(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382071
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】粉体吐出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20180820BHJP
B65D 83/06 20060101ALI20180820BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
B65D47/20 111
B65D83/06 A
B65D83/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-223205(P2014-223205)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-88545(P2016-88545A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】栗原 誠明
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−139091(JP,A)
【文献】
特開平11−310279(JP,A)
【文献】
特開平07−315396(JP,A)
【文献】
実公昭47−004787(JP,Y1)
【文献】
国際公開第2011/054484(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 47/32
B65D 83/00
B65D 83/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状の内容物を収容する収容空間を有する容器本体と、該収容空間につながる開口を有し該容器本体の口部に装着されるキャップと、該開口に設けられるスリットバルブとを備える粉体吐出容器であって、
前記スリットバルブの下方に、該スリットバルブに対して間隔をあけて配置され該スリットバルブと前記収容空間との間を仕切る遮蔽壁を設け、
該遮蔽壁は、前記収容空間の内容物が該スリットバルブに向けて送給される吐出口と、該スリットバルブを通して流入する空気が該収容空間に向けて送給される通気口とを形成することを特徴とする粉体吐出容器。
【請求項2】
前記吐出口の開口面積は、前記通気口の開口面積よりも大きい請求項1に記載の粉体吐出容器。
【請求項3】
前記吐出口は、少なくともその一部が前記スリットバルブの直下に位置する部位に設けられ、前記通気口は、該スリットバルブの直下を避けた部位に設けられる請求項1又は2に記載の粉体吐出容器。
【請求項4】
前記容器本体の口部は、該容器本体の内側に向けて突出して少なくともその一部が前記通気口の直下に位置する突出部を有する請求項1〜3の何れか一項に記載の粉体吐出容器。
【請求項5】
前記キャップは、ヒンジを介して連結する蓋体を有し、前記吐出口が設けられる側を吐出容器の前方側、前記通気口が設けられる側を吐出容器の後方側としたときに、該ヒンジは、吐出容器の後方側に設けられる請求項1〜4の何れか一項に記載の粉体吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体状の内容物を吐出する粉体吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体状の調味料(塩、七味、ふりかけ等)や化粧料(ファンデーション等)を収容する容器としては、容器本体に装着されるキャップに軟質材等で形成されるスリットバルブを設けた、粉体吐出容器が知られている(例えば特許文献1参照)。このような容器は、傾倒姿勢に変位させた容器本体をスクイズ(押圧)することによって、バルブに設けたスリットを開放させて内容物を吐出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−11502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのような容器では、容器本体へのスクイズを解除すると、容器本体が復元するのに伴ってバルブのスリットから外気が取り込まれ、これによって、容器本体内が負圧にならずにスムーズに復元されるようにしている。しかし、内容物がバルブの内側に詰まってしまうと、バルブの動きが阻害されて、スリットの開きが不足したりスリットが開かなくなったりする場合がある。これにより、外気が十分に取り込まれなくなる結果、容器本体が元の形状に戻りにくくなって、連続での吐出が困難になることがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、容器本体を安定的に復元でき、これによって内容物の連続吐出が行いやすくなる、新たな粉体吐出容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粉体状の内容物を収容する収容空間を有する容器本体と、該収容空間につながる開口を有し該容器本体の口部に装着されるキャップと、該開口に設けられるスリットバルブとを備える粉体吐出容器であって、
