特許第6382020号(P6382020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382020
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ソフトスタート回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   H02M3/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-165855(P2014-165855)
(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公開番号】特開2016-42762(P2016-42762A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住井 亮介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公信
【審査官】 白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−159210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00〜 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その電源電圧として任意に設定される基準電圧の供給を受け付けており、最小値から最大値まで一定のインクリメント周期で一定の値ずつインクリメントされていくデジタル掃引信号をアナログ掃引電圧に変換するデジタル/アナログ変換器と;
前記アナログ掃引電圧を1よりも大きいゲインで増幅することにより、所定の最低値から前記基準電圧よりも高くかつ前記基準電圧に応じて変動する最高値まで、前記インクリメント周期毎に前記基準電圧に応じた増分電圧ずつ段階的に、一定の掃引時間を掛けて上昇するソフトスタート電圧を生成する電圧増幅部と;
を有し、
前記アナログ掃引電圧は、前記デジタル掃引信号のデータ値が同一であれば、前記基準電圧が高いほどが高くなり、前記基準電圧が低いほど低くなり、
前記ソフトスタート電圧が上昇し始めてから前記基準電圧に達するまでに掛かるソフトスタート時間は、前記基準電圧に依ることなく一定に維持されていることを特徴とするソフトスタート回路。
【請求項2】
任意に設定される基準電圧を基準電流に変換する電圧/電流変換部と、
前記基準電流によって充電されるキャパシタと、
前記キャパシタの充電電圧を1よりも大きいゲインで増幅することにより、所定の最低値から前記基準電圧よりも高くかつ前記基準電圧に応じて変動する最高値まで、前記基準電圧に応じた上昇速度で、一定の掃引時間を掛けて上昇するソフトスタート電圧を生成する電圧増幅部と;
を有し、
前記基準電流は、前記基準電圧が高いほど大きくなり、前記基準電圧が低いほど小さくなり、
前記ソフトスタート電圧が上昇し始めてから前記基準電圧に達するまでに掛かるソフトスタート時間は、前記基準電圧に依ることなく一定に維持されていることを特徴とするソフトスタート回路。
【請求項3】
請求項に記載のソフトスタート回路と、
前記基準電圧及び前記ソフトスタート電圧の低い方と帰還電圧との差分に応じた誤差電圧を生成するエラーアンプと、
前記誤差電圧に応じて入力電圧から出力電圧を生成するDC/DCコンバータと、
前記出力電圧に応じて前記帰還電圧を生成する帰還電圧生成部と、
を有することを特徴とする電源装置。
【請求項4】
前記基準電圧を生成する基準電圧生成回路をさらに有することを特徴とする請求項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記基準電圧生成回路は、
任意に設定されるデジタル基準信号をアナログ基準電圧に変換する第2デジタル/アナログ変換器と、
前記アナログ基準電圧を所定のゲインで増幅することにより前記基準電圧を生成する第2電圧増幅部と、
を含むことを特徴とする請求項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記デジタル掃引信号及び前記デジタル基準信号の少なくとも一方を生成するロジック回路をさらに有することを特徴とする請求項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記ロジック回路は、前記電源装置がイネーブルとされた時点で前記基準電圧を立ち上げるように前記デジタル基準信号を生成して、その後、前記DC/DCコンバータが動作可能となった時点で前記ソフトスタート電圧を立ち上げるように前記デジタル掃引信号を生成することを特徴とする請求項に記載の電源装置。
