(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
羽根車を回転駆動する電動機と、前記羽根車の外周側に配置されたディフューザベーンと背面に配置されたリターンベーンとからなる略円形のディフューザと、前記羽根車及び前記ディフューザを覆うファンケーシングと、前記ディフューザと前記ファンケーシングとの間に配置された略円形のリング状部材と、を有し、前記リング状部材は、一方の面が前記ディフューザのディフューザベーンに固定されていると共に、他方の面が前記ファンケーシングの内面と当接している電気掃除機用電動送風機において、
前記ディフューザと前記リング状部材の直径は略同一であり、
前記ディフューザのハブ面及び前記リング状部材の前記ディフューザ側の面は、外周に行くに従い前記電動機側へと向かう曲面を形成し、
前記リング状部材の前記ディフューザ側に設けた曲面の曲率は、前記ディフューザのハブ面に設けた曲面の曲率よりも小さくし、
前記ディフューザベーンの翼高さは、前記ディフューザ中央側より、前記ディフューザ外周側において長いことを特徴とする電気掃除機用電動送風機。
前記ディフューザは、前記ファンケーシングとの間に、前記ディフューザベーンから前記リターンベーンへの流路となる隙間を有し、かつ、ディフューザベーンの外周端から隣り合うディフューザベーンの外周側の面に至る切り欠き部を具備していることを特徴とする請求項1に記載の電掃除機用電動送風機。
前記ディフューザのハブ面において、前記ディフューザベーンの最外周の位置が、隣接する前記ディフューザベーンの外周面と、前記切り欠き部とが交差する位置よりも前記電動機側に位置することを特徴とする請求項2に記載の電気掃除機用電動送風機。
隣接する前記ディフューザベーン間に凹部を備え、前記凹部は、上流側の端部を、隣接する前記ディフューザベーンが形成する翼間流路両側のディフューザベーンの重なり部の半分より下流側に持ち、かつ、前記凹部の幅は後方に行くに従って広くなると共に、深さは後方に行くに従って深くなることを特徴とする請求項3に記載の電気掃除機用電動送風機。
【背景技術】
【0002】
従来、電気掃除機に使用される電動送風機は、羽根車(インペラ)と、羽根車を回転軸に固定したモータ(電動機)と、羽根車の外周に設けたディフューザベーン(静翼)及び、背面にリターンベーンを備えるディフューザと、羽根車とディフューザとを収容するファンケーシングとを有する構成になっている。ディフューザは、樹脂材によって構成されている。また、ファンケーシングは、金属材によって構成されている。
【0003】
係る構成において、電動送風機は、吸気口がファンケーシングに設けられており、羽根車が回転することにより、吸気口から外部の空気を内部に吸い込む。
【0004】
インペラから、ディフューザに達した流れは、ディフューザベーン間を流れる際、その一部が動圧から静圧へ変換される。ディフューザの外周に達した流れは、ファンケーシングとディフューザの間の曲がり流路を軸方向へ移動し、ディフューザ背面に設けられたリターン流路により電動機へ導かれ、電動機を冷却したのち、排気口から外部に排出される。ここで、ディフューザから曲がり流路へ流れが入る際、その向きが円周方向から、軸方向へ変更されるため損失が発生し、効率の低下が起こっている。
【0005】
そこで、特許文献1に記載の電動送風機では、ディフューザの上部(シュラウド面)に、断面が外周に行くにしたがい、電動機側へと向かう曲面となるリング状部材を備えることで、ディフューザベーンの外周に達した流れに、軸方向の成分を追加し、曲がり流路での損失を少なくし、リターン流路へ向かうようにすることで、電動送風機の効率を向上させている。
【0006】
特許文献2に記載の電動送風機においては、ディフューザの流路下部(ハブ面)も断面が外周に行くにしたがい、電動機側へと向かう曲面となるようにし、曲がり流路での損失を更に減らす形状となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、シュラウド面のみ曲面になっており、ハブ面が直線であるため、流路の高さが入口部よりも出口部で小さくなってしまう。そのため、流路の入口部の断面積と出口部の断面積の比に比例する流路の拡大率が小さくなり、動圧から静圧へのエネルギーの変換を十分に行うことが出来なくなる恐れがある。これにより効率へ悪影響を及ぼす恐れが生じる。
