特許第6381907号(P6381907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6381907被検者画像化のためにランドマーク設定するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381907
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】被検者画像化のためにランドマーク設定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   A61B5/055 370
   A61B5/055 390
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-268250(P2013-268250)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-128667(P2014-128667A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2016年12月19日
(31)【優先権主張番号】13/730,405
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】フロリバータス・フィリッパス・マルティナス・ハウケンスフェルド・ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・デイヴィッド・ダロー
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−236829(JP,A)
【文献】 特開2005−040613(JP,A)
【文献】 特開平02−195939(JP,A)
【文献】 特開2010−119744(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137148(WO,A1)
【文献】 特開2010−088870(JP,A)
【文献】 特開平11−313801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像化システムにおいてランドマーク設定するための方法であって、
受信コイルアレイにおいて非飽和信号を誘導するステップであり、前記受信コイルアレイが被検者の所望の関心領域の上方に配置されるステップ、
前記受信コイルアレイ内の1つまたは複数の組の対応するコイル間の位相差を決定するステップ、および、
前記受信コイルアレイ内の前記1つまたは複数の組の対応するコイル間の前記決定された位相差に基づいて、前記画像化システムのガントリに対する前記受信コイルアレイの場所を決定するステップを含む方法。
【請求項2】
前記受信コイルアレイの前記場所に基づいて、前記受信コイルアレイの前記場所と、前記画像化システムの磁石の均質の位置との間の距離を決定するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記決定された距離にわたって前記ガントリ内部に前記被検者を移動させて、前記受信コイルアレイを前記画像化システムの前記磁石の前記均質の位置と位置合わせするステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記画像化システムが磁気共鳴画像化システムを備える、請求項1記載の方法。
【請求項5】
被検者の所望の関心領域の画像を得るように構成されるイメージャ、
前記被検者の前記所望の関心領域上に位置設定されるコイルであり、前記コイル上の複数の場所に配設される複数のマーキングを備えるコイル、および、
前記複数のマーキングのうちのどれが前記被検者の所望のスキャン面に対応するかを指示するユーザからの入力を受信するように構成されるユーザインターフェースを備える位置指示デバイス
を備え、
前記ユーザインターフェースが、前記被検者が前記イメージャのボア内における所望の位置に移動する前に、前記入力を受け取ることができる、画像化システム。
【請求項6】
前記ユーザインターフェースが、前記イメージャのガントリ上に置かれるキーパッドを備え、前記キーパッドが、前記コイル上に配設される前記複数のマーキングに対応する複数のマーキングを備える、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のマーキングが、数字のマーキング、英字のマーキング、絵で表したマーキング、模様付きのマーキング、またはそれらの組み合わせを含む、請求項5記載のシステム。
