特許第6381922号(P6381922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381922
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】筆記用具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/12 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   B43K24/12
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-18851(P2014-18851)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-145102(P2015-145102A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002314
【氏名又は名称】セーラー万年筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】木村 孝
(72)【発明者】
【氏名】河野 浩康
(72)【発明者】
【氏名】浜岡 清登
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−000826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 24/00−24/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ又は芯粉を紙葉類に塗布可能に形成された筆記部を有する複数の筆記体と、
その先端に前記筆記部を支持する小孔を有する大先と、
軸心方向に沿って形成された複数の孔部を有し、前記大先とともに前記筆記体を収納する軸筒と、
前記筆記体に設けられ、前記孔部に沿って移動可能に形成された作動子と、
前記作動子に設けられた環状の緩衝部材と、
前記軸筒内に設けられ、その端部が前記緩衝部材と当接する規制部と、
前記軸筒の端部に向かって前記作動子を付勢する付勢部材と、
を備え
前記規制部は、前記軸筒内に設けられるとともに、前記孔部よりも前記大先側に設けられ、
前記作動子は、前記付勢部材を支持するとともに、前記緩衝部材に隣接して設けられた鍔部を備えることを特徴とする筆記用具。
【請求項2】
前記作動子は、前記鍔部に隣接して設けられ、前記緩衝部材を固定する溝部を備えることを特徴とする請求項1に記載の筆記用具。
【請求項3】
前記作動子は、その一方の端部から前記付勢部材までの長さが、前記規制部の前記端部から前記孔部の前記作動子の他方の端部と対向する端部までの長さよりも短く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筆記用具。
【請求項4】
前記筆記体は、ボールペン又はシャープペンシルのレフィルであることを特徴とする請求項1に記載の筆記用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筆記体を有する筆記用具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ボールペンのレフィルやシャープペンシルのレフィル等の筆記体を複数設け、外郭部材に設けられた孔部に沿って移動する作動子によって、いずれか一の筆記体を、筆記用具の先端を構成する大先の孔部から突出させる筆記用具が知られている。
【0003】
この筆記用具は、作動子を操作して一の筆記体の先端を突出させることで筆記可能とするとともに、使用後は、スプリングの付勢によって作動子を元の位置に戻すことで、突出した筆記体を収納する。
【0004】
このとき、スプリングの付勢によって作動子を戻すことから、作動子が筆記用具の外郭部材と衝突し、衝突音が発生する。このような音は、静かな環境で筆記用具が使用される場合には、雑音の原因となる。このため、衝突音の発生を防止可能な筆記用具として、作動子の頂部と外郭部材の孔部の端部との間に、樹脂材料等で形成された音を低減可能な緩衝部材を介在させることで、衝突音の発生を防止する技術が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−62100号公報
【特許文献2】実願平5−28687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した筆記用具では、以下の問題があった。即ち、作動子の頂部と外郭部材の孔部との間に緩衝部材を設ける筆記用具では、作動子の操作が繰り返されると、緩衝部材が脱落する虞があった。また、緩衝部材は、嵌合や接着剤により、作動子又は外郭部材の孔部に固定されることから、組み立て作業が複雑となる、という問題もある。
【0007】
そこで本発明は、組み立てが容易であって、且つ、緩衝部材の脱落が防止できる、衝突音の低減が可能な筆記用具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の筆記用具は次のように構成されている。
