特許第6382050号(P6382050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6382050医用画像診断装置、画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382050
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】医用画像診断装置、画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20180820BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20180820BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20180820BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61B8/08
   A61B5/055 380
   G06T1/00 290D
   G06T7/00 612
【請求項の数】19
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-199311(P2014-199311)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-67559(P2016-67559A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 智也
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸辰
(72)【発明者】
【氏名】武口 智行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 康彦
【審査官】 ▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0238404(US,A1)
【文献】 特開2014−079649(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/134512(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/113998(WO,A1)
【文献】 特開2010−179098(JP,A)
【文献】 特開2014−171556(JP,A)
【文献】 特表2009−544101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
A61B 5/00, 5/055
A61B 6/00 − 6/14
G06T 1/00, 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部位を含む3次元領域に関する第1の医用画像データに対して、前記対象部位の概形を構成する複数の構成点を離散的に配置する第1設定部と、
前記第1の医用画像データに対して、前記複数の構成点のいずれかを通るように、関心領域の境界線を設定する第2設定部と、
操作者により操作された入力装置から、前記関心領域に含まれる頂点及び境界線の少なくとも一方の位置を変更する旨の指示を受け付ける受付部と、
前記指示が受け付けられた場合に、前記複数の構成点の位置は変更せずに、前記指示により位置が変更される頂点、又は、境界線に含まれる頂点が、前記複数の構成点のいずれかと一致するように、前記関心領域の前記境界線の位置を変更する変更部と、
を備える医用画像診断装置。
【請求項2】
前記関心領域の前記境界線の位置の変更前において、前記概形の一部および前記境界線の位置が変更される前の前記関心領域を示す3次元画像データにレンダリング処理を実行することで得られた第1のレンダリング画像を表示部に表示させる表示制御部を更に備え、
前記表示制御部は、前記関心領域の前記境界線の位置の変更後において、前記概形の一部および前記境界線の位置が変更された後の前記関心領域を示す3次元画像データにレンダリング処理を実行することで得られた第2のレンダリング画像を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記受付部は、前記表示部に表示された前記第1のレンダリング画像に対する前記指示を受け付ける、
請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記複数の構成点の位置に基づいて、前記第1の医用画像データおよび前記第1の医用画像データと収集された時相が異なる第2の医用画像データの間の追跡処理を実行し、前記追跡処理の結果に基づいて、前記関心領域に関する運動情報を算出する算出部を更に備え、
前記表示制御部は、前記関心領域に関する運動情報を、所定の表示態様で、前記表示部に表示させる、
請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記対象部位は心腔である、
請求項1〜4のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記第1のレンダリング画像および前記第2のレンダリング画像には、隣り合う構成点同士を結ぶ線分が表現される、
請求項3又は4に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記第1のレンダリング画像および前記第2のレンダリング画像には、構成点が表現される、
請求項3又は4に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記対象部位の概形における前記境界線は、前記複数の構成点の少なくとも一つを通るように設定される、
請求項1〜7のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記境界線は、変更前の境界線が通らない構成点のうち少なくとも一つを、変更後の境界線が通るように変更される、
請求項1〜8のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記第2設定部は、更に、前記頂点及び前記境界線のそれぞれを識別する識別情報を設定し、
前記受付部は、前記指示として、前記識別情報を指定する旨の指示を受け付ける、
請求項に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記第2設定部は、前記関心領域として、互いに隣接する複数の領域を含む領域群を設定する、
請求項1〜10のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記第2設定部は、前記第1の医用画像データにおいて撮影された心臓の部位に応じて、前記関心領域を設定する、
請求項1〜11のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
前記関心領域を関連付けた心臓のポーラーマップを表示部に表示させる表示制御部を更に備え、
前記受付部は、前記表示部に表示されたポーラーマップの頂点又は境界線に対する操作に基づいて、対応する頂点又は境界線の位置情報の調整を受け付ける、
請求項1〜12のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項14】
前記関心領域の境界が調整されるごとに、調整後の関心領域に含まれる前記複数の構成点の位置の運動情報に関する値を算出する算出部を更に備える、
請求項1〜13のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項15】
前記算出部によって前記値が算出されるごとに、前記値を表示部に表示する表示制御部を更に備える、
請求項14に記載の医用画像診断装置。
【請求項16】
前記医用画像診断装置は、超音波画像診断装置である、
請求項1〜15のいずれか1つに記載の医用画像診断装置。
【請求項17】
対象部位を含む3次元領域に関する第1の医用画像データに対して、前記対象部位の概形を構成する複数の構成点を離散的に配置する第1設定部と、
前記第1の医用画像データに対して、前記複数の構成点のいずれかを通るように、関心領域の境界線を設定する第2設定部と、
操作者により操作された入力装置から、前記関心領域に含まれる頂点及び境界線の少なくとも一方の位置を変更する旨の指示を受け付ける受付部と、
前記指示が受け付けられた場合に、前記複数の構成点の位置は変更せずに、前記指示により位置が変更される頂点、又は、境界線に含まれる頂点が、前記複数の構成点のいずれかと一致するように、前記関心領域の前記境界線の位置を変更する変更部と、
を備える画像処理装置。
【請求項18】
画像処理装置によって実行される画像処理方法であって、
対象部位を含む3次元領域に関する第1の医用画像データに対して、前記対象部位の概形を構成する複数の構成点を離散的に配置し、
前記第1の医用画像データに対して、前記複数の構成点のいずれかを通るように、関心領域の境界線を設定し、
操作者により操作された入力装置から、前記関心領域に含まれる頂点及び境界線の少なくとも一方の位置を変更する旨の指示を受け付け、
前記指示が受け付けられた場合に、前記複数の構成点の位置は変更せずに、前記指示により位置が変更される頂点、又は、境界線に含まれる頂点が、前記複数の構成点のいずれかと一致するように、前記関心領域の前記境界線の位置を変更する、
各処理を含む画像処理方法。
【請求項19】
対象部位を含む3次元領域に関する第1の医用画像データに対して、前記対象部位の概形を構成する複数の構成点を離散的に配置し、
前記第1の医用画像データに対して、前記複数の構成点のいずれかを通るように、関心領域の境界線を設定し、