【請求項8】
請求項に記載のソフトスタート回路と、
前記基準電圧及び前記ソフトスタート電圧の低い方と帰還電圧との差分に応じた誤差電圧を生成するエラーアンプと、
前記誤差電圧に応じて入力電圧から出力電圧を生成するDC/DCコンバータと、
前記出力電圧に応じて前記帰還電圧を生成する帰還電圧生成部と、
を有することを特徴とする電源装置。
【請求項9】
前記基準電圧の外部入力を受け付けるための外部端子をさらに有することを特徴とする請求項に記載の電源装置。
【請求項10】
請求項〜請求項9のいずれか一項に記載の電源装置と、
前記電源装置から出力電圧の供給を受けて動作する負荷と、
を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトスタート回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力電圧から出力電圧を生成する電源装置の多くは、起動時の突入電流を抑制するための手段として、所定のソフトスタート時間を掛けて出力電圧を緩やかに立ち上げるソフトスタート回路を備えている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−51956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のソフトスタート回路では、出力電圧の目標設定値に依ることなくソフトスタート時間を一定に維持しようとすると回路規模が不必要に増大するという課題を有していた。
【0006】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、回路規模の増大を抑えながらソフトスタート時間を一定とすることのできるソフトスタート回路、並びに、これを用いた電源装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されているソフトスタート回路は、任意に設定される基準電圧の入力を受け付けており、所定の最低値から前記基準電圧よりも高くかつ前記基準電圧に応じて変動する最高値まで一定の掃引時間を掛けて緩やかに上昇するソフトスタート電圧を生成する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
なお、第1の構成から成るソフトスタート回路は、その電源電圧として前記基準電圧の供給を受け付けており、最小値から最大値まで一定の周期でインクリメントされていくデジタル掃引信号をアナログ掃引電圧に変換するデジタル/アナログ変換器と;前記アナログ掃引電圧を所定のゲインで増幅することにより前記ソフトスタート電圧を生成する電圧増幅部と;を有する構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
また、第1の構成から成るソフトスタート回路は、前記基準電圧を基準電流に変換する電圧/電流変換部と、前記基準電流によって充電されるキャパシタと、前記キャパシタの充電電圧を所定のゲインで増幅することにより前記ソフトスタート電圧を生成する電圧増幅部と;を有する構成(第3の構成)にしてもよい。
【0010】
また、本明細書中に開示されている電源装置は、第2または第3の構成から成るソフトスタート回路と、前記基準電圧及び前記ソフトスタート電圧の低い方と帰還電圧との差分に応じた誤差電圧を生成するエラーアンプと、前記誤差電圧に応じて入力電圧から出力電圧を生成するDC/DCコンバータと、前記出力電圧に応じて前記帰還電圧を生成する帰還電圧生成部と、を有する構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、第4の構成から成る電源装置は、前記基準電圧を生成する基準電圧生成回路をさらに有する構成(第5の構成)にするとよい。
【0012】
また、第5の構成から成る電源装置において、前記基準電圧生成回路は、任意に設定されるデジタル基準信号をアナログ基準電圧に変換する第2デジタル/アナログ変換器と、前記アナログ基準電圧を所定のゲインで増幅することにより前記基準電圧を生成する第2電圧増幅部と、含む構成(第6の構成)にするとよい。
【0013】
また、第6の構成から成る電源装置は、前記デジタル掃引信号及び前記デジタル基準信号の少なくとも一方を生成するロジック回路を有する構成(第7の構成)にするとよい。
【0014】
また、第7の構成から成る電源装置において、前記ロジック回路は、前記電源装置がイネーブルとされた時点で前記基準電圧を立ち上げるように前記デジタル基準信号を生成して、その後前記DC/DCコンバータが動作可能となった時点で前記ソフトスタート電圧を立ち上げるように前記デジタル掃引信号を生成する構成(第8の構成)にするとよい。
