(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の基板と、少なくとも前記第1の基板の一方の面に配設された電極と、前記電極上に配設された電子素子と、内部空間を有するとともに通気口を有し、前記電子素子を覆う外装体とを有する電子部品の通気口を第1の封止部材で封止する工程と、
前記電子部品を第2の基板に配設し、前記電子部品を前記第2の基板上に第2の封止部材で封止する工程と、
からなる電子部品の実装方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用された回路基板について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
[回路基板]
回路基板について、
図1乃至
図3を用いて説明する。回路基板100は、
図1乃至
図3に示すように、電子部品である保護素子10と、第2の基板である実装基板20と、第2の封止材料である第2の樹脂材料25とを備えている。なお、
図2においては、保護素子10内部の絶縁部材15及び発熱体引出電極16について簡便のため図示を省略するが、上面からの透し平図面にはこれら絶縁部材15及び発熱体引出電極16があるものとする。
【0017】
保護素子10については、詳細を以下で説明する。
【0018】
実装基板20は、保護素子10を実装する図示しない回路パターンが形成された基板である。実装基板20は、図示しないハンダ等によって回路パターンと保護素子10の端子が電気的に接続されている。
【0019】
第2の封止部材である第2の樹脂材料25は、実装基板20上で保護素子10を封止する樹脂材料である。第2の樹脂材料25は、後述する第1の樹脂材料21よりも小さい所定の粘度を有しており、第1の樹脂材料21を有する保護素子10を完全に覆い隠すように設けられている。
【0020】
[電子部品の構成]
ここで、本実施例においては、電子部品として保護素子に適用して以下で説明するが、同様の課題を有する他の電子部品を実装する際にも適宜適用することができる。
図4乃至
図8に示すように、保護素子10は、第1の基板である絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱抵抗体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱抵抗体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)にそれぞれ接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13と、可溶導体13上に設けられ、可溶導体13に発生する酸化膜を除去するとともに可溶導体13の濡れ性を向上させる複数のフラックス17と、可溶導体13を覆う外装体となるカバー部材19と、第1の封止部材である第1の樹脂材料21とを備える。
【0021】
なお、
図4乃至
図6においては、第1の樹脂材料21を付加する前の状態が図示されており、
図7及び
図8においては、第1の樹脂材料21を付加した後であって、第2の樹脂材料25を付加する前の状態が図示されている。なお、
図2、
図5及び
図8においては、実装基板20の図示を省略している。保護素子10を実装基板20に実装する実装方法については詳細を後述する。また、
図5乃至
図8においては、絶縁部材15及び発熱体引出電極16について簡便のため図示を省略するが、上面からの透し図面にはこれら絶縁部材15及び発熱体引出電極16があるものとする。
【0022】
絶縁基板11は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材を用いて略方形状に形成されている。絶縁基板11は、その他にも、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよいが、可溶導体13の溶断時の温度に留意する必要がある。
【0023】
発熱抵抗体14は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばW、Mo、Ru等からなる。これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板11上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成する。
【0024】
発熱抵抗体14を覆うように絶縁部材15が配置され、この絶縁部材15を介して発熱抵抗体14に対向するように発熱体引出電極16が配置される。発熱抵抗体14の熱を効率良く可溶導体13に伝えるために、発熱抵抗体14と絶縁基板11の間に絶縁部材15を積層しても良い。絶縁部材15としては、例えばガラスを用いることができる。
【0025】
発熱体引出電極16は、発熱抵抗体14の一端と連続されるとともに、一端が発熱体電極18(P1)に接続され、他端が発熱抵抗体14を介して他方の発熱体電極18(P2)に接続されている。
【0026】
可溶導体13は、発熱抵抗体14の発熱により速やかに溶断される材料からなり、例えばSnを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属を好適に用いることができる。また、可溶導体13は、In、Pb、Ag、Cu等の合金を用いてもよく、あるいは低融点金属と、Ag、Cu又はこれらを主成分とする合金等の高融点金属との積層体であってもよい。
【0027】
なお、可溶導体13は、発熱体引出電極16及び電極12(A1),12(A2)へ、ハンダ等により接続されている。