操作者により操作された入力装置から、前記関心領域に含まれる頂点及び境界線の少なくとも一方の位置を変更する旨の指示を受け付け、
前記指示が受け付けられた場合に、前記複数の構成点の位置は変更せずに、前記指示により位置が変更される頂点、又は、境界線に含まれる頂点が、前記複数の構成点のいずれかと一致するように、前記関心領域の前記境界線の位置を変更する、
各処理をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置、画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心機能を客観的かつ定量的に評価するために、心臓における組織の変位や歪み等の運動情報を求める技術がある。例えば、超音波画像診断では、心臓の超音波画像を時系列的に収集し、超音波画像上で局所領域のパターンマッチングを行って、局所領域を追跡(トラッキング)することで、心臓の動きを推定する技術が存在する。
【0003】
また、2次元の医用画像を取り扱う場合に、モニタに表示された画像上でのユーザ操作により、関心領域の境界を容易に調整することが行われている。例えば、超音波画像で心臓の断面において心筋を複数の領域に分割して表示する場合に、画面平面上における領域の境界の移動方向や移動距離を入力デバイスの操作(ドラッグアンドドロップ等)と関連づけておくことで、入力デバイスの操作のみで関心領域の境界を調整することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−112436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、3次元画像における関心領域の境界を容易に調整することができる医用画像診断装置、画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の医用画像診断装置は、第1設定部と、第2設定部と、受付部と、変更部とを備える。第1設定部は、対象部位を含む3次元領域に関する第1の医用画像データに対して、前記対象部位の概形を構成する複数の構成点を離散的に配置する。第2設定部は、前記第1の医用画像データに対して、前記複数の構成点のいずれかを通るように、関心領域の境界線を設定する。受付部は、操作者により操作された入力装置から、前記関心領域に含まれる頂点及び境界線の少なくとも一方の位置を変更する旨の指示を受け付ける。変更部は、前記指示が受け付けられた場合に、前記複数の構成点の位置は変更せずに、前記指示により位置が変更される頂点、又は、境界線に含まれる頂点が、前記複数の構成点のいずれかと一致するように、前記関心領域の前記境界線の位置を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る第1設定部により設定される構成点について説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る第2設定部により設定される領域群について説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る受付部の処理を説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る受付部の処理を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る調整部の処理を説明するための図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る調整部の処理を説明するための図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る表示制御部による表示画像の一例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る境界の調整に関する処理を説明するためのフローチャートである。
図10図10は、第1の実施形態の変形例1に係る第2設定部の処理を説明するための図である。
図11図11は、第1の実施形態の変形例2に係る受付部の処理を説明するための図である。
図12図12は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図13図13は、第2の実施形態に係る表示制御部の処理を説明するための図である。
図14図14は、その他の実施形態に係る画像処理システムの構成例を示す図である。
図15図15は、その他の実施形態に係る画像処理装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態に係る医用画像診断装置、画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムを説明する。
【0009】
なお、以下では、実施形態が、医用画像診断装置の一例として、超音波診断装置に適用される場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、実施形態は、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT−CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET−CT装置、PET装置とMRI装置とが一体化されたPET−MRI装置、若しくはこれらの装置を複数含む装置群等に適用される場合であっても良い。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ11と、入力部12と、モニタ13と、心電計14と、装置本体100とを有する。
【0011】
超音波プローブ11は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体100が有する送受信部110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ11は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ11は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ11は、装置本体100と着脱自在に接続される。
【0012】
超音波プローブ11から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ11が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
例えば、本実施形態では、被検体Pの3次元走査用に、メカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブが超音波プローブ11として装置本体100と接続される。メカニカル4Dプローブは、1Dアレイプローブのように一列で配列された複数の圧電振動子を用いて2次元走査が可能であるとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送信することで2次元走査が可能である。
【0014】
入力部12は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0015】
モニタ13は、超音波診断装置の操作者が入力部12を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データ等を表示したりする。
【0016】
心電計14は、超音波走査される被検体Pの生体信号として、被検体Pの心電波形(ECG: Electrocardiogram)を取得する。心電計14は、取得した心電波形を装置本体100に送信する。
【0017】
装置本体100は、超音波プローブ11が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。図1に示す装置本体100は、超音波プローブ11が受信した2次元の反射波データに基づいて2次元の超音波画像データを生成可能な装置である。また、図1に示す装置本体100は、超音波プローブ11が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元の超音波画像データを生成可能な装置である。なお、3次元の超音波画像データは、「3次元医用画像データ」若しくは「ボリュームデータ」の一例である。
【0018】
装置本体100は、図1に示すように、送受信部110と、Bモード処理部120と、ドプラ処理部130と、画像生成部140と、画像メモリ150と、内部記憶部160と、制御部170とを有する。
【0019】
送受信部110は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ11に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ11から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ11に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0020】
なお、送受信部110は、後述する制御部170の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0021】
また、送受信部110は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ11が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行って反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0022】
