特許第6382046号(P6382046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6382046無線通信ネットワークの同報通信システム、同報通信方法、および、間欠動作無線端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382046
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】無線通信ネットワークの同報通信システム、同報通信方法、および、間欠動作無線端末
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/02 20090101AFI20180820BHJP
   H04W 40/30 20090101ALI20180820BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20180820BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20180820BHJP
【FI】
   H04W40/02 110
   H04W40/30
   H04W84/18
   H04W4/38
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-193076(P2014-193076)
(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公開番号】特開2016-66839(P2016-66839A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309042071
【氏名又は名称】東光東芝メーターシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】市村 順一
(72)【発明者】
【氏名】坂元 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】長山 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】安井 昌広
(72)【発明者】
【氏名】山下 諒
(72)【発明者】
【氏名】西口 一弘
(72)【発明者】
【氏名】福島 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】市川 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】坂田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友規
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚利
(72)【発明者】
【氏名】星野 充紀
(72)【発明者】
【氏名】松井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】畠内 孝明
【審査官】 松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−061678(JP,A)
【文献】 特開2011−061679(JP,A)
【文献】 特開2011−061682(JP,A)
【文献】 特開2007−235444(JP,A)
【文献】 特開2010−045525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを無線にて送信する無線送信回路と、無線で送信されてきたデータを受信する無線受信回路とを有する複数の間欠動作無線端末で構成される無線通信ネットワークが、いわゆるマルチホップネットワークを構成する無線通信ネットワークの同報通信システムであって、
前記間欠動作無線端末は、相互の事前の通信によってあらかじめ前記ネットワーク内の全ての無線端末までの論理中継数を中継段数テーブルに保持し、情報を発信する前記間欠動作無線端末は、発信端末となって、伝達したい情報を通信データとして生成し、該通信データに未転送端末情報として情報を伝達したい無線端末のリストを付加し、前記中継段数テーブルを参照して伝達したい前記無線端末のうち自端末から論理中継数が最多になる無線端末を宛先として選定して通信データを送信する通信データ送信制御手段と、
前記宛先に前記発信端末からの前記通信データを伝達する途上で中継を行った間欠動作無線端末は自端末内に前記通信データを取り込み、前記未転送端末情報の更新を行う未転送情報更新手段と、
前記未転送端末情報の更新を行った間欠動作無線端末が、自端末の中継段数テーブルを確認して自端末が宛先の隣接局になった場合には、同時転送を担う無線端末となって前記未転送端末情報を確認して自局内の未転送状態の無線端末数を集計し、集計した未転送状態の端末数に比例した同期待ち時間を設定し、該同期待ち時間内に前記自局内の未転送状態の無線端末に同時転送を行う同時転送送受信手段と、
該同時転送を担った間欠動作無線端末は、前記同期待ち時間内であっても自局内のすべての無線端末への同時転送が終了した場合には、前記同期待ち時間の終了を待たずに自端末が保持する中継段数テーブル及び未転送端末情報を参照し、自端末が新たな発信端末となって、自端末から論理中継数が最多になる間欠動作無線端末を宛先とし且つ未転送端末情報として情報を伝達したい無線端末のリストを通信データに付加して発信し、当該通信データの同時転送を担う間欠動作無線端末による同時転送すべき無線端末が前記ネットワーク内に存在しなくなったことをもって同報通信を完結させる同報通信完結手段と、
を備えることを特徴とする無線通信ネットワークの同報通信システム。
【請求項2】
データを無線にて送信する無線送信回路と、無線で送信されてきたデータを受信する無線受信回路とを有する複数の間欠動作無線端末で構成される無線通信ネットワークが、いわゆるマルチホップネットワークを構成する無線通信ネットワークの同報通信方法であって、
前記間欠動作無線端末は、相互の事前の通信によってあらかじめ前記ネットワーク内の全ての無線端末までの論理中継数を中継段数テーブルに保持し、情報を発信する前記間欠動作無線端末は、発信端末となって、伝達したい情報を通信データとして生成し、該通信データに未転送端末情報として情報を伝達したい無線端末のリストを付加し、前記中継段数テーブルを参照して伝達したい前記無線端末のうち自端末から論理中継数が最多になる無線端末を宛先として選定して通信データを送信し、
