特許第6382023号(P6382023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6382023動力制御装置及びこれを備えたハイブリッド建設機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382023
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】動力制御装置及びこれを備えたハイブリッド建設機械
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/13 20160101AFI20180820BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20180820BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20180820BHJP
   H02J 7/14 20060101ALI20180820BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20180820BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20180820BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20180820BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B60W20/13
   B60W10/26 900
   H02J7/00 PZHV
   H02J7/14 C
   B60L15/20 Z
   B60K6/485
   B60W10/08 900
   H01M10/48 P
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-167530(P2014-167530)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2015-63295(P2015-63295A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2017年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-175480(P2013-175480)
(32)【優先日】2013年8月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】南條 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】山下 耕治
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3859982(JP,B2)
【文献】 特開2005−330834(JP,A)
【文献】 特開2006−149181(JP,A)
【文献】 特開2007−245995(JP,A)
【文献】 特開平11−224697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/54
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60W 10/00 − 20/50
H01M 10/42 − 10/48
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、蓄電装置と、前記エンジンの動力及び前記蓄電装置の電力の少なくとも一方を用いて作動する少なくとも1つのアクチュエータと、前記エンジンの動力により発電する発電機とを有するハイブリッド建設機械の動力制御装置であって、
前記エンジンの駆動効率が予め設定された効率範囲内となるエンジン出力の制御範囲の上限値と下限値との間で前記エンジンの出力が推移するように、前記エンジンに要求される必要動力が前記上限値を超える場合に前記蓄電装置の電力を用いて前記エンジンをアシストするとともに、前記必要動力が前記下限値を下回る場合に前記発電機を駆動して前記蓄電装置を充電するように前記蓄電装置の充放電を制御する通常制御を実行する制御器を備え、
前記制御器は、前記必要動力が前記上限値を超え、かつ、前記蓄電装置によるアシストが継続して行なわれている期間中における前記蓄電装置によるアシスト動力の積分量又は継続時間が予め設定された第1閾値を超える場合に、前記蓄電装置によるアシスト動力を前記通常制御におけるアシスト動力よりも小さく0よりも大きなアシスト動力に減らす第1制御を実行し、前記必要動力が前記上限値を超え、かつ、前記積分量又は前記継続時間が前記第1閾値よりも大きい値として予め設定された第2閾値を超える場合に、前記アシスト動力を0に設定する第2制御を実行し、
前記動力制御装置は、
前記エンジンにより駆動されて、前記少なくとも1つのアクチュエータに含まれる複数の油圧アクチュエータに対して作動油を供給する可変容量式の油圧ポンプをさらに備え、
前記発電機は、前記蓄電装置の電力を用いて電動機として作動することにより前記油圧ポンプの動力を補うように前記エンジンをアシストする機能を有し、