送受信部110は、被検体Pの2次元領域を走査する場合、超音波プローブ11から2次元方向に超音波ビームを送信させる。そして、送受信部110は、超音波プローブ11が受信した反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、送受信部110は、被検体Pの3次元領域を走査する場合、超音波プローブ11から3次元方向に超音波ビームを送信させる。そして、送受信部110は、超音波プローブ11が受信した反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
【0023】
なお、送受信部110からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
【0024】
Bモード処理部120は、送受信部110から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行って、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0025】
ドプラ処理部130は、送受信部110から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0026】
なお、第1の実施形態に係るBモード処理部120及びドプラ処理部130は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理部120は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理部130は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
【0027】
画像生成部140は、Bモード処理部120及びドプラ処理部130が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成部140は、Bモード処理部120が生成した2次元のBモードデータから、反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成部140は、ドプラ処理部130が生成した2次元のドプラデータから、移動体情報を表す2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。また、画像生成部140は、ドプラ処理部130が生成したドプラデータから、血流や組織の速度情報を時系列に沿ってプロットしたドプラ波形を生成することも可能である。
【0028】
ここで、画像生成部140は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部140は、超音波プローブ11による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成部140は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、画像生成部140は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0029】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成部140が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0030】
更に、画像生成部140は、Bモード処理部120が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行うことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成部140は、ドプラ処理部130が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行うことで、3次元ドプラ画像データを生成する。すなわち、画像生成部140は、「3次元のBモード画像データや3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」として生成する。
【0031】
更に、画像生成部140は、ボリュームデータをモニタ13にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行う。画像生成部140が行うレンダリング処理としては、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行ってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成部140が行うレンダリング処理としては、ボリュームデータに対して「Curved MPR」を行う処理や、ボリュームデータに対して「Maximum Intensity Projection」を行う処理がある。また、画像生成部140が行うレンダリング処理としては、ボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。
【0032】
画像メモリ150は、画像生成部140が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ150は、Bモード処理部120やドプラ処理部130が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ150が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成部140を経由して表示用の超音波画像データとなる。
【0033】
なお、画像生成部140は、超音波画像データと当該超音波画像データを生成するために行われた超音波走査の時間とを、心電計14から送信された心電波形に対応付けて画像メモリ150に格納する。後述する制御部170は、画像メモリ150に格納されたデータを参照することで、超音波画像データを生成するために行われた超音波走査時の心時相を取得することができる。
【0034】
内部記憶部160は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部160は、必要に応じて、画像メモリ150が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶部160が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部装置へ転送することができる。なお、外部装置は、例えば、画像処理用の高性能なワークステーションや、画像診断を行う医師が使用するPC(Personal Computer)、CDやDVD等の記憶媒体、プリンター等である。
【0035】
制御部170は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部170は、入力部12を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部160から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部110、Bモード処理部120、ドプラ処理部130及び画像生成部140の処理を制御する。また、制御部170は、画像メモリ150や内部記憶部160が記憶する表示用の超音波画像データをモニタ13にて表示するように制御する。
【0036】
また、制御部170は、周期的に運動する組織の運動情報を提供する。例えば、制御部170は、画像メモリ150に格納された心臓の超音波画像データを取得して、画像処理による心臓の壁運動解析(Wall Motion Tracking、WMT)を行って心臓壁の運動情報を算出する。そして、制御部170は、生成した運動情報を、画像メモリ150や内部記憶部160に格納する。なお、制御部170が運動情報を算出する処理については、後述する。
【0037】
ところで、2次元の医用画像を取り扱う場合に、モニタに表示された画像上でのユーザ操作により、関心領域の境界を容易に調整することが行われている。例えば、超音波画像で心臓の断面において心筋を複数の領域に分割して表示する場合に、画面平面上における領域の境界の移動方向や移動距離を入力デバイスの操作(ドラッグアンドドロップ等)と関連づけておくことで、入力デバイスの操作のみで関心領域の境界を調整することが行われている。
【0038】
しかしながら、3次元の医用画像を取り扱う場合には、2次元の場合とは異なり、モニタに表示された画像上でのユーザ操作により、関心領域の境界を調整(変更)することは難しかった。例えば、ある断面において関心領域を拡大(又は縮小)する場合、その断面上での拡大(又は縮小)に限られてしまう。このため、3次元的に関心領域の境界を調整する場合、関心領域が設定される複数断面にわたって各関心領域を調整することとなり、操作が煩雑になってしまう。したがって、3次元画像における関心領域の境界を調整することは難しかった。
【0039】
また、例えば、ボリュームレンダリング表示された画像上で関心領域の調整を行ったとしても、ドラッグアンドドロップ操作等で指定できる情報は画面平面の2次元情報のみであり、奥行き情報は指定できない。このため、3次元画像における関心領域の境界を調整することは難しかった。
【0040】
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、3次元画像における関心領域の境界を容易に調整するために、以下の構成を備える。
【0041】
第1の実施形態に係る制御部170は、取得部171と、第1設定部172と、追跡部173と、運動情報算出部174と、第2設定部175と、受付部176と、調整部177と、表示制御部178とを備える。
【0042】