【0009】
本発明の一態様の筆記用具は、インキ又は芯粉を紙葉類に塗布可能に形成された筆記部を有する複数の筆記体と、その先端に前記筆記部を支持する小孔を有する大先と、軸心方向に沿って形成された複数の孔部を有し、前記大先とともに前記筆記体を収納する軸筒と、前記筆記体に設けられ、前記孔部に沿って移動可能に形成された作動子と、前記作動子に設けられた環状の緩衝部材と、前記軸筒内に設けられ、その端部が前記緩衝部材と当接する規制部と、前記軸筒の端部に向かって前記作動子を付勢する付勢部材と、を備え、前記規制部は、前記軸筒内に設けられるとともに、前記孔部よりも前記大先側に設けられ、前記作動子は、前記付勢部材を支持するとともに、前記緩衝部材に隣接して設けられた鍔部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組み立てが容易であって、且つ、緩衝部材の脱落が防止できる、騒音の低減が可能な筆記用具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る筆記用具の構成を示す断面図。
図2】同筆記用具構成を示す断面図。
図3】同筆記用具に用いられる外郭部材及び作動子の構成を示す断面図。
図4】同外郭部材及び作動子の構成を示す断面図。
図5】同作動子の構成を示す側面図。
図6】本発明の第2の実施形態に係る筆記用具の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る筆記用具1を、図1乃至図5を用いて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に関わる筆記用具1の構成を断面で示す説明図、図2は筆記用具1の構成であって、筆記用具1の使用時の状態を示す断面図、図3は筆記用具1の要部構成、具体的には、外郭部材10の軸筒15及び駆動機構12の一部構成を示す断面図、図4は駆動機構12に用いられる作動子42、規制部45及び緩衝部材46の構成を、図3中、IV−IV線断面で示す断面図、図5は作動子42及び緩衝部材46の構成を示す側面図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、筆記用具1は、所謂スライド式と呼ばれる複数の筆記体が用いられるボールペンから成る筆記用具、又は、ボールペン及びシャープペンシルが一体となった筆記用具等である。本実施の形態においては、筆記用具1は、複数のボールペンのレフィルである筆記体11を備える構成を用いて説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、筆記用具1は、外郭部材10と、複数の筆記体11と、これら筆記体11の一部を外郭部材10から出没させる駆動機構12と、を備えている。
【0015】
外郭部材10は、軸筒15と、大先16と、グリッパー17と、を備えている。軸筒15は、樹脂材料により形成され、筆記体11の一部及び駆動機構12を収納する。図3に示すように、軸筒15は、その一端が開口するとともに、他端が閉塞する筒状に形成されている。
【0016】
図1乃至図3に示すように、軸筒15は、その一端側に大先16と螺合する雌螺子部19を有している。また、軸筒15は、その他端側に、駆動機構12の一部、具体的には後述する作動子42の移動を案内する直線的に延設された複数の孔部20を備えている。孔部20は、筆記体11と同数設けられ、筆記用具1の軸心方向に沿って延設されている。
【0017】
大先16は、その一端側が他端側よりも小径の先細形状に形成され、両端が開口する筒状に形成されている。なお、大先16の一端側は、筆記用具1の先端を形成する。大先16は、軸筒15とともに、筆記体11を収容可能に形成されている。
【0018】
具体的に説明すると、大先16は、先細形状の筒状に形成される。大先16は、その一端側に形成され、先端に小孔22aが形成された先端部22と、その他端の開口に形成され、軸筒15の雌螺子部19と螺合する雄螺子部23と、先端部22及び雄螺子部23の間に設けられ、グリッパー17を挿入し、且つ、支持可能に形成された挿入部24と、を備えている。
【0019】
先端部22は、挿入部24側から先端に向かって漸次縮径する曲面によって略円錐状に形成され、その先端に小孔22aが形成される。小孔22aは、筆記体11の後述する筆記部32の外径と略同一径又は若干大径となる内径に形成されている。挿入部24は、その外径が、隣接する先端部22の外径よりも小径に形成されるとともに、グリッパー17の内径と略同一又は若干小径に形成されている。
【0020】
グリッパー17は、例えばシリコンゴム等のエラストマー樹脂により形成されている。グリッパー17は、筆記用具1の使用者が当該筆記用具1を握持した際に、使用者の指とフィットし、且つ、適度な抵抗(摩擦力)を発生させて滑りを防止可能に形成されている。
【0021】
筆記体11は、所謂レフィル等の芯体である。筆記体11は、インキ管31と、筆記部32と、を備えている。インキ管31は、その内部にインキを収容する。なお、複数の筆記体11は、例えば、異なる色のインキが収容されたインキ管31が用いられる。