前記制御器は、前記複数の油圧アクチュエータのうち必要馬力が高いものとして予め設定された高馬力アクチュエータが作動する場合に、前記高馬力アクチュエータ以外の油圧アクチュエータのみが作動する場合よりも前記油圧ポンプの流量を大きく設定するとともに前記第1閾値及び前記第2閾値を低く設定する、ハイブリッド建設機械の動力制御装置。
【請求項2】
前記蓄電装置の充電率を検出可能な充電率検出手段をさらに備え、
前記制御器は、前記充電率検出手段により検出された前記蓄電装置の充電率が小さい程、前記第1閾値及び前記第2閾値が小さくなるように前記第1閾値及び前記第2閾値を変更する、請求項1に記載のハイブリッド建設機械の動力制御装置。
【請求項3】
前記制御器は、前記通常制御から前記第1制御へ切り換わるまでの時間よりも前記第1制御から前記第2制御へ切り換わるまでの時間が短くなるように、前記蓄電装置の充放電を制御する、請求項1又は2に記載のハイブリッド建設機械の動力制御装置。
【請求項4】
エンジンと、蓄電装置と、前記エンジンの動力及び前記蓄電装置の電力の少なくとも一方を用いて作動する少なくとも1つのアクチュエータと、前記エンジンの動力により発電する発電機と、請求項1〜の何れか1項に記載の動力制御装置とを備えている、ハイブリッド建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド建設機械の動力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に開示されるように、エンジンと、蓄電装置と、エンジンの動力により発電する発電機と、エンジンの動力(発電機からの電力)及び蓄電装置からの電力により作動するアクチュエータと、アクチュエータと蓄電装置及び発電機との間の電力の配分を決定する電力制御装置とを備えたハイブリッド建設機械が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の電力制御装置は、予め設定されたエンジン出力の制御範囲の上限値と下限値との間(発電機上限電力と発電機下限電力との間)でエンジンの出力が推移するように、電力配分を決定する。
【0004】
具体的に、エンジンに要求される要求動力(電力)が下限値(発電電力下限値)を下回る場合には発電機により発電された余剰電力が蓄電装置に充電される一方、前記要求動力が上限値(発電電力上限値)を超える場合には発電機により発電された電力に加えて蓄電装置からの電力がアクチュエータに供給される(アクチュエータの動力を補うようにエンジンをアシストする)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3859982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ハイブリッド建設機械によって行なわれる作業には、比較的に短い期間中に行われるもの(例えば、作業アタッチメントを用いたダンプ作業)、及び、比較的に長い期間にわたり行なわれるもの(例えば、連続(登坂)走行や作業アタッチメントを用いた押付作業)がある。
【0007】
長期間にわたって行われる作業時には、エンジンの要求動力がエンジン出力の上限値を超える状態(以下、高負荷状態という)が長期間にわたって継続される可能性が高い。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の電力制御装置では、高負荷状態が長期間継続すると、蓄電装置の電力によるアシストが長期間にわたり継続し、蓄電装置の充電率が低下してしまうという問題がある。
【0009】
蓄電装置の充電率が低下すると、高負荷状態が解消された後の通常制御時において必要な電力が不足するおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、高負荷状態において蓄電装置の電力を用いてエンジンをアシストしつつ、高負荷状態が長期間にわたって継続する場合に蓄電装置の充電率が必要以上に低下するのを抑制することができる動力制御装置及びこれを備えたハイブリッド建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、エンジンと、蓄電装置と、前記エンジンの動力及び前記蓄電装置の電力の少なくとも一方を用いて作動する少なくとも1つのアクチュエータと、前記エンジンの動力により発電する発電機とを有するハイブリッド建設機械の動力制御装置であって、前記エンジンの駆動効率が予め設定された効率範囲内となるエンジン出力の制御範囲の上限値と下限値との間で前記エンジンの出力が推移するように、前記エンジンに要求される必要動力が前記上限値を超える場合に前記蓄電装置の電力を用いて前記エンジンをアシストするとともに、前記必要動力が前記下限値を下回る場合に前記発電機を駆動して前記蓄電装置を充電するように前記蓄電装置の充放電を制御する通常制御を実行する制御器を備え、前記制御器は、前記必要動力が前記上限値を超え、かつ、前記蓄電装置によるアシストが継続して行なわれている期間中における前記蓄電装置によるアシスト動力の積分量又は継続時間が予め設定された第1閾値を超える場合に、前記蓄電装置によるアシスト動力を前記通常制御におけるアシスト動力よりも小さく0よりも大きなアシスト動力に減らす第1制御を実行し、前記必要動力が前記上限値を超え、かつ、前記積分量又は前記継続時間が前記第1閾値よりも大きい値として予め設定された第2閾値を超える場合に、前記アシスト動力を0に設定する第2制御を実行する、ハイブリッド建設機械の動力制御装置を提供する。
