特許第6382013号(P6382013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382013
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】組成物、架橋体および用途
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/00 20060101AFI20180820BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20180820BHJP
   C08L 23/18 20060101ALI20180820BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20180820BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20180820BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B61D17/00 Z
   C08L23/08
   C08L23/18
   C08L23/26
   C08K3/00
   C08K3/22
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-154695(P2014-154695)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-30810(P2016-30810A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】菊地 義治
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】為沢 元
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/108329(WO,A1)
【文献】 特開2005−133036(JP,A)
【文献】 特開2005−268036(JP,A)
【文献】 特開2006−176659(JP,A)
【文献】 特開2014−101446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
C08L 23/00−23/36
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記架橋体または下記架橋体から形成される層を有する積層体から得られる鉄道車両用部品であり、
前記架橋体が、下記組成物を架橋して得られる架橋体であり、
前記組成物が、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)および、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を極性基を含有する化合物で変性することにより得られる変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)から選択される少なくとも1種のエチレン系共重合体(B)と、極性基を有する無機フィラー(C)(但し極性基を有する無機フィラー(C)としては、極性基を有する炭素系無機フィラーを除く)とを含み、
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との質量比[(A)/(B)]が95/5〜50/50であり、
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との合計量100質量部に対し、前記フィラー(C)を80〜200質量部含む組成物である鉄道車両用部品
【請求項2】
前記組成物が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を実質的に含まない請求項1記載の鉄道車両用部品
【請求項3】
前記エチレン系共重合体(B)の、
(i)密度が0.840〜0.920g/cm3であり、
(ii)190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10minである請求項1または2に記載の鉄道車両用部品
【請求項4】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)において、炭素数3〜20のα−オレフィンとして1−ブテンを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉄道車両用部品
【請求項5】
前記エチレン系共重合体(B)が、前記変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉄道車両用部品
【請求項6】
前記フィラー(C)が金属水酸化物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鉄道車両用部品
【請求項7】
前記フィラー(C)が、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種の金属水酸化物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の鉄道車両用部品
【請求項8】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の、
(i)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのモル比(エチレン/α−オレフィン)が50/50〜90/10であり、
(ii)ヨウ素価が1〜50g/100gであり、
(iii)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜7.0dl/gである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の鉄道車両用部品
【請求項9】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)において、
非共役ポリエンとして5−エチリデン−2−ノルボルネンを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の鉄道車両用部品
【請求項10】
前記組成物が、さらに架橋剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の鉄道車両用部品
【請求項11】
鉄道車両用の幌である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の鉄道車両用部品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、架橋体および用途に関し、詳しくは組成物、該組成物を架橋して得られる架橋体および、架橋体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴムに代表されるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは強度特性、耐熱老化性、耐候性などに優れているため、自動車部品、工業用ゴム部品、電気絶縁材、土木建材用品などの用途に広く用いられている。
【0003】
また、難燃性を付与する場合は一般的にノンハロゲン難燃ゴムとしてエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムに水酸化アルミニウム等の難燃性フィラーを添加する処方が知られている。
【0004】
例えば、エチレンプロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン、水酸化アルミニウムおよび架橋剤を含有する耐摩耗性難燃性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、水酸化アルミニウムがEPDMに配合された別の例としては、EPDMと水酸化アルミニウムと、デカブロモジフェニルエーテルとポリリン酸アンモニウムを含むゴム組成物や、EPDMと水酸化アルミニウムと、塩素化パラフィンと三酸化アンチモンを含むゴム組成物が、耐摩耗性と耐難燃性を両立したゴム組成物として知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1に開示された耐摩耗性難燃性樹脂組成物や、特許文献2に開示されたゴム組成物では、難燃性、耐摩耗性に優れることが開示されているが、機械物性の観点から未だ改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−82277号公報
【特許文献2】特開2006−176659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムはそれ自体には難燃性がないことから、難燃性を付与しようとすると難燃剤を多量に添加する必要がある。しかしながら、一般的に難燃剤は補強性を有しないため、添加量を増やすほど硬度等の機械物性は低下し、架橋密度も上がらないといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムと、特定の(変性)エチレン・α−オレフィン共重合体と、極性基を有する無機フィラーとを、特定量含む組成物を架橋して得られる架橋体は硬度等の機械物性に優れ、架橋密度も高くなることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の組成物は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)および、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を極性基を含有する化合物で変性することにより得られる変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)から選択される少なくとも1種のエチレン系共重合体(B)と、極性基を有する無機フィラー(C)(但し極性基を有する無機フィラー(C)としては、極性基を有する炭素系無機フィラーを除く)とを含み、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との質量比[(A)/(B)]が95/5〜50/50であり、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との合計量100質量部に対し、前記フィラー(C)を80〜200質量部含む。
