(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
化合物(B)が、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物及びメラミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項4に記載のポリオレフィン系樹脂水性分散体。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2)は、ポリオレフィン系樹脂(P3)及び水性媒体(M)を含有する。
【0008】
本発明のポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2)のカルボン酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂(P2)としては、変性可能なポリオレフィン系樹脂を主成分(好ましくは含有率50重量%以上、更に好ましくは75重量%以上、特に好ましくは80〜100重量%)とするポリオレフィン系樹脂(P1)のカルボン酸無水物基を導入したものを用いることができる。
【0009】
変性可能なポリオレフィン系樹脂を主成分とするポリオレフィン系樹脂(P1)には、炭素数2〜30(好ましくは2〜12、更に好ましくは2〜10)のオレフィンの1種又は2種以上の混合物の(共)重合[(共)重合は、重合又は共重合を意味する。以下同様。]によって得られるポリオレフィン(重合法)及び減成されたポリオレフィン{高分子量[好ましくは数平均分子量(以下Mnと略記する)50,000〜150,000]ポリオレフィンを機械的、熱的又は化学的に減成してなるもの(減成法)}が含まれる。
これらのうち、カルボキシル基を導入する際の変性のし易さ及び入手のし易さの観点から好ましいのは、減成されたポリオレフィンであり、更に好ましいのは熱減成されたポリオレフィンである。前記熱減成によれば、後述のとおり1分子当たりの平均二重結合数が1.5〜2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られ、前記低分子量ポリオレフィンはカルボン酸無水物基を導入して変性することが容易である。
【0010】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定することができる。
装置(一例):「HLC−8120」[東ソー(株)製]
カラム(一例):「TSKgelGMHXL」[東ソー(株)製](2本)
「TSKgelMultiporeHXL−M」[東ソー(株)製](1本)
試料溶液:0.3重量%のオルトジクロロベンゼン溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:135℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0011】
熱減成されたポリオレフィンとしては特に限定されないが、高分子量ポリオレフィンを、不活性ガス中で加熱して得られたもの(300〜450℃で0.5〜10時間、例えば特開平3−62804号公報に記載の方法で得られたもの)、及び空気中で加熱することにより熱減成されたもの等が挙げられる。
【0012】
前記熱減成法に用いられる高分子量ポリオレフィンとしては、炭素数2〜30(好ましくは2〜12、更に好ましくは2〜10)のオレフィンの1種又は2種以上の混合物の(共)重合体[Mnは好ましくは12,000〜100,000、更に好ましくは15,000〜70,000。メルトフローレート(以下MFRと略記する。単位はg/10min)は好ましくは0.5〜150、更に好ましくは1〜100。]等が挙げられる。ここでMFRとは、樹脂の溶融粘度を表す数値であり、数値が大きいほど溶融粘度が低いことを表す。 MFRの測定方法はJIS K7210で規定した方法に準拠する。例えばポリプロピレンの場合は、230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される。
炭素数2〜30のオレフィンとしては、炭素数2〜30のα−オレフィン及び炭素数4〜30のジエンが挙げられる。
炭素数2〜30のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−イコセン及び1−テトラコセン等が挙げられる。
炭素数4〜30のジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン及び1,11−ドデカジエン等が挙げられる。
炭素数2〜30のオレフィンのうち、分子量制御の観点から好ましいのは、エチレン、プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィン、ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物であり、更に好ましいのは、エチレン、プロピレン、炭素数4〜10のα−オレフィン、ブタジエン及びこれらの混合物、特に好ましいのはエチレン、プロピレン、1−ブテン、ブタジエン及びこれらの混合物である。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂(P1)のMnは、乳化分散性と乾燥皮膜の機械的強度の観点から、好ましくは800〜20,000であり、更に好ましくは900〜10,000、特に好ましくは1,000〜6,000である。
(P1)中の二重結合の数は、反応時の粘度及び乾燥皮膜の機械的強度の観点から好ましくは炭素数1,000個当たり1〜40個であり、更に好ましくは2〜20個、特に好ましくは3〜10個である。
【0014】
(P1)1分子当たりの二重結合の平均数は、反応時の粘度及び乾燥皮膜の機械的強度の観点から、好ましくは1.5〜2.5個、更に好ましくは1.8〜2.2、特に好ましくは1.9〜2.1個、最も好ましいのは2個である。
熱減成法により低分子量ポリオレフィンを得る方法を用いると、Mn800〜6,000の範囲で、1分子当たりの二重結合の平均数が1.5〜2個の(P1)が容易に得られる[村田勝英、牧野忠彦、日本化学会誌、192頁(1975)]。
カルボン酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂(P2)としては、(P1)をα,β−不飽和ジカルボン酸無水物で変性した構造を有するポリオレフィンが使用できる。
【0015】
