(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382038
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】水素発生量制御システム
(51)【国際特許分類】
C01B 3/08 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
C01B3/08 Z
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-180119(P2014-180119)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-52972(P2016-52972A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】300071513
【氏名又は名称】トナミ運輸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕晶
【審査官】
山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−081381(JP,A)
【文献】
特開2008−105926(JP,A)
【文献】
特開2009−283245(JP,A)
【文献】
特開2005−206459(JP,A)
【文献】
特開2006−327871(JP,A)
【文献】
特開2014−088280(JP,A)
【文献】
特開2010−143779(JP,A)
【文献】
特開2007−138973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B3/00−6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素発生装置の水素発生量制御システムであって、
水素を発生させる反応器を複数備え、
前記各反応器は水素の発生量の検出手段を有し、
一の反応器で発生する水素量の低減時間を予測し、他の反応器の稼働準備を開始することで水素発生装置全体の水素発生量を制御するものであり、
前記反応器は、アルカリ性水溶液の入った反応液タンクに配管連結されており、
前記反応器内に発生した水素圧と、前記反応器内の水位よりも高い位置にある前記反応液タンク内のアルカリ性水溶液の水位との水位差圧により、前記アルカリ性水溶液の前記反応器への供給量が自動制御されていることを特徴とする水素発生量制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を負極活物質とする燃料電池等に供給する水素量の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と空気中の酸素との反応により電力を取り出す燃料電池は、水素の供給により連続的に電力を取り出すことができるとともに反応後に生じる物質は水であり、クリーンな発電方法として注目されている。
特許文献1には、アルミとアルカリ性水溶液とを反応させて水素を発生させる装置を開示する。
同公報は、反応容器内の水素圧を利用してアルカリ性水溶液の供給量を制御したものであるが、アルミが反応して消耗すると水素圧が変化し、さらに連続的に安定して水素の供給が可能になるように改善したのが本発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−88280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安定して水素の供給が可能な水素発生量制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る水素発生量制御システムは、水素発生装置の水素発生量制御システムであって、水素を発生させる反応器を複数備え、前記各反応器は水素の発生量の検出手段を有し、一の反応器で発生する水素量の低減時間を予測し、他の反応器の稼働準備を開始することで水素発生装置全体の水素発生量を制御することを特徴とする。
ここで、反応器はアルミニウム又はその合金とアルカリ性水溶液とを反応させることで水素を発生させるものであり、アルカリ性水溶液の供給量を制御することで水素発生量を制御するものであることが好ましい。
本発明で水素量の低減時間とは、反応が弱くなり反応器の中の副生成物を取り除く必要が生じるタイミングをいう。
【0006】
反応器内にアルミニウム又はその合金を投入しアルカリ性水溶液を供給すると、その反応により水素が発生する。
この場合にアルミの入った反応器とアルカリ性水溶液が貯留されている反応液タンクとを配管で連結し、アルカリ性水溶液の水位を反応器の内側底面より高くすると、その水圧を利用して簡便に反応器にアルカリ性水溶液を供給できる。
この際に反応器中の水素圧が上昇すると、その圧力と反応液の水位圧差によりアルカリ性水溶液の供給量が自動制御される。
【0007】
この場合にあっても反応器中のアルミが反応により消耗すると、それに合せてアルカリ性水溶液の供給をストップさせる必要があるとともにアルミが反応し、発生した副生成物を回収する必要があるため、この間水素の発生量が不安定になったり、中止せざるを得なくなる。
そこで本発明は、複数の反応器を設けることで一の反応器から副生成物を回収している間は、他の反応器を用いて水素を発生させることで装置全体として安定して水素を発生させることができるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、複数の反応器を設け、それらを相互に又は順次使用することで燃料電池等に安定して水素を供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る水素発生量制御システムの構成例を
図1に示す。
本実施例では反応器が2つの例を示すが、2つ以上であれば数に制限はない。
第1反応器11と第2反応器12とに、アルカリ性水溶液を供給するために設けたアルカリ性水溶液を貯留した反応液タンク1とを配管接続してある。
反応液タンク1に貯留されているアルカリ性水溶液の水位が第1及び第2反応器11,12の内部底面よりも高位になっている。
第1反応器11と反応液タンク1との配管途中には、ソレノイドバルブ11bを有し、第2反応器12と反応液タンク1との配管途中には、ソレノイドバルブ12bを有する。
本実施例では、第1,第2反応器及び反応液タンク1を密閉制御可能になっていて、ソレノイドバルブ1aにより、反応器の水素圧と反応液タンク1の上部空間のエアー圧との圧力差の制御が可能になっている。
第1,第2反応器11,12の底部から副生成物を取り出す回収容器13,14を設け、また冷却水タンク3とポンプ3Pにて配管し、冷却水の循環制御が可能になっている。
【0011】
第1,第2反応器11,12には、それぞれ水素圧の検知手段11c,12cを有し、発生水素量が検出できるようになっている。
アルカリ性水溶液は、pH13以上の水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の水溶液がよい。
また、本実施例ではアルミとアルカリ性水溶液の反応性向上を目的に触媒タンク2からポンプ2P等で触媒の水溶液を反応液タンク1に投入する例になっている。
例えば、Fe
2(SO
4)
3,FeCl
3,Fe(NH
4)(SO
4)
2,MgCl
2等の触媒を加えると反応性が高くなる。
【0012】
例えば、まず第1反応器11を用いて、この第1反応器11に所定量のアルミを投入し、反応液タンク1から水位差でアルカリ性水溶液を第1反応器11に送り込む。
すると、化学反応により水素が発生し、その圧力を検知手段11cにて計測する。
発生した水素は、配管11aによりウォータートラップ容器21,バッファ容器22を経由し、乾燥容器23にて水分を除去後にソレノイドバルブ30aを介して、例えば燃料電池30に供給される。
【0013】
第1反応器から発生する水素圧変化を検出し、反応終了が近付くと今度は第2反応器にアルミを投入し、反応液1からアルカリ性水溶液を供給し、燃料電池に供給される水素量が一定の範囲になるように第2反応器を稼働させる。
第2反応器12にて発生した水素は、配管12aを介してバルブ切り替えにより燃料電池に供給される。
第1反応器の反応が終了すると、第2反応器が稼働している間に副生成物を回収容器13に取り出し、新しいアルミを第1反応器に投入し、準備を完了する。
このように反応器を複数設けると共に水素発生量を検知できるようにしたので、水素の発生及び供給量が安定する。
【0014】
本発明に用いるアルミに制限はないが、アルミがラミネート又は蒸着されている廃包装材を回収し、アルミ原料に用いてもよい。
【符号の説明】
【0015】
1 反応液タンク
2 触媒タンク
3 冷却水タンク
11 第1反応器
12 第2反応器
30 燃料電池