【0009】
また、特許文献2においては、ディフューザの外周に、軸方向への成分を追加した風の流れをリターン流路へ通すための流路を設ける必要がある。そのためシュラウド面よりハブ面の直径を小さく設定している。その結果、ディフューザベーンが形成する翼間流路の重なり長さが短くなっている。これにより、流路の面積変化率が大きくなり動圧から静圧へのエネルギーの変換がスムーズにいかず、効率向上への悪影響を及ぼす恐れがある。さらに曲面形状を設けるため、肉厚が変化していることより、気密面にヒケ等が発生し、効率が悪化する可能性がある。
【0010】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、動圧から静圧へのエネルギー変換をスムーズに行うと共に、ディフューザの翼間流路から出た流れを効率良くリターン流路へ流すことで効率の良い電気掃除機用電動送風機と、この電気掃除機用電動送風機を備えた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係る電動送風機は、羽根車を回転駆動する電動機と、前記羽根車の外周側に配置されたディフューザベーンと背面に配置されたリターンベーンとからなる略円形のディフューザと、前記羽根車及び前記ディフューザを覆うファンケーシングと、前記ディフューザと前記ファンケーシングとの間に配置された略円形のリング状部材と、を有し、前記リング状部材は、一方の面が前記ディフューザの
ディフューザベーンに固定されていると共に、他方の面が前記ファンケーシングの内面と当接している電気掃除機用電動送風機において、前記ディフューザと前記リング状部材の直径は略同一であり、前記ディフューザのハブ面及び前記リング状部材の前記ディフューザ側の面は、外周に行くに従い前記電動機側へと向かう曲面を形成し、前記リング状部材の前記ディフューザ側に設けた曲面の曲率は、前記ディフューザのハブ面に設けた曲面の曲率よりも
小さくし、前記ディフューザベーンの翼高さは、前記ディフューザ中央側より、前記ディフューザ外周側において長いことを特徴とする。
【0012】
更に、前記ディフューザは、前記ファンケーシングとの間に、前記ディフューザベーンから前記リターンベーンへの流路となる隙間を有し、かつ、ディフューザベーンの外周端から隣り合うディフューザベーンの外周側の面に至る切り欠き部を具備していることを特徴とする。
【0013】
前記ディフューザのハブ面において、前記ディフューザベーンの最外周の位置が、隣接する前記ディフューザベーンの外周面と、前記切り欠き部とが交差する位置よりも前記電動機側に位置することを特徴とする。
【0014】
更に、隣接する前記ディフューザベーン間に凹部を備え、前記凹部は、上流側の端部を、隣接する前記ディフューザベーンが形成する翼間流路両側のディフューザベーンの重なり部の半分より下流側に持ち、かつ、前記凹部の幅は後方に行くに従って広くなると共に、深さは後方に行くに従って深くなることを特徴とする。
【0015】
また、羽根車を回転駆動する電動機と、前記羽根車の外周側に配置されたディフューザベーン及び、背面に配置されたリターンベーンからなるディフューザと、前記羽根車及び前記ディフューザを覆うファンケーシングとを有し、前記ファンケーシングは、ディフューザに押し当てられ、流路を形成する電気掃除機用電動送風機において、前記ディフューザのハブ面と、前記ファンケーシングの前記ディフューザに押し当てられる面と、は外周に行くに従い電動機側へと向かう曲面を形成し、前記ファンケーシングに設けた曲面の曲率は、前記ディフューザのハブ面に設けた曲面よりも小さい曲率とし、かつ、前記ディフューザベーンの翼高さ
が前記ディフューザ中央側
から外周側に