【0011】
本発明の組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を実質的に含まないことが好ましい。
前記エチレン系共重合体(B)の、(i)密度が0.840〜0.920g/cm3であり、(ii)190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10minであることが好ましい。
【0012】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)において、炭素数3〜20のα−オレフィンとして1−ブテンを含むことが好ましい。
前記エチレン系共重合体(B)が、前記変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)であることが好ましい。
【0013】
前記フィラー(C)が金属水酸化物を含むことが好ましく、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種の金属水酸化物を含むことがより好ましい。
【0014】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の、(i)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのモル比(エチレン/α−オレフィン)が50/50〜90/10であり、(ii)ヨウ素価が1〜50g/100gであり、(iii)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜7.0dl/gであることが好ましい。
【0015】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)において、非共役ポリエンとして5−エチリデン−2−ノルボルネンを含むことが好ましい。
本発明の組成物は、さらに架橋剤を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の架橋体は、前記組成物を架橋して得られる。
本発明の積層体は、前記架橋体から形成される層を有する。
本発明の鉄道車両用部品は、前記架橋体または前記積層体から得られる。
本発明の鉄道車両用の幌は、前記架橋体または前記積層体から得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の組成物を架橋することにより得られる架橋体は、架橋密度が高く、硬度等の機械物性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明について具体的に説明する。
本発明の組成物は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)および、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を極性基を含有する化合物で変性することにより得られる変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)から選択される少なくとも1種のエチレン系共重合体(B)と、極性基を有する無機フィラー(C)(但し極性基を有する無機フィラー(C)としては、極性基を有する炭素系無機フィラーを除く)とを含み、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との質量比[(A)/(B)]が95/5〜50/50であり、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との合計量100質量部に対し、前記フィラー(C)を80〜200質量部含む。
【0019】
本発明の組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、エチレン系共重合体(B)と、極性基を有する無機フィラー(C)とを含む。本発明の組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)だけでなく、エチレン系共重合体(B)を含むことにより、極性基を有する無機フィラー(C)を含むにもかかわらず、強度等の機械物性に優れる架橋体を得ることができる。
【0020】
本発明の組成物を架橋して得られる架橋体が強度等の機械物性に優れる理由を、本発明者は、該架橋体の架橋密度が高いためであると推定した。なお、本発明の組成物を架橋して得られる架橋体の架橋密度が高い理由は明らかではないが、本発明者はエチレン系共重合体(B)によって混練時の各成分の分散性に良好な影響を与え、フィラーとして、極性基を有する無機フィラー(C)を用いることにより、該極性基が、水素結合等の物理的相互作用による、何らかのネットワーク状構造の形成に寄与しているためであると推定した。
【0021】
(エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A))
本発明の組成物は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)を含む。なお、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)を、単に共重合体ゴム(A)とも記す。
【0022】
前記共重合体ゴム(A)とは、エチレン由来の構成単位、炭素数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位、および非共役ポリエン由来の構成単位を有する共重合体ゴムである。
本発明の組成物は、共重合体ゴム(A)を単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0023】
前記炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセンおよび12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。
【0024】
前記炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
【0025】
前記炭素数3〜20のα−オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
非共役ポリエンとしては、具体的には、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、および7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−イソブテニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエンおよびノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエン、4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン等のトリエンなどが挙げられる。なかでも、5−エチリデン−2−ノルボルネンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンが好ましい。
【0026】
これらの非共役ポリエンは、単独で、または2種類以上組み合わせて用いられる。
前記共重合体ゴム(A)としては、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネンランダム共重合体などを例示することができる。
【0027】
前記共重合体ゴム(A)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのモル比(エチレン/α−オレフィン)、言い換えるとエチレン由来の構成単位と、炭素数3〜20のαオレフィン由来の構成単位とのモル比が、通常は50/50〜90/10であり、好ましくは50/50〜85/15である。
【0028】
また、非共役ポリエン由来の構成単位を、通常は1.0〜25.0wt%、好ましくは3.0〜20wt%、より好ましくは4.0〜15wt%の量で含む。
前記共重合体ゴム(A)のヨウ素価は、好ましくは1〜50g/100gであり、より好ましくは3.0〜40.0g/100gであり、さらに好ましくは5.0〜35.0g/100gである。ヨウ素価が前記範囲内にあると、架橋密度が大きい架橋体を得ることができるため、架橋体の硬度を高めることができるため好ましい。
【0029】
ヨウ素価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
前記共重合体ゴム(A)は、通常、135℃、デカリン中で測定される極限粘度〔η〕が好ましくは0.5〜7.0dl/gであり、より好ましくは1.0〜5.0dl/g、さらに好ましくは1.0〜4.0dl/gである。極限粘度が前記範囲内にあると物性と加工性のバランスが良好であるため好ましい。
【0030】
極限粘度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
前記共重合体ゴム(A)としては、市販されているものを用いてもよく、合成を行い得られた重合体を用いてもよい。
【0031】
前記共重合体ゴム(A)の合成方法としては、特に制限されないが、前記物性を満たす重合体を容易に得ることができる等の点から、メタロセン触媒を用いて合成する方法が好ましい。
【0032】
以下にメタロセン触媒を用いて前記共重合体ゴム(A)を合成する方法の一例を示す。
前記共重合体ゴム(A)は、下記メタロセン触媒を用いて、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、および非共役ポリエンを重合させることによって得ることができる。
【0033】
前記メタロセン触媒は、例えば下記式(α)または(β)で表わされる構造を有し、好ましくは下記一般式(i)で表わされる構造を有し、より好ましくは下記式(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)で表わされる構造を有する。これらの中でも、特に好ましくは(iii)で表わされる構造を有するメタロセン系触媒である。
【0034】
【化1】
(式(α)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、R1およびR2の少なくとも1つは水素原子ではない。