【請求項8】
前記イメージャが磁気共鳴画像化システムを備える、請求項5記載のシステム。
【請求項9】
画像化システムであって、
被検者の所望の関心領域の画像を得るように構成されるイメージャと、
受信コイルアレイが被検者の所望の関心領域の上に配置されている場合、前記受信コイルアレイに非飽和信号を誘導し、
前記受信コイルアレイ内の1つまたは複数の組の対応するコイル間の位相差を決定し、
決定された前記位相差に基づいて、前記画像化システムのガントリに対する前記受信コイルアレイの場所を決定するように構成された制御回路網と
を備える画像化システム。
【請求項10】
前記制御回路網は、前記受信コイルアレイの場所に基づいて、前記受信コイルアレイの場所と前記画像化システムの磁石の均質の位置との間の距離を決定するように構成されている、請求項9に記載の画像化システム。
【請求項11】
前記制御回路網は、前記決定された距離にわたって前記ガントリ内部に前記被検者を移動させて、前記受信コイルアレイを前記画像化システムの前記磁石の前記均質の位置に位置合わせする、請求項9に記載の画像化システム。
【請求項12】
前記画像化システムが磁気共鳴画像化システムを備える、請求項9記載の画像化システム。
【請求項13】
画像化システムであって、
被検者の所望の関心領域の画像を得るように構成されるイメージャ、
前記被検者の前記所望の関心領域上に位置設定されるコイル、
1次元スキャンシーケンスによって検出可能なコントラスト媒体を備え、所望のスキャン面に対応する場所において前記被検者または前記コイル上に配置される位置指示デバイス、および、
前記1次元スキャンシーケンスを起動して、前記画像化システムのガントリに対する前記位置指示デバイスの前記場所を識別するように構成される制御回路網を備える画像化システム。
【請求項14】
前記イメージャが磁気共鳴イメージャを備え、前記コントラスト媒体が非プロトンコントラスト媒体を含む、請求項13記載の画像化システム。
【請求項15】
前記位置指示デバイスが、使い捨て式の単一使用のデバイスである、請求項13記載の画像化システム。
【請求項16】
前記位置指示デバイスが、前記被検者または前記コイルへの前記位置指示デバイスの粘着を可能にするように構成される粘着性のものを備える、請求項13記載の画像化システム。
【請求項17】
前記制御回路網が、前記ガントリに対する前記位置指示デバイスの前記場所と、前記イメージャの磁石の均質の位置との間の距離を決定するようにさらに構成される、請求項13記載の画像化システム。
【請求項18】
前記位置指示デバイスが、別の画像化動作において再使用するために、前記コイルまたは前記被検者から取り外されるように構成される、請求項13記載の画像化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する主題は、一般には画像化システムに関し、より詳細には、画像化動作中にランドマーク設定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
診断画像化処理手順では、正確な医療診断の一助となるように、患者などの被検者の所望の関心領域(ROI)からの画像化データの取得および再構成を可能にする特定のスキャン環境設定を必要とする。例えば磁気共鳴(MR)画像化は、患者の位置に関係し、高周波(RF)コイルを位置設定し、特定の画像化プロトコルのために患者のROIをランドマーク設定するパラメータを指定する複数のスキャン環境設定を含む。特にランドマーク設定は、スキャナ座標系に患者を位置決めして、所望の画像化のために、均質の画像化部分、例えば磁石のアイソセンタに画像化体積を移動させることを可能にする。
【0003】
場の均質性が最良であることにより特徴付けられる磁石の中心に関心の解剖学的構造を正確に位置設定することは、最適な画像化を考慮するという点で意味のあることである。例えばランドマーク設定に誤りがあることによって、結果として診断の質が低く解剖学的構造の調査範囲が不十分な画像になり、したがって画像が、例えば特定の検査および/または自動的なスキャン面処方アルゴリズムに適さなくなる場合がある。特に所望のROIの調査範囲が不十分であると、MRコイルの上/下(S/I)軸の方向での追加的なデータ取得が必要となり、したがってさらに検査期間が増大し、患者の不快感が増す場合がある。