変性に用いられるα,β−不飽和ジカルボン酸無水物としては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、及びシトラコン酸無水物等が挙げられる。これらのうち、変性の容易さの観点から好ましいのはマレイン酸無水物である。
【0016】
変性に使用するα,β−不飽和カルボン酸無水物の量は、ポリオレフィン系樹脂(P1)の重量に基づきポリプロピレン基材への密着性及び乳化分散性の観点から、好ましくは0.5〜40重量%であり、更に好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは2〜20重量%である。
【0017】
α,β−不飽和カルボン酸無水物による変性は、例えば、(P1)の二重結合に、溶液法又は溶融法のいずれかの方法で、α,β−不飽和カルボン酸無水物を付加反応(エン反応)させることにより行うことができ、反応温度は、好ましくは170〜230℃である。
【0018】
カルボン酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂(P2)のMnは、乳化分散性及び乾燥皮膜の機械的強度の観点から、好ましくは900〜25,000であり、更に好ましくは1,000〜20,000、特に好ましくは1,100〜10,000である。
また、(P2)の酸価は、(b)との反応性及びブロックポリマー(A)の熱可塑性の観点から、好ましくは4〜280mgKOH/g、更に好ましくは10〜100mgKOH/g、特に好ましくは15〜80mgKOH/gである。
【0019】
アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)はカルボン酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂(P2)と一般式(1)で表されるポリアミン(A)とを反応させて得られるポリオレフィン系樹脂である。
【化1】
【0020】
一般式(1)中のR
1及びR
2はそれぞれ独立に炭素数2〜10のアルキレン基を表し、aは1〜5の整数を表し、Xはオキシエチレンを必須構成単位とする1価のポリオキシアルキレン(アルキレンの炭素数2〜12)鎖を示す。
【0021】
R
1及びR
2は、乳化分散性の観点から、好ましいのはエチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基及び1,5−ペンチレン基である。
【0022】
aは通常1〜5の整数を表し、乾燥皮膜の耐水性の観点から好ましいのは1〜3であり、更に好ましくは1である。
【0023】
Xはポリオレフィン樹脂(P3)の乳化分散性及び乾燥皮膜の機械的強度の観点から一般式(2)で表される構造が好ましい。
【0025】
一般式(2)中のbは通常5〜200の整数であり、乳化分散性及び耐水性の両立の観点から、40〜200が好ましい。bが5より小さい場合は乳化分散性が十分に発現しない。また、200より大きい場合は、耐水性が低下する。
【0026】
一般式(2)中のcは、通常0〜195の整数であり、乳化分散性の観点から0〜50が好ましく、更に好ましくは0である。195より大きい場合は、乳化分散性が十分に発現しない。
【0027】
b及びcは、5≦b+c≦200を満たし、cが1以上の場合、b個のオキシエチレン基とc個のオキシアルキレン基(AO)の結合形式はランダムでもブロックでもこれらの併用でもよいが、耐水性を損なわずに乳化分散性を確保する観点から好ましいのはブロック形式であり、更に好ましいのは末端のブロック、即ち一般式(2)における窒素原子から最も遠い位置にあるブロックがポリオキシエチレンのブロックであるものである。
【0028】
一般式(2)中のAOは炭素数3〜12のオキシアルキレン基であり、AOが複数ある場合それぞれ同一でも異なっていてもよく、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)の乳化分散性の観点から好ましいのは炭素数1〜5のオキシアルキレン基である。
【0029】
ポリアミン(A)は、例えばポリ(n=2〜6)アルキレン(炭素数2〜10)ポリ(n=3〜7)アミン(ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等)のアミノ基をケトン[メチルエチルケトン(以下、MEKと略記)及びメチルイソブチルケトン等]でケチミン化したもののイミノ基に必須成分としてのエチレンオキサイド(以下、EOと略記)と任意成分としての炭素数3〜12のアルキレンオキサイドを開環付加させて、ケチミン化した部分を加水分解してアミノ基を再生させることで得ることができる。
【0030】
炭素数3〜12のアルキレンオキサイドとしては、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−又は2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)、3−メチルテトラヒドロフラン、α−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等が挙げられ、透湿性の観点から、炭素数1〜5のアルキレンオキサイドが好ましい。炭素数3〜12のアルキレンオキサイドは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
EOと炭素数3〜12のアルキレンオキサイドの付加形式はランダム付加でもブロック付加でもこれらの併用でもよいが、防水性を損なわずに透湿性を確保する観点から好ましいのはブロック付加であり、更に好ましいのは末端のブロック、即ち一般式(2)における窒素原子から最も遠い位置にあるブロックがEOのブロック付加によるものである。
【0032】
本発明のポリアミン(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
ポリアミン(A)中のオキシエチレン基の重量は、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)の乳化分散性の観点から、ポリアミン(A)とポリオレフィン系樹脂(P2)の合計重量に基づいて、10〜50重量%であることが好ましく、更に好ましくは15〜45重量%であり、特に好ましくは17〜42重量%である。
【0034】
ポリアミン(A)は、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)の乳化分散性及びポリオレフィン系樹脂水性分散体のポリプロピレン基材への密着性が確保できる範囲で、更に鎖伸長剤(a1)及び必要により反応停止剤(a2)を含有することができる。(a1)及び(a2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0035】