前記宛先に前記発信端末からの前記通信データを伝達する途上で中継を行った間欠動作無線端末は自端末内に前記通信データを取り込み、前記未転送端末情報の更新を行い、
前記未転送端末情報の更新を行った間欠動作無線端末が、自端末の中継段数テーブルを確認して自端末が宛先の隣接局になった場合には、同時転送を担う無線端末となって前記未転送端末情報を確認して自局内の未転送状態の無線端末数を集計し、集計した未転送状態の端末数に比例した同期待ち時間を設定し、該同期待ち時間内に前記自局内の未転送状態の無線端末に同時転送を行い、
該同時転送を担った間欠動作無線端末は、前記同期待ち時間内であっても自局内のすべての無線端末への同時転送が終了した場合には、前記同期待ち時間の終了を待たずに自端末が保持する中継段数テーブル及び未転送端末情報を参照し、自端末が新たな発信端末となって、自端末から論理中継数が最多になる間欠動作無線端末を宛先とし且つ未転送端末情報として情報を伝達したい無線端末のリストを通信データに付加して発信し、当該通信データの同時転送を担う間欠動作無線端末による同時転送すべき無線端末が前記通信ネットワーク内に存在しなくなったことをもって同報通信を完結させることを特徴とする無線通信ネットワークの同報通信方法。
【請求項3】
データを無線にて送信する無線送信回路と、無線で送信されてきたデータを受信する無線受信回路とを有する複数の間欠動作無線端末で構成される無線通信ネットワークが、いわゆるマルチホップネットワークを構成する無線通信ネットワークにおける、前記間欠動作無線端末であって、発信端末が送信する通信データ内の宛先を参照して自端末が該宛先より1ホップ手前の無線端末であると判断した場合に同時転送を担う無線端末となり、
該同時転送を担うことになった無線端末は、
前記無線送信回路及び前記無線受信回路を用いて前記通信データの同時転送を行う同時転送送受信手段と、
同時転送における同期待ち時間を制御する同期時間制御手段と、を有し、
該同期時間制御手段は、自端末が保持する自端末の未転送端末情報を参照し、隣接する(ホップ数が1の)無線端末数を集計し、集計した未転送の無線端末数がnであるとき以下の計算式を用いて同期待ち時間Twを算出し、
Tw=T×(n+1) 但し、Tは同期ビーコン送信周期
前記同時転送送受信手段は、前記同期待ち時間Tw内に自局のすべての無線端末が前記通信データを受信したことの確認を得た場合には、前記同期待ち時間の終了を待たずに同時転送を終了し、もしくは、前記同期待ち時間Twが終了したときに前記通信データを受信したことの確認が得られなかった場合には、未転送状態の無線端末が存在していても同時転送を終了して、同時転送の終了後に自端末が新たな発信端末となって、自端末が保持する中継段数テーブル及び未転送端末情報を参照し、自端末からみて論理中継数が最多になる無線端末を宛先として且つ未転送端末情報として情報を伝達したい無線端末のリストを通信データに付加して発信し、
前記自端末の中継段数テーブル及び未転送端末情報を参照して他に同時転送すべき未転送端末が残っていない場合には無線通信ネットワーク内のすべての無線端末への同報が行き渡ったと判断して同報通信を終了する、ことを特徴とする間欠動作無線端末。
【請求項4】
データを無線にて送信する無線送信回路と、無線で送信されてきたデータを受信する無線受信回路とを有する複数の間欠動作無線端末で構成される無線通信ネットワークが、いわゆるマルチホップネットワークを構成する無線通信ネットワークにおける、前記間欠動作無線端末であって、該間欠動作無線端末の各々が、
相互の事前の通信によってあらかじめ前記ネットワーク内の全ての無線端末までの論理中継数を保持する中継段数テーブルを有しており、
情報を発信すべき事象が生じた場合には、発信端末となって、伝達すべき情報を通信データとして生成し、該通信データに、情報を伝達すべき未転送状態の無線端末のリストを未転送端末情報として付加し、前記中継段数テーブルを参照して、伝達すべき前記未転送状態の無線端末のうち自端末からの論理中継数が最多になる無線端末を宛先として選定して前記通信データを送信し、
他端末から通信データが送信されてきた場合であって、自端末が該通信データの宛先でなく且つ該宛先の隣接局でもない場合には、中継を担う無線端末となって、該通信データを取り込み、該通信データに付加されてきた未転送端末情報を、自端末について転送済みとなるように更新した上で、該更新された未転送端末情報を前記通信データに付加して、次の転送先へ送信し、
他端末から通信データが送信されてきた場合であって、自端末が該通信データの宛先の隣接局である場合には、同時転送を担う無線端末となって、前記通信データに付加されてきた未転送端末情報を確認して、自端末に隣接する無線端末の中で未転送状態の無線端末数を集計し、該集計した未転送状態の無線端末数に比例した同期待ち時間を設定し、該同期待ち時間内に前記未転送状態の無線端末に前記通信データを同時転送し、
前記同時転送が終了した場合には、自端末が新たな発信端末となって、自端末が有する前記中継段数テーブルと前記未転送端末情報とを参照して、自端末からの論理中継数が最多になる未転送状態の無線端末を宛先とし、且つ、前記未転送端末情報を自端末について転送済みとなるように更新した上で、該更新された未転送端末情報を前記通信データに付加して発信する、ことを特徴とする間欠動作無線端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の無線端末と直接又は余の無線端末を介して他の無線端末に間接的に無線により通信可能にされた、無線通信ネットワークの同報通信システム、同報通信方法、および、間欠動作無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
無線データ通信を行う複数の無線端末によって構築されるネットワークとしては、例えば、特許文献1に示すように、各無線端末がネットワーク内の他の無線端末と、直接、または余の1以上の無線端末を介することにより間接的に通信可能に構成された無線通信ネットワークが知られている。このような直接又は間接的に他の無線端末と、全ての無線端末が通信可能に構成されたいわゆるマルチホップネットワークにおける無線端末間での情報の共有方法としては、例えば、特許文献2に示すように、一の無線端末が、直接通信の可能な無線端末に対してブロードキャストを行い、順次通信データを伝達していく同報通信技術が一般に知られている。現在、無線端末によるマルチホップネットワークを用いたシステムは、宅内などの建物内でのネットワークシステムへの利用が見込まれており、上述の同報通信機能を用いることで、センス付き無線端末を建物内に配置して無線端末によるマルチホップネットワークを構築することで、ブロードキャスト機能を備えた火災警報システムや防犯システムなどを実現することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−10703号公報