【0035】
3〜R6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。
前記R1〜R6は、互いに結合して環を形成してもよい。
Mはチタンである。
【0036】
Yは、−O−、−S−、−NR*−、−PR*−である。
*は、SiR*2、CR*2、SiR*2SiR*2、CR*2CR*2、CR*=CR*、CR*2SiR*2またはGeR*2である。
【0037】
*は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化アリール基であり、R*が水素でない場合には、R*は20個までの水素原子以外の原子を有する。Zが有する2つのR*(R*が水素原子でない場合)が環を形成してもよく、Z*が有するR*とYが有するR*が環を形成してもよい。
【0038】
pは0、1または2である。
qはゼロまたは1である。
ただし、pが2である場合、qはゼロであり、Mは+4の酸化状態であり、Xはそれぞれ独立に、メチルまたはベンジルである。
【0039】
pが1である場合、qはゼロであり、Mは+3の酸化状態であり、Xは2−(N、N−ジメチル)アミノベンジルであるか、Mは+4の酸化状態であり、Xは1,3−ブタジエニルである。
【0040】
pが0である場合、qは1であり、Mは+2の形式酸化状態であり、X'は1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、2,4−ヘキサジエン、または1,3−ペンタジエンである。)
【0041】
【化2】
(式(β)中、Rは、それぞれ独立に、ヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、シリル、ゲルミルおよびこれらの組み合わせから選択される基または水素原子であり、該基が含有する水素原子以外の原子の数は20個以下である。
【0042】
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムである。
Yは−O−、−S−、−NR*−または−PR*−である。
*は、水素原子、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アリール基であり、R*は水素でない場合には、R*は20個までの水素以外の原子を含有する。
【0043】
Zは、ホウ素または14族元素を含有し、かつ、窒素、リン、硫黄または酸素を含有する二価の基であり、該二価の基が有する水素原子以外の原子の数は60個以下である。
Xは、Xが複数存在する場合にはそれぞれ独立に、原子数が60個以下のアニオン性配位子(但し、非局在化したπ結合を有する環状の配位子を除く)である。
【0044】
X'は、原子数が20個以下の中性の連結用化合物である。
pは、0、1または2である。
qは、0または1である。
【0045】
ただし、pが2でqが0の場合、Mは+4の酸化状態にあり、Xはハライド、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、ジ(ヒドロカルビル)アミド、ジ(ヒドロカルビル)ホスフィド、ヒドロカルビルスルフィド、シリル基、それらのハロ置換誘導体、ジ(ヒドロカルビル)アミノ置換誘導体、ヒドロカルビルオキシ置換誘導体およびジ(ヒドロカルビル)ホスフィノ置換誘導体から選択されるアニオン性配位子であり、前記Xの水素原子以外の原子の数は20個以下である。
【0046】
またpが1でqが0の場合、Mは+3の酸化状態にあり、Xはアリル、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニルおよび2−(N,N−ジメチル)アミノベンジルから選択されるアニオン性安定化配位子であるか、あるいはMは+4の酸化状態にあってXが共役ジエンの二価誘導体であり、MとXが一緒になってメタロシクロペンテン基を形成する。
【0047】
またpが0でqが1の場合、Mは+2の酸化状態にあり、X'は場合により1つ以上のヒドロカルビル基で置換されている中性の共役もしくは非共役ジエンであり、前記X'が炭素原子を40個以下の数で有しており、かつMとπ錯体を形成する。)
【0048】
【化3】
式(i)中、R' は、水素原子、ヒドロカルビル基、ジ(ヒドロカルビルアミノ)基またはヒドロカルビレンアミノ基を表し、それらの基は20までの炭素原子を有する。
【0049】
R''は、炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基または水素原子を表す。
Mは、チタンを表す。
Yは、−O−、−S−、−NR*−、−PR*−、−NR2*または−PR2*(但し、Yが−NR2*または−PR2*である場合、M−Yの結合は配位結合である)を表す。
【0050】
*は、−SiR*2−、−CR*2−、−SiR*2SiR*2−、−CR*2CR*2−、−CR*=CR*−、−CR*2SiR*2−、または−GeR*2−である。
*は、複数存在する場合にはそれぞれ独立に、水素原子または、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基およびハロゲン化アリール基からなる群から選択される少なくとも1種の基を表し、前記R*は原子番号2〜20までの原子を含んでいてもよく、Z*が有する2つのR*(R*が水素原子でない場合)は、任意に環を形成してもよく、Z*が有するR*とYが有するR*とが、任意に環を形成してもよい。
【0051】
Xは、環状の非局在化したπ−結合性リガンド基であるリガンドの類を除いた原子数60までの原子を有する、一価のアニオン性リガンド基を表す。
X'は、原子数20までの原子を有する中性の連結性基を表す。
【0052】
X''は、原子数60までの原子を有する二価のアニオン性リガンド基を表す。
pは、0、1または2を、qは、0または1を、rは、0または1を表す。
ただし、pが2である場合、qおよびrは0であり、Mは+4の酸化状態であり(または、Yが−NR*2または−PR*2を表す場合、Mは+3の酸化状態であり)、Xは、ハライド基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ジ(ヒドロカルビル)アミド基、ジ(ヒドロカルビル)ホスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基およびシリル基、これらの基がハロゲン置換された基、これらの基がジ(ヒドロカルビル)アミノ置換された基、これらの基がヒドロカルビルオキシ置換された基、ならびに、これらの基がジ(ヒドロカルビル)ホスフィノ置換された基から選択されるアニオン性リガンドを表し、かつ30までの水素原子以外の原子を有する。
【0053】
ただし、rが1である場合、pおよびqは0を表し、Mは+4の酸化状態であり、X''は、ヒドロカルバジル基、オキシヒドロカルビル基およびヒドロカルビレンジオキシ基よりなる群から選択されるジアニオン性リガンドを表し、かつ原子数30までの水素原子以外の原子を有する。
【0054】
ただし、pが1である場合、qおよびrは0を表し、Mは+3の酸化状態であり、Xは、アリル、2−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニルおよび2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジルよりなる群から選択される安定化用アニオン性リガンド基を表す。
【0055】
ただし、pおよびrが0である場合、qは1を表し、Mは+2の酸化状態であり、X'は、1以上のヒドロカルビル基で任意に置換された、中性の共役ジエンまたは中性の非共役ジエンを表し、該X'は原子数40までの炭素原子を有し、Mとπ−錯体を形成する。)
上記一般式(i)において、下記(1)〜(4)のいずれかの態様が好ましい。
【0056】
(1)pが2、qおよびrが0を表し、Mは+4の酸化状態であり、Xは、それぞれ独立に、メチル、ベンジルまたはハライドを表す。
(2)pおよびqが0、rが1を表し、Mは+4の酸化状態であり、X''は、Mとメタロシクロペンテン環を形成する1,4−ブタジエニル基を表す。
【0057】
(3)pが1、qおよびrは0を表し、Mは+3の酸化状態であり、Xは2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジルを表す。
(4)pおよびrが0、qは1を表し、Mは+2の酸化状態であり、X'は、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンまたは1,3−ペンタジエンを表す。
【0058】
上記(1)〜(4)のいずれかの態様において、さらにR" が水素原子またはメチル基を表すことがより好ましく、水素原子を表すことが特に好ましい。
【0059】
【化4】
上記式(ii)は、(t−ブチルアミド)ジメチル(η5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)2,4−ヘキサジエンである。
【0060】
【化5】
上記式(iii)は、(t−ブチルアミド)−ジメチル(η5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエン(別名:[N−(1,1−ジメチルエチル)−1,1−ジメチル−1−[(1,2,3,3A,8A−η)−1,5,6,7−テトラヒドロ−2−メチル−S−インダセン−1−yl]シランアミネート(2−)−κN][(1,2,3,4−η)−1,3−ペンタジエン]−チタニウム)である。
【0061】
【化6】
上記式(iv)は、(t−ブチルアミド)−ジメチル(η5−2,3−ジメチルインデニル)シランチタニウム(II)1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンである。
【0062】
【化7】
上記式(v)は、(t−ブチル−アミド)−ジメチル(η5−2,3−ジメチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(IV)ジメチルである。
【0063】
【化8】
上記式(vi)は、(t−ブチルアミド)−ジメチル(η5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シラン−チタニウム(IV)ジメチルである。
【0064】