【0012】
本発明によれば、エンジンに要求される必要動力がエンジン出力の上限値を超える高負荷状態において、蓄電装置の電力を用いてエンジンをアシストすることができる。
【0013】
さらに、本発明では、高負荷状態が継続している場合であって、アシスト動力の積分量又は継続時間が第1閾値を超える場合にアシスト動力を減らし(その分エンジンの動力を増やし)、アシスト動力の積分量又は継続時間が第2閾値を超える場合にアシスト動力を0に設定する(エンジンの動力のみで必要動力を確保する)。
【0014】
これにより、高負荷状態の継続期間中において必要以上に蓄電装置の電力が消費されるのを抑制することができる。特に、蓄電装置の充電量が極めて低い状態(アシスト動力の積分量又は継続時間が第2閾値を超えた状態)においては、蓄電装置の電力消費を0に抑えることができるため、蓄電装置の充電状態を確実に保持することができる。
【0015】
また、本発明では、高負荷状態の継続期間中における消費動力の大きさ又は継続時間の長さに応じて、蓄電装置の消費電力を段階的に小さくすることができる。そのため、高負荷状態の継続が比較的短い場合(アシスト動力の積分量又は継続時間が第1閾値を超え、その後即座に第1閾値を下回った場合)には、迅速に通常制御に復帰することができる。
【0016】
前記動力制御装置において、前記蓄電装置の充電率を検出可能な充電率検出手段をさらに備え、前記制御器は、前記充電率検出手段により検出された前記蓄電装置の充電率が小さい程、前記第1閾値及び前記第2閾値が小さくなるように前記第1閾値及び前記第2閾値を変更することが好ましい。
【0017】
この態様によれば、蓄電装置の充電率が小さい程、早い段階で蓄電装置の放電(エンジンのアシスト)を抑制することができるため、蓄電装置の充電率が必要以上に低下するのをより確実に抑制することができる。
【0018】
前記動力制御装置、前記エンジンにより駆動されて、前記少なくとも1つのアクチュエータに含まれる複数の油圧アクチュエータに対して作動油を供給する可変容量式の油圧ポンプをさらに備え、前記発電機は、前記蓄電装置の電力を用いて電動機として作動することにより前記油圧ポンプの動力を補うように前記エンジンをアシストする機能を有し、前記制御器は、前記複数の油圧アクチュエータのうち必要馬力が高いものとして予め設定された高馬力アクチュエータが作動する場合に、前記高馬力アクチュエータ以外の油圧アクチュエータのみが作動する場合よりも前記油圧ポンプの流量を大きく設定するとともに前記第1閾値及び前記第2閾値を低く設定する。
【0019】
この態様によれば、高負荷状態において蓄電装置の電力を用いて発電電動機が電動機として作動することにより油圧ポンプの動力を補うようにエンジンをアシストすることができる。
【0020】
また、前記態様では、予め設定された高馬力アクチュエータの作動時に、油圧ポンプの流量を大きく設定することにより油圧ポンプの出力馬力を高くすることができるため、高馬力アクチュエータの必要馬力を確保することができる。
【0021】
ここで、油圧ポンプの出力馬力を高くするために蓄電装置の電力の消費速度が増加することになるが、前記態様では、高馬力アクチュエータの作動時に第1閾値及び第2閾値を低く設定するため、蓄電装置の充電率が必要以上に低下するのを抑制することができる。
【0022】
前記動力制御装置において、前記制御器は、前記通常制御から前記第1制御へ切り換わるまでの時間よりも前記第1制御から前記第2制御へ切り換わるまでの時間が短くなるように、前記蓄電装置の充放電を制御することが好ましい。
【0023】
この態様によれば、通常制御から第1制御へ切り換わるまでの時間が第1制御から第2制御へ切り換わるまでの時間よりも長く設定されているため、アシスト動力の低下(エンジン動力の増加)によりオペレータに与える違和感を緩和することができる。
【0024】
一方、通常制御から第1制御への切り換え段階よりも蓄電装置の充電率が低下している第1制御から第2制御への切り換え段階において、その切換時間を短くすることにより、蓄電装置の放電を迅速に停止させて蓄電装置の充電量が必要以上に低下するのをより確実に抑制することができる。
【0025】
また、本発明は、エンジンと、蓄電装置と、前記エンジンの動力及び前記蓄電装置の電力の少なくとも一方を用いて作動する少なくとも1つのアクチュエータと、前記エンジンの動力により発電する発電機と、前記動力制御装置とを備えている、ハイブリッド建設機械を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高負荷状態において蓄電装置の電力を用いてエンジンをアシストしつつ、高負荷状態が長期間にわたって継続する場合に蓄電装置の充電率が必要以上に低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係るハイブリッドショベルの全体構成を示す左側面図である。