【0004】
多くの現在のランドマーク設定処理ではシステムオペレータは、機械的な、光学的な、または他の適した手段によって画像化領域の中心を規定する。例えばシステムオペレータは、検査テーブル上に患者を位置設定し、患者の所望のROI上にMRコイルを位置設定し、所望のROIがスキャナの位置合わせ光と一致するように磁石ボア内部にテーブルを位置設定する場合がある。残念ながら現在のランドマーク設定処理は、効率の低減および金銭的コストの増大を招く場合がある種々の欠点と関連している。例えばスキャン面をセットアップするための現在の処理手順は、オペレータにとって面倒であり、したがってイメージャをセットアップするのに必要な時間の量が増大する場合がある。さらに、多くの現在の処理手順では、画像化システムの金銭的コストを増大する場合があるハードウェアを必要とする。したがって、これらの欠点に対処するランドマーク設定システムおよび方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、画像化システムにおいてランドマーク設定するための方法は、受信コイルアレイにおいて非飽和信号を誘導するステップであり、受信コイルアレイが被検者の所望の関心領域の上方に配置されるステップを含む。方法は、受信コイルアレイ内の1つまたは複数の組の対応するコイル間の位相差を決定するステップ、および、受信コイルアレイ内の1つまたは複数の組の対応するコイル間の決定された位相差に基づいて、画像化システムのガントリに対する受信コイルアレイの場所を決定するステップをさらに含む。
【0006】
別の実施形態では、画像化システムは、被検者の所望の関心領域の画像を得るように適合されるイメージャ、および、被検者の所望の関心領域上に位置設定されるコイルを含む。コイルは、コイル上の複数の場所に配設される複数のマーキングを含む。画像化システムは、複数のマーキングのうちのどれが被検者の所望のスキャン面に対応するかを指示するユーザからの入力を受信するように適合されるユーザインターフェースを有する位置指示デバイスをさらに含む。
【0007】
別の実施形態では、画像化システムにおいてランドマーク設定するための方法は、検出デバイスによってオペレータからの視覚または音声の合図を検出するステップであり、視覚または音声の合図が、被検者の関心領域に対応する所望のスキャン面を指し示すステップを含む。方法は、検出された視覚または音声の合図に基づいて、画像化システムのガントリの場所に対する被検者の関心領域の場所を決定するステップをさらに含む。
【0008】
別の実施形態では、画像化システムは、被検者の所望の関心領域の画像を得るように適合されるイメージャ、および、被検者の所望の関心領域上に位置設定されるコイルを含む。システムは、1次元スキャンシーケンスによって検出可能なコントラスト媒体を有し、所望のスキャン面に対応する場所において被検者またはコイル上に配置される位置指示デバイスをさらに含む。制御回路網が、1次元スキャンシーケンスを起動して、画像化システムのガントリに対する位置指示デバイスの場所を識別するために設けられる。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、図面全体を通して類似の符号が類似の部分を表す付随する図面を参照して以下の詳細な説明を読むことで、より良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の態様によるランドマーク設定システムの実施形態を例示する概略図である。
図2】画像化システムにおいてガントリに対するコイルの場所を決定するための方法の実施形態を例示するフローチャートである。
図3】画像化動作のために所望のスキャン面に対応するオペレータの入力を受信するための方法の実施形態を例示するフローチャートである。
図4】画像化動作において所望のスキャン面のジェスチャベースの伝達のための方法の実施形態を例示するフローチャートである。