なお、以下では、制御部170が心臓の壁運動解析を行って心臓壁の運動情報を算出する場合について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御部170は、壁運動解析に限らず、心筋の厚さ情報を算出することも可能である。
【0043】
取得部171は、心臓が撮影された3次元医用画像データを取得する。例えば、取得部171は、少なくとも1心拍分の複数のボリュームデータを含むボリュームデータ群を取得する。
【0044】
例えば、操作者は、セクタプローブにより、被検体Pの心臓を含む領域を2次元走査、又は、3次元走査を行って、心筋が描出された2次元又は3次元の超音波画像データの動画像データの撮影を行う。この動画像データは、例えば、Bモードで収集された超音波画像データ群である。これにより、画像生成部140は、心筋の動画像データを生成し、生成した動画像データを画像メモリ150に格納する。そして、操作者は、処理対象の区間として、例えば、心電図におけるR波から次のR波までの1心拍分の区間を設定する。なお、本実施形態は、処理対象の区間が2心拍分の区間や3心拍分の区間として設定される場合であっても適用可能である。
【0045】
そして、例えば、取得部171は、ボリュームデータ群を画像メモリ150から取得する。このボリュームデータ群は、操作者が設定した1心拍分の区間に含まれる複数のフレームの超音波ボリュームデータ(3次元の超音波画像データ)を含む。
【0046】
なお、第1の実施形態では、取得部171が、3次元医用画像データとして、3次元の超音波画像データを取得して、以下の処理に用いる場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、取得部171は、心臓が撮影された3次元医用画像データを取得すれば良い。また、取得部171は、必ずしも心臓の全てが撮影された3次元医用画像データを取得しなくても良い。つまり、取得部171は、心臓のうち、左心室や右心室等、心臓の少なくとも一部が撮影された3次元医用画像データを取得すれば良い。
【0047】
第1設定部172は、3次元医用画像データにおいて、心臓の少なくとも一部の概形を示す複数の位置に対して各位置を識別する識別情報を設定する。例えば、第1設定部172は、超音波画像データ群に含まれる少なくとも1つの超音波画像データにおける組織(例えば心臓)の輪郭(表面)に対応する位置に、アドレスが付与された構成点を複数設定する。このアドレスは、各構成点を識別するために付与される番号であり、例えば、心臓の内膜における各構成点の位置に基づいて定義される。なお、アドレスは、番号に限らず、例えば、文字、記号等、各構成点の位置を識別可能な識別情報であれば良い。
【0048】
なお、第1の実施形態では、心臓の表面の一例として、左心室の内膜に対して以下の処理が実行される場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、内膜に限らず、外膜若しくは内膜と外膜の中間層に対して以下の処理が実行されても良い。また、例えば、左心室に限らず、右心室や左心房、右心房、若しくは心臓全体等、任意の領域に対して以下の処理が実行されても良い。なお、本実施形態では、第1設定部172は、操作者が用手的に設定した情報により、心臓の初期輪郭に対応する位置に、輪郭を構成する構成点を複数設定する。
【0049】
まず、操作者は、取得部171によって取得されたボリュームデータ群について、任意の心時相を指定する。ここで指定される任意の心時相は、1心拍分の区間に含まれるフレームのうちの任意のフレームであり、例えば、拡張末期時相(最初のR波時相)である。そして、操作者によって任意の心時相が指定されると、第1設定部172は、指定された心時相における心臓のボリュームデータのMPR処理を画像生成部140に対して実行させ、初期輪郭の設定において基準となるMPR断面(基準MPR断面)をモニタ13に表示させる。なお、ここでは、任意の心時相として拡張末期時相が指定される場合を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、収縮末期時相等であっても良い。
【0050】
例えば、操作者は、1つ目の基準MPR断面(MPR1)として心尖部四腔断面(apical four-chamber view、A4C)を、2つ目の基準MPR断面(MPR2)として心尖部二腔断面(apical two-chamber view、A2C)をそれぞれ表示させる旨を指定する。そして、操作者は、表示された心尖部四腔断面と心尖部二腔断面とに対してそれぞれ初期輪郭を入力する。なお、MPR断面上には心臓の内膜や外膜のみならず、乳頭筋や腱索等も表示されているので、操作者は、拡張末期時相において、表示された基準MPR断面を観察しながら、描出されている乳頭筋や腱索等が含まれないように初期輪郭を指定する。
【0051】
第1設定部172は、複数の基準MPR断面に対して初期輪郭が入力されると、既知の方法によって、入力された2次元的な初期輪郭から3次元の初期輪郭を生成する。具体的には、第1設定部172は、MPR1及びMPR2上で指定された心臓の内膜の初期輪郭から、3次元の初期輪郭P_endoを生成する。
【0052】
そして、第1設定部172は、心臓の内膜の3次元における初期輪郭を構成する複数の構成点に対して、アドレスをそれぞれ付与する。例えば、第1設定部172は、心臓の内膜の各構成点の位置をP_endo(t、h、d)と定義する。ここで、tは、1心拍分の区間に含まれるフレーム(心時相)を表し、hは、長軸方向のアドレス番号を表し、dは、円周方向のアドレス番号を表す。なお、ここでは最初のR波時相を用いて初期断面を設定しているので、t=0である。
【0053】
図2は、第1の実施形態に係る第1設定部172により設定される構成点について説明するための図である。図2に示す例では、左心室の内膜の輪郭に対して初期輪郭21を設定する場合を例示する。図2に示す各構成点は、心臓の内膜の輪郭と、長軸方向22を通る各断面と、長軸方向22に直交する各断面(短軸断面)との交点に配置される。なお、平面23は、MPR1(A4C)であり、平面24は、MPR2(A2C)である。
【0054】
図2に示すように、第1設定部172は、初期輪郭とMPR1が交差する位置のうち一方を円周方向の基準位置として、その位置の構成点のdを0とする。つまり、この基準位置にある構成点の位置は、P_endo(0、h、0)と表される。そして、第1設定部172は、基準位置の構成点から円周方向にある構成点を順に、d=1,2,3・・・とアドレス番号を設定する。また、第1設定部172は、3次元の初期輪郭21のうち、心尖部25から最も遠い環状輪郭の位置を長軸方向の基準位置として、その位置の構成点のhを0とする。つまり、この基準位置にある構成点の位置は、P_endo(0、0、d)と表される。そして、第1設定部172は、基準位置の構成点から心尖方向にある構成点を順に、h=1,2,3・・・とアドレス番号を設定する。
【0055】
なお、図2では、3次元の超音波画像データにおいて、心臓の内膜の表面に対して、長軸方向と円周方向とに複数の構成点が配列されることにより、各構成点によって結ばれる小領域が四角形のパッチとなる場合を説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、各構成点が所定のルールにしたがって配列されることにより、小領域が三角形のパッチとなっても良いし、その他多角形やカーブを含むパッチとなっても良い。
【0056】
また、図2では、2つの基準MPR断面を用いて初期輪郭が指定される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第1設定部172に2つ以上の基準MPR断面を用いて初期輪郭が指定されても良い。また、ここでは基準MPR断面として、心尖部四腔断面と心尖部二腔断面とが用いられる場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、左心内腔中心軸を通る他の長軸断面として、心尖部三腔断面(A3C)が用いられても良いし、長軸断面と直交する短軸断面(SAX−A:心尖部レベル、SAX−M:中部レベル、SAX−B:基部レベル等)、更には、これらの断面と所定の位置関係によって定義される断面が用いられても良い。また、複数の基準MPR断面を表示する処理は、上記のような用手的な操作に限定されるものではなく、例えば、ボリュームデータから任意の断面を自動的に検出して表示する自動断面検出により自動的に表示されても良い。また、初期輪郭の指定は、上記の用手的な操作に限定されるものではなく、内膜輪郭形状の辞書データ(例えば、過去に設定された輪郭の統計データ)を用いて、第1設定部172が自動的もしくは半自動的に指定することとしても良い。更に、初期輪郭の指定は、画像中の境界を検出する境界検出方法等を用いて自動的もしくは半自動的に行っても良い。
【0057】
追跡部173は、複数の構成点が設定された超音波画像データと他の超音波画像データとを用いてパターンマッチングを含む処理を行うことで、超音波画像データ群に含まれる複数の超音波画像データにおける複数の構成点の位置を追跡する。
【0058】
例えば、追跡部173は、ボリュームデータ群に含まれるフレームt=0のボリュームデータに対して、初期輪郭に対応する位置に複数の構成点が設定されると、パターンマッチングを含む処理によって、他のフレームtにおける各構成点の位置を追跡する。具体的には、追跡部173は、複数の構成点が設定済みのフレームのボリュームデータと、そのフレームと隣り合うフレームのボリュームデータとの間で、繰り返しパターンマッチングを行う。すなわち、追跡部173は、t=0のボリュームデータにおける心臓の内膜の各構成点P_endo(0、h、d)を起点として、t=1,2,3・・・の各フレームのボリュームデータにおける各構成点P_endo(t、h、d)の位置を追跡する。この結果、追跡部173は、1心拍分の区間に含まれる各フレームについて、心臓の内膜を構成する各構成点の座標情報を求める。