図2図1に示すハイブリッドショベルの駆動システムの概略図である。
図3図2に示す駆動システムの電気的構成を示すブロック図である。
図4】エンジン出力とエンジン効率との関係を示すグラフである。
図5】エンジンに対する必要動力の動力負担を示すグラフである。
図6】エンジン出力と充電状態との関係を示すグラフである。
図7】必要動力の時間に対する推移を示すグラフである。
図8】通常制御、第1制御及び第2制御におけるエンジン出力の上限値の変化を示すグラフである。
図9】第1閾値及び第2閾値とSOCとの関係を示すグラフである。
図10図3の制御器により実行される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0029】
図1を参照して、ハイブリッドショベル1は、クローラ2aを有する自走式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に対して変位可能に設けられた作業アタッチメント4と、下部走行体2を走行駆動するための走行モータ14(図2参照)と、下部走行体2に対して上部旋回体3を旋回駆動するための旋回電動機15(図2参照)と、ハイブリッドショベル1の駆動システム16(図2参照)とを備えている。
【0030】
作業アタッチメント4は、上部旋回体3上に起伏可能に取り付けられたブーム5と、ブーム5の先端部に対して回動可能に取り付けられたアーム6と、アーム6の先端部に対して回動可能に取り付けられたバケット7とを備えている。
【0031】
また、作業アタッチメント4は、上部旋回体3に対してブーム5を起伏させるブームシリンダ8と、ブーム5に対してアーム6を回動させるアームシリンダ9と、アーム6に対してバケット7を回動させるバケットシリンダ10とを備えている。
【0032】
図2を参照して、駆動システム16は、エンジン17と、蓄電装置18と、エンジン17の出力軸に接続された発電電動機19と、発電電動機19と蓄電装置18との間に設けられたエンジン側インバータ20と、旋回電動機15と蓄電装置18との間に設けられた旋回側インバータ21と、エンジン17の出力軸に接続された第1油圧ポンプ22A及び第2油圧ポンプ22Bと、各油圧ポンプ22A、22Bから油圧アクチュエータへの圧油の給排を制御するコントロールバルブ23と、コントロールバルブ23を操作するためのパイロット圧を生じさせるリモコン弁24と、各油圧ポンプ22A、22Bの吐出圧をそれぞれ検出するポンプ圧センサ25と、リモコン弁24により生じたパイロット圧を検出する操作圧センサ26と、旋回電動機15に対する旋回指令を出力する旋回指令出力手段37と、エンジン17の回転数を制御するECU(Engine Control Unit)27と、蓄電装置18の蓄電状態(State Of Charge:以下SOCともいう)を検出するための蓄電状態検出手段28と、エンジン17の動力及び蓄電装置18の充放電を制御する制御器30(図3参照)とを備えている。
【0033】
発電電動機19は、エンジン17の動力により発電機として作動する機能と蓄電装置18の電力により電動機として作動する機能とを有する。
【0034】
エンジン側インバータ20は、蓄電装置18から発電電動機19及び旋回側インバータ21の少なくとも一方に供給される電力、及び、発電電動機19から蓄電装置18及び旋回側インバータ21の少なくとも一方に供給される電力を制御する。
【0035】
旋回側インバータ21は、蓄電装置18及びエンジン側インバータ20の少なくとも一方から旋回電動機15に供給される電力、及び、旋回電動機15から蓄電装置18及びエンジン側インバータ20の少なくとも一方に供給される電力を制御する。
【0036】
つまり、エンジン側インバータ20及び旋回側インバータ21を制御することにより、蓄電装置18の充放電、発電電動機19及び旋回電動機15の駆動が制御される。
【0037】
ここで、旋回電動機15は、蓄電装置18の電力により電動機として作動して上部旋回体3を旋回させる機能と、旋回制動時に上部旋回体3の慣性エネルギーにより発電機として作動する機能とを有する。
【0038】
各油圧ポンプ22A、22Bは、エンジン17の動力により作動して、それぞれ圧油を吐出する。また、各油圧ポンプ22A、22Bは、それぞれレギュレータ22a、22bに対して制御指令(電気信号)が入力されることにより、圧油の吐出流量を調整可能な可変容量式のポンプである。
【0039】
各油圧ポンプ22A、22Bから吐出された圧油は、複数の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、及び走行モータ14)に対して供給される。各油圧ポンプ22A、22Bの吐出圧は、各ポンプ圧センサ25によって検出される。
【0040】
また、各油圧ポンプ22A、22Bからの圧油は、それぞれ合流した状態で油圧アクチュエータに供給される。一方、各油圧ポンプ22A、22Bは、複数のアクチュエータを2つ以上のグループに分けたときの1つのグループにそれぞれ圧油を供給してもよい。なお、図2では、油圧アクチュエータとしてバケットシリンダ10の図示を省略している。
【0041】
