(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
撮像光学系を構成し、物体側から入射した光束を異なる方向に反射する反射面を備えた反射素子と、上記反射素子よりも物体側に位置する少なくとも一つの前方レンズとを有する前方レンズ群;
上記撮像光学系を構成し、上記前方レンズ群よりも像面側に位置する後方レンズ群;
上記前方レンズを支持する可動部材;
少なくとも上記反射素子を支持する固定部材;
上記固定部材に固定され、上記固定部材に対して上記可動部材を、上記前方レンズの光軸に沿う方向で上記反射素子の上記反射面の裏側に位置する所定の点を中心として球心揺動可能に支持する支持部材;
上記撮像光学系に加わる振れに応じて上記可動部材に駆動力を与えて上記球心揺動を行わせるアクチュエータ;及び
上記可動部材が上記球心揺動を行ったときの位置変化を検出する検出手段;を有し、
上記支持部材は、
上記前方レンズの光軸に沿う方向で上記反射素子の上記反射面の裏側に位置し、上記可動部材に設けた被支持部を上記球心揺動可能に支持する球心揺動支持部;
上記前方レンズの光軸を中心とする上記可動部材の回転を規制する回転規制部;
上記検出手段を支持する検出手段支持部;及び
上記固定部材に対して取り付けられる取付部;
を有しており、
上記固定部材に対して上記取付部を位置調整可能とさせる調整手段を有することを特徴とする撮像装置。
請求項1記載の撮像装置において、上記調整手段は、上記前方レンズの光軸に沿う方向で上記固定部材に対する上記取付部の上記物体側への移動を規制しつつ、上記前方レンズの光軸と垂直な平面に沿って上記支持部材に対する上記取付部の相対移動を許す撮像装置。
請求項4記載の撮像装置において、上記取付部は、上記ネジの上記頭部に対向する側の面に弾性変形可能な突起を有しており、上記ネジの上記軸部を上記ネジ孔に螺合させるとき、上記頭部によって上記突起が押圧されて弾性変形し、上記取付部を上記当付部に押し付ける付勢力が生じる撮像装置。
請求項3ないし6のいずれか1項記載の撮像装置において、上記調整手段は、上記当付部と上記取付部の間にスペーサを挿入して、上記前方レンズの光軸に沿う方向での上記固定部材に対する上記支持部材の位置調整を行う撮像装置。
請求項1ないし7のいずれか1項記載の撮像装置において、上記アクチュエータは、上記可動部材に支持される永久磁石と、上記固定部材に対して固定的に支持されるコイルとを有するボイスコイルモータからなり、
上記検出手段は、上記永久磁石の磁界の変化を検知して上記可動部材の位置情報を得る磁気センサからなる撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る撮像ユニット(撮像装置)10について説明する。以下の説明における前後、左右、上下の各方向は図中に記載した矢線方向を基準としており、被写体(物体)側が前方となる。
図1及び
図2に外観形状を示すように、撮像ユニット10は前後方向に薄く左右方向に長い横長形状をなしている。
【0023】
図32に示すように、撮像ユニット10の撮像光学系は、第1群(前方レンズ群)G1、第2群(後方レンズ群)G2、第3群(後方レンズ群)G3、第4群(後方レンズ群)G4を有し、第1群G1に含まれる第1プリズム(反射素子)L11と第4群G4の右方(像側)に位置する第2プリズムL12でそれぞれ略直角に光束を反射させる屈曲光学系となっている。
図3及び
図32に示すように、第1群G1は、第1プリズムL11の入射面L11−aの前方(被写体側)に位置する第1レンズ(前方レンズ)L1と、第1プリズムL11と、第1プリズムL11の出射面L11−bの右方(像側)に位置する第2レンズL2とから構成される。第1レンズL1は、入射面L1−aを物体側に向け、出射面L1−bを第1プリズムL11の入射面L11−aに向けた単レンズである。第2群G2から第4群G4はそれぞれ、プリズムなどの反射素子を含まないレンズ群である。
【0024】
図32に示すように、前方から後方に向かう第1光軸O1に沿って第1レンズL1に入射した被写体からの光束は、入射面L11−aを通して第1プリズムL11に入り、第1プリズムL11の反射面L11−cによって第2光軸O2に沿う方向(左方から右方)に反射されて出射面L11−bから出射される。続いて光束は、第2光軸O2上に位置する第2レンズL2と第2群G2から第4群G4までの各レンズを通り、入射面L12−aを通して第2プリズムL12に入り、第2プリズムL12の反射面L12−cによって第3光軸O3に沿う方向(後方から前方に向かう方向)に反射されて出射面L12−bから出射され、撮像センサ14の撮像面上に結像される。第1光軸O1と第3光軸O3は略平行であり、第2光軸O2と共に同一の平面内に位置する。撮像ユニット10は第2光軸O2に沿う方向に長い形状をなしており、第1群G1は撮像ユニット10の長手方向の一端部(左側の端部)に近い位置に寄せて配置されている。
【0026】
第1レンズL1は、被写体側を向く入射面L1−aを平面とし、第1プリズムL11に向く出射面L1−bを凹面としており、第2光軸O2が延びる側の周縁部の一部を基準平面P2に沿う方向に切り欠いたDカット形状をなしている。第1プリズムL11の入射面L11−aと出射面L11−bは略垂直な関係にあり、反射面L11−cは入射面L11−aと出射面L11−bに対して約45度の角度で斜設されている。第1プリズムL11と同様に、第2プリズムL12の入射面L12−aと出射面L12−bは略垂直な関係にあり、反射面L12−cは入射面L12−aと出射面L12−bに対して約45度の角度で斜設されている。
【0027】
撮像ユニット10はハウジング(固定部材)20と後方支持板21を有する。
図4から
図6、
図24から
図29に示すように、ハウジング20は、後方に向けて開かれた箱状部22と、箱状部22の左方に位置する第1支持部23と、箱状部22の右方に位置する第2支持部24とを有する。図示を省略するが、箱状部22の内部に第2群G2を保持するレンズ枠と第3群G3を保持するレンズ枠が支持されている。
図4や
図6に示すように、第1支持部23と第2支持部24にはプリズム保持枠23aとプリズム保持枠24aが形成されており、プリズム保持枠23aに第1プリズムL11が支持され、プリズム保持枠24aに第2プリズムL12が支持される。さらに、第1支持部23には第1群G1の第2レンズL2が固定的に支持され、第2支持部24には第4群G4が固定的に支持される。第2支持部24のプリズム保持枠24aの前方に形成した開口内に、撮像センサ14を支持する撮像センサ基板15(
