなる。
【0025】
ここで、可動治具3L、3Rの詳細を説明する。なお、可動治具3L、3Rにおける左右の構成は略対称であることから、以後の説明では、可動治具3Rを例示して説明する。図6に示すように、可動治具3Rは、ガイドレール2上をスライドするスライド部101に、固定レバー102と、支持部103とを備える。スライド部101は、内部に設けられたコロ(図示しない)等によりガイドレール2に沿って移動される。固定レバー102は、スライド部101の上部に設けられており、可動治具3Rをガイドレール2に沿って移動させる際に作業員に把持され、可動治具3Rの移動を容易としている。支持部103は、上部に昇降機104が設けられている。
【0026】
図7は、可動治具3Rの斜視図である。図8は、可動治具3Rの側面図である。図9は、可動治具3Rの上面図である。
【0027】
図7に示すように、昇降機104は、回転ハンドル105と、回転ハンドル105の回転を伝達する歯車(図示しない)により回転されるネジ106と、ネジ106をネジ穴108で受けて、ネジ106の回転によって上下に昇降される昇降部材107とを備える。図8に示すように、回転ハンドル105は、円筒コイル17が載置される側とは反対側(図示手前側)に設けられており、時計回り/反時計回りの回転操作を受け付ける。
【0028】
昇降部材107にはアーム部120が取り付けられており、回転ハンドル105の回転によって、昇降部材107とともにアーム部120が昇降される。また、図7図9に示すように、昇降部材107には、連結部材4の端部4aを取り付ける取付部109が設けられている。取付部109は、位置合わせ用のノブ110と、ネジ穴111とが設けられている。連結部材4は、端部4aに設けられた穴にノブ110を差し込んで位置合わせを行った後に、ネジ穴111によりネジ止めされる。
【0029】
アーム部120は、支持部103により支持されたガイドレール112に沿ってZ−Z方向に昇降される。図9に示すように、アーム部120は、持ち上げられた際に円筒コイル17と接触する上面が円筒コイル17の外周形状に合わせた曲面形状となっている。このアーム部120の上面には、プラスチック等の緩衝部材121が設けられている。
【0030】
図10は、円筒コイル17を磁石架台11のボア14へ挿入する工程を示す説明図である。なお、図10では、ガイドレール2と、ガイドレール2上を移動する前後の可動治具3L、3Rを例示し、アーム部120を持ち上げて円筒コイル17を支えている可動治具3L、3Rについては網掛けを行っている。また、磁石架台11から近い方を前側の可動治具3L、3R、磁石架台11から遠い方を後側の可動治具3L、3Rと呼ぶ。また、重心17aは、円筒コイル17の重心位置を示している。
【0031】
図10に示すように、作業員は前後の可動治具3L、3Rの回転ハンドル105を操作してアーム部120を上げ、円筒コイル17が前後の可動治具3L、3Rにより持ち上げられる。その後、作業員は、前後の可動治具3L、3Rに設けられた固定レバー102を持って円筒コイル17をガイドレール2に沿って移動させる。これにより、円筒コイル17は、ボア14内へ挿入されていく(S1)。この時、作業員は、円筒コイル17の挿入前に、ボア14の内面(下部)にプラスチック等のスライディングシートを敷いて置いてもよい。
【0032】
前側の可動治具3L、3Rがガイドレール2の縁まで行くと、それ以上ボア14内へ円筒コイル17を挿入することが困難となる。そこで、作業員は、前側の可動治具3L、3Rの回転ハンドル105を操作して、アーム部120を下げる。この時、円筒コイル17は、可動治具3L、3Rが前後に複数組あることから、磁石架台11のボア14に挿入されている部分と、後側の可動治具3L、3Rとで支持される。よって、円筒コイル17は、前後の可動治具3L、3Rにより支持されている場合と同様に安定して支持されることから、ボア14より抜け落ちることはない。そして、作業員は、前側の可動治具3L、3Rの固定レバー102を持って後側の可動治具3L、3R方向へ移動させる(S2)。
【0033】
次いで、作業員は、前側の可動治具3L、3Rの回転ハンドル105を操作してアーム部120を上げ、前後の可動治具3L、3Rに設けられた固定レバー102を持って円筒コイル17をガイドレール2に沿って移動させる(S3)。作業員は、S3、S2の工程を繰り返し行って、円筒コイル17をボア14内に徐々に挿入し、円筒コイル17の重心17aをボア14内に収めるところまで挿入していく(S4)。
【0034】
円筒コイル17の重心17aがボア14内に収まったところでは、可動治具3L、3Rによる支持が無くなったとしても円筒コイル17がボア14より抜け落ちることはない。そこで、作業員は、可動治具3L、3Rを下げてコイル搬送装置1を取り付けた載置台50等を外し、手作業で円筒コイル17をボア14へ押しこむ(S5)。