【特許文献2】特開平8−139660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらブロードキャストを行うにあたって、間欠的に動作するネットワーク内の各無線端末がどのようなタイミングで同報通信を行うことが最適であるのかが明らかでないという問題がある。
【0005】
またバッテリで動作するような間欠動作無線端末で同報通信を行う場合、隣接局へのデータ転送のために同期用のビーコン信号を待ち受ける時間が長くなるとバッテリの消耗を招き、システムの運用がしづらいという問題がある。
【0006】
そこで本願発明の目的は、いわゆるマルチホップネットワークにおいて、ネットワーク内のすべての無線端末に可及的に速やかに通信データが行き渡るように、ネットワークの形態(トポロジー)に無関係に同報通信を実現する無線通信ネットワークの同報通信システム、同報通信方法、および、間欠動作無線端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の無線通信ネットワークの同報通信システムは、データを無線にて送信する無線送信回路と、無線で送信されたデータを受信する無線受信回路とを有する複数の間欠動作無線端末で構成される無線通信ネットワークが、いわゆるマルチホップネットワークを構成する無線通信ネットワークの同報通信システムであって、
前記間欠動作無線端末は、相互の事前の通信によってあらかじめ前記ネットワーク内の全ての無線端末までの論理中継数を中継段数テーブルに保持し、情報を発信する前記間欠動作無線端末は、発信端末となって、伝達したい情報を通信データとして生成し、該通信データに未転送端末情報として情報を伝達したい無線端末のリストを付加し、前記中継段数テーブルを参照して伝達したい前記無線端末のうち自端末から論理中継数が最多になる無線端末を宛先として選定して通信データを送信する通信データ送信制御手段と、
前記宛先に前記発信端末からの前記通信データを伝達する途上で中継を行った間欠動作無線端末は自端末内に前記通信データを取り込み、前記未転送端末情報の更新を行う未転送情報更新手段と、
前記未転送端末情報の更新を行った間欠動作無線端末が、自端末の中継段数テーブルを確認して自端末が宛先の隣接局になった場合には、同時転送を担う無線端末となって前記未転送端末情報を確認して自局内の未転送状態の無線端末数を集計し、集計した未転送状態の端末数に比例した同期待ち時間を設定し、該同期待ち時間内に前記自局内の未転送状態の無線端末に同時転送を行う同時転送送受信手段と、
該同時転送を担った間欠動作無線端末は、前記同期待ち時間内であっても自局内のすべての無線端末への同時転送が終了した場合には、前記同期待ち時間の終了を待たずに自端末が保持する中継段数テーブル及び未転送端末情報を参照し、自端末が新たな発信端末となって、自端末から論理中継数が最多になる間欠動作無線端末を宛先とし且つ未転送端末情報として情報を伝達したい無線端末のリストを通信データに付加して発信し、当該通信データの同時転送を担う間欠動作無線端末による同時転送すべき無線端末が前記ネットワーク内に存在しなくなったことをもって同報通信を完結させる同報通信完結手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
上記目的を達成するために本発明の無線通信ネットワークの同報通信方法は、
データを無線にて送信する無線送信回路と、無線で送信されたデータを受信する無線受信回路とを有する複数の間欠動作無線端末で構成される無線通信ネットワークが、いわゆるマルチホップネットワークを構成する無線通信ネットワークの同報通信方法であって、
前記間欠動作無線端末は、相互の事前の通信によってあらかじめ前記ネットワーク内の全ての無線端末までの論理中継数を中継段数テーブルに保持し、情報を発信する前記間欠動作無線端末は、発信端末となって、伝達したい情報を通信データとして生成し、該通信データに未転送端末情報として情報を伝達したい無線端末のリストを付加し、前記中継段数テーブルを参照して伝達したい前記無線端末のうち自端末から論理中継数が最多になる無線端末を宛先として選定して通信データを送信し、
前記宛先に前記発信端末からの前記通信データを伝達する途上で中継を行った間欠動作無線端末は自端末内に前記通信データを取り込み、前記未転送端末情報の更新を行い、
前記未転送端末情報の更新を行った間欠動作無線端末が、自端末の中継段数テーブルを確認して自端末が宛先の隣接局になった場合には、同時転送を担う無線端末となって前記未転送端末情報を確認して自局内の未転送状態の無線端末数を集計し、集計した未転送状態の端末数に比例した同期待ち時間を設定し、該同期待ち時間内に前記自局内の未転送状態の無線端末に同時転送を行い、
該同時転送を担った間欠動作無線端末は、前記同期待ち時間内であっても自局内のすべての無線端末への同時転送が終了した場合には、前記同期待ち時間の終了を待たずに自端末が保持する中継段数テーブル及び未転送端末情報を参照し、自端末が新たな発信端末となって、自端末から論理中継数が最多になる間欠動作無線端末を宛先とし且つ未転送端末情報として情報を伝達したい無線端末のリストを通信データに付加して発信し、当該通信データの同時転送を担う間欠動作無線端末による同時転送すべき無線端末が前記通信ネットワーク内に存在しなくなったことをもって同報通信を完結させることを特徴とするものである。
【0009】
上記目的を達成するために本発明の同時転送を担う間欠動作無線端末は、データを無線にて送信する無線送信回路と、無線で送信されたデータを受信する無線受信回路とを有する複数の間欠動作無線端末で構成される無線通信ネットワークが、いわゆるマルチホップネットワークを構成する無線通信ネットワークにおいて、発信端末が送信する通信データ内の宛先を参照して自端末が該宛先より1ホップ手前の無線端末であると判断した場合に同時転送を担う無線端末となり、
該同時転送を担うことになった無線端末は、
相互の事前の通信によってあらかじめ前記ネットワーク内の全ての無線端末までの論理中継数を保持する中継段数テーブルと、
前記無線送信回路及び前記無線受信回路を用いて前記通信データの同時転送を行う同時転送送受信手段と、
同時転送における同期待ち時間を制御する同期時間制御手段と、を有し、
該同期時間制御手段は、自端末が保持する自端末の未転送端末情報を参照し、隣接する(ホップ数が1の)無線端末数を集計し、集計した未端末数がnであるとき以下の計算式を用いて同期待ち時間Twを算出し、