図32)が固定される。
図4や
図5に示すように、ハウジング20の後部は後方支持板21によって塞がれる。後方支持板21には、ハウジング20の第1支持部23の後方位置に組付開口21a(
図5)が形成されている。
【0028】
第2群G2を保持するレンズ枠(図示略)と第3群G3を保持するレンズ枠(図示略)はそれぞれ、箱状部22内で第2光軸O2に沿って直進移動可能に支持されており、第2支持部24に支持した2つのレンズ駆動モータM(
図1、
図4、
図5に一部が見えている)の駆動力によって各レンズ枠が第2光軸O2に沿って進退移動する。撮像ユニット10の撮像光学系は焦点距離可変であり、第2光軸O2に沿う第2群G2と第3群G3の移動によってズーミング(変倍)動作が行われる。また、第2光軸O2に沿う第3群G3の移動によってフォーカシング動作が行われる。
【0029】
撮像ユニット10は、手振れなどの振動を原因とする像面上での像振れを軽減させる防振(像振れ補正)機構を備えている。この防振機構は、第1群G1中の第1レンズL1を、第1光軸O1を延長した軸上の点である揺動中心A1(
図3、
図13)を中心とする仮想の球面に沿って揺動させるものである。この第1レンズL1における揺動動作を球心揺動と呼ぶ。図中における第1光軸O1は、防振動作を行なっていない光学設計上の基準状態(球心揺動の中心位置)での第1レンズL1の光軸を示している。以下では、この第1レンズL1の基準状態を防振初期位置と呼ぶ。
【0030】
第1レンズL1は第1レンズ枠(可動部材)30に固定的に支持されており、第1レンズ枠30はセンサホルダ(支持部材)31に対して球心揺動可能に支持され、センサホルダ31はハウジング20の第1支持部23に対して固定的に支持される。ハウジング20の第1支持部23にはさらに、第1レンズ枠30を囲む形状のカバー部材32が取り付けられる。第1レンズ枠30に支持される一対の永久磁石81、82(
図7から
図10、
図14から
図16、
図28)と、カバー部材32に支持される一対のコイル83、84(
図6、
図15)が、第1レンズ枠30(第1レンズL1)を駆動させる電磁アクチュエータ(ボイスコイルモータ)を構成している。この電磁アクチュエータにより駆動される第1レンズ枠30(第1レンズL1)の位置検出は、センサホルダ31に支持される一対のホールセンサ(検出手段、磁気センサ)85、86(
図6、
図8、
図10、
図19から
図21、
図23)を用いて行われる。
【0031】
永久磁石81と永久磁石82はそれぞれ扁平な直方体であり、互いの形状及び大きさは略同一である。永久磁石81、82はそれぞれ、
図9と
図10に示す磁極境界線Q1、Q2を挟んだ一方の側にN極を有し他方の側にS極を有している。なお、図では磁極境界線Q1、Q2として示しているが、永久磁石81、82には厚みがあるため、実際のN極とS極の境界は、磁極境界線Q1、Q2を永久磁石81、82の厚み方向に連続させて形成される仮想の面となる。
図15に示すように、コイル83とコイル84はそれぞれ、略平行な一対の長辺部83a、84aと該一対の長辺部83a、84aを接続する一対の湾曲部83b、84bを有する細長形状の空芯コイルであり、一対の長辺部83a、84aが延びる長手方向の大きさや、一対の長辺部83a、84aを横断する横幅方向の大きさに比して、空芯部分が貫通する方向の厚みが小さい薄型の扁平コイルとなっている。永久磁石81の磁極境界線Q1とコイル83の一対の長辺部83aの延設方向が略平行で、永久磁石82の磁極境界線Q2とコイル84の一対の長辺部84aの延設方向が略平行である。コイル83とコイル84の互いの形状及び大きさは略同一である。コイル83とコイル84はそれぞれコイル支持部材87、88(
図6)に支持されている。
【0032】
図14から
図18に示すように、第1レンズ枠30は、第1レンズL1を内部に嵌合固定させる枠状のレンズ保持部40と、支持部41と、一対の磁石保持部42、43とを有している。支持部41と磁石保持部42、43はいずれも基準平面P2よりも左方の位置でレンズ保持部40の外周部に接続している。支持部41は、レンズ保持部40の外周部のうち磁石保持部42と磁石保持部43の間から後方に向けて延びており、その後端付近から基準平面P2(第1光軸O1)に接近する方向に向けて片持状のピボットアーム41aが突出している(
図3、
図5、
図13、
図17、
図18参照)。ピボットアーム41aの先端には、後方に向けて突出するピボット凸部(被支持部)44が形成されている。ピボット凸部44は後方に進むにつれて径を小さくする先細の円錐状体であり、先端が滑らかな円球状(凸状球面)になっている。
図3、
図13及び
図18に示すように、ピボットアーム41aの先端にはさらに、ピボット凸部44の突出方向と反対の前面側に湾曲面41bが形成されている。湾曲面41bは、前方に向けて凸となる球状の面として形成されており、湾曲面41bを含む球面の中心は揺動中心A1と一致する。
【0033】
磁石保持部42と磁石保持部43はそれぞれ、レンズ保持部40から斜め後方に向けて突出形成されており、レンズ保持部40から離れて先端側(後方)に向かうにつれて第1光軸O1からの距離を大きくするように傾斜している。第1レンズ枠30が防振初期位置にある状態で、磁石保持部42と磁石保持部43が基準平面P1を挟んで略対称な位置関係となる。磁石保持部42に形成した凹部に永久磁石81が嵌合保持され、磁石保持部43に形成した凹部に永久磁石82が嵌合保持される。
【0034】
第1レンズ枠30はさらに、支持部41の後端部(ピボットアーム41aの基部付近)にガイド部45を有している。ガイド部45は後方に向けて開放された溝部を有しており、一対の対向面45aが溝部の両側の壁面を構成している。一対の対向面45aは互いに略平行な平面であり、第1レンズ枠30が防振初期位置にある状態で、一対の対向面45aが基準平面P1を挟んで略対称に位置する。
図18から分かるように、ピボット凸部44とガイド部45は前後方向において略同じ位置に設けられている。
【0035】