【0059】
運動情報算出部174は、各超音波画像データ群に含まれる複数の超音波画像データにおける複数の構成点の位置を用いて、複数の超音波画像データごとに組織の運動を表す運動情報を算出する。
【0060】
ここで、運動情報算出部174によって算出される運動情報としては、例えば、各構成点の1フレームごとの移動距離(Displacement)、移動距離の時間微分によって定義される速度(Velocity)等のパラメータが挙げられる。しかしながら、運動情報は、これらのパラメータに限定されるものではなく、1心拍分の区間に含まれる各フレームにおける複数の構成点の座標情報を用いて算出可能なパラメータであれば良い。具体的には、所定の方向における2点間の距離の変化率である歪み(Strain)、歪みの時間微分によって定義される歪み速度(Strain Rate)、心臓内膜面の局所の面積、t=0からの面積の変化率等、種々のパラメータが挙げられる。更には、「ある運動情報がピーク値となるまでの時間」等、操作者が任意のパラメータを設定することも可能である。
【0061】
以下では、一例として、運動情報算出部174が「内膜面の局所面積変化率の時間微分値」を運動情報として算出する場合を説明する。なお、算出された運動情報は、算出に用いた各構成点に与えられる。具体的には、例えば、心臓の内膜の各構成点から算出される運動情報は、V_endo(t、h、d)と定義される。そして、運動情報算出部174は、算出した運動情報をボリュームデータ群ごとに画像メモリ150に格納する。
【0062】
このように、運動情報算出部174は、超音波画像データ群について、心臓の内膜の運動情報を算出する。
【0063】
第2設定部175は、境界が前記複数の位置のいずれかを通る関心領域を設定する。例えば、第2設定部175は、関心領域として、互いに隣接する複数の領域を含む領域群を設定する。ここで、領域群とは、例えば、左心室では米国心エコー図学会等で定められている16セグメントモデル、米国心臓病学会で定められている17セグメントモデル、若しくは20セグメントモデル等である。左心室以外(右心室など)の心臓腔については、標準的なセグメントモデルは無いため、用途に応じた任意のセグメントモデルを用いる。また、心臓の少なくとも一部に含まれる関心領域は、1つであっても良いし、複数であっても良い。心臓の少なくとも一部に関心領域が複数含まれる場合には、関心領域同士が隣接していても良い。関心領域同士は、点で接していても良いし、線で接していても良い。
【0064】
図3は、第1の実施形態に係る第2設定部175により設定される領域群について説明するための図である。図3には、初期輪郭21に対して17セグメントモデルの領域群30が設定される場合の一例を示す。なお、領域群30は、図中の太線により示される。
【0065】
図3に示すように、第2設定部175は、第1設定部172によって複数の構成点が設定された3次元医用画像データの初期輪郭21に対して、17セグメントモデルの領域群30を設定する。具体的には、第2設定部175は、初期輪郭21の長軸方向を所定のアドレス位置で4分割にする。そして、第2設定部175は、4分割にされた初期輪郭21の円周方向を所定のアドレス位置で分割することで、合計17個の領域(セグメント)から構成される領域群30を設定する。ここで、この17セグメントモデルに含まれる各領域(セグメント)は、互いに隣接している。言い換えると、各領域は、隣接する他の領域と共通する境界線を有する。
【0066】
また、第2設定部175は、関心領域の頂点及び境界線のそれぞれを識別するインデックスを設定する。例えば、17セグメントモデルにおいては、各セグメントの頂点及び境界線のそれぞれに対して、インデックスとして番号を設定する。なお、このインデックスは、番号に限らず、例えば、文字、記号等、各構成点の位置を識別可能な識別情報であれば良い。このインデックスは、第2識別情報の一例である。
【0067】
このように、第2設定部175は、長軸方向及び円周方向の所定のアドレス位置で分割することで、領域群30の各領域の頂点を、各構成点のいずれかに設定する。なお、第2設定部175により分割される所定のアドレス位置は、セグメントモデル(領域群)ごとに予め設定され、装置本体100の所定の記憶領域に登録されている。
【0068】
なお、図3では、17セグメントモデルの領域群30が設定される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、実施形態は、20セグメントモデル、7セグメントモデル等、各種のセグメントモデルが設定されても良いし、操作者によって設定された任意の形状の関心領域であっても良い。また、関心領域は、必ずしも初期輪郭21の表面全体を覆わなくても良いし、複数の領域を含んでいなくても良い。つまり、第2設定部175は、初期輪郭21の一部のみを覆うように、一つの関心領域のみを設定しても良い。また、第2設定部175は、複数の関心領域を隣り合うことなく個別に設定しても良い。
【0069】
受付部176は、操作者による入力を受け付ける。例えば、受付部176は、入力として、関心領域に含まれる頂点及び境界線の少なくとも一方の位置を調整する旨の入力を受け付ける。また、受付部176は、入力として、インデックスを指定する旨の入力を受け付ける。
【0070】
図4及び図5は、第1の実施形態に係る受付部176の処理を説明するための図である。関心領域としては、左心室の内膜面を想定した17セグメントモデルの例となっている。図4には、3次元医用画像データに基づく画像を表示する表示領域40がモニタ13に表示される場合の一例を示す。図4において、表示領域40に表示される3次元医用画像データは、例えば、ボリュームレンダリング画像である。また、このボリュームレンダリング画像には、例えば、インデックス41,42,43,44・・・が表示されている。このインデックス41,42,43は、そのインデックスが配置された位置の頂点を指定するためのインデックスである。また、インデックス44は、そのインデックスが配置された位置の境界線、つまり、インデックス41の頂点とインデックス42の頂点とを結ぶ境界線を指定するためのインデックスである。図5は、図4の領域45の拡大図に対応する。図5に示すように、各頂点は、初期輪郭21に設定されたアドレス(構成点)に一致するように設定されている。
【0071】
図4に示すように、例えば、受付部176は、表示領域40を用いて、関心領域の境界を調整する旨の入力を受け付ける。まず、受付部176は、移動対象となる頂点又は境界線の指定を受け付ける。具体的には、受付部176は、各セグメントの頂点及び境界線に対して設定されたインデックスを用いて、移動対象となる頂点又は境界線の指定を受け付ける。例えば、インデックス41の位置がマウスカーソルにより指定されると、受付部176は、インデックス41の頂点が移動対象として指定されたものとして受け付ける。そして、受付部176は、指定された頂点の大きさ、形状、色等を調整することで、強調表示を行う。
【0072】
次に、受付部176は、移動方向及び移動量の指定を受け付ける。例えば、操作者がマウスのホイールを上方向に一定量回転させると、受付部176は、インデックス41の頂点を表示領域40の上方向に所定距離移動させることが指定されたものとして受け付ける。なお、マウスのホイールの動作と、頂点の移動方向及び移動量との関係は、予め設定され、装置本体100の所定の記憶領域に登録されている。
【0073】
このように、受付部176は、初期輪郭21に対して設定された関心領域の境界を調整する旨の入力を受け付ける。そして、受付部176は、移動対象となる頂点及び境界線の位置、移動方向、移動量等、受け付けた情報を調整部177へ出力する。なお、図4では説明を省略したが、境界線についても頂点と同様に移動対象となる旨の指定を受け付け、また、移動方向及び移動量の指定を受け付ける。
【0074】
なお、図4では、マウス操作により各種の入力が行われる場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、受付部176は、マウス以外のポインティングデバイスやキーボード、フットスイッチ、タッチパネル、ペンタブレット等、各種の入力デバイスの操作によっても各種の入力を受け付けることができる。例えば、インデックス41の頂点がキーボードの「1」キーと対応づけられている場合には、受付部176は、キーボードの「1」キーが押下されることにより、移動対象の指定を受け付けても良い。また、受付部176は、キーボードの「上方向矢印」キーの押下により、上方向への移動として受け付けても良い。この場合、例えば、移動量は、キーの押下回するに応じて予め設定されている。また、タッチパネルの場合には、受付部176は、タッチによって移動対象の指定を受け付け、スワイプ又はフリックによって移動方向及び移動量の指定を受け付けても良い。
【0075】
また、図4では、移動対象として指定された頂点及び境界線が強調表示されるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。つまり、必ずしも強調表示されなくても良い。また、例えば、インデックスを用いることなく、マウスカーソルの操作のみで移動対象を指定したり、移動方向及び移動量を指定したりしても良い。
【0076】
調整部177は、受付部176が入力を受け付けると、関心領域の境界を、識別情報が設定された位置上で調整する。例えば、調整部177は、入力により位置が調整される頂点、又は、境界線に含まれる頂点が、構成点のいずれかと一致するように調整する。
【0077】