【0015】
また、第4の構成から成る電源装置は、前記基準電圧の外部入力を受け付けるための外部端子をさらに有する構成(第9の構成)にしてもよい。
【0016】
また、本明細書中に開示されている電子機器は、第4〜第9いずれかの構成から成る電源装置と、前記電源装置から出力電圧の供給を受けて動作する負荷と、を有する構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0017】
本明細書中に開示されているソフトスタート回路であれば、回路規模の増大を抑えながらソフトスタート時間を一定とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電子機器1の全体構成(電源装置10の第1実施形態)を示す図
図2】インクリメント周期Tの可変制御について説明するための図
図3】電源装置10の第2実施形態を示す図
図4】Vref、Vss、及び、Vfbの相関関係を示す図
図5】ソフトスタート動作の一例を示す図
図6】電源装置10の第3実施形態を示す図
図7】電圧/電流変換部263の一構成例を示す図
図8】テレビXの外観図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、電子機器1の全体構成(電源装置10の第1実施形態)を示す図である。本構成例の電子機器1は、入力電圧Vinから出力電圧Voutを生成する電源装置10と、電源装置10から出力電圧Voutの供給を受けて動作する負荷20と、を有する。
【0020】
電源装置10は、ロジック回路110と、基準電圧生成回路120と、エラーアンプ130と、DC/DCコンバータ140と、帰還電圧生成回路150と、を含む。
【0021】
ロジック回路110は、電源装置10の起動に際して出力電圧Voutが緩やかに立ち上がるように、mビットのデジタル基準信号Drefを最小値(=00h(0d))から最終値まで1つずつインクリメントしていく。
【0022】
なお、ロジック回路110は、出力電圧Voutの目標値に応じてデジタル基準信号Drefの最終値を設定する。具体的に述べると、ロジック回路110は、出力電圧Voutの目標値が高いほどデジタル基準信号Drefの最終値を大きく設定し、逆に、出力電圧Voutの目標値が低いほどデジタル基準信号 Drefの最終値を小さく設定する。
【0023】
例えば、8ビット(256階調)のデジタル基準信号Dref(=00h〜FFh(0d〜255d))を用いて、出力電圧Voutを0V〜20Vの範囲で可変制御する場合を考える。この場合、Dref=7Fh(127d)であればVout=10Vとなり、Dref=3Fh(63d)であればVout=5Vとなる。なお、出力電圧Voutの目標値は、電源装置10の外部からロジック回路110のレジスタ値を書き換えるなどして任意に設定することが可能である。
【0024】
また、ロジック回路110は、出力電圧Voutの目標値(延いてはデジタル基準信号Drefの最終値)に応じてデジタル基準信号Drefのインクリメント周期Tを可変的に設定することにより、ソフトスタート時間Tss(デジタル基準信号Drefが最終値に達するまでの所要時間に相当)を常に一定とする機能を備えている。なお、ロジック回路110には、上記の機能を実現するための手段として、所望のソフトスタート時間Tssをデジタル基準信号Drefの最終値で除すことによりインクリメント周期Tを算出する除算部111が内蔵されている。この点については後ほど詳述する。
【0025】
基準電圧生成回路120は、mビットのデジタル基準信号Drefにデジタル/アナログ変換処理や増幅処理を施して2m階調の基準電圧Vrefを生成する。基準電圧Vrefは、デジタル基準信号Drefのデータ値が大きいほど高くなり、デジタル基準信号Drefのデータ値が小さいほど低くなる。
【0026】
エラーアンプ130は、非反転入力端(+)に入力される基準電圧Vrefと反転入力端(−)に入力される帰還電圧Vfbとの差分に応じた誤差電圧Verrを生成する。誤差電圧Verrは、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも低いときに上昇し、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも高いときに低下する。
【0027】
DC/DCコンバータ140は、誤差電圧Verrが小さくなるように入力電圧Vinから出力電圧Voutを生成する。なお、DC/DCコンバータ140の出力形式については、昇圧型、降圧型、及び、昇降圧型のいずれであっても構わない。