向かうに従い長くなるよう設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、翼間流路の拡大を流路上下方向でも可能することで、ディフューザベーンが形成する翼間流路の拡大を短い重なり部の長さ最適化することを可能とした。これにより摩擦損失および流れを減速する際の損失を低減することができ、効率良く動圧から静圧へのエネルギーの変換が可能となる。
【0017】
更に、ディフューザのハブ面及び、リング状部材のディフューザ側の面は外周に行くに従い電動機側へと向かう曲面形状とした。これにより、翼間流路から出る流れに軸方向の成分を加えられるため、曲がり流路での損失を減らすことが可能となり、リターンベーンが構成するリターン流路へ効率良く流れを向かわせることが出来る。
【0018】
更に、ディフューザベーンの翼高さをディフューザ中央側より、外周側において長く設定した。これにより、流路の拡大を高さ方向でもできることから、拡大率を大きく取ることが可能となり、効率良く動圧から静圧へのエネルギーの変換が出来る。
【0019】
更に、ディフューザに切り欠部を設け、ディフューザベーンから曲がり流路へ向かう軸方向の流路を構成した。これにより、曲がり流路における損失が低減し翼間流路からリターン流路へ向かう流れの効率を向上させることが出来る。
【0020】
更に、ディフューザベーンの出口の位置が、隣接するディフューザベーンの外周側の面と、切り欠き部とが交差する位置よりも電動機側にすることで、曲がり流路からリターン流路へ向かう、外周から軸中心へ向かう流路を構成した。これにより、曲がり流路による損失が低減し、ディフューザベーンからリターン流路へ向かう流れの効率を向上させることが出来る。
【0021】
更にディフューザベーン間に凹部を設け、流れを凹部に添わせることで、ディフューザベーンを抜けた流れにエアガイドの方向に向かう成分が増えることで、曲がり流路での損失を減らし効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、各図を参照しながら、本発明の実施形態に係る電気掃除機1及び電動送風機7の詳細を説明する。なお、本発明に係る電気掃除機1は、電動送風機7を有するものであれば、いわゆるサイクロン式電気掃除機であっても、又は、いわゆる紙パック式電気掃除機であっても構わない。また、キャニスター型、スティック型のどちらであっても構わない。
【0024】
また、電動機21においても、カーボンブラシを用いた整流子モータ、ブラシを用いないブラシレスモータのどちらでも構わない。
【0025】
以下、実施形態の一例として、キャニスター型でサイクロン式電気掃除機の電気掃除機1を用いて説明する。
≪電気掃除機の構成≫
以下、
図1及び
図2を参照して、実施形態に係る電気掃除機1の構成につき説明する。
【0026】
図1は、電気掃除機1の構成を示す斜視図である。
図2は、電気掃除機1の備える電動送風機7の配置構成を示す概略図である。
【0027】
電気掃除機1は、電動送風機7(
図2参照)による送風を利用した吸引力で塵埃等を吸引する装置である。
【0028】
図1に示すように、電気掃除機1は、掃除機本体2と、掃除機本体2の前部に一端が接続されるホース3と、ホース3の他端が一端に接続される手元操作スイッチ等が設けられた手元操作管4と、手元操作管4の他端が一端に接続される延長管5と、延長管5の他端が接続される吸込具6と、を備えて構成されている。吸込具6から吸引した塵埃と空気は、電動送風機7(
図2参照)による吸引によって、延長管5と手元操作管4とホース3とを通って掃除機本体2内へと流れて、塵埃は掃除機本体2内に設けられた集塵部11(
図2参照)内に収集され、空気は電動送風機7を通り、掃除機本体2の外部へと排気される。
【0029】
図2に示すように、掃除機本体2は、内部に、前記ホース3内を通過した塵埃を捕集する集塵部11と、吸引力を発生させる電動送風機7等を備える電動送風機室12と、を有している。掃除機本体2は、清掃作業を行う横置き状態において、前側に吸込口20及び集塵部11が配置され、後側に電動送風機室12が配置されている。
≪電動送風機の構成≫
以下、
図3、
図4及び
図5(a)を参照して、電動送風機7の構成につき説明する。