図5】画像化動作において所望のスキャン面を決定するためにコントラスト媒体を有する位置指示デバイスを利用するための方法の実施形態を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記でより詳細に説明するように、本明細書で提供するのは、被検者の非侵襲性の画像化のためにランドマーク設定するためのシステムおよび方法である。より詳細には、オペレータが、画像化動作のために、スキャン面、またはスキャン面を検索するための開始点を規定することを可能にする種々の技法を下記で提供する。例えば提供する技法のいくつかの実施形態は、ガントリに対する高周波(RF)受信コイルの場所の決定を可能にし、したがって、スキャナの視野内で受信コイルを中心に置くことを可能にする。さらなる例では他の実施形態において、提供する方法は、コイル、ガントリ、または患者を位置設定するテーブルに対するランドマークの位置の決定を可能にする。従来のシステムと比較すると、これらの技法のある種の実施形態は、画像化システムにおいて患者をセットアップするのに必要な時間の量を低減し、したがって、必要なハードウェアの複雑さを増すことなく画像化動作の効率を増大することが可能である。
【0012】
本技法のある種の実施形態を自動磁気共鳴画像化(MRI)システムの状況において説明するが、様々な他の画像化用途およびシステムにおいて今開示する実施形態を使用することもまた企図される。例えばこれらのシステムのいくつかは、自動化されていないMRIシステム、コンピュータ断層撮影(CT)画像化システム、陽電子放射断層撮影(PET)画像化システム、光学画像化システム、および、磁気共鳴(MR)を他のモダリティと組み合わせる混成システムを含む場合がある。実際、図1に示す環境は、本技法の様々な実装形態を実践するのに適した1つの可能な環境を例示するものであり、企図される実施形態を限定することが目的ではない。
【0013】
次に図面に目を向けると、図1は、患者12などの被検者のランドマーク設定において使用するための画像化システム10の実施形態を例示する。考察目的でシステム10を、MR画像化動作においての患者の準備を参照して説明するが、提供する実施形態はこの用途に限定されない。例示する実施形態ではシステム10は、モータ付きのテーブルユニット16に動作可能に結合される静磁場発生器14を含む。静磁場発生器14は、例えばRFコイルまたは傾斜磁場コイルを含む磁石18、および、一実装形態では仰臥位で配設される患者12を収容するためのボア20を含む。これに対して他の実施形態では患者12は、画像化に適した他の体位で配設される場合がある。
【0014】
その目的のためにテーブルユニット16は、画像化システム10の動作中に磁石ボア20内に患者12を支持して並進させるクレードル22を含む。特にある種の実施形態ではテーブルユニット16は、クレードル22の動きを、したがって磁石18内部での患者の位置を管理する位置設定ユニット24を含む。例えば位置設定ユニット24は、オペレータの入力、特定の検査要件、および/または指定のスキャニングプロトコルに基づいて患者の位置を管理する。そのことに応じてある種の実施形態では位置設定ユニット24は、システム10と通信する、1つもしくは複数のデジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または、1つもしくは複数の汎用プロセッサもしくは特定用途向けプロセッサなどのデバイスを含む。
【0015】
一実施形態では位置設定ユニット24は、例えばキーパッド28を有し、オペレータワークステーション30に結合される入出力デバイス26を介して受信されるオペレータの入力に基づいて患者の位置を制御する。例えば入出力デバイス26は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)またはスイッチングサブシステムを有するディスプレイを、オペレータがGUIを介して所望のスキャニングパラメータおよび患者の脊椎などの所望の関心領域(ROI)を選択することを可能にするために含む。あるいはある種の実施形態では位置設定ユニット24は、ストレージリポジトリ32から受信される環境設定ファイルにおいて指定されるスキャニングパラメータに基づいて患者の位置を制御する。その目的のために、例えばストレージリポジトリ32は、システム10に通信可能に結合される、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、ディスクドライブ、固体メモリデバイス、および/またはフラッシュメモリを含む。
【0016】