上記式(iii)で表される構造を有するメタロセン系触媒を用いると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を得るための重合反応において、非共役ポリエンの共重合性が特に優れる。このため式(iii)で表される構造を有するメタロセン系触媒を用いて重合されたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、例えば5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)の有する二重結合を重合体中に効率よく取り込み、長鎖分岐を高い割合で導入することができる。また、得られるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の分子量分布および組成分布が狭く、極めて均一な分子構造を有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を調製することができる。
【0065】
上記式(i)〜(vi)で表される構造を有するメタロセン系触媒は、周知の合成方法を用いて調製することができる。例えば、国際公開第98/49212号パンフレットに開示されている。なお、必要に応じて、還元剤を用いて、より低い酸化状態の錯体(メタロセン系触媒)を製造することもできる。このような方法は、USSN8/241,523に開示されている。
【0066】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を製造する方法は、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
重合反応液を得る工程とは、脂肪族炭化水素を重合溶媒として用いて、上述したメタロセン系触媒、好ましくは上記式(iii)で表される構造を有するメタロセン系触媒の存在下に、エチレン、α−オレフィン、および非共役ポリエンを共重合し、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の濃度が8〜18質量%、好ましくは8.5〜18.0質量%の重合反応液を得る工程である。
【0067】
重合溶媒に対するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の濃度が18質量%を超える場合、重合溶液の粘度が高すぎるため、溶液が均一に攪拌せず、重合反応が困難になる場合がある。
【0068】
重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどが挙げられ、これらのうち、得られるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0069】
このような製造方法として、上記触媒を主触媒とし、共触媒としてホウ素系化合物および/またはトリアルキル化合物等の有機アルミニウム化合物を用い、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素を溶媒として用いた、攪拌機付き反応器による連続法またはバッチ法が挙げられる。
【0070】
ホウ素系化合物としては、例えば、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(sec−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムn−ブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムベンジルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(t−ブチルジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(トリイソプロピルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムペンタフルオロフェノキシトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレートおよびN,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート;ジアルキルアンモニウム塩、例えば、ジ−(イソプロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびジメチル(t−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート;三置換されたホスホニウム塩、例えば、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(o−トリル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびトリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;二置換されたオキソニウム塩、例えば、ジフェニルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ−(o−トリル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびジ(2,6−ジメチルフェニル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;二置換されたスルホニウム塩、例えば、ジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(o−トリル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびビス(2,6−ジメチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0071】
有機アルミニウム化合物としては、トリイソブチルアルミニウムなどが挙げられる。
反応温度は、高温でも触媒が失活しないので100℃まで上げることができる。
重合圧力は、0を超えて8MPa(ゲージ圧)まで、好ましくは0を超えて5MPa(ゲージ圧)までの範囲である。
【0072】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは10分間〜3時間である。
【0073】
さらに、共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
エチレンと上記α−オレフィンとの仕込みのモル比[エチレン/α−オレフィン]は、好ましくは25/75〜95/5、より好ましくは25/75〜90/10である。
【0074】
エチレンと非共役ポリエンとの仕込みのモル比[エチレン/非共役ポリエン]は、好ましくは65/35〜99/1、より好ましくは65/35〜98/2である。
上記触媒を用いて重合することによって、非共役ポリエン等が高い転化率で共重合され、得られる共重合体に適量の長鎖分岐を導入することができるので好ましい。
【0075】
(エチレン系共重合体(B))
本発明の組成物は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)および、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を極性基を含有する化合物で変性することにより得られる変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)から選択される少なくとも1種のエチレン系共重合体(B)を含む。
【0076】
本発明の組成物は、エチレン系共重合体(B)を含むが、エチレン系共重合体(B)としては、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)のみを含んでいてもよく、変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)のみを含んでいてもよい。また、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)および変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)を含んでいてもよい。
【0077】
本発明の組成物は、共重合体ゴム(A)ともにエチレン系共重合体(B)を含むが、該エチレン系共重合体(B)を含むと、エチレン系共重合体(B)を含まない場合と比べて、混練時の溶融粘度が低下し、加工性が向上する傾向があるため好ましい。また、組成物が、エチレン系共重合体(B)を含むことにより、架橋密度が向上する傾向があり、架橋体が硬度等の機械物性に優れるため好ましい。
【0078】
エチレン系共重合体(B)としては、前記変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)であることが、組成物を調製する際の混練時の分散性に優れるため好ましい。エチレン系共重合体(B)が、前記変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)であると、架橋密度が向上する傾向があり、架橋体が硬度等の機械物性に優れる傾向があり好ましい。
【0079】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)とはエチレン由来の構成単位、および炭素数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位を有する共重合体である。また、前記変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)とは、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を、無水マレイン酸等の極性基を含有する化合物で変性することにより得られる共重合体である。
【0080】
本発明の組成物は、エチレン系共重合体(B)を単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
前記炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセンおよび12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。
【0081】
前記炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが好ましく、特に1−ブテンが好ましい。