Tw=T×(n+1) 但し、Tは同期ビーコン送信周期
前記同時転送送受信手段は、前記同期待ち時間Tw内に自局のすべての無線端末が前記通信データを受信したことの確認を得た場合には、前記同期待ち時間の終了を待たずに同時転送を終了し、もしくは、前記同期待ち時間Twが終了したときに前記通信データを受信したことの確認が得られなかった場合には、未転送状態の無線端末が存在しても同時転送を終了して、同時転送の終了後に自端末が新たな発信端末となって、自端末が保持する中継段数テーブル及び未転送端末情報を参照し、自端末からみて論理中継数が最多になる無線端末を宛先として且つ未転送端末情報として情報を伝達したい無線端末のリストを通信データに付加して発信し、
前記自端末の中継段数テーブル及び未転送端末情報を参照して他に同時転送すべき未転送端末が残っていない場合には無線通信ネットワーク内のすべての無線端末への同報が行き渡ったと判断して同報通信を終了する、ことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の中継装置となる無線端末は、データを無線にて送信する無線送信回路と、無線で送信されてきたデータを受信する無線受信回路とを有する複数の間欠動作無線端末で構成される無線通信ネットワークにおける、前記間欠動作無線端末であって、該間欠動作無線端末の各々が、
相互の事前の通信によってあらかじめ前記ネットワーク内の全ての無線端末までの論理中継数を保持する中継段数テーブルを有しており、
情報を発信すべき事象が生じた場合には、発信端末となって、伝達すべき情報を通信データとして生成し、該通信データに、情報を伝達すべき未転送状態の無線端末のリストを未転送端末情報として付加し、前記中継段数テーブルを参照して、伝達すべき前記未転送状態の無線端末のうち自端末からの論理中継数が最多になる無線端末を宛先として選定して前記通信データを送信し、
他端末から通信データが送信されてきた場合であって、自端末が該通信データの宛先でなく且つ該宛先の隣接局でもない場合には、中継を担う無線端末となって、該通信データを取り込み、該通信データに付加されてきた未転送端末情報を、自端末について転送済みとなるように更新した上で、該更新された未転送端末情報を前記通信データに付加して、次の転送先へ送信し、
他端末から通信データが送信されてきた場合であって、自端末が該通信データの宛先の隣接局である場合には、同時転送を担う無線端末となって、前記通信データに付加されてきた未転送端末情報を確認して、自端末に隣接する無線端末の中で未転送状態の無線端末数を集計し、該集計した未転送状態の無線端末数に比例した同期待ち時間を設定し、該同期待ち時間内に前記未転送状態の無線端末に前記通信データを同時転送し、
前記同時転送が終了した場合には、自端末が新たな発信端末となって、自端末が有する前記中継段数テーブルと前記未転送端末情報とを参照して、自端末からの論理中継数が最多になる未転送状態の無線端末を宛先とし、且つ、前記未転送端末情報を自端末について転送済みとなるように更新した上で、該更新された未転送端末情報を前記通信データに付加して発信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、いわゆるマルチホップネットワークにおいて、ネットワークのトポロジーに影響されずに且つ通信の性能を変えることなく、バッテリの消耗を抑えてネットワーク内の全ての無線端末に同報したい通信データを可及的速やかに行き渡らせることができる。
【0012】
また本発明によれば、無線通信ネットワーク内の間欠動作無線端末が中継及び同時転送を繰り返すことで、無線通信ネットワーク内のすべての無線端末に通信データをブロードキャストするので、伝達したい情報の同報通信を可及的速やかに完結(通信データ送信済の確認)させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る無線通信ネットワークの構成例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る間欠動作無線端末の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る同報通信が実施される無線通信ネットワークの一例を示す図である。
図4図3に示す無線通信ネットワークにおける発信端末の中継段数テーブル及び未転送端末情報のリストを示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る間欠動作無線端末により送受される通信データのパケットフォーマット例を示す図である。
図6図3に示す無線通信ネットワークにおける間欠動作無線端末による通信データの送受信を説明する図である。
図7図6に示す無線通信ネットワークで同時転送を実行する無線端末の中継段数テーブル及び更新された未転送端末情報のリストを示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る同時転送成功時のシーケンス例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る同時転送失敗時のシーケンス例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る無線通信ネットワークにおける同報通信が完結するまでの通信データの流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信ネットワークの構成例を示す図である。図1において、「X」は本発明の実施形態に係る間欠動作無線端末Xを、「S」は間欠動作無線端末Xと電気的に接続されたセンサーSを、間欠動作無線端末X間を繋ぐ細実線は、繋がれた無線端末X同士が直接無線通信可能であることを示している。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る無線通信ネットワークは、複数の無線端末Xと無線通信により相互に通信可能に接続され、いわゆるマルチホップ方式の無線通信ネットワークNを構成する。間欠動作無線端末Xは、送信しようとする通信データの宛先にあたる他の無線端末Xと直接、又は余の無線端末Xを介して他の無線端末Xと間接的に通信可能に構成される。このような構成により本発明の無線通信ネットワークは、無線通信ネットワークN内の全ての無線端末Xと、直接又は間接的に通信データの送受信を行うことができる。
【0016】