【0035】
なお、可動治具3L、3Rの組数が円筒コイル17の重心17aで支持するための1組である場合は、ガイドレール2をY−Y方向において載置台50より外側に伸ばすように設けておくことで、円筒コイル17の重心がボア14に入り切る寸前まではコイル搬送装置1で搬送できる。そして、円筒コイル17の重心がボア14に入り切る寸前までコイル搬送装置1で搬送したところで、残りを手作業で挿入してもよい。
【0036】
以上のように、コイル搬送装置1を用いた円筒コイル17の据え付け工程では、円筒コイル17を載置した載置台50を磁石架台11の前に運び込むスペースがあれば、十分に据え付け作業を行うことができ、狭い撮影室内であってもその作業性を確保できる。また、円筒コイル17を持ち上げるための梁と、その梁の支持台を磁石架台11の前後に備え付けるためのスペース等、余分なスペースを撮影室内に確保する必要がない。
【0037】
次に、円筒コイル17をボア14内に挿入した後の、円筒コイル17の位置調整について説明する。図11は、位置調整にかかるコイル搬送装置6を示す斜視図である。
【0038】
図11に示すように、コイル搬送装置1を用いて円筒コイル17をボア14内に挿入した直後では、ボア14の内面にスライディングシート等が敷かれたままであり、磁石架台11内における円筒コイル17の円周方向D1の位置、円筒コイル17の上下方向D2における位置の微調整ができていない。そこで、ボア14内に挿入した後、円筒コイル17の前後の端面17bにコイル搬送装置6を取り付けて円筒コイル17を持ち上げ、円周方向D1、上下方向D2に移動させる。図示例では円筒コイル17の前側の重心17aにコイル搬送装置6を取り付ける場合を例示しているが、後側も同様にコイル搬送装置6を取り付けて、円筒コイル17は2つのコイル搬送装置6により前後で支えられるものとする。
【0039】
コイル搬送装置6は、ボア14の開口端14aと、円筒コイル17の端面17bとの間の内壁面14bに置き、円筒コイル17の端面17bに取り付けて円筒コイル17を持ち上げて、円筒コイル17を円周方向D1、上下方向D2に搬送させる治具である。なお、内壁面14bにおけるボア14の開口端14aと、円筒コイル17の端面17bとの幅は、コイル搬送装置6を置く程度の十分な長さを有するものとする。
【0040】
コイル搬送装置6は、磁石架台11のボア14に挿入された円筒コイル17の前又は後(図示例では前)の端面17bと接続する接続部204を有する第1の支持部材203と、ボア14の開口端14aと接するための車輪210及び第1の支持部材203を上下にスライド可能に指示する支持部(詳細は後述する)を有する第2の支持部材201と、この第2の支持部材201に対して第2の支持部材201を回転ハンドル220の回転操作で上下に昇降させる昇降機構202とを備える。
【0041】
図12は、位置調整にかかるコイル搬送装置6を第2の支持部材201側(ボア14の外側)から見た側面図である。図13は、位置調整にかかるコイル搬送装置6を第1の支持部材203側(ボア14の内側)から見た側面図である。
【0042】
図12に示すように、第2の支持部材201は、鋼板などの板材で形成されており、磁石架台11の内壁面14bに立てて置いた際の、内壁面14bと接触する端部に車輪210が設けられている。この車輪210の回転により、第2の支持部材201は、円周方向D1方向への移動が可能となっている。
【0043】
また、車輪210などが設けられた端部位置には、内壁面14bよりも外側に飛び出したストッパー211が設けられている。図11に示すように、磁石架台11の内壁面14bに第2の支持部材201を置いた際には、ストッパー211が開口端14aにかかることで、第2の支持部材201がボア14の内部に進入することを防止する。すなわち、円筒コイル17は2つのコイル搬送装置6により前後(ボア14の両端)で支えられていることから、ボア14の内部への円筒コイル17の進入がボア14の両端で防止され、円筒コイル17がボア14より抜け落ちることを防止できる。
【0044】
また、図12、13に示すように、第2の支持部材201には、Z−Z方向に所定の長さを有するスライド穴212が設けられている。そして、スライド穴212を通したネジとナットなどによる留め具213により、第1の支持部材203が第2の支持部材201に取り付けられている。この第2の支持部材201に設けられたスライド穴212と、スライド穴212を通して第2の支持部材201に第1の支持部材203を取り付けるための留め具213とが、第1の支持部材203を上下にスライド可能に支持する支持部である。
【0045】
また、第2の支持部材201は、Z方向の下側の辺をアーチ形状としたアーチ部214を備えている。このように、アーチ部214を備えることで、第2の支持部材201下の内壁面14bまでの間に作業用の空間を確保している。