例示する実施形態では位置設定ユニット24は、スキャニングパラメータを受信すると、例えば制御システム36内の制御回路網34と制御を協調させることにより、ボア20内にクレードル22を前進させ、ランドマーク動作を遂行する。その目的のためにある種の実装形態ではRFコイル38が、判定中の患者12の所望のROI上に位置設定される。例えば例示する実施形態ではRFコイル38は、患者12が磁石ボア20内に並進させられる前に、患者12のひざ上に位置設定される。次いで例示する患者12は、足を先の方向設定で磁石ボア20内に移動させられる。しかしながら患者12を、判定中の患者12の所望のROIに応じて、頭を先または足を先のいずれかの方向設定で位置設定することが可能である。例えば脳検査を、患者12が頭を先の方向設定の状態で遂行することが可能であり、一方で下胸部および腹部の調査を、患者12が足を先の方向設定の状態で遂行することが可能である。
【0017】
典型的なMRシステムでは、患者がテーブル上に位置設定されると、1つまたは複数のレーザ位置合わせ光が点灯され、オペレータは、所望のROIがレーザ位置合わせ光の下に位置設定されるまで磁石ボア内にテーブルを移動させる。オペレータは、ランドマークボタンを押してMRシステムの座標系に患者を位置決めし、スキャン位置に患者を前進させ、そのことによって、場の均質性が最良であることにより特徴付けられる磁石の中心に、今ランドマーク設定されたばかりの領域を位置設定する。次いでオペレータは、オペレータコンソール上の「スキャン開始」ボタンを押すことにより患者のスキャンを起動する。このように典型的なMR画像化では、オペレータの介入、経験、および専門技術に著しく依拠する長々しく多段階のランドマーク設定動作を必要とする。
【0018】
これに対して本明細書で提供する技法の実施形態は、例えば、コストの高いハードウェアを追加する必要なしにランドマーク設定処理におけるオペレータの関与の程度を低減することにより、これらの欠点の1つまたは複数に対処することが可能である。したがって実装形態固有の考慮事項に応じて、システム10は、ランドマーク設定動作において利用される1つまたは複数の追加的な構成要素を含む場合がある。例えば例示する実施形態では、マーカ40が、所望のROIのランドマーク設定を可能にするように、RFコイル38上に埋め込まれる、もしくは位置設定される、または、患者12の関心領域もしくはクレードル22上に直接配置される。例えばマーカ40を、RFコイル38上のS/I中心、S/I範囲、または任意の他の適した位置に位置設定することが可能である。別の実施形態ではマーカ40は、オペレータが所望のスキャン面に対応するマーカを識別することが可能であるように、RFコイル38の長さに沿って位置設定される複数のマーカを表す。例えばそのような一実施形態では、マーカ40は数字である場合があり、オペレータは、所望のスキャン面に対応する数字を選定し、例えばキーパッド28にそれらの数字を入力して、制御回路網34に所望のスキャン面を伝達することが可能である。
【0019】
さらなる例では、図1の実施形態において図示する別の追加的な随意の構成要素は、所望のスキャン面に関係する視覚および/または音声の合図を検出するための、ボア20の上の方に装着されるカメラ42である。カメラ42は、検出される合図の処理および/または記憶のために制御システム36に通信可能に結合され、合図はランドマーク設定のために利用される。例えば一実施形態ではオペレータは、音声の合図(例えば「ここをスキャンする」)を言い表し、一方で、視覚的に検出可能なジェスチャを行う(例えば、所望のスキャン面に対応する位置で患者を横切る腕の動きを行う)ことにより、所望のスキャン面を指示することが可能である。この実施形態ではカメラ42は、これらの視覚および音声の合図を検出し、それらを制御システム36に伝達する。制御回路網34は、取得した情報を処理して、オペレータにより所望されるスキャン面を、および、所望のスキャン面に基づいてボア20内部での適切な患者の位置設定を決定する。
【0020】