【0028】
帰還電圧生成回路150は、出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfbを生成する。例えば、帰還電圧生成回路150としては、出力電圧Voutを分圧する抵抗分割回路などを好適に用いることができる。
【0029】
図2は、ロジック回路10によるインクリメント周期Tの可変制御について説明するための図である。先にも述べたように、ロジック回路10には、所望のソフトスタート時間Tssをデジタル基準信号Drefの最終値で除すことによりインクリメント周期Tを算出する除算部111が内蔵されており、出力電圧Voutの目標値(延いてはデジタル基準信号Drefの最終値)に応じてデジタル基準信号Drefのインクリメント周期Tを可変的に設定する。
【0030】
図中の実線で示したように、基準電圧Vrefを0VからV1まで掃引する場合には、デジタル基準信号Drefのインクリメント周期Tが「T1」に設定される。従って、基準電圧Vrefは、インクリメント周期T1毎に所定の増分電圧ΔVずつ段階的に上昇していき、最終的にソフトスタート時間Tssを掛けてV1に達する。
【0031】
一方、図中の破線で示したように、基準電圧Vrefを0VからV2(=V1の半分)まで掃引する場合には、デジタル基準信号Drefのインクリメント周期Tが「T2(=T1の2倍)」に設定される。すなわち、基準電圧Vrefの目標値がV1からV2まで引き下げられたことに伴い、基準電圧Vrefの上昇速度もそれに合わせて低下される。
【0032】
このようなインクリメント周期Tの可変制御により、基準電圧Vrefに依ることなくソフトスタート時間Tssを常に一定に維持することが可能となる。
【0033】
ただし、第1実施形態の電源装置10では、比較的回路規模の大きい除算部111(及びその制御回路)を必要とする。従って、チップサイズの縮小を図る上では、さらなる改善の余地があると言える。
【0034】
<第2実施形態>
図3は、電源装置10の第2実施形態を示す図である。本実施形態の電源装置10は、入力電圧Vinを昇圧して所望の出力電圧Voutを生成する昇圧型スイッチング電源装置であり、ロジック回路210と、基準電圧生成回路220と、エラーアンプ230と、DC/DCコンバータ240と、帰還電圧生成回路250と、ソフトスタート回路260とを含む。
【0035】
ロジック回路210は、出力電圧Voutの目標値に応じてmビットのデジタル基準信号Drefを生成する。より具体的に述べると、ロジック回路210は、出力電圧Voutの目標値が高いほどデジタル基準信号Drefを大きく設定し、出力電圧Voutの目標値が低いほどデジタル基準信号 Drefを小さく設定する。なお、出力電圧Voutの目標値は、電源装置10の外部からロジック回路210のレジスタ値を書き換えるなどして任意に設定することが可能である。
【0036】
ただし、先の第1実施形態と異なり、ロジック回路210は、デジタル基準信号Drefのインクリメント制御(スイープ制御)を行わない。従って、出力電圧Voutの目標値が変更されない限り、デジタル基準信号Drefのデータ値は固定されたままとなる。
【0037】
一方、ロジック回路210は、デジタル基準信号Drefのインクリメント制御に代えて、nビットのデジタル掃引信号Dswpを生成する。具体的に述べると、ロジック回路210は、電源装置10の起動に際して出力電圧Voutが緩やかに立ち上がるように、一定のインクリメント周期Tでデジタル掃引信号Dswpを最小値(=00h(0d))から最大値(例えばFFh(255d))まで1つずつインクリメントしていく。
【0038】
基準電圧生成回路220は、デジタル/アナログ変換器221と電圧増幅部222を含み、デジタル基準信号Drefに応じた基準電圧Vrefを生成する。
【0039】
デジタル/アナログ変換器221は、mビットのデジタル基準信号Drefを2m階調のアナログ基準電圧Arefに変換する。アナログ基準電圧Arefは、デジタル基準信号Drefのデータ値が大きいほど高くなり、デジタル基準信号Drefのデータ値が小さいほど低くなる。なお、デジタル/アナログ変換方式としては、これまでに実績のある従来方式(R/2R方式やストリング方式など)を採用すればよい。
【0040】
電圧増幅部222は、オペアンプ222aと、抵抗222b及び222c(抵抗値:Rb及びRc)を含み、アナログ基準電圧Arefを所定のゲインα(=(Rb+Rc)/Rc)で増幅することにより基準電圧Vref(=α×Aref)を生成する。従って、基準電圧Vrefは、アナログ基準電圧Arefが高いほど高くなり、逆に、アナログ基準電圧Arefが低いほど低くなる。