【0082】
前記炭素数3〜20のα−オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのモル比(エチレン/α−オレフィン)、言い換えるとエチレン由来の構成単位と、炭素数3〜20のαオレフィン由来の構成単位とのモル比が、通常は50/50〜90/10であり、好ましくは50/50〜85/15である。
【0083】
変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)は、前述のようにエチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を、無水マレイン酸等の極性基を含有する化合物で変性することにより得られる。
【0084】
なお、前記極性基とは、ヘテロ原子を少なくとも1個以上有する基のことである。ヘテロ原子としては例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。極性基としては、酸素原子を有することが好ましい。
【0085】
極性基としては例えば、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基(−CO−O−CO−)、ニトリル基、アミド基、水酸基、エーテル基、ニトロ基、アミノ基、カーボネート基、チオエステル基、チオカーボネート基、チオエーテル基、チオニルオキサイド基が挙げられる。
【0086】
なお、チレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を、極性基を含有する化合物で変性する方法としては、特に限定はないが例えば不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸の誘導体を用いて変性する方法、グリシジルメタクリレート等を用いたアクリル変性、ビニルシラン化合物を用いたシラン変性、アクリル酸グリシジル等を用いたエポキシ化、アミン化、ジオール化等が挙げられる。
【0087】
極性基を有する化合物としては例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸およびナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)等が挙げられる。
【0088】
また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、具体的には、上記不飽和カルボン酸の酸ハライド化合物、アミド化合物、イミド化合物、酸無水物およびエステル化合物などを挙げることができる。より具体的には、塩化マレイル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが挙げられる。
【0089】
極性基を有する化合物としては、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸TMまたはこれらの酸無水物が好適である。
前記エチレン系共重合体(B)は、(i)密度が0.840〜0.920g/cm3であることが好ましい。密度は、0.860〜0.910g/cm3であることがより好ましい。なお、該密度はASTM D1505に従って測定することができる。
【0090】
前記エチレン系共重合体(B)は、(ii)190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10minであることが好ましい。MFRは、0.5〜35g/10minであることがより好ましい。なお、該メルトフローレートは、ASTM D1238に従って測定することができる。
【0091】
また、前記エチレン系共重合体(B)は、脆化温度が−60℃以下であることが好ましく、−70℃未満であることがより好ましい。なお、該脆化温度は、ASTM D746に従って測定することができる。
【0092】
前記エチレン系共重合体(B)としては、市販されているものを用いてもよく、合成を行い得られた重合体を用いてもよい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)の合成方法としては、特に限定はないが、例えばバナジウム系触媒、チーグラー触媒、メタロセン触媒等の触媒を用いて、公知の方法により合成することができる。前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を、メタロセン触媒を用いて合成する場合には、例えば上述の共重合体ゴム(A)の合成を行う際に用いるメタロセン化合物として例示した化合物や、特開平09−040586号公報に開示されたメタロセン化合物を用いて合成することができる。
【0093】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)の重合は、触媒の種類によっても異なるが、触媒の存在下で重合温度が通常−20〜200℃、好ましくは0〜150℃、より好ましくは0〜100℃の範囲、圧力が通常0を超えて〜8MPa(ゲージ圧)、好ましくは0を超えて〜5MPa(ゲージ圧)の範囲で行うことが好ましい。
【0094】
重合時間(共重合が連続法で行われる場合には平均滞留時間)は、触媒濃度や重合温度等の条件によって異なるが、通常0.5分〜5時間、好ましくは10分〜3時間である。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)の重合の際には、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0095】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)の合成の際の各原料の使用量としては特に制限されないが、得られる共重合体におけるエチレン由来の構成単位と、炭素数3〜20のαオレフィン由来の構成単位とのモル比が前記範囲になるような量であることが好ましい。具体的には、エチレン100質量部に対して、炭素数3〜20のα−オレフィンは、好ましくは25〜200質量部、より好ましくは30〜150質量部である。
【0096】
触媒の使用量は、エチレンの質量1に対し、好ましくは1.0×10-6〜5.0×10-6である。
前記変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)の合成方法としては、特に限定はないが、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を、公知の方法により極性基を有する化合物で変性することにより合成することができる。
【0097】
変性としては、グラフト変性等が挙げられる。
変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)の合成方法の一例として、グラフト変性により変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)を合成する方法を説明する。
【0098】
前記変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)は、上記のエチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)に、特定量の不飽和カルボン酸またはその誘導体(例えばカルボン酸無水物)をグラフトすることにより得ることができる。
【0099】
前記変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)における不飽和カルボン酸またはその誘導体のグラフト量は、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)100質量%に対して、0.1〜4.0質量%、好ましくは0.3〜4.0質量%、特に好ましくは0.5〜2.5質量%である。
【0100】
変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)は、従来公知の種々の方法、たとえば次のような方法を用いて調製することができる。
(1)溶融させたエチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)に、不飽和カルボン酸またはその誘導体を添加してグラフト共重合させる方法。
【0101】
(2)エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を溶媒に溶解させ、その溶解液に不飽和カルボン酸またはその誘導体を添加してグラフト共重合させる方法。
いずれの方法も、上記不飽和カルボン酸等のグラフトモノマーを効率よくグラフト共重合させるためには、ラジカル開始剤の存在下にグラフト反応を行なうのが好ましい。
【0102】
前記ラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、有機ペルエステル、アゾ化合物などを使用することができる。このようなラジカル開始剤としては、具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルフェニルアセテート、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペル−sec−オクトエート、t−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびt−ブチルペルジエチルアセテート;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどを挙げることができる。
【0103】
これらのうちでは、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0104】
これらのラジカル開始剤は、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)100質量部に対して、通常は0.01〜0.10質量部、好ましくは0.02〜0.08質量部、さらに好ましくは0.02〜0.05質量部の範囲で用いられる。
【0105】
上記のようなラジカル開始剤を使用したグラフト反応、あるいはラジカル開始剤を使用せずに行なうグラフト反応における反応温度は、通常60〜350℃、好ましくは150〜300℃の範囲内に設定される。
【0106】
(極性基を有する無機フィラー(C))
本発明の組成物は、極性基を有する無機フィラー(C)(但し極性基を有する無機フィラー(C)としては、極性基を有する炭素系無機フィラーを除く)を含む。