ハウジング20のプリズム保持枠23aに保持された第1プリズムL11は、入射面L11−aが第1光軸O1上に位置して前方を向き、出射面L11−bが第2光軸O2上に位置して右方を向く。ハウジング20は、プリズム保持枠23aの左方と後方に挿入空間23bを有する。プリズム保持枠23aから後方に向けて一対の支持座(調整手段、当付部)25が突出しており、各支持座25の先端(後方を向く端部)には、支持座25よりもさらに後方に突出する円筒状の延長突出部(調整手段、突出部)26が設けられている。一対の支持座25と一対の延長突出部26は、基準平面P1を挟んだ一方と他方の領域に略対称の位置関係で配置されている。各延長突出部26の基端には、延長突出部26の先端側に向かうにつれて徐々に外径を小さくする部分円錐状のテーパ面26aが形成されている(
図5、
図24、
図30)。
図5、
図24、
図25及び
図30に示すように、各支持座25の内部には前後方向へ軸線を向けたネジ孔25aが形成され、このネジ孔25aは延長突出部26の端面に開口している。支持座25及び延長突出部26に加えてさらに、プリズム保持枠23aから後方に向けてバネ支持突起27が突設されている(
図3、
図5)。また、プリズム保持枠23aの左側を向く面には、付勢アーム支持突起28とその両側に位置する一対の保持壁29が形成されている(
図4、
図6)。バネ支持突起27と付勢アーム支持突起28は基準平面P1上に位置する。
【0036】
図3に示すように、ハウジング20の挿入空間23b内に付勢アーム36が設けられる。
図6に示すように、付勢アーム36は、L字状に屈曲された支持板部36aの一端に押圧段部36bを有しており、支持板部36aの略直交する2つの面には係合孔36cと係合孔36dが形成されている。係合孔36cに付勢アーム支持突起28を係合させ、支持突起27を係合孔36dに対して挿入させることにより、付勢アーム36がハウジング20に支持される。付勢アーム36の組み付けに先立ってバネ支持突起27の外側にコイルバネ37が挿入され、付勢アーム36がハウジング20に組み付けられると、前後方向に軸線を向けたコイルバネ37の一端がプリズム保持枠23aに当接し、コイルバネ37の他端が支持板部36aに当接する。係合孔36cと付勢アーム支持突起28、係合孔36dとバネ支持突起27はそれぞれ、ハウジング20に対する付勢アーム36の前後方向への若干量の移動を許すように形成されており(係合孔36cが前後方向へ長い長孔であり、係合孔36dが前後方向への貫通孔である)、コイルバネ37の付勢力によって付勢アーム36が後方に向けて付勢される。このコイルバネ37による付勢方向への付勢アーム36の移動(ハウジング20からの付勢アーム36の脱落)は、係合孔36cの前方の端部が付勢アーム支持突起28に当接することで規制される。また、一対の保持壁29によって支持板部36aを挟むことで、ハウジング20に対する付勢アーム36の上下方向への移動が規制される。
【0037】
図19から
図23に示すように、センサホルダ31は、ベース板部60と、ベース板部60から前方に向けて突出形成された一対のセンサ支持突起(被支持部)61、62を有している。センサ支持突起61とセンサ支持突起62はそれぞれ、
図7から
図13のようにセンサホルダ31と第1レンズ枠30を組み合わせたときに、第1レンズ枠30の磁石保持部42と磁石保持部43に対向する傾斜面を有しており、この傾斜面上の凹部内にホールセンサ85とホールセンサ86が嵌合支持されている。ホールセンサ85とホールセンサ86は、撮像ユニット10を制御する制御回路(図示略)と電気的に接続され、ホールセンサ85とホールセンサ86の出力情報が制御回路に伝えられる。
【0038】
センサホルダ31のベース板部60には、ハウジング20の一対の支持座25に対して取り付けられる一対の取付部63と、各取付部63に前後方向へ貫通形成した円形の遊嵌孔(調整手段、孔部)64と、一対の取付部63の間に位置するピボット凹部(球心揺動支持部)65及び回転規制突起(回転規制部)66が形成されている。各遊嵌孔64における前側の開口部分には、前方に進むにつれて(取付部63の前面に近づくにつれて)徐々に内径を大きくする擂鉢状のテーパ面64aが形成されている(
図19、
図20)。
図22から
図25に示すように、一対の取付部63のそれぞれの後面側には、ベース板部60の最後部に対して凹状になっている(前方への段差状になっている)後方面63aが形成されている。後方面63aは概ね遊嵌孔64を囲む環状の領域に形成されており、それぞれの後方面63a上に4つの(すなわち計8つの)支持突起63bが形成されている。各支持突起63bは半球状の突起であり(
図23参照)、遊嵌孔64を中心として周方向に略等間隔(90°間隔)で配置されている(
図22、
図24、
図25)。
【0039】
ピボット凹部65は、第1レンズ枠30のピボット凸部44を嵌入させることが可能な擂鉢状内面を有する凹部であり、最も深い底部は、ピボット凸部44の先端形状に対応する球面形状(凹状球面)になっている。回転規制突起66は、ピボット凹部65に対して左方に偏心した位置に、該ピボット凹部65の径方向に軸線(長手方向)を向けて形成された棒状の突起である。回転規制突起66は軸線方向のいずれの位置でも略同一の断面形状を有しており、
図3や
図13のようにピボット凹部65にピボット凸部44を嵌入させた状態で、第1レンズ枠30のガイド部45の一対の対向面45aの間に回転規制突起66が挿入される(
図7、
図8、
図10、
図11、
図25、
図26、
図29)。ガイド部45は回転規制突起66に対して、基準平面P1に沿う方向(撮像ユニット10の左右方向や前後方向)への相対移動(摺動)が可能であり、一対の対向面45aを結ぶ方向(撮像ユニット10の上下方向)への相対移動が規制される。
【0040】
図24に示すように、センサホルダ31は、一対の取付部63の前面(テーパ面64aが形成されている側)をハウジング20の一対の支持座25に対向させて、後方から前方に向けて第1支持部23の挿入空間23b内に挿入される。このとき、後方支持板21がハウジング20に対して既に組み付けられている場合は、
図5に示すように後方支持板21の組付開口21aを通してセンサホルダ31を挿入空間23bに挿入することができる。挿入空間23b内にセンサホルダ31を挿入していくと、
図25や
図30に示すように、一対の支持座25の先端に設けた延長突出部26がそれぞれ対応の遊嵌孔64内に進入する。その際、テーパ面64aが遊嵌孔64内への延長突出部26の挿入を案内するガイド部となり、遊嵌孔64と延長突出部26の厳密な位置合わせをしなくても挿入させやすくなっている。一対の支持座25の先端に一対の取付部63の前面が当接するまでセンサホルダ31を前方に挿入すると、センサホルダ31のそれ以上の前方への移動(挿入)が規制される。すなわち、第1光軸O1に沿う方向(撮像ユニット10の前後方向)でのセンサホルダ31の位置が決まる。