【0041】
エラーアンプ230は、2つの非反転入力端(+)に各々入力される基準電圧Vref及びソフトスタート電圧Vssのより低い方と、反転入力端(−)に入力される帰還電圧Vfbとの差分に応じた誤差電圧Verrを生成する。誤差電圧Verrは、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref(またはソフトスタート電圧Vss)よりも低いときに上昇し、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref(またはソフトスタート電圧Vss)よりも高いときに低下する。
【0042】
DC/DCコンバータ240は、スイッチング制御部241と、出力トランジスタ242(Nチャネル型MOS[metal-oxide-semiconductor]電界効果トランジスタ)と、同期整流トランジスタ243(Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ)と、コイル244と、出力キャパシタ245と、ロードスイッチ246と、を含み、誤差電圧Verrに応じて入力電圧Vinを昇圧して出力電圧Voutを生成する。
【0043】
スイッチング制御部241は、誤差電圧Verrが小さくなるように、出力トランジスタ242と同期整流トランジスタ243の相補的なオン/オフ制御を行う。なお、上記の「相補的なオン/オフ制御」には、出力トランジスタ242と同期整流トランジスタ243のオン/オフ状態が完全に逆転されている場合のほか、貫通電流防止の観点から、出力トランジスタ242と同期整流トランジスタ243の同時オフ期間が設けられている場合も含むものとする。
【0044】
コイル244の第1端は、入力電圧Vinの印加端に接続されている。コイル244の第2端は、出力トランジスタ242のドレインと同期整流トランジスタ243のドレインに各々接続されている。出力トランジスタ242のソースは、接地端に接続されている。出力トランジスタ242のゲートと同期整流トランジスタ243のゲートは、いずれもスイッチング制御部241に接続されている。同期整流トランジスタ243のソースは、ロードスイッチ246を介して出力電圧Voutの印加端に接続されている。出力キャパシタ245は、出力電圧Voutの印加端と接地端との間に接続されている。
【0045】
ロードスイッチ246は、イネーブル信号ENがハイレベルであるときにオンとなり、イネーブル信号ENがローレベルであるときにオフとなる。
【0046】
上記構成から成るDC/DCコンバータ240の基本動作(昇圧動作)について簡単に説明する。出力トランジスタ242がオンされて同期整流トランジスタ243がオフされると、コイル244には出力トランジスタ242を介して接地端に向けたスイッチ電流が流れ、その電気エネルギが蓄えられる。一方、出力トランジスタ242がオフされて同期整流トランジスタ243がオンされると、コイル244に蓄えられていた電気エネルギが電流として放出されることにより、出力キャパシタ245が充電される。このように、出力トランジスタ242と同期整流トランジスタ243の相補的なオン/オフが繰り返されることにより、入力電圧Vinを昇圧した出力電圧Voutが生成される。
【0047】
なお、DC/DCコンバータ240の出力形式は、何ら昇圧型に限定されるものではなく、降圧型ないしは昇降圧型としても構わない。また、同期整流トランジスタ243に代えて整流ダイオードを用いても構わない。
【0048】
帰還電圧生成回路250は、出力電圧Voutの印加端と接地端との間に直列接続された抵抗251及び252を含み、抵抗251と抵抗252との接続ノードから出力電圧Voutを分圧した帰還電圧Vfbを出力する。
【0049】
ソフトスタート回路260は、デジタル/アナログ変換器261と電圧増幅部262を含み、デジタル掃引信号Dswpに応じたソフトスタート電圧Vssを生成する。
【0050】
デジタル/アナログ変換器261は、nビットのデジタル掃引信号Dswpを2n階調のアナログ掃引電圧Aswp(=Vref×Dswp/(2n−1))に変換する。アナログ掃引電圧Aswpは、デジタル掃引信号Dswpのデータ値が大きいほど高くなり、逆に、デジタル掃引信号Dswpのデータ値が小さいほど低くなる。なお、先にも述べたように、ロジック回路210は、電源装置10の起動に際して出力電圧Voutが緩やかに立ち上がるように、一定のインクリメント周期Tでデジタル掃引信号Dswpを最小値(=00h(0d))から最大値(例えばFFh(255d))まで1つずつインクリメントしていく。
【0051】
