特許第6382034号(P6382034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6382034-ドロー溶液及び正浸透水処理方法 図000005
  • 特許6382034-ドロー溶液及び正浸透水処理方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382034
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ドロー溶液及び正浸透水処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/00 20060101AFI20180820BHJP
   C07C 43/164 20060101ALN20180820BHJP
   C07C 43/13 20060101ALN20180820BHJP
   C07C 43/11 20060101ALN20180820BHJP
   C07C 69/14 20060101ALN20180820BHJP
【FI】
   B01D61/00 500
   !C07C43/164
   !C07C43/13 Z
   !C07C43/11
   !C07C69/14
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-176709(P2014-176709)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-49500(P2016-49500A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 淳
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−098833(JP,A)
【文献】 特開昭52−041174(JP,A)
【文献】 特開昭55−027071(JP,A)
【文献】 特開2003−116432(JP,A)
【文献】 特開平07−252680(JP,A)
【文献】 特開2014−097483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C11D 1/00−19/00
C23G 1/00−5/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む溶液と半透膜を介して接触させるドロー溶液であって、前記ドロー溶液が一般式(1)で示される水溶性液体化合物(2‐ブトキシエタノールを除く)または前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物(2‐ブトキシエタノールを除く)と水からなり、前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物(2‐ブトキシエタノールを除く)と水との混合物が下限臨界溶液温度を有することを特徴とするドロー溶液。
【化1】
[式中、
、Rは互いに独立して、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状または炭素数3〜8の分岐状若しくは環状アルキル基、炭素数1〜2のアシル基、置換されてもよいフェニル基および置換されてもよいベンジル基の内のいずれか一つを表すが、R、Rの少なくとも一方は水素原子ではなく、R、Rの炭素数の合計が3以上であり、
、Rは互いに独立して、水素原子および炭素数1〜4の直鎖状または分岐状アルキル基の内のいずれか一つを表すが、R、Rの少なくとも一方は水素原子であり、
nは1〜4の整数を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)の水溶性液体化合物が
‐イソブトキシエタノール、
2‐[2‐(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、
1‐エトキシ‐2‐(2‐エトキシエチル)エタン、
2‐[2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ]プロパン、
1−アセトキシ‐2‐(2‐エトキシエトキシ)エタン、
2,5,8,11‐テトラオキサペンタデカンおよび
1‐プロポキシ‐2‐プロパノールからなる群から選択される一つの化合物であることを特徴とする請求項1に記載のドロー溶液。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のドロー溶液と、水分を含む供給溶液とを半透膜を介して接触させることで、前記供給溶液中の水分を前記ドロー溶液に吸収させることを特徴とする正浸透水処理方法。
【請求項4】