コントロールバルブ23は、複数の油圧アクチュエータに対する圧油の給排をそれぞれ制御する。具体的に、コントロールバルブ23は、操作レバー24aの操作に応じてリモコン弁24を介して供給されるパイロット圧に応じて切換操作され、これにより、各油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する。コントロールバルブ23に供給されるパイロット圧は、操作圧センサ26によって検出される。
【0042】
なお、図2は、説明を簡素化するために1つのコントロールバルブ23及びリモコン弁24を示しているが、コントロールバルブ23及びリモコン弁24は、複数のアクチュエータのそれぞれに1つずつ設けられている。
【0043】
旋回指令出力手段37は、操作レバー37aの操作量に応じた旋回電動機15の旋回指令(電気信号)を出力する。旋回指令出力手段37から出力された指令は、後述する制御器30に入力され、制御器30による各インバータ20、21の制御によって旋回電動機15の駆動が制御される。
【0044】
ECU27は、後述する制御器30からの指令に応じてエンジン17の出力を制御する。
【0045】
蓄電状態検出手段28は、蓄電装置18のSOC(充電率)の算出に必要な情報を検出する。具体的に、蓄電状態検出手段28は、蓄電装置18の出力電流と端子間電圧と温度とを検出し、これらを後述する制御器30に出力する。
【0046】
図3を参照して、制御器30は、蓄電装置18のSOCを算出する蓄電状態算出部31と、制御に必要な情報を記憶する記憶部32と、エンジン17に要求される必要動力を算出する必要動力算出部33と、各油圧ポンプ22A、22Bに馬力指令を出力するポンプ馬力指令部34と、必要動力を得るためのエンジン17の出力と蓄電装置18の出力との配分を設定する動力配分設定部35と、蓄電装置18の電力を用いたアシストが行なわれている状態を解析するアシスト状態解析部36とを備えている。
【0047】
蓄電状態算出部31は、蓄電状態検出手段28により検出された出力電流と端子間電圧と温度とを用いて蓄電装置18のSOCを算出する。蓄電装置18の端子間電圧は、その温度に依存するため、蓄電状態算出部31は、蓄電装置18の温度を用いて端子間電圧を補正する。また、蓄電状態算出部31は、蓄電装置18の出力電流及び端子間電圧に基づいて蓄電装置18の電力を算出し、この電力に基づいて充電量を算出する。そして、蓄電状態算出部31は、算出された充電量の蓄電装置18の最大充電量に対する比として、SOCを算出する。
【0048】
また、蓄電状態算出部31は、算出されたSOCに基づいて、蓄電装置18の充電電力の最大値Pbc図10のステップS1参照)を算出する。
【0049】
記憶部32は、エンジン17の駆動効率が予め設定された効率範囲内となるエンジン出力の制御範囲の上限値Pehと下限値Pelとを予め記憶している。ここで、エンジン出力の上限値Peh及び下限値Pelは、例えば図4に示すように、エンジン効率が最大となるエンジン出力(図4に示す曲線において効率が最大となるエンジン出力)を含む範囲を規定するように設定されている。
【0050】
なお、エンジン出力の上限値Pehの電力換算値を符号Pgu(例えば、図5)で示し、エンジン出力の下限値Pelの電力換算値を符号Pgl(例えば、図5)で示す。これらの電力の上限値Pgu及び下限値Pglも記憶部32に記憶されている。
【0051】
必要動力算出部33は、エンジン17に要求される必要動力を算出する。以下、その詳細を説明する。
【0052】
必要動力算出部33は、油圧系統の動力として、油圧ポンプ22A、22Bの吐出圧と吐出流量との積であるポンプ動力を算出する。ここで、吐出圧は、ポンプ圧センサ25により検出された圧力である。また、吐出流量は、操作圧センサ26により検出される操作レバー24aの操作量に基づいて算出される。具体的に、馬力制御の場合、予め設定された馬力特性とポンプ圧センサ25により検出されたポンプ圧とに基づいて、吐出流量が算出され、ポジティブコントロール制御(いわゆる、ポジコン)の場合、操作レバー24aの操作量に見合った吐出流量が特定される。
【0053】
また、必要動力算出部33は、電気系統の動力として、旋回電動機15の動力を算出する。ここで、旋回電動機15の動力は、旋回電動機15の回転速度と旋回電動機15の出力トルクとを乗算した値に基づいて算出される。旋回電動機15の回転速度は、例えば、速度センサにより検出することができ、旋回電動機15の出力トルクは、例えば、蓄電装置18から旋回電動機15へ供給される電流値に基づいて特定することができる。なお、旋回電動機15の動力は、予め設定された旋回電動機15及び旋回側インバータ21の損失を考慮して算出することもできる。
【0054】
そして、必要動力算出部33は、油圧系統の動力と電気系統の動力とを合算し、これを電力に換算した必要電力(必要動力)Pを算出する。
【0055】
動力配分設定部35は、蓄電状態算出部31、記憶部32及び必要動力算出部33からの情報に基づいて、必要電力Pを得るためのエンジン17の動力と蓄電装置18の電力との配分を決定し、この配分に基づいて蓄電装置18の充放電及びエンジン17の出力を制御するための指令を各インバータ20、21及びECU27に出力する。
【0056】
具体的に、動力配分設定部35は、エンジン17の出力動力(電力)が上限値Pguと下限値Pglとの間で推移するように蓄電装置18の充放電を制御する通常制御を実行する。以下、図5を参照して通常制御を説明する。なお、図5の太線Pは、エンジン17の動力の電力換算値である。