【0028】
また、保護素子10は、内部を保護するために、絶縁基板11上にカバー部材19が設けられている。カバー部材19は、内部空間を有するとともに保護素子10の外部と内部とを連通する通気口19a,19b,19c,19dを有している。なお、通気口19a,19b,19c,19dによって保護素子10を実装する際に熱処理工程を経ても内部の膨張した空気が適切に外部へ放出することができる。また、保護素子10を実装した後に樹脂による封止工程を行えば、外部のアウトガスが保護素子10内に侵入することを防止することができる。封止工程については、詳細を後述する。
【0029】
保護素子10は、可溶導体13が、絶縁部材15及び発熱体引出電極16を介して、発熱抵抗体14と重畳した位置に設けられることにより、発熱抵抗体14が発した熱を効率よく可溶導体13に伝え、速やかに溶断させることができる。
【0030】
ここで、保護素子10は、定格を向上させ、より多くの電流を流すために、可溶導体13の導体抵抗を下げることが求められる。そのため、保護素子10は、電極12(A1),12(A2)間の導電距離の短縮化、及び可溶導体13と電極12(A1),12(A2)との接続面積の増大が図られ、
図2、
図5及び
図8に示すように、可溶導体13の形状が、電極12(A1),12(A2)間距離において短く、電極12(A1),12(A2)との接続距離において長い、平面視で矩形状をなす。
【0031】
また、可溶導体13の矩形化に応じて、発熱抵抗体14、絶縁部材15及び発熱体引出電極16も、電極12(A1),12(A2)間において短く、電極(A1),12(A2)の長辺に沿って長い、矩形状をなす。
【0032】
[フラックスの配置]
可溶導体13の表面には、フラックス17が設けられている。フラックス17は、略楕円形状をなし、張力が全体にわたって均一に作用し左右に偏倚することなくバランスよく保持されている。
【0033】
フラックス17は、発熱抵抗体14に沿って複数設けられている。これにより、保護素子10は、フラックス17が矩形状の可溶導体13表面を広範囲にカバーすることができ、発熱抵抗体14の発熱により、フラックス17を可溶導体13の全面にわたって均一に拡散させる。したがって、保護素子10は、可溶導体13の酸化防止や濡れ性の向上によって、電極12(A1),12(A2)間の電流経路を速やかに溶断することができる。
【0034】
フラックス17は、例えば、
図2、
図4、
図5及び
図8に示すように、可溶導体13表面上において、発熱抵抗体14と重畳する位置に、発熱抵抗体14に沿って設けられている。これにより、フラックス17は、発熱抵抗体14の熱により可溶導体13の発熱抵抗体14との重畳位置から外縁部にかけて拡散し、可溶導体13の全面にわたって均一に拡散することで、可溶導体13を速やかに溶断することができる。
【0035】
このとき、
図1及び
図4に示すように、少なくとも一つのフラックス17は、発熱抵抗体14の発熱中心14a上に配置されていることが好ましい。発熱抵抗体14の発熱中心14aは、絶縁基板11上に設けられた矩形状の発熱抵抗体14の中央部をいう。発熱抵抗体14は、外部と接する外縁部から熱が逃げていくことから、外縁部から離れている発熱中心14aが最も温度が高く、外縁部に向かって低くなる温度分布を有する。
【0036】
保護素子10は、発熱中心14a上にフラックス17を配置することにより、当該フラックス17が発熱抵抗体14の温度分布に対応して、発熱中心14aより外縁部に向かって放射状に拡散する。すなわち、発熱中心14aにフラックス17を設けていない場合、最も温度が高い発熱中心14aに向かってはフラックス17は拡散しにくく、発熱中心14a上にフラックス17が行き渡らない恐れがある。
【0037】
したがって、保護素子10は、予めフラックス17が拡散しにくい発熱抵抗体14の発熱中心14a上にフラックスを配置することにより、確実にフラックス17を可溶導体13の全面に拡散させることができる。
【0038】
[通気口の形状および配置]
カバー部材19に設ける通気口19a,19b,19c,19dの形状は、
図6及び
図7において、略矩形の切り欠き形状とされているが、略円弧状の切り欠き形状としてもよいし、加工の方法によって所望の形状とすることができる。また、カバー部材19に設ける通気口19a,19b,19c,19dの配置は、
図1、
図2、
図4乃至
図8において、カバー部材19の側面の下方で各側面の略中央とされているが、所望の位置に適宜設定することができる。なお、詳細は後述するが、カバー部材19には、各側面に通気口を複数設けるようにしてもよい。また、カバー部材19の上面に通気口を設けるようにしてもよい。
【0039】
ここで、カバー部材19に設ける通気口の位置は、カバー部材19の側面が最も好ましい。上面に通気口を設けた場合には、低粘度の第1の樹脂材料21が、垂れ落ちて、保護素子10内部に入り込みすぎてしまうためである。詳細は後述するが、第1の樹脂材料21の保護素子10内部への侵入量は少ない方が好ましい。また、低粘度の第1の樹脂材料21を通気口19a,19b,19c,19dを封止するように保持するためには、カバー部材19の側面が最も効果的であり、絶縁基板11や実装基板20によって、第1の樹脂材料21の流れ落ちを防止し、形状が保持されやすいという効果を得ることができる。なお、第1の樹脂材料21の粘度によっては、カバー部材19の上面に通気口を設けることを妨げるものではない。
【0040】
通気口をカバー部材19の上面に設ける場合には、第1の樹脂材料21が、保護素子10の内部に流入し、詳細を後述するが、保護素子10の機能を阻害しないように、保護素子10の可溶導体13等の内部構造を避ける位置に設けることが好ましい。