前記スリットバルブの下方に、該スリットバルブに対して間隔をあけて配置され該スリットバルブと前記収容空間との間を仕切る遮蔽壁を設け、
該遮蔽壁は、前記収容空間の内容物が該スリットバルブに向けて送給される吐出口と、該スリットバルブを通して流入する空気が該収容空間に向けて送給される通気口とを形成することを特徴とする粉体吐出容器である。
【0007】
前記吐出口の開口面積は、前記通気口の開口面積よりも大きいことが好ましい。
【0008】
前記吐出口は、少なくともその一部が前記スリットバルブの直下に位置する部位に設けられ、前記通気口は、該スリットバルブの直下を避けた部位に設けられることが好ましい。
【0009】
前記容器本体の口部は、該容器本体の内側に向けて突出して少なくともその一部が前記通気口の直下に位置する突出部を有することが好ましい。
【0011】
前記キャップは、ヒンジを介して連結する蓋体を有し、
前記吐出口が設けられる側を吐出容器の前方側、前記通気口が設けられる側を吐出容器の後方側としたときに、該ヒンジは、吐出容器の後方側に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粉体吐出容器によれば、容器本体を傾倒姿勢に変位させてスクイズさせても、スリットバルブに向かう内容物が遮蔽壁によって制限されるため、スリットバルブの内側には、空隙(内容物が詰まっていない隙間)が形成されることになる。このため、スリットバルブの動きが阻害されにくくなり、また、空隙によって空気が流れやすくなるため、容器本体を安定的に復元させることが可能になって、連続での吐出がより確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従う粉体吐出容器の一実施形態を示す、(a)は側面視での断面図であり、(b)は(a)に示す矢印Aに沿う矢視図(容器本体は不図示)である。
【
図2】
図1の状態から容器本体を傾倒姿勢に変位させた状態を示す図である。
【
図3】本発明に従う粉体吐出容器の他の実施形態を示す、(a)は側面視での断面図であり、(b)は(a)に示す矢印Bに沿う矢視図(容器本体は不図示)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書において、「上」とは、粉体吐出容器を水平面上に載置した際(正立姿勢)に容器本体に対してキャップが位置する側であり、「下」とは、その反対側である。また、「前」とは蓋体に設けられた摘み部が位置する側であり、「後」とは、その反対側(蓋体のヒンジを設けた側)である。
【0015】
図1において、符号1は、本発明に従う粉体吐出容器(以下、「吐出容器1」と称する)の一実施形態を示す。吐出容器1は、容器本体2と、容器本体2に装着されるキャップ3と、キャップ3に設けられるスリットバルブ4と、スリットバルブ4の下方に設けられる遮蔽壁5と、スリットバルブ4を覆い隠す蓋体6とを備えている。
【0016】
容器本体2は、図示を省略する底部につながる胴部2aを有し、胴部2aの上部に円筒状の口部2bを一体に連結したものであり、その内側には、粉体状の内容物を収容する収容空間Sが設けられている。また口部2bの外周面には、雄ねじ2cが設けられていて、口部2bの上部には、上方に向かって容器本体2の内側に傾斜する傾斜部2dが設けられている。そして傾斜部2dの上部には、容器本体2の内側に向けて突出する突出部2eが設けられている。なお、未使用時における内容物と空気との接触を避けるべく、突出部2eの上面にフィルム状の密封シートfを設けてもよい。
【0017】
キャップ3は、ドーナツ状になる天壁3aと、天壁3aの内縁に連結し、上方に向かって縮径する傾斜壁3bと、傾斜壁3bの上部に連結する環状壁3cとを備えている。また、環状壁3cの径方向内側には、上下方向に貫通する開口3dが設けられている。また傾斜壁3bの下面には、水平方向に延在する平坦面を有する、上部段部3e及び下部段部3fが設けられていて、下部段部3fの下方には、爪部3gが設けられている。また、天壁3aの下面には、円環状になる支持壁3hが設けられている。