また本実施形態において、無線通信ネットワークN内のいくつかの間欠動作無線端末Xは、各種のセンサーSと接続され、接続されたセンサーSが検知した情報を取得可能に構成されている。センサーSとしては、例えば、火災報知機や、防犯センサー(侵入者を検知するための熱感知センサーや衝撃センサー)を用いることができる。具体的には、例えば、センサーSが火災報知機の場合には、当該センサーSに接続された無線端末Xは、一の無線端末XがセンサーSから情報を取得したときには、当該情報を同報すべき通信データとして無線通信ネットワークN内の全ての無線端末Xに伝達して、センサーSから取得した情報を全無線端末で共有することができる。
【0017】
なお、図1に示されるネットワークの形態(トポロジー)は、単なる例示にすぎず、図1に示される無線通信ネットワークトポロジーに限定されないことは云うまでもない。
[無線端末の概要]
図2は、本発明の実施形態に係る間欠動作無線端末の構成を示すブロック図である。図2において、本発明の実施形態に係る間欠動作無線端末Xは、大別して、演算装置及び記憶装置からなる制御部1と、無線による通信データの送受信を行う無線部2とから構成されている。制御部1及び無線部2は、電池(バッテリ)Bから電力が供給され動作するように構成されている。また、電池Bは間欠動作制御部3を介して制御部1及び無線部2に接続され、間欠動作制御部3により制御部1及び無線部2を間欠的に動作させるように構成されている。すなわち、
間欠動作制御部3は、電池Bから制御部1及び無線部2への電力供給を、例えば、一定時間ごとにスリープ状態に移行できる程度に低減する、もしくは通信データを受信するまでの間スリープ状態に移行できる程度に低減する構成とし、無線端末Xの動作を間欠的なものにしている。このような構成により、本発明の間欠動作無線端末Xの消費電力は低く抑えられ、電池Bによる長時間の動作が可能となるものである。
【0018】
また本発明の間欠動作無線端末Xは、制御部1及び無線部2を用い、通信データの転送方法として、「同時転送」と「中継」の2種類の方法を実行可能に構成されている。
間欠動作無線端末における「同時転送」は、従来法では、無線端末が規定時間受信状態となり、隣接局からの同期信号を待ち、同期信号を受信して同期がとれた無線端末に対して情報を転送し、未転送端末情報の更新を行う通信方法を指しているが、本願発明における「同時転送」では、隣接する(論理中継数が1の)端末数に比例して決められる所定の同期信号(ビーコン信号に同じ)の待ち時間内に通信データを隣接する無線端末Xのすべてに転送する通信方法を指し、本願発明に係る「同報通信」の可及的速やかな完結(通信データ送信済の確認)に不可欠のものである。
【0019】
また、「中継」は、一の無線端末Xが受信した通信データを図1に示したネットワークN内の他の無線端末Xに送信する方法である。そして本実施形態においては、間欠動作無線端末Xがやりとりする通信データは、図に示すようなパケットフォーマットで送受される。以下では、制御部1及び無線部2についてより詳細に説明を行う。
【0020】
制御部1は、パケット送受信制御装置10、同期時間制御部100、同時転送送受信装置11、中継パケット送受信装置12、及び中継段数テーブル13を備える。これらの装置(10〜13)は、いずれも制御部1を構成する演算装置及び記憶装置を用いて実行されるソフトウェアとして実装されている。なお、図2では、制御部1および無線部2の各構成装置への制御信号の流れについては省略している。
【0021】
無線部2は、制御部1で扱う通信データと無線通信により伝達する信号とを相互に変換し、他の無線端末Xと無線通信が可能となるように構成されている。本実施形態においては、間欠動作無線端末Xがバッテリ駆動の近距離無線通信により無線通信を行うように構成されている。無線部2には、アンテナ5が接続され、他の無線端末Xに信号を送信するとともに、他の無線端末Xから信号を受信する。
【0022】
本実施形態において無線送信回路21は、制御部1で処理された通信データを変調して無線により宛先となる無線端末Xに送信する。また無線受信回路22は、無線端末Xより受信された信号を受信して制御部1により処理可能な通信データに復調する。切り替え部23は、制御部1からの制御信号(不図示)により送受信の切り替えを行う。
【0023】
図3は、本発明の実施形態に係る同報通信が実施される無線通信ネットワークの一例を示す図である。図3において、X1〜X15は、端末番号1〜15が割り振られた間欠動作無線端末Xを示す。図中の斜縞を付した丸印に示す無線端末X1(発信端末)は、宛先となる特定の無線端末Xに向けて通信データの送信を行う元となる間欠動作無線端末Xである。図4は、図3に示す無線通信ネットワークにおける発信端末の中継段数テーブル(図4(a))及び未転送端末情報(図4(b))のリストを示す図であり、図3の無線通信ネットワークNにおいて、無線端末X1が、通信データの送信開始時までに制御部1内に保持する構成情報を示している。
【0024】
図2を用いてさらに制御部1の構成を説明する。その際、適宜、図3図5を参照する。
同時転送送受信装置11は、無線部2の無線送信回路21及び無線受信回路22を用いて、通信データの同時転送を行うように構成されている。より詳しくは、直接通信可能な(1ホップで通信可能な)無線端末Xに同一の通信データを送信するように構成されている。同時転送送受信装置11は、本願発明に係る「同報通信」を可及的速やかに実現する手段として不可欠のものである。
【0025】
中継パケット送受信装置12は、無線部2の無線送信回路21及び無線受信回路22を用いて、通信データの中継を行うように構成されている。
中継段数テーブル13は、自端末から無線通信ネットワークN内の全ての無線端末Xそれぞれへの論理中継数(ホップ数)を保持するテーブルで、あらかじめ設定される。すなわち、無線通信ネットワークN内の各無線端末Xに対して、何ホップで通信が可能かを示すテーブルとなっている。中継段数テーブル13の具体的な内容は、図4(a)に例示されている。図4(a)においては、端末番号1(図3におけるX1)が自端末の場合を示している。中継段数テーブル13の設定は、例えば、無線通信ネットワークNの構築時に通信によってネットワーク内における相互の位置関係を把握することで行う。
【0026】
なおI/F(インターフェース)は、各種のセンサーS等に接続可能とするインターフェースであり、図1に示す無線通信ネットワークN内のすべての無線端末Xに設けられている。
【0027】