前記供給溶液から水分を吸収して希薄になった前記ドロー溶液(以下適宜「希薄ドロー溶液」という)を前記希薄ドロー溶液の下限臨界溶液温度より高い温度に加熱することで液体‐液体の二層に相分離させ、液体‐液体に相分離した希薄ドロー溶液から分液により水分を分離し、ドロー溶液を高濃度化して再生することを特徴とする請求項3に記載の正浸透水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は正浸透法におけるドロー溶液及び正浸透水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正浸透法は、濃度すなわち浸透圧が異なる二種類の溶液を、半透膜を介して接触させ、これらの二種類の溶液の浸透圧差を小さくする方向に、すなわち濃度が低い溶液から濃度が高い溶液に水が移動する現象を利用するものである。ここで浸透圧が低い溶液を供給液、浸透圧が高い溶液をドロー溶液と呼ぶ。
正浸透法では、ドロー溶液に求められる性質として、浸透圧が高いことが挙げられる。ドロー溶液の浸透圧が高ければ供給液から効率的に水を吸収できる。また、ドロー溶液は供給液から水分を吸収したのち、容易に水とドロー溶液の溶質(ドロー溶質)とに分離できることが必要である。これにより、供給液から吸収した水分を効率的に回収できるとともに、供給液から水分を吸収して希薄濃度となったドロー溶液(希薄ドロー溶液)を高濃度化して再生利用できる。
【0003】
特許文献1には、アンモニアおよび二酸化炭素をドロー溶質とするドロー溶液に関する技術が記載されている。本技術では希薄ドロー溶液を加熱することでアンモニア及び二酸化炭素ガスとして分離する。
【0004】
特許文献2には、曇点を有するポリエチレングリコールの長鎖脂肪酸エステルをドロー溶質とするドロー溶液に関する技術が記載されている。希薄ドロー溶液を曇点以上に加熱することで、ポリエチレングリコールの長鎖脂肪酸エステルが凝集し沈澱を生じる、または懸濁状態となり、水から分離することができる。
【0005】
特許文献3には、感温性ポリマー水溶液をドロー溶液とした正浸透水処理方法に関する技術が記載されている。希薄ドロー溶液を下限臨界溶液温度以上に加熱することで、感温性ポリマーが凝集し沈澱を生じる、または懸濁状態となり、水から分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2013−509295号公報
【特許文献2】US2012/0267297A1号公報
【特許文献3】特開2013−194240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術では、希薄ドロー溶液を加熱することでアンモニア及び二酸化炭素ガスとして分離するが、この加熱温度では希薄ドロー溶液から回収される水に微量のアンモニアが混入することが避けられない。アンモニアは分子の大きさや極性が水とほぼ同じなので、さらに逆浸透膜を用いても除去率は90%程度であり、アンモニアと水との完全分離はできない。またガスとなって揮発するアンモニアおよび二酸化炭素の回収率が悪く、濃厚ドロー溶液を再生するには基質を外部から供給しなくてはならない。
【0008】
特許文献2に記載された技術では、希薄ドロー溶液を曇点以上に加熱することで、ポリエチレングリコールの長鎖脂肪酸エステルが凝集し沈澱を生じる、または懸濁状態となるが、沈澱または懸濁状態のポリエチレングリコールの長鎖脂肪酸エステルの除去には濾過システムが必要である。使用するポリエチレングリコールの長鎖脂肪酸エステルの種類・濃度および加熱温度によっては非常に細かな微粒子となって懸濁状態となるので、その除去には限外濾過システムあるいはナノ濾過システムが必要である。
またポリエチレングリコールの長鎖脂肪酸エステルの分子量は300以上であり、濃厚溶液を調製しても高浸透圧にはならない。例えば分子量400、密度0.95のポリエチレングリコールの長鎖脂肪酸エステルの75%水溶液でも計算上浸透圧は4.4MPaにしかならない。またポリエチレングリコールの長鎖脂肪酸エステルの濃厚溶液は高粘度であり、送液にエネルギーを要する。
【0009】
特許文献3に記載された技術では、希薄ドロー溶液を下限臨界溶液温度以上に加熱することで、感温性ポリマーが凝集し沈澱を生じる、または懸濁状態となるが、沈澱または懸濁状態の感温性ポリマーの除去には精密濾過システムが必要である。また感温性ポリマーの分子量が大きいので、濃厚溶液を調製しても高浸透圧にはならない。例えば分子量8123の感温性ポリマー0.25g/mlの実測浸透圧は29.1気圧(2.9MPa)にしかならない。
【0010】
以上のように、従来の技術は、種々の課題を有している。
本発明の目的は、希薄ドロー溶液を高濃度化して再生利用することが容易で、また低粘度でしかも高浸透圧なドロー溶液を提供し、そのドロー溶液を用いた正浸透水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を行った結果、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の技術的手段から構成される。
【0012】
〔1〕 水分を含む溶液と半透膜を介して接触させるドロー溶液であって、前記ドロー溶液が一般式(1)で示される水溶性液体化合物(2‐ブトキシエタノールを除く)または前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物(2‐ブトキシエタノールを除く)と水からなり、前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物(2‐ブトキシエタノールを除く)と水との混合物が下限臨界溶液温度を有することを特徴とするドロー溶液。