例えば、8ビット(256階調)のデジタル掃引信号Dswp(=00h〜FFh(0d〜255d))をアナログ掃引電圧Aswpに変換する場合を考える。この場合、Dswp=00h(0d)であればAswp=0Vとなり、Dswp=7Fh(127d)であればAswp=Vref/2となり、Dswp=FFh(255d)であればAswp=Vrefとなる。なお、デジタル/アナログ変換方式としては、これまでに実績のある従来方式(R/2R方式やストリング方式など)を採用すればよい。
【0052】
また、デジタル/アナログ変換器261は、その電源電圧として基準電圧Vrefの供給を受け付けている。従って、デジタル掃引信号Dswpのデータ値が同一であれば、基準電圧Vrefが高いほどアナログ掃引電圧Aswpが高くなり、逆に、基準電圧Vrefが低いほどアナログ掃引電圧Aswpが低くなる。
【0053】
電圧増幅部262は、オペアンプ262aと、抵抗262b及び262c(抵抗値:rb及びrc)を含み、アナログ掃引電圧Aswpを所定のゲインβ(=(rb+rc)/rc)で増幅することによりソフトスタート電圧Vss(=β×Aswp)を生成する。従って、ソフトスタート電圧Vssは、アナログ掃引電圧Aswpが高いほど高くなり、逆に、アナログ掃引電圧Aswpが低いほど低くなる。なお、ゲインβ>1であるので、ソフトスタート電圧Vssの最高値VssHは、基準電圧Vrefよりも高く、かつ、基準電圧Vrefに応じて変動する可変値(=β×Vref)となる。
【0054】
図4は、基準電圧Vref(一点鎖線)、ソフトスタート電圧Vss(二点鎖線)、及び、帰還電圧Vfb(太実線)の相関関係を示す図である。第2実施形態の電源装置10では、基準電圧Vref及びソフトスタート電圧Vssの低い方と帰還電圧Vfbとを一致させるように出力帰還制御が行われる。従って、ソフトスタート電圧Vssが基準電圧Vrefよりも低い間は、帰還電圧Vfbがソフトスタート電圧Vssに追従して緩やかに上昇していき、ソフトスタート電圧Vssが基準電圧Vrefよりも高くなると、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefに合わせ込まれる。
【0055】
なお、ソフトスタート電圧Vssが上昇し始めてから基準電圧Vrefに達するまでに掛かる所要時間がソフトスタート時間Tssに相当する。
【0056】
ここで、(a)欄で示すように、基準電圧VrefがV1に設定されている場合には、ソフトスタート電圧Vssがインクリメント周期T毎に増分電圧ΔV1ずつ段階的に上昇していき、最終的に所定の掃引時間Tswpを掛けてVssH(=β×V1)に達する。
【0057】
一方、(b)欄で示したように、基準電圧VrefがV2(=V1の半分)に設定されている場合には、ソフトスタート電圧Vssがインクリメント周期T毎に増分電圧ΔV2(=ΔV1の半分)ずつ段階的に上昇していき、最終的に掃引時間Tswpを掛けてVssH(=β×V2)に達する。すなわち、基準電圧VrefがV1からV2まで引き下げられたことに伴い、ソフトスタート電圧Vssの最高値VssHと増分電圧ΔVもそれに合わせて引き下げられ、延いては、ソフトスタート電圧Vssの上昇速度が低下される。
【0058】
このようなソフトスタート電圧Vssの最高値VssHと増分電圧ΔVの可変制御により、ソフトスタート電圧Vssは、最低値VssL(=0V)から最高値VssH(=β×Vref)まで一定の掃引時間Tswpを掛けて緩やかに上昇する。従って、基準電圧Vrefに依ることなくソフトスタート時間Tssを一定に維持することが可能となる。
【0059】
また、本構成例のソフトスタート回路260であれば、基準電圧Vrefに応じてインクリメント周期Tを可変制御する必要がないので、比較的回路規模の大きい除算部111(ゲート数:約2000、面積:600μm×600μm程度)を用いずに済む。なお、第2実施形態の電源装置10では、ソフトスタート回路260を新たに追加する必要があるが、その回路面積は230μm×230μm程度であり、除算部111と比べれば非常に小さい。従って、第2実施形態の電源装置10であれば、先の第1実施形態と比べて、大幅なチップシュリンク(例えば1/7程度)を実現することが可能となる。
【0060】
図5は、ソフトスタート動作の一例を示す図であり、上から順に、イネーブル信号ENと出力電圧Voutの挙動(実機測定結果)が描写されている。
【0061】
時刻t1において、イネーブル信号ENがハイレベル(電源装置10のイネーブル時における論理レベルに相当)に立ち上げられると、ロードスイッチ246がオンとなる。その結果、入力電圧Vinの印加端と出力電圧Voutの印加端との間が導通されるので、出力電圧Voutが上昇し始める。