パケット送受信制御装置10は、他の無線端末Xを宛先として指定し、当該宛先に通信データを伝達するように構成されている。本実施形態においては、宛先には、発信端末である自端末から最も遠い距離にある(論理中継数が最も多い)無線端末Xが設定される。より具体的には、中継段数テーブル13を参照し、同時転送送受信装置11または中継パケット送受信装置12を用いて、通信データの同時転送または中継を実行するように構成されている。
【0028】
同時転送を実行する場合には、同期時間制御部100を用いて同時転送における同期待ち時間を制御するように構成されている。より具体的には、同期時間制御部100は、あらかじめ設定された同期待ち時間を記憶するとともにタイマーを備え、同時転送開始時点から当該タイマーによりカウントされた時間が、同期待ち時間に達した(タイムアウトした)場合、もしくは、同時転送すべき無線端末すべてに通信データの送信が終了した場合には、同時転送を終了するように構成している。
【0029】
なお、同時転送を担う無線端末Xの同期待ち時間は、中継段数テーブル13及び自端末の未転送端末情報を参照し、隣接する(ホップ数が1の)無線端末Xの端末数を集計し、集計した端末数を基に以下のような計算式によって同期待ち時間を設定するようにしている。
【0030】
いま、各無線端末Xの同期用のビーコン信号送信周期をT(秒)、自局(同時転送を担う無線端末)の未転送端末数をnとしたとき、同時転送における同期待ち時間Tw(秒)を、次の式(1)により設定する。
【0031】

Tw=T×(n+1) (1)

図5は、本発明の実施形態に係る間欠動作無線端末により送受される通信データのパケットフォーマット例を示す図である。図5において、間欠動作無線端末X間で送受される通信データのヘッダ部には、「宛先端末ID」として情報を伝達したい相手無線端末Xの端末ID(端末番号)が設定されるとともに、図4(b)に例示する「未転送端末情報」が設定される。ここで、「未転送端末情報」は、無線通信ネットワークN内の無線端末Xそれぞれについて当該通信データを受信したか否かを示す情報で、フラグ“1”は未受信であることを示す。
【0032】
図5に示す通信データの本体部には、無線通信ネットワークN内のすべての無線端末に伝達したい情報である「伝達情報」が設定される。ここで、「伝達情報」としては、例えば、火災が発生した旨を示す火災警報や、無線端末Xの設定を変更する旨を示す設定変更命令などが想定される。
【0033】
本実施形態においては、伝達したい情報を発信する間欠動作無線端末Xのパケット送受信制御装置10は、図5に示される通信データの本体部に「伝達情報」を設定し、さらに「ヘッダ部」に「宛先端末ID」と「未転送端末情報」を付加して通信データとするように構成されている。具体的には、パケット送受信制御装置10は、通信データとして、「ヘッダ部」の未転送端末情報欄に、図4(b)に示すような通信データを伝達したい無線端末Xのリスト(未転送を表すフラグ“1”)を付加するとともに、宛先端末ID欄に伝達したい無線端末Xのうち自端末からの論理中継数が最多となる無線端末Xの端末ID(端末番号)を設定する。
【0034】
さらに図2に示されるパケット送受信制御装置10は、間欠的に、無線部2の無線送信回路21を介して、周囲の無線端末Xに自端末がアクティブであることを示すビーコン信号を送信する。また、パケット送受信制御装置10は、無線部2の無線受信回路22を介して、他の端末のビーコン信号を受信し、これを基に自端末から通信データを送信するタイミングを調整するように構成されている。このような構成により、不必要に無線部2の無線受信回路22を立ち上げてビーコン信号が受信できるよう待機する時間を削減することで無線端末Xの消費電力の低減を実現することができる。
[中継及び同時転送]
以下では、図3図7を用いて「中継」を実行した場合の通信データの送受信方法を、図8及び図9を用いて「同時転送」を実行した場合の通信データの送受信方法を説明する。
【0035】
図3に示す無線通信ネットワークNにおいて、無線端末X1が発信端末となって通信データをネットワークN内のすべての無線端末Xに同報通信する場合を例に、通信データの送信方法を説明する。発信端末となる無線端末X1の中継段数テーブル13には、あらかじめ図4(a)に示す論理中継数のリストが設定される。この状態において、無線端末X1が発信端末となった場合、無線端末X1のパケット送受信制御装置10は、図5に示す通信データのパケットフォーマット内に、中継段数テーブル13の中で論理中継数が最多となる無線端末X11を宛先端末IDに設定し、自端末(端末番号1)以外の無線端末Xは未転送端末とした未転送端末情報(図4(b)参照)を付加して送信する。
【0036】
図6は、図3に示す無線通信ネットワークにおける間欠動作無線端末による通信データの送受信を説明する図である。図6では無線端末X11(縦縞を付した丸印)を宛先として、無線端末X1(斜縞を付した丸印)から送信された通信データが無線端末X11に伝達されるまでに、他の無線端末Xを介して通信データが中継されるものとしている。図6において、通信データの伝達経路を破線矢印で示すとともに、通信データを受信した無線端末Xは濃い斜縞を付した丸印で示している。この例では、宛先の無線端末X11の1ホップ手前の無線端末X12において同時転送が実行される場合を示している。そして無線端末X1から無線端末X12に至るまでの各無線端末X(X2、X7)では、送信された通信データを受信すると、自端末に通信データを取り込み、パケット送受信制御装置10が未転送端末情報の更新を行う。具体的には、未転送端末情報にリストアップされている自端末の未転送状態を“転送済み”(図示例の空欄はフラグ“0”を表す)に書き換えることで未転送端末情報リストから自端末を除外する。
【0037】
図7は、図6に示す無線通信ネットワークで同時転送を実行する無線端末の中継段数テーブル及び更新された未転送端末情報のリストを示す図である。すなわち、図7(a)は、無線端末X12における中継段数テーブル13の情報を、図7(b)は、無線端末X12が保持する未転送端末情報のリストを示す図である。無線端末X12は、宛先である無線端末X11に隣接(論理中継数が1)するため、通信データを受信すると、図7(b)に示す未転送端末情報を参照して「同時転送」を実行する。無線端末X12は、図7(b)に示される、隣接する(論理中継数が1の)無線端末Xのうち未転送状態である無線端末X(X11、X13〜X15)を転送先として「同時転送」を行う。具体的な「同時転送」については後述する。
【0038】