一実施形態ではカメラ42は3D性能を有し、そのことによってカメラ42は、視誤差なしにオペレータの手のジェスチャの場所を決定することが可能になる。そのような性能を、変形照明の使用によって、または2つ以上のカメラもしくは視点を使用することによってなど、様々な形で提供することが可能である。さらに別の実施形態ではオペレータに、磁気抵抗センサなどの磁場を検出可能なセンサを包含する、小さな杖のようなハンドヘルドデバイスを提供することが可能である。MRシステムの静磁場はボアからの距離とともに急速に減衰するので、オペレータがハンドヘルドデバイス(例えば杖)を用いて行う「ランドマーク設定ジェスチャ」を、磁場の強さに関するハンドヘルドデバイスからの情報と組み合わせ、MRIボアのアイソセンタからの絶対距離に変えることが可能である。ハンドヘルドデバイスは、より広い範囲のジェスチャを検出かつ解釈することを可能にするための慣性センサをさらに含む場合がある(例えば磁石のボアに向けてハンドヘルドデバイスを素早く杖のように振ること(swish and flick)が、「ボア内に患者を移動させる」を指示する場合がある)。
【0021】
次いで制御回路網34が位置設定ユニット24と協調して、画像化のために磁石18内部で患者を位置設定する。例えば位置設定ユニット24は、RFコイル38が磁石18のアイソセンタ44と位置合わせされるように、クレードル22の移動を協調させることが可能である。その目的のためにある種の実施形態ではシステム10は、磁石18に対するクレードル22の長手方向の位置を決定するために、テーブルユニット16および/または磁石18上に置かれる、位置エンコーダおよび/またはセンサなどの構成要素を含み得る。位置設定ユニット24は、制御回路網34および所与の実装形態に存在する任意の位置検出デバイスと協調してアイソセンタ44(または磁石18内部の別の所望の位置合わせ点)にクレードル22を前進させ、かつ、ランドマークをセットして、患者の判定および治療において使用するための診断画像を発生させるために所望のROIをスキャン位置に前進させることを可能にする。
【0022】
図1に例示する実施形態は関心の解剖学的構造の上方に位置設定される外部コイル(すなわちコイル38)を含むが、他の実施形態では、磁石のボア内部に置かれるスキャナボディコイルを、患者がスキャナボディコイルの内側に置かれるときにランドマーク設定目的で代わりに利用することが可能であることに留意されたい。実際、下記でより詳細に説明するように、本明細書で提供するある種の方法を、ランドマーク設定に関して外部コイルの代わりにスキャナボディコイルを利用して実装することが可能である。
【0023】
図2は、図1に示す画像化システム10においてランドマーク設定を遂行するために利用することが可能である方法46の実施形態を例示する。この方法46は、画像化ガントリに対するRFコイル(例えばコイル38)の場所を決定することによりランドマーク設定を実現する。そのことに応じて方法46は、被検者の所望のROIの上方へのRFコイルまたはコイルアレイの配置から始まる(ブロック48)。例えば図1での図示において、RFコイル38は患者のひざの上方に配置される。次いでオペレータは、被検者の所望のROIのスキャンを起動し、一方で被検者は画像化システム内部の定位置に置かれている(ブロック50)。例えば定位置は、患者12およびテーブルユニット16が磁石18のボア20の外側に位置設定されている、図1に例示する位置であり得る。オペレータは、例えば入出力デバイス26に関連するユーザインターフェース上でスキャンを行うことを指示することにより、スキャン処理手順を起動することが可能である。この起動によってシステム10は、待機モードとなり画像化動作の準備ができた状態となるように活動化する。
【0024】
オペレータが動作を起動すると、制御システム36は、ランドマーク設定を遂行するようにシステムを導くための信号を発生させる。より詳細には例示する実施形態では、制御回路網34が画像化システムから非飽和RF信号を送信する(ブロック52)。すなわち、コイルが遮断されていない場合でも受信コイルのプリアンプを飽和させないように十分に弱い、弱い信号がMRシステムから送信される。そのことに応じて、信号が受信器コイルにおいて誘導される(ブロック54)。
【0025】