【0041】
なお、カバー部材19に設けた通気口の形状や配置は、保護素子10を実装する際の熱処理工程において、膨張した内部の空気を外部に流出しやすい形状、配置とされていることが好ましい。
【0042】
[第1の封止部材]
第1の封止部材である第1の樹脂材料21は、
図1、
図2、
図7及び
図8に示すように、カバー部材19の開口部を封止するように設けられている。第1の樹脂材料21は、所定の粘度を有しており、カバー部材19の通気口19a,19b,19c,19dを封止するように、それぞれ、第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dとして4ヶ所に設けるようにしている。
【0043】
なお、
図7及び
図8において、第1の樹脂材料21は、4ヶ所を個別に埋めるように4ヶ所に分散するようにしているが、通気口19a,19b,19c,19dの複数をまとめて封止するよう構成してもよい。封止工程を簡略化することができるためである。この場合は、通気口の距離が近いものをまとめて一つのグループとして第1の封止材料21によって封止するようにしてもよい。
【0044】
具体的に、
図7及び
図8に示す第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dは、は、ケース部材19の側面に設けられた通気口19a,19b,19c,19dに注入されて、重力によってケース部材19の外部の下方に流れつつも、カバー部材19の外側面や通気口19a,19b,19c,19dの壁面に対する表面張力によって丸みを帯びた形状となり、実装基板20とによって支持されて形状が保持される。
図7において、第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dは、ケース部材19の上面側は薄く、実装基板20側に向けて厚くなる形状となっている。第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dは、それぞれ通気口19a,19b,19c,19dを塞ぐことができる十分なサイズが好ましいが、必要以上に大きくすると、注入する樹脂の総量が多くなり大型化、重量増大を招くため、設計上許容ができる範囲で注入量を少なくし小さなサイズとすることが好ましい。
【0045】
より具体的な通気口19a,19b,19c,19dのサイズについて説明すると、例えば、保護素子10の寸法が6mm×4mm×2mmとすると、通気口19a,19b,19c,19dのサイズはそれぞれ、0.8mm×0.3mm程度とすることが好ましい。上述で説明した第1の樹脂材料21を注入する際に適した大きさとなり、第1の樹脂材料21の注入する前の熱処理工程において、通気口としての機能を十分に発揮しうる大きさである。
【0046】
一方、第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dは、ケース部材19の内部にも侵入することとなる。その侵入量は、
図7及び
図8に示すように、通気口19a,19b,19c,19dから漏れ出た範囲で、必要最低限となるようにすることが好ましい。具体的は、第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dは、ケース部材19の外側面と同様に、重力によって下方に流れつつも、カバー部材19の内側面や通気口19a,19b,19c,19dの壁面に対する表面張力によって丸みを帯びた形状となり、絶縁基板11によって支持されて形状が保持される。なお、
図7において、内部へ侵入した第1の樹脂材料21について、破線によって他の部位と同様に透視した状態で図示している。
【0047】
第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dは、ケース部材19内部において可溶導体13等の内部素子と接触しない程度に通気口19a,19b,19c,19dから漏れ出る程度とする。なお、
図7及び
図8において、内部へ侵入した第1の樹脂材料21について、破線によって他の部位と同様に透視した状態で図示している。
【0048】
比較例を上げてより具体的に説明すると、可溶導体13を覆うほど第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dがケース部材19の内部に侵入しすぎた場合、例えば、
図9に示すように、可溶導体13を第1の樹脂材料21によって覆ってしまう可能性がある。このような構造とした場合に、保護素子10の内部を密閉することができるが、可溶導体13が溶融した場合に、詳細を後述する回路を保護するための溶断が適切に行われない可能性が生じる。なお、
図9は、樹脂の過充填を説明するための図であり、対応する構成要素に付した符号は、上述で説明した
図1乃至
図8と同じものを用いているが、あくまで比較例として例示しているに過ぎない。
【0049】
回路を保護するために適切な溶断が行われると、例えば、
図10に示すように、可溶導体13は、溶融して分断されて中央でまとまり溶融導体13aとなる。溶融導体13aがまとまるためには、保護素子10の内部空間が必要であり、
図9に示すような第1の樹脂材料21によって内部空間が埋められてしまうと、溶融導体13aがまとまることができなくなり、可溶導体13が溶断せず、回路遮断が行えない恐れが生じてしまう。
【0050】
そこで、本実施の形態においては、
図7及び