【化1】
[式中、
、Rは互いに独立して、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状または炭素数3〜8の分岐状若しくは環状アルキル基、炭素数1〜2のアシル基、置換されてもよいフェニル基および置換されてもよいベンジル基の内のいずれか一つを表すが、R、Rの少なくとも一方は水素原子ではなく、R、Rの炭素数の合計が3以上であり、
、Rは互いに独立して、水素原子および炭素数1〜4の直鎖状または分岐状アルキル基の内のいずれか一つを表すが、R、Rの少なくとも一方は水素原子であり、
nは1〜4の整数を表す。]
〔2〕 前記一般式(1)の水溶性液体化合物が
‐イソブトキシエタノール、
2‐[2‐(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、
1‐エトキシ‐2‐(2‐エトキシエチル)エタン、
2‐[2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ]プロパン、
1−アセトキシ‐2‐(2‐エトキシエトキシ)エタン、
2,5,8,11‐テトラオキサペンタデカンおよび
1‐プロポキシ‐2‐プロパノールからなる群から選択される一つの化合物であることを特徴とする前記〔1〕に記載のドロー溶液。
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕のいずれかに記載のドロー溶液と、水分を含む供給溶液とを半透膜を介して接触させることで、前記供給溶液中の水分を前記ドロー溶液に吸収させることを特徴とする正浸透水処理方法。
〔4〕 前記供給溶液から水分を吸収して希薄になった前記ドロー溶液(以下適宜「希薄ドロー溶液」という)を前記希薄ドロー溶液の下限臨界溶液温度より高い温度に加熱することで液体‐液体の二層に相分離させ、液体‐液体に相分離した希薄ドロー溶液から分液により水分を分離し、ドロー溶液を高濃度化して再生することを特徴とする前記〔3〕に記載の正浸透水処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、希薄ドロー溶液からドロー溶質と水とを分離しドロー溶液を高濃度化して再生利用することが容易なドロー溶液を提供することが可能である。また、本発明によれば、低粘度でしかも高浸透圧なドロー溶液を提供することが可能である。
【0014】
また本発明によれば、低エネルギーで処理水から水分を吸収できる正浸透水処理方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の正浸透水処理方法の処理手順の一例を示したフローチャート図である。
図2図2は、本発明の正浸透水処理方法を実施するための装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のドロー溶液は、水分を含む溶液と半透膜を介して接触させるドロー溶液であって、前記ドロー溶液が前記〔1〕に記載の一般式(1)で示される水溶性液体化合物または前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物と水からなる溶液である。
【0017】
そして、前記〔1〕に記載の一般式(1)で示される水溶性液体化合物は、温度20℃において任意の割合で純水と混和し、純水と緩やかにかき混ぜた場合に、流動がおさまった後も当該混合液が均一な外観を維持する。そして、前記水溶性液体化合物と水との混合物は、下限臨界溶液温度を有する。
【0018】
前記〔1〕に記載の一般式(1)で示される水溶性液体化合物は、前記前記一般式(1)において、R、Rの少なくとも一方は水素原子ではなく、R、Rの少なくとも一方は水素原子であることが好ましい。
【0019】
さらに好ましい前記水溶性液体化合物としては、2‐ブトキシエタノール、2‐イソブトキシエタノール、2‐[2‐(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、1‐エトキシ‐2−(2‐エトキシエトキシ)エタン、2‐[2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ]プロパン、1−アセトキシ‐2‐(2‐エトキシエトキシ)エタン、2,5,8,11‐テトラオキサペンタデカンおよび1‐プロポキシ‐2‐プロパノールを例示することができる。
【0020】
本発明のドロー溶液は、前記水溶性液体化合物を単独で用いることができるが、前記水溶性液体化合物と水からなる水溶液として用いても良い。その場合、前記水溶性液体化合物と水の組成比は、前記供給溶液よりも高い浸透圧が達成できれば制限はないが、前記供給溶液からの給水量を多くするためには、また前記供給溶液の濃縮倍率を大きくするためには、前記水溶性液体化合物の組成比はできるだけ大きいほうが好ましい。通常は、ドロー溶液中に30%以上の前記水溶性液体化合物を含む必要がある。
【0021】