【0062】
ただし、時刻t1において、ロジック回路210は、基準電圧Vrefを立ち上げるようにデジタル基準信号Drefを生成する一方、デジタル掃引信号Dswpのインクリメントを開始することなくソフトスタート電圧Vssを最低値VssL(=0V)に維持する。従って、DC/DCコンバータ240では、Vfb=VssL(=0V)となるように出力帰還制御が掛かるので、入力電圧Vinの昇圧動作が待機された状態となる。
【0063】
その後、時刻t2において、出力電圧Voutがほぼ入力電圧Vinまで立ち上がり、DC/DCコンバータ240が昇圧動作可能となった時点で、ロジック回路210は、ソフトスタート電圧Vssを立ち上げるように、デジタル掃引信号Dswpのインクリメントを開始する。その結果、ソフトスタート電圧Vssが帰還電圧Vfbを上回って以後、出力電圧Voutがソフトスタート電圧Vssに追従して上昇していく。
【0064】
ここで、ソフトスタート電圧Vssの上昇速度は、出力電圧Voutの目標値Vtargetが高いほど早くなり、出力電圧Voutの目標値Vtargetが低いほど遅くなる。従って、出力電圧Voutの目標値Vtargetに依ることなく、ソフトスタート時間Tssを常に一定値(例えば10ms)に維持することが可能となる。
【0065】
時刻t3において、ソフトスタート時間Tssが経過する(ソフトスタート電圧Vssが基準電圧Vrefよりも高くなる)と、DC/DCコンバータ240では、Vfb=Vrefとなるように出力帰還制御が掛かるようになる。従って、時刻t3以降では、出力電圧Voutが目標値Vtargetに維持される。
【0066】
図6は、電源装置10の第3実施形態を示す図である。本実施形態の電源装置10は、第2実施形態(図3)と基本的に同様であり、(1)基準電圧生成回路220に代えて外部端子270が設けられている点、(2)ソフトスタート回路260がデジタル型からアナログ型に変更されている点、並びに、(3)上記の変更に伴ってロジック回路210が省略されている点に特徴を有する。そこで、第2実施形態と同様の構成要素については、図3と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では第3実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0067】
外部端子270は、基準電圧Vrefの外部入力を受け付けるために設けられている。このような構成とすることにより、電源装置10の外部で基準電圧Vrefを任意に調整することができる。
【0068】
ソフトスタート回路260は、デジタル/アナログ変換器261に代えて、電圧/電流変換部263と、キャパシタ264と、充放電スイッチ265と、を含む。
【0069】
電圧/電流変換部263は、基準電圧Vrefを基準電流Irefに変換する。基準電流Irefは、基準電圧Vrefが高いほど大きくなり、基準電圧Vrefが低いほど小さくなる。電圧/電流変換部263の構成及び動作については後ほど詳述する。
【0070】
キャパシタ264は、電圧/電流変換部263の出力端と接地端との間に接続されており、基準電流Irefによって充電される。電圧増幅部262は、キャパシタ264の充電電圧Vchgを所定のゲインβで増幅することにより、ソフトスタート電圧Vss(=β×Vchg)を生成する。
【0071】
充放電スイッチ265は、キャパシタ264に対して並列に接続されており、ソフトスタート開始タイミングでオフされる。充放電スイッチ265がオフされている間、キャパシタ264が基準電流Irefによって充電されるので、充電電圧Vchgが上昇していく。一方、充放電スイッチ265がオンされている間、キャパシタ264の両端間が充放電スイッチ265を介して短絡されるので、充電電圧Vchgが0Vにリセットされる。
【0072】
本構成例のソフトスタート回路260では、基準電圧Vrefが高いほど基準電流Irefが大きくなるので、キャパシタ264の充電速度が速くなり、充電電圧Vchgがより急峻に上昇する。一方、基準電圧Vrefが低いほど基準電流Irefが小さくなるので、キャパシタ264の充電速度が遅くなり、充電電圧Vchgがより緩慢に上昇する。
【0073】
このように、本構成例のソフトスタート回路260では、基準電圧Vrefに応じて充電電圧Vchgの上昇速度が変化し、延いては、ソフトスタート電圧Vssの上昇速度が変化する。より具体的に述べると、基準電圧Vrefが高いほどソフトスタート電圧Vssの上昇速度が速くなり、基準電圧Vrefが低いほどソフトスタート電圧Vssの上昇速度が遅くなる。これは先の図4で示した挙動と同様である。従って、基準電圧Vrefに依らず、ソフトスタート時間Tssを常に一定に維持することが可能となる。