【0018】
天壁3aの外縁には、口部2bを周方向に取り囲む円筒状の装着壁3iが設けられている。装着壁3iの内周面には、雄ねじ2cに対応する雌ねじ3jが設けられていて、口部2bに対してねじ込むことで、キャップ3を口部2bに装着することができる。なお、これらのねじに替えて、アンダーカット等によって保持するようにしてもよい。
【0019】
スリットバルブ4は、ゴムやエラストマー等の軟質材で形成されるものである。スリットバルブ4は、その中心軸が吐出容器1の中心軸と一致するように設けられる環状の基部4aと、基部4aの上部に連結する薄肉の筒状部4bと、筒状部4bの上端に連結するとともに下方に向かって突出する湾曲部4cとを備えている。スリットバルブ4をキャップ3に組み込んだ際、基部4aの上面は上部段部3eの下面に当接する。また湾曲部4cには、平面視で十字状に設けられたスリット4dが設けられている。
【0020】
遮蔽壁5は、
図1(a)に示すように、スリットバルブ4の下方において、スリットバルブ4に対して間隔をあけて配置され、板状になるものである。ここで遮蔽壁5は、
図1(b)に示すように矢印Aに沿う矢視図において、支持壁3hの内周面と略同径になる円の中心を通る前方端縁5aと、前方端縁5aと平行になる後方端縁5bと、支持壁3hの内周面と略同径になる円弧状であって、前方端縁5aと後方端縁5bとをつなぐ2つの側方端縁5cとで囲まれる形状になるものである。なお、
図1(b)における斜線部は、遮蔽壁5をキャップ3に組み込んだ際に、遮蔽壁5が支持壁3hとの間で穴を形成する部分であって、前方端縁5aが形成する穴が吐出口Haであり、後方端縁5bが形成する穴が通気口Hbである。
【0021】
図1(b)に示すように、吐出口Haは吐出容器1の前方側に設けられ、通気口Hbは吐出容器1の後方側に設けられる。また、吐出口Haの開口面積は、通気口Hbの開口面積よりも大きくなっている。また吐出口Haは、
図1(a)に示すように、吐出口Haの後方側の一部がスリットバルブ4の直下に位置するように設けられていて、通気口Hbは、スリットバルブ4の径方向外側(スリットバルブ4の直下を避けた部位)に位置するように設けられている。また、容器本体2の突出部2eは、通気口Hbの直下に位置するように設けられている。
【0022】
図1(a)、(b)に示すように、遮蔽壁5の上面には、横断面形状が矩形状になる柱部5dが連結し、柱部5dの上面には、ドーナツ状になる連結壁5eが連結している。遮蔽壁5をキャップ3に組み込んだ際、連結壁5eの上面は、基部4aの下面に当接する。また、連結壁5eの内縁には、湾曲部4cの下面に向かって延在する内側筒壁5fが設けられ、連結壁5eの外縁には、上面が下部段部3fの下面に当接する外側筒壁5gが設けられている。なお、外側筒壁5gの外周面には突起が設けられていて、遮蔽壁5をキャップ3に組み込むと、この突起に爪部3gが係合し、遮蔽壁5はキャップ3に抜け止め保持される。
【0023】
蓋体6は、中央部を下向きに湾曲させた頂壁6aと、頂壁6aの外縁に連結するとともに、装着壁3iに連なる形状になる外周壁6bとを備えている。頂壁6aの中央部は、蓋体6を閉じた状態において、スリットバルブ4の湾曲部4cを下向きに僅かに押圧するものであり、これによってスリット4dを僅かに開いた状態で維持している。また、外周壁6bの前方側には、蓋体6を開く際の指掛かりとなる摘み部6cが設けられていて、外周壁6bの後方には、装着壁3iに連結するヒンジ部6dが設けられている。そして、頂壁6aの下面には、環状壁3cの外周面と気密に当接する環状のシール壁6eが設けられている。
【0024】
このように構成される吐出容器1から内容物を吐出させるには、蓋体6を開いた状態で吐出容器1を傾倒姿勢に変位させて、容器本体2をスクイズする。開いた蓋体6は、吐出容器1の後方側に位置することになるので、使用者は自然に、
図2に示す如く、吐出容器1の前方側に設けられた吐出口Haが通気口Hbよりも下方に位置するようにして吐出容器1を保持する。この時、収容空間Sの内容物は、吐出口Haを通してスリットバルブ4に流動し、スクイズによる収容空間Sへの加圧によってスリット4dから吐出される。ここで、スリットバルブ4と収容空間Sとの間は、遮蔽壁5で仕切られているので、