【0057】
通常制御では、エンジン17に対する必要電力Pがエンジン出力の上限値Pguを超える範囲E3において、ハッチングで示す動力を発電電動機19の電動機としての駆動によって確保する(蓄電装置18の電力によりエンジン17をアシストする)。
【0058】
一方、必要電力Pがエンジン出力の下限値Pglを下回る範囲E1において、ハッチングで示す動力を発電電動機19の発電機としての駆動によって電力に変換して蓄電装置18を充電する。
【0059】
なお、必要電力Pが上限値Pguと下限値Pglとの間である範囲E2の場合には、蓄電装置18の充放電を行なわずにエンジン17の出力動力(電力)Pのみによって必要電力Pを確保する。
【0060】
ここで、動力配分設定部35は、エンジン出力の下限値Pglを蓄電装置18のSOCに応じて変更する。具体的に、動力配分設定部35は、図6に示すように、SOCが小さくなるほど、下限値Pglを大きくする。これにより、SOCが小さくなった状態において、蓄電装置18の充電頻度を上げることによりSOCを早期に回復することができる。
【0061】
また、動力配分設定部35は、必要電力Pが上限値Pguを超え、かつ、蓄電装置18のSOCが小さくなった場合に前記通常制御に代えて第1制御を実行し、さらにSOCが小さくなった場合に第1制御に変えて第2制御を実行する。
【0062】
ここで、SOCが小さくなったか否かは、アシスト状態解析部36によって解析される。具体的に、アシスト状態解析部36は、図7に示すように、蓄電装置18の電力を用いたエンジン17のアシストが継続している状態(必要電力Pが上限値Pguを上回る時期Tから下回る時期Tまでの間の状態)における継続時間T又はこの継続時間T中における必要電力Pの積分量Eを算出する。
【0063】
動力配分設定部35は、アシスト状態解析部36により算出された継続時間T又は積分量Eが予め設定された第1閾値TTh1図9参照)を超える場合に第1制御を実行し、継続時間T又は積分量Eが予め設定された第2閾値TTh2図9参照)を超える場合に第2制御を実行する。第1閾値TTh1及び第2閾値TTh2は、継続時間T又は積分量Eについて設定されたものである。
【0064】
以下、図8を参照して、第1制御及び第2制御の概要について説明する。
【0065】
第1制御において、動力配分設定部35は、エンジン出力の上限値Pguをこれよりも大きな上限値Pgu1に変更する。つまり、動力配分設定部35は、必要電力Pのうち、蓄電装置18により負担する電力を通常制御よりも低く設定するとともに、エンジン17により負担する電力(動力)を通常制御よりも高く設定する。これにより、蓄電装置18の電力消費を抑えながら必要電力Pを得ることができる。
【0066】
なお、上限値Pgu1の設定により低減する蓄電装置18の出力は、通常制御における出力よりも小さく0よりも大きい出力である。
【0067】
一方、第2制御において、動力配分設定部35は、エンジン出力の上限値Pgu1をこれよりも大きな上限値Pgu2に変更する。具体的に、動力配分設定部35は、必要電力Pのうち、蓄電装置18により負担する電力を0に設定するとともに、エンジン17により負担する電力(動力)を第1制御よりも高く設定する。つまり、第2制御では、必要電力Pの全てがエンジン17によって負担される。
【0068】
ここで、動力配分設定部35は、上限値Pguを上限値Pgu1に変更するための時間T1よりも上限値Pgu1を上限値Pgu2に変更するための時間T2が長くなるように、通常制御と第1制御と第2制御とを切り換える。
【0069】
また、動力配分設定部35は、図9に示すように、蓄電装置18のSOCが小さいほど第1閾値TTh1及び第2閾値TTh2が小さくなるように、第1閾値TTh1及び第2閾値TTh2を変更する。これにより、蓄電装置18のSOCが小さいほど、早い段階で第1制御及び第2制御を実行することができるため、蓄電装置18の充電率が必要以上に低下するのをより確実に抑制することができる。
【0070】
なお、本実施形態における複数の油圧アクチュエータ(各シリンダ8〜10及び走行モータ14)のうち走行モータ14(高馬力アクチュエータ)については、他の油圧アクチュエータに比べて高い馬力が要求される。
【0071】
そこで、図3に示すポンプ馬力指令部34は、走行モータ14に対する操作レバー24aが操作された場合に、走行モータ14が作動しない場合と比較して各ポンプ22A、22Bの出力馬力を増加させる(以下、増馬力制御という)。具体的に、ポンプ馬力指令部34は、各ポンプ22A、22Bの吐出流量を増加するための指令をレギュレータ22a、22bに出力する。
【0072】
しかし、このように、油圧ポンプ22A、22Bの馬力を増加させると、エンジン17に対する必要電力Pも増加するため、蓄電装置18の電力消費の速度が高くなる。
【0073】
そこで、動力配分設定部35は、増馬力制御が実行される場合に、第1閾値TTh1及び第2閾値TTh2を低く設定する。これにより、増馬力制御が実行された場合であっても、早期に蓄電装置18の電力消費を抑えることができる。
【0074】