より具体的には、供給溶液が3.5%食塩水相当の海水(浸透圧2.9MPa)で供給溶液とドロー溶液が同体積のとき、供給溶液を二倍濃縮し供給溶液の二分の一の体積の水分の吸収可能にするには、水溶性液体の分子量が200、密度が0.95の場合、水溶性液体と水との組成比は体積比で38:62〜100:0が必要である。
【0022】
本発明の正浸透水処理方法の手順について説明する。図1は、ドロー溶液として一般式(1)で示される水溶性液体化合物と水からなるドロー溶液を用いる場合の本発明の正浸透水処理方法の処理手順を示したフローチャート図である。
【0023】
まず、水溶性液体と水と混合しドロー溶液を調製する第一ステップ(S01)を実施する。なお、この第一ステップ(S01)は、ドロー溶液として一般式(1)で示される水溶性液体化合物と水からなるドロー溶液を用いる場合は省略することができる。次いで、ドロー溶液と供給溶液とを半透膜を介して接触させ、供給溶液の水分をドロー溶液に吸収させる第二ステップ(S02)を実施する。続いて、水分を吸収した希薄ドロー溶液を下限臨界溶液温度(LCST)より高い温度に加熱し、密度に応じて上層と下層に水溶性液体層と水層とに相分離させる第三ステップ(S03)を実施する。さらに続いて、下層または上層の水層を清澄水として回収し、同時に上層または下層の高濃度化した水溶性液体層を回収する第四ステップ(S04)を実施する。
【0024】
第一ステップ(S01)では、水溶性液体と水分とを所定の組成比で混合しドロー溶液を調製する。水は使用せず水溶性液体をそのままドロー溶液とすることもできる。第一ステップはドロー液調製容器で行ってもよいし、後述のドロー液/水分離システム内で行ってもよい。またドロー溶質として水と任意の割合で混和する水溶性液体化合物を用いることで、高濃度ドロー溶液さらには組成比100%のドロー溶液すなわち高浸透圧ドロー溶液を調製することができる。水溶性液体の分子量が200、密度が0.95の場合、組成比100%のドロー溶液の浸透圧は理論上11.7MPa、組成比75%のドロー溶液の浸透圧は理論上8.8MPa、を達成することが可能である。
【0025】
第二ステップ(S02)では、ドロー溶液と供給溶液とを半透膜を介して接触させさせることで、供給溶液中の水分をドロー溶液に吸収させる。
前記の供給溶液は、供給溶液中の水分を除去して他の成分を濃縮させる必要があるものであれば特に限定されないが、例示すると、海水、各種排水、嗜好飲料、果汁、有用物質含有希薄溶液などを挙げることができる。
また、前記半透膜としては、とくに限定はされず、通常は市販の半透膜を使用することができる。
【0026】
前記のようにドロー溶液は高浸透圧なので、供給溶液から効率良く水分を吸収することができる。浸透圧の低い供給溶液から浸透圧の高いドロー溶液への水分の吸収は正浸透という現象で自然に起こるので、第二ステップ(S02)では、供給溶液から低エネルギーで水分を吸収することができる。本発明の正浸透水処理方法を供給溶液濃縮の目的で使用する場合は、第二ステップで水分を吸収され濃縮された供給溶液が目的物となる。第二ステップは水分吸収システム内で実施される。
【0027】
第三ステップ(S03)では、水分を吸収した希薄ドロー溶液を下限臨界溶液温度(LCST)より高い温度に加熱する。下限臨界溶液温度(LCST)より高い温度に加熱することで、希薄ドロー溶液は溶質である水溶性液体と水とに相分離する。水溶性液体の密度が1.00よりも小さい場合は、下層が水層、上層が水溶性液体層になり、水溶性液体の密度が1.00よりも大きい場合は、下層が水溶性液体層、上層が水層になる。第三ステップはドロー液/水分離システム内で実施される。
【0028】
第四ステップ(S04)では、下層または上層の水層と上層または下層の高濃度水溶性液体層を分離する。ドロー溶質は液体なので、この分離には濾過システムは必要なく、分液により容易に分離を行うことができる。第四ステップで分離した高濃度水溶性液体はそのまま第一ステップ(S01)のドロー溶液として用いることができる。
【0029】
第四ステップで分離した水層は清澄水として回収する。本発明の正浸透水処理方法で得られる清澄水には、ドロー溶質が混入している可能性があり、清澄水は用途に応じて更なる精製工程を経る。例えば蒸溜や逆浸透膜による純水の獲得である。本発明の清澄水の不純物はドロー溶質のみであり、供給溶液から直接蒸溜や逆浸透膜により純水の獲得する場合よりも装置への負荷が小さくなる。たとえば、蒸溜の際の不純物の混入が非常に小さい、装置の腐食がない、蒸溜残渣を生じない、逆浸透膜のファウリングや劣化が非常に小さい、などの利点がある。
【0030】
図2は、本発明の正浸透水処理方法を実施するための装置の一例を示す模式図である。
【実施例】
【0031】
[相分離参考例1]
2‐ブトキシエタノール10mlと純水10mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度(LCST)は51℃であった。下限臨界溶液温度以上の各温度で、表1に示した体積比で水層と水溶性液体層に分離した。70℃における水溶性液体層の含水量は39%であった。
【0032】
[相分離実施例2]