【0046】
図13に示すように、第2の支持部材201の第1の支持部材203が取り付けられる側には、昇降機構202が設けられている。昇降機構202は、一点鎖線で示したカバー221の内部において、回転ハンドル220によって回転されるネジ222と、ネジ222を受けるネジ受け部223と、ネジ222のZ方向下向きへの進出を防止するためのストッパー224とが設けられている。ネジ受け部223と、ストッパー224とは、ネジ225により第1の支持部材203に取り付けられている。
【0047】
ネジ222は、回転ハンドル220の時計回り/反時計回りの回転操作により回転され、ネジ受け部223が取り付けられた第1の支持部材203を上下に昇降させる。ストッパー224は、プラスチックなどで形成され、ネジ受け部223よりとび出すネジ222を受け止めて、ネジ222のZ方向下向きへの進出を防止する。これにより、第1の支持部材203が第2の支持部材201に対して所定の位置よりも上昇することを防止できる。
【0048】
第1の支持部材203は、両端部分に設けられた接続部204のネジ穴を介してコイル取り付けネジ230により円筒コイル17を取り付ける。このコイル取り付けネジ230を差し込むためのネジ穴は、円筒コイル17などに予め設けられたネジ穴(例えばカバーを取り付けるためのネジ穴)を代用してよく、この円筒コイル17のネジ穴に対応した第1の支持部材203の両端位置に設けられている。また、接続部204は、円筒コイル17との接触した際の緩衝材として機能するように、プラスチックなどで形成され、ネジ231により第1の支持部材203に取り付けられている。
【0049】
このコイル搬送装置6を用いた円筒コイル17の位置調整において、作業員は、内壁面14bに車輪210を載せて接続部204を円筒コイル17の端面17bに接触させる。次いで、作業員は、コイル取り付けネジ230により円筒コイル17にコイル搬送装置6を取り付ける。これを円筒コイル17の前後において行い、円筒コイル17の前後にコイル搬送装置6を取り付ける。
【0050】
次いで、作業員は、前後のコイル搬送装置6の回転ハンドル220を回転させて、円筒コイル17を持ち上げる。これにより、円筒コイル17とボア14との間に隙間が生じることから、円筒コイル17とボア14との間に敷かれたスライディングシート等の取り外しが容易となる。また、車輪210により円周方向D1における円筒コイル17の移動も容易となる。
【0051】
そこで、作業員は、計測器具により円周方向D1、D2における位置を計測して位置調整を行った後、その位置を維持するためのスペーサーなどを円筒コイル17とボア14との間に設置し、コイル取り付けネジ230を取り外してコイル搬送装置6を外す。これにより、円筒コイル17の円周方向D1、上下方向D2における位置調整が完了する。
【0052】
以上のように、コイル搬送装置6を用いた円筒コイル17の位置調整では、開口端14aと円筒コイル17の端面17bとの間にコイル搬送装置6を取り付けるためのスペースがあれば、その位置調整の作業を行うことができ、狭い撮影室内であってもその作業性を確保できる。また、円筒コイル17を持ち上げるための梁と、その梁の支持台を磁石架台11の前後に備え付けるためのスペース等、余分なスペースを撮影室内に確保する必要がない。
【0053】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、円筒コイルを架台装置へ据え付ける据付作業を行う際の作業性を向上することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0055】
例えば、コイル搬送装置1、6を用いる場面は、撮影室内における円筒コイル17の交換時だけでなく、磁石架台11を出荷する前の工場内での円筒コイル17の挿入時であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、6…コイル搬送装置、2…ガイドレール、3R、3L…可動治具、4…連結部材、5…台座、10…架台装置、11…磁石架台、12…寝台、13…天板、14…ボア、14a…開口端、14b…内壁面、16…架台カバー、17…円筒コイル、17a…重心、17b…端面、16a〜16i…部分カバー、40…台車、50…載置台、51…枠、52…支持板、101…スライド部、102…固定レバー、103…支持部、104…昇降機、120…アーム部、201…第2の支持部材、202…昇降機構、203…第1の支持部材、204…接続部、210…車輪、211…ストッパー、D1…円周方向、D2…上下方向、R…領域
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