図25や
図30に示すように、一対の遊嵌孔64と一対の延長突出部26はそれぞれ径方向に所定の隙間をもって遊嵌するように互いの径が設定されている。また、この状態で対向する一対のテーパ面26aの外径と一対のテーパ面64aの内径もそれぞれ、径方向に余裕をもって遊嵌する大きさに設定されている(
図30参照)。そのため、一対の支持座25の先端に対して取付部63を当て付けただけの状態では、センサホルダ31はハウジング20に対して、各遊嵌孔64の内縁と各延長突出部26の外周面との間のクリアランスにより許容される範囲内で、第1光軸O1と垂直な平面に沿う移動が可能である。
【0041】
センサホルダ31は、一対の取付ネジ67を用いてハウジング20の挿入空間23b内に取り付けられる。取付ネジ67は、外周面にネジ山(雄ネジ)が形成された軸部67aと、軸部67aの一端に設けられ軸部67aよりも大径の頭部67bとを有し、頭部67bのうち軸部67aが突出する側の面に環状のワッシャ68を支持している。ワッシャ68は頭部67bよりも大径である。
図26から
図30に示すように、各支持座25の内部に形成されたネジ孔25aに対して後方から取付ネジ67の軸部67aを螺合させ、ワッシャ68と支持座25との間に取付部63を挟持することにより、ハウジング20の挿入空間23b内にセンサホルダ31が支持される。このセンサホルダ31の支持状態で、センサ支持突起61とセンサ支持突起62がプリズム保持枠23aの左方に位置し、ベース板部60がプリズム保持枠23aの後方に位置し、ベース板部60上に形成したピボット凹部65が第1光軸O1の延長上に位置する(
図3、
図13)。回転規制突起66は、基準平面P1上と重なる位置にあってピボット凹部65の左方に位置する。
【0042】
センサホルダ31をハウジング20に取り付ける構造についてより詳しく説明する。センサホルダ31の一対の取付部63にはそれぞれ、後方面63aから後方へ向けて半球状の複数の支持突起63bが突出しており、センサホルダ31の組み付けに際してネジ孔25aに対して取付ネジ67を締め込んでいくと、ワッシャ68が支持突起63bに接触する。センサホルダ31は取付部63の前面が支持座25の先端に当接することで前方への移動が規制されるため、取付ネジ67を締め込んで支持座25とワッシャ68の前後方向間隔が小さくなると、ワッシャ68に押圧された支持突起63bが後方面63aからの突出量を小さくする方向(潰れる方向)に弾性変形する。すると、支持突起63bが弾性変形から復元しようとする力によってセンサホルダ31が前方に向けて付勢されて、取付部63の前面が支持座25の先端に押し付けられる。
図30に示すように、支持座25の先端に対して取付部63の前面が当接する状態で、延長突出部26の先端が遊嵌孔64から後方に向けて突出しており、ワッシャ68が延長突出部26の先端面に当接することで各取付ネジ67が締め込み限界となる(前後方向での支持座25とワッシャ68との最小間隔が決まる)。前述のように、一対の遊嵌孔64と一対の延長突出部26はそれぞれ径方向に所定の隙間をもって遊嵌しており、取付ネジ67が締め込み限界に達した状態で、ハウジング20に対してセンサホルダ31を第1光軸O1と垂直な平面に沿って位置調整することができる。このとき、最小間隔となった支持座25とワッシャ68に挟まれたセンサホルダ31は、支持突起63bの弾性変形による付勢力で安定して保持されている。そのため、ハウジング20に対してセンサホルダ31を第1光軸O1と垂直な平面に沿って位置調整する場合、付勢力によって適度な摩擦力が発生することで、治具などでハウジング31の位置を変化させる際に一定の駆動力で安定して移動させることができる。センサホルダ31の位置設定が完了したら、ハウジング20に対してセンサホルダ31を接着で固定させる。接着工程に際しても、センサホルダ31に付勢力が付与されていることで、センサホルダ31が設定した位置からずれることを防いで、精度良く固定させることができる。つまり、センサホルダ31に対して付勢力(支持突起63bの復元力)を付与することで、ハウジング20に対する位置調整と固定を精度良く行いやすくなり、センサホルダ31の高精度な位置設定を実現できる。
【0043】
また、ハウジング20の支持座25とセンサホルダ31の取付部63を直接的に当接させる代わりに、
図31に示すように、支持座25と取付部63の間にスペーサ(調整手段)69を挿入することで、第1光軸O1に沿う方向におけるセンサホルダ31の位置調整を行うことも可能である。この場合も、取付ネジ67の締め込みに応じてワッシャ68で支持突起63bを押圧して弾性変形させ、センサホルダ31を支持座25に押し付ける付勢力を発生させることが好ましい。
【0044】
第1レンズ枠30はセンサホルダ31を介して支持される。
図3に示すように、第1レンズ枠30は、ハウジング20のプリズム保持枠23aとセンサホルダ31のベース板部60の間にピボットアーム41aを位置させるようにして、支持部41を挿入空間23b内に挿入している。第1レンズ枠30はセンサホルダ31に対して、ピボットアーム41aに設けたピボット凸部44をセンサホルダ31のピボット凹部65に嵌入させると共に、ガイド部45に対して回転規制突起66を挿入させて支持される。ピボットアーム41aのうちピボット凸部44と逆側の湾曲面41bが付勢アーム36の押圧段部36bに当接し、コイルバネ37の付勢力に抗して付勢アーム36を前方に向けて押圧する。すると、コイルバネ37の反発力を受けた付勢アーム36によってピボット凸部44の先端がピボット凹部65の底部に押し付けられ、第1レンズ枠30がセンサホルダ31に対して、球心揺動可能でありつつ安定して支持される。この第1レンズ枠30の支持状態で、第1レンズL1が第1プリズムL11の入射面L11−aの前方に位置する。また、
図7、
図8及び
図10に示すように、磁石保持部42がセンサホルダ31のセンサ支持突起61に隣接し、磁石保持部43がセンサホルダ31のセンサ支持突起62に隣接して位置する。
【0045】
ハウジング20に対して第1レンズ枠30とセンサホルダ31を組み付ける順序としては、
図24から
図26に示すように、ハウジング20の第1支持部23に対して先に第1レンズ枠30を前方から挿入しておき、続いてセンサホルダ31を後方から組み付け、取付ネジ67による締結を行うとよい。さらにセンサホルダ31の位置調整と固定を行い、第1レンズ枠30の支持位置を確定させる。