鎖伸長剤(a1)としては、炭素数2〜10のジアミン(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、トルエンジアミン及びピペラジン)、ポリ(n=2〜6)アルキレン(炭素数2〜6)ポリ(n=3〜7)アミン(ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチエレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等)、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等)等が挙げられる。
【0036】
鎖伸長剤(a1)は、合成上の観点から炭素数2〜10のジアミンが好ましい。
【0037】
反応停止剤(a2)としては、炭素数1〜10のモノアミン類(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)及び炭素数2〜10のアミノアルコール類(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール及びトリエタノールアミン)等が挙げられる。
【0038】
ポリアミン(A)の量は(A)中のアミノ基のモル数がポリオレフィン系樹脂(P2)のカルボン酸無水物基のモル数に対し、1.1〜3.0倍となる量が好ましく、ポリプロピレン基材への密着性及び乳化分散性の観点から、好ましくは1.2〜2.5倍であり、更に好ましくは1.3〜2.4倍、特に好ましくは1.4〜2.3倍である。
【0039】
アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)のMnは、(P3)の乳化分散性及びポリオレフィン系樹脂分散体の乾燥皮膜の機械的強度の観点から、好ましくは1,100〜40,000であり、更に好ましくは1,200〜30,000、特に好ましくは1,300〜20,000である。
【0040】
アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)はアミノ基と反応性を有する化合物(B)と反応させるためアミノ基を有する必要がある。(P3)のアミン価は、乳化分散性及びポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2)の乾燥皮膜の機械的強度の観点から、好ましくは4〜280mgKOH/g、更に好ましくは10〜100mgKOH/g、特に好ましくは15〜80mgKOH/gである。
【0041】
カルボン酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂(P2)とポリアミン(A)との反応は溶液法又は溶融法のいずれかの方法で行うことができ、反応温度は、好ましくは100〜200℃である。
【0042】
ポリオレフィン系樹脂(P1〜3)を製造するための装置は、撹拌又は混練可能なものであれば特に限定されず、コルベン、簡易加圧反応装置(オートクレーブ)及び一軸又は二軸の混練機等が使用できる。
【0043】
ポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2)はアミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)を水性媒体(M)に分散させたポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)にアミノ基と反応性を有する化合物(B)を添加し、粒子状の(P3)に吸収させた後、反応させて得られる。
【0044】
本発明における水性媒体(M)としては、水及び水と有機溶剤(S)との混合物が挙げられる。有機溶剤(S)としては、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル及びγ−ブチロラクトン等)、エーテル系溶剤(THF等)、アミド系溶剤[N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン及びN−メチルカプロラクタム等]、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等)及び芳香族炭化水素系溶剤(トルエン及びキシレン等)等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの内、分散性の観点から水溶性の有機溶剤であることが好ましい。
【0045】
ポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)は、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)を必要により中和剤で中和し、水性媒体(M)に分散させることで製造することができる。具体的には、分散混合装置として回転式分散混合装置を用いて水中に分散させる方法等が挙げられる。前記方法を用いることにより、界面活性剤を使用することなく、分散安定性に優れるポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)を得ることができる。
尚、製造に当たっては、必要により任意成分である前記有機溶剤(S)及びその他の添加剤が併用される。
【0046】
(P3)を中和する中和剤としては、炭素数1〜10のモノカルボン酸(例えばギ酸、酢酸、プロパン酸及び乳酸等)、炭酸、塩酸、燐酸、硫酸、炭酸ジメチル、硫酸ジメチル、メチルクロライド及びベンジルクロライド等が挙げられる。
【0047】
これらの内、ポリオレフィン樹脂水性分散体(E2)の臭気等の観点から好ましいのは炭酸及び燐酸である。
【0048】
中和剤を使用する場合は、水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加してもよいが、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)の乳化分散性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
【0049】
上記方法を用いる場合、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)の形状を0.2〜50mmの粒状又はブロック状にすることが回転式分散混合装置に供給し易いという観点から好ましく、その大きさは、更に好ましくは0.5〜30mm、特に好ましくは1〜10mmである。