図8は、本発明の実施形態に係る同時転送成功時のシーケンス例を示す図である。図8において無線端末X12は、自端末におけるパケット送受信制御装置10(図2参照)により同時転送の実行が要求されると、パケット送受信制御装置10内の同期時間制御部100が無線端末X12の中継段数テーブル13(図2参照)を参照して、無線端末X12に隣接する(論理中継数が1の)局で未転送の端末数を集計し、それを元に上記式(1)に示される計算式を用いて同時転送における同期待ち時間を演算し、当該演算により得た同期待ち時間の間、他の無線端末Xからのビーコン信号を待ち受けるように無線受信回路22をアクティブな状態に設定する。
【0039】
これを具体的に説明すると、本実施形態における各無線端末Xの同期用のビーコン信号送信周期は5秒に設定されているものとし、無線端末X12まで中継された時点での未転送端末情報(図7(b) )および無線端末X12の中継段数テーブル(図7(a) )を参照して、無線端末X12の隣接局のうち未転送の端末数は4であるため、上記式(1)より、このときの同期待ち時間は、Tw=5(秒)×(4+1)=25(秒)となる。
【0040】
そして他の無線端末X(X11)から例えば「ビーコン」信号を受信すると、通信データの送信を開始する旨を知らせる「転送要求」通知を送信した後、続けて通信データ(図中「転送データ」)を送信する。無線端末X11は、通信データを受信し終えると、通信データの受信を終えた旨を知らせる「転送完了」通知を送信し、無線端末X12は、「転送完了」通知を受信したことをもって無線端末X11とのセッションを終了する。同様にして、無線端末X12は、他の無線端末X(X14、X13、X15)から「ビーコン」信号を受信することでセッションを開設して通信データを送信し、他の無線端末X(X14、X13、X15)から「転送完了」通知を受信することでセッションを終了する。同期待ち時間Tw内にすべての未転送状態であった無線端末Xとの間のセッションを終了すると、ビーコン信号の受信を中断し、同時転送を終了する。このように、上記式(1)を用いて演算されたTw時間内(この時間内は“同時転送”作動中)に自局の全ての未転送状態の無線端末への通信データの転送が終了できた場合は、その時点でビーコン信号の受信を中断し、同時転送を終了して次の転送に処理を移行する。
【0041】
図8は、このようにして得られた同時転送成功時のシーケンス例を示すものであり、同時転送を担う無線端末X12が自局における同時転送すべき全ての無線端末Xからの通信データの転送が終了することで、上記式(1)を用いて演算された同期待ち時間Tw=25(秒)のタイムアウトを待つことなくビーコン信号の受信を中断し、同時転送を終了して、次の転送に処理を移行するため、同時転送に掛ける時間を短縮することが可能となり、次なる転送で他の同時転送を担う無線端末における同時転送でも演算で得た同期待ち時間Tw内に自局のすべての無線端末への同時転送を終了できれば、無線通信ネットワーク全体としてデータの同報通信に掛かる総時間を短縮することが可能となる。
【0042】
図9は、本発明の実施形態に係る同時転送失敗時のシーケンス例を示す図である。図9に示されるように、例えば、上記式(1)に示される計算式を用いて同時転送における同期待ち時間を演算し、当該演算により得た同期待ち時間の間(図中「ビーコン信号待ち」で示す間)に、何らかの要因で同時転送先である未転送状態の無線端末Xから信号を受信できない(信号の未到達)などの発生により、未転送状態の無線端末Xすべてに通信データを送信できなかった場合には、同時転送における同期待ち時間のタイムアウトとなり、たとえ未転送状態の無線端末Xが存在していたとしてもそれを無視して同時転送を終了し、次の転送に処理を移行する。
【0043】
このように、同時転送における同期待ち時間のタイムアウトを基に同時転送を終了し処理を次の転送に移行することで、それ以降は、例えば図7(b)に示されるような、未転送端末情報に未転送状態の無線端末Xが無くなるまで、ネットワーク内のいずれかの無線端末Xが「中継」と「同時転送」を繰り返して、伝達したい情報の同報通信を可及的速やかな完結させる。
【0044】
この場合、上記タイムアウトにより同時転送が終了することで次の転送に処理が移行されて同時転送が成されなかった無線端末Xに対しても同報通信の未完結の間は、上記した「中継」と「同時転送」が繰り返し実行されるため、最終的には当該無線端末Xへの「同時転送」を担う無線端末X12が未転送端末X15に同時転送を行うことで同報通信を可及的速やかに完結(通信データ送信済の確認)させることができる。
【0045】
以上のようにして、本発明の実施形態に係る無線通信ネットワークの同報通信システムは、無線通信ネットワークN内の全ての間欠動作無線端末Xに対して通信データを漏れなく(転送完了による受信確認を行うことで)迅速に同報通信を完結させることが可能となる。
【0046】
図10は、本発明の実施形態に係る無線通信ネットワークにおける同報通信が完結するまでの通信データの流れを説明する図である。本願発明における同報通信の中枢をなす概念は、上述したように関係する無線端末が実行する「中継」と「同時転送」を組み合わせることにある。「同時転送」を担う無線端末は、発信端末より最も論理中継数が多い無線端末より1ホップ手前に選定される。発信端末は、宛先として最も論理中継数が多い無線端末を選定するので、もしも「同時転送」を担う無線端末として宛先の無線端末を選定したとすると、宛先端末より論理中継数の多い無線端末が不存在となり、「同時転送」を実現することができない。そのため「同時転送」を担う無線端末としては、発信端末より最も論理中継数が多い端末より1ホップ手前の無線端末を選定して「同時転送」を担わせることに特徴を有するものである。
【0047】
また本願発明における「同時転送」の開始タイミングは、宛先(発信端末である無線端末Xから最も論理中継数が多い無線端末X)から1ホップ手前に存在する無線端末Xに未転送端末情報が付加された通信データが到達し、当該無線端末の中継段数テーブル13が更新された時点に「同時転送」を開始することになる。以下、上記について詳しく説明すると、
図10(a)において、例えば発信端末となった無線端末X1は、自端末から最も論理中継数が多い無線端末X11(無線端末X1から見て無線端末X11及び無線端末X13〜X15は未転送状態でホップ数が最も多いホップ数同一の無線端末であるが、無線端末X11及び無線端末X13〜X15の中から代表として無線端末X11が選択されるとする)を宛先として、無線端末X1から送信された通信データが無線端末X11に伝達されるまでに、他の無線端末X2、X7を介して通信データが中継されることになる。図中、通信データの伝達経路は実線矢印で示され、宛先無線端末X11の1ホップ手前の無線端末X12において「同時転送」が実行される。無線端末X12から無線端末X11、X13〜X15への通信データの同時転送経路は破線矢印で示される。なお、無線端末X1から無線端末X12に至るまでの無線端末X2,X7では、通信データを受信すると、自端末内に通信データを取り込み、自端末のパケット送受信制御装置10が未転送端末情報の更新を行う。更新された未転送端末情報の一例は、図7(b)の説明で既述したのでここでは再説しない。