【0107】
本発明の組成物は、極性基を有する無機フィラー(C)を含むが、極性基を有する炭素系無機フィラーは、極性基を有する無機フィラー(C)には含まれない。なお、極性基を有する炭素系無機フィラーは、本発明の組成物中に極性基を有する無機フィラー(C)としては含まれないが、後述の(A)〜(C)および架橋剤以外の成分として含まれていてもよい。
【0108】
本発明において、極性基を有する炭素系無機フィラーとは、極性基を有し、かつ該フィラー100質量%あたり、80質量%以上が炭素原子で構成される無機フィラーである。極性基を有する炭素系無機フィラーとしては例えばカーボンブラックが挙げられる。なお、カーボンブラックは、フィラー表面にカルボキシル基や水酸基を有し、通常は95質量%以上が炭素原子で構成される。
なお、本発明の組成物においてカーボンブラックは、極性基を有する無機フィラー(C)としては含有されないが、その他の成分、例えば補強剤としてカーボンブラックが含有されていてもよい。
【0109】
本発明の組成物は、共重合体ゴム(A)、エチレン系共重合体(B)とともに極性基を有する無機フィラー(C)を含むが、該共重合体ゴム(A)、エチレン系共重合体(B)を併用することにより、エチレン系共重合体(B)を用いない場合と比べて、混練時の溶融粘度が低下し、加工性が向上する傾向があるため好ましい。また、組成物が、極性基を有する無機フィラー(C)を含有することにより、架橋体が硬度等の機械物性に優れる。架橋体が硬度に優れる理由は明らかではないが、本発明者らは無機フィラー(C)が極性基を有するため、該極性基が水素結合等の物理的相互作用による、何らかのネットワーク状構造の形成に寄与する結果、架橋体が硬度に優れると推測した。
【0110】
なお、前記極性基とは、ヘテロ原子を少なくとも1個以上有する基のことである。ヘテロ原子としては例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。極性基としては、酸素原子を有することが好ましい。
【0111】
極性基としては例えば、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基(−CO−O−CO−)、ニトリル基、アミド基、エーテル基、ニトロ基、アミノ基、カーボネート基、チオエステル基、チオカーボネート基、チオエーテル基、チオニルオキサイド基、水酸基が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
【0112】
極性基を有する無機フィラー(C)としては、金属水酸化物、シリカが挙げられる。
金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが挙げられる。
前記金属水酸化物は、極性基である水酸基を有する無機フィラーであり、シリカは粒子表面に通常水酸基を有している。
【0113】
本発明の組成物は、極性基を有する無機フィラー(C)を単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
極性基を有する無機フィラー(C)としては、金属水酸化物を含むことが好ましく、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種の金属水酸化物を含むことがより好ましい。
【0114】
極性基を有する無機フィラー(C)100質量%あたり、金属水酸化物を80〜100質量%用いることが好ましく、85〜100質量%用いることがより好ましい。
また、極性基を有する無機フィラー(C)としては、金属水酸化物と、シリカとを用いることが好ましい。極性基を有する無機フィラー(C)として、金属水酸化物と、シリカとを用いる場合には、極性基を有する無機フィラー(C)100質量%あたり、金属水酸化物を80〜97質量%用い、シリカを3〜20質量%用いることが好ましく、金属水酸化物を85〜95質量%用い、シリカを5〜15質量%用いることがより好ましい。
本発明の極性基を有する無機フィラー(C)としては、市販されているものを用いてもよく、合成を行い得られたフィラーを用いてもよい。
【0115】
(組成物)
本発明の組成物は、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、エチレン系共重合体(B)と、極性基を有する無機フィラー(C)(但し極性基を有する無機フィラー(C)としては、極性基を有する炭素系無機フィラーを除く)とを含み、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との質量比[(A)/(B)]が95/5〜50/50であり、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との合計量100質量部に対し、前記フィラー(C)を80〜200質量部含む。
【0116】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との質量比[(A)/(B)]は、前述のように95/5〜50/50であるが、95/5〜60/40であることが好ましく、95/5〜70/30であることがより好ましい。
【0117】
本発明の組成物は、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との合計量100質量部に対し、前記フィラー(C)を80〜200質量部含むが、80〜180質量部含むことが好ましく、80〜160質量部含むことがより好ましい。
【0118】
本発明の組成物は、柔軟性およびゴム弾性が悪化する傾向があるため、エチレン−酢酸ビニル共重合体を実質的に含まないことが好ましい。
なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体を実質的に含まないとは、組成物中に前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との合計量100質量部に対し、3質量部以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体が含まれないことを意味し、好ましくは1質量部以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体が含まれず、より好ましくは組成物中にエチレン−酢酸ビニル共重合体が存在しない、すなわち、0質量部である。
【0119】
本発明の組成物を架橋することにより得られる架橋体は、硬度等の機械物性に優れが、該架橋を好適に行うために、本発明の組成物は、さらに架橋剤を含むことが好ましい。
また、本発明の組成物は、前記(A)〜(C)および架橋剤以外の成分を含んでいてもよい。
【0120】
〔架橋剤〕
本発明の組成物には、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、エチレン系共重合体(B)と、極性基を有する無機フィラー(C)(但し極性基を有する無機フィラー(C)としては、極性基を有する炭素系無機フィラーを除く)に加え、架橋剤を添加してよい。架橋の際に使用される架橋剤としては、イオウ、イオウ化合物などの加硫剤や、有機過酸化物が挙げられる。
【0121】
架橋剤の一つとして、加硫の際に使用される加硫剤としては、イオウ、イオウ化合物が挙げられる。イオウとしては、具体的には、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウなどが挙げられる。
【0122】
イオウ化合物としては、具体的には、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物などが挙げられる。また、加硫温度で活性イオウを放出して加硫するイオウ化合物、例えばモルフォリンジスルフィド、アルキルフェノ−ルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなども使用することができる。
【0123】
加硫剤としては、イオウが好ましく用いられる。これら加硫剤は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
加硫剤を用いる場合には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)100質量部に対して、通常0.1〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部の割合で用いられるが、要求される物性に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。また、加硫剤としてイオウ、イオウ化合物を使用するときは、加硫促進剤を併用することが好ましい。
【0124】
加硫促進剤としては、具体的には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾ−ルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾ−ルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(2´,4´−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(4´−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;ジフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン化合物;アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミンまたはアルデヒド−アンモニア系化合物;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリア等のチオユリア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系化合物;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート系化合物;亜鉛華(酸化亜鉛)等の化合物を挙げることができる。
【0125】
加硫促進剤を用いる場合には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の割合で用いられるが、要求される物性に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0126】