【0022】
筆記部32は、インキ管31に接続され、インキを紙葉類に塗布可能に形成されている。筆記部32は、円筒状に形成されるとともに、その先端が円錐状に形成される。筆記部32は、円錐状の先端にボールを回転可能に支持するチップである。
【0023】
図1乃至図5に示すように、駆動機構12は、固定子41と、作動子42と、付勢部材43と、支持部材44と、規制部45と、緩衝部材46と、を備えている。固定子41は、軸筒15に設けられ、孔部20の内側縁から互いに対向する内側縁に向かって突出し、且つ、孔部20の一端側から他端側中途部に向かって延設する作動子42を案内する突起である。
【0024】
作動子42は、筆記体11に接続される。作動子42は、孔部20及び固定子41に沿って移動する移動体42aと、移動体42aの一端側に設けられ、孔部20から外部に突出する操作部42bと、移動体42aの他端側に設けられ、付勢部材43を接続する鍔部42cと、移動体42aの他端に設けられ、インキ管31を固定する嵌合部42dと、を備えている。
【0025】
また、作動子42は、移動体42aの他端に設けられた固定子41と係合可能な切欠部42eと、移動体42aの軸筒15の内部側に位置する側面に設けられ、他の移動体42aと当接する当接体42fと、鍔部42cと隣接する移動体42aの一部に形成された溝部42gと、を備えている。作動子42は、移動体42a、操作部42b、鍔部42c、嵌合部42d、切欠部42e、当接体42f及び溝部42gが、樹脂成型等によって一体に形成されている。
【0026】
移動体42aは、操作部42bが操作されることで、孔部20、固定子41及び規制部45に沿って移動可能に形成される。移動体42aは、その切欠部42eが設けられた端部から溝部42gの操作部42b側の端面までの長さが、孔部20の一方の端部、換言すると孔部20の切欠部42eと対向する端部から規制部45の端部までの長さよりも短く形成されている。
【0027】
換言すると、移動体42aは、作動子42が待機状態(待機位置)であるときに、孔部20の切欠部42eが対向する端部から離間して配置される。なお、ここで、作動子42の待機状態とは、筆記用具1を使用せずに、大先16の小孔22aから筆記部32が突出していない状態であり、待機位置とは、待機状態での作動子42の位置である。
【0028】
移動体42aは、固定子41の端部に移動すると固定子41を乗り越えて軸筒15の内部方向に進入し、これにより、切欠部42eが固定子41の端部とが係合することで、作動子42の移動が規制される。
【0029】
操作部42bは、孔部20に配置され、軸筒15の外周面から突出することで、使用者が操作可能に形成されている。鍔部42cは、移動体42aの一方の端部よりも外部に突出して形成され、付勢部材43を支持可能に形成される。嵌合部42dは、円柱状又は先端が拡径する突起状に形成され、インキ管31に挿入されることで、インキ管31を嵌合固定可能に形成されている。
【0030】
当接体42fは、作動子42が固定子41の端部側に向かって移動した際に、その切欠部42eが、固定子41と係合した他の作動子42の当接体42fと当接可能に形成されている。当接体42fは、当該他の当接体42fと当接することで、当該他の当接体42fを介して他の作動子42を軸筒15の外部方向に押圧し、固定子41と切欠部42eとの係合を解除可能に形成されている。溝部42gは、緩衝部材46を挿入し、緩衝部材46を固定可能に形成されている。
【0031】
付勢部材43は、鍔部42c及び支持部材44間に配置され、鍔部42cを介して作動子42を付勢可能に形成されたコイルバネである。即ち、付勢部材43は、作動子42が移動し、切欠部42eと固定子41の端部とが係合した場合に、作動子42が孔部20の一端側(待機位置)へと移動する方向に作動子42を付勢する。
【0032】
支持部材44は、軸筒15内に固定される。支持部材44は、インキ管31を挿通可能、且つ、付勢部材43を支持可能に形成されている。
【0033】
規制部45は、軸筒15の内周面に設けられた複数の突起やリブ等である。規制部45は、溝部42gに固定された緩衝部材46に当接可能に形成されている。具体的には、規制部45は、例えば、軸筒15の内周面であり、且つ、隣合う孔部20間であって、その端部が孔部20よりも大先16(雌螺子部19)側に設けられる。規制部45は、例えば、軸筒15に一体に形成される。なお、規制部45は、軸筒15と別体に設けられてもよい。
【0034】
緩衝部材46は、弾性材料、例えば、シリコンゴム、NBR(acrylonitrile butadiene rubber)、又は、合成ゴムや天然ゴム等のエラストマー材料等により環状に形成された、例えばOリングである。緩衝部材46は、溝部42gに嵌合され、規制部45と当接可能に形成されている。緩衝部材46は、作動子42が操作され、その後、付勢部材43によって元の位置に戻されたときに、規制部45に接触し、当該接触時の衝撃を緩衝可能に形成されている。
【0035】
次に、このように構成された筆記用具1の使用時の動作について説明する。