図6及び図7は、第1の実施形態に係る調整部177の処理を説明するための図である。図6には、インデックス41の頂点を上方向に移動させる場合の一例を示し、図7には、インデックス44の境界線を右方向に移動させる場合の一例を示す。なお、図6及び図7では、任意のフレーム「t」における構成点の位置を(h、d)と2次元の情報として表す。
【0078】
図6の左図に示すように、例えば、インデックス41の頂点が指定されると、指定された頂点の付近には、その頂点が移動可能な方向が表示される。ここで、この頂点が上下方向に移動可能な場合には、図6の左図に示すように、この頂点の上下それぞれに、上下方向の矢印が表示される(ガイド表示)。そして、上方向に所定距離移動させる旨の指示が行われると、図6の右図に示すように、インデックス41の頂点は、上方に所定距離移動される。
【0079】
この場合、調整部177は、移動方向及び移動量の指定に応じて、移動対象となる頂点の位置を調整する。例えば、調整部177は、移動対象となる頂点の位置(h1、d1)、移動方向及び移動量「+20」を受付部176から受け付ける。ここで、移動方向及び移動量「+20」は、図6の上方向に20アドレス分移動させることを示す。この場合、調整部177は、移動対象となる頂点の長軸方向の値に20を加算して、頂点の位置を(h1+20、d1)とする。また、調整部177は、移動後の頂点と隣り合う各頂点との最短経路を算出する。この場合、調整部177は、例えば、移動後の頂点と隣り合う各頂点との最短経路であって、初期輪郭21上を通る経路を求める。図6に示す例では、調整部177は、インデックス41の頂点とインデックス42の頂点との間の最短経路と、インデックス41の頂点とインデックス43の頂点との間の最短経路とをそれぞれ求める。そして、調整部177は、求めたそれぞれの最短経路を通るように境界線を引くことで、領域群30の各セグメントを調整する。なお、図6の例では、インデックス41の頂点を上方向に移動させることにより、関心領域の形状が変化している。具体的には、インデックス44の境界線が短くなった結果、当該境界線を左辺とする関心領域は、四角形から五角形に変化している。言い換えると、インデックス43の点は、移動前には当該関心領域の頂点ではなかったが、移動後には新たな頂点となることで、当該関心領域が五角形となっている。このように、関心領域の境界を調整する結果、関心領域の頂点が増える場合がある。
【0080】
また、図7の左図に示すように、例えば、インデックス44の境界線が指定されると、指定された境界線の付近には、その境界線が移動可能な方向が表示される。ここで、この境界線が左右方向に移動可能な場合には、図7の左図に示すように、この境界線の左右それぞれに、左右方向の矢印が表示される(ガイド表示)。そして、右方向に所定距離移動させる旨の指示が行われると、図7の右図に示すように、インデックス44の境界線は、右方向に所定距離移動される。
【0081】
この場合、調整部177は、移動方向及び移動量の指定に応じて、移動対象となる境界線の位置を調整する。例えば、調整部177は、移動対象となる境界線に含まれる2つの頂点の位置(h1、d1)、(h2、d2)、移動方向及び移動量「+15」を受付部176から受け付ける。ここで、位置(h1、d1)は、インデックス41の頂点の位置に対応し、位置(h2、d2)は、インデックス42の頂点の位置に対応する。また、移動方向及び移動量「+15」は、図7の右方向に15アドレス分移動させることを示す。この場合、調整部177は、移動対象となる境界線に含まれる各頂点の円周方向の値に15を加算して、各頂点の位置を(h1、d1+15)及び(h2、d2+15)とする。また、調整部177は、移動後の境界線の各頂点と隣り合う各頂点との最短経路であって、初期輪郭21上を通る経路をそれぞれ算出する。図7に示す例では、調整部177は、例えば、インデックス41の頂点とインデックス43の頂点との間の最短経路を求める。そして、調整部177は、求めたそれぞれの最短経路を通るように境界線を引くことで、領域群30の各セグメントを調整する。
【0082】
このように、調整部177は、受付部176が入力を受け付けると、関心領域の境界を、構成点上で調整する。そして、調整部177は、関心領域が調整された3次元医用画像データを、表示制御部178へ出力する。
【0083】
なお、図6及び図7で説明したように、各頂点又は各境界線には、移動可能な方向が予め設定されている。例えば、移動可能な方向として、長軸方向、円周方向、長軸方向及び円周方向等の組み合わせが予め設定されており、装置本体100の所定の記憶領域に記憶されている。これにより、各頂点又は各境界線が医学的に不自然な位置へ調整されるのを防止することができるとともに、簡易な操作で各頂点及び各境界線の移動を指定することができる。
【0084】
また、図6及び図7は一例に過ぎず、操作者は、任意の頂点又は境界線を任意に調整可能である。また、図6及び図7では、頂点が長軸方向又は円周方向に移動する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、移動対象となる頂点は、その頂点を含む境界線上に沿って移動する形態であっても良い。つまり、頂点、又は、境界線に含まれる頂点は、必ずしも長軸方向又は円周方向に沿って移動されなくても良い。
【0085】
また、図6及び図7では、頂点及び境界線が調整される場合の代表的な例を説明したが、上記の例に限定されるものではない。例えば、境界線として、円周一周分の境界線が移動対象として指定される場合にも適用可能である。例えば、図7において、インデックス42を含む円周方向に一周分の境界線が移動対象として指定される。この場合、このインデックス42を含む境界線により囲まれる関心領域は、左心室の心尖部を含むキャップ状の領域である。そして、このインデックス42を含む境界線が下方向に移動される。
【0086】
具体的には、調整部177は、移動方向及び移動量の指定に応じて、移動対象となる境界線を通る点(インデックス42)の位置を調整する。例えば、調整部177は、移動対象となる境界線に含まれる点(インデックス42)の位置(h2、d2)、移動方向及び移動量「−5」を受付部176から受け付ける。ここで、移動方向及び移動量「−5」は、図7の下方向に5アドレス分移動させることを示す。この場合、調整部177は、移動対象となる境界線を通る点の長軸方向の値から5を減算して、点の位置を(h2−5、d2)とする。そして、調整部177は、移動後の点を通る円周方向の線を境界線とすることで、キャップ状の関心領域を調整する。このように、円周一周分の境界線を移動させる場合には、調整部177は、その境界線を通る点の位置を調整する。すなわち、移動対象として指定・調整されるのは、頂点や境界線に限らず、関心領域の境界を通る点であれば良い。
【0087】
表示制御部178は、関心領域を含む3次元医用画像データに基づく画像をモニタ13に表示させる。例えば、表示制御部178は、調整部177によって関心領域の境界が調整されるごとに、調整後の関心領域を含む3次元医用画像データに基づいて、任意の断面像及びボリュームレンダリング画像の少なくとも一方をモニタ13に表示させる。
【0088】
図8は、第1の実施形態に係る表示制御部178による表示画像の一例を示す図である。図8には、3次元医用画像データに基づく画像を表示する表示領域40及び表示領域50がモニタ13に並列表示される場合の一例を示す。表示領域40には、図4と同様のボリュームレンダリング画像が表示される。また、表示領域50には、3次元医用画像データに基づく断面像が表示される。この断面像は、所定の位置に置ける短軸断面及び長軸断面を複数含む画像であり、心臓の内膜に対応する位置(破線部)及び外膜に対応する位置(実線部)が描出されている。
【0089】
図8に示すように、例えば、表示制御部178は、関心領域が調整された3次元医用画像データを調整部177から受け付ける。そして、表示制御部178は、関心領域が調整された3次元医用画像データに基づいて、表示用の画像を画像生成部140に生成させる。図8においては、表示制御部178は、ボリュームレンダリング画像が表示される表示領域40と、断面像が表示される表示領域50とを並列表示する表示用の画像を生成させる。そして、表示制御部178は、画像生成部140によって生成された表示用の画像をモニタ13に表示させる。
【0090】
このように、表示制御部178は、関心領域を含む3次元医用画像データに基づく画像をモニタ13に表示させる。なお、図8では、断面像及びボリュームレンダリング画像を並列表示させる場合を例示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、実施形態は、これらのいずれか一方のみを表示する場合であっても良い。また、表示制御部178は、ポーラーマップ等、他の情報をモニタ13に表示しても良い。
【0091】
次に、図9を用いて、第1の実施形態に係る境界の調整に関する処理を説明する。図9は、第1の実施形態に係る境界の調整に関する処理を説明するためのフローチャートである。なお、図9においては、第1設定部172及び第2設定部175による処理が完了しており、モニタ13に調整前の表示用の画像が表示されている場合(図6の左図に対応)を説明する。
【0092】
図9に示すように、超音波診断装置1の受付部176は、移動対象となる頂点又は境界線の指定を受け付ける(ステップS101)。例えば、受付部176は、マウスカーソルの操作により、セグメントモデルの各セグメントの頂点及び境界線に対して設定されたインデックスを用いて、移動対象となる頂点又は境界線の指定を受け付ける。続いて、受付部176は、移動方向及び移動量の指定を受け付ける(ステップS102)。例えば、操作者がマウスのホイールを上方向に一定量回転させると、受付部176は、インデックス41の頂点を表示領域40の上方向に所定距離移動させることが指定されたものとして受け付ける。