【0048】
無線端末X12は、自端末の中継段数テーブル、未転送端末情報(図7(a),(b)参照)を参照し、上記式(1)に示される計算式を用いて同時転送のタイミングを演算して、未転送端末数に比例するように、同時転送における同期待ち時間を調整して、同時転送を実行する。同時転送の実行の様子は破線にて示されている。なお、本願発明では「同時」と称呼しているが、字義どおりに「同時」を意味しないことは図8における説明で既述したとおりである。
【0049】
補足すれば本願発明では、間欠無線通信方式を採って電池の消耗を防ぐようにしているため、無線端末間における無線通信シーケンス(手順)に電池の消耗を防ぐスリープを挟むようにしており、同時転送を担う無線端末は、自局内の無線端末とのそれぞれの同時転送においても上記の無線通信シーケンスで通信を行うので、少なくとも同時転送を担う無線端末が自局のすべての無線端末とのセッションを終了するまでの時間は「同時転送」状態ということになる。
【0050】
しかし無線通信には外乱が付きもので、上記式(1)による計算式でいくらかの余裕を確保して同時転送における同期待ち時間を決定している。さらに、本願発明では、無線端末間における“セッション終了”に際して、「転送完了」通知を受けて相手先がデータ受信したことを確認しているため、すべての無線端末への通信データの同報送信に遺漏がないようにすることができる。このようにすることで、本願発明を火災報知システムや防犯システムに適用することが可能となる。
【0051】
そしてすべての無線端末への同時転送を終了した無線端末X12は、自端末に記憶された中継段数テーブル、未転送端末情報(図7(a),(b)参照)を参照して、自局内以外に未転送状態の無線端末Xが存在するのを確認して、今度は、自端末が発信端末となり、自端末の中継段数テーブルに格納されているホップ数が最も多い未転送状態の無線端末を宛先に設定して通信データを送信することで、同報通信の可及的速やかな完結に向けて通信を継続することになる。
【0052】
図10(b)において、新たな発信端末となった無線端末X12は、図7(b)に示される未転送端末情報を参照し、未転送状態でホップ数が最も多い無線端末X3(無線端末X12から見て無線端末X1及び無線端末X3〜X5はホップ数が最も多いホップ数同一の無線端末であるが、無線端末X1は発信端末であることで宛先外となりその余で未転送状態の無線端末X3〜X5の中から代表として無線端末X3を選択するものとする)を宛先に設定し、通信データを送信する。送信された通信データは宛先の無線端末X3の1ホップ手前の無線端末X2まで中継され、無線端末X2は宛先の無線端末X3より1ホップ手前の無線端末であると判断して同時転送を担う無線端末となって同時転送を実行する。無線端末X2による同時転送により、宛先である無線端末X3、無線端末X4、及び無線端末X5に「同時転送」が実行される。無線端末X2から無線端末X3〜X5への通信データの同時転送経路は破線矢印で示される。
【0053】
すべての無線端末への同時転送を終了した無線端末X2は、自端末に記憶された中継段数テーブル、未転送端末情報(図示せず)を参照して、自局内以外に未転送状態の無線端末Xが存在するのを確認して、今度は、自端末が発信端末となり、自端末の中継段数テーブルに格納されているホップ数が最も多い未転送状態の無線端末を宛先に設定して通信データを送信することで、同報通信の可及的速やかな完結に向けて通信を継続することになる。
【0054】
つぎに図10(c)において、新たな発信端末となった無線端末X2は、図示していないが自端末内に保存された中継段数テーブル、未転送端末情報を参照し、未転送状態でホップ数が最も多い無線端末X9(無線端末X2から見て無線端末X6及び無線端末X8〜X10は未転送状態でホップ数が最も多いホップ数同一の無線端末であるが、無線端末X6及び無線端末X8〜X10の中から代表として無線端末X9を選択するものとする)を宛先に設定し、通信データを送信する。送信された通信データは宛先の無線端末X9の1ホップ手前の無線端末X7まで中継され、無線端末X7は宛先の無線端末X9より1ホップ手前の無線端末であると判断して同時転送を担う無線端末となって同時転送を実行する。無線端末X7による同時転送により、無線端末X6、無線端末X8、宛先である無線端末X9及び無線端末X10に「同時転送」が実行される。無線端末X7から無線端末X6及び無線端末X8〜X10への通信データの同時転送経路は破線矢印で示される。
【0055】
すべての無線端末への同時転送を終了した無線端末X7は、自端末に記憶されている中継段数テーブル、未転送端末情報(図示せず)を参照して、未転送状態の無線端末Xが無線通信ネットワークN内にもはや存在しないことを確認して、無線通信ネットワークN内のすべての無線端末Xに通信データがブロードキャストされたと判断して同報通信処理を終了する。
【0056】
このように本発明の実施形態では、無線通信ネットワークN内の無線端末Xが中継及び同時転送に関与して中継及び同時転送を繰り返すことで、無線通信ネットワークN内の全ての無線端末Xに通信データをブロードキャストするので、伝達したい情報の同報通信を可及的速やかに完結(通信データ送信済の確認)させることができる。
【0057】
また本発明の実施形態によれば、いわゆるマルチホップネットワークにおいて、ネットワークのトポロジーに影響されずに且つ他の無線端末からの「ビーコン」信号を受信することでセッションを開設して通信データを送信し、他の無線端末から「転送完了」通知を受信することでセッションを終了する通信手順を採ることで通信の性能を変えることなく、バッテリの消耗を抑えてネットワーク内の全ての無線端末に同報すべき通信データを可及的速やかに行き渡らせることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 制御部
2 無線部
3 間欠動作制御部
5 アンテナ
10 パケット送受信制御装置
11 同時転送送受信装置
12 中継パケット送受信装置
13 中継段数テーブル
21 無線送信回路
22 無線受信回路
23 切り替え部
100 同期時間制御部
B 電池(バッテリ)
I/F インターフェース
S センサー
X 間欠動作無線端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10