【0050】
アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)の水性媒体(M)への分散に際して上記有機溶剤(S)を使用することにより、乳化分散性を向上させることができる。
【0051】
有機溶剤(S)を使用する場合、その使用量は通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。尚、上述のポリオレフィン系樹脂(P3)の製造時を含めて、有機溶剤(S)を使用した場合には、環境汚染の観点からポリオレフィン系樹脂水性分散体製造後に、これを好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、特に好ましくは100ppm以下まで留去することが好ましく、有機溶剤(S)を使用せず、有機溶剤を実質的に含まないことが最も好ましい。
【0052】
その他の添加剤としては、pH調整剤、破泡剤、抑泡剤、脱泡剤、酸化防止剤、着色防止剤、可塑剤及び離型剤等が挙げられる。
【0053】
アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)又はこれらの有機溶剤溶液を水性媒体(M)に分散させるための分散混合装置としては例えば、(1)錨型撹拌方式、(2)回転子−固定子式方式[例えばエバラマイルダー[荏原製作所(株)製]、(3)ラインミル方式[例えばラインフローミキサー]、(4)静止管混合式[例えばスタティックミキサー]、(5)振動式[例えば「VIBRO MIXER」(冷化工業社製)]、(6)超音波衝撃式[例えば超音波ホモジナイザー]、(7)高圧衝撃式[例えばガウリンホモジナイザー(ガウリン社)]、(8)膜乳化式[例えば膜乳化モジュール]、及び(9)遠心薄膜接触式[例えば「フィルミックス」(プライミックス社製)]等の乳化機が挙げられる。
【0054】
アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)又はこれらの有機溶剤溶液を水性媒体(M)に分散させる際の分散液の温度は、乳化分散性及びアミノ基を有するポリオレフィン系樹脂の安定性の観点から、好ましくは20〜180℃、更に好ましくは40〜170℃、特に好ましくは50〜160℃、最も好ましいのは60〜150℃である。
【0055】
アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)又はこれらの有機溶剤溶液を水性媒体(M)に分散させる際の供給される(P3)と水性媒体(M)の重量比は、目的とする水性分散体の樹脂成分含有量によって適宜選択されるが、好ましくは(P3)/水性媒体(M)=10/2〜10/100、更に好ましくは10/5〜10/50である。
また、(P3)と水性媒体(M)との分散混合装置内の滞留時間は、好ましくは0.1〜60分、更に好ましくは10〜30分である。
【0056】
ポリオレフィン系樹脂(P3)は、(P3)とさらにアミノ基と反応性を有する化合物(B)とを反応させて得られるポリオレフィン系樹脂(P4)であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)は、該ポリオレフィン系樹脂(P4)及び水性媒体(M)を含有してなる樹脂水性分散体(E2)であることが好ましい。
【0057】
アミノ基と反応性を有する化合物(B)としては、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物及びメラミン化合物等が挙げられる。
【0058】
化合物(B)が分子内にアミノ基との反応性を有する官能基を1つ有する場合には、(E2)から耐水性に優れた塗膜を形成することができる。また、化合物(B)が分子内にアミノ基との反応性を有する官能基を2つ以上の有する場合には、分子内に架橋構造を導入することができ、(E2)から耐水性に加え耐溶剤性に優れた塗膜を形成することができる。
【0059】
エポキシ化合物としては、例えば炭素数4〜40のもの(メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0060】
ポリオレフィン系樹脂水性分散体の乾燥皮膜の機械的強度、耐水性及び耐溶剤性の観点から、エポキシ化合物の炭素数は4〜30であることが好ましく、更に好ましくは4〜25である。
【0061】
アジリジン化合物としては、例えば、炭素数3〜30のアジリジン化合物[1−アジリジンメタノール、1−アジリジンエタノール、テトラメチロールメタントリス(β−アジリジニルプロピオナート)、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス{3−(1−アジリジニル)プロピオネート}及びトリメチロールプロパントリス(β−アジリジニルプロピオナート)等]が挙げられる。
【0062】
これらの内、ポリオレフィン系樹脂水性分散体の乾燥皮膜の機械的強度、耐水性及び耐溶剤性の観点から、分子内に2つ以上のアジリジニル基を有する化合物が好ましい。
【0063】
オキサゾリン化合物としては、例えば2−エチルオキサゾリン等のオキサゾリン基を1個有する化合物、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)等のオキサゾリン基を2個有する化合物;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン及び2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン等の重合性オキサゾリン化合物の(共)重合体;前記重合性オキサゾリン化合物と(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール等の(メタ)アクリルエステル類、(メタ)アクリル酸アミド酢酸ビニル、スチレン並びにα−メチルスチレンスチレンスルホン酸ナトリウム等のオキサゾリン基と反応しない共重合可能な単量体との共重合体;等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0064】
これらの内、ポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2)の乾燥皮膜の機械的強度、耐水性及び耐溶剤性の観点から、分子内に2つ以上のオキサゾリン基を有する化合物が好ましい。
【0065】