図3は、電動送風機7の構成を示す斜視図である。
図4は、電動送風機7の内部構成を示す縦断面図である。
図5(a)は、
図4のP部拡大図である。
【0030】
電動送風機7は、塵挨を吸引する吸引力を発生させるための電動吸引装置である。電動送風機7では、前記吸込具6から延長管5、手元操作管4,ホース3、集塵部11を介して吸引した空気が、
図4に示すように、電動送風機7に設けられた送風機入口(吸気口)17から電動送風機7内へ流入して昇圧し、電動送風機出口18から掃除機本体2外へ排気される。電動送風機7は、上方側に配置されるファンケーシング43と、下方側に配置されるハウジング33とが一体に設けられた略円筒形状の外郭を有するとともに、この外郭内に主に、電動機21と、送風機22とを備えて構成されている。
【0031】
換言すると、電動送風機7は、電機子巻線を有する回転子23と、界磁巻線を有する固定子24と、整流子25と、回転子23に設けられた回転軸26と、回転軸26を回転自在に軸支する軸受27,28と、電動機21を収納するハウジング33と、回転軸26の上側の軸受28を保持するエンドブラケット35と、エンドブラケット35と回転軸26に固定された羽根車40と、羽根車40の外周側に配置されたディフューザ42と、ディフューザ42のエンドブラケット35側に一体形成されたリターンベーン42fと、羽根車40及びディフューザ42を外側から覆うように設けられたファンケーシング43と、を主に有している。本実施形態では、ディフューザ42は、樹脂材によって構成されている。また、ファンケーシング43は、金属材によって構成されている。
【0032】
なお、ここでは、便利的に、電動送風機7を説明する際、ファンケーシング43を上側に配置し、電動機21を下側に配置した向きにて、説明している。そのため、電動送風機7を構成する各構成要素の方向は、この電動送風機7の上下方向の配置に準じて説明する。なお、電動送風機7は、掃除機本体2に対して、前後方向に配置しても、上下方向に配置してもよい。
<電動機の構成>
以下、電動送風機7を構成する電動機21と送風機22のうち、まず、電動機21について説明する。
【0033】
図4に示すように、電動機21は、回転軸26に固定された送風機22を構成する羽根車40を回転させるための電動モータである。
【0034】
この電動機21は、前記した回転子23、固定子24、整流子25、回転軸26及び軸受27,28と、それぞれ後記するカーボンブラシ29、バネ30、ピグテール31、ハウジング33、ブラシホルダー34及びエンドブラケット35と、を備えて構成されている。
【0035】
回転子23は、電機子あるいはロータともいわれる部材であり、回転軸26の中央部分に固定されている。固定子24は、固定子鉄心に固定子巻線を巻装して構成され、ハウジング33内の回転子23の外側に固定されている。 整流子25は、回転子23の下側に設けられている。回転軸26は、回転子23と整流子25と羽根車40とが取り付けられて、電動機21が回転駆動したときに一体に回転する。軸受27,28は、回転子23の上側の回転軸26の一端部と、整流子25の下側の他端部とをそれぞれ両端軸支する一対の部材から成る。
【0036】
カーボンブラシ29は、整流子25に摺接するように整流子25の外周側に配置されている。バネ30は、カーボンブラシ29の外周側に配置されて、カーボンブラシ29を整流子25側に押圧する付勢手段である。ピグテール31は、カーボンブラシ29と電気的に接続されている。
【0037】
ハウジング33は、電動機21を収納するとともに、軸受27を保持する略カップ形状のケースから成る。このハウジング33は、電動機21の上部に設けられた送風機22側の開口と、ハウジング33の周囲に設けられた電動送風機出口18の開口との2つの開口を有している。送風機22側の開口の周縁部には、エンドブラケット35の外周縁部とファンケーシング43の下側開口部とが連結されている。
【0038】