図8で示すように、第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dは、ケース部材19内部において可溶導体13等の内部素子と接触せず、保護素子10の内部空間が確保された状態となる程度の漏れ出し量となるように調整している。なお、保護素子10の機能を阻害しない範囲で、第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dと可溶導体13等とが接触することを妨げるものではない。
【0051】
第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dは、ケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dを封止することで密閉するため、アウトガスにさらされることによる保護素子10の劣化を抑止することができる。また、後述する第2の樹脂材料25の封止工程において、第2の樹脂材料25を保護素子10の内部に流入することを防止する機能を有する。
【0052】
なお、第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dは、熱処理工程の後に付加するものである。熱処理工程において、保護素子10内部の空気が熱膨張する際に、保護素子10の内部空気を通気口19a,19b,19c,19dを経由して、保護素子の外部に放出するためである。
【0053】
ここで、比較例として、ケース部材19に通気口19a,19b,19c,19dを設けなかった場合について、
図11を用いて説明する。なお、
図11は、ケース部材19に通気口を設けなかった場合を説明するための図であり、対応する構成要素に付した符号は、上述で説明した
図1乃至
図8と同じものを用いているが、あくまで比較例として例示しているに過ぎない。
【0054】
ケース部材19に通気口19a,19b,19c,19dを設けない場合、熱処理工程において、保護素子10内部の空気が熱膨張するが膨張した空気の逃げ場がなく、保護素子10の内部圧力が急激に上昇する。内部圧力の急激な上昇に伴い、保護素子10の内部構造で強度の低い部分としてカバー部材19が絶縁基板11から引きはがされて、外れたり、カバー部材19の一部が損傷してしまったりする。
図11では、カバー部材19が外れてしまった状態を示している。
【0055】
保護素子10の内部構造で強度の低い部分としてカバー部材19が絶縁基板11から引きはがされて、外れたり、カバー部材19の一部が損傷してしまったりすると、保護素子が不良品となってしまう。なお、内部圧力の急激な上昇に伴う、損傷はカバー部材19に限定されず、他の部材にも影響があることは言うまでもなく、このような場合も同様に保護素子10が不良品となってしまう。
【0056】
従って、保護素子10は、ケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dを設けることで上述のような不良品の発生を回避することができる構造とされている。
【0057】
[第2の封止部材]
第2の封止部材である、第2の樹脂材料25は、
図1乃至
図3に示すように、上述で説明した第1の樹脂材料21によりケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dを封止するように保護素子10を実装基板20上に封止するものである。
【0058】
より具体的は、第2の樹脂材料25は、簡単に保護素子10を封止することができるとともに、形状が安定しやすい樹脂材料を用いることが好ましい。このような要求に基づくと、第2の樹脂材料25は、第1の樹脂材料21よりも粘度の低い樹脂を用いることが好ましい。言い換えると、第1の樹脂材料21は、第2の樹脂材料25よりも粘度の高い樹脂を用いことが好ましいともいえる。例えば、第1の樹脂材料21を用いて、保護素子10の最外部を封止することは、熱硬化のための時間や、形状の安定性の上で好ましくない。従って、第2の樹脂材料25は、ケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dを封止する第1の樹脂材料21と比較して粘度の低いものを用いることが好ましいと言える。
【0059】
第2の樹脂材料25は、保護素子10のカバー部材19を強固に固定することができるため、保護素子10内部の可溶導体13が溶断する際にカバー部材19が外れてしまうことも防止することができる。
【0060】
[樹脂材料]
ここで、第1の樹脂材料21の具体例を上げる。第1の樹脂材料21は、例えば、熱硬化性樹脂(セメダイン社製:SX720B)を用いることができる。SX720Bの粘度は、42.0(Pa・s/23℃)である。第1の樹脂材料21は、封止シート(京セラケミカル社製:TMS−701)等を用いてもよい。カバー部材19の通気口19a,19b,19c,19dを封止することができ、かつ、後述する実装工程で用いられる第2の樹脂材料25の素子内部19への流入を防止することができる、粘度又は強度を有することが好ましい。
【0061】
つぎに、第2の樹脂材料25の具体例を上げる。第2の樹脂材料25は、例えば、ポリアミド系樹脂接着剤(ヘンケル社製:OM678)を用いることができる。OM678の粘度は、3,000(mPa・s/210℃)である。射出成型等により簡単に保護素子10を封止することができるとともに、整形金型により形状が安定しやすいため、保護素子10の最外部を封止するために好適である。第2の樹脂材料25は、ケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dを封止する第1の樹脂材料21と比較して粘度の低いものを用いることが好ましいと言える。より具体的には、後述する加熱工程において、第2の樹脂材料25は、第1の樹脂材料21と比較して粘度が低いことが好ましい。