イソシアネート化合物としては、2〜3個又はそれ以上のイソシアネート基を有する炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート、炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート、炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらのポリイソシアネートの変性物等が挙げられる。イソシアネート化合物有機イソシアネート成分は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0066】
炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(以下、トリレンジイソシアネートをTDIと略記)、粗製TDI、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、ジフェニルメタンジイソシアネートをMDIと略記)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート及びm−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0067】
炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0068】
炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0069】
炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばm−又はp−キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0070】
ポリイソシアネートの変性物としては、前記ポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロハネート基、ウレア基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物等;遊離イソシアネート基含有量が通常8〜33重量%、好ましくは10〜30重量%、特に12〜29重量%のもの)、例えば変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI及びイソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネートの変性物が挙げられる。
【0071】
これらの内、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)への吸収及び反応性の観点から炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネート及び炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0072】
ブロックイソシアネート化合物は特に限定されず、例えば前記ポリイソシアネート(b)をブロック化剤(フェノール、チオフェノール、クロルフェノール、クレゾール、レゾルシノール、p−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−sec−アミルフェノール、p−オクチルフェノール及びp−ノニルフェノール等のフェノール類;イソプロピルアルコール及びtert−ブチルアルコール等の第2級又は第3級のアルコール;アセトキシム、メチルエチルケトキシム及びシクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、エチルメチルアミン等の1級炭素に結合した第2級アミン、ジイソプロピルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、イソプロピルシクロヘキシルアミン等の2級炭素に結合した第2級アミン、ジ−t−ブチルアミン等の3級炭素に結合した第2級アミン並びにイソプロピルエチルアミン等のその他の第2級アミン等の炭素数2〜15の脂肪族第2級アミン;ジフェニルアミン及びキシリジン等の芳香族第2級アミン類;フタル酸イミド類;ε−カプロラクタム及びδ−バレロラクタム等のラクタム類;マロン酸ジアルキルエステル、アセチルアセトン及びアセト酢酸アルキルエステル等の活性メチレン化合物;ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール及び3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール系化合物;酸性亜硫酸ソーダ等)等でブロック化したものが挙げられる。
【0073】
ブロックイソシアネートの市販品としては旭化成(株)製のデュラネートシリーズ(デュラネート22A−75P、24A−100、21S−75E、TPA−100、TKA−100、MFA−75B、MHG−80B、TLA−100、TSA−100、TSS−100、TSE−100、P301−75E、E402−80B、E405−70B、AE700−100、D101、D201及びA201H等)及び三井化学(株)製のタケネートシリーズ(タケネートD−103N、D−160N、D−140N、D−110N、D−181N、D−120N、D−165N90CX、D−204、D−170N、PWシリーズ及びBシリーズ等)等が挙げられる。
【0074】
ブロックイソシアネートに用いられるブロック化剤として反応性及び貯蔵安定性の両立の観点から好ましいのは、オキシム類の内のメチルエチルケトオキシム、炭素数2〜15の脂肪族第2級アミンの内の2級炭素に結合した第2級アミン(特にジイソプロピルアミン)、活性メチレン化合物の内のマロン酸ジエチル及びピラゾール系化合物の内の3,5−ジメチルピラゾールである。
【0075】
ブロックイソシアネート化合物の含有量は、造膜性及び耐水性の観点から、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(E1)を基準として0.01〜25重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜20重量%である。
【0076】