なお、増馬力制御の対象となる油圧アクチュエータは、走行モータ14に限定されない。例えば、作業アタッチメント4がバケット7に代えて破砕装置を有する場合、この破砕装置の一対の刃を開閉駆動するための油圧シリンダも増馬力制御の対象となる。
【0075】
以下、図3及び図10を参照して、制御器30により実行される処理を説明する。
【0076】
処理が開始されると、必要電力Pの全てが蓄電装置18に充電可能であるか否か、つまり必要電力Pが充電電力の最大値(−Pbc)より小さいか否かが判定される(ステップS1)。
【0077】
上部旋回体3の旋回制動のみが行われる場合のように、旋回電動機15が発電機として作動するとともにエンジン17に動力が要求されていない状況においては、ステップS1でYESと判定される。
【0078】
この場合、必要電力Pの全てが蓄電装置18に充電されるとともにエンジン17の出力が0となるように、蓄電装置18に対する制御指令Pが最大充電電力(−Pbc)に設定されるとともに、エンジン17に対する制御指令Pが0に設定され(ステップS2)、これらの指令が各インバータ20、21及びECU27に出力される。
【0079】
一方、ステップS1でNOと判定されると、必要電力Pがエンジン出力の下限値Pglよりも小さいか否かが判定される(ステップS3)。つまり、エンジン出力が下限値Pglに設定された状態で蓄電装置18を充電可能な状態(図5の範囲E1参照)にあるか否かが判定される。
【0080】
ステップS3でYESと判定されると、必要電力Pのうちエンジン出力の下限値Pglを除く余剰電力の全てが蓄電装置18に充電可能であるか否かが判定される(ステップS4)。このステップS4でYESと判定されると、蓄電装置18が最大充電電力(−Pbc)となり、かつ、エンジン出力が必要電力Pから最大充電電力Pbcを差し引いた値[P−(Pbc)]となるように各制御指令P、Pが設定され、これらの指令が各インバータ20、21及びECU27に出力される(ステップS5)。
【0081】
一方、ステップS4でNOと判定されると、エンジン出力が下限値Pglとなり、かつ、蓄電装置18の充電電力が前記余剰電力(P−Pgl)となるよう各制御指令P、Pが設定され、これらの指令が各インバータ20、21及びECU27に出力される(ステップS6)。
【0082】
また、前記ステップS3でNOと判定されると、必要電力Pがエンジン出力の下限値Pgl以上で、かつ、上限値Pgu未満であるか否か、つまり、図5の範囲E2内の状態であるか否かが判定される(ステップS7)。
【0083】
このステップS7でYESと判定されると、エンジン出力が必要電力Pとなり、かつ、蓄電装置18の充放電電力が0となるように、各制御信号P、Pが設定され、これらの指令が各インバータ20、21及びECU27に出力される(ステップS8)。
【0084】
一方、ステップS7でNOと判定された場合、つまり、必要電力Pがエンジン出力の上限値Pgu以上であると判定されると、図7に示すアシストの継続時間T又はアシスト動力(電力)の積分量Eが第1閾値TTh1よりも大きいか否かが判定される(ステップS9)。
【0085】
ステップS9でNOと判定された場合、つまり、必要電力Pがエンジン出力の上限値Pgu以上であると判定され、かつ、アシストの継続時間T又はアシスト動力(電力)の積分量Eが第1閾値TTh1以下である場合には、次の処理が実行される。
【0086】
必要電力Pからエンジン出力の上限値Pguを減じた電力を蓄電装置18が負担するとともに、エンジン出力が上限値Pguとなるように各制御信号P、Pが設定され、これらの指令が各インバータ20、21及びECU27に出力される(ステップS10)。
【0087】
一方、ステップS9でYESと判定されると、アシストの継続時間T又はアシスト動力(電力)の積分量Eが第2閾値TTh2よりも大きいか否かが判定される(ステップS11)。
【0088】
このステップS11でNOと判定されると、つまり、アシストの継続時間T又はアシスト動力(電力)の積分量Eが第1閾値TTh1よりも大きく第2閾値TTh2以下であると判定されると、前記ステップS10と比較して蓄電装置18の放電電力を制限する第1制御が実行される(ステップS12)。上述のように、ステップS10は、アシストの継続時間T又はアシスト動力(電力)の積分量Eが第1閾値TTh1以下である場合の処理である。
【0089】
第1制御では、ステップS10で設定される蓄電装置18の放電電力(P−Pgu)に対して係数αを乗じた値を蓄電装置18の放電電力として設定する。ここで、係数αは、0よりも大きく1よりも小さい値である。また、第1制御では、ステップS10で設定されるエンジン出力に対して、蓄電装置18の放電電力から減じた分の電力を加算してエンジン17の動力負担を増加させる。
【0090】
そして、ステップS12では、このような動力負担を実現するための各制御指令P、Pが設定され、これらの指令が各インバータ20、21及びECU27に出力される。
【0091】
一方、ステップS11でYESと判定されると、つまり、アシストの継続時間T又はアシスト動力(電力)の積分量Eが第2閾値TTh2よりも大きいと判定されると、前記第1制御よりもさらに蓄電装置18の放電電力を制限する第2制御が実行される(ステップS13)。
【0092】