【0093】
そして、調整部177は、頂点又は境界線を移動させる(ステップS103)。例えば、移動対象となる頂点の位置、移動方向及び移動量を受付部176から受け付けて、受け付けた情報に基づいて、移動後の頂点の位置を算出する。続いて、調整部177は、移動後の頂点又は移動後の境界線に含まれる頂点とそれぞれ隣り合う頂点との間の最短経路を算出する(ステップS104)。例えば、調整部177は、移動後の頂点と隣り合う各頂点との最短経路であって、初期輪郭21上を通る経路を求める。そして、調整部177は、求めたそれぞれの最短経路を通るように境界線を引くことで、領域群30の各セグメントを調整する。
【0094】
そして、表示制御部178は、頂点又は境界線の移動を反映させた表示画像を生成・表示させる(ステップS105)。例えば、表示制御部178は、関心領域が調整された3次元医用画像データに基づいて、断面像、ボリュームレンダリング画像等、任意の表示用の画像を生成させ、生成させた画像をモニタ13に表示する。
【0095】
このように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、操作者による入力デバイスの操作に応じて、心臓の表面に設定された関心領域の境界を調整する。
【0096】
上述してきたように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、心臓の表面を解析する際に表面上に設定される関心領域を形成する頂点を、心臓の表面の構成点に設定する。そして、超音波診断装置1は、関心領域の境界が調整される場合に、その境界を構成点上で調整させる。このため、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、3次元画像における関心領域の境界を容易に調整することが可能となる。したがって、例えば、超音波診断装置1は、解析や診断に要する時間を削減するとともに解析や診断の精度を向上させることができる。左心室の標準的なセグメントモデルは冠動脈の支配領域に対応する考え方なので、個々の症例では境界の調整が必要となる場合がある。また、左心室以外(左心房、右心室、右心房)では標準のセグメントモデルが無く、観察したい関心領域の設定手段として境界の調整が必要となる場合が増す。本願ではこれらの各場合において、上記の効果が高くなる。
【0097】
なお、第1の実施形態では、超音波診断装置1が、3次元の画像処理による心臓の壁運動解析を行って心臓壁の運動情報を算出する場合を説明したが、運動情報は必ずしも算出されなくても良い。つまり、超音波診断装置1は、必ずしも追跡部173及び運動情報算出部174を備えていなくても良い。
【0098】
すなわち、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、取得部171、第1設定部172、第2設定部175、受付部176、調整部177、及び表示制御部178を備えていれば良い。例えば、取得部171は、心臓の少なくとも一部が撮影された3次元医用画像データを取得する。第1設定部172は、3次元医用画像データにおいて、心臓の表面に対応する複数の位置に対して各位置を識別する識別情報を設定する。第2設定部175は、関心領域を形成する頂点を、識別情報が設定された位置に設定する。受付部176は、関心領域の境界を調整する旨の入力を受け付ける。調整部177は、受付部176が入力を受け付けると、関心領域の境界を、識別情報が設定された位置上で調整する。表示制御部178は、関心領域を含む3次元医用画像データに基づく画像を表示部に表示させる。これにより、超音波診断装置1は、3次元画像における関心領域の境界を容易に調整することを可能にする。
【0099】
(第1の実施形態の変形例1)
なお、上記第1の実施形態において、第2設定部175は、更に、3次元医用画像データにおいて撮影された心臓の部位に応じて、関心領域を設定しても良い。
【0100】
図10は、第1の実施形態の変形例1に係る第2設定部175の処理を説明するための図である。図10には、第2設定部175により参照されるテーブルの一例を示す。このテーブルは、設定情報として、装置本体100の所定の記憶領域に予め記憶されている。
【0101】
図10に示すように、このテーブルは、心臓の部位と、セグメントパターンとが対応づけられた情報を記憶する。ここで、心臓の部位は、3次元医用画像データにおいて撮影された心臓の部位を示す情報である。また、セグメントパターンは、心臓の部位に対応するセグメントモデルを表す情報である。
【0102】
この場合、第2設定部175は、3次元医用画像データにおいて撮影された心臓の部位に応じて、セグメントモデルを設定する。例えば、第2設定部175は、処理対象である3次元医用画像データに対して、心臓の各部位の教師データ(辞書データ)とのパターン認識を行うことで、その3次元医用画像データに含まれる心臓の部位が、左心室、左心房等、どの部位であるかを判定する。そして、第2設定部175は、図10のテーブルを参照し、判定された心臓の部位に対応するセグメントモデルを選択する。そして、第2設定部175は、選択したセグメントモデルを設定する。
【0103】
このように、第2設定部175は、3次元医用画像データにおいて撮影された心臓の部位に応じて、関心領域を設定する。これによれば、超音波診断装置1は、処理対象ごとに適切なセグメントモデルを自動的に設定することができる。
【0104】
なお、上記の例では、パターン認識を行う場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第2設定部175は、被検体の電子カルテに記載された情報を参照し、これに基づいて関心領域を設定しても良い。例えば、電子カルテに「右心室」と記載してあれば、第2設定部175は、図10のテーブルを参照し、右心室に対応する7セグメントのセグメントモデルを設定する。
【0105】
(第1の実施形態の変形例2)
また、例えば、ポーラーマップを用いて、関心領域の境界の調整を受け付けても良い。
【0106】
図11は、第1の実施形態の変形例2に係る受付部176の処理を説明するための図である。図11には、3次元医用画像データに基づく画像を表示する表示領域40及びポーラーマップを表示する表示領域60がモニタ13に並列表示される場合の一例を示す。表示領域40には、図4と同様のボリュームレンダリング画像が表示される。また、表示領域60には、表示領域40に表示される3次元医用画像データに設定されたセグメントモデル(関心領域)を関連付けた心臓のポーラーマップが表示される。
【0107】
例えば、図11に示すように、表示制御部178は、セグメントモデル(関心領域)を関連付けた心臓のポーラーマップをモニタ13に表示させる。具体的には、表示制御部178は、初期輪郭21に設定されたセグメントモデル(例えば、17セグメントモデル等)に対応するポーラーマップを生成する。このポーラーマップの各頂点及び各境界線は、初期輪郭21に設定されたセグメントモデルの各頂点及び各境界線に関連付けられている。
【0108】
ここで、受付部176は、モニタ13に表示されたポーラーマップの頂点又は境界線に対する操作に基づいて、対応する頂点又は境界線の位置情報の調整を受け付ける。例えば、表示領域60において、各頂点及び各境界線のいずれかがマウスカーソルによって指定されると、受付部176は、インデックス41の頂点が移動対象として指定されたものとして受け付ける。そして、例えば、操作者がマウスのホイールを所定の方向に一定量回転させると、受付部176は、指定された頂点又は境界線が所定の方向に所定距離移動させることが指定されたものとして受け付ける。受付部176は、受け付けた各種の情報を調整部177へ出力することで、上述したように、調整部177に頂点及び境界線を調整する処理を実行させる。この結果、例えば、表示領域40の各頂点及び各境界線が調整される。
【0109】
なお、図11では、表示領域60に表示されるポーラーマップの各頂点の位置及び各境界線の位置は、調整されないのが好ましい。つまり、表示領域60のポーラーマップは、頂点又は境界線の位置情報の調整を受け付けるために表示される。これにより、操作者は、常に一定のポーラーマップ表示のもと、並列表示されるボリュームレンダリング画像において頂点又は境界線の調整を入力することができる。
【0110】
なお、これに限らず、表示領域60に表示されるポーラーマップの各頂点の位置及び各境界線の位置についても、その位置情報の調整に伴って調整させても良い。また、図11では、並列表示される場合を示したが、これに限らず、表示領域40又は表示領域60が個別に表示される場合であっても良い。
【0111】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、超音波診断装置1は、更に、関心領域の境界が調整されるごとに、調整後の関心領域に含まれる複数の構成点の運動情報に関する指標値を算出し、算出した指標値を操作者に提示する場合を説明する。
【0112】
図12は、第2の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図12に示すように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、図1に示した超音波診断装置1と比較して、領域指標算出部179を有する点と、表示制御部178における処理の一部が相違する。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態と相違する点について説明することとし、同様の点については説明を省略する。
【0113】