メラミン化合物は分子内にメチロール基やメトキシメチロール基を2個以上有するメチロール化メラミン化合物及びメトキシメチロール化メラミン化合物であれば特に限定されず、例えば三井化学(株)製のユーバンシリーズ(ユーバン120、20HS、2021、2028、228、2860及び22R等)、日本サイテック(株)製のサイメルシリーズ(サイメル202、232、235、238、254、266、267、272、285、301、303、325、327、350、370、701、703、736、738、771、114、1156及び1158等)及び住友化学(株)製のスミマールシリーズ(スミマールM−30W、M−50W、M−55、M−66B及び50B等)が挙げられる。
【0077】
これらの化合物(B)の中では、ポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2)の乾燥皮膜の耐水性及びコストの観点からエポキシ化合物が好ましい。化合物(B)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0078】
化合物(B)の使用量は、使用する化合物の種類により適宜選択することができるが、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)が有するアミノ基の1〜200モル%と反応する量であることが好ましく、更に好ましくは5〜190モル%、特に好ましくは20〜180モル%である。尚、(P3)が有するアミノ基が中和剤で中和されていても、このアミノ基と化合物(B)の反応は進行する。
【0079】
化合物(B)とポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)を混合して、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)に吸収させるためには、化合物(B)は水溶性であるか、又は(P3)に吸収させる際の温度で液状である必要がある。化合物(B)の融点は好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。化合物(B)が常温で固体である場合、(P3)に化合物(B)を吸収させるために化合物(B)をポリオレフィン系樹脂(P3)の水分散体に混合する際に、予め加温して化合物(B)を液状にすることが好ましい。
【0080】
化合物(B)とポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)を混合して、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)の粒子に(B)を吸収させる際に用いる装置としては、攪拌能力のある装置であれば使用可能であり、公知の混合装置、例えば前記のアミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)又はその有機溶剤溶液を水性媒体(M)に乳化分散させる装置として例示した分散混合装置が使用できる。
【0081】
化合物(B)とポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)を混合して、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)の粒子に化合物(B)を吸収させる温度と時間は使用する化合物(B)とアミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)の種類にもよるが、温度は好ましくは10〜80℃、時間は好ましくは5分〜10時間、更に好ましくは10分〜3時間、特に好ましくは15分〜60分である。
【0082】
化合物(B)がポリオレフィン系樹脂(P3)に吸収されたことは、化合物(B)とポリオレフィン系樹脂水性分散体(PE1)の混合開始後、一定時間毎にサンプリングして採取したサンプルを30分間静置させ、目視で分離していないことを確認する方法等により確かめることができる。
【0083】
化合物(B)をアミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)に吸収させた後、加熱することにより(P3)と(B)とを反応させる装置としては、攪拌と加温能力のある装置であれば使用可能であり、例えば前記のアミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)又はその有機溶剤溶液を水性媒体(M)に乳化分散させる装置として例示した分散混合装置が使用できる。
【0084】
アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3)と化合物(B)とを反応させる際の温度は、80〜140℃が好ましく、更に好ましくは90〜120℃、特に好ましくは90〜110℃である。
反応させる時間は、使用する装置や化合物(B)の種類等により適宜選択することができるが、一般的に10分〜100時間が好ましく、更に好ましくは30分〜30時間であり、特に好ましくは60分〜10時間である。
【0085】
本発明のポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)およびポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2)の固形分濃度は、分散安定性及び輸送コストの観点から、好ましくは10〜65重量%、更に好ましくは20〜55重量%である。
【0086】
本発明のポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)およびポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2)の粘度は、好ましくは10〜100,000mPa・s、更に好ましくは10〜5,000mPa・sである。粘度はBL型粘度計を用いて、25℃の定温下で測定することができる。
【0087】
本発明のポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)およびポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2)の体積平均粒子径(Dv)は、分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜1μm、更に好ましくは0.02〜0.7μm、特に好ましくは0.03〜0.4μmである。
【0088】
尚、本発明における体積平均粒子径(Dv)は、樹脂の水性分散体をイオン交換水で樹脂の固形分が0.01重量%となるよう希釈した後、レーザー回折粒度分布測定装置[例えば、LA−750(堀場制作所製)]又は光散乱粒度分布測定装置[ELS−8000{大塚電子(株)製}]を用いて測定される。
【0089】