2‐イソブトキシエタノール10mlと純水10mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、28℃であった。下限臨界溶液温度以上の各温度で、表1に示した体積比で水層と水溶性液体層に分離した。70℃における水溶性液体層の含水量は29%であった。
【0033】
[相分離実施例3]
2‐[2‐(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール10mlと純水10mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、38℃であった。下限臨界溶液温度以上の各温度で、表1に示した体積比で水層と水溶性液体層に分離した。70℃における水溶性液体層の含水量は30%であった。
【0034】
[相分離実施例4]
1‐エトキシ‐2−(2‐エトキシエトキシ)エタン10mlと純水10mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、32℃であった。下限臨界溶液温度以上の各温度で、表1に示した体積比で水層と水溶性液体層に分離した。70℃における水溶性液体層の含水量は9%であった。
【0035】
[相分離実施例5]
2‐[2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ]プロパン10mlと純水10mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、47℃であった。下限臨界溶液温度以上の各温度で、表1に示した体積比で水層と水溶性液体層に分離した。70℃における水溶性液体層の含水量は11%であった。
【0036】
[相分離実施例6]
1−アセトキシ‐2‐(2‐エトキシエトキシ)エタン10mlと純水10mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、43℃であった。下限臨界溶液温度以上の各温度で、表1に示した体積比で水層と水溶性液体層に分離した。70℃における水溶性液体層の含水量は17%であった。
【0037】
[相分離実施例7]
2,5,8,11‐テトラオキサペンタデカン10mlと純水10mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、39℃であった。下限臨界溶液温度以上の各温度で、表1に示した体積比で水層と水溶性液体層に分離した。70℃における水溶性液体層の含水量は8%であった。
【0038】
[相分離実施例8]
1‐プロポキシ‐2‐プロパノール10mlと純水10mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、31℃であった。下限臨界溶液温度以上の各温度で、表1に示した体積比で水層と水溶性液体層に分離した。70℃における水溶性液体層の含水量は22%であった。
【0039】
【表1】
【0040】
[相分離実施例9]
1‐エトキシ‐2−(2‐エトキシエトキシ)エタン16mlと純水4mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を70℃に加熱すると、水溶性液体層83%で分離した。
【0041】
[相分離実施例10]
1‐エトキシ‐2−(2‐エトキシエトキシ)エタン4mlと純水16mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を70℃に加熱すると、水溶性液体層7%で分離した。
【0042】
[相分離実施例11]
2,5,8,11‐テトラオキサペンタデカン16mlと純水4mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を70℃に加熱すると、水溶性液体層82%で分離した。
【0043】
[相分離実施例12]
2,5,8,11‐テトラオキサペンタデカン4mlと純水16mlとを30mlのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を70℃に加熱すると、水溶性液体層17%で分離した。
【0044】
相分離実施例4、9、10から、1‐エトキシ‐2−(2‐エトキシエトキシ)エタンは純水との混合比20:80〜80:20の範囲で加熱により相分離することがわかる。
相分離実施例7、11、12から、2,5,8,11‐テトラオキサペンタデカンは純水との混合比20:80〜80:20の範囲で加熱により相分離することがわかる。
【0045】
実施例1〜8の70℃で相分離したときの水溶性液体層にはそれぞれ相当量の水を含んでいるが、その含水量あるいはやや多めの含水量の水溶性液体をドロー溶液として、海水相当の浸透圧の処理液(3.5%食塩水)から水分を吸収することを確認するために吸水実施例1〜8を実施した。
【0046】
[吸水参考例1]
2‐ブトキシエタノールと純水との体積比60:40の混合溶液(計算浸透圧11.4MPa)50mlと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)50mlとを、面積28cmのホリアキ株式会社製 セロファンシート『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。8時間後、2‐ブトキシエタノール層は64mlに、食塩水層は36mlになった。