領域指標算出部179は、関心領域が調整されるごとに、調整後の関心領域に含まれる複数の位置の運動情報に関する値(指標値)を算出する。例えば、領域指標算出部179は、セグメントモデルに含まれる複数の領域のうち、いずれかの領域の境界が調整されるごとに、調整された境界を含む領域に含まれる構成点の運動情報に基づいて、指標値を算出する。この指標値とは、例えば、平均値、分散値、標準偏差等であるが、これに限らず、操作者により予め定義された任意の指標値であっても良い。
【0114】
表示制御部178は、領域指標算出部179によって指標値が算出されるごとに、指標値をモニタ13に表示する。例えば、表示制御部178は、領域指標算出部179によって算出される指標値の大きさに応じて、当該指標値が算出された領域の画素値を変更する。
【0115】
図13は、第2の実施形態に係る表示制御部178の処理を説明するための図である。図13の左図は、境界が調整される前のボリュームレンダリング画像の一例を示し、図13の右図は、境界が調整された後のボリュームレンダリング画像の一例を示す。
【0116】
図13の左図に示すように、境界が調整される前には、セグメントモデルの領域70には所定の画素値が割り当てられている。この画素値は、領域70に含まれる構成点の運動情報に基づいて、領域指標算出部179により算出された値の大きさに対応する。
【0117】
ここで、例えば、インデックス41の頂点が上方向に移動されると、領域70の形状は、図13の右図に示すように調整される。これに伴い、領域指標算出部179は、上述したように、調整後の関心領域に含まれる構成点の運動情報に基づいて、指標値を算出する。表示制御部178は、領域指標算出部179によって指標値が算出されると、その算出された指標値の大きさに対応する画素値を領域70に割り当てて、表示領域40を生成する。これにより、図13の例では、境界調整後の領域70は濃い色で表示されている。
【0118】
このように、表示制御部178は、領域指標算出部179によって指標値が算出されるごとに、指標値に対応する画素値でモニタ13に表示する。
【0119】
なお、図13では、境界調整後の領域の指標値が、その領域の画素値に反映される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、表示制御部178は、算出された指標値を文字情報として表示領域40に重畳させて表示しても良い。また、算出される指標値が時系列で変化する値であれば、例えば、横軸を時間としたグラフで表示しても良い。
【0120】
このように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、関心領域の境界が調整されるごとに、調整後の関心領域に含まれる複数の構成点の運動情報に関する指標値を算出し、算出した指標値を操作者に提示する。これによれば、操作者は、境界の調整に応じた指標値の変化をモニタ13上ですぐに閲覧することができる。このため、例えば、操作者は、指標値が適切に算出される境界に調整する等、関心領域の設定及び解析結果の高精度化が期待される。
【0121】
なお、上記の第1の実施形態において説明した各種の変形例については、処理内容に矛盾が生じない範囲内で、第2の実施形態にも適用可能である。
【0122】
(その他の実施形態)
さて、これまで第1及び第2の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0123】
(画像処理装置への適用)
例えば、第1及び第2の実施形態において説明した機能は、医用画像診断装置に限らず、画像処理装置に対しても適用することが可能である。
【0124】
図14は、その他の実施形態に係る画像処理システムの構成例を示す図である。図14に示すように、その他の実施形態に係る画像処理システムは、画像処理装置200と、医用画像診断装置300と、画像保管装置400とを備える。なお、図14に例示する各装置は、例えば、病院内に設置された院内LAN(Local Area Network)5により、直接的、又は、間接的に相互に通信可能な状態となっている。例えば、画像処理システムにPACS(Picture Archiving and Communication System)が導入されている場合、各装置は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に則って、医用画像データ等を相互に送受信する。
【0125】
図14において、例えば、医用画像診断装置300は、3次元の医用画像データを撮像し、撮像した3次元の医用画像データを画像保管装置400へ格納する。なお、医用画像診断装置300は、例えば、超音波診断装置、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT−CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET−CT装置、PET装置とMRI装置とが一体化されたPET−MRI装置、若しくはこれらの装置を複数含む装置群等に対応する。
【0126】
また、画像保管装置400は、医用画像データを保管するデータベースである。具体的には、画像保管装置400は、各種の医用画像診断装置300により生成された3次元医用画像データを自装置の記憶部に格納し、保管する。画像保管装置400に保管された3次元の医用画像データは、例えば、患者ID、検査ID、装置ID、シリーズID等の付帯情報と対応付けて保管される。
【0127】
画像処理装置200は、例えば、病院内に勤務する医師や検査技師が医用画像の閲覧に用いるワークステーションやPC(Personal Computer)等である。画像処理装置200の操作者は、患者ID、検査ID、装置ID、シリーズID等を用いた検索を行なうことで、必要な3次元の医用画像データを画像保管装置400から取得する。或いは、画像処理装置200は、医用画像診断装置300から直接、3次元の医用画像データを受信しても良い。
【0128】
図15は、その他の実施形態に係る画像処理装置200の構成例を示す図である。図15に示すように、画像処理装置200は、入力部201と、通信部202と、表示部203と、記憶部210と、制御部220とを備える。入力部201、通信部202、表示部203、記憶部210、及び制御部220は、互いに接続されている。
【0129】
入力部201は、マウスやペンタブレット等のポインティングデバイス、キーボード、トラックボール等であり、画像処理装置200に対する各種操作の入力を操作者から受け付ける。マウスを用いる場合には、マウスホイールによる入力を行うことができる。ペンタブレットを用いる場合には、フリック操作やスワイプ操作による入力を行うことができる。通信部202は、NIC(Network Interface Card)等であり、他の装置との間で通信を行う。表示部203は、モニタ、液晶パネル等であり、各種情報を表示する。
【0130】
記憶部210は、例えば、ハードディスク、半導体メモリ素子等であり、各種情報を記憶する。例えば、記憶部210は、制御部220が実行する複数の処理を記憶する。
【0131】
制御部220は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路であり、画像処理装置200の全体制御を行う。
【0132】
ここで、制御部220は、取得部171、第1設定部172、第2設定部175、受付部176、調整部177、及び表示制御部178と同様の処理部を備える。すなわち、制御部220において、取得部171と同様の処理部は、心臓の少なくとも一部が撮影された3次元医用画像データを取得する。第1設定部172と同様の処理部は、3次元医用画像データにおいて、心臓の表面に対応する複数の位置に対して各位置を識別する識別情報を設定する。第2設定部175と同様の処理部は、関心領域の境界を通る点を、識別情報が設定された位置に設定する。受付部176と同様の処理部は、関心領域の境界を調整する旨の入力を受け付ける。調整部177と同様の処理部は、受付部176が入力を受け付けると、関心領域の境界を、識別情報が設定された位置上で調整する。表示制御部178と同様の処理部は、関心領域を含む3次元医用画像データに基づく画像を表示部に表示させる。これにより、画像処理装置200は、3次元画像における関心領域の境界を容易に調整することを可能にする。
【0133】
また、例えば、上記の実施形態において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0134】
また、上記の画像処理方法が適用される臓器は、心臓に限らず、肺や肝臓等であっても良い。
【0135】
また、上記の実施形態では、実施形態が壁運動解析(WMT)に適用される場合を説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、本実施形態は、ボリュームデータに含まれる被写体の表面上に設定された関心領域の境界を調整する場合に、広く適用可能なものである。また、被写体の表面とは、被検体の臓器の表面(輪郭)であっても良いし、被検体の体表面であっても良い。この場合、被写体の表面は、従来の如何なる技術によって検出されても良い。
【0136】
また、上記の実施形態及び変形例で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0137】
以上、説明した少なくともひとつの実施形態によれば、3次元画像における関心領域の境界を容易に調整することができる。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0139】
1 超音波診断装置
100 装置本体
170 制御部
171 取得部
172 第1設定部
175 第2設定部
176 受付部
177 調整部
178 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15