本発明のポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1)およびポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2)は、水性塗料組成物、水性接着剤組成物、水性繊維加工処理剤組成物(顔料捺染用バインダー組成物、不織布用バインダー組成物、補強繊維用集束剤組成物、抗菌剤用バインダー組成物及び人工皮革・合成皮革用原料組成物等)、水性コーティング組成物(防水コーティング組成物、撥水コーティング組成物及び防汚コーティング組成物等)、水性紙処理剤組成物や水性インキ組成物等に使用することができるが、その優れた造膜性及び耐水性から、特に水性塗料組成物、水性接着剤組成物及び水性繊維加工処理剤組成物として好適に使用することができる。
【0090】
これらの用途に用いる場合には、必要によりその他の添加剤、例えば塗膜形成補助樹脂、架橋剤、触媒、顔料、顔料分散剤、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、劣化防止剤、安定化剤及び凍結防止剤等を1種又は2種以上添加することができる。
【0091】
以下、実施例を以て本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、部は重量部を意味する。
【0092】
<製造例1>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、熱減成法で得られた低分子量ポリプロピレン[ポリプロピレン(MFR:10g/10min)を410±0.1℃、窒素通気下(80mL/分)に16分間熱減成して得られたもの。Mn:3,400、炭素数1,000個当たりの二重結合数:7.0、1分子当たりの二重結合の平均数:1.8]90重量部、無水マレイン酸10重量部及びキシレン30重量部を投入し、均一に混合した後、窒素置換し、密閉下、撹拌しながら200℃まで昇温して溶融させ、同温度で10時間反応させた。次いで、過剰の無水マレイン酸とキシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、カルボン酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂(P2−1)を得た。(P2−1)の酸価は27.5、Mnは3,600であった。
【0093】
<製造例2>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、熱減成法で得られた低分子量ポリプロピレン[ポリ(プロピレン−ブテン)共重合体(MFR:7g/10min)を410±0.1℃、窒素通気下(80mL/分)に16分間熱減成して得られたもの。Mn:3,300、炭素数1,000個当たりの二重結合数:7.1、1分子当たりの二重結合の平均数:1.8]90重量部、無水マレイン酸10重量部及びキシレン30重量部を投入し、均一に混合した後、窒素置換し、密閉下、撹拌しながら200℃まで昇温して溶融させ、同温度で10時間反応させた。次いで、過剰の無水マレイン酸とキシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、カルボキシル基を有するポリオレフィン(P2−2)を得た。(P2−2)の酸価は27.8、Mnは3,500であった。
【0094】
<製造例3>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製反応釜にジエチレントリアミン386部及びメチルイソブチルケトン1124部を仕込み、120±5℃で生成水を反応系中から留去しつつ10時間反応させ、ジエチレントリアミンの両末端のアミノ基をメチルイソブチルケトンでケチミン化したケチミン化合物を得た。続いて撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、前記ケチミン化合物100部及び水酸化カリウム2部仕込み、反応容器内を0.01MPaまで減圧した。次いで120±10℃でEO817部を21時間かけて吹き込み、前記ケチミン化合物のイミノ基にEOが付加した化合物を得た。続いて撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製反応釜に前記ケチミン化合物のイミノ基にEOが付加した化合物100部にイオン交換水2部を仕込んで90℃で1時間攪拌した後、撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製反応釜に移し、イオン交換水15部を仕込んで90±5℃で生成するメチルイソブチルケトンを反応系中から留去しつつ10時間反応させ、減圧脱水を行いジエチレントリアミンのイミノ基のみにEOが付加したポリアミン(a1−1)を得た。
【0095】
<製造例4>
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、製造例
3で得られたジ
エチレントリアミンの両末端のアミノ基をメチルイソブチルケトンでケチミン化したケチ
ミン化合物379部、水酸化カリウム1部仕込み、反応容器内を0.01MPaまで減圧
した。次いで120±10℃でEO620部を10時間かけて吹き込み前記ケチミン化合
物のイミノ基にEOが付加した化合物を得た。続いて製造例1と同様の処理を
行いジエチレントリアミンのイミノ基のみにEOが付加したポリアミン(a1−2)を得た。
【0096】
<製造例5>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製反応釜にポリオレフィン系樹脂(P2−1)100部、キシレン100部、ポリアミン(a1−1)55.9部を投入し、170℃まで昇温して溶融させ、同温度で1時間反応させた。次いで、キシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3−1)を得た。(P3−1)のアミン価は28.1、Mnは8,000であった。
【0097】
<製造例6>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製反応釜にポリオレフィン系樹脂(P2−2)100部、キシレン100部、ポリアミン(a1−1)55.8部を投入し、170℃まで昇温して溶融させ、同温度で1時間反応させた。次いで、キシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3−2)を得た。(P3−2)のアミン価は28.0、Mnは7,900であった。