また、ハウジング33の内部は、その内周壁と固定子24との間に、軸方向の通風路R1が形成されている。さらに、固定子24と回転子23との間にも、軸方向の通風路R2が形成されている。この通風路R2には、送風機入口17から翼間流路(ディフューザ流路)47と曲がり流路43aとリターン流路42gとを通って流れて来た空気の一部が、ハウジング33の後方(流れ方向下流側)へ向かって流れる。
【0039】
ブラシホルダー34は、カーボンブラシ29を保持してハウジング33に固定する部材であり、ハウジング33の外周に設けられている。
【0040】
エンドブラケット35は、軸受28を保持するための金属製部材であり、中央部に、回転軸26が挿通された軸受28を収容する凹形状部と、回転軸26に外嵌されたカバー体44とを有している。
【0041】
エンドブラケット35は、ハウジング33とファンケーシング43とからなる筐体において、この筐体を、電動機21側と送風機22側とに区画するように設置されており、送風機22及び電動機21が接続される。
<送風機の構成>
以下、電動送風機7を構成する電動機21と送風機22のうち、送風機22について説明する。
【0042】
図4に示すように、送風機22は、電動機21の回転軸24に直結されて回転する羽根車40と、この羽根車40の外周側に固定設置され、ディフューザベーン42a仕切板42b及びリターンベーン42fが一体化されたたディフューザ42(静翼)と、ディフューザベーン42a上部に配置されたリング状部材48、このリング状部材48、ディフューザ42及び羽根車40を覆うとともに、送風機入口17を有するファンケーシング43とを備えて構成されている。また、リング状部材48とファンケーシング43の間にはパッキン60が配置されている気密を取っている。
<羽根車の構成>
図4に示すように、羽根車40は、遠心力を利用する略環状形状の遠心型羽根車であり、回転が高速になると、羽根車40の内側の圧力上昇が大きくなり、送風機入口17から空気を吸い込むように構成されている。吸い込まれた空気は、羽根車40を通じて外周側に高速の空気流となってディフューザ42側に吐出される。その羽根車40は、ナット41や、圧入、接着などの方法で回転軸26の上端に取り付けられ、回転軸26と一体に回転する。
<ディフューザの構成>
以下、
図6(a)を参照して、ディフューザ42周りの構成につき説明する。
図6(a)は、ディフューザ42周りの構成を示す斜視図である。
【0043】
ディフューザ42は、空気を吸気口側から排気口側に向けて誘導する構成要素である。ディフューザ42は、羽根車40(
図4参照)の外周側(外周の外側)に配置されている。ディフューザ42は、羽根車40の回転で流動した空気のもつ運動エネルギーを圧力エネルギーに変換する翼間流路47を形成するとともに、このディフューザ42とその周囲に配置されたファンケーシング43(
図4参照)との間に隙間を設けることでその空気を電動機21側に送る流路(曲がり流路43a及びリターン流路42g)を形成する。
【0044】
図5(a)に示すように、ディフューザ42は、平面の略円環状の仕切板42bと、仕切板42bの外周部の上側に形成され、溶着リブ42cを有するディフューザベーン(静翼)42aと、仕切板42bから電動機21側に突出されたリターンベーン42fとが、一体形成されている。なお、ディフューザ42は、
図6に示すように、リング状部材48がディフューザベーン42aの上端部42dに固定配置される。ディフューザ42は、ディフューザベーン42aと仕切板42bとリターンベーン42fとが一体に樹脂成形したり、超音波溶着したりして一部品で形成されているため、部品点数、組付工数及びコストを削減することができる。
<リング状部材の構成>
リング状部材48は、リング状に形成され、リング状部材48は、ファンケーシング43の中心部(電動機21の回転軸26)を中心にして、ディフューザ42とファンケーシング43との間に配置される部材である。リング状部材48は、ディフューザ42に設けられた各ディフューザベーン42a(
図5(a)参照)によって構成されるディフューザベーン42aの集合体の構成を想定した場合に、ディフューザベーン42aの集合体の回転軸26(