筆記用具1の使用時において、まず、図1の待機状態から図2の筆記を行う筆記状態となるように、操作部42bを操作して作動子42をスライドさせる。これにより、筆記体11が付勢部材43に抗って移動し、筆記体11の筆記部32が大先16の先端の小孔22aから突出する。
【0036】
具体的には、操作部42bの操作により移動体42aがスライドされ、終点まで移動すると、移動体42aが軸筒15内へ移動するとともに、作動子42の切欠部42eが固定子41と係合し、作動子42が固定子41により固定される。これにより、筆記部32は、小孔22aから突出した状態が維持される。
【0037】
この状態で、筆記用具1の使用者が紙体等の紙葉類に筆記部32の先端のボールを当接させ、任意の筆運び方向に筆記用具1を移動させることで、筆運び方向と相対する筆記部32の外周面の一部が小孔22aの内周面の一部と当接して筆記部32が小孔22aに支持される。このため、筆記部32は、所定の力で紙葉類に当接し、ボールが回転することで、紙葉類と摺動し、当該回転によりボールの表面に付着して排出されたインキ管31内のインキが紙葉類上に塗布される。
【0038】
使用者は、筆記用具1による筆記の終了後、固定子41と係合する作動子42とは他の待機位置の作動子42を操作する。この操作によって、移動体42aが移動すると、当該移動する移動体42aに設けられた当接体42fが、固定子41と係合する作動子42の当接体42fと当接し、固定子41と係合する作動子42を軸筒15の外側に向かって押圧する。これにより、固定子41と係合する作動子42は、固定子41との係合が解除されて、付勢部材43の付勢によって移動するとともに、規制部45と緩衝部材46が当接する。これにより、作動子42は、元の位置(待機位置)に移動する。次に、使用者が操作した操作部42bの操作を解除することで、当該作動子42は、付勢部材43の付勢によって規制部45及び緩衝部材46の当接する位置(待機位置)まで移動し、元の位置に戻る。
【0039】
このように構成された筆記用具1によれば、操作された作動子42が付勢部材43の付勢によって待機位置に戻るときに、緩衝部材46が規制部45と当接することで、作動子42の移動が規制される。また、作動子42は、移動体42aの端部が孔部20の端面に当接しない構成である。このため、緩衝部材46によって、緩衝部材46と規制部45との当接時の衝撃が緩衝され、衝突音の発生を防止することが可能となる。また、緩衝部材46が規制部45に当接する時の衝撃が緩衝されることで、筆記部32に付着したインキの飛散が防止される。
【0040】
また、緩衝部材46は、環状のOリングであって、溝部42gに嵌める簡単な構成である。このため、緩衝部材46は、規制部45及び緩衝部材46の当接時に、規制部45によって軸心に沿った方向に押圧されても、繰り返しの作動子42の作動によって緩衝部材46が溝部42gから脱落することを防止可能となる。また、溝部42gは、鍔部42cに隣接して配置されることで、緩衝部材46は、溝部42gだけでなく、鍔部42cにも支持される。このため、緩衝部材46の脱落をより防止することが可能となる。
【0041】
また、作動子42の形成時に溝部42gを設け、溝部42gに緩衝部材46を嵌める構成であることから、筆記用具1は、組立性もよく、また、製造コストを増大させることもない。
【0042】
上述したように、第1の実施形態に係る筆記用具1によれば、作動子42の移動による衝突音の低減が可能となるとともに、組み立てが容易であって、且つ、緩衝部材46の脱落が防止できる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る筆記用具1Aの構成を、図6を用いて説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る筆記用具1Aの構成を示す断面図である。なお、図6中、上述した第1の実施形態に係る筆記用具1と同等の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0044】
図6に示すように、筆記用具1Aは、所謂スライド式と呼ばれるボールペン及びシャープペンシルが一体となった筆記用具である。具体的には、筆記用具1Aは、複数のボールペンのレフィルである筆記体11及びシャープペンシル機構のレフィルである筆記体11Aを備える。
【0045】
図6に示すように、筆記用具1は、外郭部材10Aと、複数の筆記体11、11Aと、これら筆記体11、11Aの一部を外郭部材10から出没させる駆動機構12Aと、を備えている。
【0046】
外郭部材10Aは、軸筒15Aと、大先16と、グリッパー17と、を備えている。軸筒15Aは、樹脂材料により形成され、筆記体11Aの一部及び駆動機構12Aを収納する。軸筒15Aは、その両端が開口する筒状に形成されている。
【0047】
軸筒15Aは、その一端側の開口に形成された、大先16と螺合する雌螺子部19と、その他端に形成され、駆動機構12Aの一部、具体的には後述するノック体40の一部を挿入可能に形成された開口部19Aと、を有している。また、軸筒15Aは、その他端側に、その一部を作動子42の移動を案内する直線的に延設された複数の孔部20を備えている。孔部20は、筆記体11、11Aと同数設けられ、筆記用具1Aの軸心方向に沿って延設されている。