図2に仮想線で示す如く、スリットバルブ4と遮蔽壁5との間には、空隙Kが形成されることになる。これにより、スリットバルブ4の動きが阻害されにくくなるため、スリット4dが閉じたままになる不具合が起こりにくくなる。更に、空隙Kがあることで空気が流れやすくなるため、容器本体2が安定的に復元されることになる。このため、内容物の連続吐出が行いやすくなる。
【0025】
本実施形態では、吐出口Haの開口面積は、通気口Hbの開口面積よりも大きいため、スリットバルブ4に向かう内容物の流動が大きく阻害されることがなくなり、内容物が意図した量で吐出できないという不具合が起きにくくなる。特に、吐出口Haの後方側の一部がスリットバルブ4の直下に位置するように設けられているため、内容物の吐出量が不足する不具合がより起きにくくなる。また、通気口Hbは、スリットバルブ4の直下を避けた部位に位置するように設けられているため、スリットバルブ4に対し、内容物が通気口Hbから流動されにくくなって、より確実に空隙Kを形成することができる。また、容器本体2の突出部2eは、通気口Hbの直下に位置するように設けられているので、内容物で通気口Hbが塞がれる現象が生じにくくなることから、容器本体2をより安定的に復元することができる。
【0026】
次に、本発明に従う粉体吐出容器の他の実施形態について、
図3を参照して説明する。なお、上述した吐出容器1と同一の機能となる部位については、図面中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
図3において、符号11は、粉体吐出容器の他の実施形態(以下、「吐出容器11」と称する)を示す。吐出容器11は、概略、遮蔽壁5に替えて遮蔽壁15を有するものである。
【0028】
遮蔽壁15は、
図3(a)に示すように、スリットバルブ4の下方において、スリットバルブ4に対して間隔をあけて配置され、装着壁3iの内周面と略同径の円板状になるものである。ここで遮蔽壁15には、
図3(b)に示すように矢印Bに沿う矢視図において、吐出容器11の前方側に位置する半円状の穴(吐出口Hc)と、後方側に位置するとともに直線と円弧で形成される穴(通気口Hd)とが設けられている。吐出口Hcの開口面積は、通気口Hdの開口面積よりも大きくなっている。また上述した実施形態と同様に、吐出口Hcは、
図3(a)に示すように、吐出口Hcの後方側の一部がスリットバルブ4の直下に位置するように設けられていて、通気口Hdは、スリットバルブ4の径方向外側(スリットバルブ4の直下を避けた部位)に位置するように設けられている。また、容器本体2の突出部2eは、通気口Hdの直下に位置するように設けられている。
【0029】
なお、
図3(a)、(b)に示すように、遮蔽壁15にも、遮蔽壁5と同様の柱部5d、連結壁5e、内側筒壁5f、外側筒壁5gが設けられている。そして遮蔽壁15をキャップ3に組み込むと、スリットバルブ4はキャップ3と遮蔽壁15とで保持され、また遮蔽壁15は、装着壁3iの内周面に嵌合して保持される。
【0030】
このような構成になる吐出容器11も、先に説明した吐出容器1と同様に、スリットバルブ4と遮蔽壁15との間に空隙Kが形成されることになるため、内容物の連続吐出が行いやすくなる。
【0031】
本発明に従う粉体吐出容器は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、吐出口と通気口はそれぞれ1つ設けられているが、これらは複数であってもよい。また、蓋体は、キャップにヒンジで連結するものに限定されず、キャップとは分離してねじ等で装着されるものでもよい。また、吐出容器の前方側、後方側の判別は、上述したヒンジタイプのキャップを利用するものにかぎられず、例えば前方側及び後方側が判別できる視認用のマークを設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1:吐出容器
2:容器本体
2a:胴部
2b:口部
2c:雄ねじ
2d:傾斜部
2e:突出部
3:キャップ
3a:天壁
3b:傾斜壁
3c:環状壁
3d:開口
3e:上部段部
3f:下部段部
3g:爪部
3h:支持壁
3i:装着壁
3j:雌ねじ
4:スリットバルブ
4a:基部
4b:筒状部
4c:湾曲部
4d:スリット
5:遮蔽壁
5a:前方端縁
5b:後方端縁
5c:側方端縁
5d:柱部
5e:連結壁
5f:内側筒壁
5g:外側筒壁
6:蓋体
6a:頂壁
6b:外周壁
6c:摘み部
6d:ヒンジ部
6e:シール壁
11:吐出容器
15:遮蔽壁
Ha:吐出口
Hb:通気口
Hc:吐出口
Hd:通気口
K:空隙
S:収容空間
f:密封シート