【0046】
図1、
図2、
図4から
図6に示すように、カバー部材32は、ハウジング20の第1支持部23を前方から覆う形状を備えており、第1支持部23の上側、下側及び左側の3面を覆う側壁70と、第1支持部23の前面を覆う前壁71を有する。前壁71には第1レンズL1を露出させる撮影開口72が形成されている。側壁70には複数の係合孔73が形成され、前壁71には複数の係合孔74が形成されている。ハウジング20の第1支持部23には、複数の係合孔73に対して係合する複数の係合突起23cと、複数の係合孔74に対して係合する複数の係合突起23dが設けられており、カバー部材32を第1支持部23に被せて各係合孔73、74を各係合突起23c、23dに係合させて、カバー部材32がハウジング20に固定的に支持される。
【0047】
カバー部材32の側壁70と前壁71の境界部分に2つのコイル挿入孔75が形成されている。カバー部材32における各コイル挿入孔75の外側部分にコイル支持部材87とコイル支持部材88が取り付けられ、各コイル挿入孔75にコイル83とコイル84が挿入される。ハウジング20に対してカバー部材32を組み付けた状態では、コイル83が永久磁石81に対向し、コイル84が永久磁石82に対向して位置する(
図15参照)。撮像ユニット10を制御する制御回路によってコイル83とコイル84に対する通電が制御される。
【0048】
第1レンズ枠30の外周部には、第1光軸O1を中心とする周方向に略等間隔で(90°間隔で)、4つの位置制限突起46が設けられている。第1レンズ枠30が防振初期位置にあるとき、左右方向に並ぶ一対の位置制限突起46が基準平面P1上に位置し、上下方向に並ぶ一対の位置制限突起46が基準平面P2上に位置する。カバー部材32の内側には、ハウジング20に組み付けた状態で第1レンズ枠30の4つの位置制限突起46に対向する4つの位置制限面76が形成されている。
【0049】
以上のように第1レンズL1の支持及び駆動に関する各部材をハウジング20に対して組み付けた状態では、ハウジング20と結合されたセンサホルダ31に対して、ピボット凸部44とピボット凹部65の嵌合部分を介して第1レンズ枠30が支持される。前述のように、ピボット凹部65は、センサホルダ31のベース板部60の前面側に開口し、深くなるにつれて徐々に径を小さくする円錐状内面を有する擂鉢状の凹部であり、最も深くなる底部は凹状球面になっている。この凹状球面は、揺動中心A1を中心とする球面の一部である。ピボット凸部44は、先端側に進むにつれて徐々に径を小さくする円錐状外面を有する凸部であり、先端部分は凸状球面になっている。この凸状球面は、揺動中心A1を中心とする球面の一部である。コイルバネ37によって付勢される付勢アーム36はピボット凸部44の先端をピボット凹部65の底部に押し付ける力を付与しており、ピボット凸部44とピボット凹部65の当接部分の案内を受けることによって(ピボット凸部44をピボット凹部65に対して傾動させることによって)、第1レンズ枠30は揺動中心A1を中心とする球心揺動が可能に支持される。ピボット凸部44の先端が揺動中心A1を中心とする球面の一部となっているため、この球心揺動は、揺動中心A1の位置を変化させずに、ピボット凸部44とピボット凹部65の接点位置を変化させながら行われる。
図3や
図13から分かるように、ピボット凹部65の円錐状内面部分は、ピボット凸部44の円錐状外面部分よりも中心角を大きくした円錐状に形成されており、第1レンズ枠30の球心揺動を妨げることなく実行させることができる。また、ピボット凸部44とピボット凹部65の当接部分を揺動中心A1を中心とする球面の一部(前述の凸状球面と凹状球面)とし、かつピボットアーム41aの湾曲面41bを揺動中心A1を中心とする球面の一部としたことにより、第1レンズ枠30が球心揺動する際に付勢アーム36の押圧段部36bが前後方向に変位せず、コイルバネ37のバネ荷重が変化しない(前後方向に一定の荷重を付与し、かつ前後方向以外の方向に余分な荷重を発生させない)。これにより、電磁アクチュエータによる第1レンズ枠30の駆動制御に悪影響を及ぼさず、高い精度で安定した防振制御を実現できる。
【0050】
ガイド部45と回転規制突起66は、第1レンズ枠30の球心揺動を許しつつ、第1レンズL1の光軸を中心とする第1レンズ枠30の回転を規制する回転規制手段である。ここでの第1レンズL1の光軸とは、防振初期位置の光軸(すなわち図示している第1光軸O1)と防振初期位置からの球心揺動を行った状態の光軸のいずれも含む。回転規制突起66は、第1光軸O1を延長した仮想線を中心とする半径方向へ軸線(長手方向)を向けており、ガイド部45の一対の対向面45aに挟まれている。回転規制突起66は、ガイド部45の一対の対向面に挟まれる部分を円筒状の外周面としている。そして、ガイド部45が回転規制突起66を挟むことによって、第1レンズL1の光軸を中心とする第1レンズ枠30の回転が規制される。第1レンズ枠30が防振初期位置にあるときには、第1レンズL1の光軸が図中の第1光軸O1と一致するため、ガイド部45と回転規制突起66は、第1光軸O1を中心とする第1レンズ枠30の回転を規制する。一方、球心揺動によって第1レンズ枠30が防振初期位置から傾いた状態にあるときは、傾いた第1レンズL1の光軸を中心とする第1レンズ枠30の回転が、ガイド部45と回転規制突起66によって規制される。
【0051】
撮像ユニット10の左右方向において、回転規制突起66の長さがガイド部45の各対向面45aの長さよりも大きく、ガイド部45は回転規制突起66に沿って左右方向へ摺動可能である。また、ガイド部45は、回転規制突起66に対して撮像ユニット10の前後方向に摺動可能な深さを有している。さらに、回転規制突起66の円筒状の外面は、回転規制突起66の軸線を中心(支点)とした揺動(傾動)をガイド部45に対して許容する。つまり、基準平面P1と平行な平面として第1レンズ枠30の第1の動作平面を定義すると、ガイド部45は回転規制突起66に対して、この第1の動作平面に沿って、撮像ユニット10の前後及び左右方向に摺動可能である。また、基準平面P1に対して垂直で第1光軸O1と平行な平面(基準平面P2と平行な平面)を第1レンズ枠30の第2の動作平面と定義すると、この第2の動作平面内では、ガイド部45は回転規制突起66に対して、第1光軸O1に沿う前後方向の摺動と、回転規制突起66の軸線を中心とする揺動を行うことができる。これらの動きにより、ガイド部45と回転規制突起66は、揺動中心A1を中心とする第1レンズ枠30の球心揺動を妨げずに、第1レンズL1の光軸を中心とする第1レンズ枠30の回転を規制することができる。