図4参照)を中心とする内周径から外周径までを全域に亘ってカバーするように、形成されている。本実施形態では、リング状部材48は、ディフューザ42と同様に、樹脂材によって構成されている。
<<実施例の詳細>>
上記のような構成の電動送風機7を用いた電気掃除機1についての実施例の詳細について説明する。
【0045】
図5(a)に示すようにディフューザ42の仕切板42bへ、外周側に行くに従い徐々に下側(電動機21側)へ曲がる曲率の曲面を設けている。これにより翼間流路47の底面は入口部47aから出口部47bへ向かうに従い、電動機21側へ傾く形状となっている。リング状部材48のディフューザ42側においても仕切板42と同じ方向へ曲がる曲率の曲面を設けている。
【0046】
ディフューザベーン42a間の距離を、翼間流路47の入口部47aより、出口部47bにおいて広く取ると共に、リング状部材48の下側(ディフューザ側)に、仕切板42bに設けた曲面の曲率より
小さい曲率の曲面を設けることで、流路47の入口部47aよりも出口部47bの形状を高さ方向、幅方向共に長くしている。これにより、入口面積よりも出口面積を、入口部47aと出口部47bの流路形状(縦横比)を大きく変えずに、大きく取ることを可能としている。
【0047】
ここで、ディフューザ42およびリング状部材48は樹脂の成形品とし、同一の素材からできている。また、リング状部材48は上側も曲面の形状なっており、その曲率は下側の曲面をオフセットしたものとなっており、均一の肉厚となっているため、ヒケ等の発生を抑えられる。
【0048】
ディフューザ42においても曲面は仕切板42b上下(ハブ面、電動機側の面)でオフセットした形状となっている。これにより、ヒケ等の発生を抑えられ、肉厚に影響されず曲面形状を作ることが可能となる。
【0049】
また、ディフューザベーン42aの先端には三角形状の溶着リブ42cが設けられており、この溶着リブ42cを用いて超音波溶着にてディフューザ42とリング状部材48を固定している。
【0050】
図7(a)は送風機22を電動送風機7の送風機入口17からみた図を示している。なおファンケーシング43及び、リング状部材48は部分断面図としている。
【0051】
ディフューザベーン42aはリターンガイドベーンと共に仕切板42bに一体に成形されている。仕切板42bの外周形状はディフューザ42の隣り合うベーン42a間で形成される翼間流路47の終端近傍42jから後方を、ディフューザ42の最外径をつなぐ仮想線とディフューザベーン42aの外側形状に沿って切り欠いた、切り欠き部61を形成している。
【0052】
また、ディフューザ42の隣接する前記ディフューザベーン42a間(翼間流露47底面)に凹部65を設けている。この凹部65はディフューザ42の全てのディフューザベーン42a間に設けている。この凹部65の上流側の端部は、隣接する前記ディフューザベーン42aが形成する翼間流路両側のディフューザベーン42aの重なり部64の半分より下流側に持ち、かつ、前記凹部65の幅は後方に行くに従って広くなると共に、深さは後方に行くに従って深くなっている。
【0053】
図8に
図7(a)のQ部拡大図を示す。
【0054】
図8を用いて重なり部64における流路の部分拡大角について説明を行う。隣り合うディフューザベーン42aとで形成される翼間流路47を考える。翼間流路47の任意の位置のディフューザベーン42aに垂線を引き、この線の長さをW1、W2とする。このW1、W2はそれぞれの位置での翼間流路47の幅を刺している。この線間の長さをLとすると部位分拡大角θは式1となる。
θ=2・atan((W2-W1)/(2・L)・・・・・・(式1)
ディフューザ42では一般的にこの拡大角θは入口部47aでは小さく、順に下流に行くにしたがって大きくなるように形成される。この拡大角θが大きいと、短い流路で減速を大きく取れるので、摩擦損失を小さくできるが、減速の割合が大きくなるため、減速する際の損失が大きくなる。
【0055】
本実施例においては、ディフューザ42の仕切り板42bに下側へ曲がる曲率の曲面を設けるとともに、リング状部材48にそれよりも