具体的に、第2制御では、蓄電装置18の放電電力が0となり、かつ、エンジン17の出力が必要電力Pとなるように、各制御指令Pb、Pgが設定される。つまり、第2制御では、必要電力Pをエンジン17のみによって負担する。そして、これらの制御指令は、各インバータ20、21及びECU27に出力される。
【0093】
そして、上述したステップS2、S5、S6、S8、S10、S12、及びS13の実行後、当該処理は終了する。
【0094】
以上説明したように、エンジン17に要求される必要電力Pがエンジン出力の上限値Pguを超える高負荷状態において、蓄電装置18の電力を用いてエンジン17をアシストすることができる。
【0095】
さらに、高負荷状態が継続している場合(例えば、連続[登坂]走行又は作業アタッチメントの連続押付作業が行われている場合)であって、アシスト動力の積分量E又は継続時間Tが第1閾値TTh1を超える場合にアシスト動力を減らす(その分エンジン17の動力を増やす:ステップS12)。また、アシスト動力の積分量E又は継続時間Tが第2閾値TTh2を超える場合にアシスト動力を0に設定する(エンジンの動力のみで必要動力を確保する:ステップS13)。
【0096】
これにより、高負荷状態の継続期間中において必要以上に蓄電装置18の電力が消費されるのを抑制することができる。特に、蓄電装置18の充電量が極めて低い状態(アシスト動力の積分量E又は継続時間Tが第2閾値TTh2を超えた状態)においては、蓄電装置18の電力消費を0に抑えることができるため、蓄電装置18の充電状態を確実に保持することができる。
【0097】
また、高負荷状態の継続期間中における消費動力の大きさ又は継続時間の長さに応じて、蓄電装置18の消費電力を段階的に小さくすることができる。そのため、高負荷状態の継続が比較的短い場合(アシスト動力の積分量E又は継続時間Tが第1閾値TTh1を超え、その後即座に第1閾値TTh1を下回った場合)には、迅速に通常制御に復帰することができる。
【0098】
そして、前記実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0099】
前記実施形態によれば、図9に示すように、SOCに応じて各閾値TTh1、TTh2を変更することにより、蓄電装置18のSOC(充電率)が小さい程、早い段階で蓄電装置18の放電(エンジンのアシスト)を抑制することができる。そのため、蓄電装置18の充電率が必要以上に低下するのをより確実に抑制することができる。
【0100】
前記実施形態によれば、予め設定された高馬力アクチュエータ(走行モータ14)の作動時に、油圧ポンプ22A、22Bの流量を大きく設定することにより油圧ポンプ22A、22Bの出力馬力を高くすることができるため、高馬力アクチュエータの必要馬力を確保することができる。
【0101】
ここで、油圧ポンプ22A、22Bの出力馬力を高くするために蓄電装置18の電力の消費速度が増加することになるが、前記実施形態では、高馬力アクチュエータの作動時に第1閾値TTh1及び第2閾値TTh2を低く設定するため、蓄電装置18の充電率が必要以上に低下するのを抑制することができる。
【0102】
前記実施形態によれば、図8に示すように、通常制御から第1制御へ切り換わるまでの時間T1が第1制御から第2制御へ切り換わるまでの時間T2よりも長く設定されている。そのため、アシスト動力の低下(エンジン動力の増加)によりオペレータに与える違和感を緩和することができる。
【0103】
一方、通常制御から第1制御への切り換え段階よりも蓄電装置18の充電率が低下している第1制御から第2制御への切り換え段階において、その切換時間T2を短くすることにより、蓄電装置18の放電を迅速に停止させて蓄電装置18の充電量が必要以上に低下するのをより確実に抑制することができる。
【0104】
なお、前記実施形態では、油圧系統を有するハイブリッドショベルについて説明したが、本発明は、第1油圧ポンプ22A、第2油圧ポンプ22Bを省略するとともに、油圧式のシリンダ8〜10及び走行モータ14に代えて、電動式のシリンダ及び走行モータを有するハイブリッドショベルについても適用可能である。
【0105】
この場合、電動式のシリンダ及び走行モータは、蓄電装置18の電力及び発電電動機19により発電された電力の少なくとも一方によって作動する。そのため、この態様においても、アクチュエータ(電動式のシリンダ、走行モータ、及び旋回電動機15)を駆動するための動力は、エンジン及び蓄電装置によって分担される。つまり、蓄電装置の電力によってエンジンがアシストされる。
【符号の説明】
【0106】
アシスト動力の積分量
必要電力(必要動力の一例)
eh エンジン出力の制御範囲の上限値
el エンジン出力の制御範囲の下限値
gu エンジン出力動力(電力)の上限値
gl エンジン出力動力(電力)の下限値
1 ハイブリッドショベル
8 ブームシリンダ(油圧アクチュエータの一例)
9 アームシリンダ(油圧アクチュエータの一例)
10 バケットシリンダ(油圧アクチュエータの一例)
14 走行モータ(油圧アクチュエータの一例)
15 旋回電動機(アクチュエータの一例)
17 エンジン
18 蓄電装置
19 発電電動機
22A、22B 油圧ポンプ
30 制御器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10