【0062】
上述では、最適な樹脂材料を例示したが、第2の樹脂材料25をポッティングすることで保護素子10を封止する場合は、第1の樹脂材料21と同程度の粘度の材料を用いることができる。製造上、熱硬化時間を長くとることができる場合に、選択しうる材料であり、第1の樹脂材料21によりケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dを予備的に封止し、第2の樹脂材料25で保護素子10を封止することができれば、これら、樹脂材料が、保護素子10内部に侵入しすぎることが無くなり、保護素子10の内部空間を確保しつつ保護素子10の機能を維持し、保護素子10の実装後にアウトガスの侵入を抑止することができる。
【0063】
また、封止部材としては、樹脂材料に限定せず、各種の封止部材を適宜選択して用いることができる。樹脂材料は、封止加工を容易とするために好適な材料であるが、他の封止機能を有する材料を選択するようにしてもよい。
【0064】
[実装工程]
次に、上述した構造を有する回路基板100を製造する工程、すなわち、実装基板20に保護素子10を実装する工程について説明する。
【0065】
[1.熱処理工程]
まず、
図4乃至
図6に示すように、第1の樹脂材料21を付加する前の保護素子10を、図示しないハンダペーストを塗布した実装基板20に設置し、例えばリフロー工程によって、ハンダペーストを溶融することで実装基板20に実装する。リフロー工程は加熱を伴う工程であり、リフロー工程では、ケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dが開放された状態、すなわち第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dが無い状態としている。
【0066】
従って、熱処理工程において、上述で説明したケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dによって保護素子10は内部圧力を外部に放出することができ、保護素子10が損傷することはない。
【0067】
[2.第1の封止工程]
つぎに、第1の樹脂材料21として熱硬化性樹脂をケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dにポッティングによって注入する。第1の樹脂材料21は、第2の樹脂材料25と比較して粘度が高いものを用いるため、ポッティングにより容易に通気口19aを塞ぎ、封止することが可能である。
【0068】
第1の樹脂材料21の注入量は、
図7及び
図8に示す、第1の樹脂材料21a,21b,21c,21dの形状となる量とする。少なくとも、第1の樹脂材料21の注入量は、ケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dを塞ぎ、第2の樹脂材料25の侵入に耐え得る量とし、また、可溶導体13と接するほど保護素子10の内部に侵入しない量とする。
【0069】
なお、ポッティング後の第1の樹脂材料21は、熱処理によって硬化する必要はない。後述で説明する第2の樹脂材料25の保護素子10内部への侵入を防止することができる程度の粘度又は強度を有していればよい。
【0070】
[3.第2の封止工程]
つぎに、第2の樹脂材料25として、ポリアミド系樹脂接着剤を射出成型法により、実装基板20上の保護素子10を密閉するように封止する。具体的には、保護素子10の外装部であるカバー部材19よりも大きな形状の金型を用い、保護素子10にこの金型をかぶせ、保護素子10の上方から第2の樹脂材料25を、例えば、200℃、15気圧で金型内に圧入し、封止構造体を形成し、第2の樹脂材料25を室温まで冷却することで、封止構造体を硬化する。
【0071】
ここで、保護素子10を第2の樹脂材料25で封止する工程では、ケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dが第1の樹脂材料21によって封止されているため、保護素子10の内部に低粘度で流動性が高い第2の樹脂材料25が侵入することはない。
【0072】
言い換えると、第1の樹脂材料21によってケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dが封止されることで、
図6で説明した場合と同様に、保護素子10の内部に第2の樹脂材料25が侵入してしまい、保護素子10の内部空間を充填してしまうことはない。
【0073】
特に、第2の樹脂材料による封止工程で、射出成型法を用いるため、上記で例示した15気圧で第2の樹脂材料25が金型内に圧入され、第1の樹脂材料21によりケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dを封止していない場合に、保護素子10の内部に加圧された低粘度の第2の樹脂材料25が流入しやすいため、第1の樹脂材料21による予備的な封止の効果を得ることができる。
【0074】
本実施の形態によれば、第1の樹脂材料21による第1の封止工程により、ケース部材19の通気口19a,19b,19c,19dを予備的に封止することで、第2の樹脂材料25による第2の封止工程を経ても保護素子10の内部空間を確保することができ、保護素子10の機能を損なうことはない。
【0075】