【0047】
[吸水実施例2]
2‐イソブトキシエタノールと純水との体積比70:30の混合溶液(計算浸透圧13.3MPa)50mlと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)50mlとを、面積28cmのホリアキ株式会社製 セロファンシート 『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。8時間後、2‐イソブトキシエタノール層は58mlに、食塩水層は42mlになった。
【0048】
[吸水実施例3]
2‐[2‐(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノールと純水との体積比70:30の混合溶液(計算浸透圧9.6MPa)50mlと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)50mlとを、面積28cmのホリアキ株式会社製 セロファンシート『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。8時間後、2‐[2‐(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール層は56mlに、食塩水層は44mlになった。
【0049】
[吸水実施例4]
1‐エトキシ‐2−(2‐エトキシエトキシ)エタンと純水との体積比90:10の混合溶液(計算浸透圧12.5MPa)50mlと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)50mlとを、面積28cmのホリアキ株式会社製 セロファンシート『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。8時間後、1‐エトキシ‐2−(2‐エトキシエトキシ)エタン層は79mlに、食塩水層は21mlになった。
【0050】
[吸水実施例5]
2‐[2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ]プロパンと純水との体積比80:20の混合溶液(計算浸透圧11.1MPa)50mlと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)50mlとを、面積28cmのホリアキ株式会社製 セロファンシート『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。8時間後、2‐[2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ]プロパン層は78mlに、食塩水層は22mlになった。
【0051】
[吸水実施例6]
1−アセトキシ‐2‐(2‐エトキシエトキシ)エタンと純水との体積比80:20の混合溶液(計算浸透圧11.3MPa)50mlと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)50mlとを、面積28cmのホリアキ株式会社製 セロファンシート『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。8時間後、1−アセトキシ‐2‐(2‐エトキシエトキシ)エタン層は71mlに、食塩水層は29mlになった。
【0052】
[吸水実施例7]
2,5,8,11‐テトラオキサペンタデカンと純水との体積比90:10の混合溶液(計算浸透圧9.6MPa)50mlと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)50mlとを、面積28cmのホリアキ株式会社製 セロファンシート『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。8時間後、2,5,8,11‐テトラオキサペンタデカン層は77mlに、食塩水層は23mlになった。
【0053】
[吸水実施例8]
1‐プロポキシ‐2‐プロパノールと純水との体積比70:30の混合溶液(計算浸透圧13.0MPa)50mlと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)50mlとを、面積28cmのホリアキ株式会社製 セロファンシート『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。8時間後、1‐プロポキシ‐2‐プロパノール層は73mlに、食塩水層は27mlになった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のドロー溶液を用いた及び正浸透水処理方法は、海水または排水からの飲料水・工業用水または農業用水の回収、排水の体積低減、正浸透発電、嗜好飲料の濃縮、果汁の濃縮、有用物質含有希薄溶液の濃縮、などに用いられる。

図1
図2