方法46は、患者が定位置から移動させられる際の受信器コイルアレイの両端での対応するコイル間の位相差の測定を続行する(ブロック56)。患者の移動の間のこの位相差を監視することにより、被検者を画像化のために所望の位置に移動させることが可能である(ブロック58)。例えば次に、受信器コイルアレイが励磁コイルに対して中心に置かれるときに、受信器コイルアレイの両端での対応するコイル間の位相差がゼロになることを認識されたい。この中心に置く位置が所望の位置であるならば、位置設定ユニット24は、測定される位相差がゼロになるまでテーブルユニット16を移動させることが可能である。中心に置かれる位置が所望の位置でないならば、制御回路網34は、この特性を利用して、所望の位置を実現することが可能であるようにコイルの場所に対する基準点を決定することが可能である。これに対していずれの例でも、このタイプの多重スキャンを、テーブルユニット16が適位置に移動させられる際に行うことが可能であり、受信される信号の振幅を比較することにより、制御回路網34は必要とされる並進距離を決定することが可能である。
【0026】
いくつかの実施形態では、受信器コイルを探るための十分に低い強度の信号を送信することが可能でない場合があることに留意されたい。これらの実装形態では、離調された(すなわち遮断された)コイルからのコイル応答の検出を利用することが可能である。これらの実施形態では方法46は、受信される信号およびコイル位置の位相関係を決定する目的で較正ステップをさらに含む。
【0027】
図3は、画像化システム10においてランドマーク設定を遂行するための別の方法60の実施形態を例示する。この方法60は、患者の所望のROIの上方に1つまたは複数のマーキングを有する受信器コイルを配置するステップ(ブロック62)、および、キーパッドを利用して、マーキングのうちのどれが所望のスキャン面に対応するかを指示するステップ(ブロック64)を含む。次いで患者は、磁石ボアの外側の定位置からボア内部の所望の位置に移動させられる(ブロック66)。
【0028】
一実施形態では複数のマーカ40が、RFコイル38上にコイル上の複数の位置で配置される。マーカ40は、数字のマーキング、英数字のマーキング、絵で表したマーキング、模様付きのマーキング、またはそれらの組み合わせを含み得るが、これらのものに限定されない。例えば一実施形態では、マーカ40は数字のマーカであり、オペレータは、どの数字のマーカが所望のスキャン面に最も近く対応するかを選択する。選択するとオペレータは、例えば入出力デバイス26上のキーパッド28を介して、制御システム36にそれらのマーカを伝達する。さらにマーカを、コイル38上に、テーブル16上に、または画像化システム10内の別の適した位置に置くことが可能であることに留意されたい。マーカがコイル38上に置かれるならば、制御システム36は、例えば上記で説明した方法46を実装することにより、コイル38の場所を別々に決定することが可能である。いくつかの実施形態では、マーカがテーブル上に置かれるならば、関心領域の上方に配置される外部コイルは必要ではない場合があり、スキャナボディコイルをランドマーク設定のために代わりに使用することが可能である。
【0029】
図4は、画像化システム10においてランドマーク設定を遂行するための別の方法68の実施形態を例示する。方法68を、外部コイルまたはスキャナボディコイルのいずれかがランドマーク設定のために使用される状態で実装することが可能であることに留意されたい。この方法68の実装の間、受信器コイルが被検者の所望のROIの上方に配置され(ブロック70)、オペレータは、視覚または音声の合図によって所望のスキャン面を指示する(ブロック72)。例えばオペレータは、音声の合図(例えば「ここをスキャンする」)を言い表し、一方で、視覚的に検出可能なジェスチャを行う(例えば、所望のスキャン面に対応する位置で患者を横切る腕の動きを行う)ことにより、所望のスキャン面を指示することが可能である。ある種の実施形態ではオペレータは、符号化されたアクセサリ(例えば色付きの手袋)を身に着けること、または、所望のスキャン面の伝達の一助となるハンドヘルドデバイス(上記で考察したような磁気または慣性の検知構成要素の1つまたは両方を組み込むデバイスなど)を使用することが可能である。
【0030】
方法68は、カメラなどの検出デバイスによって、オペレータからの視覚および/または音声の合図の検出をさらに必要とする(ブロック74)。合図が検出されると制御回路網34は、ガントリに対する患者のROIの場所を決定し(ブロック76)、患者のROIと患者の所望の位置との間の距離を決定する(ブロック78)。次いで制御回路網34は、位置設定ユニット24と通信して、画像化のために所望の位置に、決定された距離だけ患者を移動させる(ブロック80)。
【0031】