【0098】
<製造例7>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製反応釜にポリオレフィン系樹脂(P2−2)100部、キシレン100部、ポリアミン(a1−2)13.4部を投入し、170℃まで昇温して溶融させ、同温度で1時間反応させた。次いで、キシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3−
3)を得た。(P3−
3)のアミン価は47.2、Mnは4,200であった。
【0099】
<実施例1>
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3−1)50部、テトラヒドロフラン50部及び水117部を投入し、120℃で1時間攪拌しポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1−1)を得た。ついでポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)製「デナコールEX−931」] 3.0部を投入し、室温で30分攪拌した後に100℃まで昇温し3時間反応させた。その後、減圧下に70℃でテトラヒドロフランを留去し、ポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2−1)を得た。
【0100】
<実施例2>
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3−1)50部、酢酸1部及び水75部を投入し、140℃で2時間攪拌しポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1−2)を得た。ついでネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)製「デナコールEX−211」] 1.7部を投入し、室温で30分攪拌した後に100℃まで昇温し3時間反応させた。その後、減圧下に70℃でテトラヒドロフランを留去し、ポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2−2)を得た。
【0101】
<実施例3>
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、アミノ基を有するポリオレフィン系樹脂(P3−
3)50部、テトラヒドロフラン50部及び水117部を投入し、120℃で1時間攪拌しポリオレフィン系樹脂水性分散体(E1−
3)を得た。ついでポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)製「デナコールEX−931」] 9.9部を投入し、室温で30分攪拌した後に100℃まで昇温し3時間反応させた。その後、減圧下に70℃でテトラヒドロフランを留去し、ポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2−3)を得た。
【0102】
<比較製造例1>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ポリプロピレン(MFR:3.0g/10min)50重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.5部、無水マレイン酸3重量部及びキシレン30重量部を投入し、均一に混合した後、窒素置換し、密閉下、撹拌しながら200℃まで昇温して溶融させ、同温度で10時間反応させた。次いで、過剰の無水マレイン酸とキシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、ポリオレフィン系樹脂(P’3−1)を得た。(P’3−1)の酸価は9.1、Mnは50,000であった。
【0103】
<比較例1>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製反応釜に、ポリオレフィン系樹脂(P’3−1)50部及びトルエン150部を投入し、110℃で均一に混合した後、80℃まで冷却し、トリエチルアミン1.6部を投入し均一に混合した。攪拌下、ヘキサデシルアルコールのEO14モル付加物10部を水140部に溶解させた水溶液を20分かけて投入した後、減圧下に70℃でトルエンを留去し、ポリオレフィン系樹脂水性分散体(E’2−1)を得た。
【0104】
<比較例2>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製反応釜に、ポリオレフィン系樹脂(P’3−1)50部及びトルエン150部を投入し、110℃で均一に混合した後、80℃まで冷却し、2−ジメチルアミノエタノール1.4部を投入し均一に混合した。攪拌下、ヘキサデシルアルコールのEO14モル付加物15部を水140部に溶解させた水溶液を30分かけて投入した後、減圧下に70℃でトルエンを留去し、ポリオレフィン系樹脂水性分散体(E’2−2)を得た。
【0105】
実施例1〜3で得られたポリオレフィン系樹脂水性分散体(E2−1)〜(E2−3)及び比較例1〜2で得られたポリオレフィン系樹脂水性分散体(E’2−1)及び(E’2−2)の評価結果を表1に示す。尚、評価方法は以下の通りである。
【0106】
<乾燥皮膜の耐水性>
ポリオレフィン系樹脂水性分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で105℃で3時間加熱乾燥することによって得られるフィルムを、50℃のイオン交換水に14日間浸漬した後、塗膜表面を目視により以下の評価基準で評価した。
○:浸漬前後で塗膜表面の変化なし。
×:浸漬後、塗膜表面が白化する。
【0107】
<乾燥皮膜の耐溶剤性>
ポリオレフィン系樹脂水性分散体を10cm×20cmの鋼板にスプレー塗布し、80℃で3分加熱して20μmの塗膜を作製した。この塗装した鋼板を25℃のジメチルホルムアミド中に1分間浸漬した後、取り出して表面を軽く拭き、塗膜表面を目視により以下の評価基準で評価した。
○:浸漬前後で塗膜表面の変化がない。
×:浸漬後、塗膜表面に凹凸がある。
【0108】
<乾燥皮膜の引張強度>
ポリオレフィン系樹脂水性分散体をガラス板上に乾燥後の膜圧が0.2mmの厚みになるように塗布し、105℃の循風乾燥機で3時間乾燥した後、ガラス板から剥がすことにより、引張強度試験用フィルムを作製した。
得られた引張試験用フィルムを温度25℃、湿度65%RHに調整した室内に1日間静置した後、JIS K 6251に従い、引張強度を測定した。