【0074】
なお、上記の変更点(1)及び(2)は、それぞれ単独で適用することも可能である。すなわち、第2実施形態(図3)の回路構成をベースとしつつ、変更点(1)のみを適用してもよいし、或いは、変更点(2)のみを適用しても構わない。ただし、変更点(1)及び(2)のいずれか一方のみを適用する場合には、ロジック回路210が必要となるので、変更点(3)を適用することはできなくなる。
【0075】
図7は、電圧/電流変換部263の一構成例を示す図である。電圧/電流変換部263は、オペアンプ263aと、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ263bと、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ263c及び263dと、抵抗263e(抵抗値:R)と、を含む。
【0076】
オペアンプ263aの非反転入力端(+)は、基準電圧Vrefに印加端に接続されている。オペアンプ263aの反転入力端(−)は、トランジスタ263bのソースに接続されている。オペアンプ263aの出力端は、トランジスタ263bのゲートに接続されている。トランジスタ263bのソースは、抵抗263eを介して接地端に接続されている。トランジスタ263bのドレインは、トランジスタ263cのドレインに接続されている。トランジスタ263c及び263dのソースはいずれも電源端に接続されている。トランジスタ263c及び263dのゲートは、いずれもトランジスタ263cのドレインに接続されている。トランジスタ263dのドレインは、基準電流Irefの出力端として、キャパシタ264(本図では不図示)に接続されている。
【0077】
オペアンプ263aは、非反転入力端(+)と反転入力端(−)とがイマジナリショートするように、トランジスタ263bのゲート制御を行う。従って、抵抗263eには、基準電圧Vrefに応じた電流Iref0(=Vref/R)が流れる。トランジスタ263c及び263dは、カレントミラーを形成しており、トランジスタ263cのドレインに流れる電流Iref0を所定のミラー比Mでミラーすることにより、トランジスタ263dのドレインから基準電流Iref(=M×Iref0)を出力する。
【0078】
このようにして生成される基準電流Irefは、基準電圧Voutに応じた電流値(=M×Vref/R)を持つ。すなわち、基準電流Irefは、基準電圧Voutが高いほど大きくなり、基準電圧Vrefが低いほど小さくなる。
【0079】
<テレビへの適用>
図8は、テレビXの外観図である。テレビXは電子機器1の一具体例であり、その電源部として先述の電源装置10を搭載している。従って、本構成例のテレビXであれば、一定のソフトスタート時間Tssでシステムを起動することができるので、立上り挙動(起動シーケンス)を安定化させることが可能となる。
【0080】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、ソフトスタート機能を備えた電源装置全般に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 電子機器
10 電源装置
20 負荷
110 ロジック回路
111 除算部
120 基準電圧生成回路
130 エラーアンプ
140 DC/DCコンバータ
150 帰還電圧生成回路
210 ロジック回路
220 基準電圧生成回路
221 デジタル/アナログ変換器
222 電圧増幅部
222a オペアンプ
222b、222c 抵抗
230 エラーアンプ
240 DC/DCコンバータ
241 スイッチング制御部
242 出力トランジスタ
243 同期整流トランジスタ
244 コイル
245 出力キャパシタ
246 ロードスイッチ
250 帰還電圧生成回路
251、252 抵抗
260 ソフトスタート回路
261 デジタル/アナログ変換器
262 電圧増幅部
262a オペアンプ
262b、262c 抵抗
263 電圧/電流変換部
263a オペアンプ
263b Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
263c、263d Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ
263e 抵抗
264 キャパシタ
265 充放電スイッチ
270 外部端子
X テレビ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8