図5は、画像化システム10においてランドマーク設定を遂行するための別の方法82の実施形態を例示する。方法82を、外部コイルまたはスキャナボディコイルのいずれかがランドマーク設定のために使用される状態で実装することが可能であることに留意されたい。この方法82の実装の間、受信器コイルが被検者の所望のROIの上方に配置され(ブロック84)、コントラスト媒体を有するデバイスが、所望のスキャン面を指示するために患者またはコイル上に配置される(ブロック86)。次いで、被検者は磁石のボア内に移動させられ(ブロック88)、コントラスト媒体の位置を検出するために1次元スキャンシーケンスが遂行される(ブロック90)。前のように、次いで患者を画像化のために所望の位置に移動させることが可能である(ブロック92)。
【0032】
すなわちこの実施形態では、患者の上に配置されるデバイスはMRIコントラスト媒体を含み、そのコントラスト媒体を、患者がボア内に移動させられる際に検出し、制御回路網34により使用して、スキャン面の正しい場所を決定することが可能である。コントラスト媒体は、画像化中に干渉が起こる可能性を低減する、またはなくすために、いくつかの実施形態では非プロトン媒体であり得ることに留意されたい。そのような実施形態では、広帯域電子回路などの追加的な回路網を、検出目的で含むことが可能である。
【0033】
コントラスト媒体包含デバイスは、初期の配置および画像化中のその配置の維持を容易にするために、いくつかの実施形態では粘着性であり得る。他の実施形態では、クリップまたはスナップなどの種々の適した取り付け機構を用いて、所望の場所で患者またはコイルにデバイスを結合する場合がある。さらにデバイスは、使い捨て式で1回の使用のために構成される場合があり、または再使用可能で、例えば複数の異なる患者による複数回の使用のために構成される場合がある。
【0034】
記述した本説明では、例を使用して、最良の形態を含めて本発明を開示し、さらには、任意のデバイスまたはシステムを作製かつ使用すること、および任意の組み込んだ方法を遂行することを含めて、本発明を実践することを当業者ならば誰でも可能にする。本発明の特許的な範囲は、特許請求の範囲により定義され、当業者が想到する他の例を含み得る。そのような他の例は、それらの例が、特許請求の範囲の文字通りの文言と異ならない構造要素を有するならば、またはそれらの例が、特許請求の範囲の文字通りの文言と実質的な違いのない等価の構造要素を含むならば、特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
10 画像化システム
12 患者
14 静磁場発生器
16 テーブルユニット
18 磁石
20 ボア
22 クレードル
24 位置設定ユニット
26 入出力デバイス
28 キーパッド
30 オペレータワークステーション
32 ストレージリポジトリ
34 制御回路網
36 制御システム
38 RFコイル
40 マーカ
42 カメラ
44 磁石のアイソセンタ
48 被検者の所望のROIの上方に受信器コイルを配置する
50 画像化システム内の定位置に配設される被検者の所望のROIのスキャンを起動する
52 画像化システムから非飽和RF信号を送信する
54 受信器コイルにおいて誘導される信号
56 被検者が定位置から移動させられる際のコイルアレイ内の対応するコイル間の位相差を測定する
58 被検者を画像化のために所望の位置に移動させる
62 被検者の所望のROIの上方にマーキングを有する受信器コイルを配置する
64 入力デバイス上のキーパッドを利用して、所望のスキャン面に対応するマーキングを指示する
66 被検者を定位置から画像化位置に移動させる
70 被検者の所望のROIの上方に受信器コイルを配置する
72 視覚または音声の合図によって所望のスキャン面を指示する
74 検出デバイスによって、オペレータからの視覚または音声の合図を検出する
76 ガントリに対するROIの場所を決定する
78 ROIと所望の位置との間の距離を決定する
80 画像化のために所望の位置に、決定された距離だけ被検者を移動させる
84 被検者の所望のROIの上方に受信器コイルを配置する
86 コントラスト媒体を有するデバイスを、所望のスキャン面を指示するために患者またはコイル上に配置する
88 被検者を画像化システムのボア内に移動させる
90 コントラスト媒体位置を検出するために1Dスキャンシーケンスを遂行する
92 被検者を画像化のために所望の位置に移動させる
図1
図2
図3
図4
図5