【0048】
筆記体11Aは、所謂シャープペンシルのレフィルである。筆記体11Aは、シャープペンシルの芯を挿入する芯管31Aと、芯を送り出すシャープペンシル機構である筆記部32Aと、を備えている。芯管31Aは、その内部に芯を収容する。
【0049】
筆記部32Aは、芯管31Aに接続され、ノックされることで、内部に設けられたチャックが開閉し、芯を突出させ、芯粉を紙葉類に塗布可能に形成されている。
【0050】
図6に示すように、駆動機構12Aは、ノック体40と、ノック体40に設けられた固定子41と、作動子42と、付勢部材43と、支持部材44と、ノック体40に設けられた規制部45と、緩衝部材46と、を備えている。
【0051】
ノック体40は、異なる二つの外径を有する円筒状に形成され、軸筒15内に進退可能に設けられる。ノック体40は、少なくとも孔部20と対向する位置に、作動子42が移動可能に配置されるスリット状の切欠部40aを備えている。また、ノック体40は、切欠部40aに固定子41が形成されるとともに、規制部45が、その切欠部40aに隣接する先端に一体に形成される。
【0052】
このように構成された筆記用具1Aは、筆記用具1と同様の効果を奏する。具体的には、筆記用具1Aは、作動子42の操作によって、筆記体11、11Aを進退可能に形成されるとともに、ノック体40に設けられた規制部45と作動子42に設けられた緩衝部材46とが当接することで、作動子42が付勢部材43の付勢により元の位置(待機位置)に戻るときの衝撃を緩衝部材46により吸収し、衝撃音の発生を防止可能となる。特に、緩衝部材46により衝撃を吸収可能であることから、筆記体11Aにシャープペンシル機構を用いた場合でも、筆記部32Aのチャックに芯が保持された状態で、筆記部32Aに衝撃が加わることを防止可能となり、芯折れの発生が防止できる。
【0053】
上述したように第2の実施形態に係る筆記用具1Aによれば、作動子42の移動による衝突音の低減が可能となるとともに、組み立てが容易であって、且つ、緩衝部材46の脱落が防止できる。
【0054】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、筆記用具1の筆記体11、11Aをボールペンのレフィル及びシャープペンシル構造のフィルを用いる構成を説明したがこれに限定されず、消しゴム等のレフィルを用いる構成であってもよい。
【0055】
また、上述した例では、溝部42gを作動子42に設け、この溝部42gに緩衝部材46を固定する構成を説明したが、これに限定されない。例えば、溝部42gを設けず、鍔部42cによって緩衝部材46を支持する構成であってもよい。このような構成とすることで、規制部46と対向する鍔部42cの端面により緩衝部材46が支持される構成であることから、緩衝部材46の脱落を防止可能となる。但し、緩衝部材46の脱落を防止するためには、溝部42gを設ける構成がより好ましい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]インキ又は芯粉を紙葉類に塗布可能に形成された筆記部を有する複数の筆記体と、
その先端に前記筆記部を支持する小孔を有する大先と、
軸心方向に沿って形成された複数の孔部を有し、前記大先とともに前記筆記体を収納する軸筒と、
前記筆記体に設けられ、前記孔部に沿って移動可能に形成された作動子と、
前記作動子に設けられた環状の緩衝部材と、
前記軸筒内に設けられ、その端部が前記緩衝部材と当接する規制部と、
前記軸筒の端部に向かって前記作動子を付勢する付勢部材と、
を備えることを特徴とする筆記用具。
[2]前記規制部は、前記軸筒内に設けられるとともに、前記孔部よりも前記大先側に設けられ、
前記作動子は、前記付勢部材を支持するとともに、前記緩衝部材に隣接して設けられた鍔部を備えることを特徴とする[1]に記載の筆記用具。
[3]前記作動子は、前記鍔部に隣接して設けられ、前記緩衝部材を固定する溝部を備えることを特徴とする[2]に記載の筆記用具。
[4]前記作動子は、その一方の端部から前記付勢部材までの長さが、前記規制部の前記端部から前記孔部の前記作動子の他方の端部と対向する端部までの長さよりも短く形成されていることを特徴とする[1]に記載の筆記用具。
[5]前記筆記体は、ボールペン又はシャープペンシルのレフィルであることを特徴とする[1]に記載の筆記用具。
【符号の説明】
【0056】
1、1A…筆記用具、10、10A…外郭部材、11、11A…筆記体、12、12A…駆動機構、15、15A…軸筒、16…大先、17…グリッパー、19…雌螺子部、19A…開口部、20…孔部、22a…小孔、22…先端部、23…雄螺子部、24…挿入部、31…インキ管、31A…芯管、32、32A…筆記部、40…ノック体、40a…切欠部、41…固定子、42…作動子、42a…移動体、42b…操作部、42c…鍔部、42d…嵌合部、42e…切欠部、42f…当接体、42g…溝部、43…付勢部材、44…支持部材、45…規制部、46…緩衝部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6