【0052】
第1レンズ枠30の揺動中心A1と回転規制突起66の軸線は共に基準平面P1内に位置する。そのため、防振初期位置から、揺動中心A1を中心として上記の第2の動作平面(基準平面P2と平行な平面)に沿って第1レンズ枠30を揺動させたときには、回転規制突起66に対するガイド部45の接触箇所は防振初期位置と変わらない。これに対し、揺動中心A1を中心として上記の第1の動作平面(基準平面P1と平行な平面)に沿って第1レンズ枠30を揺動させたときには、回転規制突起66に対するガイド部45の接触箇所は、揺動中心A1を中心とする揺動方向に変化する。このときに回転規制突起66からガイド部45が離脱しないように、ガイド部45の前後方向の深さが設定されている。なお、ここでは基準平面P1、P2に平行な第1と第2の動作平面に沿う方向に第1レンズ枠30が揺動する場合を述べたが、第1レンズ枠30は、この2つの動作平面に沿う方向だけでなく、第1光軸O1を含む無数の平面に沿って揺動することができる。
【0053】
以上のように支持された第1レンズ枠30を球心揺動させる駆動手段は、永久磁石81とコイル83、永久磁石82とコイル84で構成した2つのボイスコイルモータからなる電磁アクチュエータである。第1レンズ枠30に対して、揺動中心A1を中心とする球心揺動を許しつつ、第1レンズL1の光軸を中心とする回転を規制する回転規制手段を備えたことにより、推力の作用方向が異なる2つのボイスコイルモータによって第1レンズ枠30を高精度にかつ安定して球心揺動させることができる。
【0054】
第1レンズ枠30を球心揺動させる駆動手段の詳細を説明する。永久磁石81と永久磁石82はそれぞれ、揺動中心A1を中心とする共通の仮想球面の接平面に沿って平面的な広がりを有する扁平な形状を有している。コイル83とコイル84はそれぞれ、揺動中心A1を中心とする共通の仮想球面の接平面と平行な方向に導線を巻き回して形成された扁平コイルである。コイル83とコイル84、ホールセンサ85とホールセンサ86はそれぞれ、第1レンズ枠30の球心揺動に関わりなく、常に基準平面P1に関して略対称に配置されている。永久磁石81と永久磁石82は、第1レンズ枠30が防振初期位置にあるときに基準平面P1に関して略対称な配置となる。揺動中心A1を中心とする仮想の球体の径方向においては、揺動中心A1に近い内径側から順にホールセンサ85、永久磁石81、コイル83が並んで配置され、永久磁石81の磁界中にコイル83とホールセンサ85が位置する。また、揺動中心A1に近い内径側から順にホールセンサ86、永久磁石82、コイル84が並んで配置され、永久磁石82の磁界中にコイル84とホールセンサ86が位置する。
【0055】
永久磁石81、82の磁界内に位置するコイル83、84に通電すると、フレミングの左手の法則によって、各永久磁石81、82の磁極境界線Q1、Q2と各コイル83、84の一対の長辺部83a、84aに対して垂直な方向への推力が生じる。コイル83、84はカバー部材32を介してハウジング20に対して固定的に支持されており、永久磁石81、82は可動の第1レンズ枠30に支持されているため、各コイル83、84の通電で生じた推力は、揺動中心A1を中心とする仮想球面に沿って第1レンズ枠30を移動させる力として作用する。永久磁石81とコイル83のセットと、永久磁石82とコイル84のセットは、第1光軸O1を中心とする周方向位置を異ならせて配置されているため、この2組のボイスコイルモータの通電制御の組み合わせによって、第1レンズ枠30を自在な方向に球心揺動させることができる。前述の通り、球心揺動に際して第1レンズL1の光軸を中心とする第1レンズ枠30の回転動作はガイド部45と回転規制突起66の嵌合によって規制される。また、第1レンズ枠30に設けた4つの位置制限突起46とカバー部材32に形成した4つの位置制限面76は、第1レンズ枠30の球心揺動の機械的な移動端を決めるストッパとして機能する。これにより、永久磁石81とコイル83、永久磁石82とコイル84がそれぞれ対向しなくなるような第1レンズ枠30の逸脱動作は防止され、常に確実に第1レンズ枠30の位置を制御することができる。
【0056】
第1レンズ枠30の球心揺動に応じて永久磁石81が移動して磁界が変化すると、永久磁石81に対向して位置するホールセンサ85の出力が変化し、永久磁石82が移動して磁界が変化すると、永久磁石82に対向して位置するホールセンサ86の出力が変化する。この2つのホールセンサ85、86の出力変化によって、第1レンズ枠30の駆動位置を検出することができる。
【0057】
以上の構成からなる撮像ユニット10を前方に位置する被写体に向けると、該被写体の反射光(撮影光)は第1レンズL1を透過した後に入射面L11−aから第1プリズムL11の内部に入り、第1プリズムL11の反射面L11−cによって出射面L11−b側に向けて進行方向を略垂直に変換される。第1プリズムL11の出射面L11−bを出た該反射光は、第2レンズL2と第2群G2と第3群G3と第4群G4を透過した後に入射面L12−aから第2プリズムL12の内部に入り、第2プリズムL12の反射面L12−cによって出射面L12−b側に向けて進行方向を略垂直に変換され、撮像センサ14の撮像面によって撮像(受光)される。レンズ駆動モータMを利用して第2群G2や第3群G3を第2光軸O2に沿って進退させることにより、撮像光学系にズーミング(変倍)動作及びフォーカシング動作を行わせることができる。
【0058】