架橋剤の一つである有機過酸化物としては、通常ゴムの過酸化物加硫に使用されるものであればよい。具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルヒドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシン)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−モノ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。中でも、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましく用いられる。これらの有機過酸化物は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0127】
有機過酸化物を用いる場合には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)100gに対して、通常0.0003〜0.08モル、好ましくは0.001〜0.05モルの割合で使用されるが、要求される物性に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0128】
架橋剤として有機過酸化物を使用するときは、架橋助剤を併用することが好ましい。架橋助剤としては、具体的には、イオウ;p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物;ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物;その他マレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。このような架橋助剤は、使用する有機過酸化物1モルに対して、0.25〜2モル、好ましくは、0.4〜1.2モルの範囲で用いられる。
【0129】
本発明の組成物は、前述のように前記(A)〜(C)および架橋剤以外の成分を含んでいてもよい。
前記(A)〜(C)および架橋剤以外の成分としては、例えば補強剤、活性剤、加工助剤、軟化剤、老化防止剤、アルコキシシラン化合物、反応抑制剤、着色剤、分散剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、防カビ剤、素練促進剤、粘着付与剤、分散染料や酸性染料を代表例とする各種染料、無機・有機顔料、界面活性剤、および塗料が挙げられる。
【0130】
なお、架橋剤の説明で記載した前述加硫促進剤、架橋助剤についても、前記(A)〜(C)および架橋剤以外の成分である。
これらの前記(A)〜(C)および架橋剤以外の成分については、本発明の目的を損なわない範囲の量で配合することが可能である。
【0131】
前記補強剤は、合成ゴムの補強剤として使用されているものであれば、特に限定はない。前記補強剤としては、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカなどが挙げられる。また、補強剤としては有機系フィラーを用いてもよく、有機系フィラーとしては例えばクマロン樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。市販されているカーボンブラックとしては、「旭#55G」、「旭#50HG」、「旭#60G」(商品名;旭カーボン株式会社製)、「シーストV」、「シーストSO」(商品名;東海カーボン株式会社製)などを挙げることができる。
【0132】
このような補強剤の比表面積は、5〜120m2/gであることが好ましい。本発明においては、架橋体の剛性向上の観点から、カーボンブラックを用いることが好ましい。
組成物に補強剤が含まれる場合の含有量としては、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との合計量100質量部に対し、通常は0〜30質量部であり、好ましくは0〜10質量部である。
【0133】
前記活性剤としては、合成ゴムの活性剤として使用されているものであれば、特に限定はない。
具体的には、亜鉛華、ポリエチレングリコ−ル、シランカップリング剤、有機チタネ−ト等を挙げることができる。中でも亜鉛華が好ましく用いられる。
【0134】
組成物に活性剤が含まれる場合の含有量としては、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との合計量100質量部に対し、通常は20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0135】
前記軟化剤としては、合成ゴムの軟化剤として使用されているものであれば、特に限定はない。
具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ;蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質などを挙げることができる。中でも石油系軟化剤が好ましく用いられる。
【0136】
組成物に軟化剤が含まれる場合の含有量としては、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との合計量100質量部に対し、通常は100質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
【0137】
前記加工助剤としては、合成ゴムの加工助剤として使用されているものであれば、特に限定はない。
具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸塩、リシノール酸エステル、ステアリン酸エステル、パルチミン酸エステル、ラウリン酸エステル等の高級脂肪酸エステル類などが挙げられる。
【0138】
組成物に加工助剤が含まれる場合の含有量としては、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と前記エチレン系共重合体(B)との合計量100質量部に対し、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0139】
本発明の組成物の製造方法としては、特に限定は無いが、例えばエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、エチレン系共重合体(B)と、極性基を有する無機フィラー(C)と、好ましくは含まれる架橋剤と、任意に含まれる前記(A)〜(C)および架橋剤以外の成分とを含む組成物を、一般的なゴム配合物の製造方法によって調製することができる。
【0140】
なお、本発明の組成物が架橋剤を含む場合には、予めエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)と、エチレン系共重合体(B)と、極性基を有する無機フィラー(C)とを含む組成物を調製した後に、架橋剤をさらに混合させることが好ましい。
【0141】
ゴム組成物の製造方法としては、たとえばバンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)、エチレン系共重合体(B)、極性基を有する無機フィラー(C)、必要に応じて、軟化剤、加工助剤、架橋助剤などを、80〜170℃の温度で2〜20分間混練する。次いで、得られたブレンド物に、架橋剤、軟化剤、架橋助剤加硫促進剤等の添加剤をオープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、必要に応じて加硫促進剤、架橋助剤を追加混合し、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
【0142】
また、インターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)、エチレン系共重合体(B)、極性基を有する無機フィラー(C)などとともに架橋剤などを同時に混練してもよい。
【0143】
(架橋体)
本発明の架橋体は前記組成物を架橋して得られる架橋体である。
本発明の架橋体は、前記組成物を架橋することにより得られるため、従来のゴム組成物を架橋することにより得られる架橋体と比べて、硬度等の機械物性に優れる。
【0144】
前記組成物を架橋する方法としては、特に限定はないが例えば前記組成物を成形した後に、架橋することにより、所望の形に成形された架橋体を得ることができる。
成形する方法としては、例えば圧縮成型、射出成型、注入成型等の型成型が、組成物を所望の形に成形しやすいため好ましい。
【0145】
成形が型成型により行われる場合には、架橋は組成物を型から取り外す前、すなわち、型を閉じた状態で架橋を行うことが生産性の観点から好ましい。
架橋を行う際の条件としては、架橋剤の種類によっても異なるが、通常は組成物を加熱することにより行われる。
【0146】
架橋を加熱により行う場合には、温度は通常は120〜270℃、好ましくは150〜180℃で行われ、加熱時間は通常は30秒〜120分、好ましくは5〜30分である。
本発明の架橋体は、硬度に優れるため、様々な用途に用いることができる。また、本発明の架橋体は、該架橋体から形成される層を有する積層体として各種用途に用いてもよい。
【0147】
積層体の製造方法としては特に制限はないが、本発明の組成物を、他の成分と共押出し等により成形し、本発明の組成物から形成される層を含む積層体を得た後に、本発明の組成物を架橋する方法や、架橋体を調製した後に、該架橋体と、他の成分から形成される層とを、熱や接着剤により積層する方法が挙げられる。本発明の積層体において、架橋体から形成される層以外の層としては特に限定はないが、例えば、ナイロンやポリエステルの布帛地が挙げられる。また、架橋体から形成される層以外の層は、一層でも二層以上であってもよい。
【0148】
本発明の架橋体、積層体の用途としては、自動車用部品、鉄道車両用部品、家電関連部品、土木・建材関連部品、雑貨、日用品等が挙げられる。
本発明の架橋体は強度に優れるため、本発明の架橋体、積層体は、例えば鉄道車両用部品等の特に強度が求められる用途に好適に用いることができる。
鉄道車両用部品としては、例えば外幌、内幌(貫通幌)等の鉄道車両用の幌が挙げられる。
【実施例】
【0149】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例において使用したエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)(EPDM−1〜EPDM−3)を以下の方法で製造した。