以上のように、熱処理工程、第1の封止工程、第2の封止工程を経て保護素子10が実装基板20に実装された回路基板100を得ることができる。回路基板100は、第1の樹脂材料21によって保護素子10内部への第2の樹脂材料25の流入を防止しつつ、第2の樹脂材料25によって保護素子10を完全に封止するため、保護素子10内部へのアウトガスの流入を防止しつつも、適切に内部空間を保つ構造となっている。
【0076】
また、本発明を適用することにより、内部空間を有するカバー部材を備える電子部品を実装基板に実装する際に、電子部品の内部空気を外部に放出可能として内部の電子素子の損傷を防止するとともに、電子部品を実装基板に実装した、回路基板は外部空気の流入を防止して電子素子の劣化を低減することができるようになる。
【0077】
なお、以下では、上述した保護素子10及び回路基板100の使用方法について簡単に説明する。
【0078】
[保護素子の使用方法]
このような保護素子10は、
図12に示すように、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック30内の回路に組み込まれて用いられる。バッテリパック30は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル31〜34からなるバッテリスタック35を有する。
【0079】
バッテリパック30は、バッテリスタック35と、バッテリスタック35の充放電を制御する充放電制御回路40と、バッテリスタック35の異常時に充電を遮断する本発明が適用された保護素子10と、各バッテリセル31〜34の電圧を検出する検出回路36と、検出回路36の検出結果に応じて保護素子10の動作を制御する電流制御素子37とを備える。
【0080】
バッテリスタック35は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル31〜34が直列接続されたものであり、バッテリパック30の正極端子30a、負極端子30bを介して、着脱可能に充電装置45に接続され、充電装置45からの充電電圧が印加される。充電装置45により充電されたバッテリパック30の正極端子30a、負極端子30bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0081】
充放電制御回路40は、バッテリスタック35から充電装置45に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子41、42と、これらの電流制御素子41、42の動作を制御する制御部43とを備える。電流制御素子41、42は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ。)により構成され、制御部43によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック35の電流経路の導通と遮断とを制御する。制御部43は、充電装置45から電力供給を受けて動作し、検出回路36による検出結果に応じて、バッテリスタック35が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子41、42の動作を制御する。
【0082】
保護素子10は、たとえば、バッテリスタック35と充放電制御回路40との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子37によって制御される。
【0083】
検出回路36は、各バッテリセル31〜34と接続され、各バッテリセル31〜34の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路40の制御部43に供給する。また、検出回路36は、いずれか1つのバッテリセル31〜34が過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子37を制御する制御信号を出力する。
【0084】
電流制御素子37は、たとえばFETにより構成され、検出回路36から出力される検出信号によって、バッテリセル31〜34の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子10を動作させて、バッテリスタック35の充放電電流経路を電流制御素子41、42のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0085】
以上のような構成からなるバッテリパック30において、本発明が適用された保護素子10は、
図13に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子10は、発熱体引出電極16を介して直列接続された可溶導体13と、可溶導体13の接続点を介して通電して発熱させることによって可溶導体13を溶融する発熱抵抗体14とからなる回路構成である。また、保護素子10では、たとえば、可溶導体13が充放電電流経路上に直列接続され、発熱抵抗体14が電流制御素子37と接続される。保護素子10の2個の電極12のうち、一方は、A1に接続され、他方は、A2に接続される。また、発熱体引出電極16とこれに接続された発熱体電極18は、P1に接続され、他方の発熱体電極18は、P2に接続される。
【0086】
このような回路構成からなる保護素子10は、発熱抵抗体14の発熱により可溶導体13を溶断することにより、確実に電流経路を遮断することができる。
【0087】
なお、本発明の保護素子は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。