さらに撮像ユニット10では、第1群G1のうち第1プリズムL11の前方に位置する第1レンズL1を用いて防振(像振れ補正)動作を行う。前述の通り防振機構は、ハウジング20に対して固定関係にあるセンサホルダ31とカバー部材32に対して第1レンズ枠30を球心揺動させるものである。第1レンズL1を防振用の光学要素として選択することの利点として、防振機構を備えつつ撮像ユニット10を前後方向に薄型に構成することができる。例えば本実施形態と異なり、第2群G2や第3群G3を第2光軸O2と直交する方向に移動させる防振機構を想定した場合、2群枠20や3群枠21の移動用のスペースを確保したり、2群枠20や3群枠21の駆動手段を配置したりすることによって、ハウジング13内に必要とされる前後方向のスペースが図示実施形態よりも広くなり、撮像ユニット10の厚みが増してしまう。また本実施形態の構成では、防振制御に際して駆動されるのが第1群G1の全体ではなく第1レンズL1のみであるから、可動部がコンパクトで駆動負荷が小さくて済むという利点もある。一般的な防振機構ではレンズ群全体を駆動させるが、本実施形態の第1群G1では、パワーを有する第1レンズL1と第2レンズL2の間に、光束の反射のみを行う第1プリズムL11が配されているため、第1レンズL1と第2レンズL2の間の距離が大きくなっており、第1レンズL1を単独で移動させて防振制御を行なっても収差劣化が少ない。つまり、撮像光学系としては第1レンズL1から第2レンズL2までの第1群G1全体で収差が管理されるが、防振に関しては、第1プリズムL11を挟んで光軸方向間隔が大きくなっている第1レンズL1と第2レンズL2を実質的に別のレンズ群であるように扱っても光学性能を確保できることに着眼して、第1レンズL1のみを防振用の光学要素に設定している。
【0059】
第1レンズL1が防振動作を行う際に行う球心揺動は、第1光軸O1に直交する平面に沿うシフト動作に比べて、第1光軸O1に沿って撮像ユニット10を正面視したときに小さいスペースで第1レンズL1を大きく動作させることができる。そのため、撮像ユニット10を前後方向のみならず上下左右方向(撮像ユニット10の正面視)においてもコンパクトに構成しながら、防振対応可能な角度を大きくさせて防振性能を向上させることができる。
【0060】
特に撮像ユニット10では、第1レンズL1の背後に第1プリズムL11を配した屈曲光学系であることに着目して、第1レンズ枠30の球心揺動の支点となる揺動中心A1の位置を、第1プリズムL11の反射面L11−cの後方位置に設定している。これにより、第1プリズムL11の裏側を第1レンズ枠30の支持機構の設置スペースとして有効活用し、スペース効率に優れた構成で球心揺動を実現している。具体的には、ピボット凸部44(ピボットアーム41a)、ピボット凹部65(センサホルダ31)、付勢アーム36、コイルバネ37、ガイド部45、回転規制突起66(センサホルダ31)といった第1レンズ枠30の支持に関係する部位が第1プリズムL11の反射面L11−cの後方位置に集約して収められている。この反射面L11−cの後方位置は、光学系の光路の外側であるため、第1レンズ枠30の支持機構を設置しても光学的な悪影響は生じない。
【0061】
また、第1レンズL1の防振駆動と制御に関わる永久磁石81、82、コイル83、84、ホールセンサ85、86は、基準平面P2を挟んだ左右の領域のうち、第1プリズムL11により偏向された光束の進行方向(第2光軸O2の進行方向)と逆側の左側の領域に配されている。この領域には、撮像光学系を構成する光学要素のうち第1プリズムL11から先の(第2レンズL2以降の)光学要素が配置されていないためスペース的な制約を受けにくく、永久磁石81、82、コイル83、84、ホールセンサ85、86の配置に適している。
【0062】
加えて、第1プリズムL11から先の光路上(基準平面P2よりも右側の領域)には、第2光軸O2に沿って第2群G2や第3群G3を駆動させるためのモータMなどの金属製の部品が設けられており、このような金属部品が磁性体金属からなる場合、電磁アクチュエータに接近していると防振駆動に影響を及ぼすおそれがある。基準平面P2よりも左側の領域に永久磁石81、82やコイル83、84を配したことにより、第2群G2や第3群G3の支持駆動機構が磁性体金属を含んでいる場合も電磁アクチュエータの駆動に影響が及びにくいという効果がある。
【0063】
以上のように撮像ユニット10では、第1レンズL1を支持する第1レンズ枠30を、ホールセンサ85、86を支持するセンサホルダ31に対して球心揺動可能に支持している。センサホルダ31は、回転規制突起66とガイド部45の係合関係によって、第1レンズL1の光軸を中心とする第1レンズ枠30の回転を規制する機能も備えている、そして、第1レンズL1以外の光学要素を支持しているハウジング20に対して、センサホルダ31を位置調整可能に構成している。ハウジング20に対するセンサホルダ31の位置調整により、揺動中心A1を光学的に最適な位置に設定することができる。すなわち、センサホルダ31は、ホールセンサ85、86の支持、第1レンズ枠30の球心揺動可能な支持、第1レンズ枠30に対する回転規制、揺動中心A1の位置調整、という複合的な機能を備えている。
【0064】
この構成によると、位置精度を劣化させずに第1レンズL1に関する光学的調整が可能になる。具体的には、第1レンズL1の光学的調整を行うときには、ピボット凹部65を備えたセンサホルダ31をハウジング20に対して移動させる。センサホルダ31が移動すると、第1レンズ枠30の回転を規制する回転規制突起66と、センサ支持突起61、62上のホールセンサ85、86が、ピボット凹部65と共に移動する。回転規制突起66がピボット凹部65と共に移動することで、第1レンズL1の揺動中心A1と第1レンズL1に対する回転規制手段(回転規制突起66とガイド部45)の相対的な位置関係が不変となる。仮に揺動中心A1と回転規制手段の位置関係が変化すると、位置変化の方向によっては第1レンズ枠30に対する支持精度に悪影響が及ぶおそれがあるが、本実施形態の撮像ユニット10ではそのおそれがない。また、ホールセンサ85、86がピボット凹部65と共に移動することで、第1レンズ枠30上に支持した永久磁石81、82とセンサホルダ31上に支持したホールセンサ85、86の相対的な位置関係が不変となる。ホールセンサ85、86は第1レンズ枠30の球心揺動(防振動作)に際して永久磁石81、82との位置変化を検出するため、防振動作以外の理由によって永久磁石81、82とホールセンサ85、86の相対位置が変化すると、第1レンズ枠30の位置検出精度に悪影響が及んでしまうが、本実施形態の撮像ユニット10ではそのおそれがない。
【0065】
また、センサホルダ31に上記のような複合的な機能を持たせたことにより、防振機構を構成する部品点数を少なくして、撮像装置の小型軽量化や製造コスト削減に寄与することができる。
【0066】