【0150】
[製造例1](EPDM−1の製造)
攪拌翼を備えた容積300Lの重合器を用いて連続的に、エチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)を用いた四元共重合反応を95℃にて行った。
【0151】
重合溶媒としてヘキサン(最終濃度:84.9質量%)を用いて、エチレン濃度を3.6質量%、プロピレン濃度を9.6質量%、ENB濃度を1.9質量%およびVNB濃度を0.036質量%として原料を連続供給した。
【0152】
重合圧力を1.6MPa(ゲージ圧)に保ちながら、主触媒として下記式(iii)で表される構造を有するメタロセン系触媒である(t−ブチルアミド)−ジメチル(η5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエンを0.00045mmol/Lとなるよう連続的に供給した。また、共触媒として(C65)3CB(C65)4を0.0023mmol/L、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(TIBA)を0.23mmol/Lとなるように、それぞれ連続的に供給した。
【0153】
このようにして、エチレン、プロピレン、ENBおよびVNBからなる共重合体ゴムを16.8質量%含む重合反応液が得られた。重合器下部から抜き出した重合反応液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリッピング処理にて共重合体ゴム(EPDM−1)を溶媒から分離した後、80℃で一昼夜減圧乾燥した。
【0154】
【化9】
【0155】
[製造例2](EPDM−2の製造)
製造例1において、各モノマーのフィード量を調整し、共重合体ゴム(EPDM−2)を製造した。
【0156】
[製造例3](EPDM−3の製造)
製造例1において、各モノマーのフィード量を調整し、共重合体ゴム(EPDM−3)を製造した。
【0157】
実施例および比較例において使用したエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)(EPDM−1〜EPDM−3)の組成および物性値を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0158】
〔エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の組成〕
日本電子製 ECX400P型核磁気共鳴装置を用いて、測定温度120℃、測定溶媒としてODCB−d4を使用し、積算回数を512回として、前記製造例で得られたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の1Hのスペクトルを測定し組成を求めた。
【0159】
〔ヨウ素価〕
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)のヨウ素価は、滴定法により求めた値である。具体的には、以下の方法で行った。
【0160】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)0.5gを四塩化炭素60mlに溶解し、少量のウィス試薬および20%ヨウ化カリウム溶液を加え、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で適定した。終点付近では澱粉指示薬を加え、よく攪拌しながら薄紫色が消えるところまで適定し、試料100gに対する消費されるハロゲンの量としてヨウ素のg数を算出した。
【0161】
〔極限粘度〕
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)の極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。
【0162】
具体的には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)」
【0163】
【表1】
実施例および比較例において使用したエチレン系共重合体(B)としては、以下の市販品を用いた。
【0164】
タフマー MD715、Mitsui Elastomers Singapore Pte Ltd製、エチレン・1−ブテン共重合体の無水マレイン酸変性物、MFR(190℃、2.16kg、ASTM D1238)1.5g/10min、密度(ASTM D1505)872kg/m3、脆化温度(ASTM D746)−70℃未満
タフマー DF710、Mitsui Elastomers Singapore Pte Ltd製、エチレン・1−ブテン共重合体、MFR(190℃、2.16kg、ASTM D1238)1.2g/10min、密度(ASTM D1505)870kg/m3、脆化温度(ASTM D746)−70℃未満
実施例および比較例において使用した極性基を有する無機フィラー(C)としては、以下の市販品を用いた。
【0165】
水酸化アルミニウム(昭和電工社製:ハイジライトH−42M)
シリカ(東ソー・シリカ社製:Nipsil VN3)
実施例および比較例において使用した、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)、エチレン系共重合体(B)、極性基を有する無機フィラー(C)以外の成分としては、以下のものを用いた。
亜鉛華:酸化亜鉛(ハクスイテック社製)(活性剤)
ステアリン酸(加工助剤)
カーボンブラック:FEFカーボンブラック:旭60G(旭カーボン社製)(補強剤)
パラフィン系オイル:ダイアナプロセスPS−430(出光興産社製)(軟化剤)
有機過酸化物:ジクミルパーオキサイド:カヤクミルD−40C(化薬アクゾ社製)(架橋剤)
硫黄(架橋助剤)
【0166】
〔実施例1〕
MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB−4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、50質量部のEPDM−1、10質量部のEPDM−2、30質量部のEPDM−3、10質量部のタフマー MD715、活性剤として5質量部の亜鉛華、加工助剤として1質量部のステアリン酸、補強剤として4質量部のカーボンブラック、130質量部の水酸化アルミニウム、20質量部のシリカ、軟化剤として10質量部のパラフィン系オイルを混練し、組成物を得た。
【0167】
混練条件は、ローター回転数が50rpm、フローティングウェイト圧力が3kg/cm2、混練時間が5分間で行い、混練排出温度は145℃であった。

次いで、前記組成物が温度40℃になったことを確認した後、14インチロールを用いて、前記組成物に架橋剤として8.5質量部の有機過酸化物、架橋助剤として0.5質量部の硫黄を混練し、架橋剤を含む組成物を得た。
【0168】
混練条件は、ロール温度を前ロール/後ロール=65℃/50℃、ロール回転数を前ロール/後ロール=13rpm/11.5rpm、ロール間隙を5mmとして混練時間8分間で分出した。
【0169】
次に、前記架橋剤を含む組成物に、プレス成形機を用いて180℃で20分間架橋を行って、厚み2mmのゴムシート(架橋体のシート)を調製した。
得られた架橋体のシートについて、下記方法により硬度、モジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸び、および架橋密度の測定を行った。
【0170】
[硬度]
前記架橋体のシートの硬度を、JIS K7312(1996)の「熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物の物理試験方法」の7項の「硬さ試験」の記載およびJIS K6253(2006)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」の6項の「デュロメーター硬さ試験」の試験タイプAの記載に準拠して測定した。
【0171】
[モジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸び]
前記架橋体のシートのモジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸びを以下の方法で測定した。
【0172】
前記架橋体のシートを打抜いてJIS K 6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いてJIS K6251第3項に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、伸び率が25%であるときの引張応力(25%モジュラス(M25))、伸び率が50%であるときの引張応力(50%モジュラス(M50))、伸び率が100%であるときの引張応力(100%モジュラス(M100))、伸び率が200%であるときの引張応力(200%モジュラス(M200))、伸び率が300%であるときの引張応力(300%モジュラス(M300))、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0173】
[架橋密度]
前記架橋体のシートの架橋密度νは下記の平衡膨潤を利用したFlory−Rehnerの式(1)から算出した。
式(1)中のVRは架橋した2mmシートを37℃×72hの条件でトルエン抽出して求めた。
【0174】
【数1】
実施例1で用いた各原料の種類および量、並びに硬度、モジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸び、および架橋密度の測定結果を表2に示す。
【0175】
〔実施例2〜4、比較例1〜5〕
原料の種類および配合量を表2に記載のように代えた以外は、実施例1と同様に行い、架橋体のシートを得た。
【0176】
得られた架橋体のシートについて、実施例1と同様の方法により硬度、モジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸び、および架橋密度の測定を行った。
実施例2〜4、比較例1〜5で用いた各原料の種類および量、並びに硬度、モジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸び、および架橋密度の測定結果を表2に示す。
【0177】
【表2】