小さい曲率の曲面を設けることで、上下方向でも拡大できることから、拡大角θを小さいまま、短い流路で減速を大きくとることが可能となる。その結果、摩擦損失および、減速する際の損失共に小さくすることが可能となる。
【0056】
図6(b)に
図6(a)(ディフューザ42周りの構成を示す斜視図)の従来の形状を示す。
【0057】
リターン流路42gの曲がり流路47からの入口形状について説明する。ディフューザ42を横方向からみた際に翼間流路47の出口の位置が、隣接するディフューザベーン42aの外周側の面と、切り欠き部61とが交差する位置よりも電動機21側に位置するように設けている。これにより、リターン流路42gに曲がり流路47からの入口となる空間Aが形成される。
<空気の流れ>
本実施例の効果を従来例との比較を行いながら以下に示す。
【0058】
図5(b)に
図5(a)(
図4のP部拡大図)の従来の形状を示す。
【0059】
また、
図7(b)に
図7(a)(送風機22を電動送風機7の送風機入口17からみた図)を示す。
【0060】
更に、
図9(a)(b)に
図7(a)(b)それぞれのR視図を示す。
【0061】
実施例による流路は
図5(a)に示すように、電動機21側へ向かう傾きがついた流路となっている。これにより、羽根車40からディフューザ42へ排出された空気流はディフューザベーン42aによる翼間流路47を流れる間に、電動機21側へ向かう成分が付加され、更に翼間流路47底面に設けられた、凹部によりその成分が更に大きくなる(
図9(a))。これにより、翼間流路47から曲がり流路43aへ空気流が流れる際の損失が少なくなる。
【0062】
一方、従来形態においては、
図5(b)に示すように流れの向きが円周方向のみとなっており、電動機21側へ向う成分が発生しない(
図9(b))。そのため、曲がり流路43aへは、送風機22内の圧力差のみで向かうため損失が大きくなる。
【0063】
また、翼間流路47内の流れにおいては、先に述べたように本実施例による流路は、ディフューザ42の仕切り板42b及び、リング状部材48における上下方向での流路の拡大を行うことで、(式1)における拡大角θを小さく保ったまま短い流路で減速を行い、動圧から静圧へのエネルギーの変換を効率的に行うことができる。
【0064】
次に流れが、翼間流路47を抜け曲がり流路43aへ入る際、本実施例によると
図7(a)に示す切り欠き部61を通ることで、スムーズに曲がり流路43aへと向かうことが出来る。また、曲がり流路43aを抜けた流れは、リターン流路42g入口である空間Aよりリターン流路へと流れ込む。
【0065】
一方、従来形態においては、流れの向きが電動機21側へ向いておらず、更に、曲がり流路43aへと向かう切り欠き部及び、リターン流路42g入口となる空間Aもないため、ファンケーシング43及びディフューザ42の間を回転する流れとなり、リターン流路へ達するまでの損失が大きくなる。
【0066】
次に、
図4に示すように、リターン流路43aを抜けた流れは、ハウジング33内の流路R1、R2を通り、回転子23、固定子24、整流子25、回転軸26、カーボンブラシ29等を冷やした後、電動送風機出口18より排気される。
<変形例>
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0067】
例えば、リング状部材48を廃止し、ファンケーシング43に外周に行くに従い、電動機側へ向かう曲面形状を設け、ディフューザベーン42a上部とファンケーシング43を押し当てることで、翼間流路47を設けても良い。
【0068】
以上の通り、本実施形態に係る電動送風機7によれば、ディフューザ42及び、その周囲の流路での損失を低減することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る電気掃除機1によれば、流路での損失を低減した、電動送風機7を備えることより出力を向上させることが出来、高効率となる。
【0070】
本発明は、前記した実施形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。