以上、図示実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は図示実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で改変することができる。例えば、ハウジング20に対してセンサホルダ31の位置を調整させる手段は、図示実施形態の構成に限定されるものではない。具体的には、図示実施形態ではハウジング20に設けた2つの延長突出部26をセンサホルダ31の2つの遊嵌孔64に挿入しているが、延長突出部26と遊嵌孔64に相当する調整手段の数は2つ以外であってもよい。また、図示実施形態と逆に、遊嵌孔64に相当する孔部をハウジング20側に形成し、延長突出部26に相当する突出部をセンサホルダ31側に形成する形態を選択することも可能である。また、図示実施形態の延長突出部26は円筒状の突出部で、遊嵌孔64は円形の孔部であるが、これ以外の形状の突出部と孔部を採用することも可能である。
【0067】
図示実施形態では、センサホルダ31に突設した複数の支持突起63bを取付ネジ67(ワッシャ68)で押圧して弾性変形させることで、センサホルダ31をハウジング20に押し付ける付勢力を発生させている。この構成は、別途部材を追加することなくセンサホルダ31に付勢力を付与できるので、部品点数の削減という点で優れている。但し、センサホルダ31に支持突起63bを設ける代わりに、別の手段によってセンサホルダ31を付勢することもできる。例えば、ワッシャ68をスプリングワッシャに変更したり、センサホルダ31の後方面63aとワッシャ68との間に別部材からなる付勢部材を挟んだりしてもよい。
【0068】
図示実施形態では、ハウジング20に対してセンサホルダ31を最終的に接着で固定するものとしたが、固定の手法はこれに限定されない。例えば、各取付ネジ67の締め込み量の調整のみでセンサホルダ31を固定させることも可能である。この形態は、支持突起63bが取付ネジ67(ワッシャ68)で押圧されて弾性変形することで付勢力を発生させる点については図示実施形態と共通するが、ワッシャ68が延長突出部26の先端面に当接して締め込み限界に達するとハウジング20に対するセンサホルダ31の移動が規制されて固定状態になるという点が異なる。具体的には、第1光軸O1と垂直な平面に沿ってセンサホルダ31の位置調整を行う場合、締め込み限界よりも手前の途中位置(ワッシャ68が延長突出部26の先端面に当接しない位置)まで各取付ネジ67を螺合させる。この状態で、ワッシャ68に押圧された支持突起63bが弾性変形してセンサホルダ31が付勢力によって安定して保持され、高精度な位置調整を行うことができる。センサホルダ31の位置が決まったら、ワッシャ68が延長突出部26の先端面に当接する締め込み限界まで各取付ネジ67を締め込む。すると、支持突起63bが略完全に潰れて、支持座25とワッシャ68の間にセンサホルダ31の取付部63が固定的に挟持された状態になる。つまり、各取付ネジ67の締結力によってハウジング20に対するセンサホルダ31の位置調整が規制された固定状態になる。
【0069】
また、センサホルダ31に対して第1レンズ枠30を球心揺動可能にする支持構造として、図示実施形態と異なる構成を選択することができる。例えば、図示実施形態とは逆に、ピボット凸部44に相当する凸部をセンサホルダ31に設け、ピボット凹部65に相当する凹部を第1レンズ枠30に設けることも可能である。また、ピボット凹部65のような凹部ではなく、第1光軸O1と垂直な平面に対して、ピボット凸部44に相当する凸部を当接させる構成でも第1レンズ枠30を球心揺動させることができる。この場合も、第1レンズ枠30とセンサホルダ31のいずれに凸部と平面を設けるかを任意に選択することができる。さらに、ピボット凸部44とピボット凹部65のように第1レンズ枠30とセンサホルダ31を直接的に当接させる構造に代えて、第1レンズ枠30とセンサホルダ31の間に中間部材を配し、この中間部材を介して、互いに直交する2軸(例えば基準平面P1に沿う軸と基準平面P2に沿う軸)を中心として揺動可能に第1レンズ枠30とセンサホルダ31を接続する構成でも、第1レンズ枠30を球心揺動させることができる。
【0070】
また、センサホルダ31に対して第1レンズ枠30を回転規制する構造についても、図示実施形態と異なる構成を選択することができる。例えば、図示実施形態のガイド部45(対向面45a)と回転規制突起66の関係とは逆に、第1光軸O1を中心とする径方向に延びる長孔や長溝をセンサホルダ31に形成し、この長孔や長溝に対して挿入される突起を第1レンズ枠30に設けて回転規制することも可能である。この場合、第1レンズ枠30に設ける突起は、長孔や長溝に対して摺動と傾動の両方が可能な形状にするとよい。具体的には、図示実施形態の回転規制突起66と同様に円筒状の外面を有する棒状体や、球面状の外面を有する球状体などが突起の構成として好ましい。また、図示実施形態のセンサホルダ31では、ピボット凹部65から左方に向けて(すなわち第2光軸O2が延びる側と反対方向に向けて)回転規制突起66が突設されている。この回転規制突起66の突出方向は、第1プリズムL11(プリズム保持枠23a)やセンサ支持突起61、62や一対の取付部63などの周辺構造物によるスペース的な制約を受けない方向として選択されているが、周辺構造物との関係で得られるスペースによっては、ピボット凹部65に対する左方以外の位置に第1レンズ枠30の回転規制手段を配置することも可能である。
【0071】
図示実施形態の撮像光学系は、光路を屈曲させる反射素子としてプリズムを用いているが、プリズムに代えてミラーなどを反射素子として用いてもよい。さらに、撮像光学系に第2プリズムL12を含まず光路をL字状としたタイプの撮像装置にも適用が可能である。あるいは、第1プリズムL11と第2プリズムL12に加えてさらに別の反射素子を有する屈曲光学系の撮像装置も適用対象となる。いずれの場合も反射素子による光軸の屈曲角度(反射角)は90°以外の値であってもよい。
【0072】
また、反射素子(実施形態の第1プリズムL11に相当する)の物体側に位置して防振動作を行う前方レンズについては、図示実施形態のような単レンズ以外に、複数枚のレンズで構成することも可能である。
【0073】
図示実施形態の第1レンズL1は周縁の一部を切り欠いたDカット形状をなしており、第2光軸O2に沿う方向における1群ブロック12の小型化に寄与している。しかし、本発明における前方レンズの正面形状はこれに限定されるものではなく、正面視してDカット以外の形状をなす(例えば円形の)前方レンズを備えた撮像装置にも適用が可能である。
【0074】
また、本発明は第1レンズ枠30を球心揺動させる駆動手段を限定するものではなく、高速な防振駆動に対応可能という条件を満たすものであれば、ボイスコイルモータ以外のアクチュエータを用いることも可能である。